JP2007149050A - 空洞共鳴の予測方法及び空洞共鳴の予測用コンピュータプログラム - Google Patents

空洞共鳴の予測方法及び空洞共鳴の予測用コンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】環状の空洞を有する構造体がその周方向に回転している場合において、前記空洞内における空洞共鳴を予測すること。
【解決手段】この空洞共鳴の予測方法は、まず、タイヤの内部に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、気体の解析モデルを作成する(ステップS101)。次に、作成した気体の解析モデルの子午断面内において一様な角速度で、前記気体の解析モデルをタイヤの回転軸周りに回転させる(ステップS102)。そして、固有値解析等によって、気体の解析モデルが回転しているときにおける空洞共鳴周波数を抽出し(ステップS103)、評価する(ステップS104)。
【選択図】 図4

Description

本発明は、タイヤのように、環状の空洞を有する構造体の内部に存在する気体の空洞共鳴を予測することに関する。
コンピュータの発達により、近年においては、コンピュータを用いてタイヤやタイヤ/ホイール組立体等を転動解析することによって、タイヤ/ホイール組立体の性能を評価する手法が用いられるようになってきている。これによって、タイヤを実際に試作する前に、そのおおよその性能を知ることができるため、研究、開発の効率が大幅に向上する。
タイヤとホイールとで囲まれたタイヤ内の空洞には、空気や窒素等の気体が存在する。前記空洞内の空気が共鳴することによって発生する空洞共鳴は、車両の室内騒音に影響が大きい。この対策にあたっては、タイヤが転動している場合において、空洞共鳴の周波数を精度よく予測し、タイヤの設計等に反映させることが必要である。非特許文献1には、実験により得られたタイヤの転動にともなう空洞共鳴の周波数の変化が示されている。
タイヤユニフォミティ高次成分関連現象の原因を探る上での注意点、中島慎吾著、自動車技術会シンポジウムテキスト、文献番号:9742288、1997年12月、no.87−11、pp42−44
しかし、非特許文献1には、空洞共鳴の周波数がタイヤの転動速度によって変化することは開示されているが、タイヤの転動時における空洞共鳴の周波数を予測する手法については開示されていない。そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、環状の空洞を有する構造体がその周方向に回転している場合において、前記空洞内における空洞共鳴の周波数を予測できる空洞共鳴の予測方法及び空洞共鳴の予測用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、環状の空洞を有する構造体の内部に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、前記気体の解析モデルを作成する手順と、前記気体の解析モデルを、前記気体の解析モデルの子午断面内において一様な角速度で、前記構造体がその周方向に回転する際の回転軸周りに回転させる手順と、前記気体の解析モデルが回転しているときにおける空洞共鳴の周波数を抽出する手順と、を含むことを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法では、環状の空洞を有する構造体内の空洞に存在する気体を、離散化数値解析手法を用いてモデル化し、モデル化した前記気体の解析モデルを、その子午断面内において一様な角速度で周方向に回転させる。そして、周波数応答解析、固有値解析その他の解析手法によって、前記気体の解析モデルが回転しているときの、環状の空洞内における空洞共鳴の周波数を抽出する。これによって、環状の空洞を有する構造体内の空洞内における空洞共鳴の周波数を予測することができる。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、環状の空洞を有する構造体、及び前記構造体の内部に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、前記構造体の解析モデル、及び前記気体の解析モデルを作成する手順と、前記構造体の解析モデル又は前記気体の解析モデルのうち少なくとも一方を、前記気体の解析モデルの子午断面内において一様な角速度で、前記構造体が周方向に回転する際の回転軸周りに回転させる手順と、少なくとも前記気体の解析モデルに振動を励起する入力を与えて、前記入力に対する応答を計算する手順と、を含むことを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、環状の空洞を有する構造体内の空洞に存在する気体を、離散化数値解析手法を用いてモデル化し、モデル化した前記気体の解析モデルを、その子午断面内において一様な角速度で周方向に回転させる。そして、周波数応答解析、過渡応答解析等によって、前記気体の解析モデルへの入力に対する応答(周波数応答)を計算する。これによって、環状の空洞を有する構造体内の空洞内における空洞共鳴の周波数応答を解析できる。なお、構造系と音響系とを連成させることにより、構造体の解析モデルと気体の解析モデルとの相互作用を設定することが好ましい。これによって、空洞共鳴の周波数応答を解析する際の精度が向上する。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、少なくとも空洞共鳴周波数を含む帯域内においては、前記入力に対する応答を計算する手順における周波数の分解能を2.5Hz以下とすることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、入力に対する応答を計算する手順における周波数の分解能を2.5Hz以下とする。これによって、空洞共鳴にともなうピークを精度よく抽出することができる。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記入力に対する応答を計算する手順においては、前記構造体が周方向に回転する際の回転軸周りにおける回転以外を拘束した状態とし、かつ入力を前記構造体の接地面の強制変位とするとともに、前記応答を前記回転軸の反力とすることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、回転軸周りにおける回転以外を拘束するとともに、入力を接地面の強制変位とするとともに、応答を回転軸の反力とする。これによって、より実際の現象に近い状態を再現することになるので、空洞共鳴の予測精度が向上する。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記気体の解析モデルの回転数は、前記構造体の回転数に対して予め定めた所定の割合とすることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、環状の空洞を有する構造体(例えばタイヤ)の回転数に対して、予め定めた所定の割合の回転数で、気体の解析モデルを回転させる。これによって、より実際の転動状態に近い状態で空洞共鳴周波数を抽出することができるので、空洞共鳴の予測精度が向上する。ここで、前記所定の割合は、次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法のように、0.80以上1.00以下とすることが好ましい。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記気体の解析モデルに設定する前記気体の物性値は、空洞共鳴の周波数を抽出する際における雰囲気温度よりも高い温度における値を用いることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、空洞内の気体の物性値を実際の使用条件に合わせることができるので、より高い精度で空洞共鳴を予測することができる。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記雰囲気温度は、前記気体の解析モデルの回転速度が増加するにしたがって大きくなることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、解析モデルの回転速度の上昇とともに、前記気体の物性値を設定する際の温度を上昇させる。これによって、空洞内の気体の物性値を実際の使用条件により近づけることができるので、さらに高い精度で空洞共鳴の周波数を予測することができる。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記構造体はタイヤであり、前記気体の解析モデルと、前記タイヤを離散化数値解析手法でモデル化したタイヤの解析モデルとを組み合わせて回転させ、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルとを連成させて空洞共鳴の周波数を抽出することを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、タイヤの特性を考慮するので、空洞共鳴の予測精度が向上する。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、さらに、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルとに、ホイールを離散化数値解析手法でモデル化したホイールの解析モデルを組み合わせて回転させ、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルと前記ホイールの解析モデルとを連成させて空洞共鳴の周波数を抽出することを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、タイヤに加えてホイールの特性も考慮するので、空洞共鳴の予測精度がさらに向上する。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記気体の解析モデルの形状は、前記空洞の形状に合わせて変形させることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、空洞の形状に合わせて気体の解析モデルの形状を変化させる。これによって、構造体内の空洞の形状を表現できるので、空洞共鳴の予測精度が向上する。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法において、前記気体の解析モデルは、定常輸送解析によって転動解析されることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測方法は、前記空洞共鳴の予測方法の構成を備えるので、前記空洞共鳴の予測方法と同様の作用、効果を奏する。さらにこの空洞共鳴の予測方法は、定常輸送解析によって気体の解析モデルを転動解析する。これによって、空洞内の気体やタイヤ等の解析モデルの規模を小さくできるので、効率的に転動解析を行うことができる。
次の本発明に係る空洞共鳴の予測用コンピュータプログラムは、前記空洞共鳴の予測方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
この空洞共鳴の予測用コンピュータプログラムによれば、前記空洞共鳴の予測方法がコンピュータを利用して実現できる。
本発明に係る空洞共鳴の予測方法及び空洞共鳴の予測用コンピュータプログラムは、環状の空洞を有する構造体がその周方向に回転している場合において、前記空洞内における空洞共鳴の周波数を予測できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。本発明は、タイヤ内の空洞に気体が充填される、いわゆる空気入りタイヤに対して好適に適用できるが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、環状の空洞を有する構造体内における空洞共鳴を予測する場合、すなわち、環状の空洞を有する構造体内の空洞共鳴周波数を予測したり、振動応答を得たりする場合であれば本発明を適用することができる。次の説明においては、環状の空洞を有する構造体として、タイヤ、又はタイヤ・ホイール組立体を例とする。すなわち、タイヤ内の空間、あるいはタイヤとホイールとで囲まれた空間が環状の空洞となる。
この実施形態は、離散化数値解析手法でモデル化した、環状の空洞を有する構造体内の空洞に存在する気体の解析モデルを、その子午断面内において一様な角速度で、タイヤの回転軸周りに回転させ、周波数応答解析、固有値解析その他の解析手法によって気体の解析モデルが回転しているときの共鳴周波数を抽出する点に特徴がある。
図1は、タイヤ・ホイール組立体の側面図である。図2は、タイヤ・ホイール組立体の子午断面を示す断面図である。ここで、子午断面とは、タイヤ1又はホイール2の回転軸(Y軸)を通り、かつタイヤ1又はホイール2の回転軸と平行な平面で切った場合の断面をいう。
タイヤ1とホイール2とで囲まれた環状の空洞Scには、空気や窒素等の気体が存在する。タイヤ1が転動すると、タイヤ1が加振されてタイヤ1が振動する。このタイヤ1の振動によって空洞Sc内の空気が共鳴する。これを空洞共鳴という。200Hz〜300Hzで発生する空洞共鳴は、車両の室内騒音に影響が大きい。この対策にあたっては、空洞共鳴の周波数(空洞共鳴周波数)を精度よく予測することが必要である。共鳴周波数には、空洞Scの形状、気体の温度、流れが影響する。ここで、空洞Scの形状は、タイヤ1やホイール2の内面形状及びタイヤ1の接地変形に影響を受け、流れはタイヤ1、ホイール2の転動に影響を受ける。
空洞共鳴周波数を予測するにあたっては、空洞Scにおける気体の流れを考慮することが重要である。この実施形態では、空洞共鳴周波数を予測するにあたり、空洞Sc内に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、モデル化された気体の解析モデルを、タイヤ1の転動時における回転数に対して所定の割合の回転数で、前記解析モデルの子午断面内において一様な角速度で回転させる。そして、固有値解析等によって空洞Scの空洞共鳴周波数を抽出し、これに基づいて、タイヤ1やタイヤ・ホイール組立体3の性能を予測する。この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法は、次に説明する空洞共鳴の予測装置で実現できる。次に、この実施形態に係る空洞共鳴の予測装置を説明する。
図3は、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を実行する空洞共鳴の予測装置を示す説明図である。この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法は、図3に示す空洞共鳴の予測装置50によって実現できる。図3に示すように、この空洞共鳴の予測装置50は、処理部52と記憶部54とで構成される。また、この空洞共鳴の予測装置50には、入出力装置51が接続されており、ここに備えられた入力手段53で、タイヤの回転数や環境条件等の、空洞共鳴の予測に必要な情報を処理部52や記憶部54へ入力する。
ここで、入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(RandomAccessMemory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりこの実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(OperatingSystem)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、メモリ及びCPUにより構成されている。空洞共鳴を予測する際には、空洞共鳴の予測に必要な条件その他の入力データ等に基づいて、処理部52が前記プログラムを当該処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、記憶部54へ演算途中の数値を適宜格納し、また記憶部54へ格納した数値を取り出して演算を進める。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。判定結果は、入出力装置の表示手段55に表示される。
ここで、表示手段55には、CRT(CathodeRayTube)や液晶表示装置等を使用することができる。また、判定結果は、必要に応じて設けられたプリンタに出力することもできる。ここで、記憶部54は、処理部52に内蔵されるものであっても、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。後者の例としては、例えば、上記空洞共鳴の予測装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。次に、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法について、より詳細に説明する。
図4は、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法の手順を示すフローチャートである。図5−1〜図5−3は、タイヤ、あるいはホイールの各軸を示す説明図である。図6は、離散化数値解析手法に基づく解析モデルの一例を示す説明図である。図7−1は、タイヤ内の空洞内に存在する気体を複数かつ有限の要素に分割して作成した気体の解析モデルを示す説明図である。図7−2、図7−3は、図7−1に示す気体の解析モデルを転動させた状態を示す説明図である。次の説明においては、これらの図の他、上記図1〜3も適宜参照されたい。
この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法の手順を説明する前に、タイヤ、あるいはホイールの各軸について説明する。図5−1〜図5−3に示すY軸は、タイヤあるいはホイールの回転軸に相当する軸である。X軸、Z軸は、それぞれ前記Y軸に直交するとともに、X軸とZ軸とは、互いに直交する。ここで、Z軸は、タイヤあるいはホイールと平行な方向、すなわちタイヤあるいはホイールの幅方向における中心の軸(以下幅方向中心軸という)である。
この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を実行するにあたって、空洞共鳴の予測装置50が備える処理部52を用いて、タイヤ内の空洞に存在する気体(例えば空気)を離散化数値解析手法でモデル化し、解析モデルを作成する(ステップS101)。以下の説明において、前記手法によりモデル化した気体の解析モデルを、気体モデルという。また、離散化数値解析手法としては、有限要素法、有限差分法、境界要素法等の解析手法を用いることができる。
図6には、上記ステップS101でモデル化した気体モデル10Mの一例を示してある。図6に示すように、離散化数値解析手法でモデル化した気体モデル10Mは、複数かつ有限の要素E1、E2・・・Enに分割されている。なお、この要素は、気体の特性を表現できる要素であり、この実施形態では音響要素を用いる。次に、処理部52は、この気体モデル10Mを、タイヤ1(図1、図2)の回転軸(Y軸)の周りに回転させる(ステップS102)。気体モデル10Mは、タイヤ1の空洞Sc内に存在する気体をモデル化したものなので、タイヤ1の回転軸(Y軸)の周りに気体モデル10Mを回転させることで、タイヤ1の転動中における空洞共鳴周波数を予測することができる。
気体モデル10Mを、タイヤ1の回転軸(Y軸)の周りに回転させるにあたって、気体モデル10Mの子午断面内における角速度が一様となるようにする。すなわち、タイヤ1の内面やホイール2の内面と接触する部分における気体の角速度、及び空洞Sc内部における気体の角速度がすべて同一となるようにする。これによって、タイヤ1の転動中における空洞共鳴周波数を精度よく予測することができる。なお、タイヤ1の転動速度が変化した場合、気体モデル10Mの子午断面内における角速度が一様の状態を保ちつつ、気体モデル10Mの回転速度が変化する。
タイヤ1の回転軸(Y軸)の周りに気体モデル10Mを回転させるにあたって、この実施形態では、定常輸送解析を用いる。ここで、定常輸送解析について説明する。定常輸送解析は、物体に固定した座標系と、空間に固定した座標系とを組み合わせることで、回転(転動)の効果を考慮する解析手法である。
定常状態(例えば、タイヤが一定の荷重かつ一様な角速度で回転しているような場合)においては、タイヤの輪郭は変化しないので、タイヤ内に存在する気体の輪郭も変化しない。定常状態において気体モデル10Mを回転させた場合は、上述した有限要素法の陽解法のように、気体モデル10Mを構成する各要素E1〜E4が回転すると考えることができる。また、定常状態において気体モデル10Mを回転させた場合は、図7−3に示すように、各要素E1〜E4そのものは回転しないが、各要素E1〜E4の中に存在する気体Ei1〜Ei4そのものが、図7−3中の矢印R方向に回転しているとも考えることができる。後者の考え方による解析が定常輸送解析である。
構造物の変形解析において、一般的に使用されているラグランジュ定式化を用いると、物体を構成する材料を基準として変形が表現される(図7−2に示す例)。回転している物体の変形解析において、ラグランジュの定式化を用いると、変形を表現する各ポイントが回転にともなって常に移動するため、定常的な回転の解析においてさえ、非定常な解析として取り扱う必要がある。また、回転接触をともなう解析では、回転物全体にわたって細かな要素分割が必要になるため、解析モデルの規模が大きくなり、その結果計算に時間を要してしまう。
定常輸送解析では、回転軸に基準座標系が取り付けられる。このようにすることで、回転体の中身(物体)は、フレームの中を通って回転するが、フレームそのものは回転しないように観測される。すなわち、定常的な回転時には、観測者は固定されたポイントを常に見ていることになるので、時間依存の問題を取り除き、定常状態の解析として取り扱うことができるようになる。
したがって、定常輸送解析における基準座標系で定式化された有限要素メッシュには、大きな剛体回転は生じない。このことは、回転接触の問題で、接触領域だけ詳細な要素分割が必要となることを意味する。定常輸送解析における上記の取り扱いは、ラグランジュ定式化と、オイラーの定式化との混合と見ることができる。ここで、これらは、空間を基準にしたオイラー定式化による剛体回転、及び材料(物体)を基準にしたラグランジュ定式化による回転する剛体に沿って測定された(剛体回転と相対的に測られる)変形である。
定常輸送解析によって気体モデル10Mの回転(転動)状態を計算することで、気体モデル10Mの規模(総要素数)を小さくすることができるので、気体モデルの規模を小さくすることができる。その結果、ハードウェア資源を有効活用して、効率的に解析することができる。
この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法では、気体モデル10Mの回転数Ng(回転速度)を、タイヤの回転数Nt(回転速度)に対して、予め定めた所定の割合で設定する。より具体的には、タイヤ内の空洞における気体の回転数(気体の流れ)を、タイヤが転動しているときの回転数よりも遅くする。これは、実際のタイヤの転動においては、タイヤ内の空洞に存在する気体もタイヤの回転とともに回転するが、前記気体の回転数は、タイヤの回転数よりも大きくなることはないからである。タイヤ内の空洞における気体の回転数Ngをこのように設定することによって、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度が向上する。気体モデル10Mの回転数Ngは、0.80×Nt以上1.00×Nt以下が好ましく、より好ましくは0.85×Nt以上0.95×Nt以下である。
気体モデル10Mを回転させるにあたっては、気体の物性値は、空洞共鳴周波数を抽出する際の雰囲気温度よりも高い温度における気体の物性値を用いることが好ましい。転動中のタイヤは発熱するため、内部の空洞に存在する気体もこの影響を受けて昇温し、空洞共鳴周波数に影響を与える音速等の物性値が変化するからである。
気体モデル10Mの回転時において用いる気体の物性値を設定するために用いる物性値決定温度Tmは、空洞共鳴の周波数を抽出する際の雰囲気温度Taよりも高い一定値を用いてもよいが、気体モデル10Mの回転数(回転速度)の増加とともに前記物性値決定温度Tmを増加させてもよい。このようにすれば、温度変化による気体の物性値変化をより正確に反映させることができるので、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度が向上する。ここで、考慮する物性値は、音速、密度、体積弾性率等があげられる。
物性値決定温度前記Tmを変化させる場合、例えば、物性値決定温度前記Tmを気体モデル10Mの回転数に比例させるようにする。この場合、比例定数をα、気体モデル10Mの回転数をω(rad/sec.)とすると、Tm=Ta+α×ωとなる。なお、気体モデル10Mの回転数ωは、定常状態においてはタイヤの回転数とみなすことができ、また、タイヤの回転数は、当該タイヤが取り付けられる車両の速度に比例するため、気体モデル10Mの回転数ωの代わりに前記車両の速度を用いてもよい。気体モデル10Mの回転数ωの代わりに車両の速度を用いる場合、比例定数αは、0.1℃/(km/h)以上0.2℃/(km/h)以下の範囲にすることが好ましい。
物性値決定温度Tmを一定とする場合、Tmは、雰囲気温度Taに対して0℃以上30℃以下の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは、雰囲気温度Taに対して5℃以上15℃以下の範囲に設定する。これによって、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度を向上させることができる。
図8−1、図8−2は、気体モデルとタイヤ及びホイールの解析モデルとを組み合わせた解析モデルを示す説明図である。図8−2は、図8−1の子午断面を示す。図8−1、図8−2に示すように、気体モデル10Mは、離散化数値解析手法でモデル化したタイヤの解析モデル(タイヤモデル)1Mと組み合わせてモデル化し、タイヤとタイヤ内部の空洞Scに存在する気体とを連成させて回転させ、空洞共鳴周波数を予測してもよい。すなわち、構造系(タイヤやホイール)と音響系(空洞内の空気)とを連成させて解析し、空洞共鳴周波数を予測してもよい。この場合、図8−1、図8−2に示すように、タイヤのみならず、離散化数値解析手法でモデル化したホイールの解析モデル(ホイールモデル)2Mを組み合わせてもよい。
図8−3は、タイヤとホイールとの間に組み込んで、タイヤのパンク時に荷重を支える支持中子及びその解析モデルを示す説明図である。図8−3に示す支持中子モデル4Mは、支持中子4を離散化数値解析手法によってモデル化したものである。この支持中子4のように、タイヤの空洞部に配置される構造物がある場合には、このような構造物もモデル化し、気体モデル10Mと組み合わせて空洞共鳴周波数や周波数応答等を解析してもよい。このようにすれば、前記構造物の影響を考慮して空洞共鳴周波数や周波数応答等を評価することができる。タイヤの空洞部に配置される構造物としては、前記支持中子の他に、空洞共鳴を抑制するためにタイヤの空洞部に配置される多孔質体(例えばスポンジ)がある。
空洞共鳴周波数は、タイヤやホイールといった構造系の特性によっても変化するため、構造系との連成を考慮することで、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度が向上する。タイヤの空洞内に存在する空気そのものは加振されず、タイヤが路面等から加振されて振動することによって内部の空気が共鳴し、この振動がタイヤやホイールを介して車両に伝達される。したがって、空気とタイヤやホイールとの間において力や圧力のやり取りを考慮しないと、タイヤ等の解析における諸特性の予測精度が低下する。上述したように、構造系と音響系とを連成させて解析することにより、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度、及びタイヤやホイールの諸特性を予測する際の精度が向上する。
図9−1、図9−2は、タイヤ等の内面の変形に合わせて気体モデルの形状を変形させる例を示す説明図である。図9−2は、図9−1のA−A断面を示す。また、図9−1、図9−2の左側の図は、タイヤ等に荷重が負荷されていない状態であり、右側の図は、タイヤ等に荷重Fが負荷されている状態を示す。
これらの図に示すように、タイヤ1やホイール2が変形した場合には、これらに囲まれる空洞Scに存在する気体も、前記変形後における空洞内の形状に合わせて変形する。したがって、気体モデル10Mも、タイヤ1やホイール2で囲まれる空洞Scの変形形状に合わせて変形させることが好ましい。このようにすれば、タイヤ内やタイヤ・ホイール内における空洞の形状の影響を考慮できるので、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度、及びタイヤやホイールの諸特性を予測する際の精度が向上する。
気体モデル10Mの形状を、タイヤ1やホイール2で囲まれる空洞の変形形状に合わせる際には、前記気体モデル10Mを構成する要素の座標を所定量動かしてもよいし、前記空洞の変形形状に合わせて気体モデル10Mを再度設定し直してもよい。また、タイヤ1やホイール2で囲まれる空洞の変形形状は、実験によって得てもよいし、タイヤやホイール等の転動解析から得てもよい。また、気体モデル10Mと、タイヤの解析モデルやホイールの解析モデルとを組み合わせて解析してもよい。
空洞の形状に合わせて気体モデル10Mの形状を変形させる際には、タイヤ等に静荷重を与えて変形したときにおける空洞の形状を用いてもよい。このようにすれば、空洞の形状を簡易に得ることができる。また、タイヤ等が転動しているときにおける空洞の形状を用いて気体モデル10Mの形状を変形させてもよい。タイヤ等を転動させれば、空洞の形状は、より実際の状態に近くなるため、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度、及びタイヤやホイールの諸特性を予測する際の精度が向上する。
気体モデル10Mとホイールモデルと組み合わせて定常輸送解析を実行するにあたっては、デザインを詳細に考慮したホイールモデルは規模が大きく、計算時間の増加を招くため、デザインを簡略化したホイールモデルを用いることもできる。このようなデザインを簡略化したホイールモデルを用いて定常輸送解析を実行する場合には、定常輸送解析に用いるホイールモデルと、実際のホイールとで、質量、慣性モーメント、固有振動数等を調整することが好ましい。
例えば、実際のホイールのディスク部におけるデザイン部を省略した簡略化ホイールモデルや実際のタイヤにおけるラグ溝を省略した簡略化タイヤモデルを作成するとともに、簡略化ホイールモデル等の回転軸を通る断面内において、簡略化ホイールモデル等を少なくとも2の領域に分割する。そして、分割したそれぞれの領域における質量密度を調整することによって、簡略化ホイールモデル等の剛体特性(質量及び慣性モーメント)を調整する。
このような手法によって、簡略化ホイールモデル等の質量及び慣性モーメントを、実際のホイール等の質量及び慣性モーメントの所定範囲内に収め、分割したそれぞれの領域における弾性率を調整することにより、簡略化ホイールモデル等の固有振動数を調整する。そして、簡略化ホイールモデル等の固有振動数が、実際のホイール等における固有振動数の所定範囲内に収まるようにする。このような手順により、実際のホイール等と物理的な特性を合わせたホイールモデル等を作成することができるので、デザインを簡略化したホイールモデル等を用いて定常輸送解析を実行する場合においても、精度のよい解析が実現できる。その結果、空洞共鳴(空洞共鳴周波数)の予測精度、及びタイヤやホイールの諸特性を予測する際の精度が向上する。
気体モデル10M、あるいは気体モデル10Mとタイヤモデル等とを組み合わせた解析モデルを回転させ、定常状態になったら、処理部52は、例えば、過渡応答解析、周波数応答解析、あるいは固有値解析等を用いて気体モデル10Mから共鳴周波数を抽出する(ステップS103)。そして、抽出した共鳴周波数を評価して(ステップS104)、タイヤ等の構造の設計変更等を行う。次に、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を用いて、タイヤの回転軸の軸力や変位等の応答(周波数応答)を求める手順例を説明する。
図10は、この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を用いた周波数応答解析の手順を示すフローチャートである。図11−1、図11−2は、解析モデルに振動を励起させる例を示す説明図である。この周波数応答解析は、図3に示す空洞共鳴の予測装置50によって実現できる。この周波数応答解析において、空洞共鳴の予測装置50の処理部52は、解析モデルを作成する(ステップS201)。この実施形態では、タイヤモデル1Mと気体モデル10Mとホイールモデル2Mとを組み合わせた解析モデル(図8−1、図8−2参照)が作成される。空洞共鳴はホイールの影響も大きいため、タイヤ内の空気をモデル化するとともにホイールもモデル化する。これによって、解析の精度が向上する。
空洞共鳴現象を解析するにあたっては、気体モデル10Mとタイヤモデル1Mとの相互作用や、気体モデル10Mとホイールモデル2Mとの相互作用、あるいは気体モデル10Mとタイヤモデル1M及びホイールモデル2Mとの相互作用を考慮することが好ましい。前記相互作用は、構造系と音響系とを連成させることによって設定する。例えば、空気モデル10Mとタイヤモデル1Mとの境界部分に存在する空気モデル10Mの節点とタイヤモデル1Mの節点との間で、力や圧力のやり取りを定義することで、前記相互作用を設定することができる。これによってタイヤの転動時において発生する実際の空洞共鳴現象を精度よく再現でき、実際の空洞共鳴振動を精度よく評価することができる。
解析モデルが作成されたら、処理部52は、タイヤ1の回転軸(Y軸)の周りに解析モデル(タイヤモデル1Mと気体モデル10Mとホイールモデル2Mとを組み合わせたもの)を回転させる(ステップS202)。このときには、上述したように定常輸送解析を用いて、少なくとも気体モデル10Mを回転軸(Y軸)の周りに回転させる。なお、空気モデル10M、タイヤモデル1M及びホイールモデル2Mを回転させる際には、タイヤモデル1M及びホイールモデル2Mの回転角速度は等しい。
処理部52が解析モデルを回転軸(Y軸)の周りに回転させ、定常状態になったら、処理部52は、解析モデルに振動を励起させる(ステップS203)。この実施形態では、図11−1に示すように、回転軸(Y軸)に対して路面(接地面)Lpの反対側からタイヤモデル1Mに対して加振力Piを与える。なお、タイヤモデル1Mに与える入力は、図11−2に示すように、実際の入力源である路面(接地面)Lpから与えることがより好ましい。このとき、路面(接地面)Lpの強制変位Riをタイヤモデル1Mに与えることが好ましい。このようにすれば、より実際の現象に近い状態を再現することになるので、空洞共鳴の予測精度が向上する。
そして、処理部52は、過渡応答解析や周波数応答解析を用いて、加振力Piを与えることにより回転軸(Y軸)に伝わる力(軸反力)Prの応答(周波数応答)を計算する(ステップS204)。空洞共鳴騒音は、振動がホイールから車軸を介して車体へ伝わることにより発生するため、軸反力Prの応答を求めれば、空洞共鳴騒音を適切に評価することができる。
過渡応答解析や周波数応答解析においては、タイヤの軸(X軸、Y軸、Z軸:図5−1等参照)を回転以外拘束することが好ましい。すなわち、回転軸(Y軸)の周りの回転以外を拘束する。このようにすれば、空洞共鳴に影響するホイールの共振を考慮することができる。なお、タイヤの軸を回転以外拘束しない場合、ホイールの共振が実際よりも高い周波数にシフトしてしまう。軸反力Prの応答を求めたら、得られた周波数応答に基づいて、タイヤの性能を評価する(ステップS205)。ここで、振動の励起及び応答には、力、変位、空気の圧力(音圧)等を選択することができる。
実際のタイヤにおいて問題となる空洞共鳴騒音は、空洞共鳴周波数での騒音なので、その周波数成分を抽出するためには周波数応答解析が好ましい。そして、空洞共鳴にともなうピークを精度よく抽出するためには、空洞共鳴周波数のピークを含む帯域において周波数応答解析を実行する。ここで、空洞共鳴はタイヤの振動と比較して減衰が小さく、かつ空洞共鳴にともなうピークが鋭いため、前記ピークを精度よく抽出するためには2.5Hz以下、より好ましくは1.0Hz以下の周波数分解能で周波数応答解析を実行することが好ましい。上述した手法により、タイヤの転動時において発生する実際の空洞共鳴現象を精度よく再現でき、実際の空洞共鳴振動を精度よく評価することができる。
以上、この実施形態では、環状の空洞を有する構造体内の空洞に存在する気体を、離散化数値解析手法を用いてモデル化し、モデル化した前記気体の解析モデルを、その子午断面内において一様な角速度でタイヤの回転軸周りに回転させ、周波数応答解析、固有値解析その他の解析手法によって、前記気体の解析モデルが回転しているときの共鳴周波数を抽出する。これによって、前記空洞内における共鳴周波数を予測することができる。
図12、図13は、気体モデルとタイヤモデル及びホイールモデルとを組み合わせた解析モデルによる空洞共鳴周波数の解析結果を示す説明図である。この実施例においては、気体モデルとタイヤモデル及びホイールモデルとを組み合わせた解析モデルを用い、定常輸送解析によって転動させた後、固有値解析を実行して空洞共鳴周波数を抽出した。図10は、タイヤモデル及びホイールモデルで囲まれる空洞内の気体モデルに変形がない場合の結果であり、図13は、タイヤに荷重を負荷することにより、前記空洞内の気体モデルに変形が発生した場合の結果である。また、図12のAは、気体モデルの回転数と、タイヤモデル及びホイールモデルの回転数とを等しくした場合の結果であり、図12のBは、気体モデルの回転数を、タイヤモデル及びホイールモデルの回転数よりも低くした場合の結果である。図11は、気体モデルの回転数を、タイヤモデル及びホイールモデルの回転数よりも低くした場合の結果を示している。図12、図13の黒塗り四角のシンボルは、実験から求めた結果である。
図12、図13から分かるように、車両の速度、すなわち、空気モデルの回転速度によって空洞共鳴周波数が変化し、分裂幅が大きくなり、これは実験値と傾向が一致する。このように、本発明に係る空洞共鳴の予測方法によれば、実際の現象を定性的に再現できることが分かる。また、気体モデルの回転数を、タイヤモデル及びホイールモデルの回転数よりも一定の割合で低く設定することにより、実際の空洞共鳴周波数と解析結果とが定量的に合うことが分かる。また、図13に示すように、タイヤに荷重を負荷した場合におけるタイヤ内の空洞の形状を考慮することで、タイヤに荷重を負荷した場合でも、実際の空洞共鳴周波数と解析結果とが定量的に合うことが分かる。
図14は、本発明に係る空洞共鳴の予測方法を用いた周波数応答解析の結果を示す説明図である。図15は、図14に示す結果のうち、空洞共鳴周波数の部分を抜き出した拡大図である。図14は、伝達率(軸反力/加振力)と周波数との関係を示している。この周波数応答解析においては、図11−1に示すように、回転軸(Y軸)に対して路面Lpの反対側からタイヤモデル1Mに対して加振力Piを与え、回転軸(Y軸)に現れる軸反力Prの伝達率を求める。図14は、解析モデルが所定の進行速度(60km/h)で転動している場合の結果を示している。また、図15は、解析モデルが所定の進行速度(60km/h)で転動している場合、解析モデルが静止している場合、及び空気のない状態の解析モデルが静止している場合の結果を示している。
図14に示すように、本発明によれば、200Hz〜250Hzの間に空洞共鳴周波数のピークを2個観測できている。また、図15に示すように、空気のあり−なしにおける周波数応答のシフトや、静止時と転動時における周波数応答のシフトが解析できている。そして、周波数応答の解析により、応答のレベルを知ることができる。
以上のように、本発明に係る空洞共鳴の予測方法及び空洞共鳴の予測用コンピュータプログラムは、タイヤやタイヤ/ホイール組立体その他の回転体内部における空洞の音響解析に有用であり、特に、前記空洞内における空洞共鳴を予測することに適している。
タイヤ・ホイール組立体の側面図である。 タイヤ・ホイール組立体の子午断面を示す断面図である。 この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を実行する空洞共鳴の予測装置を示す説明図である。 この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法の手順を示すフローチャートである。 タイヤ、あるいはホイールの各軸を示す説明図である。 タイヤ、あるいはホイールの各軸を示す説明図である。 タイヤ、あるいはホイールの各軸を示す説明図である。 離散化数値解析手法に基づく解析モデルの一例を示す説明図である。 タイヤ内の空洞内に存在する気体を複数かつ有限の要素に分割して作成した気体の解析モデルを示す説明図である。 図7−1に示す気体の解析モデルを転動させた状態を示す説明図である。 図7−1に示す気体の解析モデルを転動させた状態を示す説明図である。 気体モデルとタイヤ及びホイールの解析モデルとを組み合わせた解析モデルを示す説明図である。 気体モデルとタイヤ及びホイールの解析モデルとを組み合わせた解析モデルを示す説明図である。 タイヤとホイールとの間に組み込んで、タイヤのパンク時に荷重を支える支持中子及びその解析モデルを示す説明図である。 タイヤ等の内面の変形に合わせて気体モデルの形状を変形させる例を示す説明図である。 タイヤ等の内面の変形に合わせて気体モデルの形状を変形させる例を示す説明図である。 この実施形態に係る空洞共鳴の予測方法を用いた周波数応答解析の手順を示すフローチャートである。 解析モデルに振動を励起させる例を示す説明図である。 解析モデルに振動を励起させる例を示す説明図である。 気体モデルとタイヤモデル及びホイールモデルとを組み合わせた解析モデルによる空洞共鳴周波数の解析結果を示す説明図である。 気体モデルとタイヤモデル及びホイールモデルとを組み合わせた解析モデルによる空洞共鳴周波数の解析結果を示す説明図である。 本発明に係る空洞共鳴の予測方法を用いた周波数応答解析の結果を示す説明図である。 図14に示す結果のうち、空洞共鳴周波数の部分を抜き出した拡大図である。
符号の説明
1 タイヤ
1M タイヤモデル
2 ホイール
2M ホイールモデル
3 タイヤ・ホイール組立体
4 支持中子
4M 支持中子モデル
10M 気体モデル
50 空洞共鳴の予測装置
52 処理部

Claims (13)

  1. 環状の空洞を有する構造体の内部に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、前記気体の解析モデルを作成する手順と、
    前記気体の解析モデルを、前記気体の解析モデルの子午断面内において一様な角速度で、前記構造体が周方向に回転する際の回転軸周りに回転させる手順と、
    前記気体の解析モデルが回転しているときにおける空洞共鳴の周波数を抽出する手順と、
    を含むことを特徴とする空洞共鳴の予測方法。
  2. 環状の空洞を有する構造体、及び前記構造体の内部に存在する気体を離散化数値解析手法でモデル化し、前記構造体の解析モデル、及び前記気体の解析モデルを作成する手順と、
    前記構造体の解析モデル又は前記気体の解析モデルのうち少なくとも一方を、前記気体の解析モデルの子午断面内において一様な角速度で、前記構造体が周方向に回転する際の回転軸周りに回転させる手順と、
    少なくとも前記気体の解析モデルに振動を励起する入力を与えて、前記入力に対する応答を計算する手順と、
    を含むことを特徴とする空洞共鳴の予測方法。
  3. 少なくとも空洞共鳴周波数を含む帯域内においては、前記入力に対する応答を計算する手順における周波数の分解能を2.5Hz以下とすることを特徴とする請求項2に記載の空洞共鳴の予測方法。
  4. 前記入力に対する応答を計算する手順においては、前記構造体が周方向に回転する際の回転軸周りにおける回転以外を拘束した状態とし、かつ入力を前記構造体の接地面の強制変位とするとともに、前記応答を前記回転軸の反力とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の空洞共鳴の予測方法。
  5. 前記気体の解析モデルの回転数は、前記構造体の回転数に対して予め定めた所定の割合とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法。
  6. 前記所定の割合は、0.80以上1.00以下であることを特徴とする請求項5に記載の空洞共鳴の予測方法。
  7. 前記気体の解析モデルに設定する前記気体の物性値は、空洞共鳴の周波数を抽出する際における雰囲気温度よりも高い温度における値を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法。
  8. 前記気体の物性値を設定する際の温度は、前記気体の解析モデルの回転速度が増加するにしたがって大きくなることを特徴とする請求項7に記載の空洞共鳴の予測方法。
  9. 前記構造体はタイヤであり、
    前記気体の解析モデルと、前記タイヤを離散化数値解析手法でモデル化したタイヤの解析モデルとを組み合わせて回転させ、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルとを連成させて空洞共鳴の周波数を抽出することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法。
  10. さらに、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルとに、ホイールを離散化数値解析手法でモデル化したホイールの解析モデルを組み合わせて回転させ、前記気体の解析モデルと前記タイヤの解析モデルと前記ホイールの解析モデルとを連成させて空洞共鳴の周波数を抽出することを特徴とする請求項9に記載の空洞共鳴の予測方法。
  11. 前記気体の解析モデルの形状は、前記空洞の形状に合わせて変形させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法。
  12. 前記気体の解析モデルは、定常輸送解析によって転動解析されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載の空洞共鳴の予測方法をコンピュータに実行させることを特徴とする空洞共鳴の予測用コンピュータプログラム。
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