JP2008110400A - レーザ加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に改質領域を形成するに際し、フレームに加工用レーザ光を照射してフレームに損傷を与えるのを防止することができるレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】 切断予定ライン5を含むライン50上に沿って集光用レンズ108を相対的に移動させ、加工対象物1とフレーム22との間に外形を有する加工領域30上にレンズ108が位置している際に、測定用レーザ光L2をレンズ108で集光して、加工対象物1の表面3で反射されたレーザ光L2の反射光を検出する。この検出により、加工用レーザ光L1の集光点Pが表面3から一定の距離の位置に合うように、表面3とレンズ108との距離を略一定に調整しながら、レーザ光L1をレンズ108で集光して、溶融処理領域13を加工対象物1の内部に形成する。
【選択図】 図20

Description

本発明は、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断するためのレーザ加工方法に関する。
板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する技術として、ブレードダイシング法と称されるものがある(例えば、特許文献1参照)。ブレードダイシング法では、環状のフレームに張られた拡張可能シートに板状の加工対象物を貼り付けて、これを載置台上に固定し、高速回転する切削ブレードによって加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する。このとき、加工対象物を包囲するフレームに損傷を与えるのを防止するために、フレームの内側の領域においてのみ、切削ブレードを加工対象物に対して相対的に移動させる。
一方、板状の加工対象物を切断予定ラインに沿って切断するためのレーザ加工方法として、環状のフレームに張られた拡張可能シートに板状の加工対象物を貼り付けて、これを載置台上に固定し、加工対象物の内部に集光用レンズで集光点を合わせて加工用レーザ光を照射することにより、切断の起点となる改質領域を切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に形成するものがある(例えば、特許文献2参照)。
このようなレーザ加工方法では、ブレードダイシング法と異なり、フレームの外側の領域を含めて、集光用レンズを加工対象物に対して相対的に移動させる必要性がある。その理由は、次の通りである。すなわち、加工対象物に対する集光用レンズの相対的な移動速度が等速になった状態において加工対象物に加工用レーザ光を照射するためには、加工対象物に対する集光用レンズの相対的な移動距離に、相対的な移動速度が等速になるまでの加速距離を加える必要があるからである。更に、例えば、拡張可能シートを周囲に拡張させることで、改質領域を切断の起点として加工対象物を切断予定ラインに沿って切断する場合があるが、確実な切断を実現するためには、加工対象物に対してフレームを極力小さくする必要があるからである。
特開2006−13312号公報 特開2004−273895号公報
ところで、上述したようなレーザ加工方法には、次のような問題が存在する。例えば、測定用レーザ光を集光用レンズで集光して、測定用レーザ光の反射光の光量を検出し、その光量が所定の閾値を越えている場合に、改質領域を加工対象物の内部に形成するために、加工用レーザ光を集光用レンズで集光することがある。このとき、フレームの外側の領域を含めて、集光用レンズを加工対象物に対して相対的に移動させるので、加工対象物と同様に高反射率を有するフレームを加工対象物と誤認識し、フレームに加工用レーザ光を照射してフレームに損傷を与えたり、延いては加工対象物に損傷を与えたりするおそれがある。
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に改質領域を形成するに際し、フレームに加工用レーザ光を照射してフレームに損傷を与えるのを防止することができるレーザ加工方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明に係るレーザ加工方法は、環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に集光用レンズで集光点を合わせて加工用レーザ光を照射することにより、加工対象物の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる改質領域を加工対象物の内部に形成するレーザ加工方法であって、加工対象物とフレームとの間に外形を有する加工領域を設定する工程と、切断予定ラインを含むライン上に沿って集光用レンズ及び加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、集光用レンズが加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を集光用レンズで加工領域に向けて集光して、加工対象物のレーザ光照射面で反射された測定用レーザ光の反射光を検出することにより、加工用レーザ光の集光点がレーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整しながら、加工用レーザ光を集光用レンズで加工対象物に向けて集光して、改質領域を加工対象物の内部に形成する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るレーザ加工方法は、環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に集光用レンズで集光点を合わせて加工用レーザ光を照射することにより、加工対象物の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる改質領域を加工対象物の内部に形成するレーザ加工方法であって、加工対象物とフレームとの間に外形を有する加工領域を設定する工程と、切断予定ラインを含むライン上に沿って集光用レンズ及び加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、集光用レンズが加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を集光用レンズで加工領域に向けて集光して、加工対象物のレーザ光照射面で反射された測定用レーザ光の反射光を検出することにより、加工用レーザ光の集光点がレーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整し、その調整に関する調整情報を取得する工程と、切断予定ラインを含むライン上に沿って集光用レンズ及び加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、集光用レンズが加工領域上に位置している際に、調整情報に基づいて、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整しながら、加工用レーザ光を集光用レンズで加工対象物に向けて集光して、改質領域を加工対象物の内部に形成する工程と、を含むことを特徴とする。
これらのレーザ加工方法では、加工対象物の切断予定ラインを含むライン上に沿って集光用レンズ及び加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、加工対象物とフレームとの間に外形を有する加工領域上に集光用レンズが位置している際に、測定用レーザ光を集光用レンズで加工領域に向けて集光して、加工対象物のレーザ光照射面で反射された測定用レーザ光の反射光を検出する。そして、測定用レーザ光の反射光の検出結果に基づいて、加工用レーザ光の集光点がレーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整しながら、加工用レーザ光を集光用レンズで加工対象物に向けて集光して、改質領域を加工対象物の内部に形成する。以上のように、これらのレーザ加工方法では、加工対象物とフレームとの間に外形を有する加工領域上に集光用レンズが位置している際に、加工用レーザ光を集光用レンズで加工対象物に向けて集光して、改質領域を加工対象物の内部に形成する。そのため、フレームの外側の領域を含めて、集光用レンズを加工対象物に対して相対的に移動させても、フレームを加工対象物と誤認識し、フレームに加工用レーザ光を照射してフレームに損傷を与えるのを防止することができる。
なお、改質領域は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、加工対象物の内部において多光子吸収その他の光吸収を生じさせることで形成される。
本発明に係るレーザ加工方法においては、集光用レンズが加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を集光用レンズで加工領域に向けて集光して、加工領域で反射された測定用レーザ光の反射光の光量を検出し、光量が所定の閾値を越えている場合に、加工用レーザ光の集光点がレーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整することが好ましい。これにより、レーザ光照射面を基準として所定の位置に改質領域を精度良く形成することができる。
本発明に係るレーザ加工方法においては、集光用レンズが加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を集光用レンズで加工領域に向けて集光して、加工領域で反射された測定用レーザ光の反射光の光量を検出し、光量が所定の閾値を越えている場合に、非点収差が付加された測定用レーザ光の反射光の集光像が一定となるように、レーザ光照射面と集光用レンズとの距離を調整することが好ましい。これにより、加工対象物のレーザ光照射面が面振れを有していても、レーザ光照射面から一定の距離の位置に改質領域を精度良く形成することができる。
本発明に係るレーザ加工方法においては、改質領域を切断の起点として、切断予定ラインに沿って加工対象物を切断することが好ましい。これにより、加工対象物を切断予定ラインに沿って精度良く切断することができる。
本発明に係るレーザ加工方法においては、加工対象物は半導体基板を備え、改質領域は溶融処理領域を含む場合がある。
本発明によれば、環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に改質領域を形成するに際し、フレームに加工用レーザ光を照射してフレームに損傷を与えるのを防止することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態のレーザ加工方法では、加工対象物の内部に改質領域を形成するために多光子吸収という現象を利用する。そこで、最初に、多光子吸収により改質領域を形成するためのレーザ加工方法について説明する。
材料の吸収のバンドギャップEよりも光子のエネルギーhνが小さいと光学的に透明となる。よって、材料に吸収が生じる条件はhν>Eである。しかし、光学的に透明でも、レーザ光の強度を非常に大きくするとnhν>Eの条件(n=2,3,4,・・・)で材料に吸収が生じる。この現象を多光子吸収という。パルス波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点のピークパワー密度(W/cm)で決まり、例えばピークパワー密度が1×10(W/cm)以上の条件で多光子吸収が生じる。ピークパワー密度は、(集光点におけるレーザ光の1パルス当たりのエネルギー)÷(レーザ光のビームスポット断面積×パルス幅)により求められる。また、連続波の場合、レーザ光の強度はレーザ光の集光点の電界強度(W/cm)で決まる。
このような多光子吸収を利用する本実施形態に係るレーザ加工方法の原理について、図1〜図6を参照して説明する。図1に示すように、ウェハ状(板状)の加工対象物1の表面3には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5がある。切断予定ライン5は直線状に延びた仮想線である。本実施形態に係るレーザ加工方法では、図2に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射して改質領域7を形成する。なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1に実際に引かれた線であってもよい。
そして、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図1の矢印A方向に)相対的に移動させることにより、集光点Pを切断予定ライン5に沿って移動させる。これにより、図3〜図5に示すように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、この改質領域7が切断起点領域8となる。ここで、切断起点領域8とは、加工対象物1が切断される際に切断(割れ)の起点となる領域を意味する。この切断起点領域8は、改質領域7が連続的に形成されることで形成される場合もあるし、改質領域7が断続的に形成されることで形成される場合もある。
本実施形態に係るレーザ加工方法は、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lがほとんど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。
加工対象物1の内部に切断起点領域8を形成すると、この切断起点領域8を起点として割れが発生し易くなるため、図6に示すように、比較的小さな力で加工対象物1を切断することができる。よって、加工対象物1の表面3に不必要な割れを発生させることなく、加工対象物1を高精度に切断することが可能になる。
この切断起点領域8を起点とした加工対象物1の切断には、次の2通りが考えられる。1つは、切断起点領域8形成後、加工対象物1に人為的な力が印加されることにより、切断起点領域8を起点として加工対象物1が割れ、加工対象物1が切断される場合である。これは、例えば加工対象物1の厚さが大きい場合の切断である。人為的な力が印加されるとは、例えば、加工対象物1の切断起点領域8に沿って加工対象物1に曲げ応力やせん断応力を加えたり、加工対象物1に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることである。他の1つは、切断起点領域8を形成することにより、切断起点領域8を起点として加工対象物1の断面方向(厚さ方向)に向かって自然に割れ、結果的に加工対象物1が切断される場合である。これは、例えば加工対象物1の厚さが小さい場合には、1列の改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となり、加工対象物1の厚さが大きい場合には、厚さ方向に複数列形成された改質領域7により切断起点領域8が形成されることで可能となる。なお、この自然に割れる場合も、切断する箇所において、切断起点領域8が形成されていない部位に対応する部分の表面3上にまで割れが先走ることがなく、切断起点領域8を形成した部位に対応する部分のみを割断することができるので、割断を制御よくすることができる。近年、シリコンウェハ等の加工対象物1の厚さは薄くなる傾向にあるので、このような制御性のよい割断方法は大変有効である。
さて、本実施形態に係るレーザ加工方法において、多光子吸収により形成される改質領域としては、次の(1)〜(3)の場合がある。
(1)改質領域が1つ又は複数のクラックを含むクラック領域の場合
加工対象物(例えばガラスやLiTaOからなる圧電材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。このパルス幅の大きさは、多光子吸収を生じさせつつ加工対象物の表面に余計なダメージを与えずに、加工対象物の内部にのみクラック領域を形成できる条件である。これにより、加工対象物の内部には多光子吸収による光学的損傷という現象が発生する。この光学的損傷により加工対象物の内部に熱ひずみが誘起され、これにより加工対象物の内部にクラック領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。なお、多光子吸収によるクラック領域の形成は、例えば、第45回レーザ熱加工研究会論文集(1998年.12月)の第23頁〜第28頁の「固体レーザー高調波によるガラス基板の内部マーキング」に記載されている。
本発明者は、電界強度とクラックの大きさとの関係を実験により求めた。実験条件は次ぎの通りである。
(A)加工対象物:パイレックス(登録商標)ガラス(厚さ700μm)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:出力<1mJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
なお、レーザ光品質がTEM00とは、集光性が高くレーザ光の波長程度まで集光可能を意味する。
図7は上記実験の結果を示すグラフである。横軸はピークパワー密度であり、レーザ光がパルスレーザ光なので電界強度はピークパワー密度で表される。縦軸は1パルスのレーザ光により加工対象物の内部に形成されたクラック部分(クラックスポット)の大きさを示している。クラックスポットが集まりクラック領域となる。クラックスポットの大きさは、クラックスポットの形状のうち最大の長さとなる部分の大きさである。グラフ中の黒丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が100倍、開口数(NA)が0.80の場合である。一方、グラフ中の白丸で示すデータは集光用レンズ(C)の倍率が50倍、開口数(NA)が0.55の場合である。ピークパワー密度が1011(W/cm)程度から加工対象物の内部にクラックスポットが発生し、ピークパワー密度が大きくなるに従いクラックスポットも大きくなることが分かる。
次に、クラック領域形成による加工対象物の切断のメカニズムについて、図8〜図11を参照して説明する。図8に示すように、多光子吸収が生じる条件で加工対象物1の内部に集光点Pを合わせてレーザ光Lを照射して切断予定ラインに沿って内部にクラック領域9を形成する。クラック領域9は1つ又は複数のクラックを含む領域である。このように形成されたクラック領域9が切断起点領域となる。図9に示すように、クラック領域9を起点として(すなわち、切断起点領域を起点として)クラックがさらに成長し、図10に示すように、クラックが加工対象物1の表面3と裏面21とに到達し、図11に示すように、加工対象物1が割れることにより加工対象物1が切断される。加工対象物1の表面3と裏面21とに到達するクラックは自然に成長する場合もあるし、加工対象物1に力が印加されることにより成長する場合もある。
(2)改質領域が溶融処理領域の場合
加工対象物(例えばシリコンのような半導体材料)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1μs以下の条件でレーザ光を照射する。これにより加工対象物の内部は多光子吸収によって局所的に加熱される。この加熱により加工対象物の内部に溶融処理領域が形成される。溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域や、まさに溶融状態の領域や、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということもできる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns〜200nsが好ましい。
本発明者は、シリコンウェハの内部で溶融処理領域が形成されることを実験により確認した。実験条件は次の通りである。
(A)加工対象物:シリコンウェハ(厚さ350μm、外径4インチ)
(B)レーザ
光源:半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ
波長:1064nm
レーザ光スポット断面積:3.14×10−8cm
発振形態:Qスイッチパルス
繰り返し周波数:100kHz
パルス幅:30ns
出力:20μJ/パルス
レーザ光品質:TEM00
偏光特性:直線偏光
(C)集光用レンズ
倍率:50倍
N.A.:0.55
レーザ光波長に対する透過率:60パーセント
(D)加工対象物が載置される載置台の移動速度:100mm/秒
図12は、上記条件でのレーザ加工により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。シリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13が形成されている。なお、上記条件により形成された溶融処理領域13の厚さ方向の大きさは100μm程度である。
溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを説明する。図13は、レーザ光の波長とシリコン基板の内部の透過率との関係を示すグラフである。ただし、シリコン基板の表面側と裏面側それぞれの反射成分を除去し、内部のみの透過率を示している。シリコン基板の厚さtが50μm、100μm、200μm、500μm、1000μmの各々について上記関係を示した。
例えば、Nd:YAGレーザの波長である1064nmにおいて、シリコン基板の厚さが500μm以下の場合、シリコン基板の内部ではレーザ光が80%以上透過することが分かる。図12に示すシリコンウェハ11の厚さは350μmであるので、多光子吸収による溶融処理領域13はシリコンウェハ11の中心付近、つまり表面から175μmの部分に形成される。この場合の透過率は、厚さ200μmのシリコンウェハを参考にすると、90%以上なので、レーザ光がシリコンウェハ11の内部で吸収されるのは僅かであり、ほとんどが透過する。このことは、シリコンウェハ11の内部でレーザ光が吸収されて、溶融処理領域13がシリコンウェハ11の内部に形成(つまりレーザ光による通常の加熱で溶融処理領域が形成)されたものではなく、溶融処理領域13が多光子吸収により形成されたことを意味する。多光子吸収による溶融処理領域の形成は、例えば、溶接学会全国大会講演概要第66集(2000年4月)の第72頁〜第73頁の「ピコ秒パルスレーザによるシリコンの加工特性評価」に記載されている。
なお、シリコンウェハは、溶融処理領域によって形成される切断起点領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れがシリコンウェハの表面と裏面とに到達することにより、結果的に切断される。シリコンウェハの表面と裏面に到達するこの割れは自然に成長する場合もあるし、シリコンウェハに力が印加されることにより成長する場合もある。そして、切断起点領域からシリコンウェハの表面と裏面とに割れが自然に成長する場合には、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から割れが成長する場合と、切断起点領域を形成する溶融処理領域が溶融している状態から再固化する際に割れが成長する場合とのいずれもある。ただし、どちらの場合も溶融処理領域はシリコンウェハの内部のみに形成され、切断後の切断面には、図12のように内部にのみ溶融処理領域が形成されている。このように、加工対象物の内部に溶融処理領域によって切断起点領域を形成すると、割断時、切断起点領域ラインから外れた不必要な割れが生じにくいので、割断制御が容易となる。ちなみに、溶融処理領域の形成は多光子吸収が原因の場合のみでなく、他の吸収作用が原因の場合もある。
(3)改質領域が屈折率変化領域の場合
加工対象物(例えばガラス)の内部に集光点を合わせて、集光点における電界強度が1×10(W/cm)以上で且つパルス幅が1ns以下の条件でレーザ光を照射する。パルス幅を極めて短くして、多光子吸収を加工対象物の内部に起こさせると、多光子吸収によるエネルギーが熱エネルギーに転化せずに、加工対象物の内部にはイオン価数変化、結晶化又は分極配向等の永続的な構造変化が誘起されて屈折率変化領域が形成される。電界強度の上限値としては、例えば1×1012(W/cm)である。パルス幅は例えば1ns以下が好ましく、1ps以下がさらに好ましい。多光子吸収による屈折率変化領域の形成は、例えば、第42回レーザ熱加工研究会論文集(1997年.11月)の第105頁〜第111頁の「フェムト秒レーザー照射によるガラス内部への光誘起構造形成」に記載されている。
以上、多光子吸収により形成される改質領域として(1)〜(3)の場合を説明したが、ウェハ状の加工対象物の結晶構造やその劈開性などを考慮して切断起点領域を次のように形成すれば、その切断起点領域を起点として、より一層小さな力で、しかも精度良く加工対象物を切断することが可能になる。
すなわち、シリコンなどのダイヤモンド構造の単結晶半導体からなる基板の場合は、(111)面(第1劈開面)や(110)面(第2劈開面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。また、GaAsなどの閃亜鉛鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる基板の場合は、(110)面に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。さらに、サファイア(Al)などの六方晶系の結晶構造を有する基板の場合は、(0001)面(C面)を主面として(1120)面(A面)或いは(1100)面(M面)に沿った方向に切断起点領域を形成するのが好ましい。
なお、上述した切断起点領域を形成すべき方向(例えば、単結晶シリコン基板における(111)面に沿った方向)、或いは切断起点領域を形成すべき方向に直交する方向に沿って基板にオリエンテーションフラットを形成すれば、そのオリエンテーションフラットを基準とすることで、切断起点領域を形成すべき方向に沿った切断起点領域を容易且つ正確に基板に形成することが可能になる。
次に、本発明の好適な実施形態について説明する。
図14及び図15に示すように、加工対象物1は、厚さ100μmのシリコンウェハ(半導体基板)11と、複数の機能素子15を含んでシリコンウェハ11の表面11aに形成された機能素子層16と、を備えている。機能素子15は、例えば、結晶成長により形成された半導体動作層、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、或いは回路として形成された回路素子等であり、シリコンウェハ11のオリエンテーションフラット6に平行な方向及び垂直な方向にマトリックス状に多数形成されている。
以上のように構成された加工対象物1を次のようにして機能素子15毎に切断する。まず、図16に示すように、円環状のフレーム22に張られたエキスパンドテープ(拡張可能シート)23上に加工対象物1の裏面21を貼り付ける。そして、加工対象物1の表面3を上側に向けて、加工対象物1を保持したフレーム22及びエキスパンドテープ23をレーザ加工装置100の載置台101上に固定する。続いて、隣り合う機能素子15,15間を通るように切断予定ライン5を格子状に設定する(図14参照)。そして、加工対象物1の表面3をレーザ光入射面として、シリコンウェハ11の内部に集光点Pを合わせて加工用レーザ光L1を照射することにより、各切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13をシリコンウェハ11の内部に形成する。続いて、加工対象物1を保持したフレーム22及びエキスパンドテープ23をエキスパンドテープ拡張装置(図示せず)に装着し、エキスパンドテープ23を周囲に拡張させることにより、溶融処理領域13を切断の起点として、切断予定ライン5に沿って加工対象物1を切断すると共に、切断により得られた多数の半導体チップを互いに離間させる。以上により、加工対象物1を切断予定ライン5に沿って精度良く切断することができる。なお、溶融処理領域13には、クラックが混在する場合もある。
ここで、レーザ加工装置100について説明する。図16に示すように、レーザ加工装置100は、加工対象物1が水平に載置される載置台101と、レーザユニット102と、載置台101及びレーザユニット102のそれぞれと接続された移動制御部103と、を備えている。移動制御部103は、載置台101を水平方向(X軸方向及びY軸方向)に移動させると共に、レーザユニット102を鉛直方向(Z軸方向)に移動させる。
レーザユニット102は、加工用レーザ光L1をパルス発振する加工用レーザ光源104を有している。加工用レーザ光源104から出射された加工用レーザ光L1は、加工用レーザ光L1の通過及び遮断を選択的に行うシャッタ105、ビームサイズを拡大するビームエキスパンダ106を順次に通過して、ダイクロイックミラー107を透過した後、集光用レンズ108により集光されて加工対象物1に照射される。なお、集光用レンズ108には、そのZ軸方向の位置を微調整するピエゾ素子109が取り付けられている。
更に、レーザユニット102は、後述する加工領域30に照射するための測定用レーザ光L2を出射する測定用レーザ光源111を有している。測定用レーザ光源111から出射された測定用レーザ光L2は、ミラー112、ハーフミラー113、ダイクロイックミラー107で順次に反射されて、加工用レーザ光L1の光軸上を下方に向かって進行した後、集光用レンズ108により集光されて加工領域30に照射される。
加工領域30に照射された測定用レーザ光L2は、加工領域30で反射され、その測定用レーザ光の反射光L3は、集光用レンズ108に再入射して加工用レーザ光L1の光軸上を上方に向かって進行した後、ダイクロイックミラー107で反射されてハーフミラー113を透過する。ハーフミラー113を透過した測定用レーザ光の反射光L3は、シリンドリカルレンズ及び平凸レンズからなる整形光学系114によって、非点収差が付加されて、フォトダイオードを4等分してなる4分割フォトダイオード115の受光面に集光される。このように、4分割フォトダイオード115の受光面には、非点収差が付加された測定用レーザ光の反射光L3の集光像が形成されるので、この集光像は、加工領域30内に位置する加工対象物1の表面(レーザ光照射面)3に対する測定用レーザ光L2の集光点の位置で変化することになる。
4分割フォトダイオード115には、ピエゾ素子109と接続された集光用レンズ制御部116が接続されている。集光用レンズ制御部116は、加工領域30で反射された測定用レーザ光の反射光L3の光量を検出し、その光量が所定の閾値を超えている場合に、4分割フォトダイオード115の受光面に形成された集光像を電圧値として取得し、この電圧値が一定となるように(すなわち、集光像が一定となるように)、ピエゾ素子109を駆動させて、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を略一定に調整すると共に、その際のピエゾ素子109の駆動信号を記録する機能を有している。
以上のように構成されたレーザ加工装置100による溶融処理領域13の形成について、より詳細に説明する。
まず、図17に示すように、円環状のフレーム22に張り渡されたエキスパンドテープ23上に加工対象物1の裏面21を貼り付ける。そして、加工対象物1の表面3を上側に向けて、加工対象物1を保持したフレーム22及びエキスパンドテープ23をレーザ加工装置100の載置台101上に固定する。続いて、図18に示すように、隣り合う機能素子15,15間を通るように切断予定ライン5を格子状に設定すると共に、加工対象物1及びフレーム22の少なくとも一方を基準として、加工対象物1の外径より大きく且つフレーム22の内径より小さい外径を有する加工領域30を設定する。つまり、加工領域30は、加工対象物1とフレーム22との間に外形を有することになる。
続いて、図19に示すように、オリエンテーションフラット6に平行な切断予定ライン5を含む各ライン50と加工領域30の外形との交点の座標を取得する。なお、オリエンテーションフラット6に垂直な切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13を形成する場合は、オリエンテーションフラット6に平行な切断予定ライン5に沿って溶融処理領域13を形成する場合と同様であるため、以下、その説明を省略する。
続いて、図20に示すように、オリエンテーションフラット6に平行な切断予定ライン5が延在する方向に載置台101を移動させることにより、加工対象物1に対して集光用レンズ108を矢印B方向に相対的に移動させる。このとき、次の理由により、フレーム22の外側の領域を含めて、集光用レンズ108を加工対象物1に対して相対的に移動させる。すなわち、加工対象物1に対する集光用レンズ108の相対的な移動速度が等速になった状態において加工対象物1に加工用レーザ光L1を照射するためには、加工対象物1に対する集光用レンズ108の相対的な移動距離に、相対的な移動速度が等速になるまでの加速距離を加える必要があるからである。更に、エキスパンドテープ23を周囲に拡張させることで、溶融処理領域13を切断の起点として加工対象物1を切断予定ライン5に沿って確実に切断するためには、加工対象物1に対してフレーム22を極力小さくする必要があるからである。
加工対象物1に対する集光用レンズ108の相対的な移動により、切断予定ライン5を含むライン50と加工領域30の外形との一方の交点α1上に集光用レンズ108が達すると、図20(a)に示すように、測定用レーザ光源111の制御信号が「OFF」から「ON」となり、測定用レーザ光源111から測定用レーザ光L2が出射されて集光用レンズ108で集光される。このとき、測定用レーザ光L2はエキスパンドテープ23で反射されるが、エキスパンドテープ23は加工対象物1の表面3に比べて低反射率であるため、図20(b)に示すように、測定用レーザ光の反射光L3の光量は閾値Tに達しない。なお、このとき、図20(c)に示すように、ピエゾ素子109の駆動信号は「OFF」であり、集光用レンズ108は所定の位置に保持されている。
続いて、切断予定ライン5を含むライン50と加工対象物1の外縁との一方の交点β1上に集光用レンズ108が達すると、測定用レーザ光L2が加工対象物1の表面3で反射されるため、図20(b)に示すように、測定用レーザ光の反射光L3の光量が閾値Tを越える。これにより、図20(c)に示すように、ピエゾ素子109の駆動信号が「OFF」から「ON」となり、測定用レーザ光の反射光L3が4分割フォトダイオード115の受光面に形成する集光像に基づく電圧値が一定となるように、ピエゾ素子109が駆動させられて、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離が略一定に調整される。
同時に、図20(d)に示すように、シャッタ105の制御信号が「OFF」から「ON」となり、加工用レーザ光源104から出射された加工用レーザ光L1がシャッタ105を通過して集光用レンズ108で集光される。これにより、加工対象物1の表面3が面振れを有していても、切断予定ライン5に沿って、加工対象物1の表面3から一定の距離の位置(シリコンウェハ11の内部)に溶融処理領域13を精度良く形成することができる。なお、シャッタ105の制御信号が「OFF」から「ON」となって加工用レーザ光L1が加工対象物1に照射されるタイミングは、ピエゾ素子109の駆動信号が「OFF」から「ON」となるタイミングと略同時でもよいし、そのタイミングより少し遅れてもよい。
続いて、切断予定ライン5を含むライン50と加工対象物1の外縁との他方の交点β2上に集光用レンズ108が達すると、測定用レーザ光L2がエキスパンドテープ23で反射されるため、図20(b)に示すように、測定用レーザ光の反射光L3の光量が閾値Tを下回る。これにより、図20(c)に示すように、ピエゾ素子109の駆動信号が「ON」から「OFF」となり、集光用レンズ108が所定の位置に保持される。同時に、図20(d)に示すように、シャッタ105の制御信号が「ON」から「OFF」となり、加工用レーザ光源104から出射された加工用レーザ光L1の通過が遮断される。
続いて、切断予定ライン5を含むライン50と加工領域30の外形との他方の交点α2上に集光用レンズ108が達すると、図20(a)に示すように、測定用レーザ光源111の制御信号が「ON」から「OFF」となり、測定用レーザ光源111からの測定用レーザ光L2の出射が停止させられる。
以上説明したように、本実施形態のレーザ加工方法では、加工対象物1の切断予定ライン5を含むライン50上に沿って集光用レンズ108を加工対象物1に対して相対的に移動させ、加工対象物1とフレーム22との間に外形を有する加工領域30上に集光用レンズ108が位置している際に、測定用レーザ光L2を集光用レンズ108で加工領域30に向けて集光して、加工対象物1の表面3で反射された測定用レーザ光の反射光L3を検出する。この測定用レーザ光の反射光L3の検出により、加工用レーザ光L1の集光点Pが加工対象物1の表面3から一定の距離の位置に合うように、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を略一定に調整しながら、加工用レーザ光L1を集光用レンズ108で加工対象物1に向けて集光して、溶融処理領域13を加工対象物1の内部に形成する。このように、本実施形態のレーザ加工方法では、加工対象物1とフレーム22との間に外形を有する加工領域30上に集光用レンズ108が位置している際に、加工用レーザ光L1を集光用レンズ108で加工対象物1に向けて集光して、溶融処理領域13を加工対象物1の内部に形成する。そのため、フレーム22の外側の領域を含めて、集光用レンズ108を加工対象物1に対して相対的に移動させても、フレーム22を加工対象物と誤認識し、フレーム22に加工用レーザ光L1を照射してフレーム22に損傷を与えるのを防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、フレーム22を横切るライン50上に沿って集光用レンズ108及び加工対象物1の少なくとも一方を相対的に移動させるに際し、測定用レーザ光L2の照射を実施したままで、次のようにレーザ加工装置100における制御を実施してもよい。すなわち、一方の側からライン50と加工領域30の外形との一方の交点α1上に集光用レンズ108が達するまで、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を調整するための測定用レーザ光の反射光L3の光量に基づく演算処理(以下、「オートフォーカス演算処理」という)を停止し、加工対象物1の厚さ方向において一定の位置に集光用レンズ108を固定し、且つ加工用レーザ光L1の照射を停止する。そして、一方の交点α1上からライン50と加工対象物1の外縁との一方の交点β1上に集光用レンズ108が達するまで、オートフォーカス演算処理を実施し、加工対象物1の厚さ方向において一定の位置に集光用レンズ108を固定し、且つ加工用レーザ光L1の照射を停止する。ここで、オートフォーカス演算処理を実施しても、加工対象物1の厚さ方向において一定の位置に集光用レンズ108が固定されるのは、測定用レーザ光の反射光L3の光量が所定の閾値を超えないからである。そして、一方の交点β1上からライン50と加工対象物1の外縁との他方の交点β2上に集光用レンズ108が達するまで、オートフォーカス演算処理を実施し、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を調整し、且つ加工用レーザ光L1の照射を実施する。
また、加工対象物1とフレーム22との間に外形を有する加工領域30を設定した後に、次のように、加工対象物1の内部に溶融処理領域13を形成してもよい。
すなわち、まず、切断予定ライン5を含むライン50上に沿って集光用レンズ108を加工対象物1に対して相対的に移動させ、集光用レンズ108が加工領域30上に位置している際に、測定用レーザ光L2を集光用レンズ108で加工領域30に向けて集光して、加工対象物1の表面3で反射された測定用レーザ光の反射光L3を検出することにより、加工用レーザ光L1の集光点Pが加工対象物1の表面3から一定の距離の位置に合うように、ピエゾ素子109を駆動させて、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を略一定に調整すると共に、その際のピエゾ素子109の駆動信号(調整情報)を記録する。
続いて、切断予定ライン5を含むライン50上に沿って集光用レンズ108を加工対象物1に対して相対的に移動させ、集光用レンズ108が加工領域30上に位置している際に、記録した駆動信号を再生してピエゾ素子109を駆動させ、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を略一定に調整しながら、加工用レーザ光L1を集光用レンズ108で加工対象物1に向けて集光して、溶融処理領域13を加工対象物1の内部に形成する。なお、シャッタ105の制御信号が「OFF」から「ON」となって加工用レーザ光L1が加工対象物1に照射されるタイミングは、ピエゾ素子109の駆動信号が「OFF」から「ON」となるタイミングと略同時でもよいし、そのタイミングより少し早くてもよい。
以上のような溶融処理領域13の形成は、加工対象物1が比較的厚く、1本の切断予定ラインに対して複数列の溶融処理領域13を加工対象物1の厚さ方向に並ぶように形成するような場合に有効である。
また、上記実施形態では、加工用レーザ光L1の集光点Pが加工対象物1の表面3から一定の距離の位置に合うように、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を調整したが、加工用レーザ光L1の集光点Pが加工対象物1の表面3を基準として所定の位置に合うように、加工対象物1の表面3と集光用レンズ108との距離を調整してもよい。この場合、加工対象物1の表面3を基準として所定の位置に溶融処理領域13を精度良く形成することができ、加工対象物1の表面3からの距離が途中で変わる溶融処理領域13や波線状の溶融処理領域13等を切断予定ライン5に沿って形成することが可能となる。
また、上記実施形態では、加工対象物1の表面3で反射された測定用レーザ光の反射光L3を検出したが、加工対象物1の裏面21等、他のレーザ光照射面で反射された測定用レーザ光の反射光L3を検出してもよい。
また、上記実施形態では、加工対象物1のシリコンウェハ11の内部に溶融処理領域13を形成したが、ガラスや圧電材料等、他の材料からなるウェハの内部に、クラック領域や屈折率変化領域等、他の改質領域を形成してもよい。
本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工中の加工対象物の平面図である。 図1に示す加工対象物のII−II線に沿っての断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法によるレーザ加工後の加工対象物の平面図である。 図3に示す加工対象物のIV−IV線に沿っての断面図である。 図3に示す加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法により切断された加工対象物の平面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法におけるピークパワー密度とクラックスポットの大きさとの関係を示すグラフである。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第1工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第2工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第3工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法の第4工程における加工対象物の断面図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法により切断されたシリコンウェハの一部における断面の写真を表した図である。 本実施形態に係るレーザ加工方法におけるレーザ光の波長とシリコン基板の内部透過率との関係を示すグラフである。 本実施形態のレーザ加工方法の対象となる加工対象物の平面図である。 図14に示すXV−XV線に沿っての部分断面図である。 本実施形態のレーザ加工方法が実施されるレーザ加工装置の構成図である。 本実施形態のレーザ加工方法の説明図である。 図17に続く本実施形態のレーザ加工方法の説明図である。 図18に続く本実施形態のレーザ加工方法の説明図である。 図19に続く本実施形態のレーザ加工方法の説明図である。
符号の説明
1…加工対象物、3…表面(レーザ光入射面)、5…切断予定ライン、11…シリコンウェハ(半導体基板)、13…溶融処理領域(改質領域)、22…フレーム、23…エキスパンドテープ(拡張可能シート)、50…ライン、108…集光用レンズ、L1…加工用レーザ光、L2…測定用レーザ光、L3…測定用レーザ光の反射光、P…集光点。

Claims (7)

  1. 環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に集光用レンズで集光点を合わせて加工用レーザ光を照射することにより、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる改質領域を前記加工対象物の内部に形成するレーザ加工方法であって、
    前記加工対象物と前記フレームとの間に外形を有する加工領域を設定する工程と、
    前記切断予定ラインを含むライン上に沿って前記集光用レンズ及び前記加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、前記集光用レンズが前記加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工領域に向けて集光して、前記加工対象物のレーザ光照射面で反射された前記測定用レーザ光の反射光を検出することにより、前記加工用レーザ光の集光点が前記レーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整しながら、前記加工用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工対象物に向けて集光して、前記改質領域を前記加工対象物の内部に形成する工程と、を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 環状のフレームに張られた拡張可能シートに貼り付けられた板状の加工対象物の内部に集光用レンズで集光点を合わせて加工用レーザ光を照射することにより、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って、切断の起点となる改質領域を前記加工対象物の内部に形成するレーザ加工方法であって、
    前記加工対象物と前記フレームとの間に外形を有する加工領域を設定する工程と、
    前記切断予定ラインを含むライン上に沿って前記集光用レンズ及び前記加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、前記集光用レンズが前記加工領域上に位置している際に、測定用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工領域に向けて集光して、前記加工対象物のレーザ光照射面で反射された前記測定用レーザ光の反射光を検出することにより、前記加工用レーザ光の集光点が前記レーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整し、その調整に関する調整情報を取得する工程と、
    前記切断予定ラインを含むライン上に沿って前記集光用レンズ及び前記加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、前記集光用レンズが前記加工領域上に位置している際に、前記調整情報に基づいて、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整しながら、前記加工用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工対象物に向けて集光して、前記改質領域を前記加工対象物の内部に形成する工程と、を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
  3. 前記集光用レンズが前記加工領域上に位置している際に、前記測定用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工領域に向けて集光して、前記加工領域で反射された前記測定用レーザ光の反射光の光量を検出し、前記光量が所定の閾値を越えている場合に、前記加工用レーザ光の集光点が前記レーザ光照射面を基準として所定の位置に合うように、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
  4. 前記集光用レンズが前記加工領域上に位置している際に、前記測定用レーザ光を前記集光用レンズで前記加工領域に向けて集光して、前記加工領域で反射された前記測定用レーザ光の反射光の光量を検出し、前記光量が所定の閾値を越えている場合に、非点収差が付加された前記測定用レーザ光の反射光の集光像が一定となるように、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ加工方法。
  5. 前記改質領域を切断の起点として、前記切断予定ラインに沿って前記加工対象物を切断することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
  6. 前記加工対象物は半導体基板を備え、前記改質領域は溶融処理領域を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
  7. 前記フレームを横切る前記ライン上に沿って前記集光用レンズ及び前記加工対象物の少なくとも一方を相対的に移動させ、
    一方の側から前記ラインと前記加工領域の外形との一方の交点上に前記集光用レンズが達するまで、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整するための前記測定用レーザ光の反射光の光量に基づく演算処理を停止し、前記加工対象物の厚さ方向において一定の位置に前記集光用レンズを固定し、且つ前記加工用レーザ光の照射を停止し、
    前記ラインと前記加工領域の外形との一方の交点上から前記ラインと前記加工対象物の外縁との一方の交点上に前記集光用レンズが達するまで、前記測定用レーザ光の反射光の光量に基づく演算処理を実施し、前記加工対象物の厚さ方向において一定の位置に前記集光用レンズを固定し、且つ前記加工用レーザ光の照射を停止し、
    前記ラインと前記加工対象物の外縁との一方の交点上から前記ラインと前記加工対象物の外縁との他方の交点上に前記集光用レンズが達するまで、前記測定用レーザ光の反射光の光量に基づく演算処理を実施し、前記レーザ光照射面と前記集光用レンズとの距離を調整し、且つ前記加工用レーザ光の照射を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のレーザ加工方法。
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