JP2007145016A - ポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性と難燃性に優れ、ダイラインがなく、かつ表面平滑性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムを成形することができ、めやにの発生がなく、長期生産安定性に優れるフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリフェニレンエーテル系樹脂又は樹脂組成物を溶融押出してフィルムを製造する方法において、溶融樹脂が接触するダイス面を貴金属、ポリマー及びカーボン系材料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上で被覆したダイスを用いる方法及び係る製造方法により得られるポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、ダイラインの少ないポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムを成形する方法に関する。
一般に、ポリフェニレンエーテルは耐熱性、耐熱水性、寸法安定性及び機械的、電気的性質などの優れた性質を有する樹脂であるが、そのフィルムの例は少ない。実用上利用されているポリフェニレンエーテルフィルムの例は、実質多量のポリスチレンや多量の難燃材が含有されたものであって、それらの耐熱性は低い。ポリフェニレンエーテルが本来有する耐熱性を生かした高耐熱のポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムは、その分解温度と成形温度が近いために、成形時の溶融粘度が高くならざるを得ない。これはダイスウェルの原因となり、ダイリップ近傍にめやにが発生しやすい。加えてポリフェニレンエーテルは溶融時、金属との密着性が高い性質があり、押出成形のダイス(その多くは金属製である)と密着しやすく、めやにの原因になったり、ダイ内部との間にポリフェニレンエーテル系樹脂の薄い皮膜を形成したりしてしまい、生成するフィルムの外観を損ねるダイラインが発生するという問題がある。
そして、ダイラインを防ぐためには、ダイスに付着しためやにを拭き取るためにフィルムの製造を中止なければならない。このように、めやにはダイラインのないフィルムを長期間連続して製造することを困難にするという問題も引き起こす。
成形用樹脂組成物を得る製造方法として、ナイロンとガラスファイバーをコンパウンドする際、めやにを減らすことを目的として、押出機のダイス近傍をフッ素樹脂で被覆した口金を利用することが提案されているが、溶融粘度が高く成形の難しいポリフェニレンエーテル系樹脂やフィルムについての記載はない(特許文献1参照)。
成形用樹脂組成物を得る製造方法として、ナイロンとガラスファイバーをコンパウンドする際、めやにを減らすことを目的として、押出機のダイス近傍をバナジウムカーバイドで被覆した口金を利用することが提案されているが、ポリフェニレンエーテル系樹脂フィルムについての記載はない(特許文献2参照)。
ポリオルガノシロキサンにマグネシウム化合物や亜鉛化合物を配合したものを離型剤として、紡糸用の口金に塗布する方法が提案されているが、塗布剤であるので寿命に問題があり、生産途中で塗布を繰り返す必要性がある。またポリフェニレンエーテル系樹脂やフィルムについての記載はない(特許文献3参照)。
一方、液晶ポリエステルにポリフェニレンエーテルなどの重合体を配合することで、その組成物のフィルム化の際、めやに抑制に効果があることが提案されているが、そのレベルは十分ではない(特許文献4参照)。
押出し成形用ダイスとして、高耐熱の樹脂とフッ素樹脂の混合組成物の塗膜を被覆することが提案されているが、成形される樹脂は実質的にポリエチレンのみであり、ポリフェニレンエーテル系樹脂は成形されていない(特許文献5参照)。
溶融樹脂の流路管や成形用口金において、窒化物系又は炭化物系セラミックス(TiN、TiC)で被覆することが提案されているが、ポリフェニレンエーテル樹脂についてのめやに抑制効果は十分ではない(特許文献6参照)。
以上のように、優れた耐熱性、耐熱水性を有するポリフェニレンエーテル系樹脂を表面平滑なフィルムに成形する方法は未だ知られていない。
特開平5−220812号公報 特開平11−138616号公報 特公昭55−18478号公報 特開2002−241515号公報 特開昭58−12743号公報 特開平4−201227号公報
本発明は、めやにの発生が少なく、ダイラインが少ないポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムを成形する方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を達成する技術を鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂又はポリフェニレンエーテル系樹脂組成物をフィルム状に溶融押出し成形する際に、溶融樹脂が接触するダイス面を特定の材料で被覆しておくと、めやにの発生を抑制でき、ダイラインの少ない表面平滑性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) ポリフェニレンエーテル系樹脂又は樹脂組成物を溶融押出してフィルムを製造する方法において、溶融樹脂が接触するダイス面を貴金属、ポリマー及びカーボン系材料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上で被覆したダイスを用いる方法、
(2) 前記貴金属が金である(1) に記載のフィルムの製造方法、
(3) 前記ポリマーがポリイミド、フッ素系樹脂又はシリコーン樹脂である(1) に記載のフィルムの製造方法、
(4) 前記ポリマーがポリイミドである(3) に記載のフィルムの製造方法、
(5) 前記カーボン系材料が、sp3炭素を含むアモルファスカーボンである(1) に記載のフィルムの製造方法、
(6) 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対して、液晶ポリエステルを0.1〜30質量部含有する(1) 〜(5) のいずれかに記載のフィルムの製造方法、
(7) 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対して、I価、II価、III価又はIV価の金属元素を含有する化合物を0.1〜20質量部含有する(1) 〜(6) のいずれかに記載のフィルムの製造方法、
(8) 前記金属元素を含有する化合物が、ZnO及び/又はMg(OH)である(7) に記載のフィルムの製造方法、
(9) 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対してアミノ基を有するシラン化合物を0.1〜5質量部含有(1) 〜(8) のいずれかに記載のフィルムの製造方法及び
(10) (1) 〜(9) のいずれかに記載のフィルムの製造方法により得られたポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルム
である。
本発明により、ダイラインが少なく表面平滑性に優れたポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムを成形することができる。
[1] ポリフェニレンエーテル系樹脂又は樹脂組成物
原料は、ポリフェニレンエーテルのみからなるポリフェニレンエーテル系樹脂でも良いし、ポリフェニレンエーテルに加えて液晶ポリエステル、I価、II価、III価又はIV価の金属元素を含有する化合物、アミノ基を有するシラン化合物及びその他の成分を含有するポリフェニレンエーテル系樹脂組成物でも良い。
(1) ポリフェニレンエーテル系樹脂
ポリフェニレンエーテルは下記(式1)の繰り返し単位構造からなり、還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、30℃測定)が、0.15〜1.0dl/gの範囲にあるホモ重合体及び/又は共重合体である。さらに好ましい還元粘度は、0.20〜0.70dl/gの範囲、最も好ましくは0.40〜0.60の範囲である。
Figure 2007145016
(R1、R4は、それぞれ独立して、水素、第一級若しくは第二級の低級アルキル、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシを表わす。R2、R3は、それぞれ独立して、水素、第一級若しくは第二級の低級アルキル、フェニルを表わす。)
このポリフェニレンエーテル系樹脂の具体的例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、さらにポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
ポリフェニレンエーテルの製造方法の例として、米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。
米国特許第3306875号、同第3257357号及び同第3257358号の各明細書、特公昭52−17880号及び特開昭50−51197号及び同63−152628号の各公報等に記載された方法もポリフェニレンエーテルの製造方法として好ましい。
ポリフェニレンエーテルは、重合工程後のパウダーのまま用いてもよいし、押出機などを用いて、窒素ガス雰囲気下あるいは非窒素ガス雰囲気下、脱揮下あるいは非脱揮下にて溶融混練することでペレット化して用いてもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂には、種々のジエノフィル化合物により官能化されたポリフェニレンエーテルも含まれる。種々のジエノフィル化合物としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、フェニルマレイミド、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアリレート、メチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ステアリルアクリレート及びスチレンが挙げられる。これらジエノフィル化合物によりポリフェニレンエーテルを官能化するには、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で押出機などを用い、脱揮下あるいは非脱揮下において溶融状態で官能化してもよいし、ラジカル発生剤存在下あるいは非存在下で、非溶融状態、すなわち室温以上かつ融点以下の温度範囲で官能化してもよい。官能化されたポリフェニレンエーテルの融点は、示差熱走査型熱量計(DSC)の測定において、20℃/分で昇温するときに得られる温度−熱流量グラフで観測されるピークのピークトップ温度で定義され、ピークトップ温度が複数ある場合にはその内の最高の温度で定義される。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、芳香族ビニル系重合体等、ポリフェニレンエーテル以外の樹脂成分を含有しても良い。芳香族ビニル系重合体の例としてはアタクティックポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン及びアクリロニトリル−スチレン共重合体が挙げられる。ポリフェニレンエーテル系樹脂がポリフェニレンエーテル樹脂及び芳香族ビニル系重合体を含有する場合、ポリフェニレンエーテル樹脂と芳香族ビニル系重合体との合計量に対して、ポリフェニレンエーテル樹脂を70wt%以上とし、好ましくは80wt%以上とする。
(2) 液晶ポリエステル
液晶ポリエステルはサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、公知のものが使用できる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸及びポリエチレンテレフタレートを主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸及び2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸及び4,4′−ジヒドロキシビフェニルならびにテレフタル酸を主構成単位とするサーモトロピック液晶ポリエステルなどが挙げられ、特に制限はない。本発明で使用される液晶ポリエステルとしては、下記構造単位(イ)及び/又は(ロ)、並びに必要に応じて下記構造単位(ハ)及び/又は(ニ)からなるものが好ましい。
Figure 2007145016
Figure 2007145016
Figure 2007145016
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ここで、構造単位(イ)、(ロ)はそれぞれ、p−ヒドロキシ安息香酸から生成したポリエステルの構造単位と、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から生成した構造単位である。構造単位(イ)及び(ロ)を使用することで、優れた耐熱性、流動性や剛性などの機械的特性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。上記構造単位(ハ)、(ニ)中のXは、下記(式2)よりそれぞれ独立に1種あるいは2種以上選択することができる。
Figure 2007145016
構造式(ハ)において好ましいのは、エチレングリコール、ハイドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン及びビスフェノールAのそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニル及びハイドロキノンのそれぞれから生成した構造単位であり、特に好ましいのは、エチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシビフェニルのそれぞれから生成した構造単位である。
構造式(ニ)において好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ジカルボキシナフタレンのそれぞれから生成した構造単位であり、さらに好ましいのは、テレフタル酸及びイソフタル酸のそれぞれから生成した構造単位である。
構造式(ハ)及び構造式(ニ)は、それぞれ上記の構造単位を少なくとも1種あるいは2種以上有してよい。具体的には、2種以上である場合、構造式(ハ)においては、1)エチレングリコールから生成した構造単位/ハイドロキノンから生成した構造単位、2)エチレングリコールから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、3)ハイドロキノンから生成した構造単位/4,4′−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、などを挙げることができる。
また、構造式(ニ)においては、1)テレフタル酸から生成した構造単位/イソフタル酸から生成した構造単位、2)テレフタル酸から生成した構造単位/2,6−ジカルボキシナフタレンから生成した構造単位、などを挙げることができる。ここでテレフタル酸量は2成分中、好ましくは40wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上、特に好ましくは80wt%以上である。テレフタル酸量を2成分中40wt%以上とすることで、比較的に流動性、耐熱性が良好な樹脂組成物となる。液晶ポリエステル(B)成分中の構造単位(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の使用割合は特に限定されない。ただし、構造単位(ハ)と(ニ)は基本的にほぼ等モル量である。
また、構造単位(ハ)、(ニ)からなる下記構造単位(ホ)を、(B)成分中の構造単位として使用することもできる。具体的には、1)エチレングリコールとテレフタル酸から生成した構造単位、2)ハイドロキノンとテレフタル酸から生成した構造単位、3)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸から生成した構造単位、4)4,4′−ジヒドロキシビフェニルとイソフタル酸から生成した構造単位、5)ビスフェノールAとテレフタル酸から生成した構造単位、などを挙げることができる。
Figure 2007145016
液晶ポリエステルは、必要に応じて本発明の特徴と効果を損なわない程度の範囲で、他の芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシカルボン酸から生成する構造単位が導入されていても良い。
液晶ポリエステルが溶融時に液晶状態を示し始める温度(以下、液晶開始温度という)は、好ましくは150〜350℃、さらに好ましくは180〜320℃である。液晶開始温度をこの範囲にすると、得られる樹脂製シート中に黒色異物が少なくなるので好ましい。
液晶ポリエステルの含有量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の耐熱性と流動性の観点から、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部が特に好ましい。
(3) I価、II価、III価又はIV価の金属元素の化合物
I価、II価、III価又はIV価の金属元素の化合物(以下、単に「金属化合物」と言う。)は、金属を含有する無機化合物又は有機化合物であり、本質的に金属元素を主たる構成成分とする化合物である。金属元素の具体例としてはLi、Na、K、Zn、Cd、Sn、Cu、Ni、Pd、Co、Fe、Ru、Mn、Pb、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、Ge及びSbが挙げられる。中でもZn、Mg、Ti、Pb、Cd、Sn、Sb、Ni、Al及びGeが好ましく、Zn、Mg及びTiがより好ましい。フィルムの衝撃性向上の観点から、I価、II価、III価又はIV価の金属元素がZn及び/又はMgであることが特に好ましい。
金属化合物の具体例として、上記金属元素の酸化物、水酸化物、アルコキサイド塩、脂肪族カルボン酸塩及び酢酸塩が挙げられる。好ましい酸化物の例としては、ZnO、MgO、TiO4、TiO、PbO、CdO、SnO、SbO、Sb、NiO、Al及びGeOが挙げられる。好ましい水酸化物の例としては、Zn(OH)、Mg(OH)、Ti(OH)、Ti(OH)、Pb(OH)、Cd(OH)、Sn(OH)、Sb(OH)、Sb(OH)、Ni(OH)、Al(OH)及びGe(OH)などが挙げられる。好ましいアルコキサイド塩の例としてはTi(OiPr)、Ti(OnBu)が挙げられる。好ましい脂肪族カルボン酸塩の例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸チタニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドニウム、ステアリン酸すず、ステアリン酸アンチモン、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸ゲルマニウムが挙げられる。中でも特に好ましい具体例は、ZnO、Mg(OH)、Ti(OiPr)、Ti(OnBu)、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸アルミニウムが挙げられる。特に好ましい金属化合物は、ZnO及びMg(OH)である。
ポリフェニレンエーテル系樹脂がポリフェニレンエーテル、液晶ポリエステル及び金属化合物を含有する場合、金属化合物の含有量はポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜20質量部であるのが好ましい。フィルムの相剥離、機械強度(引張り強度、伸び、耐衝撃性等)の観点から0.2〜15質量部が好ましく、0.5〜1質量部がさらに好ましい。
(4) アミノ基を有するシラン化合物
アミノ基を有するシラン化合物としては、アミノ基を含有するシランカップリング剤が好適である。その例としてはγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びγ-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。特にγ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ-アミノプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂が(a) ポリフェニレンエーテル、液晶ポリエステル及びアミノ基を有するシラン化合物を含有する場合又は(b) ポリフェニレンエーテル、液晶ポリエステル、金属化合物及びアミノ基を有するシラン化合物を含有する場合、アミノ基を有するシラン化合物の含有量は、ポリフェニレンエーテル100質量部に対して0.1〜5質量部である。ポリマー組成物の相剥離、機械強度(引張り強度、伸び、耐衝撃性など)の観点から0.1〜3質量部が好ましく、0.2〜1質量部がさらに好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂が金属化合物及びアミノ基を有するシラン化合物を含有するのは、本発明の好ましい態様である。
(5) その他の成分
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は、上記の成分の他に、本発明の特徴及び効果を損なわない範囲で必要に応じて他の附加的成分、例えば、酸化防止剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、フォスファゼン系化合物)、エラストマー(エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体及びエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのスチレン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物)、可塑剤(オイル、低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、難燃助剤、耐候(光)性改良剤、ポリオレフィン用造核剤及び各種着色剤を添加してもかまわない。
(6) 混練
ポリフェニレンエーテル、液晶ポリエステル、金属化合物及びアミノ基を有するシラン化合物を混練する場合、混練する順番は特に限定はないが、一括して混練することが、プロセスの簡略性や物性向上の観点から望ましい。ただし、金属化合物とシラン化合物を併用する場合は、ポリフェニレンエーテルと液晶ポリエステルに、金属化合物とアミノ基を有するシラン化合物を同時に混練してもよいが、よりフィルムの層剥離を抑制する観点から、金属化合物を混練してからシラン化合物を混練するか、若しくはシラン化合物を混練してから金属化合物を混練することが望ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物は種々の方法で製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練方法が挙げられるが、中でも二軸押出機を用いた溶融混練方法が最も好ましい。この際の溶融混練温度は特に限定されるものではないが、通常150〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
[2] 成形
本発明のフィルム製造方法は、ポリフェニレンエーテル系樹脂又は樹脂組成物を溶融押出成形方法により、フィルム状に成形するものである。溶融押出機は、一般に知られている溶融押出機であればよく、例えば、単軸、二軸のスクリュー、スクリュー回転は同方向、異方向でもかまわない。またポリフェニレンエーテル成分を含む組成物を一旦押出機にて溶融混練してペレット化したものをフィルム成形機に投入してもよいし、押出成形機のホッパーに複数種の各成分を投入して、溶融混練と成形を同時に実施してもよい。
成形機は、Tダイ成形機でもチューブラー成形機でもよい。ダイスは、前者ではTダイコートハンガーダイが対応し、後者は、リング状ダイスが対応する。
特に、Tダイ押出成形によって製造する場合、無延伸のまま用いてもよいし、1軸延伸してもよいし、2軸延伸することによっても得られる。フィルムの強度を高めたい場合は、延伸することにより達成することができる。
溶融樹脂が接触するダイス面は、特定の材質で被覆する。特定の材質とは貴金属、ポリマー及びカーボン系材料、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の材料である。
(a) 貴金属
貴金属は、金、白金族及びこれらの混合物でも良いが、めやに抑制の観点より、金が好ましい。
(b) ポリマー
ポリマーは、ポリフェニレンエーテル系樹脂の樹脂温度(250〜350℃)において、熱変形しないものが好ましい。このような耐熱性を有する樹脂であれば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもよい。
熱硬化樹脂としては、例えばポリイミド、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂があげられる。ここでシリコーン樹脂とは、300℃以上の高温下でも変形を伴わない耐熱性の架橋シリコーン樹脂である。被覆のしやすさ、めやにの観点からポリイミド、シリコーン樹脂が好ましく、特にポリイミドが好ましい。ダイス面をポリマーで熱硬化性樹脂するには、これらのワニス溶液を金属表面に吹きつけコーティングして、加熱して溶剤を留去し、硬化を進行させる。この際、ダイスの母材である金属との着性を向上させるため、耐熱性のあるプライマーを用いても良い。
熱可塑性樹脂としては、300℃以上での高温下でも変形を伴わないスーパーエンプラが好ましい。耐熱性の観点から、フッ素系樹脂、強化したポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミドが好ましい。特にめやにの観点からフッ素樹脂が好ましい。ここで、フッ素樹脂とは300℃以上の耐熱を有するフッ素樹脂であればなんでもよいが、加工性と寿命の観点で、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
(c) カーボン系材料
カーボン系材料としては、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレン及びsp3炭素を含むアモルファスカーボンが挙げられる。特に、硬度とめやに防止の観点から、sp3炭素を含むアモルファスカーボンが好ましい。アモルファスカーボンは、ダイヤモンドライクカーボン(DLCと略されることがある。)と言われる場合もある。sp3炭素とsp2炭素の混合体と言われており、3次元的にカーボンが架橋した構造を形成しており、硬度と耐摩耗性に優れるカーボン薄膜である。
カーボン系材料は、水素原子や窒素原子など、他の元素を含んでいても良い。カーボン系材料でダイス面を被覆するには、公知の方法であるPVD法(Physical Vapor Deposition)やCVD法(Chemical Vapor Deposition)により、ダイス母材表面上に、カーボンを蒸着するのが好ましい。
カーボン系材料、特にダイヤモンドライクカーボンは、めやに抑制、得られるフィルム表面粗度、難燃性の観点から、ダイス面の被覆に好ましい材料である。
なお以上のようなダイス面を被覆する材料は、単独でもよいし複数種でもよい。
また、これらの材料でダイス面を被覆する方法は特に限定されず、材料に応じて適宜選択できる。その被覆厚みは0.1〜2000μmが好ましく、より好ましくは0.2〜500μmで、特に好ましくは0.5〜50μmである。
[3] ポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルム
本発明のフィルムは、厚みが0.001〜2.0mmであるのが好ましく、0.005〜0.5mmであるのがより好ましく、0.005〜0.20mmであるのが特に好ましい。場合によってはシートと呼ばれることもある。
好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムは、ダイラインが少なく、表面平滑性に優れたものである。ポリフェニレンエーテルは比較的耐熱性及び難燃性に優れた材料であるが、ポリフェニレンエーテル系樹脂からなるフィルムの表面平滑性が高いと、一層優れた難燃性を示すと考えられる。さらに好ましい態様においては、機械的強度、絶縁性や誘電率や誘電正接などに代表される電気特性にも優れ、耐加水分解性にも優れている。従って、これらの特性が要求される用途に用いることができる。例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用シートセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャーなどが挙げられる。
本発明を以下、実施例に基づいて説明する。但し本発明はその主旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
<ポリフェニレンエーテル(PPE−1)の製造例>
2,6−ジメチルフェノールを酸化重合し、還元粘度0.42のパウダー状のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を得た。
[製造例2]
<液晶ポリエステル(LCP−1)の製造例>
窒素雰囲気下において、p−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、無水酢酸を仕込み、加熱溶融し、重縮合することにより、以下の理論構造式を有する液晶ポリエステル(LCP−1)を得た。なお、組成の成分比はモル比を表す。
Figure 2007145016
[製造例3]
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(a)の製造例
ポリフェニレンエーテル(PPE−1)100質量部と液晶ポリエステル(LCP−1)6質量部と酸化亜鉛[ZnO、銀嶺A(登録商標、東邦亜鉛(株)製)]0.8質量部を、バレル設定温度290℃に設定したベントポート付き二軸押出機(ZSK−25;WERNER&PFLEIDERER社製、D=25mm、L/D=42)に、全量トップフィードから投入し、吐出量10kg/hr、スクリュー回転数300rpmで、2段ベントにて真空脱揮しながら溶融混練し、ペレットとして得た。
[製造例4]
ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(b)の製造例
原料をポリフェニレンエーテル(PPE−1)85質量部、ハイインパクトポリスチレン[H9405、PSジャパン(株)製]10質量部及びGPポリスチレン[685、PSジャパン(株)製]5質量部を使用した以外は、製造例3と同様にしてペレットを得た。
各樹脂組成物のフィルム成形と物性評価を、以下の方法に従って実施した。
(1)フィルム成形
得られたペレットを、二軸押出フィルム成形機[テクノベル(株)製、KZW15TW−25MG−NH、スクリュー径15mm]を用い、シリンダー温度290℃、巾150mmのTダイス、80℃に設定した第一ロール(材質:耐熱ゴムロール)と170℃に設定した第2ロール(材質:金属ロール)を用い、押出フィルム成形を実施した。厚みを125μmに調整した。
(2)めやに
上記(1)フィルム成形を実施し、ダイスリップに蓄積される褐色〜黒色の物を観察することにより、以下の判断基準に基づいて、めやにの発生状況を判断した。
◎:3.0時間以上連続成形しても、めやにが全く観察されなかった。
○:1.5時間以上連続成形しても、めやにが全く観察されなかった。
×:1.5時間経たないうちに、めやにが観察された。
(3)ダイライン
得られたフィルムを、巾方向90mm×長さ方向20mmに切り取り、その表面を目視にて観察し、以下の判断基準に基づいて、ダイラインを評価した。
○:流れ方向のたてすじ(ダイライン)が、全く観察されなかった。
△:流れ方向のたてすじ(ダイライン)が、1〜2本、観察された。
×:流れ方向のたてすじ(ダイライン)が、3本以上、観察された。
(4)フィルムの表面粗度
得られたフィルムの端部を除き、中心部側で巾方向75mm、長さ方向で20mmに切り取った。表面粗度計[サーフテストSJ−402、Mitutoyo(株)製]を用いて、巾方向(15mm×5個)にスキャンし、各フィルム表面における、表面粗度(Ra)(μm)を測定し、各々5個(75mm巾分相当)の平均値を求めた。
(5)難燃性
得られたフィルムを、巾方向90mm×長さ方向300mmに切り取り、直径25mmになるように巾方向に円筒状にまき、側面を接着テープで固定した。この円筒をクランプで垂直に固定し、かつ上部をガムテープでふたをした。ガスバーナーを用いて、下端部を2秒間接炎し、炎を離した後、以下の判断基準に基づいてその難燃性を評価した。n数10本にて実施した。標線として下端より125mmの高さのフィルム表面に線を書いた。
○:10本とも、標線より下で自己消火した。
△:10本のうち、9本は標線より下で自己消火し、1本のみ標線以上まで燃焼した。
×:10本のうち、2本以上、標線以上まで燃焼した。
(6)被覆材の表面粗度
ダイス母材の表面を種々の被覆材でコートした後の表面に対し、10mmの長さにおいて、表面粗度計[サーフテストSJ−402、Mitutoyo(株)製]を用いて、表面粗度(Ra)(μm)を測定した。
[実施例1]
フィルム成形機のTダイスの樹脂が接触する面に、金メッキ(0.2μm厚み)を施したダイスを用い、上記(1)に示した方法で、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(a)を用いて、フィルム成形を実施した。上記(2)〜(5)の方法に従って、フィルムの評価を実施し、(6)の方法に従ってダイス被覆材の表面粗度を測定し、その結果を表1に示した。
[実施例2]
Tダイス被覆を、金メッキの代わりにポリイミドメッキ(10μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。なお、ポリイミド膜の生成は、ピロメリット酸ニ無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが等モル比で重合されたポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を用いて、塗布、硬化させた。
[実施例3]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりにポリテトラフルオロエチレンメッキ(10μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。
[実施例4]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりにダイアモンドライクカーボンメッキ(1.2μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。なおダイアモンドライクカーボンメッキは、プラズマCVD法により実施し、ヌープ硬度(25gf)で、1049Hkであった [日本アイ・ティ・エフ(株)製HT−DLC(TypeII)] 。
[実施例5]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりにダイアモンドライクカーボンメッキ(1.3μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。なおダイアモンドライクカーボンメッキは、プラズマCVD法により実施し、ヌープ硬度(25gf)で、3300Hk以上であった[日本アイ・ティ・エフ(株)製HA−DLC]。
[実施例6]
原料としてポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(a)の代わりに、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物(b)を用いたこと以外は、実施例4と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。
[比較例1]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりに、一般的に使用されている硬質クロムメッキ(1.0μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。
めやにが多く、ダイラインが多く発生してしまい、表面粗度、難燃性も良好でない結果が得られた。
実施例4と比較例1との比較から、ダイス被覆材の表面粗度が、得られるフィルムの表面粗度(表面平滑性)に大きく影響しているわけではなく、ダイスを被覆する材質が重要であることがわかる。
[比較例2]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりに、窒化チタンメッキ(0.5μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。めやにが多かった。ダイライン、表面粗度は、硬質クロムほど悪くはないが、十分良好とは言えない結果が得られた。特開平4−201227号公報で提案されている窒化チタン(Ti−N)メッキでは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を溶融押し出し成形する際には、効果が十分でないことがわかる。
[比較例3]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりに、炭化チタンメッキ(1.5μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。めやにが多く、ダイラインも多く、表面粗度の値も大きくなり、表面平滑性に劣る結果となった。このことから、炭化チタンについても、炭化物とはいえ、カーボン系材料(特に、ダイヤモンドライクカーボン)と比較して、作用効果が全く異なることがわかる。
[比較例4]
Tダイス被覆として、金メッキの代わりに、酸化クロムメッキ(1.0μm厚み)としたこと以外は、実施例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。めやにが多く、ダイラインも多く、表面粗度の値も大きくなり、表面平滑性に劣る結果となった。なお、酸化クロムメッキは、酸化クロム(Cr)をベースにした複合セラミックスで、CDC−ZAC[トーカロ(株)製]と呼ばれるものである。
[比較例5]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)の代わりに、高密度ポリエチレン[サンテックS360(登録商標)、旭化成ケミカルズ(株)製]を用い、成形温度を250℃としたこと以外は、比較例1と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。
比較例1の結果との比較から、Tダイスへのコーティングに工夫がなければ、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリエチレンと比較して、めやにが出やすく、得られるフィルムの表面平滑性が出にくい樹脂であることがわかる。
[比較例6]
ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)の代わりに、高密度ポリエチレン[サンテックS360(登録商標)、旭化成ケミカルズ(株)製]を用い、成形温度を250℃としたこと以外は、比較例2と同様にフィルム成形と評価を実施し、その結果を表1に示した。溶融樹脂がポリエチレンの場合、特開平4−201227号公報で提案されている窒化チタンにより、確かにめやに発生が抑制され、フィルム平滑性に優れるが、ポリエチレンであるため、難燃性に劣る結果となっていることがわかる。
Figure 2007145016
表1に示すように、本発明の製造方法により、めやにの発生が少なく、ダイラインの少ないポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムを成形できる。このような製造方法によると、めやにの拭き取り作業頻度が少ないので、高品質なフィルムを連続して製造でき、長期生産安定性に優れている。また好ましい態様におけるポリフェニレンエーテル系樹脂製は表面平滑性に優れており、耐熱性及び難燃性が高かった。
本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルムは、ダイラインが少なく、表面平滑性に優れている。そのため例えば、プリント基板材料、プリント基板周辺部品、半導体パッケージ、データ系磁気テープ、APS写真フィルム、フィルムコンデンサー、モーターやトランスなどの絶縁材料、スピーカー振動板、自動車用シートセンサー、ワイヤーケーブルの絶縁テープ、TABテープ、発電機スロットライナ層間絶縁材料、トナーアジテーター、リチウムイオン電池などの絶縁ワッシャー、など電子・電気部品材料、家電OA用材料、自動車用材料、工業用材料に好適である。

Claims (10)

  1. ポリフェニレンエーテル系樹脂又は樹脂組成物を溶融押出してフィルムを製造する方法において、溶融樹脂が接触するダイス面を貴金属、ポリマー及びカーボン系材料からなる群から選ばれる少なくとも1種以上で被覆したダイスを用いることを特徴とする方法。
  2. 前記貴金属が金であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリマーがポリイミド、フッ素系樹脂又はシリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  4. 前記ポリマーがポリイミドであることを特徴とする請求項3に記載のフィルムの製造方法。
  5. 前記カーボン系材料が、sp3炭素を含むアモルファスカーボンであることを特徴とする請求項1に記載のフィルムの製造方法。
  6. 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対して、液晶ポリエステルを0.1〜30質量部含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  7. 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対して、I価、II価、III価又はIV価の金属元素を含有する化合物を0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  8. 前記金属元素を含有する化合物が、ZnO及び/又はMg(OH)であることを特徴とする請求項7に記載のフィルムの製造方法。
  9. 前記ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物が、ポリフェニレンエーテル成分100質量部に対してアミノ基を有するシラン化合物を0.1〜5質量部含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のフィルムの製造方法により得られたポリフェニレンエーテル系樹脂製フィルム。
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