JP6162975B2 - 微細孔を備えた基板の製造方法 - Google Patents
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10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、
下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.06μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法である。
式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
第一実施形態のレーザー走査速度は従来よりも格段に高速である。さらに、レーザー光の繰り返し周波数を調整することによって、従来よりも広いパルスピッチで改質部を形成することができる。このような加工条件で形成された改質部は、従来と同等以上の速度でエッチングされる。換言すれば、従来と同等以上のエッチング速度で除去することができる改質部を、従来よりも短い時間(改質工程に要する時間)で形成することができる。したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間を短縮することができ、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
レーザー光の偏波を直線偏波にすることにより、エッチング耐性がより低下して、より容易にエッチングされうる改質部を形成することができる。
レーザー光の1パルスのピーク強度を50TW/cm2以上に設定することにより、エッチング耐性がより低下して、より容易にエッチングされうる改質部を形成することができる。
前記基板が石英ガラス製であると、エッチング選択性の高い改質部を容易に形成することができる。その結果、石英ガラス基板中に、直線性が高い微細孔を容易に形成することができる。
したがって、改質工程とエッチング工程とを合わせた工程全体の時間が短縮化されるので、微細孔を備えた基板の製造方法の製造効率を従来よりも向上させることができる。
本発明の製造方法の第一実施形態は、基板の内部に、ピコ秒オーダー以下(例えば10ピコ秒未満)のパルス時間幅を有するレーザー光を照射して、前記基板の内部で、1パルス毎の焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に前記焦点を走査し、前記焦点が通過した近傍域(周囲)にエッチング耐性が低下した改質部を形成する改質工程と、
前記改質部をエッチング処理によって基板から除去することにより、前記基板に微細孔を形成するエッチング工程とを含む。さらに、前記改質工程において、前記基板内部を前記レーザー光の焦点が移動する際の、前記基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.3μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整する方法である。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
図1に、改質工程の概念図を示す。基板1の第一の面側から、レーザー光Lを照射して、基板1の内部で、焦点Fを略一定の速度で走査する。このレーザー光Lは、連続光ではなく、一定の繰り返し周波数と一定のパルス時間幅で出射するパルス状のレーザー光である。焦点Fが通過した領域及びその近傍域(周囲)に、エッチング耐性が低下した改質部2を形成できる。図中の矢印は、レーザー光Lの走査方向を表す。図中、レーザー光Lを集光させるレンズは省略して描いていない。図1では、焦点Fの走査方向は基板の第一の面(図示略)に対して垂直であるが、走査方向はこれに制限されず、レーザー光の光軸と走査方向とが略平行である限りにおいて、前記走査方向は所望の向きに設定することができる。
前記ガラス基板としては、例えば、石英で構成されるガラス基板、珪酸塩を主成分とするガラスが挙げられ、より具体的には、例えば合成石英、ホウ珪酸ガラスで構成されるガラス基板などが適用できる。また、結晶性の石英にも同様に適用することが可能である。これらの中でも、加工性に優れる石英ガラスがより好ましい。なお、基板の形状は平板に限らず、例えば球形であってもよい。この場合、前記基板を基材と呼ぶこともできる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「ピコ秒オーダー以下」とは、「10ピコ秒未満」を意味する。
レーザー光の焦点は一定の範囲に広がりを持つので、「レーザー光の集光部」と言い換えられる。この広がりを有するため、焦点が通過した領域及びその近傍域(周囲)に改質部が形成される。
式(1);パルスピッチ(μm)=
{レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{レーザー光の繰り返し周波数(Hz)}
この式(1)によれば、パルスピッチは、レーザー光の焦点の走査方向において、先発のパルスと後発のパルスとの距離を意味する。
レーザー光のピーク強度の上限は、基板が破壊されるような極端に高い強度でない限り特に制限されず、例えば700TW/cm2が挙げられる。
ガラス基板や石英基板において、Si−Oの結合エネルギーは、約6.5eVとされる。この結合エネルギーは、波長が約190nmの紫外光の光子エネルギーに相当する。他方、フェムト秒レーザーを集光照射した際には、集光部でのピーク強度が大きくなるため、多光子吸収反応が支配的となる。後述する試験例1のように、波長800nmのフェムト秒レーザーが、Si−Oの結合を切断するには、5光子吸収以上のエネルギーが必要である。他の波長であっても、集光部で多光子吸収反応によって6.5eV以上のエネルギーが得られるのであれば、同様にSi−Oの結合を切断することができる。一方で集光部近傍以外では結合を多光子吸収反応が起きないため、結合を切断可能なエネルギーとはならず、改質部を形成することはない。
本発明の第一実施形態において使用するレーザー光のパルス時間幅は特に制限されないが、例えば1fs以上10ps未満が好ましく、1fs以上3ps未満がより好ましく、1fs以上2ps未満が更に好ましい。
改質部をエッチングすることにより微細孔を形成する方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、公知の方法が適用できる。
例えば、基板の内部に形成した改質部の端部が基板の表面に露出する状態で、前記基板をエッチング液(エッチャント)に浸漬することによって、改質部を基板内部から除去し、微細孔を形成できる。前記エッチング液としては、例えばフッ酸(HF)や水酸化カリウム(KOH)の水溶液が用いられる。
エッチング後に形成される微細孔の孔径の形状(微細孔の長手方向に直交する方向の断面形状)は、エッチング時間を短くするなどして微細孔の孔径を小さくすると、後述するような放射状に複数の直線領域が広がるような形状(以降、放射形状)となる。さらにエッチング時間を長くするなどして、微細孔の径を大きくすると、円又は楕円に近似できる形状となる。本明細書で例示した微細孔の孔径は、特に明示しない限り、放射形状の中心からの最外点を結び、円状に近似した際の直径、或いは円に近似される場合は円の直径である。
チタンサファイアレーザーを用いて、図3に示した様に、石英ガラス基板1の第一の面1aからレーザー光Lを基板1内部に入射させ、レーザー光Lの光軸に沿って、当該光軸に平行に焦点Fを引き上げるように走査することにより、改質部2を形成した。形成した改質部2の両端は、基板1の第一の面1aと第二の面1b(第一の面に対向する面)にそれぞれ露出している。改質部2の長手方向の長さは、基板1の厚みと同じ500μmであり、改質部の径は最大で5μm程度であった。
具体的な照射条件は以下の通りである。
・波長(中心波長)=800nm、スペクトル幅=10nm(±5nm)、パルス時間幅=〜220fs、対物レンズの開口数(N.A.)=0.5、偏波=円偏波、光軸と走査方向とのなす角度=約0度、で行った。
・ピーク強度(1パルス当りのレーザーフルエンス/パルス時間幅)=20,50,70,90TW/cm2の各値で、それぞれ試験した。
・走査速度(μm/sec)を3000μm/secに設定し、繰り返し周波数(kHz)は、所定のパルスピッチとなる様に、10kHz〜200kHzの範囲で調整した。
・1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら一定の速度で走査した。
改質部を形成した基板を、温度80℃のKOH水溶液(15wt%)に3時間浸漬し、基板の両面から同時に改質部のエッチングを行い、微細孔を形成した。
各条件で形成された改質部の断面は略円形、若しくは放射形状であり、その直径は約4〜9μmであった。また、各条件で形成された微細孔の断面は略円形、若しくは放射形状であり、その直径は約5~10μmであった。
図5に示した写真はそれぞれパルスピッチの値が異なっており、(a)は0.015μm、(b)は0.06μm、(c)は0.3μmのパルスピッチである。この3つの写真を比較すると、(a)については断面形状が丸型の微細孔であるのに対し、(b)及び(c)では、丸型の微細孔に加えてクラック状の微細構造(放射形状)が形成されていることが分かる。この結果から、(a)のパルスピッチと(b)及び(c)のパルスピッチとでは、レーザー照射によって形成される改質部の構造が異なっていると推察される。そして、その差異がクラック状の微細構造となって(b)及び(c)の微細孔に出現したもののと考えられる。尚、(b)は(a)と(c)の特徴をあわせ持つ形状となっているものと考えられる。そして図4と図5の結果から、微細孔の断面の孔径が10μmより小さく、真円度の高い断面形状を有する微細孔を、速いエッチング速度で形成するためには、パルスピッチを0.03μm〜0.06μmとすることが好ましい。
対物レンズの開口数(N.A.)=0.25に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例2の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図6に示す。「□」で示されたプロット群はピーク強度=50TW/cm2で行った結果であり、「△」で示されたプロット群はピーク強度=70TW/cm2で行った結果である。
これらの結果から、0.03〜0.3μmのパルスピッチの範囲において、エッチング長はレーザーのスポット径(対物レンズの開口数)に殆ど依存しないことが理解される。
対物レンズの開口数(N.A.)=0.8に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例3の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図7に示す。「×」、「□」、「△」、「○」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=20、50、70、90TW/cm2で行った結果である。
N.A.=0.8の場合、レーザー光の焦点が結像し難く、焦点が比較的ぼやけてしまう。このため、試験例1及び2の結果と比べて、エッチング長が全体的に小さくなっている。N.A.=0.8の場合においても、最適なパルスピッチは0.03〜0.3μmであることが理解される。N.A.=0.8の場合、何れのピーク強度においても、パルスピッチが0.06〜0.2μmであることがより好ましい。
偏波を直線偏波に変更した以外は、試験例1と同様に行った。試験例4の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図8に示す。「×」、「□」、「△」、「○」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=20、50、70、90TW/cm2で行った結果である。
ピーク強度が50TW/cm2以上である場合、試験例4ではエッチング長はパルスピッチに殆ど依存することなく、十分なエッチング長を得ることができた。一方、ピーク強度が20TW/cm2であり、且つパルスピッチが0.1μmよりも大きく0.3μmよりも小さい場合、エッチング長が格段に大きくなる。試験例4においては、図8に示されているように、パルスピッチ0.2μmでのエッチング長が特異的に大きくなる結果となった。
チタンサファイアレーザーを用いて、図9に示した様に、石英ガラス基板1の第一の面1aからレーザー光Lを基板1内部に入射させ、レーザー光Lの光軸に沿って、当該光軸に平行に焦点Fを引き上げるように走査することにより、改質部2を形成した。形成した改質部2の一方の端部は基板1の第一の面1aに露出し、他方の端部は基板内部に位置している。改質部2の長手方向の長さは約800μmであり、改質部の径は最大で5μm程度であった。具体的な照射条件は、試験例1と同様である。
この結果から、エッチング長を長くする(エッチング速度を高める)観点から、パルスピッチは0.06〜0.2μmの範囲が好ましいことが明らかである。
ここではピーク強度=70TW/cm2の場合のみを示したが、他のピーク強度の場合においても同様の傾向が観察されており、パルスピッチは0.06〜0.3μmの範囲が好ましく、0.06〜0.2μmの範囲がより好ましい。
偏波を直線偏波に変更した以外は、試験例5と同様に行った。試験例6の結果におけるパルスピッチとエッチング長(エッチング速度)の関係を図11に示す。「□」、「△」の各プロット群は、それぞれ、ピーク強度=50、70TW/cm2で行った結果である。
試験例6の条件において、エッチング長はパルスピッチに殆ど依存しないことが理解される。ただし、単位時間当たりのエッチング長を長くする観点から、50TW/cm2の場合のパルスピッチの範囲は0.06〜0.3μmが好ましく、70TW/cm2の場合のパルスピッチの範囲は0.03〜0.3μmが好ましい。
試験例5の結果と試験例6の結果を比較すると、エッチング長を長くする(エッチング速度を高める)観点から、直線偏波の方が好ましいことが理解される。
Claims (4)
- 微細孔を備えた基板の製造方法であって、
10ピコ秒未満のパルス時間幅を有するパルス状のレーザー光の焦点が移動する際の、基板に対する前記焦点の相対速度として定義される、前記レーザー光の走査速度(μm/sec)を1×103μm/sec〜4000×103μm/secに設定し、
下記式(1)で表されるパルスピッチ(μm)が0.03μm〜0.06μmとなるように、前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)を調整し、
前記基板に、前記レーザー光を照射して、前記レーザー光が集光した焦点を前記基板の内部で、1パルス毎の前記焦点が重なるようにシフトさせながら略一定の速度で、レーザー光の光軸に沿う方向に走査し、前記焦点が通過した領域及びその近傍域にエッチング耐性が低下した改質部を形成し、
前記改質部をエッチング処理で除去することにより、前記基板に微細孔を形成することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
式(1)・・・パルスピッチ(μm)=
{前記レーザー光の走査速度(μm/sec)}/{前記レーザー光の繰り返し周波数(Hz)} - 請求項1に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記レーザー光の偏波が直線偏波であることを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記レーザー光の1パルスのピーク強度を50TW/cm2以上に設定することを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細孔を備えた基板の製造方法であって、
前記基板が石英ガラス製であることを特徴とする微細孔を備えた基板の製造方法。
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