JP2007146207A - 真空成膜方法、及び真空成膜装置 - Google Patents

真空成膜方法、及び真空成膜装置 Download PDF

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Abstract

【課題】
真空蒸着において基板表面に良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜方法、及び真空成膜装置を提供する。
【解決手段】
蒸着材料を真空中で脱ガス処理し、大気開放することなく成膜室へ供給し、前記蒸着材料の薄膜を基板へ成膜することを特徴とし、上記脱ガス処理が抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかであり、上記蒸着材料の脱ガス処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは水素ガスのいずれか1つの雰囲気中で行い、上記脱ガス処理後の蒸着材料の含水率が1.0%以下であることも特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、真空成膜装置に関し、さらに詳しくは、安定して均一な成膜が可能な真空成膜方法、及び真空成膜装置に関するものである。
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
また、「脱ガスのガス」は「空気、水、含水酸基物質などの成膜に寄与しない気化性不純物」、「真空成膜」は「真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、PVD、CVDなどを含む真空成膜」、及び「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
(背景技術)一般的な真空成膜装置は、蒸発材料(成膜材料、ターゲットともいう)、基板、坩堝、成膜材料の加熱機構、シャッター、排気機構によって構成される。蒸発材料は坩堝に充填され加熱される材料であり、成膜室は蒸着材料が基板まで到達し成膜する空間であり、シャッターは蒸発物質を基板まで一時的に到達しないように遮断する機構であり、排気機構は蒸発室から空気などを抜き取り真空とする機構である。
真空成膜装置の操作は、まず、蒸着材料を大気中で坩堝に充填する。蒸着材料の状態は粒状または粉体状、フレーク状などの固体であるが、大気中で坩堝に充填されるために蒸着材料中には空気が含まれたり、蒸着材料表面にも水蒸気や水酸基などが不可避的に吸着又は付着してしまう。
坩堝に充填された蒸着材料は成膜室で密閉され、排気機構が作動し成膜室は所定の気圧まで排気され、いわゆる真空状態になる。続いて加熱機構が働き蒸着のための蒸着材料の蒸発が始まる。しかし成膜室が真空状態になっても、蒸着材料に吸着又は付着した空気や水分(ガスと総称する)は加熱前に充分に抜け切らないので、最初にシャッターを閉じた状態で残存空気や気化不純物(ガスと総称する)も含めてある程度脱ガスしてから、次にシャッターを開いて基板への成膜を開始する。
しかし、この方法では、時間と材料が無駄になるだけでなく、坩堝に充填した材料の脱ガスまではできていないため、ガスが基板に到達し酸化や不純物混入の原因となり、膜質を悪化させる。また、水分は実際には成膜装置内にも吸着されており、成膜室内が加熱されるにしたがって除々に蒸着雰囲気に出てきて、成膜される膜に取り込まれてしまい、膜の組成が変化したり、基板の位置や時間的差で安定した膜質が得られず、電気的、物理的、及び化学的な性質に差が生じていた。
従って、真空成膜方法、及び真空成膜装置は、坩堝に充填した蒸着材料の空気や水分などの不純物を脱ガスし除去した後に、真空成膜室の真空を維持した状態で、真空成膜室内に供給することで、真空蒸着において基板表面に良質で安定した膜質を成膜できることがが求められている。また、プラズマガンの電力パワーの増大を不要とし、成膜開始時間が短くでき、蒸着速度も早く生産効率も高いことも求められている。
(先行技術)従来、ホッパーと振動フィダーを組み合わせることにより蒸着材料中の空気を脱気して坩堝に供給する連続真空蒸着機の原料供給装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、蒸着材料を蒸発させる機構にARガスなどの不活性ガスとともに粉体の材料を供給し高周波加熱により蒸発させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、坩堝に充填する蒸着材料中の空気や不純物を除去するとともに、真空蒸発装置の蒸発室の真空を維持した状態で、脱気された蒸着材料を蒸発室内に備えられた坩堝に供給可能な真空蒸着装置、並びに蒸着材料供給方法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、上記いずれの公報でも、脱ガスは不十分であり、貯留されている空気や吸着している水分などのガスは依然含まれており、蒸発した材料とともに基板に到達して膜質に悪影響を与えているという問題点がある。
特開平06−280016号公報 特開2003−231963号公報 特開2005−163184号公報
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、坩堝に充填した蒸着材料の空気や水分などの不純物を脱ガスし除去した後に、真空成膜室の真空を維持した状態で、真空成膜室内に供給することで、真空蒸着において基板表面に良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜方法、及び真空成膜装置を提供することである。
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる真空成膜方法は、蒸着材料を真空中で脱ガス処理し、大気開放することなく成膜室へ供給し、前記蒸着材料の薄膜を基板へ成膜するように、したものである。
請求項2の発明に係わる真空成膜方法は、上記脱ガス処理が、抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかを有するように、したものである。
請求項3の発明に係わる真空成膜方法は、上記蒸着材料の脱ガス処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは水素ガスのいずれか1つの雰囲気中で行うように、したものである。
請求項4の発明に係わる真空成膜方法は、上記脱ガス処理後の蒸着材料の含水率が1.0%以下であるように、したものである。
請求項5の発明に係わる真空成膜装置は、蒸着材料を真空中で脱ガス処理し、大気開放することなく成膜室へ供給し、前記蒸着材料の薄膜を基板へ成膜する真空成膜方法を行う真空成膜装置であって、巻取室と、成膜室と、脱ガス処理室とを備えるように、したものである。
請求項6の発明に係わる真空成膜装置は、上記脱ガス処理室が成膜室と開閉可能な仕切り板を介して遮断されて設置され、蒸着材料を脱ガス処理後に成膜室へ供給するように、したものである。
請求項7の発明に係わる真空成膜装置は、上記脱ガス処理室が抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかを有するように、したものである。
請求項1の本発明によれば、真空蒸着において基板表面に良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜方法が提供される。
請求項2〜3の本発明によれば、空気や水分などの不純物を脱ガスし除去した蒸着材料を真空成膜室内に供給でき、真空蒸着において基板表面により良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜方法が提供される。
請求項4の本発明によれば、水分を脱ガスし除去した蒸着材料を真空成膜室内に供給でき、真空蒸着において基板表面により良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜方法が提供される。
請求項5の本発明によれば、予め、空気や水分などの不純物を脱ガスし除去した蒸着材料を真空成膜室内に供給するので、真空蒸着において基板表面により良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜装置が提供される。
請求項6の本発明によれば、請求項5の効果に加えて、蒸発が開始するまでの時間が短く生産効率のよく、プラズマガンの電力パワーの増大も不要とし、また、蒸着速度も早くできる真空成膜装置が提供される。
請求項7の本発明によれば、請求項5〜6の効果に加えて、蒸着材料の空気や水分などの不純物をより脱ガスでき、基板表面により良質で安定した膜質を成膜できる真空成膜装置が提供される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の真空成膜装置の1実施形態を示す要部の断面図である。
(真空成膜装置)本発明の真空成膜装置は、図1に示すように、巻取式の真空成膜装置であり、巻取基材を搬送する巻取室と、該巻取室とシャッターで区切られ成膜室と、該成膜室と仕切り板によって区切られた脱ガス処理室とから構成されている。該脱ガス処理室は成膜室とシャッターで区切られており、巻取室と成膜室とはシャッターで仕切りされている。脱ガス処理室と成膜室とには、所定位置(図1の図示例では成膜室の左側壁、及び脱ガス処理室の右側壁)に配設された圧力勾配型プラズマガンとを備えている。なおこの位置には電子線照射機構を備えていても良い。該真空成膜装置には、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、PVD、CVDなどを含む真空成膜装置である。
(巻取室)基材を搬送する巻取室には、長尺状である基材の巻出ロール1、巻取ロール2、成膜ドラム3と真空排気口が配設され、成膜室内の下部には、成膜材料を充填させるるつぼ7と回転機構を有するるつぼ支持台8、アノード磁石9が配設されている。また、成膜室に配設された圧力勾配型プラズマガン5には、収束用コイル、シート化磁石、圧力勾配型プラズマガンへのアルゴンガスなどの不活性ガス(キャリアガス)の供給量を調整するためのバルブが配設され、成膜室には、真空排気口、反応ガス供給口が設けられている。
また、本装置には、真空成膜室と蒸着材料の脱ガス処理室の間に仕切り板を設けており、閉じることでそれぞれ気体の移動を遮断できる。蒸着材料を充填しているるつぼは、蒸着材料の脱ガス処理を行った後に、成膜室へ搬送できるよう真空成膜室と蒸着材料の脱ガス処理室間を移動できる機構を有し、るつぼの支持体には回転機構を有している。蒸着材料の脱ガス処理室には、真空蒸着室と同様圧力勾配型プラズマガンを備えており、収束用コイル、シート化磁石、圧力勾配型プラズマガンへのアルゴンガスなどの不活性ガス(キャリアガス)の供給量を調整するためのバルブが配設され、真空排気口、不活性ガス供給機構が設けられている。プラズマガンにより蒸着材料を加熱するが、同時に回転体のテーブル下に抵抗加熱体等の加熱装置を備えることによりるつぼを加熱し、るつぼ下の材料も同時に加熱を行うことができる。なおこの加熱に際して抵抗加熱装置、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置等を用いても良い。
(脱ガス処理室)上記のような本発明の真空成膜装置では、成膜室とは仕切り版で遮蔽された蒸着材料の脱ガス処理室によって、蒸着材料を加熱することができ、これにより蒸着材料中に含有されている水分を除去することができる。また、充分に脱水を行なうには、時間は短ければ短いほど望ましいが、たとえばプラズマガンによるかねつでは30分以上行なうことが望ましい。また部屋を分けることにより処理により蒸発しチャンバー壁などに吸着する水分の影響を蒸着時に抑えることができる。また、圧力勾配型プラズマガンで発生したプラズマビームは収束用コイルにより収束され、シート化磁石とアノード磁石で形成されている磁界に導かれて蒸着材料に照射される。そして、蒸着材料は照射されるプラズマビームに対して90°の角度をなす回転軸で回転機構によって回転される。
(水分量)蒸着材料の加熱による脱ガス処理後の材料に含まれる水分量は、好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。材料中の水分含有率は、カールフィッシャー水分測定装置で測定した値である。この範囲を超えると、蒸着材料から脱ガスが発生し、基板表面に良質で安定した膜質を成膜することが難しい。
(材料供給装置)また、必要に応じて連続供給可能な材料供給装置11を設けても良い。この材料供給機構は加熱処理機構を有しており成膜室と仕切り板にて遮断された部屋にて処理可能な機構を有している。排気系も成膜室の排気と別に用意し排気を行なう。
(真空成膜方法)次に、上述のような本発明の真空成膜装置を用いた真空成膜方法について説明する。まず、回転装置に装着したるつぼに蒸着材料を充填したのち、蒸着材料の脱ガス処理室に設置し真空引きを行う。このとき、蒸着材料の脱ガス処理室と成膜室および巻取室はそれぞれ独立で真空引きを行う。次に加熱装置によってるつぼ7を加熱しながら、アルゴンガスなどの不活性ガスを導入した圧力勾配型プラズマガン5にプラズマ生成のための電力を投入し、アノード磁石の上方近傍に位置する蒸着材料にプラズマビームを収束させて照射することにより蒸着材料を加熱すると同時にるつぼ支持台8下部に配置した抵抗加熱体によりるつぼを加熱し、蒸着材料に含有されている水分および吸着ガスなどを脱ガスして除去する。なお、脱ガスするガスとは、空気、水、含水酸基物質などの成膜に寄与しない気化性不純物をいう。
(脱ガス)脱ガス処理室の加熱装置10としては、特に限定されないが、好ましくは、抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、又はプラズマ発生装置であり、特に好ましくは、電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかを有するようにする。脱ガスする加熱装置による蒸発材料の加熱温度は、水分を充分に蒸発除去する温度、例えば、50〜200℃程度好ましくは200℃以上に設定することが好ましい。さらに好ましくは、材料の融点もしくは昇華点より低い温度内で、高温で加熱することが望ましい。使用する蒸着材料としては、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化インジウム錫(ITO)等を挙げることができる。また、回転装置による蒸着材料Tの回転速度は、例えば0.01〜1rpm程度の範囲で設定することができる。
(成膜)次に蒸着材料の脱ガス処理室が充分に冷却し、蒸着室との真空度差が1桁以内におちついた後、成膜室と蒸着材料の脱ガス処理室間の仕切り板をあけて、成膜室へ材料を移動させる。移動が完了したのち、仕切り板は閉じられ、さらに所定の圧力にいたるまで減圧される。ついで、反応ガス供給口から成膜室内に所定の反応ガスを導入し、成膜室内を所定の圧力に保ち、巻取室の基材搬送系を起動し基材をを走行させる。次に、回転装置によりるつぼを回転させている状態で、アルゴンガスなどの不活性ガスを導入した圧力勾配型プラズマガンにプラズマ生成のための電力を投入し、アノード磁石の上方近傍に位置する蒸着材料にプラズマビームを収束させて照射することにより成膜材料を蒸発させる。これにより、成膜材料の蒸発分子が高密度プラズマによりイオン化し、基材に付着して薄膜が形成される。
(効果)本発明の真空成膜方法によれば、蒸着材料の蒸発開始前に、予め蒸着材料の水分などの不純物が脱ガスされ除去されているので、次のような効果がある。
(1)プラズマビーム照射開始から蒸着材料の蒸発開始までの時間が短く、生産効率を高くできる。(2)蒸発を継続させるために圧力勾配型プラズマガンに投入する電力パワーを増大させる必要がなく、生産性が高い。(3)予め水分などのガスが脱ガスされ除去されていることにより、スプラッシュなどの突発的な蒸発も抑えられるので、基板表面に良質で安定した膜質を成膜できる。(4)圧力勾配型プラズマガンから照射されるプラズマビーム内で回転される蒸着材料は、プラズマビームに均一に曝されるため、蒸発による減少が均一となり、プラズマビームが照射される面は常に整面状態であり、これにより成膜材料の蒸発後の飛翔方向が安定し、被成膜体への安定性が安定したものとなるので、膜の組成が変化しにくく、基板の位置や時間的差でも安定した膜質が得られる。その結果、成膜された膜の電気的、物理的、及び化学的な性質に差が生じにくく、巻取り基材による連続操業でも、安定した膜質を得ることができる。
例えば、厚さが12μmのPETフィルムへ、本発明の真空成膜方法によって、厚さが100nmの酸化珪素膜を成膜して得られたガスバリアーフィルムの酸素透過率は1.1cc/m2/day・atm以下であった。4000mを連続走行した得られた蒸着巻取り基材のスタート及びエンド部の酸素透過率にも有意な差はなく、優れたバリア性を有し、時間的な差のでる長尺の連続走行でも安定した膜質が得られていた。なお、酸素透過度は、酸素過率測定装置オキシトラン3/31(米国MOCON社製、商品名)を用い、23℃90%Rhの条件で測定し、単位は(cc/m2・day・atm)である。
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、本発明の真空成膜方法で形成される真空成膜の原子組成は、酸化珪素(SiOx、x=1〜2)、窒化珪素(SiNy、y=1〜2)、酸化窒化珪素(SiOxNy、x=0.1〜1.9、y=0.1〜1.9)程度の範囲であればよい。また、厚さ方向及び/又は面幅方向の全層にわたって均一でない場合もあり、さらに、真空成膜の表面への不可避的な酸化や吸着などによる物質を含有する場合も含むものである。
(実施例1)本発明の真空成膜装置として、図1に示すような圧力勾配型プラズマガンを備えた巻き取り式のホロカソード型イオンプレーティング装置を準備した。このイオンプレーティング装置は、蒸着させるための成膜室と、材料を加熱するための蒸着材料の脱ガス処理室を備えたものとした。そして、0.5〜5mm粒のシリカを押し固めて充填させたるつぼを蒸着材料処理室のるつぼ支持体上に装着させた。
次に、蒸着材料の脱ガス処理室の真空引きを行い、1×10-1Pa以下の圧力まで減圧した。ついでるつぼを0.1rpmの回転速度で回転させながら、加熱装置およびプラズマ処理によって蒸着材料の温度が180℃となるような加熱処理(60分間)を施し、室内の温度が50℃になるまで放置した。
ついで、基板として巻取状の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、PETフィルムE5100、厚み12μm、幅30cm)フィルムを準備し、この基材フィルムのコロナ未処理面側を蒸着面として巻取基材搬送室に装着した。なお、この基材フィルムと成膜材料との距離(TS距離)は約70cmに設定した。
次に成膜時の添加ガスとして、アルゴンガス(大陽日酸(株)製(純度99.999%以上))を準備した。
次にチャンバー内を到達真空度1×10-1Paまで減圧した。ついで、成膜室と蒸着材料の脱ガス処理室との仕切り板を開け、加熱処理済みのシリカを成膜室に搬送したのち、再び仕切り板を閉じた。引き続き真空引きを行い到達真空度7.0×10-4Paまで減圧した。
真空度を確認した後、基材フィルムを走行させ、アルゴンガスを流量15sccmで導入した圧力勾配型プラズマガンにプラズマ生成のための電力を10kW投入し、アノード磁石の上方近傍で回転している成膜材料にプラズマビームを収束させて照射し、装置内圧力を1.1×10-1Paに保持した。該プラズマビームは成膜材料の回転軸に対して約90°の角度で照射されるものとした。このようなプラズマビームの照射開始から約2分後に回転状態の成膜材料からの蒸発が始まった。その後、回転状態の蒸着材料の蒸発を継続させ、高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、基材フィルム上に酸化珪素からなるバリア層を形成して、バリアフィルムを得た。基材フィルムの走行速度は、成膜開始時点で形成される酸化珪素膜の膜厚が100nmとなるように設定した。なお、sccmとはstandard cubic centimeter per minuteの略であり、以下の実施例及び比較例においても同様である。
また、上記の連続蒸着の最終部位であるバリアフィルムについて、酸化珪素の厚みを測定した結果約100nmであり、成膜直後と同等の成膜性が維持されていることが確認された。さらに、このバリアフィルムについて、下記の条件で酸素透過率を測定した。その結果、酸素透過率は1.1cc/m2/day・atmであり、優れたバリア性を有していた。
(実施例2)本発明の真空成膜装置として、実施例1に蒸着材料供給機構を設けて成膜中に加熱処理を施した材料を供給した以外は実施例1と同様に行なった。
蒸着加熱処理室に材料を充填したるつぼをセットすると同時に、材料供給機構にも0.5〜5mm粒のシリカをセットし、蒸着材料の脱ガス処理室の真空引きを行い、1×10-1Pa以下の圧力まで減圧した。ついで加熱装置によって蒸着材料の温度が180℃となるような加熱処理(60分間)を施し、室内の温度が50℃になるまで放置した。
ついで、蒸着室と蒸着材料の脱ガス処理室との仕切り板を開け、加熱処理済みのシリカを蒸着室に搬送すると同時に材料供給機構の材料も成膜室へと搬送し、再び仕切り板を閉じた。引き続き真空引きを行い成膜室を到達真空度7.0×10-4Paまで減圧した。
真空度を確認した後、基材フィルムを走行させ、アルゴンガスを流量15sccmで導入した圧力勾配型プラズマガンにプラズマ生成のための電力を10kW投入し、アノード磁石の上方近傍で回転している成膜材料にプラズマビームを収束させて照射するとともに、窒素ガスを流量200sccmで導入して装置内圧力を1.1×10-1Paに保持した。その後、回転状態の蒸着材料の蒸発を継続させるとともに材料供給機構から蒸着後の部分へ材料を供給していき、成膜終了まで材料が切れないように供給した。材料を供給しながら高密度プラズマにより蒸発分子をイオン化させて、基材フィルム上に酸化窒化珪素からなるバリア層を形成して、バリアフィルムを得た。基材フィルムの走行速度は、成膜開始時点で形成される酸化窒化珪素膜の膜厚が100nmとなるように設定した。
また、上記の連続蒸着の最終部位であるバリアフィルムについて、酸化窒化珪素の厚みを測定した結果103nmであり、蒸着直後と同等の蒸着性が維持されていることが確認された。さらに、このバリアフィルムについて、下記の条件で酸素透過率を測定した。その結果、酸素透過率は0.9cc/m2/day・atmであり、優れたバリア性を有していた。また、材料供給機構に残っていた処理済みの蒸着材料の水分を測定した結果、0.4%の水分量であった。
(実施例3)本発明の真空成膜装置として、図1のプラズマガンの代わりに電子銃を装備した装置を準備した。そして、1〜7mm粒の一酸化珪素を押し固めて充填させたるつぼを蒸着材料処理室のるつぼ支持体上に装着させた。
次に、蒸着材料処理室の真空引きを行い、1×10-1Pa以下の圧力まで減圧した。ついでるつぼを0.1rpmの回転速度で回転させながら、るつぼ下の抵抗加熱装置によって蒸着材料の温度が180℃となるような加熱処理(80分間)を施し、室内の温度が50℃になるまで放置した。
基材フィルムとしてロール状の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーS−10、厚み12μm、幅300mm)を準備し、巻取り搬送機構に装着した。次に、真空蒸着装置のチャンバー内を、到達真空度4.0×10-3Paまで減圧した。
次に、蒸着チャンバーのコーティングドラムの近傍に窒素ガスを流量150sccmで導入し、真空ポンプと蒸着チャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、成膜時のチャンバー内の圧力を9.0×10-2Paに保った。そして、電子銃を用い、約10kWの電力を印加して、銅製るつぼ内の蒸発源を加熱して蒸発させ、コーティングドラム上を走行する基材フィルム上に酸化窒化珪素の薄膜を形成した。基材フィルムの走行速度は、酸化珪素薄膜の膜厚が100nmとなるように60m/minに設定した。
また、上記の連続蒸着の最終部位であるバリアフィルムについて、酸化窒化珪素の厚みを測定した結果106nmであり、蒸着直後と同等の蒸着性が維持されていることが確認された。さらに、このバリアフィルムについて、下記の条件で酸素透過率を測定した。その結果、酸素透過率は0.9cc/m2/day・atmであり、優れたバリア性を有していた。
(実施例4)本発明の真空成膜装置として、蒸着室のプラズマガンの代わりにスパッタ装置を準備した。そして、60%の焼結密度を有する窒化珪素をターゲット材としてチャンバー内に搭載した支持体上に装着させた。
次に、蒸着材料処理室の真空引きを行い、1×10-3Pa以下の圧力まで減圧した。ついでるつぼを0.1rpmの回転速度で回転させながら、N2ガスを1.0×10-1Paになるように導入したのちプラズマ処理によって蒸着材料の温度が180℃となるような加熱処理(60分間)を施し、室内の温度が50℃になるまで放置した。
基材フィルムとして、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績(株)製、PETフィルムE5100、厚み12μm、幅300mm)を準備し、この基材フィルムのコロナ未処理面側を被成膜面として、バッチ式スパッタリング装置(アネルバ(株)製、SPF−530H)のチャンバー内に裁置した。また、同時に酸化珪素ターゲットと基材フィルムとの距離(TS距離)は50mmに設定した。
次に、成膜時の添加ガスとしてアルゴンガスを準備した。
次に、チャンバー内を、油回転ポンプおよびクライオポンプにより到達真空度2.5×10-3Paまで減圧した。次いで、チャンバー内にアルゴンガスを流量20sccmで導入するとともに、窒素ガスを60sccmで導入し、真空ポンプとチャンバーとの間にあるバルブの開閉度を制御することにより、チャンバー内圧力を0.25Paに保ち、RFマグネトロンスパッタリング法により、投入電力1.2kWで基材フィルム上に厚み100nmの窒化珪素膜からなるバリア層を形成して、バリアフィルムを得た。
また、上記の連続蒸着の最終部位であるバリアフィルムについて、窒化珪素の厚みを測定した結果102nmであり、蒸着直後と同等の蒸着性が維持されていることが確認された。さらに、このバリアフィルムについて、下記の条件で酸素透過率を測定した。その結果、酸素透過率は0.5cc/m2/day・atmであり、優れたバリア性を有していた。
(比較例1)成膜材料に加熱処理を施さず真空蒸着室に材料を充填したるつぼをセットした以外は実施例1と同様にして、バリアフィルムを作製した。
このバリアフィルム作製では、プラズマビーム照射開始から蒸着材料の蒸発開始まで約10分を要した。また基材フィルムに対して蒸着を行ったがスプラッシュが発生するなど成膜が不安定となった。そして、酸化珪素膜の厚みを測定した結果、約80nmであり、蒸着性が低いことが確認された。また、このバリアフィルムについて、実施例と同様に酸素透過率を測定した結果、19cc/m2/day・atmであり、実施例に比べてバリア性が劣っていた。
(比較例2)成膜材料および材料供給機構に充填した材料を加熱処理せずに、成膜した以外は、実施例2と同様にして、バリアフィルムを作製した。
このバリアフィルム作製では、プラズマビーム照射開始から蒸着材料の蒸着開始まで10分を要した。また基材フィルムに対して蒸着を行なったがスプラッシュが発生するなど成膜は不安定であった。そして、酸化窒化珪素膜の厚みを測定した結果、約70nmであり、蒸着性が低いことが確認された。また、このバリアフィルムについて、実施例と同様に酸素透過率を測定した結果、24cc/m2/day・atmであり、実施例に比べてバリア性が劣っていた。また、材料供給機構に残っていた未処理の蒸着材料の含水率は2.0%であった。
(比較例3)成膜材料に加熱処理を施さず真空蒸着室に材料を充填したるつぼをセットした以外は実施例3と同様にして、バリアフィルムを作製した。
このバリアフィルム作製では、電子銃を用い、約10kWの電力を印加して、銅製るつぼ内の蒸発源を加熱して蒸発させ蒸発開始まで約7分を要した。また基材フィルムに対して蒸着を行ったがスプラッシュが発生するなど成膜が不安定となった。そして、酸化窒化珪素膜の厚みを測定した結果、約80nmであり、蒸着性が低いことが確認された。また、このバリアフィルムについて、実施例と同様に酸素透過率を測定した結果、22cc/m2/day・atmであり、実施例に比べてバリア性が劣っていた。
(比較例4)成膜材料に加熱処理を施さず真空蒸着室に材料を充填したるつぼをセットした以外は実施例4と同様にして、バリアフィルムを作製した。
このバリアフィルム作製では、投入電力1.2kWを印加して厚みが100nmとなるように成膜を行なった。また基材フィルムに対して蒸着を行ったが異常放電が発生するなど成膜が不安定となった。そして、窒化珪素膜の厚みを測定した結果、約115nmであり、蒸着安定性が低いことが確認された。また、このバリアフィルムについて、実施例と同様に酸素透過率を測定した結果、7.1cc/m2/day・atmであり、実施例に比べてバリア性が劣っていた。
本発明の真空蒸着装置の一実施形態を示す模式的な断面図である。
符号の説明
1:巻出ロール
2:巻取ロール
3:成膜ドラム
4:シャッター
5:プラズマガン
6:仕切板
7:るつぼ
8:るつぼ支持台
9:磁石
10:加熱装置
11:蒸着材料供給装置

Claims (7)

  1. 蒸着材料を真空中で脱ガス処理し、大気開放することなく成膜室へ供給し、前記蒸着材料の薄膜を基板へ成膜することを特徴とする真空成膜方法。
  2. 上記脱ガス処理が、抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかを有することを特徴とする請求項1記載の真空成膜方法。
  3. 上記蒸着材料の脱ガス処理を、窒素ガス、アルゴンガスもしくは水素ガスのいずれか1つの雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の真空成膜方法。
  4. 上記脱ガス処理後の蒸着材料の含水率が1.0%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の真空成膜方法。
  5. 蒸着材料を真空中で脱ガス処理し、大気開放することなく成膜室へ供給し、前記蒸着材料の薄膜を基板へ成膜する真空成膜方法を行う真空成膜装置であって、巻取室と、成膜室と、脱ガス処理室とを備えることを特徴とする真空成膜装置。
  6. 上記脱ガス処理室が成膜室と開閉可能な仕切り板を介して遮断されて設置され、蒸着材料を脱ガス処理後に成膜室へ供給することを特徴とする請求項5記載の真空成膜装置。
  7. 上記脱ガス処理室が抵抗加熱装置、ヒーター、赤外線ランプ、高周波誘導加熱装置、電子銃による電子線照射装置、プラズマ発生装置のいずれかを有することを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載の真空成膜装置。
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