JP2007135280A - Lcフィルタ付三相pwmインバータの制御方法、及び同方法に従って動作するインバータ装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】直流電源と三相電圧型インバータと交流LCフィルタと被駆動負荷とからなる三相PWMインバータの制御方法であって、三相の内の二相のインバータ出力電圧を予め定められた任意の制御側に従って独立に制御し、残り一相のインバータ出力電圧については前記二相のインバータ出力により従属的に制御すると共に、さらに、前記三相電圧形インバータのu,v,w各相への規格化入力uu,uv,uwを−1≦uj’=uj−d≦1(j=u、v、w)となる様に調整値dを付加して調整し、u,v,w各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせることにより、出力電圧範囲を拡張して制御可能にする三相PWMインバータの制御方法とする。
【選択図】図3
Description
x[i+1]=Ax[i]+bu[i]、 y[i]=cx[i] (1)
ここで、制御入力はu[i]、出力はy[i]である。また各係数A,b,cは次の式により離散化できる。
ただし、Ac,bc,ccは連続系パラメータであって、次式となる。
Yref[z]=(Ny[z]/Dy[z])
=zsinωT/(z2−2cosωT+1) (3)
C[z]=(Nc[z]/Dc[z])
=((k2z+k1)/(z2−2cosωT+1)) (4)
ただしk1,k2は補償器のゲインとする。
u[i]= −fx[i]+k1z[i]+k2z[i+1]
z[i+2]= −z[i]+2cosωTz[i+1] (5)
+(yref[i]−y[i])
すると拡大制御系の状態方程式は次式となる。
しかしながら、従来知られた三相インバータの制御法は、特許文献1に開示される様に、PWMインバータの出力量を三相/二相変換するもの等、何れも複雑な手順を経るものばかりであり、簡便な制御法が提供されていなかった。
加藤、喜多:「PWMインバータの正弦波追従最適ディジタル制御法」、平成15年電気学会全国大会、No.4−093、2003年
i) u,v,w各相の指令値を、元のu,v,w相から直接決定する構成とすると共に、
ii) u,v,w各相への指令値を、以下に詳述する態様で適宜同じレベルシフトさせる構成とすることによって上記課題を悉く解決可能なことを見い出し、本発明を完成した。
さらに原理的には、負荷がバランスされておらず所謂不平衡(或いは非対称)負荷となっていても、フィルタのLC、すなわちリアクトル、コンデンサの値が同一であれば問題なく制御できることが明らかとなった。
−1≦uj’=uj−d≦1 (j=u、v、w)
となる様に調整値dを付加して調整し、u,v,w各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせることにより、出力電圧範囲を拡張して制御可能にすることを特徴とするものである。
−1≦uj’=uj−d≦1 (j=u、v、w)
となる様に調整値dを付加して調整し、u,v,w各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせ得るアジャスタを、前記三相電圧型インバータのu,v,w各相への指令値入力部の前段に備えており、それにより、出力電圧範囲を拡張して制御し得る様に構成されていることを特徴とするものである。
ここで、交流LCフィルタは、u,v,w各相のインダクタンス及びキャパシタンスが夫々実質上同一のものから構成されていることが好ましい。
又本発明によれば、負荷が平衡及び不平衡のいずれの場合においても制御可能であるLCフィルタ付三相PWMインバータの制御方法、及び同方法に従って動作するインバータ装置を提供することが出来る。
さらに、本発明によれば、出力電圧範囲を拡大可能なLCフィルタ付三相PWMインバータの制御方法、及び同方法に従って動作するインバータ装置を提供することが出来る。
実際、様々な電気機器や家電機器は、一旦直流に変換されてから使用されるものが多く、現在ではこのようなコンデンサインプット形の整流負荷が電源に対して数多く接続されているのが実情である。
なお以下では、上記した単相形PWMインバータを基にして、本発明で目的とするLCフィルタ付三相PWMインバータの制御原理を導出した後、本発明に係る出力電圧範囲の拡張法につき説明する。
図1は本発明の適用対象となるLCフィルタ付三相PWMインバータの構成を示す図であり、(b),(c)は、(a)に示された負荷の変形例である。図2(a)は図1に示すLCフィルタ付三相PWMインバータの電気的接続関係を簡略的に示す図であり、図2(b)は本発明手法を適用した場合における平衡負荷に対する単相等価回路を示す図、また図2(c)はその不平衡負荷に対する図2(b)の変形等価回路図である。図3は本発明の三相PWMインバータの制御系の一構成例を示す図である。図4はインバータのu、v、w各相に係る入力ゲインを連続的に表わしたときの一例を示す図であり、(a)は計算された直後のインバータの各相に係る入力ゲインの一例を示す図、(b)は本発明による(=dを付加することによる)入力ゲインの調整を行った場合の入力ゲインの一例を示す図である。図5及び図6はある時点における入力ゲインの調整値dの算出要領の一例を示すフロー図である。
まず、上記した単相形PWMインバータを基にして、本発明で目的とするLCフィルタ付三相PWMインバータの制御原理を導出する。
図1(a)に、本発明の適用対象となるLCフィルタ付三相PWMインバータの構成を示す。本実施形態では、三相インバータINVの主回路は、それぞれダイオードが逆並列接続されたスイッチング素子SWu〜SWz(例えばFET)を三相ブリッジ接続した、三相ブリッジ構成からなるものとしている。インバータINVの直流入力端子には、直流電源2からの直流電圧Eが給電される。一方、インバータのu,v,w各相交流出力端子には、フィルタリアクトルLu,Lv,Lwが直列接続されているほか、Y接続されたフィルタコンデンサCu,Cv,Cwが並列接続されており、インバータINVのu,v,w各相交流出力端と負荷(Ru,Rv,Rw)の間には、各相毎にLCフィルタが構成されている。従って、インバータINVのu,v,w各相の交流出力は、LCフィルタを経て負荷(Ru,Rv,Rw)に供給される。なお、簡単の為、以下の説明では図1に示すLCフィルタ付三相PWMインバータの電気的接続関係を簡略的に示す図2(a)を主に用いる。ここで、交流LCフィルタは、u,v,w各相のインダクタンス及びキャパシタンスが夫々実質上同一(L,C)のものから構成されているものとする。
なお、図1に示すu,v,w各相のスイッチング素子SWu〜SWzには、図4に示す入力ゲインの大きさに応じて所定のデューティー比のスイッチングパルスが与えられ、それによってインバータINVは駆動される。その様子自体は従来と同様であり、後述する通り図9に従って説明される。
iLu=iCu+iRu
iLv=iCv+iRv
iLw=iCw+iRw ・・・(8)
iLu+iLv+iLw=0
iCu+iCv+iCw=0
iRu+iRv+iRw=0 ・・・(9)
vCu+vCn=RuiRu+vRn
vCv+vCn=RviRv+vRn
vCw+vCn=RwiRw+vRn ・・・(10)
また各相のフィルタリアクトルとフィルタコンデンサの電位の関係、及び各相のフィルタコンデンサの素子関係式は次式で与えられる。
L(diLu/dt)=vu−(vCu+vCn)
L(diLv/dt)=vv−(vCv+vCn)
L(diLw/dt)=vw−(vCw+vCn) ・・・(11)
C(dvCu/dt)=iCu
C(dvCv/dt)=iCv
C(dvCw/dt)=iCw ・・・(12)
さらに、(9),(11),(13)式より次式を得る。
vCn=(vu+vv+vw)/3 (14)
vu+vv+vw=0 (15)
(15)式は、
vv=−(vu+vw) (16)
とも書ける。すなわち三相のうちの二相のインバータ出力電圧を制御すれば、残りの一相については上式により従属的に定まることとなる。そのとき、(16)式よりvCn=0で制御できる。なお後記するとおり、調整値d付加による本発明の出力電圧範囲の拡張手法を採る場合にあっては、調整値dを加えたときにvCnに変動が生じる。
(13)式より、(10)式の総和を求めると負荷抵抗Ru,Rv,Rwの中性点電位は、負荷が平衡であるRu=Rv=Rw=Rのときには、
vRn=vCn (17)
となり、フィルタコンデンサの中性点電位に等しいことがわかる。この場合には、三相は図2(b)に示すj=u,v,wとした3つの単相形インバータの組み合わせとして制御出来る。
しかもこの原理はフィルタのインダクタおよびキャパシタの値がすべて等しいということのみに起因しているため、負荷が平衡であるかは問わない。すなわち負荷が不平衡の場合には、vRnとvCnとが一致しないため、負荷は電流iRjを流す電流源Jで置き換えられて図2(c)として表されるものの、3つの単相形インバータの組み合わせとして同様に制御出来る。負荷が不平衡であっても制御可能となる点は、本制御原理の特長である。得られた三相PWMインバータの制御系50は、図8(a)に示すようなブロック図で表わされる。三相のうちのu相及びw相は、単相形について示す図7(b)同様、状態フィードバック(f)53を備えたインバータ52と補償器54とによって制御される。残りのv相は、図8(a)に示されるとおり、uv=−(uu+uw)として制御される。
PWMによる変調は、従来知られている通りであり、各相に係る入力ゲインに相当する各相の正弦波状の各相信号電圧と所定の三角波とを図9(a)に示す様な関係で対比させ、それによって図9(b)に示されるような変調されたパルス列を得、これを図1(a)に示されるu,v,w各相を構成するスイッチング素子SWu〜SWzに従来知られている所定の態様(図9(b)にも例示)で与えてインバータINVを駆動する。各線間(図ではu−v間)に得られる三相PWMインバータの出力波形は図9(c)に示されるとおりであり、これをLCフィルタを通すことにより正弦波状の波形が得られる。以上はアナログ制御の例であるがディジタル制御も同様に可能であることは言うまでもない。
この、uv=−(uu+uw)で制御する基本原理を用いることにより、特許文献1等に開示された手法に比してより簡潔なLCフィルタ付三相PWMインバータの制御方法、及び同方法に従って動作するインバータ装置を提供することが出来る。
ここで、図8(a)に示す二相(u,w相)のインバータ出力電圧を制御する制御則については、特に限定なく、一般的な制御則(PI制御等)を適用することも可能であるが、以下では、二相のインバータ出力電圧を制御する制御則の一例として、先の背景技術の項で単相形の場合について説明した正弦波追従制御(図7(c)参照)の適用を考える。
各相のコンデンサ電圧電流vCj,iCjを状態変数に選べば、
vj[i]=Euj[i](vjは、直流電源電圧Eとデューティー比ujを乗じて得た値)として、次のサンプル時間Tにおける離散形状態方程式は次式となる。
xj[i+1]=Axj[i]+buj[i],
yj[i]=cxj[i] (18)
ただし、j=u,v,wで、制御入力はuj、出力はyjである。
また三相間の自由度は2であるため、uu,uwの2相分については単相形の場合と同様((5)式参照)に次式で表わされる正弦波補償器により制御則が決定され、残りのuvは(19)’の制御側により従属的に決定される。
uj[i]= −fxj[i]+k1zj[i]+k2zj[i+1]
zj[i+2]= −zj[i]+2cosωTzj[i+1] (19)
+(yref[i]−y[i])
j=u,w
uv[i]=−uu[i]−uw[i] (19)’
従って、図7(c)に示す単相形制御系を基本にこれを拡張することにより、図8(b)に示す三相形の制御系60が得られる。
ここで、各規格化入力は−1〜1の範囲に制約されるため、このままでは出力電圧の制御範囲の拡張が実現されているとはいえない。
そこで、これを発展させ、u,v,w各相への指令値を、以下に詳述する通り、
−1≦uj’=uj−d≦1
(j=u,v,w、 ここで、dは任意の調整値) (20)
となる様に調整し、各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせる構成とすることで、より広い出力電圧範囲を制御できる制御方法、及び同方法に従って動作するインバータ装置を提供することが可能となる。これより先では、上の基本原理を拡張することによって得られる、出力電圧を拡大し得る制御手法に付き説明する。
ここで、インバータ出力は相間の相対的な電圧により定まるため(図9(c)参照)、u,v,w各相の電圧レベルを同じレベルシフトしても等価となること、およびフィルタコンデンサの中性点電位を変動させても本発明の制御原理がそのまま適用できることに注目する。
なお、以下に詳述する出力電圧範囲の拡張を行った場合においても、同様に図8(b)に示される制御則(正弦波追従制御)をu相,w相に適用することは可能である。
このとき、上記計算結果に基づきこれをそのままインバータ出力させようとしても、例えば(q)の時点では、1以上の部分は打ち切られてしまうことから、従来例に係る制御系の下では、u相については結局インバータ出力はされない。
これは、u,v,w各相の入力ゲインのレベルを同じレベルだけシフトさせても、これらによって得られるインバータ出力(線間電圧)は等価なものであり、それ故に、本発明手法による調整後は、線間電圧で見たインバータ出力としては、恰も調整前の入力ゲインによって得られるであろう(出力電圧範囲が拡大された)線間電圧と等価な波形を合成することが可能であることによる。
このように、dの値は、各時点に於けるu,v,w各相の入力ゲインの最大又は最小値が、−1〜1の範囲に収まるように調整されるものであり、時々刻々と変化するものである。
なお、本実施形態に係る制御の基本原理より、uu+uv+uw=0であるが、u,v,w各相への入力ゲインにそれぞれdを付加することより、uu’+uv’+uw’=−3dとなる。
さらに、このとき
vCn=−dE (21)
となり、フィルタコンデンサの中性点電位はdの値により変動することとなる(図1(a)及び図2参照)。その際、図2(b)(c)に示す等価回路の考え方は全く同じで、今までの制御原理はそのまま適用可能である。
このとき、出力電圧範囲は、約1.155−1=0.155、すなわち15.5%拡大されることとなる。
次に、図3のアジャスタ11内で行われる、上記の調整値dを決定するプロセスにつき、一例を挙げて説明する。尚以下の説明は、図5及び6に例示するフロー図に基づいて行う。また、計算された直後のインバータの各相に係る入力ゲインをu1,v1,w1と、dを付加することによる調整後の入力ゲインをu2,v2,w2と、入力ゲインが1より超えて大となっているとき、又は−1より超えて小となっているときの1又は−1との差分をdu,dv,dwと、u,v,w各相に係る入力ゲインの夫々を互いに比較した場合における最大値について、入力ゲインが1より超えて大となっているときの1との差分値をmaxと、u,v,w各相に係る入力ゲインの夫々を互いに比較した場合における最小値について、入力ゲインが−1より超えて小となっているときの−1との差分値をminと、そして、最終的にu1,v1及びw1からu2,v2及びw2を算出する際に用いる調整値をdと規定する。
はじめに、図5及び6に基づいて詳細に説明する前に、dの決定手法の概要について説明する。
umax=max(uu,uv,uw)、
umin=min(uu,uv,uw)、と表わされる。
ここで、ある任意の時点における入力ゲインuu,uv,uwの中で、入力ゲインが1より超えて大となっているもの、又は−1より超えて小となっているものが存在しない場合には、本発明による(=dを付加することによる)入力ゲインの調整は不要であり、計算された直後のインバータの各相に係る入力ゲインuu,uv,uwの値はそのまま、インバータの各相スイッチング素子のゲートをオンオフするスイッチング制御回路に対して与えられる。従って以下のdの決定手法は、ある任意の時点における入力ゲインuu,uv,uwの中に、入力ゲインが1より超えて大となっているもの、又は−1より超えて小となっているものが存在する場合について適用される。
<セクション1, (du,dv,dwの値の決定)>
又以下では、dの決定に係る詳細な流れを、図5及び6のフロー図に基づいて具体的に説明する。なお、上記du,dv,dwの初期値をそれぞれ0としておく(図5のS1,S2参照。以下同じ)。以下のフローは、ある任意の時点における入力ゲインu1,v1,w1の中に、入力ゲインが1より超えて大となっているもの、又は−1より超えて小となっているものが存在する場合について適用される。入力ゲインu1,v1,w1の中で、入力ゲインが1より超えて大となっているもの、又は−1より超えて小となっているものが存在しない場合には、以下のフローは適用されず、計算された直後のインバータの各相に係る入力ゲインu1,v1,w1の値はそのまま、(実際のデューティー比として)インバータの各相スイッチング素子のゲートをオンオフするスイッチング制御回路に対して与えられる(S3,S4→S33,S34参照)。
結果的に、図4の各時点では、図4(b)に示す入力ゲインの大きさに応じて所定のデューティー比のスイッチングパルスがu,v,w各相のスイッチング素子SWu〜SWzに所定の態様で与えられ、それによってインバータINVは駆動される(図1(a)及び図9参照)。このとき、線間電圧で見たインバータ出力としては、恰も調整前の入力ゲインによって得られるであろう(出力電圧範囲が拡大された)線間電圧と等価な波形が合成される。
S2,S5uを経てu相についてduの値が決定された後は、順にv1,w1について調べられ、同様の要領でdv、dwの計算、抽出が行われる(S10〜S17(S5v,S5w)参照)。
du,dv,dwの計算、抽出が終了(S18)すると、次のセクション(セクション2(S19〜S31))へフローは遷移する。
S19に移ると、先ず最初に、u相の差分値duが、差分の絶対値の最大値と擬制されて、duの値が変数maxに代入される。その後、S20〜S23に示されるとおり、順にdv、dwの値が変数maxと比較され、dv、dwの値のほうが大きい場合には逐次その値がmaxとして代入される(入れ換えられる)。
引き続き、u相の差分値duは、今度は差分の最小値と擬制されて、duの値が変数minに代入される(S24)。その後、上記同様S25〜S28に示されるとおり、順にdv、dwの値が変数minと比較され、dv、dwの値のほうが小さい場合には逐次その値がminとして代入される(入れ換えられる)。なお、このS19〜S28に係るセクション2は、次段のセクション3に於いて最終的にu1,v1及びw1からu2,v2及びw2を算出する際に用いる調整値dを決定する為に必要なステップである。
S27,28を経て変数max、minへのdu,dv又はdwの値の代入が終了すると、次のセクション(セクション3(S29〜S31))へフローは遷移する。
S29〜S31からなるセクション3では、ある任意の時点における調整値dの決定が行われる。
ここでは、変数maxと変数minの絶対値の比較が、「max<|min|」であるか行われ、変数minの絶対値が変数maxよりも大きい場合には、変数dの値はminの値に、反対に変数minの絶対値が変数maxよりも小さい又は変数maxの値と等しい場合には、変数dの値はmaxの値に決定される。
一例によれば、S29に移ると、まず変数maxが、ある任意の時点における調整値dと擬制されて、maxの値が変数dに代入される。次に、S30で変数maxと変数minの絶対値の比較が行われ、変数minの絶対値が変数maxよりも大きい場合には、変数dの値はminの値に入れ換えられる(S31参照)。
このように、S30,31を経て、最終的にu1,v1及びw1からu2,v2及びw2を算出する際に用いる調整値dの値が決定される。
このようにして、任意のサンプル時点に於いて−1≦uj’=uj−d≦1(j=u、v、w)となる様に、dを付加することによる調整が行なわれる。
ところで、上記した、振幅が2/(√3)≒0.155の三相の入力ゲインが計算された場合の例はあくまでも一例に過ぎない。上の例の様に、周期的に振幅の絶対値が1を超える入力ゲインが計算される場合のみならず、偶発的にその様な入力ゲインが計算された場合であっても、本発明の手法によれば、入力ゲイン及びそれが連続的に表わされた波形を柔軟に調整することが可能である。
なお、本発明の方法で出力可能な最大電圧は、電圧の不足が一相分のみで他の二相には電圧不足が生じていない時である。これは、定常動作では電圧不足の期間が最大で電気角60°が限度となるため、本発明の方法では結局、最大で約15%の出力電圧範囲の増大を図ることが可能となる。またこれは、過渡動作ではuu,uv,uwが4/3、−2/3、−2/3もしくは−4/3、2/3、2/3を互いに取り分ける場合で、最大で約33%の出力電圧範囲の増大を図ることが可能となる。
上記実施形態の構成を備えたLCフィルタ付三相PWMインバータにつき、その動作の検証(計算及びDSPべースのディジタル制御系による実験)を行ったところ、以下の通り、不平衡負荷および非線形負荷の何れをも良好に制御可能であることが明らかとなった。尚、以下の検証は、負荷を三相不平衡負荷又は非線形負荷とした場合における応答特性に主眼を置いたものであり、それを考慮して入力ゲインが1又は−1を超えない例として検証を行ったものである。
同様に、(a)各相のフィルタコンデンサ電圧、及び(b)フィルタコンデンサのu相充電電流波形のシミュレーション結果を図11に示す。このときの条件は、入力電圧E=40[V],出力電圧10[V],出力周波数50[Hz],フィルタリアクトルLu,Lv,Lwのインダクタンス=2.78[mH],フィルタコンデンサCu,Cv,Cwのキャパシタンス=60[μF],スイッチング周波数=20[kHz]である。また負荷Ru,Rv,Rwを、それぞれ30Ω,50Ω,100Ωと不平衡に設定した。図10の場合と同じく、各相がバランスされて制御されていることがわかる。
次に、DSPを用いてディジタル制御系を実際に構成して実験を行った結果を図12に示す。(a)は各相フィルタコンデンサ電圧、(b)はu相フィルタコンデンサ電流iCuの波形を示している。この場合も、不平衡負荷に対しフィルタコンデンサ電圧がうまくバランスしていることがわかる。
次に、DSPを用いてディジタル制御系を実際に構成して実験を行った際の波形を図14に示す。(a)は各相フィルタコンデンサ電圧、(b)はu相フィルタコンデンサ電流iCu、(c)はu相負荷電流iuLoadの波形を示している。この場合も、負荷に対しフィルタコンデンサ電圧がうまくバランスしていることがわかる。
以上、本発明に付き好適な一実施形態に基づき詳細に説明したが、本発明は、上記の例に記載の構成及び条件に何ら限定されず、種々の変形が可能である。
また上記実施形態では、本発明手法が適用される三相の内の二相の制御法として正弦波追従制御法を用いたが、これに限定されず、本発明手法は一般的にPI制御等を含めた任意の補償器に適用できることは言うまでもない。
インバータの主回路構成についても、上記実施形態で説明した形態のものに限定されない。従って、上記実施形態で説明した三相ブリッジ構成のインバータ以外にも種々の回路形式を選択することが可能である。
調整値dの決定に係るフローについても、図5及び図6に例示したものに何ら限定されない。
さらに、出力電圧範囲拡張に係る本発明の制御手法は、三相以外の多相回路及びその制御系に対しても適用可能であることは言うまでもない。
しかも、本発明では、LCの値が同じでありさえすれば、負荷が平衡であるか否かは問わないため、不平衡負荷に対しても同様に制御できるという特長がある。
D1〜D6 整流ダイオード
Lu,Lv,Lw フィルタリアクトル
Ru,Rv,Rw 負荷抵抗
SWu〜SWz スイッチング素子
1 LCフィルタ付三相PWMインバータ
2 直流電源
3 負荷
10 三相PWMインバータのディジタル制御系
11 アジャスタ
12 インバータ部
13 状態フィードバック
14 補償器
Claims (3)
- 直流電源と三相電圧型インバータと交流LCフィルタと被駆動負荷とからなる三相PWMインバータの制御方法であって、
三相の内の二相のインバータ出力電圧を予め定められた任意の制御側に従って独立に制御し、
残り一相のインバータ出力電圧については前記二相のインバータ出力により従属的に制御すると共に、さらに、
前記三相電圧形インバータのu,v,w各相への規格化入力uu,uv,uwを
−1≦uj’=uj−d≦1 (j=u、v、w)
となる様に調整値dを付加して調整し、u,v,w各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせることにより、出力電圧範囲を拡張して制御可能にすることを特徴とする三相PWMインバータの制御方法。 - 直流電源と三相電圧型インバータと交流LCフィルタと被駆動負荷とを含んでなるインバータ装置であって、
三相の内の二相のインバータ出力電圧が予め定められた任意の制御側に従って独立に制御され、残り一相のインバータ出力電圧については前記二相のインバータ出力により従属的に制御される制御系を備え、さらに、
前記制御系は、前記三相電圧形インバータのu,v,w各相への規格化入力uu,uv,uwを
−1≦uj’=uj−d≦1 (j=u、v、w)
となる様に調整値dを付加して調整し、u,v,w各相への指令値を適宜同じレベルシフトさせ得るアジャスタを、前記三相電圧型インバータのu,v,w各相への指令値入力部の前段に備えており、
それにより、出力電圧範囲を拡張して制御し得る様に構成されていることを特徴とするインバータ装置。 - 前記交流LCフィルタは、u,v,w各相のインダクタンス及びキャパシタンスが夫々実質上同一のものから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインバータ装置。
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