JP2007134781A - 可変共振器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】誘電体基板2の上に入出力線路3が形成され、その入出力線路3の凡そ中央部分に一端を接続し、他端が接地された長さLaの第1共振器4と、第1共振器4の一端が接続された入出力線路3に一端を接続し、他端がスイッチ素子7を介して設置される長さLbの第2共振器とから構成される可変共振器であって、スイッチ素子7がオフ状態の時は、第1共振器4の線路長さLaと第2共振器6の線路長さLbとの和の長さを四分の一波長とする周波数で共振し、スイッチ素子7がオン状態の時は、LaとLbの和の半分の長さを四分の一波長とする周波数で共振する。
【選択図】図1
Description
第1共振器222は、長さL1の第1線路225の両側に第1線路225の線路幅と同一幅Wで長さΔhの第2線路226a,226b、227a,227b、228a,228b、229a,229bが、第1線路225に沿って等間隔ΔL1で配列接続されている。
第1線路225の入出力用線路221と反対側の延長上にスイッチ224を介して第2共振器223の第1線路270が形成され、第1線路270の線路長はL2であり、第1線路270のスイッチ224と反対側の端は接地されている。第2共振器223の第1線路270にも、その両側に第2線路230a,230b〜233a,233bが4つ等間隔で配列接続されている。
第2共振器223も同様に、第2線路の遊端部間に3個の線路短縮スイッチ253a,253b〜255a,255bが配置されている。線路短縮スイッチ250a,250b〜255a,255bは、高周波電流が導体の表面を流れる性質(表皮効果、詳しくは後述する)を利用して共振器の線路長さを変化させるためのもので、第2線路226aと227aとの間に設けられた線路短縮スイッチ250aを導通させると、2Δhの長さを短縮させるものである。なお、図には示していないが、誘電体基板220の少なくとも入出力線路221及び第1,第2共振器222,223が形成された領域の裏面全面に渡って地導体が形成され、マイクロストリップ線路を形成している。
逆に第1共振器222の最も低い共振周波数よりも、さら共振周波数を下げたい場合は、スイッチ224を導通させて第1共振器222に直列に第2共振器223を接続する。この様にすることで、第1共振器222単独の場合よりも、線路長を延長させることが出来るので共振周波数を下げることができる。
この発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、共振周波数の可変範囲が広く、且つ損失の少ない可変共振器を提供することを目的とする。
[第1の実施の形態]
図1にこの発明によるマイクロストリップ線路を用いた共振器を示す。図1(a)は平面図であり、図1(b)は図1(a)のI−I切断線で見た断面図である。裏側が地導体1によって接地された誘電体基板2の表面に入出力線路3が形成される。入出力線路3の一端から高周波信号が入力される。この例では入出力線路3に第1共振器4の一端が接続され、第1共振器4は入出力線路3と直交する方向に延長され、第1共振器4の他端が配線層間接続(以下、Viaホールと称す)5を介して地導体1に接地されている。第1共振器4の特性インピーダンスはZ0である。
スイッチ素子7は理想的なものとし、導通時(オン)の抵抗はゼロ、非導通時(オフ)には無限大とする。第1共振器4のアドミッタンスをYa、第2共振器6のアドミッタンスをYbとすると、いま、両者の特性インピーダンスはZ0で等しいので、スイッチ素子7が導通状態におけるYa、Ybは式(1)で書き表せる。
βは移相定数、β=2π/λ、λは波長。
図1(a)に示す第1共振器4と第2共振器6との接続点Pにおける合成アドミッタンスY1は、式(2)で表せる。
Y1=Ya+Yb=−2jY0・cotβL (2)
共振時の合成アドミッタンスY1は、Y1=0であるので、これを満たすβは、式(3)となる。
この時の実効的な線路長Lは、L=λ/4となるので、スイッチ素子7が導通状態における共振周波数は、4分の1の波長がL(L=λ/4)の周波数になる。ここでの共振周波数は、アドミッタンス=0、すなわちインピーダンスが無限大となる並列共振周波数を意味している。
次にスイッチ素子7が非導通の場合は、第1共振器4のアドミッタンスYaが式(4)、第2共振器6のアドミッタンスYbが式(5)となる。
Yb=jY0・tanβL (5)
したがって、接続点Pにおける合成アドミッタンスY2は、式(6)で表せる。
Y2=Ya+Yb=jY0(tanβL−cotβL) (6)
共振時の合成アドミッタンスY2は、Y2=0であるので、これを満たすβは、式(7)となる。
β=π/4L (7)
この時、β=2π/λなので、2L=λ/4となる。4分の1波長が2Lの周波数、すなわち、上記したスイッチ素子7が導通状態の時の共振周波数の1/2倍の周波数で共振する。
次に、この発明の特徴である低損失である点について図2を用いて説明する。図1(a)に示したこの発明の可変共振器と同じ共振周波数が得られる可変共振器を、従来の技術で構成した一例を図2(a)に示す。
高周波数共振器スイッチ22がオン/オフの状態が、先に説明した図1(a)のスイッチ素子7のオン/オフの状態と対応している。すなわち、高周波数共振器スイッチ22がオンで、共振器の線路長がL1の半分の長さであるL2に変化するようにし、周波数も図1(a)に示した可変共振器と同一になるように設計されている。
スイッチの導通抵抗を増加させて行くと、挿入損失も右肩上がりで悪化する特性を示す。従来の可変共振器の導通抵抗に対する挿入損失の傾きが約0.35dB/Ωと、この発明の可変共振器の約3倍であり、導通抵抗が1Ωのポイントで比較するとこの発明の可変共振器の挿入損失が0.1dBで在るのに対して、0.35dBと従来の可変共振器の損失の方が大きい。
一方、この発明の可変共振器では、スイッチ素子7がオン時に第1と第2共振器が並列接続されるため、抵抗の並列接続と同じようにスイッチ抵抗の影響が軽減される。したがって、低損失な特性となる。このように、この発明による可変共振器によれば、可変周波数範囲が広く、且つ損失の少ない可変共振器が実現できる。
S11が小さい周波数が共振周波数を表している。スイッチ素子7がオフ状態では、図3(a)に示すように、15GHzまでの範囲においては、2.5GHz、7.5GHz、12.5GHzで共振する。スイッチ素子7がオン状態では、図3(b)に示すように15GHzまでの範囲では、5.0GHzと10.0GHzで共振する。これらの共振周波数になる理由は、スイッチ素子7がオフの時は、上記した式(6)で表せる第1共振器4と第2共振器6の合成アドミッタンスがゼロになる周波数で共振する。スイッチ素子7がオンの時は、式(2)で表せる合成アドミッタンスがゼロになる周波数で共振する。
スイッチ素子7がオフ状態から説明すると、今、La=Lbなので、この移相角における第1共振器4と第2共振器6のアドミッタンスが等しくなって合成アドミッタンスがゼロになる周波数で共振する。この例の場合、合成アドミッタンスがゼロになる周波数は、2.5GHz、7.5GHz、12.5GHzの3つである。このように、2.5GHzの奇数倍の周波数において合成アドミッタンスがゼロになる。
このように、図3(a)の例の場合、15GHzまでの周波数範囲においては、スイッチ素子7をオフで2.5GHz、7.5GHz、12.5GHzの3つの周波数で共振し、オンで5.0GHzと15.0GHzの2つの周波数で共振する可変共振器となる。
スイッチ素子7がオン状態におけるLa及びLbのアドミッタンスは、式(1)で示したようにY0・cotβLで決まる。したがって、cot・βLaとcot・βLbのアドミッタンスの極性が反対で絶対値が等しくなる周波数である5.0GHz、10.0GHz、15.0GHzにおいて、第1,第2共振器4,6の合成アドミッタンスがゼロとなり共振する。
他の例を図5に示す。図5(a)は、La=λ5G/3、Lb=λ5G/6に設計した場合に、スイッチ素子7がオフ状態で得られる共振周波数を示している。図5(a),(b)の横軸と縦軸の関係は、図3及び図4(a),(b)と同じである。また、図5(c)も図4(c)と同じ関係を整理した図である。
Lb=λ5G/6は、7.5GHzにおいてλ7.5G/4であり、移相角度で表すと90°に相当する。
Laのアドミッタンスは、cotβLaで決まり、移相角180°における値はマイナス無限大である。LbのアドミッタンスはtanβLbで決まり、移相角90°における値はマイナス無限大である。その結果、合成アドミッタンスが不定となるため、周波数7.5GHzにおいては、共振しなくなる。
このようにこの発明の可変共振器を例えば無線装置に利用する場合に、その無線システムにおいて必要の無い共振周波数について、第1共振器の線路長La及び第2共振器の線路長Lbを適切に設計することで削除することが可能である。
図6(a)は、スイッチ素子7によって線路先端が接地されるか、開放される第2共振器6だけを示した図である。第1共振器6の線路長を5GHzの四分の一の長さに設計し、スイッチ素子7をオンさせた場合の入力信号の反射の割合を表すSパラメータのS11と、スイッチ素子7をオフさせた場合の入力信号が伝達する割合を表すSパラメータS21とを、図6(b)に示す。
このように、信号の入出力で見ると、スイッチ素子7がオン状態で信号が良く伝達する帯域通過フィルタであり、スイッチ素子7がオフで入力信号が出力に伝わらない帯域阻止フィルタとして動作する。スイッチ素子7のオン/オフで動作は正反対であるが、その周波数は5GHzで変わりが無い。このように図6(a)に示すように第2共振器6の線路幅を一定にすると、スイッチ素子7のオン/オフによって共振周波数は変化しない。
スイッチ素子7がオフの場合、線路61の先端のインピーダンスは開放となる。この時、入出力線路3に向けてインピーダンスは下がって行き、線路60と入出力線路3との交点から線路61側を見たインピーダンスは直列共振周波数においてゼロとなる。
f=1/(2π√LC) (8)
スイッチ素子7がオフの場合、線路60と入出力線路3との交点付近では誘導性が強く、スイッチ素子7側の線路61の先端付近では容量性が強い。図6(c)では、この場合、誘導性が強くなる入出力線路3側の線路60の線路幅が広いので、誘導性リアクタンスが小さくなる。また、容量性の強いスイッチ素子7側の線路61の先端の線路幅は細いので容量性リアクタンスも小さくなる。この結果、図6(a)に示すような均一な線路幅で形成された共振器に対して、スイッチ素子7がオフ時の共振周波数を高くすることが出来る。
このように、共振器の線路構造をステップインピーダンスレゾネータ構造にすることでも、共振周波数を制御することが可能である。
基本周波数のすぐ隣の高調波は、このような可変共振器を無線システムに利用した際に問題になることがある。隣の高調波とは、図3(a)の基本周波数2.5GHzに対する3倍高調波の7.5GHz、または、図5(b)の基本周波数5.0GHzに対する10.0GHzなどであり、利用される無線システム側の都合で、無い方が好ましい場合がある。このような基本周波数のすぐ隣の高調波を無くす目的で、例えばステップインピーダンスレゾネータ構造を用いることが出来る。
例えば、図5(a)で示した第1共振器4の電気長120°(5GHz)と、第2共振器6の電気長60°(5GHz)の組み合わせにおける基本周波数は2.5GHzであり、その隣の高調波は12.5GHzであって、3倍の7.5GHzではない。
また、スイッチ素子7がオン状態において2倍の高調波が存在しない例は、図3(b)に示した。この時に必要な第2共振器6の電気長は90°(5GHz)である。同じ5GHzにおいてスイッチ素子7がオン状態で、第2共振器6の電気長を30°延長する必要がある。
この場合、第2共振器6をステップインピーダンスレゾネータ構造にすることで、1個の線路でその二つを兼用することが可能になる。上記した原理によって、スイッチ素子7がオフ状態における電気長を60°、オン状態における電気長を見掛け上90°にすることが、ステップインピーダンスレゾネータ構造を用いることで実現可能である。もちろん、この場合、第1共振器4の線路長は、スイッチ素子7がオン状態では、120°→90°(5GHz)に短縮する切換えが必要になる。このような切換えが一部に必要になるが、線路をステップインピーダンスレゾネータ構造にすることで、1個の線路の電気長を周波数によって見掛け上変え、少ない切換え部で複数の共振周波数を得ることが可能になる。
尚、図6に示した例では、入出力線路3に接続される側の線路幅を大きくした例を示したが、この逆でも良い。この場合は、均一な線路幅で形成された共振器に対して、スイッチ素子7がオフの時の共振周波数を低く、スイッチ素子7がオンしたときの共振周波数を高く、上記した例と逆方向に変化させることも可能である。
なお、図1に示したこの発明の可変共振器は、マイクロストリップ線路構造を用いた例を示したが、この発明による可変共振器は、線路構造がマイクロストリップ線路に限定されない。コプレーナ線路や同軸線路でも構成可能である。図7に図1に示したこの発明の可変共振器をコプレーナ線路で構成した場合の例を示す。誘電体基板2の一方の面、全面に形成されていた地導体1が無くなり、第1,第2共振器4,6が形成される面と同じ誘電体基板2の表面に地導体70aと70bが形成されている。
このようにコプレーナ線路でもこの発明の可変共振器を実現することができる。
〔第2の実施の形態〕
上記した第1の実施の形態では、可変周波数範囲が広い可変共振器が実現できたが、その共振周波数は、基本周波数の整数倍(奇数)と言った比較的に周波数間隔が大きいものであった。第2の実施の形態として、可変共振周波数の分解能が高く(可変周波数が細かく変えられる)て、且つ周波数可変範囲も広い可変共振器の実施例を示す。
共振線路を伝わる電気信号は、周波数が高くなればなるほど、共振線路の外縁部に集中する特徴を有する。これは高周波信号の表皮効果によるもので、導体中を信号が伝播する場合、電気信号が線路の幅方向に侵入する深さは、表皮深さ(Skin Depth)と呼ばれ式(9)で表される。
Skin Depth=1/√(πfσμ) (9)
ここで、fは周波数、σは導体の導電率、μは導体の透磁率である。
この表皮効果をこの発明の可変共振器に応用し、共振周波数の可変分解能を高めた実施例を図9に示す。
平面形状が短冊状の誘電体基板90上の長辺のほぼ中央部分から、入出力線路3が短辺に平行に延長されている。入出力線路3のほぼ中央に対して直交する方向の一方に第1共振器4が配置され、他方に第2共振器6が配置されている。
この実施例1では、第1,第2共振器4,6の線路形状に表皮効果が応用され、共振周波数分解能が高められた構成になっている。第1共振器4の共振線路は、入出力線路3とほぼ同じ幅のW1の線路幅で長さがL1の第1線路91と、第1線路91と直交する向きに配置される幅Tで長さがLbの第2線路R11と、の2つの線路が組み合わさって構成されている。
第2線路R11の入出力線路3と反対側には、第1線路91の延長方向にLcの間隔を空けて第2線路R11と同一形状の第2線路R12が配置されている。以降同じ間隔Lcを空けて4つの第2線路R13、R14、R15、R16、が配置され、第2線路R16の入出力線路3と反対側には第1線路91の他端を長さLc突出させている。第1線路91の他端はViaホール5によって地導体1に接地されている。
一体である共振線路の線路長は、第1線路91と第2線路R11〜R16で形成される共振線路の外縁部の長さに凡そ等しくなる。これは図9に示すように線路幅が変わっている場合、線路を流れる電流が表皮効果の影響により線路の最短経路を通らずに線路の外縁部に集中して流れ、最短経路よりも長い経路を電流が流れるようになるからである。この例の場合の線路長は、L1より長く、La+n(2Lb+T)+nLcよりも短い線路長になる。Lc及びTをSkin Depth以上の大きさにすることにより、線路長をLa+n(2Lb+T)+nLcの長さに近づけることが可能である。nはこの例の場合6である。2nLbの部分が、第1線路91に沿って配列形成された複数個の第2線路R11〜R16によって線路が延長された分である。
第2共振器6は第1共振器4と全く同じ構成であり、上記した第1共振器4を入出力線路3を中心に180°回転させた位置に配置されている。詳細な構成については、第1共振器4と同じであるので説明を省略する。図9(a)を参照されたい。第2共振器6が第1共振器4と唯一異なっている点は、第1線路92の他端がスイッチ素子7を介して地導体1に接地されるようになっている。
スイッチ素子7及び第3スイッチ素子R***は、例えばMEMS(Micro Electromechanical Systems)技術を用いた機械的なスイッチで実現することが可能である。もちろん、電界効果型トランジスタ(FET)やPINダイオード等の半導体素子によるスイッチ素子でも作ることが可能である。図8(a)の中のVIII−VIII切断線で見た断面図を図8(b)に示す。第2線路R15の両端表面に第3スイッチ素子R15aとR15bが形成されている様子が分かる。
図10中の太線で示す特性が、スイッチ素子7がオフで第3スイッチ素子R***も全てオフの時の特性である。約2.3GHzと7.0GHzで共振している。細線で示す特性が、スイッチ素子7をオフのまま、第3スイッチ素子Rを全てオンにした時の特性である。約2.3GHzが2.8GHz(7.0→8.5GHz)に変化している。これは、第3スイッチ素子Rを全てオンしたことにより、共振線路長が最も短くなり、共振周波数が高くなった状態を示している。図10では図示していないが、図9に示したように第3スイッチ素子R1**とR2**がそれぞれ5組用意されていれば、この2.3GHzと2.8GHzの間に5つの共振周波数を得る事が出来る。
このように図9の構成にすると、スイッチ素子7のオン/オフによって大きく共振周波数を変化させ、第3スイッチ素子R***によってその共振周波数近傍で細かく共振周波数を変えることができる可変共振器となる。第3スイッチ素子R***によって細かく共振周波数が変えられる具体例を示さないが、共振周波数の数及び周波数間隔は、図9の説明で明らかなように、要求仕様に合わせて適宜設計されるものである。
なお、第3スイッチ素子R11a,R11b〜R15a,R15bの各一組ずつを同時にオン/オフするように説明したが、その制御は必ずしも同時に行わなくても良い。例えばR11aだけ、又は、R11bだけ、単独でオンさせるようにしてもよい。その場合は、一組を同時にオンさせた時の周波数変化量よりもその変化量が小さくなるが、共振周波数は変化する。
以降、図9に示した可変共振器を変形した実施例を示す。
図11は同一の共振周波数で帯域幅の異なる可変共振器を実現した例を示す。以降、可変共振器が形成される誘電体基板は省略して示す。第1及び第2共振器4,6の基本構成は、図9で説明した例と同一である。図11は、図9の第2共振器6と入出力線路3との間に第2スイッチ素子110を配置している点が異なる。第2スイッチ素子110をオフにした場合、当然ながら共振周波数は第1共振器4によって決定される。その共振周波数は、スイッチ素子7がオン状態に在っては、第2スイッチ素子110がオンされても変わらない。上記したように、スイッチ素子7をオンすると同一形状で形成された第1共振器4と第2共振器6の線路長の和の1/2になるからである。
したがって、スイッチ素子7がオン状態における第2スイッチ素子110のオン/オフによって、共振周波数は同一であるが、入出力線路3から見た共振周波数以外の周波数におけるインピーダンスを変化させることが出来る。この結果、共振周波数が同一で帯域幅の異なる共振器を実現することが出来る。
帯域幅は、第2スイッチ素子110をオンさせた時の方が広くなる。帯域幅は、要求仕様に合わせて、第2スイッチ素子110のインピーダンス及び第2共振器6の特性インピーダンスによって変えることが可能である。
図12は、共振周波数の自由度を向上させた例を示す図である。第1及び第2共振器4,6の基本構成は、図9で説明した例と同一である。図12(a)は、図9のスイッチ素子7を一極三投スイッチ(Single pole three throw switch、以下SP3Tと称す)120にしたものである。第1線路92の他端(先端)に一極端子120pが接続され、各三投端子は一投端子120aが地導体1に接地され、二投端子120bが開放、三投端子120cに追加線路121の一端が接続されている。
図12(b)は、図12(a)のSP3T120を一極一投スイッチ(Single pole single throw switch、以下SPSTと称す)2個に置き換えたものである。SPST122と123の一極端子122p及び123pは、第1線路92の他端に接続され、SPST122の一投端子122aは接地され、SPST123の一投端子123aに追加線路121の一端が接続されている。
SPST122が開放(オフ)時に、SPST123をオンさせることでSPST122がオフ時の共振周波数よりも低い共振周波数にすることができる。
図13に周波数間隔を空けて(飛び飛びの周波数)得られる共振周波数の数を増やした実施例を示す。図13は図9に対して、第2共振器6の第2線路R23と第2線路R24の第3スイッチ素子R23bとR24bが接続される側のそれぞれの遊端部に、遊端部を接地させる第4スイッチSPST130と131が接続されている点が異なる。
第4スイッチSPST130,131がそれぞれ独立にオンされた時の線路長を比較すると、スイッチ素子7の場合は上記したように最長でLa+6(2Lb+T)+6Lcの長さになる。第4スイッチSPST130がオンした時の線路長は、La+5Lb+2T+2Lcと短くなる。第4スイッチSPST131がオンした時の線路長は、それよりも2Lb+T+Lcだけ長い線路長になる。
もちろん、第4スイッチSPST130をオンさせた場合に、有効な第3スイッチ素子R2**の数が減るので図13の例では、その共振周波数近傍で可変できる共振周波数の数も減少するが、その共振周波数近傍で細かく周波数を可変する仕様も容易に設計することが可能である。
このように第4スイッチ素子を設けることで、飛び飛びに大きく共振周波数を変えたい要求に答える事が可能である。
図14に示す実施例5は、図9に示した第1共振器4の第1線路91の他端を第5スイッチ素子140を介して接地するようにしたものである。こうすることで、入出力線路3から第1共振器4を見たインピーダンスを180°変更することが可能になる。
スイッチ素子7と第5スイッチ素子140を両方共にオンした状態では、第1線路91及び第1線路92の他端(先端)におけるインピーダンスがゼロであり、共振時における一端側(入出力線路3との接続点)のインピーダンスは開放となる。逆にスイッチ素子7と第5スイッチ素子140とが両方共にオフ状態では、第1線路91及び第1線路92の他端(先端)におけるインピーダンスが開放になり、共振時における一端側(入出力線路3との接続点)のインピーダンスがゼロになる。
この時のフィルタとしての動作は、図6で示したように同一の周波数で、両スイッチ素子がオンで帯域通過、オフで帯域阻止として動作する。このように第5スイッチ素子140を設けることで共振器としての動作態様を正反対に変えることができる。
実施例5までに示した実施例は、入出力線路3を中心に同一形態の共振器を2つ配置して可変共振器を構成した例を示して来たが、それらの構成を入出力線路3を中心に非対称としてもよい。その例を図15に示す。図15(a)は、説明済みの図9と全く同じものを示している。
図15(c)は、第1線路91の他端側を延長したあと、入出力線路3と平行する方向に一定の長さ延長した後、入出力線路3側に屈曲され、その後、第1線路91に近着く方向に屈曲し、その先端が地導体に接地されている。更にその接地された線路先端と第1線路91との間にその間を導通させる第6スイッチ素子160aと160bが配置されている。このように構成することで、第1共振器4の共振周波数を低くしても入出力線路3と直交する方向の大きさを小さくすることが出来る。
二股部の他方は、第7スイッチ素子162を介して、一方に延長された共振器と同一形状の共振器が、延長第1線路163と第2線路R17 #,R18 #,R19 #と第3スイッチ素子R16a #,R16b #とR17a #,R17b #とで形成されている。
第7スイッチ素子162をオンさせ、共振周波数を高くした後に、第3スイッチ素子R***で共振周波数を細かく可変することが可能である。このような形状に共振線路を形成することも出来る。
図15(e)は、図15(a)のスイッチ素子7の接地されている端子に、更に追加線路161を設け、その先端を接地させたものである。このように構成すると、スイッチ素子7をオンさせたときの共振周波数を追加線路164の線路分の長さ、低くすることが出来る。
以上述べたように第1共振器4と第2共振器6とを異なる形態に構成してもよい。このような構成は、先に説明した基本周波数のすぐ隣の、例えば2.5GHzに対する7.5GHz、5.0GHzに対する10GHzの共振周波数を削除するのに有効である。
ここまでに示した実施例は何れも入出力線路3を中心に一方に第1共振器4、他方に第2共振器6が構成される形態で説明を行って来たが、この発明はこの形態に限定されない。入出力線路3を中心に一方に第1共振器4、他方に第2共振器6を形成すると、入出力線路3に直交する方向の幅が大きくなってしまう。
そこで、図16に示すように、この発明の可変共振器は入出力線路3の一方側に第1共振器4と第2共振器6を形成しても同様な動作を行うことが出来る。したがって、この発明の可変共振器は、入出力線路3に直交する方向の大きさを小さくした形状でも形成することが可能である。
この発明の可変共振器を小型化する実施例を図17に示す。図17に示す実施例は、図9に示したこの発明の可変共振器を、導電膜180を挟んで2枚の短冊状の誘電体基板171と172とで構成した例である。図17(a)が誘電体基板171と172を重ねて可変共振として完成された状態の外観を示す斜視図である。図17(b)は誘電体基板170の一方の面に形成される導電膜170の表面を示す図、図17(c)は図17(b)の反対側の面を示す図、図17(d)は誘電体基板172の誘電体基板171との対接面と反対側の面を示す図である。
導電膜170を中心に一方側の誘電体基板171を挟んで誘電体基板171の反対側の面には、第1共振器4が形成されており、第1共振器4の第1線路91の一端がViaホール170cを介して入出力線路3と接続されている。第1線路91の他端はViaホール170dによって地導体170bに接地されている。
このような構成にすることで、入出力線路3の延長方向に対して直交する方向の大きさを小さくすることが出来る。
第1共振器4の他端が導体柱180aを介して第1共振器4に対向する位置に配置された遮蔽用地導体181aに接続されている。第2共振器6の他端がViaホール172bの替わりに導体柱180bを介して第2共振器6に対向する位置に配置された遮蔽用地導体181bに接続されている。
図18に示したこの発明の可変共振器を更に小型化した実施例を図19に示す。図19は、四枚の誘電体基板を積み重ねた構造でこの発明の可変共振器を構成することで、入出力線路3の延長方向の共振器の大きさも小型にしたものである。図19(a)〜図19(g)は、図18(a)〜図18(g)と同じ部分を示す図である。
誘電体の二層目191と三層目192の対接面の導電膜170の上に入出力線路3がコプレーナ線路で形成され、誘電体の一層目190と二層目191の対接面の一方に第1共振器4の第1線路91が形成されている。第1線路91の一端は2層目191に空けられたViaホール170cを介して入出力線路3に接続され、第1線路91の他端も第2層目191に空けられたViaホール170cを介して入出力線路3に接続される。第1共振器4の第1線路91の両側に線路に沿って一層目190の誘電体層に形成された配線層間接続194a〜194fが複数配列形成されている。一層目190の誘電体層の外面において隣接する配線層間接続同士を接続することができる第3スイッチR11a〜R15aが設けられている。つまり第1線路91の両側に線路に沿って形成された配線層間接続が第2線路を形成している。
このように構成することで、第2線路を導電膜170に対して垂直方向に形成できるので、入出力線路3の線路延長方向の大きさを小さくすることが可能である。
この発明による可変共振器の応用例を図20と図21に示す。図20は、この発明の可変共振器を2段、210と211とを電界結合により直列接続したものである。入出力ポート212と1段目の可変共振器210の入出力線路210aとは、同じ線路幅でギャップ300の間隔を空けて対向している。1段目の可変共振器210と2段目の可変共振器211及び、2段目の可変共振器211と入出力ポート213との間も、ギャップ301及び302の間隔をそれぞれ空けて対向している。これらのギャップ300〜302の間隔及び対向する部分の線路形状は結合の度合いにより設計されるものである。
以上説明して来たように、この発明の可変共振器は、入出力線路に対して、第1共振器と第2共振器を並列に接続する構成とし、共振周波数を可変したい場合に第2共振器の入出力線路と反対側の端をスイッチで接地することで大きく共振周波数を変化させることが出来る。この発明の場合、そのスイッチの接触抵抗が並列で効くので、従来技術に対してスイッチの抵抗の影響を小さくすることが出来る。したがって、可変周波数範囲が広く、且つ損失の少ない可変共振器が実現できる。
Claims (10)
- 誘電体基板と
その誘電体基板上に形成された入出力線路と、
上記入出力線路に一端が接続され、他端が接地された第1共振器と、
上記第1共振器の上記一端と上記入出力線路の接続点に、一端が接続され他端がスイッチ素子を介して接地される第2共振器と、
を備えたことを特徴とする可変共振器。 - 請求項1に記載の可変共振器において、
上記第2共振器の一端側の線路幅が他端側の幅と異なっていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項1又は2に記載の可変共振器において、
上記第2共振器の上記一端側が第2スイッチ素子を介して上記第1共振器の上記一端と上記入出力線路の接続点に接続されることを特徴とする可変共振器。 - 請求項1乃至3の何れかに記載の可変共振器において、
上記第1及び第2共振器がそれぞれ第1線路と、上記第1線路に沿って配列接続された複数個の第2線路と、から構成されることを特徴とする可変共振器。 - 請求項4に記載の可変共振器において、
上記隣接された第2線路の同一側の遊端同士を、それぞれ接続することができる第3スイッチ素子が設けられていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項5に記載の可変共振器において、
上記第2線路の遊端側を接地することができる第4スイッチ素子が設けられていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項1乃至6の何れかに記載の可変共振器において、
上記第1共振器の上記他端を接地することができる第5スイッチ素子が設けられていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項1乃至7の何れかに記載の可変共振器において、
上記誘電体基板は導電膜を介し誘電体層が積層されて構成され、上記導電膜層に上記入出力線路がコプレーナ線路で形成され、上記第1共振器及び上記第2共振器が、上記積層誘電体基板の両外側に形成され、これら第1共振器及び第2共振器は誘電体層を介して上記コプレーナ線路と接続されていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項8に記載の可変共振器において、
上記第1及び第2の共振器が形成された導体膜部分の全体に渡って対向する位置にそれぞれ遮蔽用地導体が配置されていることを特徴とする可変共振器。 - 請求項4乃至7の何れかに記載の共振器において、
上記誘電体基板は四層の誘電体層よりなり、
これら誘電体の二層目と三層目の対接面の導電膜に上記入出力線路がコプレーナ線路で形成され、
上記誘電体層の一層目と二層目の対接面の一方に第1共振器の第1線路が形成され、その第1経路は2層目の誘電体層を介して上記コプレーナ線路と接続され、
第1共振器の第1線路の両側にこれらに沿って一層目の誘電体層に形成された上記第2線路の少なくとも一部を構成する配線層間接続が複数配列形成され、
一層目の誘電体層の外面において上記配線層間接続の隣接するものを接続することができる上記第3スイッチ素子が設けられ、
上記誘電体層の三層目と四層目の対接面の一方に第2共振器の第1線路が形成され、その第1経路は四層目の誘電体層を介して上記コプレーナ線路と接続され、
第2共振器の第1線路の両側にこれらに沿って三層目の誘電体層に形成された上記第2線路の少なくとも一部を構成する配線層間接続が複数配列形成され、
四層目の誘電体層の外面において上記配線層間接続の隣接するものを接続することができる第2共振器の第3スイッチ素子が設けられていることを特徴とする可変共振器。
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