図1は本発明を実施しようとするインクジェット記録装置の全体を、これの原動機側から見た状態を示すもので、図中1は給紙部、2は印字部、3は加工部、4は排紙部であり、給紙部1から給紙された用紙(被印字材)5は印字部2にて印字され、必要に応じて乾燥機6にて乾燥されてから加工部3に入り、ここで必要な加工がなされた後、排紙部4へ排出されるようになっている。
印字部2には複数個の、例えば用紙5の走行方向の順にイエロ用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用の各インクジェットヘッド2a,2b,2c,2dを備えている。そしてこの各インクジェットヘッド2a〜2dは、支持装置7にて支持フレーム8に支持されている。この支持装置7には、各インクジェットヘッド2a〜2dを支持フレーム8に対して上下方向、及び用紙5に対する姿勢等を調整する従来公知の調整機構が備えられている。
上記各インクジェットヘッド2a〜2dは、図2に示すように支持装置7を介して支持フレーム8に支持される制御装置筺体9と、この制御装置筺体9に対して支持機構10を介して着脱可能に装着されるようにしたラインヘッド筺体11とからなっており、このラインヘッド筺体11の下面側にインクヘッド12がライン状に設けてある。
上記支持機構10は、制御装置筺体9に対して所定のストロークで上下方向へ移動可能にしたブラケット13と、このブラケット13を昇降動作するための昇降装置14とからなっている。そして上記ブラケット13は、ラインヘッド筺体11の幅方向両側面に対向するアーム13a,13bを有しており、この両アーム13a,13bの内側にキー15,15が水平方向に設けてある。
一方ラインヘッド筺体11の幅方向両側面には、上記キー15,15に係合する溝16,16が設けてあり、この溝16,16がキー15,15に係合することにより、ラインヘッド筺体11が支持機構13に係合支持されるようになっている。17は位置決めピンである。
上記支持装置7を介して制御装置筺体9を支持する支持フレーム8には、図2、図3に示すように、原動機側外方へ向けてレール18が設けてあり、このレール18に上記支持装置7が支持されていて、制御装置筺体9は用紙5に対向する印字位置P1とメンテナンス位置P2にわたって水平方向に移動可能になっている。19は支持フレーム8に設けた送りねじであり、この送りネジ19に支持装置7が螺合されていて、この送りねじ19を図示しない駆動装置にて回転することにより、制御装置筺体9が上記両位置P1,P2間にわたって移動されるようになっている。20は上記両位置P1,P2間に設けられたノズル回復装置であり、このノズル回復装置20にインクヘッド12を対向させてパージすることにより、インクヘッド12の各インクノズルの印字機能が回復されるようになっている。
上記した構成のインクジェット記録装置において、図3に示すように各インクジェットヘッド2a〜2dの原動機側への移動端部にはラインヘッド筺体着脱治具Aが、これの一部を着脱可能にして設けてある。
このラインヘッド筺体着脱治具Aは、インクジェットヘッド2a〜2dの各設置位置の原動機側に設けられて、上記ノズル回復装置20を設置する補助台21の上面に設けた第1支持部材22と、上記補助台21の下端部から原動機側外方へ張り出した補助フレーム21aに設けた第2支持部材23と、一端部を上記第1支持部材22に係脱可能に係合するレール部材24と、一端部を上記第2支持部23に係脱可能に係合して直立され、他端部を上記レール部材24の他端部に回動可能に連結される直立支持部材25と、上記レール部材24に移動自在に搭載される移動台装置26と、この移動台装置26上に搭載されるヘッド受け皿27とからなっている。
上記各インクジェットヘッド2a〜2dに対応する部分の各補助台21は、図4に示すように各インクジェットヘッド2a〜2dのインクヘッド12の下面と平行になっている。
上記第1支持部材22は補助台21に固着されるブラケット28と、このブラケット28に用紙5の走行方向に向けて、かつ補助台21と平行に固定された支持棒29とからなっている。この支持棒29は丸棒が用いられており、この軸方向2個所に溝29a,29bが設けてある。
第2支持部材23は、それぞれ垂直にして用紙5の走行方向に並べて設けた2個の支持金具30a,30bにて構成されている。この各支持金具30a,30bは、図5に示すようになっていて、穴31の下端にねじ部31aが設けてあり、これにボルト32が支持金具30a,30bの穴31の内側で上方へ向けて螺合してあり、このボルト32のねじ込み長さにより、ボルト32先端の床面Lからの高さHが変わるようになっている。
レール部材24は図3,図6に示すようになっていて、両端を連結金具33a,33bに連結した2本のレール24a,24bにより構成されている。そして一端側の連結金具33aには、レール24a,24bの間隔方向の2個所の下側に、先端に上記第1支持部材22の支持棒20に設けた溝29a,29bに上側から係合するヨーク部を有する係止片34a,34bが設けてある。この両係止片34a,34bの先端には、これのヨーク部を閉じる方向に押しねじ35が設けてあり、この押しネジ35をねじ込むことにより、係止片34a,34bと支持棒29の溝29a,29bとの係合を固定できるようになっている。
直立支持部材25は図3、図4に示すようになっていて、上記レール部材24の他方の連結金具33bの両端部に回動自在に連結された2本の支柱25a,25bにて構成されている。この2本の支柱25a,25bの間隔は、上記第2支持部材23の両支持金具30a,30bの間隔と同一になっていて、各支柱25a,25bの下端部が、第2支持部材23の各支持金具30a,30bの穴31に抜き差し可能に嵌挿されるようになっている。そしてこの各支柱25a,25bの先端は、各支持金具30a,30b内のボルト32の先端に当接して差し込み深さが設定される。したがって、上記ボルト32のねじ込み深さによってこれの先端の床面Lに対する高さHを変えることにより、支柱25a,25bの上記レール部材24の連結金具33bとの連結点までの床面Lからの高さh1,h2が調整されるようになっている。
なおこのときにおいて、第1支持部材22を支持している補助台21の上面が、これに対応するインクジェットヘッド2aの下面を走行する用紙5の走行面(ペーパライン)と平行になっていて必ずしも水平ではなく、したがってこの上に設けられる第1支持部材22の支持棒29も、上記補助台21の上面と平行であって水平ではない。そして一端部を上記第1支持部材22の支持棒29に支持するレール部材24も、上記補助台21の上面と平行に設置しなければならないため、このレール部材24の他端を支持する直立支持部材25を構成する2本の支柱25a,25bの上部の床面Lからの高さh1,h2もこれに応じて変えなければならず、この高さ調整を支持金具30a,30bのボルト32にて行う。
上記直立支持部材25を構成する各支柱25a,25bの上端は、レール部材24の他方の連結金具33bに回動自在に連結されていることにより、この両者は折り畳み可能になっている。なお上記連結は着脱可能にしてもよい。
移動台装置26は図3、図6、図7に示すようになっていて、上記レール部材24にこれのレール24a,24bに沿って移動自在に搭載される基台36と、この基台36の上側に、この基台36の移動方向と直交する方向に移動自在に搭載される受け台37とからなっている。受け台37の上面には、複数個の位置決めピン38が突設されている。なお、この図6では図3のX−X線矢視図で、受け台37を省略して示している。
上記基台36のレール部材24に対する移動は、この基台36の下面に設けた軸受39,39がレール24a,24bに摺動自在に嵌合することによってなされるようになっている。一方受け台37の移動は、この受け台37の下面に設けた一対の軸受40,40が、上記基台36の上面に、基台36の移動方向と直交する方向に向けて設けた一対のレール41,41に摺動自在に嵌合することによってなされるようになっている。
移動台装置26の基台36の下面には、レール部材24の1本のレール24aに嵌合するスリ割部材42が設けてあり、このスリ割部材42をねじ付きハンドル43にて締めることにより、移動台装置26がレール部材24に対して任意の位置で固定できるようになっている。
また、移動台装置26の受け台37の下面には、基台36に設けたレール41,41のうちの1本のレール41に嵌合するスリ割部材44が設けてあり、このスリ割部材44をねじ付きハンドル45にて締めることにより、受け台37が基台40に対して任意の位置で固定できるようになっている。受け台37の一側には、受け台37上に搭載されるヘッド受け台27の側面に当接して、これを固定する押しねじ46が設けてある。
ヘッド受け皿27は、上記移動台装置26の受け台37の上面に、これに突設した位置決めピン38に係合して位置決めして載置されるようになっている。
ヘッド受け皿27は、図8から図11に示すようになっていて、ラインヘッド筺体11を、これのインクヘッド12を下側にして載せるようになっており、このヘッド受け皿27の両側に把手47a,47bが設けてある。なおこの両把手47a,47bにおいて、移動台装置26の移動方向上流側の把手47aは、装着状態のラインヘッド筺11と干渉しないように小さくなっている。
ヘッド受け皿27の底面の複数個所には、ラインヘッド筺体11の下面を受けるクッション48が設けてある。また、ヘッド受け皿27の周壁の内面の周囲方向の複数個所に、下動するラインヘッド筺体11の周面を隙間なく案内する案内片49が設けてある。またこれの底板には、上記受け台37に設けた位置決めピン38に係合する位置決めピン孔50,50が設けてある。
上記のように構成したラインヘッド筺体着脱治具Aの作用を以下に説明する。
図1に示すように、ペーパライン上に設置されている複数のインクジェットヘッド2a〜2dのうちの、例えば最下流側のインクジェットヘッド2dのラインヘッド筺体11を、これの制御装置筺体9から取り外す場合には、図3、図4に示すように、このインクジェットヘッド2dに対応する位置の補助台21及び補助フレーム21aに設けた第1・第2の支持部材22,23に、ラインヘッド筺筺着脱治具Aのレール部材24、直立支持部材25を係合して用いる。
このラインヘッド筺体着脱治具Aは、まずこれのレール部材24の一方の連結金具33aに設けた係止片34a,34bを、補助台21に設けてある第1支持部材22の支持棒29の溝29a,29bに係合すると共に、押しねじ35にて固定して、この第1支持部材22に結合する。そしてこれと前後して直立支持部材25の支柱25a,25bの下端を、第2支持部材23の支持金具30a,30bの穴31に差し込み結合する。
このときの両支柱25a,25bの下端は、支持金具30a,30bの下部に設けたボルト32の先端に当接して支持される。そしてこのボルト32の穴31内への突出長さを調整することにより、各支柱25a,25bの上端の床面Lからの高さh1,h2を調節して、上記レール部材24の他方の連結部材33bが一方の連結部材33aと平行になるようにする。
この状態でラインヘッド筺体着脱治具Aの移動台装置26が、ラインヘッド筺体11の下面と平行になる状態で支持される。なお、このときの移動台装置26の基台36を、インクジェットヘッド2dの原動機側の外側へのストローク端に位置させ、また受け台37を制御装置筺体9側から離れる方向側(用紙5の走行方向下流側)へのストローク端に位置させて、それぞれのスリ割部材42,44をねじ付きハンドル43,45にて締め付けることにより固定しておく。そして受け台37上にヘッド受け皿27を載置し、押しねじ46にて固定しておく。このときのヘッド受け皿27は、位置決めピン38と位置決めピン孔50の係合により位置合わせされる。
次に、制御装置筺体9をメンテナンス位置P2に移動する。ついで基台36の固定を解除して移動台装置26を上記メンテナンス位置P2に移動して再び固定する。そしてこの状態で受け台37の固定を解除して制御装置筺体9側へ移動して、受け台37上に載置してある受け皿27をラインヘッド筺体11の下側に位置させて再び固定する。
その後、ラインヘッド筺体11を制御装置筺体9との係合から解除すると共に、昇降装置14の作動にてこのラインヘッド筺体11を下降させて受け皿27上に載置する(図12)。このとき、ラインヘッド筺体11は、ヘッド受け皿27の内面の周囲に設けられた案内片49に案内されて、ヘッド受け皿27内にスムーズに着座される。
この状態でヘッド受け皿27を引き出すことによりラインヘッド筺体は、制御装置筺体9のブラケット13から引き出される(図13)。
その後、移動台装置26を原動機側の外方へ移動して再びこれを固定し、この状態で押しねじ46をゆるめてからヘッド受け皿27をこれの把手47a,47bを持って、移動台装置26よりラインヘッド筺体11ごと取り外して、図示しない作業台へ移動する。そしてここでラインヘッド筺体11をヘッド受け皿27より取り出してメンテナンスする。あるいはこのラインヘッド筺体11を交換する。
ラインヘッド筺体11を制御装置筺体9へ装着する場合には、上記作業を逆に行う。
上記実施の形態において、ヘッド受け皿27にクランプを設け、ヘッド受け皿27に載置したラインヘッド筺体11をこのクランプにて固定するようにしてもよい。
不使用時のラインヘッド筺体着脱治具Aは、上記したように1つのインクジェットヘッドの原動機側に装着したままでもよいが、第1・第2の支持部材22,23以外の部材を、この両支持部材22,23から取り外して格納しておいてもよい。
この格納時にはレール部材24と直立支持部材25とが折り畳まれるので、少ないスペースで格納できる。
上記のようにしてラインヘッド筺体11をメンテナンスしようとするそれぞれのインクジェットヘッドの原動機側に、本発明に係るラインヘッド筺体着脱治具Aを装着して、所定の操作にて上記ラインヘッド筺体11を着脱する。
このときにおいて、印字部2における各インクジェットヘッド2a〜2dのそれぞれは、用紙5の走行面に対して平行になっていることにより、それぞれのラインヘッド筺体11の下面の姿勢及び床面からの高さが異なるが、レール部材24の姿勢及び外側の床面からの高さhが、直立支持部材25を支持する第2支持部材23にて調整できることにより、かつ各インクジェットヘッド2a〜2dに対応して設けた第1支持部材22に着脱できることにより、本発明に係るラインヘッド筺体着脱治具Aの第1・第2の両支持部材22,23を除く各部材を、各インクジェットヘッド2a〜2dに対して特別な調整をすることなく自由に兼用して用いることができる。
また、第1支持部材22の支持棒29は、上記したように各インクジェットヘッド2a〜2dの補助台21と平行に設置されるが、この支持棒29の姿勢を調整可能にしてブラケット28に固定することにより、補助台21に対するブラケット28及び支持棒29の設置誤差を調整することができるようにしてもよい。
さらに上記実施の形態では、受け台37上にヘッド受け皿27を位置決めして係脱可能にし、これにラインヘッド筺体11を載置するようにした例を示したが、このヘッド受け皿27を用いずに、受け台37上に直接ラインヘッド筺体11を載置係合するようにしてもよい。
1…給紙部、2…印字部、2a,2b,2c,2d…インクジェットヘッド、3…加工部、4…排紙部、5…用紙、6…乾燥機、7…支持装置、8…支持フレーム、9…制御装置筺体、10…支持機構、11…ラインヘッド筺体、12…インクヘッド、13…ブラケット、13a,13b…アーム、14…昇降装置、15…キー、16…溝、17…位置決めピン、18…レール、19…送りねじ、20…ノズル回復装置、21…補助台、21a…補助フレーム、22,23…第1・第2の支持部材、24…レール部材、24a,24b…レール、25…直立支持部材、25a,25b…支柱、26…移動台装置、27…ヘッド受け皿、28…ブラケット、29…支持棒、29a,29b…溝、30a,30b…支持金具、31…穴、31a…ねじ部、32…ボルト、33a,33b…連結金具、34a,34b…係止片、35…押しねじ、36…基台、37…受け台、38…位置決めピン、39,40…軸受、41…レール、42,44…スリ割部材、43,45…ねじ付きハンドル、46…押しねじ、47a,47b…把手、48…クッション、48…案内片、50…位置決めピン孔。