JP2012099345A - 絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁被覆層の押出被覆時において成形金型先端でのカス(目脂)の発生を防止するとともに成形金型の長期耐久性を確保し、良品の絶縁電線を安定して製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る絶縁電線の製造方法は、成形金型に導体と樹脂組成物とを挿通させて該導体の外周に絶縁被覆層を押出被覆する絶縁電線の製造方法であって、前記成形金型は、少なくとも前記樹脂組成物と接する面に非晶質炭素被膜を備えており、前記非晶質炭素被膜は、窒素を含み、かつ該窒素が前記非晶質炭素被膜を構成する炭素と結合していることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、絶縁電線の製造技術に関し、特に、絶縁被覆層を押出被覆して設ける絶縁電線の製造方法に関するものである。
絶縁電線の被覆材料として、従来はポリ塩化ビニル(PVC)が広く用いられてきたが、近年では環境保護に対する気運の高まりからハロゲンを含まない絶縁電線への切り替えが進んでいる。そのようなノンハロゲン絶縁電線としては、例えば、ポリオレフィン材料に環境対応型難燃剤(水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物等)を添加した絶縁被覆層を備えた絶縁電線が知られている。
一方、絶縁電線の製造(特に絶縁被覆層の押出被覆)において、製造中に被覆樹脂の劣化物や分解物などのカス(「目脂」と呼ばれることもある)が成形金型の押出面(先端部外面)に蓄積していき、あるところで脱落して製品に付着し、外径異常などの製品不良が発生する問題があった。樹脂カスが蓄積・付着する問題に対し、例えば、特許文献1(特開平9−187856)には、溶融した熱可塑性ポリマーを口金から押出成形するに際し、該口金の少なくとも押出先端部の表面がダイヤモンドライク炭素の薄層で被覆されていることを特徴とするポリマーの押出成形方法が報告されている。特許文献1によると、口金の押出面に「目脂」が発生するのを抑制し、良質の押出製品を安定して成形することができるとされている。
また、特許文献2(特開平5−169459)には、鋼やアルミ合金、銅合金等の表面に硬質被膜を形成してなる樹脂あるいはゴム用金型において、硬質被膜の少なくとも最表面がフッ素を1〜20原子%含むダイヤモンド状炭素膜あるいは硬質カーボン膜であることを特徴とする樹脂あるいはゴム用金型が報告されている。特許文献2によると、該金型は、フッ素含有高分子材料に匹敵する離型性と、ダイヤモンド並みの耐摩耗性を併せ持っており、成形品の品質維持・向上に有用であるとされている。
特開平9−187856号公報 特開平5−169459号公報
ノンハロゲン絶縁電線は、一般に難燃性を付与する目的で、絶縁被覆層中に金属水酸化物を大量に添加するため、従来のPVC材料を使用した絶縁電線と比較して、押出被覆時に成形金型(例えば、押出ダイスやニップル)の先端にカス(目脂)が溜まり易い。発明者等の調査によると、非晶質の硬質炭素被膜(例えば、ダイヤモンドライク炭素被膜)が表面に形成された従来の成形金型を利用した場合、初期においてはカス(目脂)の発生を抑制する効果が見られたが、繰り返し使用しているうちに該硬質炭素被膜の効果が薄れていく傾向が確認された。すなわち、従来の成形金型には長期耐久性の観点で問題があり、絶縁電線の安定した製造が困難であった。
一方、被覆材料としてシラン架橋材料やシラングラフト材料を用いて押出被覆する場合は、非晶質の硬質炭素被膜が表面に形成された従来の成形金型を用いてもカス(目脂)の発生を防げず、カス(目脂)発生防止にはフッ素樹脂被膜が形成された成形金型を用いる必要があった。しかしながら、フッ素樹脂被膜は、自身の硬さが低く本質的に耐摩耗性に劣る弱点がある。すなわち、上述と同様に長期耐久性の観点で従来の成形金型には問題があり、絶縁電線の安定した製造が困難であった。
従って、本発明の目的は、上記課題を解決し、絶縁被覆層の押出被覆時において成形金型先端でのカス(目脂)の発生を防止するとともに成形金型の長期耐久性を確保し、良品の絶縁電線を安定して製造できる製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、成形金型に導体と樹脂組成物とを挿通させて該導体の外周に絶縁被覆層を押出被覆する絶縁電線の製造方法であって、前記成形金型は、少なくとも前記樹脂組成物と接する面に非晶質炭素被膜を備えており、前記非晶質炭素被膜は、窒素を含み、かつ該窒素が前記非晶質炭素被膜を構成する炭素と結合していることを特徴とする絶縁電線の製造方法を提供する。なお、本発明において、非晶質炭素被膜とは、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、i-C(アイカーボン)、硬質炭素などと呼称される薄膜状の炭素膜の総称と定義する。また、非晶質炭素被膜中には、水素やアルゴン、酸素が含有されていてもよいものとする。
本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る絶縁電線の製造方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(1)前記非晶質炭素被膜における窒素の含有量は、炭素と水素と窒素との合計を100質量%とした場合に5質量%以上である。
(2)前記成形金型は、該金型の基材と前記非晶質炭素被膜との間に複数の中間層を有し、前記複数の中間層は、前記基材の直上に形成されチタンからなる第1中間層と、前記第1中間層の直上に形成されチタンと炭素とからなりチタン含有率が漸減するとともに炭素含有率が漸増する第2中間層とを備える。
(3)前記成形金型は、押出ダイスと、該押出ダイス内に挿入されるニップルとを含む構成である。
(4)前記樹脂組成物は、オレフィン系樹脂100質量部に対して120質量部以上の金属水酸化物を含有するポリオレフィン系樹脂である。
(5)前記樹脂組成物は、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂である。
本発明によれば、絶縁被覆層の押出被覆時において成形金型先端でのカス(目脂)の発生を防止するとともに成形金型の長期耐久性を確保し、良品の絶縁電線を安定して製造できる製造方法を提供することができる。
本発明に係る成形金型を用いた押出被覆における押出被覆装置のクロスヘッド近傍の断面模式図である。 従来の成形金型を用いた押出被覆における押出被覆装置のクロスヘッド近傍の断面模式図である。
はじめに、絶縁被覆層の押出被覆におけるカス(目脂)の発生と、それによる製品の外径異常について簡単に説明する。図2は、従来の成形金型を用いた押出被覆における押出被覆装置のクロスヘッド近傍の断面模式図である。図2に示したように、押出被覆装置のクロスヘッド本体8には基材としての押出ダイス4及びニップル2が装着され、ニップル2が押出ダイス4の挿通孔に挿入されるように配置されるとともに固定ホルダ9とネジ10とによってクロスヘッド本体8に固定されている。導体1はニップル2の挿通孔を通って供給され、絶縁被覆層3となる樹脂組成物は押出ダイス4とニップル2との間に形成される流路を通って供給される。従来の成形金型を用いた場合、押出ダイス4やニップル2の押出面(先端部外面)に樹脂組成物のカス(目脂)7が溜まり易く、溜まったカス7が導体線1や絶縁被覆層3に付着することで外径異常部6が生じ、製品歩留まりを低下させていた。
前述したように、本発明者等の調査によると、従来の非晶質炭素被膜が表面に形成された成形金型を利用してノンハロゲン絶縁電線の押出被覆を行った場合、初期においてはカス(目脂)の発生を抑制する効果が見られたが、繰り返し使用しているうちに該非晶質炭素被膜の効果が薄れていく傾向が確認された。成形金型の非晶質炭素被膜の効果が薄れていくメカニズムは解明されているわけではないが、その要因として、硬い金属水酸化物粒子によって非晶質炭素被膜が摩耗したり、押出被覆時の温度によって非晶質炭素被膜自体が変成したりする可能性が考えられた。例えば、ベース樹脂100質量部に対し、金属水酸化物の添加量が120質量部を超えるような樹脂組成物においては、押出被覆時の温度が220℃程度まで上昇していた。
そこで、本発明者らは、前述の目的を達成するため、成形金型に形成する非晶質炭素被膜について鋭意検討した結果、非晶質炭素被膜中に窒素成分を含有させるとともに該窒素を被膜中の炭素と結合させた非晶質炭素被膜が有効であることを見出した。本発明は、その知見に基づいて完成されたものである。なお、「窒素を炭素と結合させる」とは、「炭素−炭素結合」の一部を「炭素−窒素結合」にする、または、被膜を構成する「炭素原子」の一部を「窒素原子」で置換すると言い換えることもできる。
また、本発明における非晶質炭素被膜中の窒素の含有量は、炭素と水素と窒素との合計を100質量%とした場合に5質量%以上であることが好ましい。窒素の含有量を5質量%以上に限定する理由は、窒素の含有量を5質量%未満の領域においては、現状の製造技術において、非晶質炭素被膜中の窒素の含有量をコントロールすることが困難になるためである。また、本発明における非晶質炭素被膜中の窒素の含有量は、炭素と水素と窒素との合計を100質量%とした場合に15質量%以下であることが好ましい。窒素の含有量を15質量%以下に限定する理由は、窒素の含有量が15質量%を超える量であると、非晶質炭素被膜の表面における「炭素−窒素結合」が増えることで「炭素−炭素結合」の割合が低下し、非晶質炭素被膜の硬度が低下し、耐摩耗性が低下すると考えられるためである。
また、本実施の形態において用いるポリオレフィン系樹脂は、例えば、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)、LDPE(低密度ポリエチレン)、EMA(エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂)ならびにEOR(ポリ(エチレン‐オクテン)共重合樹脂)などのエチレン系コポリマなどを用いることができる。これらは、本実施の形態において用いるシラン架橋ポリオレフィン系樹脂として用いることができる。
また、本実施の形態において用いるシラン化合物は、ポリマーと反応可能な基とシラノール縮合により架橋を形成するアルコキシ基との双方を有する。具体的に、シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン化合物、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、β-(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリルシラン化合物、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等のポリスルフィドシラン化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン化合物等を用いることができる。
図1は、本発明に係る成形金型を用いた押出被覆における押出被覆装置のクロスヘッド近傍の断面模式図である。図1に示したように、本発明に係る成形金型の基材(押出ダイス4とニップル2)は、少なくとも樹脂組成物と接する面に窒素成分を含有した非晶質炭素被膜5が形成されている。非晶質炭素被膜5は、カス7が発生し易い箇所である押出面(先端部外面)にも形成されていることがより望ましい。本発明に係る成形金型を用いた押出被覆では、非晶質炭素被膜5の効果が薄れることなく長期間に亘ってカス7の発生を防止することができ、良品の絶縁電線を安定して製造することができる(詳細は後述する)。
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施例に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。
[成形金型]
(非晶質炭素被膜の形成)
非晶質炭素被膜を形成する方法としては、CVD法(例えば、プラズマCVD法、プラズマイオン注入型CVD法)やPVD法(例えば、イオン化蒸着法、アークイオンプレーティング法、非平衡マグネトロンスパッタ法)など種々の方法が提案されており、本発明においても特に限定するものではないが、ここでは、プラズマCVD法(PCVD法)および非平衡マグネトロンスパッタ法(UBMS法)を用いて、成形金型の基材である押出ダイスとニップルの表面(少なくとも樹脂組成物と接する面)に性状の異なる5種類の非晶質炭素被膜を形成した。なお、非晶質炭素被膜は水素含有量の低い方が、熱による水素脆化が抑制される傾向にあり、非晶質炭素被膜の形成においては、化学蒸着法よりも物理蒸着の方が水素含有量を少なくできる利点がある。
原料としてケイ素含有炭化水素ガスを用いたプラズマCVD法により、超硬合金製の押出ダイスとニップルの表面直上に、その表面からケイ素含有率が漸減する一方で炭素含有率が漸増するケイ素と炭素との混合傾斜層からなり、ケイ素を20質量%含む非晶質炭素被膜(厚さ:約3.5μm)を形成した(被膜1)。なお、20質量%のケイ素とは、炭素とと水素とケイ素との合計を100質量%とした場合の割合である。また、上記混合傾斜層における水素の含有量は、炭素と水素とケイ素との合計を100質量%とした場合において25質量%であった。
原料として炭化水素ガスを用いたプラズマCVD法により、超硬合金製の押出ダイスとニップルの表面直上に主に炭素と水素とからなる非晶質炭素被膜(厚さ:約3.5μm)を形成した(被膜2)。上記非晶質炭素被膜における水素の含有量は、炭素と水素との合計を100質量%とした場合において20質量%であった。
非平衡マグネトロンスパッタ法を用いた成膜では、はじめに超硬合金製の押出ダイスとニップルの表面清浄化を行った。成膜装置チャンバ内に押出ダイスとニップルを設置し、真空加熱脱ガス(温度773 K、圧力1×10-3 Pa)を十分に行った後、アルゴンガスプラズマによるボンバード処理(温度723 K、圧力2.0 Pa、Bias電圧-200〜-500 V、時間5分間)を行った。引き続いて、同チャンバ内で押出ダイスとニップルの表面直上に第1中間層を形成し、該第1中間層上に第2中間層を形成し、該第2中間層上に非晶質炭素被膜を形成した。
第1中間層としては、チタンターゲットを用いて非平衡マグネトロンスパッタ法(成膜温度523 K)により、チタン層を形成した。第2中間層としては、チタンターゲットとグラファイトターゲットとを用いた非平衡マグネトロンスパッタ法(成膜温度523 K)により、第1中間層の表面からチタン含有率が漸減する一方で炭素含有率が漸増するチタンと炭素との混合傾斜層を形成した。その後、原料として炭化水素ガスのみを用いた非平衡マグネトロンスパッタ法(成膜温度523 K)により、主に炭素と水素とからなる非晶質炭素被膜を形成した(被膜3)。なお、総被膜厚さ(第1中間層から非晶質炭素被膜の合計)が約3.5μmとなるように成膜した。
上述の被膜3の形成と同様の手順により第2中間層まで形成した後、原料として炭化水素ガスと窒素ガスとを用いた非平衡マグネトロンスパッタ法(成膜温度523 K)により、窒素を5質量%含有する非晶質炭素被膜(被膜4)と窒素を15質量%含有する非晶質炭素被膜(被膜5)とを形成した。なお、5質量%や15質量%の窒素とは、非晶質炭素被膜中における炭素と水素と窒素との合計を100質量%とした場合の割合である。また、総被膜厚さ(第1中間層から非晶質炭素被膜の合計)が約3.5μmとなるように成膜した。被膜4,5,6のいずれにおいても、上記非晶質炭素被膜における水素の含有量は、炭素と水素と窒素と水素との合計を100質量%とした場合において15質量%であった。
(非晶質炭素被膜の性状調査)
上記で作製した非晶質炭素被膜(被膜1〜5)に対して、性状調査を行った。まず、X線回折法(XRD)により結晶相の有無を確認したところ、いずれの被膜とも非晶質相特有のハローパターンのみが得られ非晶質膜であることが確認された。また、X線光電子分光法(XPS)により原子同士の結合を確認したところ、いずれの被膜とも炭素原子同士においてsp2結合とsp3結合が混在しており、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)として形成されていることが確認された。さらに、被膜1においては「炭素原子−ケイ素原子結合(C-Si結合)」が存在し、被膜4,5においては「炭素原子−窒素原子結合(C-N結合)」が存在することが確認された。元素の定量分析を行ったところ、ケイ素(被膜1)や窒素(被膜4,5)は所望の量で含有されていることも確認された。
次に、各非晶質炭素被膜の基材との密着性や耐摩耗性の調査として、ロックウェル圧痕試験およびスクラッチ磨耗試験をISO 20502準拠で行った。ロックウェル圧痕試験では、基材との密着性が悪い被膜を試験した場合、一般的に圧痕周囲に界面剥離が観察されることから、界面剥離の程度を評価した。また、スクラッチ磨耗試験では、ダイヤモンドの先端によって各非晶質炭素被膜の表面を引掻き、その表面状態を評価した。このスクラッチ磨耗試験における最終判断はロックウェル圧痕試験結果と併用して密着性と耐摩耗性を判断するものである。非晶質炭素被膜の性状調査の結果一覧を表1に示す。
Figure 2012099345
[絶縁電線の製造]
上記で用意した成形金型の基材(押出ダイスとニップル)を用いて絶縁電線を製造した。
(ベース樹脂に金属水酸化物を混和した樹脂組成物の押出被覆)
ベース樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)を用い、EVAを100質量部に対して水酸化マグネシウム200質量部を混和した樹脂組成物の押出被覆を図1に示したような構成で行った。押出ダイス4とニップル2は孔径がそれぞれ7.6 mmと6.4 mmのものを用い、導体1は素線径1.6 mmの軟銅線を7本撚りした撚線とし線速200 m/minで供給した。樹脂組成物の調合・供給は、単軸混練機(スクリュー径D=90 mm、スクリュー長さL=2160mm、L/D=24、図示せず)を用い、スクリュー回転速度70 rpmで行った。押出被覆時の温度条件としては、単軸混練機のシリンダーが170℃、クロスヘッド本体8が190℃、押出ダイス4が210℃となるように制御した。なお、押出直後の押出被覆層3の表面温度を赤外線放射温度計で計測したところ、225℃と押出ダイス4の設定温度よりも高い値を示していた。
(1)製造安定性評価
前述したように、絶縁被覆層の押出被覆においては、樹脂組成物のカス(目脂)が成形金型の先端部外面に発生・成長していき、あるところで脱落して製品に付着し、外径異常などの製品不良が発生する問題があった。そこで、製造安定性の評価として、カス(目脂)の発生・成長を目視で観察するとともに、外径異常検出器を用いて異常検出回数を計数した。1回の押出被覆長さ(絶縁電線長さ)は36 kmとし、その長さの中でカス(目脂)の発生・成長が無くかつ異常検出回数が0回のものを「合格」とした。
(2)成形金型の耐久性評価
上述と同じ条件で36 kmの押出被覆(絶縁電線の製造)を5回行い、成形金型の繰り返し使用に対する耐久性を評価した。5回の繰り返しにおいても外径異常の検出回数が0回のものを「合格」とした。なお、耐久性評価では、「不合格」と判定された回の押出被覆で試験終了とした。
ベース樹脂に金属水酸化物を混和した樹脂組成物の押出被覆における製造安定性と成形金型耐久性の結果を表2に示す。
Figure 2012099345
表2に示したように、比較例1,2においては、1回目の押出被覆の段階でカス(目脂)の発生・成長が見られ、製品の外径異常が検出された。比較例3においては、3回目の押出被覆までは良好であったが、4回目の押出被覆の2 km押出時にカス(目脂)の発生・成長が見られ、製品の外径異常が1回検出された。なお、比較例3では、36 km押出後にカス(目脂)の発生が見られたが、大きく成長しなかったため製品に付着しなかったと考えられた。これらに対し、実施例1,2においては、5回の押出被覆を繰り返してもカス(目脂)の発生・成長が無くかつ異常検出回数も0回であり、良品の絶縁電線を安定して製造できることが実証された。
前述したように、成形金型の非晶質炭素被膜の効果が薄れていく要因としては、硬い金属水酸化物粒子による非晶質炭素被膜の摩耗や、押出被覆時の温度による非晶質炭素被膜の変成が考えられる。これらの観点で非晶質炭素被膜(被膜1〜5)の性状を見ていくと(表1参照)、比較例1,2(被膜1,2)は、PCVD法による化学蒸着によるものであり、非晶質炭素被膜における水素含有量を20質量%以下に調整することができず、しかも窒素置換を行っていないために、高温による水素脆化による非晶質炭素被膜の変成によって被膜剥離がみられた。非晶質炭素被膜と基材との密着性が低く耐摩耗性も低いことから、非晶質炭素被膜が剥離したことも要因である。
本発明に係る実施例1,2(被膜4,5)は、UBMS法による物理蒸着であるため非晶質炭素被膜における水素含有量を20質量%以下に調整することができ、非晶質炭素被膜中における水素の含有量が比較例3(被膜3)と同量であるものの、「炭素−炭素結合」の一部を「炭素−窒素結合」とすることで熱による水素脆化による非晶質炭素被膜の変成が抑えられたものと推測する。結果として、良好な密着性と耐摩耗性とを有しているのに加えて、窒素置換によって耐熱性が向上し成形金型の長期耐久性を確保することができたものと考えられた。一方、比較例3(被膜3)は、密着性は良好であるものの耐摩耗性および成形金型の長期耐久性の面においては、実施例1、2(被膜4,5)よりも劣る結果となった。比較例3(被膜3)は、窒素置換を行っていない非晶質炭素被膜であったため、高温による非晶質炭素被膜の変成によって被膜が剥離した可能性が考えられた。
(シラン架橋樹脂組成物の押出被覆)
ベース樹脂としてポリエチレン(PE)にシランを3%グラフトしたシラングラフトポリマを用い、該ベース樹脂100質量部に対してジラウリン酸ジブチル錫を0.1%含みPEベースとした触媒マスターバッチ5質量部を混和した樹脂組成物の押出被覆を図1に示したような構成で行った。導体1の供給速度を線速100 m/minとし、押出被覆時の温度条件を単軸混練機のシリンダーが140℃、クロスヘッド本体8が150℃、押出ダイス4が160℃となるように制御した以外は、前述と同様にして押出被覆を行い製造安定性と成形金型耐久性とを評価した。なお、押出直後の押出被覆層の表面温度を赤外線放射温度計で計測したところ、170℃を示していた。
シラン架橋樹脂組成物の押出被覆における製造安定性と成形金型耐久性の結果を表3に示す。
Figure 2012099345
表3に示したように、比較例4〜6においては、1回目の押出被覆の段階でカス(目脂)の発生・成長が見られ、製品の外径異常が検出された。これらに対し、実施例3,4においては、5回の押出被覆を繰り返してもカス(目脂)の発生・成長が無くかつ異常検出回数も0回であり、良品の絶縁電線を安定して製造できることが実証された。
前述したように、被覆材料としてシラン架橋材料やシラングラフト材料を用いて押出被覆する場合、非晶質炭素被膜が表面に形成された従来の成形金型を用いてもカス(目脂)の発生を防げない。その要因について考察した。シラングラフトPEは、押出被覆時に殆どのシラノール基がグラフトされた状態(一部脱水縮合してシロキサン結合をとる部分もある)で流動すると考えられる。ここで、シラノール基は、ヒドロキシル基(-OH基)を有することから、非晶質炭素被膜表面の水素との間で水素結合する可能性が考えられた。すなわち、従来の非晶質炭素被膜でカス(目脂)の発生を防げなかった要因の1つは、樹脂組成物と非晶質炭素被膜との界面領域で樹脂流動性を著しく低下させるために、カス(目脂)の発生を助長していたのではないかと考えられた。
一方、窒素置換を行わない従来の非晶質炭素被膜の表面においては水素も炭素も規則性をもって配列されている。本発明に係る非晶質炭素被膜は、この被膜を構成する炭素原子の一部を窒素原子で置換していることから、窒素と置換すると「炭素−炭素結合」の規則的な構造が崩れ、部分的に「炭素−窒素結合」が形成される。そのことから、水素が規則的に配列しない状態が発生する。その結果、シラノール基中のヒドロキシル基(-OH基)との相互作用を緩和させ、非晶質炭素被膜と樹脂との界面における樹脂の流速の低下を抑えることができたものと考えられた。また、さらに、本発明に係る非晶質炭素被膜は、良好な密着性と耐熱性を有していることから、成形金型の長期耐久性を確保することができたものと考えられ、良品の絶縁電線を安定して製造できたものと考えられる。
1…導体、2…ニップル、3…絶縁被覆層、4…押出ダイス、5…非晶質炭素被膜、
6…外径異常部、7…カス、8…クロスヘッド本体、9…固定ホルダ、10…ネジ。

Claims (6)

  1. 成形金型に導体と樹脂組成物とを挿通させて該導体の外周に絶縁被覆層を押出被覆する絶縁電線の製造方法であって、
    前記成形金型は、少なくとも前記樹脂組成物と接する面に非晶質炭素被膜を備えており、前記非晶質炭素被膜は、窒素を含み、かつ該窒素が前記非晶質炭素被膜を構成する炭素と結合していることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  2. 請求項1に記載の絶縁電線の製造方法において、
    前記非晶質炭素被膜における窒素の含有量は、炭素と水素と窒素との合計を100質量%とした場合に5質量%以上であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の絶縁電線の製造方法において、
    前記成形金型は、該金型の基材と前記非晶質炭素被膜との間に複数の中間層を有し、
    前記複数の中間層は、前記基材の直上に形成されチタンからなる第1中間層と、前記第1中間層の直上に形成されチタンと炭素とからなりチタン含有率が漸減するとともに炭素含有率が漸増する第2中間層とを備えることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  4. 請求項1乃至請求項3に記載の絶縁電線の製造方法において、
    前記成形金型は、押出ダイスと、該押出ダイス内に挿入されるニップルとを含む構成であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4に記載の絶縁電線の製造方法において、
    前記樹脂組成物は、オレフィン系樹脂100質量部に対して120質量部以上の金属水酸化物を含有するポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  6. 請求項1乃至請求項4に記載の絶縁電線の製造方法において、
    前記樹脂組成物は、シラン架橋ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする絶縁電線の製造方法。
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