JP2007145053A - シートベルト巻取り装置及びシートベルト巻取りシステム - Google Patents

シートベルト巻取り装置及びシートベルト巻取りシステム Download PDF

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Abstract

【課題】シートベルトによる乗員への締め付け力を十分に適正化できるシートベルト巻取り装置及びシートベルト巻取りシステムを提供する。
【解決手段】車輌Sの座席6に着座した乗員25を拘束するシートベルト2と、このシートベルト2の一方側を引き出し可能に巻き取るリトラクター3と、このリトラクター3のシートベルト巻取り軸10と同軸上で連結されたばね巻軸11aと、このばね巻軸11aに一端が固定されて巻回され上記シートベルト2を巻取り方向に付勢するぜんまいばねSPとから成り、このぜんまいばねSPが加熱の度合により所望の引張り力に形状回復する形状記憶合金で構成される。
【選択図】 図5

Description

本発明は、シートベルトを巻き取るシートベルト巻取り装置及びシートベルト巻取りシステムに関する。
従来より、車輛の衝突時に生じる加速度による乗員の急激な移動を拘束し、乗員の身体の安全を図る装置としてシートベルト装置が知られている。
このシートベルト装置は、シートベルトにトングを挿通して当該シートベルトの一端を車体に固定し、このシートベルトの他端をシートベルト巻取り装置(リトラクター)で巻取り、かつ上記トングを車体に固定されたバックル装置に差し込んでシートベルトを懸吊支持する3点支持構造で構成されている。
このリトラクタには、シートベルトを懸吊支持した装着時、またはバックル装置からシートベルトを離脱した際に所定の巻取り力を発生するぜんまいばねを備えている(例えば特許文献1や特許文献2参照)。
特開2004−314744号公報 特開2004−338614号公報
ところで、これら従来のシートベルト巻取り装置におけるぜんまいばねの巻取り力は、(ばねの引き出し量による巻取り力の増減はあるもののそれ以外は)固定的であった。このため、シートベルトの装着時における乗員に対する締めつけ力が、乗員の体格(大人、子供、男女、痩せ形、太り形など)や、車輛のシートの前後位置、傾斜角度、或いは車種別によるシートベルトの始点、終点の位置関係などの各種条件によっては、例えば、大型の体格の乗員がシートベルトを装着した時は多少の圧迫感を感じたり、又は小型の体格の乗員がシートベルトを装着した時は多少緩く感じる等、当該乗員にとって十分に適正とはならない可能性があり、改善の余地があった。
本発明の目的は、シートベルトによる乗員への締め付け力を十分に適正化できるシートベルト巻取り装置及びシートベルト巻取りシステムを提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明は、車輌の座席に着座した乗員を拘束するシートベルトの一方側を引き出し可能に巻き取るシートベルト巻取り軸と、このシートベルト巻取り軸に連結され前記シートベルトの巻取り方向に付勢するぜんまいばねとを有し、このぜんまいばねを、温度に依存した形状回復機能を備えた形状記憶合金で構成したことを特徴とする。
これにより、例えば加熱等により温度を変化させることで、ぜんまいばねの引っ張り力を所望の態様に制御することができる。この結果、シートベルトの締め付け力の適正な調整を、乗員の体格や、車輛のシートの前後位置、傾斜角度、或いは車種別によるシートベルトの始点、終点の位置関係などの各種条件に応じ、簡素な構造で容易に行うことが可能となる。また、バックルとシートベルトとの連結が開放された際、ぜんまいばねの引っ張り力を強くしてシートベルトを瞬時に巻き取ることも可能となる。
第2発明は、上記第1発明において、前記ぜんまいばねは、発熱時に形状が変化し引張り力の強さが変化するように、通電により発熱する導通材で構成されていることを特徴とする。
ぜんまいばねに通電することで自ら発熱させ、温度を変化させることで、ぜんまいばねの引っ張り力を所望の態様に制御することができる。
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記ぜんまいばねを収容するケースと、このケースの外面に設けられ、車輌側から前記ぜんまいばねに電源電圧を供給するための電源コードを接続するコネクターとを有することを特徴とする。
これにより、車輌側から電源電圧を供給するに際し、巻取り装置側の配線をコネクターで一体的に形成することで、車輌側からの配線は当該コネクターまで所定の電源コードを延設するだけで足りる。この結果、車輌側配線を簡素化し、車輛側のレイアウトの自由度を向上させることができる。
第4発明は、上記第3発明において、前記コネクターと前記ぜんまいばねとを導通接続する接続手段を有していることを特徴とする。
コネクターから接続手段を介してぜんまいばねに通電することができる。
第5発明は、上記第3又は第4発明において、前記ケースを、耐熱性の材質で構成したことを特徴とする。
耐熱性の材質を用いることでケースの昇温が抑制され、外部への放熱を防止することができる。
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記ぜんまいばねは、外表面が絶縁剤により被覆されるか、または外表面に絶縁性のグリスが塗布されていることを特徴とする。
これにより、ぜんまいばねにおける電気的短絡の発生を防止しつつぜんまいばねに通電して発熱させることができるとともに、ぜんまいばね同士の接触による摺動抵抗が低減されるので、上記ぜんまいばねを、巻取り、展開時に効率良く作用させることができる。
上記目的を達成するために、第7発明は、車輌の座席に着座した乗員を拘束するシートベルトの一方側を引き出し可能に巻き取るシートベルト巻取り軸、及び、前記シートベルト巻取り軸に連結されて前記シートベルトの巻取り方向に付勢するぜんまいばねを有し、このぜんまいばねが、通電により発熱する導通材で構成され温度に依存した形状回復機能を備えた形状記憶合金で構成されたシートベルト巻取り装置と、前記ぜんまいばねへの通電を制御する通電制御手段とを有することを特徴とする。
これにより、通電制御手段が、乗員の体格や、車輛のシートの前後位置、傾斜角度、或いは車種別によるシートベルトの始点、終点の位置関係などの各種条件に応じて通電制御を行うことで、シートベルトの締め付け力を適正に調整することが可能となり、上記車種等の設置条件に応じて初期引張り力の値を設定したり、さらには、ぜんまいばねへの印加電圧パターンを予め複数設定しておき、ぜんまいばねの初期引張り力は低いが通電時の引張り力が強く、またはその逆とする等、適宜にパターン選択して用いることも可能である。また、バックルとシートベルトとの連結が開放されたことに連動して通電制御を行いぜんまいばねの引っ張り力を強くしてシートベルトを瞬時に巻き取ったり、さらに時間差を設けて連結解放時より遅延させて通電切換えや通電制御を行うことも可能となる。
本発明によれば、シートベルトによる乗員への締め付け力を十分に適正化することができる。
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るシートベルト巻取り装置を備えたシートベルト装置の全体構造を表す正面図、図2はその斜視図である。
図1及び図2において、シートベルト装置1は、車輌Sの座席6に着座した乗員25を拘束するシートベルト(ウェビング)2と、このシートベルト2の一方側を引き出し可能に巻き取るリトラクター(シートベルト巻取り装置)3と、シートベルト2に摺動可能に設けたトング5と、このトング5と係合するバックル装置7とを備えている。
シートベルト2は、その一方側が上記リトラクター3により巻き取られると共に、その途中が車輛SのセンターピラーP内側上部に支持軸を介して揺動自在に支持されたショルダーアンカー4に通され、他方側端部が止め具8により例えば車体床面に回動可能に接続されている。またシートベルト2は、拘束された当該乗員25の下腹部を押える下腹部押えベルト部2bと胸部を抑える胸部押えベルト部2aとを有している。そして、上記下腹部押えベルト部2b側におけるトング5の挿通口(図示せず)近傍には、例えばカシメまたは熱溶着などでシートベルト2に突設状態で装着された規制部材としてのボタンストッパSBが設けられている。
図3は、リトラクターの全体概略構造の一例を表す縦断面図である。図3において、リトラクター3は、フレーム9と、シートベルト2を巻き取るスプール10(シートベルト巻取り軸)と、捩れ変形可能な材料で構成されたトーションバー11と、緊急時に発生する大きな車両減速度を感知して作動する減速度感知手段12と、スプール10の少なくともベルト引出方向の回転を阻止するロック機構13と、渦巻ばね(後述するぜんまいばねSP)を収容したスプリングケース14と、緊急時に作動しベルト巻取りトルクを発生するプリテンショナー15と、このプリテンショナー15のシートベルト巻き取りトルクを上記スプール10に伝達するブッシュ16とを有している。
ロック機構13は、パウル17を揺動可能に保持するロッキングベース18と、ロックギヤ19とを備えている。ロックギヤ19は、公知の構成で足りるため詳細な構造の図示は省略するが、通常時はトーションバー11と一体回転する一方、緊急時は減速度感知手段12の作動で停止してトーションバー11との間に相対回転差を発生させ、これによってパウル17をフレーム9の側壁の内歯20に係合させる。この結果、ロッキングベース18(言い換えればスプール10)のシートベルト引出方向の回転が阻止されるようになっている。なお、このとき、詳細な図示を省略するが、シートベルト2の急激な引出し時にも、ロック機構13のロッキングベース18がロックギヤ19に対してシートベルト引出し方向に相対回転するようになっており、これによって上記と同様にしてシートベルト2の引き出しが阻止されるようになっている。
トーションバー11は、スプール10の内周側(詳細には径方向中心側)に軸方向に貫通するように遊嵌配置されている。またこのトーションバー11は、その軸方向一方側(図3の左側)に位置しスプール10の軸方向他方側と相対回転不能に係合するトルク伝達部21と、その軸方向他方側(図3の右側)に位置しロッキングベース18と相対回転不能に係合される(言い換えればロッキングベース18に一体回転可能に支持される)トルク伝達部22とを備えており、スプール10とロック機構13とを回転的に連結する機能を果たす。
スプール10は、シートベルト2の巻き取りを行う本体円筒部10aと、この本体円筒部10aより大きな外径を備えた大径円筒部10bとを備えており、フレーム9の両側壁間に回転可能に支持されている。またスプール10は、スプリングケース14内のぜんまいばねSPの引張り力(トルク)によリ、ブッシュ23、トーションバー11、トーションバー11の第2トルク伝達部21、及びブッシュ16を介して常時シートベルト巻取方向に付勢されている。このような構造の結果、トーションバー11の軸方向一方側(図3の左側)はスプール10と一体回転可能に接続されている。また、プリテンショナー15の作動時には、プリテンショナー15で発生したベルト巻取りトルクがブッシュ16を介してスプール10に伝達され、これによりスプール10はシートベルト2を所定量巻き取るようになっている。
なお、スプール10とロッキングベース18の軸部18aとの間には、環状の相対回転ロック部材24が配設されている。この相対回転ロック部材24は、内周面に雌ねじ(図示せず)が形成されてロッキングベース軸部18aに形成された雄ねじ(図示せず)に螺合されるとともに、スプール10の軸方向孔に相対回転不能にかつ軸方向移動可能に嵌合されている。そして、スプール10がロッキングベース18に対してベルト引き出し方向に相対回転すると、相対回転ロック部材24がスプール10と一体回転して図3中右方に移動するようになっている。
図4は、上記スプリングケースの全体正面図である。図5は初期状態におけるぜんまいばねを表す図であり、(A)は一部断面を示すスプリングケースの上面図、(B)は一部断面を示すスプリングケースの正面図である。図6はシートベルト装着時におけるぜんまいばねを表す図であり、(A)は一部断面を示すスプリングケースの上面図、(B)は一部断面を示すスプリングケースの正面図である。
これら図4〜図6及び前述の図3において、ぜんまいばねSPは、導通可能な材質であって、通電による発熱で引張り力の強さが変化する(例えば強化する)性質を備えた形状記憶合金で構成されている。その材質は、例えば、形状記憶特性が良く耐食性が優れた、Ti(チタン)とNi(ニッケル)が1:1の割合の化合物で構成されている。この化合物は、低温でのマルテンサイト相では柔らかくて発生する力が小さく、高温のオーステナイト相(母相)では堅くて発生する力が強い特徴を有しており、ぜんまいばねSPでは、低温マルテンサイト相状態で予め与えられた引張歪(予ひずみ)が、加熱によりオーステナイト相に逆変態するときに生じる圧縮力として利用するようになっている。
このようなぜんまいばねSPは、上記スプール10を支持するトーションバー11の軸方向一方側軸端11a(ばね巻軸)に一端が固定されて巻回され、他端側は上記スプリングケース14内の一部に接続されている。このとき、ぜんまいばねSPは、例えばその外表面が絶縁剤により被覆されるか絶縁性のグリスが塗布されており、これによってぜんまいばねSPにおいて電気的短絡が発生することなく通電して発熱させることができるようになっている。また、ぜんまいばねSP同士の接触による摺動抵抗も低減されることから、上記ぜんまいばねSPを、巻取り、展開時に効率良く作用させることも可能である。
上記スプリングケース14の側面には、図4に示すように車輛S側の電源を供給するためのコネクター26が一体的に設けられている。また、ぜんまいばねSPの両端には、図示しない電極(端子)を有しており、これら端子は、スプリングケース14の外側面に取付けられたコネクター26から導出した2本の電源コード28a,28b(接続手段)にスプリングケース14内で接続されている。
このようにリトラクター3側の配線をコネクター26で一体的に形成することで、車輌側から電源電圧を供給するに際し、車輌側からの配線は当該コネクター26まで所定の電源コード(図示せず)を延設するだけで足りる。この結果、車輌側配線を簡素化し、車輛側のレイアウトの自由度を向上させることができる。
また、スプリングケース14は耐熱性の材質で構成され、上記スプリングケース14の昇温が抑制されるようになっている。
ここで、本実施形態においては、ぜんまいばねSPへの通電制御手段として、シートベルト2のトング5と係合するバックル装置7に設けられそのトング5の着脱を検出する公知のバックルセンサー(図示せず)に応じぜんまいばねSPの通電を切り替える図示しない電源スイッチが(例えばフロントパネルやバックル装置7やリトラクター1等、車内の適宜の箇所に)設けられている。
例えば、乗員25が乗車直後、シートベルト2のトング5とバックル装置7が非係合状態では、上記電源スイッチがOFF状態にあってぜんまいばねSPは非通電状態であり、図5(A)、(B)に示すように渦巻き状に巻回した径が拡径した状態となる。この結果、この初期状態では、引張り力が所望の弱い設定力に設定される(初期引張り力)ので、シートベルト2は軽く引出せる状態となる。
次に、乗員25の操作でシートベルト2のトング5とバックル装置7とが係合されると、上記電源スイッチがON状態になり、ぜんまいばねSPが通電により発熱して所定温度に加熱され、ぜんまいばねSPが形状回復して図6(A)、(B)に示すように上記渦巻き状に巻回した径が縮径した状態となり、引張り力の強さが増大される。
このときの引っ張り力の強さは、加熱により温度の昇温値、すなわち電流又は電圧の値によって調整することができることから、このような通電制御によって、ぜんまいばねSPの引っ張り力を所望の態様に制御することが可能である。この結果、乗員の体格や、車輛Sの座席6の前後位置、傾斜角度、或いは車種別によるシートベルト2の始点、終点の位置関係などの各種条件に応じ、シートベルト2の締め付け力の適正な調整を簡素な構造で容易に行うことが可能となる。
その後、乗員25が降車前に、シートベルト2のトング5とバックル装置7との係合を解除すると、上記電源スイッチが再びOFF状態にあってぜんまいばねSPは非通電状態となり、再び図5(A)、(B)に示すように渦巻き状に巻回した径が拡径した状態となって、引張り力が再び弱くなる。
しかしながら、この降車時の巻取り力の向上を図りたい場合には、上記のようなトング5の着脱に応じた単純な電源スイッチのON・OFF切替でなく、通電制御手段を構成する別途のスイッチ等を設けて、降車後にも所定の時間だけ上記通電を維持するようにしたり(この場合はタイマーにより計時を行い、所定時間経過後に通電をOFFにする)、あるいはさらに上記図6(A)、(B)の状態よりもさらに縮径させて巻取り力を増大させるようにしてもよい。これにより、ぜんまいばねSPの引っ張り力を強くしてシートベルト2を迅速に巻き取り、巻取り不良を無くすことができる。あるいは、上記タイマーを作動遅延手段として用い、バックル装置7とトング5との連結を開放した直後は通電をOFFとして上記図5(A)、(B)の拡径状態としておき弱い力で若干巻き戻されてから、所定時間経過後に通電をONにして上記図6(A)、(B)あるいはこれと同様の縮径状態として急激な巻き戻し動作を開始させることで、強い引張り力で巻き戻されるトグが乗員25に当接したり、室内の一部との当接を回避することもできる。これらの場合も、上記通電による縮径状態の設定は、乗員の体格や、或いは車種別によるシートベルト2の始点、終点の位置関係などの各種条件に応じ、適宜自在に設定することができる。
なおこれらの場合、巻取り完了後(あるいは上記所定時間経過後)は通電をOFFとすることで、自然冷却によってぜんまいばねSPは拡径し、時間の経過と図5に示す状態まで拡径し初期状態に戻る。
なお、本発明は上記実施形態に限られることなく、さらに種々の変形が可能である。以下、そのような変形例に付き順を追って説明する。
(1)引張り力の自在設定等
すなわち、以上においては、乗員25が乗車しトング5とバックル装置5とを係合させる前の初期状態において、通電制御手段によるぜんまいばねSPへの通電を行わない設定(すなわち常温におけるぜんまいばねSPの形状によって得られるばね力に基づく引張り力となる)としたが、これに限られない。
すなわち、この初期状態においても所定の弱い通電をぜんまいばねSPに対し行うことで、所望の引っ張り力を得るように調整してもよい。この場合、予め複数の通電パターンを設定しておき、弱い引っ張り力の中でも、乗員の体格や、車輛Sの座席6の前後位置、傾斜角度、或いは車種別によるシートベルト2の始点、終点の位置関係などの各種条件に応じ、詳細に値を設定できるようにしてもよい。またこれをさらに進めれば、上記した(a)乗員25が乗車しトング5とバックル装置5とを係合させる前の初期状態(b)乗車後の装着状態(c)トング5とバックル装置5との係合を解除した後者時について、通電及び非通電、あるいは通電時の電圧又は電流の大きさを自在に設定することで、所望の態様の引っ張り力特性を自在に得ることができる。
(2)発熱により引張り力が低減するぜんまいばねを用いた場合
上記は、通電による発熱で引っ張り力が増大するぜんまいばねSPを用いた場合を例にとって説明したが、これに限られず、形状記憶合金の材質を適宜選択することで通電時にぜんまいばねSPの引張り力が低減する方向に作用させるようにしてもよい。
この場合、上記(a)乗員25が乗車しトング5とバックル装置5とを係合させる前の初期状態では通電を行い、(b)乗車後の装着状態では通電を行うことで、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、前述したのと同様に通電及び非通電、あるいは通電時の電圧又は電流の大きさを自在に設定することで、所望の態様の引っ張り力特性を自在に得ることができる。
また、従来のように複雑な機構で構成されるテンションレデューサを用いることなく、ぜんまいばねSPに通電させるだけでシートベルト装着時における乗員25の圧迫力を軽減できる効果もある。
(3)スプリングケース内部の雰囲気温度によるぜんまいばねの引張り力の強さの変化
上記実施形態では、ぜんまいばねSPに通電して自ら発熱させることでその温度変化によって形状を変化・復帰させ巻取り力を変化させたがこれに限られない。すなわち、スプリングケース14内に別途加熱温度可変のヒータを設け、上記スプリングケース14内部の雰囲気温度を変化させることで、ぜんまいばねSPに直接電圧を印加することなく、形状記憶合金で構成されたぜんまいばねSPの引張り力の強さを変化させることもできる。この場合も、前述と同様の効果を得る。
(4)スプリングケースへの固定構造のバリエーション
すなわち、上記のようにぜんまいばねSPの基端側をスプリングケース14に固定的に取り付けるのでなく、スプリングケース14に対し摺動可能に設けた取り付け部材にぜんまいばねSPの基端をとりつけるようにしてもよい。この場合、上記取り付け部材の摺動による変位によって、さらにぜんまいばねSPの引張り力の強さを変化させることが可能となる。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
本発明の一実施形態のシートベルト巻き取りシステムに採用されるシートベルト装置の全体構造を表す正面図である。 図1に示すシートベルト装置の斜視図である。 リトラクターの全体概略構造の一例を表す縦断面図である。 スプリングケースの全体正面図である。 初期状態におけるぜんまいばねを示し、(A)は一部断面を示すスプリングケースの上面図、(B)は一部断面を示すスプリングケースの正面図である。 シートベルト装着時におけるぜんまいばねを示し、(A)は一部断面を示すスプリングケースの上面図、(B)は一部断面を示すスプリングケースの正面図である。
符号の説明
1 シートベルト装置
2 シートベルト
3 リトラクター(シートベルト巻取り装置)
5 トング
6 座席
7 バックル装置
10 スプール(シートベルト巻取り軸)
14 スプリングケース(ケース)
25 乗員
26 コネクター
28a,28b 電源コード
S 車輛
SP ぜんまいばね

Claims (7)

  1. 車輌の座席に着座した乗員を拘束するシートベルトの一方側を引き出し可能に巻き取るシートベルト巻取り軸と、
    このシートベルト巻取り軸に連結され前記シートベルトの巻取り方向に付勢するぜんまいばねとを有し、
    このぜんまいばねを、温度に依存した形状回復機能を備えた形状記憶合金で構成したことを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  2. 請求項1記載のシートベルト巻取り装置において、
    前記ぜんまいばねは、発熱時に形状が変化し引張り力の強さが変化するように、通電により発熱する導通材で構成されていることを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  3. 請求項1又は2記載のシートベルト巻取り装置において、
    前記ぜんまいばねを収容するケースと、
    このケースの外面に設けられ、車輌側から前記ぜんまいばねに電源電圧を供給するための電源コードを接続するコネクターと
    を有することを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  4. 請求項3記載のシートベルト巻取り装置において、
    前記コネクターと前記ぜんまいばねとを導通接続する接続手段を有していることを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  5. 請求項3又は4記載のシートベルト巻取り装置において、
    前記ケースを、耐熱性の材質で構成したことを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項記載のシートベルト巻取り装置において、
    前記ぜんまいばねは、外表面が絶縁剤により被覆されるか、または外表面に絶縁性のグリスが塗布されていることを特徴とするシートベルト巻取り装置。
  7. 車輌の座席に着座した乗員を拘束するシートベルトの一方側を引き出し可能に巻き取るシートベルト巻取り軸、及び、前記シートベルト巻取り軸に連結されて前記シートベルトの巻取り方向に付勢するぜんまいばねを有し、このぜんまいばねが、通電により発熱する導通材で構成され温度に依存した形状回復機能を備えた形状記憶合金で構成されたシートベルト巻取り装置と、
    前記ぜんまいばねへの通電を制御する通電制御手段とを有することを特徴とするシートベルト巻取りシステム。
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