JP2007136642A - 微小構造を有する材料及び微小構造の製造方法 - Google Patents

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展宏 小玉
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隆幸 中谷
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大輔 柴田
Hidetoshi Takeda
秀俊 武田
Riyoujin Hatazawa
亮仁 畑澤
Atsuko Takeuchi
敦子 竹内
Toshiro Furutaki
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Abstract


【課題】 微小孔6に流体を通す際の圧力損失を低減させた、微小構造を有した材料1を提供することである。
【解決手段】
直径0.5〜10μmの複数の開口部6aを有した微小孔6を有する材料1について、
当該開口部6a及びその周辺に渦状の加工領域7を有することを特徴とする、微小構造を有する材料1とその製造方法である。
これを用いることにより、当該開口部6aから流体を流入させる際に、当該渦状の加工領域7に沿って当該流体の流線を規定することが出来、よりスムーズに当該流体を当該微小孔6の内部に流入させることが可能になる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、材料に形成された微小構造とその製造方法に関し、特に、パルスレーザによって微小孔の開口部に形成された、当該微小孔を通じる流体の流れを改善するための、渦状の微小構造及びその製造方法に関する。
例えばマイクロノズルやバイオチップ・ケミストリーチップ等に用いるにあたり、材料に液体や気体などの流体を通じることを目的として、材料に直径0.5〜10μmの複数の開口部を有した微小孔を形成する加工を行うことは多い。また、上記のように最終製品に流体を通じる場合以外でも、最終製品の製造工程において微小孔構造の内部に溶融金属等の流体を流し込むことを目的として、材料に微小孔構造を形成することも多い(特許文献1)。
ところが、当該微小孔に流体を通す場合には、当該微小孔の前後において流体抵抗があるため、圧力損失が生じる。そこで、当該圧力損失を抑えるように、内部にテーパ角度を有した微小孔をフェムト秒レーザの集光照射によって形成し、当該微小孔をインクジェット記録ヘッドとして用いる方法が、従来知られている(特許文献2)。
特開2003−110206号公報(請求項1)
特開2002−052718号公報(図2)
しかしながら、従来技術2に係る形状の微小孔であっても、流体の流入する当該微小孔の開口部付近において当該流体の流線が集中するため、当該流線同士が干渉を起こしやすい。そのため、当該微小孔の開口部付近では乱流が生じやすい。このように生じた乱流が、当該開口部の近傍で流体抵抗となるため、当該微小孔に流れ込む際に当該流体に圧力損失が生じるという問題点があった。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、第1には、微小孔に流体を通す際の圧力損失を低減させた、微小構造を有した材料を提供することである。第2には、当該微小構造をより短時間で効率的に形成することの可能な、微小構造の製造方法を提供することである。
本発明者は、微小孔の開口部における流体への乱流の発生を防止するには、当該流体の流入する開口部の周辺において、当該流体に生じる流線を規定することが有効であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、請求項1記載の発明は、直径0.5〜10μmの複数の開口部を有した微小孔を有する材料について、当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を有することを特徴とする、微小構造を有する材料である。
ここで、「複数の開口部を有した微小孔」とは、貫通孔等のような直線状のものに限られるものではなく、経路上で折れ曲がった形状を有する微小孔に対しても好ましく適用することが可能である。
また、「渦状の加工領域」とは、図2に示すような形状である。ここで、当該渦状の加工領域全体の直径は当該開口部の直径の1.5倍以上であり、当該渦状の加工領域の深さは当該開口部の直径の0.2倍以上あることが好ましい。当該渦状の加工領域の直径が小さすぎる場合、又は当該渦状の加工領域が浅すぎる場合には、流体の流線を規定する作用が得られにくくなるため、好ましくない。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加えて、当該微小孔のうち渦状の加工領域を有した1以上の開口部から、流体を流入させることを特徴とする、微小構造を有する材料である。
ここで、流入させることの出来る流体としては、透明材料を腐食又は溶融しないような流体を用いることが出来る。具体的には、常温・常圧で気体又は液体をなすもの、加熱時又は減圧時に液体又は気体となるもの、冷却時又は加圧時に液体となるものの他、超臨界流体等も用いることが可能である。
また、請求項3記載の発明は、直径0.5〜10μmの複数の開口部を有した微小孔を有する材料に対して、円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させて当該開口部の中央部に照射させ、当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を形成することを特徴とする、微小構造の製造方法である。
ここで、円偏光を有するパルスレーザは、例えば、一般的な直線偏光を有するパルスレーザを1/4波長板に透過させることによって得ることが出来る。円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを、レンズ等により集光させて当該材料に照射することで、当該レンズの集光によって生じた焦点の近傍で特徴的なアブレーションを起こし、渦状の加工領域を形成することが出来る。
そして当該パルスレーザは、当該材料に対して1パルス以上を照射させることで、当該渦状の加工領域を形成させることが可能である。しかしながら、当該材料の一点に対して、例えば10秒を超えるような長い時間に亘って当該パルスレーザを照射させると、当該材料にクラックが入りやすくなるため好ましくない。
また、請求項4記載の発明は、透明材料に対して、直線偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させ、当該集光により生じた焦点を透明材料に対して走査させながら当該パルスレーザを当該透明材料に照射し、当該焦点の走査した近傍の部分に、当該透明材料の表面を2ヶ所以上含んだ微小孔を形成する工程と、当該微小孔を形成したレーザ加工装置を用いて、円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させて当該開口部の中央部に照射させ、当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を形成する第2の工程とを含むことを特徴とする、微小構造の製造方法である。
ここで、例えば当該レーザ加工装置のうちパルスレーザの光路上において、1/4波長板の有無を切り替えることにより、単一のパルスレーザ発生源から発生するパルスレーザについて、円偏光を有するものと直線偏光を有するものとを容易に切り替えることが出来る。
また、請求項5記載の発明は、請求項3〜4記載の構成に加えて、形成された微小孔及び/又は渦状の加工領域に対して、ウエットエッチング処理を行うことを特徴とする、微小構造の製造方法である。
本発明の微小構造を有する透明材料によれば、複数の開口部を有する微小孔の開口部の周辺に渦状の加工領域を形成させることにより、当該開口部から液体,気体,超臨界流体等の各種流体を流入させる際に、当該渦状の加工領域に沿って当該流体の流線を規定することで、渦状の流れを当該流体に持たせることが出来る。それにより、当該開口部の近傍において乱流を発生しにくくして圧力損失を抑え、よりスムーズに当該流体を当該微小孔の内部に流入させることが可能になるという効果を奏する。
また、本発明の微小構造の製造方法によれば、当該微小孔の開口部の中央部に円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光照射させることにより、渦状の加工領域を、きわめて短時間のうちに形成することが可能になるという効果を奏する。
また、請求項4記載の微小構造の製造方法によれば、パルスレーザによる微小孔の形成と当該渦状の加工領域の形成を、単一のレーザ加工装置によって行うことで、1/4波長板以外に特別な装置系を必要とせず、なおかつ極めて効率的に、渦状の加工領域を開口部に有する微小孔を形成することが可能になるという効果を奏する。
さらに、請求項5記載の発明によれば、形成された微小孔及び/又は渦状の加工領域に対してエッチングを行うことで、パルスレーザの照射によって形成されたアブレーション領域や、デブリやドロスといった加工残渣等を、効率よく除去することで当該微小孔及び渦状の加工領域を平滑化出来る。そのため、よりスムーズに流体の流れることの出来る微小構造を形成することが可能になるという効果を奏する。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態は、微小孔6を有する材料1に対して、パルスレーザ3を用いた微小構造6の製造方法と、当該方法により形成された微小構造6である。
本実施形態に用いる材料1としては、表面に開口部6aのある微小孔6を有しており、パルスレーザ3の波長域における吸収が小さく、なおかつ、パルスレーザ3の多光子吸収によってアブレーション領域4が形成されるような、固体材料を用いることが出来る。なぜならば、材料1にパルスレーザ3を照射する際に、使用するパルスレーザ3の波長が材料1の固有吸収内であると、加工する領域の周辺においてパルスレーザ3の吸収が起こって、この部分の材料1が先に改質してしまい、当該材料1への加工の妨げになることが多いからである。当該材料1は、必要に応じて予め公知の研磨手段を用いて表面を平坦化させることが好ましい。
一方で、本実施形態に用いるパルスレーザ3としては、当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するものを用いることが出来、その中でも1ps以下のパルス幅を持つものが好ましい。1ps以下のパルス幅を持つパルスレーザ3は、10TW/cm以上のレーザ強度を有しており、材料1が当該強度を有するパルスレーザ3を多光子吸収する作用を有しており、形成されるアブレーション領域4の周囲への熱拡散が抑えられるため、より正確に微小構造6の形状を調整出来るからである。具体的には、パルスレーザ3のパルス幅は150fs〜1psで、繰返し周期は1kHz〜300kHzで、波長は780nm〜800nm又はその第2・第3高調波であり、かつ平均出力1W前後のものが使用可能である。
また、当該パルスレーザ3は円偏光を有するものを用いる。そのため、例えばパルスレーザ3が一般的な直線偏光を有するものである場合は、図1に示すように、当該パルスレーザ3のレーザ発光源3aと当該材料1との間の光路上に1/4波長板5を設置する。
そして、当該材料1が載置台2に設置された状態で、上記条件に適合したパルスレーザ3をレンズ3bで集光する。当該レンズ3bにより形成された焦点3cの位置が当該材料1に形成された微小孔6の開口部6aと一致するように、図示しないXYZステージ等を用いて材料1の位置を調節した上で、当該パルスレーザ3を材料1に照射して、当該焦点3cの近傍の材料1に対してアブレーション領域4を形成させる。このとき、上記条件のパルスレーザ3を円偏光にして当該材料1に照射させることで、当該微小孔6の開口部6aに渦状の微小構造6を形成させることが出来る。
このようにして渦状の加工領域7を形成した材料1に対して、ウエットエッチング処理を行うことが好ましい。パルスレーザ3の照射によって形成されるアブレーション領域4や、デブリやドロスといった加工残渣等を、効率よく除去することが出来るからである。ウエットエッチング処理に用いるエッチャント6としては、材料1へのエッチング作用が小さく、アブレーション領域4へのエッチング作用の大きいものが好ましく、具体的にはフッ化水素酸をはじめとした公知のエッチャントを用いることが可能である。
<第2の実施形態>
本実施形態では、微小孔6の形成工程と同時に、もしくは微小孔6の形成工程に引き続いて、単一のパルスレーザ発光源3aを用いて、当該微小構造6を形成させる形態について説明する。
本実施形態に用いる材料1としては、パルスレーザ3の波長域における吸収が小さく、パルスレーザ3の多光子吸収によってアブレーション領域4が形成されるような透明材料を用いることが好ましい。透明材料を用いることで、任意の方向からパルスレーザ3を照射させて微小孔6を形成することが出来るからである。ここで透明材料の具体例としては、シリカガラスやホウケイ酸ガラス等のガラス、石英やサファイヤ単結晶等の酸化物結晶が挙げられる。
当該材料1は、予め公知の研磨手段を用いて表面を平坦化させておく。
一方で、本実施形態に用いるパルスレーザ3としては、第1の実施形態と同様のものを用いることが可能である。そして、当該材料1が載置台2に設置された状態で、上記条件に適合したパルスレーザ3をレンズ3bで集光する。当該レンズ3bによる焦点3cの位置が当該材料1において微小孔6の開口部6aを形成すべき箇所と一致するように、図示しないXYZステージ等を用いて材料1の位置を調節した上で、当該パルスレーザ3を材料1に照射して、当該焦点3cの近傍の材料1に対してアブレーション領域4を形成させる。そして、当該パルスレーザ3に対して当該材料1を相対的に移動させることで焦点3cを移動させて、透明材料の表面を2ヶ所以上含んだ微小孔6を形成させる。ここで、透明材料の表面を2ヶ所以上含むように微小孔6を形成させることで、当該表面に形成される開口部6aの一部を当該流体の流入口とした上で、残りの開口部6aから当該微小孔に入っていた空気を流出させることが可能になるため好ましい。
ここで、パルスレーザ3による材料1に微小孔6を形成する場合は、例えば透明な材料1の一方の側からパルスレーザ3を照射して他方の側に開口部6aを形成させた後で、当該一方の側に向かってパルスレーザ3の焦点3cを走査させることが好ましい。既に形成されたアブレーション領域4によってパルスレーザ3が屈折・散乱することを防ぐことが出来るからである。
本実施形態において微小孔6を形成させるに当っては、パルスレーザ3として直線偏光もしくは円偏光を有するもののいずれも、使用することが可能である。ここで、円偏光を有するパルスレーザ3を当該微小孔6の形成に用いた場合には、パルスレーザ3の焦点3cが材料1の表面に到達したときに微小構造6を形成することが出来るため、後に示す微小構造6の形成工程は不要となるため、なお好ましい。
一方で、直線偏光を有するパルスレーザ3を当該微小孔6の形成に用いた場合には、微小孔6を形成したところで当該パルスレーザ3のレーザ発光源3aと当該材料1との間の光路上に1/4波長板5を設置する。そして、当該材料1が載置台2に設置されたままの状態で、上記第1の実施形態と同様の要領を用いることで、当該微小孔6の開口部6aに渦状の微小構造6を形成させることが出来る。この場合、パルスレーザ3の光路上において1/4波長板5の有無を切り替えることで、特別な装置系を必要とせず、かつ極めて効率的に、渦状の加工領域7を開口部6aに有する微小孔6を形成出来るため好ましい。
このようにして渦状の加工領域7及び微小孔6を形成した材料1に対しては、第1の実施形態と同様に、ウエットエッチング処理を好ましく行うことが可能である。
本発明を、以下の実施例を用いて詳細に説明する。
[実施例1]
本実施例は、本発明の実施形態における、渦状の加工領域を有する微小構造の形成方法に関するものである。
材料としてTiドープサファイヤ基板を用い、波長800nm,パルス幅150fs,繰返し周期200kHzの直線偏光を有したパルスレーザを使用した。これを対物レンズ100×(NA0.7)で集光し、当該集光による焦点を当該材料において走査させることで、直径0.5μmの開口部を2個有した微小孔を形成した。
そして、当該パルスレーザのレーザ発光源と当該Tiドープサファイヤ基板との間の光路上に1/4波長板を設置して当該パルスレーザを円偏光として、当該材料の表面における当該微小孔の開口部に当る部分に当該パルスレーザの焦点位置を合わせて、当該パルスレーザを1秒間照射することで、当該開口部にアブレーション領域を形成した。当該渦状の加工領域の表面を原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、図3に示すとおりになった。そして、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて当該渦状の加工領域を測定したところ、全体の直径は0.8μmであり、当該渦の深さは0.1μmであった。ここで、当該加工領域を有する微小孔に流体を通じたところ、当該加工領域を有しない場合に比べて、当該流体に生じていた圧力損失を大きく低減させることが出来た。
本実施形態に係る、材料へのアブレーション領域の形成方法を説明する図である。 本実施形態に係る、渦状の加工領域を開口部に有する微小孔を説明する図である。 本実施形態の実施例1に係る、渦状の加工領域を有する微小孔の原子間力顕微鏡像である。
符号の説明
1 材料
2 載置台
3 パルスレーザ
3a パルスレーザ発光源
3b レンズ
3c 焦点
4 アブレーション領域
5 1/4波長板
6 微小孔
7 渦状の加工領域

Claims (5)

  1. 直径0.5〜10μmの複数の開口部を有した微小孔を有する材料について、
    当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を有することを特徴とする、微小構造を有する材料。
  2. 当該微小孔のうち渦状の加工領域を有した1以上の開口部から、流体を流入させることを特徴とする、請求項1記載の微小構造を有する材料。
  3. 直径0.5〜10μmの複数の開口部を有した微小孔を有する材料に対して、
    円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させて当該開口部の中央部に照射させ、当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を形成することを特徴とする、微小構造の製造方法。
  4. 透明材料に対して、
    直線偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させ、当該集光により生じた焦点を透明材料に対して走査させながら当該パルスレーザを当該透明材料に照射し、当該焦点の走査した近傍の部分に、当該透明材料の表面を2ヶ所以上含んだ微小孔を形成する工程と、
    当該微小孔を形成したレーザ加工装置を用いて、円偏光を有し、かつ当該材料の損傷閾値以上のレーザフルエンスを有するパルスレーザを集光させて当該開口部の中央部に照射させ、当該開口部及びその周辺に渦状の加工領域を形成する第2の工程と
    を含むことを特徴とする、微小構造の製造方法。
  5. 形成された微小孔及び/又は渦状の加工領域に対して、ウエットエッチング処理を行うことを特徴とする、請求項3〜4記載の微小構造の製造方法。

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