図1Aおよび1Bに、2つのパターンの環状マイクロストリップ線路構造として構成した場合の本発明の可変共振器20を示す。図1Cは図1A又は1Bにおける可変共振器20の環を1つのスイッチ3の位置で切断した断面の例を示す。図1A及び1Bの可変共振器20はそれぞれ、環状導体線路2(以下、単に環状線路ともいう)および2つ以上の回路開閉器であるスイッチ3から成る。ここで「環状」とは、後述のように円である必要はなく、閉じたループを形成するものであればよい。環状線路2は、図1Cに断面で示すように、誘電体基板5の一方の面上に金属で形成される。誘電体基板5は、環状線路2が設けられる面とは反対側の面(裏面と云うことにする)に接地導体4が金属で形成される。各々のスイッチ3は、スイッチ3の一端31は環状線路2に電気的に接続され、他端32は、誘電体基板5裏面の接地導体4に、導体33およびビアホール(via hole)6を介して電気的に接続されている。なお、導体33の形状などには一切の限定はないから、図1Aおよび図1Bでは導体33の図示を省略している。各スイッチ3の配置は、それぞれ等間隔とすることに限定されず、所望の帯域幅を得るべく任意に設計できる。また、本明細書においてスイッチと云えば、接点型のスイッチに限定するものではなく、例えばダイオード、トランジスタ、MOS素子などを用いた、回路網に接点を設けないで回路の開閉機能を有するいわゆるスイッチング素子(switching element)とすることもできる。具体例としては、スイッチングダイオードなどが挙げられる。
環状線路2は、所望の共振周波数において2π即ち360°位相変化する長さ、つまり共振周波数における1波長もしくはその整数倍である長さの環状線路である。図1Aおよび図1Bに示す可変共振器20では、円形の環状線路として例示している。
ここで「長さ」は、環状線路の周長のことである。
ここで「所望の共振周波数」は、一般的に共振器に要求される性能の一要素であり、任意の設計事項である。なお、本発明の可変共振回路は、交流回路において用いることができ、対象とする共振周波数に格別の限定は無いが、例えば共振周波数を100kHz以上の高周波数とする場合に有用である。
図1Aの可変共振器20と図1Bの可変共振器20との差異は、スイッチ3の他端32が、環状線路2の内側に設けられたか外側に設けられたかにある。図1Aの可変共振器20は、スイッチ3の他端32が環状線路2の外側に設けられ、図1Bの可変共振器20は、スイッチ3の他端32が環状線路2の内側に設けられている。
このような2種類の実施形態の特徴は、例えば後述の図8、図11、図27に示す構成の場合にも適用できる。
この可変共振器20の特性を、図2Aと2Bに示す回路10の電磁界シミュレーションによって示す。
図2Aおよび2Bに示す回路10は、図1Aおよび1Bに示す可変共振器20を、伝送線路であるポートP1−P2間に示す入出力線路7に並列接続したものであり、帯域幅可変フィルタとして作用する。電磁界シミュレーションでは、誘電体基板5の比誘電率εrを9.6、厚さを0.635mmとし、環状線路2の外径を4mm、内径を3.4mmとした。環状線路2を構成する導体、ビアホール6を形成する導体、接地導体4の抵抗は何れも0とした。また、入出力線路7のポートインピーダンスを50Ωとした。なお、簡便のためスイッチ3の表示は省略し、その代わりにビアホール6の位置を変えてシミュレーションした。
図3A,3Bに、回路10による伝達係数の周波数特性のシミュレーション結果を示す。
図3Aは、図2Aに示すように環状線路2の中心を通り、線Lに関してπ/2即ち90°で交差する線と環状線路2との交差位置の1つである位置Xを直径0.3mmのビアホール6を介して接地した場合の周波数特性を示している。位置Xは、入出力線路7との結合部位Cから、反時計回りに環状線路2の長さの3/4の位置(時計回りでは1/4の位置)であり、この位置Xにて接地されているとする。なお、ここで「時計回り」「反時計回り」とは、図の紙面の上から見た場合の周回方向を云うものとする(以下同様)。なお、入出力線路7と結合部位Cとを結ぶ線は、シミュレーション対象の回路10において入出力線路7と環状線路2とが電気的に接続されていることを表している。
図3Bは、図2Bに示すようにビアホール6の位置を位置Yに設定したときの周波数特性を示している。位置Yは、入出力線路7との結合部位Cから、反時計回りに環状線路2の長さの7/12の位置(時計周りでは5/12の位置)であり、この位置Yにて接地されているとする。
図3Aおよび図3Bに示される周波数特性から明らかなように、この可変共振器20においては、ビアホール6の位置を変えることで、つまり、オン状態(電気的に接続した状態)にするスイッチ3の位置を変化させることで、信号が通過する周波数αを変化させず、信号を遮断する周波数(伝達係数が極小となる周波数)βを大幅に変化させることが可能である。換言すれば、伝搬する信号の帯域幅を、オン状態にするスイッチ3の位置で大幅に変更可能である。なお、一般に伝達係数の周波数特性に現れる極小点を零点と呼ぶ。
これらの作用を、無損失の伝送線路モデルを用いて、以下に説明する。
図4Aに、図2A,2Bに示した回路10の共振器の部分の無損失伝送線路モデルを示す。このモデルの入力インピーダンスZinを求めることで、回路10の作用を説明する。共振周波数fr=α(図3A,3B)において、伝送線路21は電気長πで特性インピーダンスZ1の線路、伝送線路22は電気長x(ラジアン)で特性インピーダンスZ2の線路、伝送線路23は電気長(π−x)、特性インピーダンスZ3の線路とする。このモデルから明らかなように各伝送線路21,22,23の電気長を全て加えると2π、即ち360°となる。
伝送線路21および伝送線路22からなる経路PAは、図2A,2Bにおいて結合部位Cからビアホール6の位置、つまり図2A,2Bではそれぞれ符号X、Yで示す位置までの反時計回りの経路を示し、伝送線路23からなる経路PBは、図2において結合部位Cからビアホール6の位置、つまり図2A,2Bでは符号X、Yで示す位置までの時計回りの経路を示している。ZLは、ビアホール6の位置における、接地までのインピーダンスを表している。
このとき入力インピーダンスZ
inは、式(1)で与えられる。jは虚数単位である。
Y2=Y3とした場合であって、x=nπ(n=0, 1, 2, 3, …)の場合を除く全ての場合において、どのようなZLに対してもZinは無限大となり、LC並列共振と同様の特性を示す。このため図2A,2Bにおいて入力ポートから入力された信号は出力ポートへと伝搬する。Y2=Y3とした場合であって、x=nπの場合は、Zin=ZLとなるため、仮にZLが0の場合、この周波数において図2A,2Bに示した可変共振器20と入出力線路7との結合部位Cは短絡となり、信号は伝搬しない。
従って、後で述べる帯域幅可変フィルタの構成において、可変共振器と伝送線路とを並列に接続する構成をとる場合、可変共振器の導体線路長を波長とする周波数において信号を通過させたい場合には、オン状態にするスイッチの位置が、伝送線路と可変共振器との結合部位から電気長にしてπの整数倍にならないようにする必要がある。逆に、可変共振器の導体線路長を波長とする周波数において信号を通過させない揚合には、オン状態にするスイッチの位置を、伝送線路と可変共振器との結合部位から電気長にしてπの整数倍にすればよい。
ここでは式(1)による解析的見地からY2=Y3とした場合で説明した。しかし、本発明の効果は、厳格にY2=Y3とした場合でのみ享受されえるというものではない。例えば、Y2≠Y3だがY2とY3とが大きく異ならない場合、つまりY2≒Y3の場合、可変共振器の共振周波数に少しのぶれが生じて一定とならないが(要するに、所望の共振周波数を維持できない)、スイッチ3をオン状態とする位置によっては広い帯域幅が得られるから、所望の共振周波数における帯域幅と共振周波数が少しずれた状態での帯域幅とでほとんど差異がなくなり、実用上何ら影響が無い。
換言すれば、ある程度広い帯域幅でこれを可変とするならば、実用上の観点から厳格にY2=Y3とする設計条件は要求されない。このことから、ある程度広い帯域幅で可変とするならば、環状線路2の周長も共振周波数における1波長もしくはその整数倍に厳格に設計されなければならないわけではない。
従って、既述した、環状線路2の周長を共振周波数における1波長もしくはその整数倍とすることは、上述の意味をも含んだ技術事項と理解されるべきと云える。
信号遮断としてではなく、所望の周波数の信号を通過させることを主目的として帯域幅可変フィルタを構成するならば、そもそも電気長にしてπの整数倍の位置にスイッチ3を設けておく必要がない。そこで、図4Bに示すように、電気長にしてπの整数倍の位置以外にスイッチ3を設ける構成とする。つまり、図4Bに示した可変共振器において、入力インピーダンスZinで示した部分が伝送線路との結合部位に相当し、この結合部位と、そこから電気長にしてπとなる位置の2箇所にスイッチを設けない構成である。
また、図4Aの無損失伝送線路モデルで明らかなように、環状線路2の、入出力線路7との接続点から電気長πの位置で時計回りの経路と反時計回りの経路が対称となるから(図2A,2Bに示すような円環線路の場合には、線Lについて左右対称である)、対称部分の一方の側においてスイッチ3を設けない構成とすることもできる。
図4Bに示す可変共振器20の例で説明すれば、紙面を正面に見て線H(図2A,2Bにおける線Lに相当する)の下側あるいは上側のいずれか一方の側のスイッチ3全てを設けない構成とすることができる。
次に、図3A,3Bに示す符号βで示した周波数における特性について説明する。これらの周波数で信号が伝搬しないのは、入出力線路7と可変共振器20との結合部位において入力インピーダンスZinが0となっている為である。
図4Aにおいて、xが可変共振器20の共振周波数frに関してπ/2即ち90°の時、この無損失伝送線路モデルは図2Aに示す回路に相当して図3Aに示す特性を示し、経路PAの電気長は共振周波数frに関して、3π/2即ち270°の電気長となる。この電気長は、共振周波数frの2/3倍の周波数では、π即ち180°の電気長となり、丁度先端短絡の2分の1波長のスタブとみなせるため、入出力線路7と可変共振器20との接点の入力インピーダンスZinは0となる。また、共振周波数frの4/3倍(つまり、2/3の2倍)の周波数に関しては、経路PAは先端短絡の1波長のスタブとなるから同様の特性となる。もう一方の経路PBについては、共振周波数frにおいて電気長がπ/2即ち90°であるから、共振周波数frの2倍の周波数において先端短絡の2分の1波長のスタブとみなせるため、可変共振器20と入出力線路7との接点の入力インピーダンスZinが0となる。ただし、この場合は図3Aに示す周波数軸(横軸)の範囲外となり、図3Aに表れていない。
図4Aにおいて、xが可変共振器20の共振周波数frに関してπ/6即ち30°の時、この無損失伝送線路モデルは図2Bに示す回路に相当して図3Bに示す特性を示す。経路PAの電気長は共振周波数frに関して、7π/6即ち210°の電気長となる。この電気長は、共振周波数frの6/7倍の周波数では、π即ち180°の電気長となり、丁度先端短絡の2分の1波長のスタブとみなせるため、入出力線路7と可変共振器20との接点の入力インピーダンスZinは0となる。また、共振周波数frの12/7倍(つまり、6/7の2倍)の周波数に関しては、経路PAは先端短絡の1波長のスタブとなるから同様の特性となる。もう一方の経路PBについては、共振周波数frにおいて電気長が5π/6即ち150°であるから、共振周波数frの6/5倍の周波数において先端短絡の2分の1波長のスタブとみなせるため、可変共振器20と入出力線路7との接点の入力インピーダンスZinが0となる。
以上が、図3A,3Bの符号βで示した周波数において、信号が伝搬しないことの説明である。
次に、図5A,5Bに、本発明である可変共振器20を2つ用いて構成した帯域幅可変フィルタ10を示す。帯域幅可変フィルタ10は、2つの可変共振器20を伝送線路に対して電気的に並列接続したものである。図6A,6Bは、帯域幅可変フィルタ10の周波数特性の線形回路シミュレーション結果を示したものである。なお、簡便のためスイッチ3の表示は省略し、ビアホール6の位置を変えてシミュレーションした。また、線形回路シミュレーションにおいて、可変共振器20の共振周波数を5GHzとした。
また、線形回路シミュレーションにおいて、図5A,5Bに示す帯域幅可変フィルタ10は、2つの可変共振器20間を可変共振器の共振周波数である5GHzにおける4分の1波長(90°の位相変化に相当する)の線路で結んだものとした。
線形回路シミュレーションでは、図5A,5Bに示す2つの場合のビアホール位置設定について、帯域幅可変フィルタ10のシミュレーションを行った。
図5Aに示す帯域幅可変フィルタ10では、2つの可変共振器20のビアホール6の位置をそれぞれ異なるものとし、具体的には、図5Aの左側の可変共振器20のビアホール6の位置を、結合部位Dから反時計回りに環状線路2の長さの5/12の位置とし、図5Aの右側の可変共振器20のビアホール6の位置を、結合部位Eから反時計回りに環状線路2の長さの4/9の位置とした。
図5Bに示す帯域幅可変フィルタ10では、2つの可変共振器20のビアホール6の位置をそれぞれ図5Aの場合と異なるものとし、具体的には、図5Bの左側の可変共振器20のビアホール6の位置を、結合部位Dから反時計回りに環状線路2の長さの4/9の位置とし、図5Bの右側の可変共振器20のビアホール6の位置を、結合部位Eから反時計回りに環状線路2の長さの17/36の位置とした。
図6A,6Bに示すとおり、図5Aに示す帯域幅可変フィルタ10の帯域幅(この場合では5GHzを挟んで−3dBの帯域幅)は約320MHzとなり、図5Bに示す帯域幅可変フィルタ10の帯域幅は約100MHzとなった。
このことから明らかなように、本発明の帯域幅可変フィルタ10によれば、ビアホール6の位置、つまりスイッチ3の位置を変化させることで、中心周波数(この場合では5GHz)を一定にしながら帯域幅を大幅に変化させることが可能である。
図5A,5Bに示す帯域幅可変フィルタ10では可変共振器20を2つ用いているが、特に2つに限定する趣旨ではなく、1つ以上の可変共振器20を用いて帯域幅可変フィルタ10を構成できる。1つの可変共振器20を用いて帯域幅可変フィルタ10を構成する場合は図2に例示したとおりとなる。
また、可変共振器20間は、可変共振器20の共振周波数における4分の1波長の線路で結合させることが望ましいが、これに限ったものではない。
本発明による帯域幅可変フィルタ10は、可変共振器20の共振周波数を中心とする通過帯域における挿入損失が小さいという特徴も有する。挿入損失を惹起する、可変共振器に用いられるスイッチの影響を次のとおり検討した。
図5Aに示した帯域幅可変フィルタ10のスイッチ3の抵抗を、0Ωの場合および2Ωの場合として帯域幅可変フィルタ10の周波数特性をシミュレーションした。このシミュレーション結果を図7A,7Cに示す。図7Aは、図5Aに示すようにスイッチ3の抵抗が0Ωの場合、図7Cは図7Bに示すようにスイッチ3の抵抗が2Ωの場合である。図7Aと7Cとの比較において明らかなように、スイッチ3の抵抗を大きくしても、中心周波数(この場合では5GHz)付近の通過帯域の挿入損失がほとんど変化していないことがわかる。これは、図4Aを用いて説明した可変共振器20の作用において、共振周波数frにおける入力インピーダンスZinはインピーダンスZLによらず∞となる、ということに基づく。このことから、本発明である帯域幅可変フィルタ10においては、多少抵抗の大きいスイッチを用いても低挿入損失な特性が得られることがわかる。
また、逆に抵抗を積極的に活用した構成も採用できる。例えば図7Dに示すように、低抵抗の切替器であるスイッチ35を用いて、接地導体4に直接的に接続する場合と、スイッチ35の抵抗よりも高い数Ω〜数十Ωの抵抗器9を介して接地導体4に接続する場合を切り替えるというように、積極的に抵抗を利用する場合が考えられる。この揚合、数Ω〜数十Ωの抵抗器9を介することによって、この抵抗によって影響を受ける帯域において信号の伝搬を抑制する場合と、できるだけ低抵抗にして抵抗によって影響を受ける帯域付近の信号も伝搬する場合を選択することが可能となる。
ここでは、抵抗器を用いる場合を示したが、抵抗器に限定されず、例えば可変抵抗器、インダクタ、可変インダクタ、キャパシタ、可変キャパシタ、圧電素子などを例示できる受動素子を用いることができる。もちろん、図1A,1Bやその他の実施例においても、環状導体線路2のそれぞれのスイッチ3をこのような受動素子を介して接地可能にしてもよいし、スイッチ35により受動素子を介して接地するか、直接接地するか選択可能にしてもよい。
図5A,5Bに示すように可変共振器20を伝送線路に結合して帯域幅可変フィルタ10を構成するほかに、図8に示すように可変共振器20と電気的に接続する入出力線路7同士を可変キャパシタ11によって結合して帯域幅可変フィルタ10を構成するとしてもよい。なお、バリアブルコンデンサに限定する趣旨ではなく、その他の例えば、コンデンサ、インダクタ、可変インダクタ、トランジスタなどの回路素子を用いることができる。
また、入出力線路7との結合を電界結合あるいは磁界結合に拠ることで帯域幅可変フィルタを構成することも可能である。図9が、電界結合によって帯域幅可変フィルタ10を構成した場合を例示し、図10が、磁界結合によって帯域幅可変フィルタ10を構成した場合を例示している。図9の電界結合では、同一直線上に延長した2つの入出力線路7a,7b間に2つの可変共振器20が間隔を置いて配置されている。図10の磁界結合では、図9における同一直線上の入出力線路7a,7bの対向端から同じ側に直角に延長された線路7c、7dが互いに平行にそれぞれ形成され、それら線路7a,7bの間に2つの可変共振器20が間隔を置いて配置されている。
図11A,11B,11Cに、本発明である帯域幅可変フィルタの種々の実施形態を示す。図11Aに示す帯域幅可変フィルタ10は、大きさの異なる2つの可変共振器20a,20bと各可変共振器と伝送線路である入出力線路7との間に設けた回路開閉器であるスイッチ3a,3bによって構成される。帯域幅可変フィルタ10は、線路長が異なることで共振周波数の異なる2つの可変共振器20a,20bを用いることで中心周波数も可変なものとなっている。
各可変共振器20a,20bの共振周波数においては、可変共振器20a,20bとスイッチ3a,3bとの各結合部位のインピーダンスが高いため、各可変共振器20a,20bと入出力線路7との間のスイッチ3a,3bの抵抗による通過帯域の挿入損失への影響は小さい。このため、先ほど述べた可変共振器と接地導体との間のスイッチによる抵抗が与える共振周波数での挿入損失への影響が小さいという本発明による可変共振器の特徴と併せて、図11Aに示す帯域幅可変フィルタは、中心周波数と帯域幅を変更可能で、用いるスイッチ3a,3bの抵抗によらず低損失な通過帯域特性が得られる、という特徴も有する。
図11Bに示す帯域幅可変フィルタ10は、同じ共振周波数の2つの可変共振器20a,20bと各可変共振器と伝送線路である入出力線路7との間に設けた回路開閉器であるスイッチ3a,3bによって構成される。図11Cに示す帯域幅可変フィルタ10も、図11Bの帯域幅可変フィルタ10と同様の構成である。但し、図11Bの帯域幅可変フィルタ10では同じ特性インピーダンスの2つの可変共振器20a,20bが用いられ、図11Cの帯域幅可変フィルタ10では異なる特性インピーダンスの2つの可変共振器20a,20bが用いられている点が異なる。
図11Bの帯域幅可変フィルタ10の場合、スイッチ3a,3bによって一方の可変共振器のみ接続する場合と、両方の可変共振器20a,20bを接続する場合の2状態が選択可能であるが、それぞれの状態において共振周波数は同じであるものの周波数特性が異なるものとなっている。両方の可変共振器を接続した場合、一方の可変共振器を接続した場合と比較して等価的に可変共振器の特性インピーダンスが半分になるため、共振周波数から離れた周波数での信号の減衰量が大きくなる。
図12A,12B,12Cは、可変共振器と入出力線路7との特性インピーダンスの関係ごとに、帯域幅可変フィルタの周波数特性を示したものである。図12Aは、可変共振器の特性インピーダンスが入出力線路7の特性インピーダンスの2倍である場合の帯域幅可変フィルタの周波数特性である。図12Bは、可変共振器の特性インピーダンスが入出力線路7の特性インピーダンスと同じである場合の帯域幅可変フィルタの周波数特性である。図12Cは、可変共振器の特性インピーダンスが入出力線路7の特性インピーダンスの1/2である場合の帯域幅可変フィルタの周波数特性である。
図12A〜12Cの各周波数特性から、入出力線路7の特性インピーダンスと比較して可変共振器の特性インピーダンスが低いほうが、共振周波数から離れていくにしたがって信号の減衰量が大きい、つまり帯域幅が狭くなることがわかる。
これを図11Bに示す帯域幅可変フィルタ10に対応して説明すると、例えば可変共振器20a,20bの各特性インピーダンスを入出力線路7の特性インピーダンスの2倍になるように設計すれば、図12Aに示す周波数特性は、図11Bのスイッチ3aあるいは3bのいずれか一方をオン状態にした場合の帯域幅可変フィルタ10の周波数特性に相当し、図12Bに示す周波数特性は、スイッチ3a,3bの双方をオン状態にした場合の帯域幅可変フィルタ(55)の周波数特性に相当する。
また、図11Cに示す帯域幅可変フィルタ10に対応して説明すると、例えば可変共振器20aの特性インピーダンスを入出力線路7の特性インピーダンスの2倍に、可変共振器20bの特性インピーダンスを入出力線路7の特性インピーダンスの1/2倍になるように設計すれば、図12Aに示す周波数特性は、スイッチ3aをオン状態かつスイッチ3bをオフ状態にした場合の帯域幅可変フィルタ10の周波数特性に相当し、図12Cに示す周波数特性は、スイッチ3aをオフ状態かつスイッチ3bをオン状態にした場合の帯域幅可変フィルタ10の周波数特性に相当する。
このことから、図11Bに示す帯域幅可変フィルタ10では、各スイッチ3a,3bのオン−オフ状態を変更することで、入出力線路7に対する可変共振器の特性インピーダンスを切り替えることとなり、帯域幅可変フィルタ10の周波数特性を2状態に対応して変化させることが可能である。
図11Cの帯域幅可変フィルタ10の場合、スイッチ3a,3bによって一方の可変共振器のみ接続する場合と、両方の可変共振器を接続する場合の3状態が選択可能であり、それぞれの状態において共振周波数は同じであるものの周波数特性が異なるものとなっている。
図11Bの帯域幅可変フィルタ10の場合と同様に、図11Cに示す帯域幅可変フィルタ10では、各スイッチ3a,3bのオン−オフ状態を変更することで、可変共振器の特性インピーダンスを切り替えることとなり、帯域幅可変フィルタ10の周波数特性を3状態に対応して変化させることが可能である。
図13に、本発明である帯域幅可変フィルタの別の実施形態を示す。
図5A,5Bに示す帯域幅可変フィルタ10と異なり、可変共振器20が入出力線路7に電気的に直列接続されている。入出力線路7と可変共振器20が接続される位置は、可変共振器20上で、可変共振器20の共振周波数における2分の1波長、つまり電気長でπだけ離れた部位とする。
図4Aを用いて本発明である可変共振器20の作用を説明したが、その説明において、x=0とし、インピーダンスZLの部分を入出力線路7にした場合が、図13の帯域幅可変フィルタ10に相当する。先の説明で図4Aにおいてx=0とした場合、可変共振器20の共振周波数においてインピーダンスZLが入力インピーダンスZinと等しくなると説明したが、これはもしインピーダンスZLが短絡ではなく、入出力線路7であったならば、共振周波数において信号が伝搬することを意味し、これは帯域幅可変フィルタとして動作することとなる。
図14に、図13に示す帯域幅可変フィルタ10の周波数特性を回路シミュレーション結果として示す。この例ではθ=30°のスイッチ3をオンとした場合である。可変共振器を並列接続した図5A,5Bに示す帯域幅可変フィルタ10と比較し、信号が極端に減衰する周波数が1つのみであり、半分以下となっている。これは、図13に示す帯域幅可変フィルタ10の構成では、信号が極端に減衰する周波数が、図4Aの無損失伝送線路モデルにおける経路PBによってもたらされる周波数のみとなるためである。なお図13に示す帯域幅可変フィルタ10は、1つの可変共振器を用いた場合を示しているが、図15に示すように複数の可変共振器20を直列接続する構成としてもよいし、図16に示すように複数の可変共振器20のうち一部を入出力線路7に対して並列接続し、残りの可変共振器を入出力線路7に対して直列接続する構成としてもよい。ただし、各図では可変共振器が2つの場合で例示している。
本発明の可変共振器の利用形態として主に帯域幅可変フィルタを説明したが、別の利用形態としてバイアス回路の一例を図17に示す。例示するバイアス回路40では、電界効果トランジスタ43にバイアス電圧を供給するものとなっている。このバイアス回路40は、可変共振器20において、オン状態のスイッチの位置が入出力線路7と可変共振器20との結合部位からnπの位置以外であれば入出力線路7と可変共振器20との結合部位の入力インピーダンスが∞となることを利用することで、可変共振器上の広い領域、つまり結合部位からnπの位置以外にバイアス供給ポイントBを設けることが可能になっている。バイアス供給ポイントBにおいて、キャパシタ41はオン状態のスイッチ(図示せず)と同等の役割を果たしている。このように、本発明の可変共振器を用いることで、バイアス回路に高い加工精度を要求しなくても、バイアス回路による高周波特性への影響を抑えることが可能である。
なお、バイアス回路では、単なる共振器であればよく、必ずしも可変共振器を用いるまでもないが、ここでは可変共振器の転用事例の1つとして例示した。
この例からも明らかなように、本発明の可変共振器は、その用い方によっては単なる共振器と同等であることに留意しなければならない。つまり、特定の1つのスイッチ3だけを用いるとすれば、単なる共振器であるに過ぎない。さらに云えば、もはやスイッチ3による電気的接続/非接続を切り替える構成ではなく、例えば環状線路2の一箇所にキャパシタ41を設けてオン状態のみを維持する構成としてもよいのである。この場合、オン状態を維持するのにキャパシタ41に限定されず適宜の回路素子を用いることができる。
この観点からすれば、帯域幅可変フィルタも同様に単なるフィルタとして構成することも可能である。簡略のため、例えば図5Aを用いて説明すると、左側の共振器の環状線路2上の所定位置(同図では30°の位置)にだけスイッチ3を設けるか、キャパシタ41を設けてオン状態のみを維持するかのいずれかの構成とし、同様に、右側の共振器の環状線路2上の所定位置(同図では20°の位置)にだけスイッチ3を設けるかキャパシタ41を設けてオン状態のみを維持するかのいずれかの構成とすることで、決められた帯域幅として動作する単なるフィルタを構成できる。
これまで示した可変共振器と、帯域幅可変フィルタに用いた可変共振器は全て円形であったが、特に円形に限定する趣旨ではない。図4Aに無損失伝送線路モデルにおける特性インピーダンスZ2、特性インピーダンスZ3についてZ2=Z3の条件を満たすのであれば、図18に示すように楕円形でもよいし、図19に示すように弓形となってもよい。
図20A,20Bに、可変共振器を結合したことによる伝送線路の挿入損失の観点から、可変共振器や可変共振器と伝送線路との結合の変形例を例示する。
図20Aは、円形の環状線路2を有する可変共振器を入出力線路7に結合した場合を示している。簡便のためスイッチ3の表示は省略し、その代わりにビアホールの位置を接地部位として示している。電磁界シミュレーションをした結果、挿入損失は2.92dBとなった。この損失は、結合部位で反射が起きていることに起因している。このことを図25の伝送線路モデルで説明すると、伝送線路と環状線路との間に磁界結合(符号Mで示す)が生じた結果、結合部位でのインピーダンスが低下して、入力信号が反射することで損失が生じているのである。
そこで、このような磁界結合を生じにくくする結合とすれば挿入損失の低減が図れることが推定される。
図20Bに示すように、楕円形の環状線路2を有する可変共振器とすれば、これを入出力線路7に結合した場合、挿入損失が0.81dBに低減した。つまり、環状線路の形状を変更しただけで、挿入損失が低減した。これは、環状線路の形状である楕円の長径を入出力線路7に対して直交するように可変共振器を入出力線路に結合したことで、入出力線路7と環状線路2との磁界結合が低減したことに因る。
なお、挿入損失を同条件で比較するため、図示した接地部位やその他の諸条件は同一とした(以下、同様である)。
また、多層構造が許容されれば、例えば図21Aに示す構成としてもよい。図の紙面を正面から見て手前を上層、その奥に向かって順次に下層とすれば、図21Bに示すように、上層にL字型の入出力伝送線路7aが配され、その下層に可変共振器が配され、入出力線路7aの直角延長部7cの端部と可変共振器の環状線路2が領域Sでオーバーラップする。また、図21Cに示すように、さらに下層にL字型の入出力線路7bが配され、入出力線路7bの直角延長部7dと可変共振器の環状線路2が領域Sでオーバーラップする。Sで示す領域にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させる。
この多層構造のいくつかの形態について、図21Cに示す視線方向の断面図を用いて説明を加える。なお、この多層構造の平面図は、図21Cに示すとおりとする。また、各断面図では、紙面の上側に向かって上層とし、紙面の下側に向かって下層とする。断面構成を簡潔に示すため、スイッチ3等は図示していない。
多層構造の第1例は、図22Aに示すように、誘電体基板5の下面に最下層の接地導体4が形成され、さらに、誘電体基板5内に入出力線路7aとが形成された構成である。可変共振器の環状線路2および入出力線路7bは、誘電体基板5に埋設固定されている。環状線路2は、入出力線路7bよりも上層に配置される。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的接続させている。ビアホール67は、例えば外部からのスイッチ3(図示せず)の作動用に、誘電体基板5に埋設固定された環状線路2のスイッチ3(図示せず)と誘電体基板外部との電気的接続を確保するものであり、誘電体基板5の上面に形成された最上層の導体330と電気的に接続している。このような多層構造は、誘電体基板5を多層構成することにより可能である。なお、図22Aでは、図1Cで示したビアホール6や導体33などを図示しておらず、ビアホール67はビアホール6と同じ目的・機能を有するものではないことに留意しなければならない。
第2例は、図22Bに示すように、誘電体基板5の下面に最下層の接地導体4が形成され、さらに、誘電体基板5の上面に環状線路2が形成された構成とされる。入出力線路7bは、誘電体基板5に埋設固定されている。入出力線路7aは、環状線路2よりも上に配置されており、支持体200によって支持されている。図22Bでは、支持体200は、入出力線路7aと誘電体基板5との間に介在しているが、このような構成に限定する趣旨ではなく、入出力線路7aを支持する目的を達成できればその他の構成とすることもできる。支持体200の材質は、支持体200の配置構成によって適宜に設計でき、図22Bの例では金属でも誘電体でも構わない。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させている。
第3例は、図22Cに示すように、最下層の接地導体4とその上の誘電体基板5とが接触して配置され、さらに、誘電体基板5とその上の入出力線路7bおよび導体331とが接触して配置された構成とされる。環状線路2は、入出力線路7bおよび導体331よりも上に、支持体200によって支持されている。また、入出力線路7aは、環状線路2よりも上に、入出力線路7bとの間に介在した支持体201によって支持されている。図22Cに示す構成では、支持体201の材質は、入出力線路7aと7bとの電気的接続を防ぐため誘電体とする。環状線路2と誘電体基板5との間には、スイッチ3の位置に対応して、導体331および導体柱67が介設されている。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させている。
第4例は、図22Dに示すように、最下層の接地導体4とその上の誘電体基板5とが接触して配置され、さらに、誘電体基板5とその上の入出力線路7bとが接触して配置された構成とされる。誘電体基板5には、その上の環状線路2が接触して配置されており、図22Dに示すように誘電体基板5は段差構造を有しているため、入出力線路7bおよび環状線路2は共に誘電体基板5に接触して配置されていながら、環状線路2は入出力線路7bよりも上に位置する構成となっている。入出力線路7aは、環状線路2よりも上に、入出力線路7bとの間に介在した上記の支持体201によって支持されている。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させている。
第5例は、図22Eに示すように、最下層の接地導体4とその上の誘電体基板5とが接触して配置され、さらに、誘電体基板5とその上の入出力線路7aおよび環状線路2とが接触して配置された構成とされる。入出力線路7bは、誘電体基板5に埋設固定されている。入出力線路7aおよび環状線路2は、例えば図20Aや図20Bなどの構成でもそうであるように、一体形成してもよいし、別々の部材として電気的に接合するとしてもよい。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させている。
第6例は、図22Fに示すように、最下層の接地導体4とその上の誘電体基板5とが接触して配置され、さらに、誘電体基板5とその上の入出力線路7bおよび環状線路2とが接触して配置された構成とされる。入出力線路7bおよび環状線路2は、上述のとおり、一体形成してもよいし、別々の部材として電気的に接合するとしてもよい。入出力線路7aは、環状線路2および入出力線路7bよりも上に、入出力線路7bとの間に介在した上記の支持体201によって支持されている。そして、領域Sで示す部分にビアホール66を設けて、入出力線路7aと、環状線路2と、入出力線路7bとを電気的に接続させている。
なお、図21Aに示す構成の場合、電磁界シミュレーションをした結果、挿入損失が0.12dBに低減した。
また、図23Aに示すように、入出力線路7の一部にV字状の屈曲部Tを設け、この屈曲部Tと可変共振器の環状線路2とを結合する構成も可能である。このように、入出力線路7と環状線路2との距離が大きくなることで挿入損失の低減が図れる。この場合、電磁界シミュレーションをした結果、挿入損失が0.53dBに低減した。
なお、複数の可変共振器を備えた回路構成の便宜などに鑑みて、図23Bに示すような可変共振器と全体がV字状の入出力線路との結合構成も可能である。この場合、電磁界シミュレーションをした結果、挿入損失が0.5dBに低減した。
図23Aおよび図23Bでは、環状線路2と入出力線路7とを一体形成あるいは別々の部材として同じ層で電気的に接合したものとして例示しているが、図21Aの如く多層構造として構成することも可能である。
また、図23Aに示す結合構成の変形例として、図24に示すように、環状線路2の破線で示す円弧部を円弧の両端から接線方向に延長して入出力線路7のV字状屈曲部の頂点をX字を形成するよう形成し、合体する。環状線路2は涙滴型に変形されている。これにより入出力線路7の屈曲部Tを、涙滴型とされた可変共振器の環状線路2の屈曲部Uと結合する構成としてもよい。
図24に示す構成の場合、電磁界シミュレーションをした結果、挿入損失が0.04dBに低減した。
図23Aに示す結合構成の場合と比較して、図24に示す結合構成の場合に挿入損失の顕著な低減が実現している理由としては、入出力線路7と可変共振器の線路2との位置関係が一層離れていることに加え、入出力線路7と環状線路2との結合部位の近傍において、図23Aに示す結合構成の場合では入出力線路7とおよそ平行な線路部分が環状線路2に存在することに対して、図24に示す結合構成の場合では入出力線路7とおよそ平行な線路部分が環状線路2にほとんど存在しないため、磁界結合がより一層生じにくくなったからと考えられる。この考察から、図24では涙滴型の環状線路2としたがこのような形状に限定されず、磁界結合を生じにくくする入出力線路7と環状線路2との結合構成であればよいと云える。
また、図26に示すように、線路幅Wa,Wbが異なる2種類の入出力線路2aおよび2bをループを形成するように結合して可変共振器の環状線路2としてもよい。図26では、2種類の線路幅の場合を示したが、2種類に限定されず、3種類以上の線路幅の場合でも同様に、それらの線路をループを形成するよう結合して可変共振器の環状線路2とすることができる。このような場合においても、図4Aのような無損失伝送線路モデルで示したときに、電気長πを基準とした各経路において特性インピーダンスZ2および特性インピーダンスZ3がZ2=Z3の条件を満たすものとする。なお、各図ではスイッチ3の表示を省略して図示している。
図27に示す可変共振器20は、可変共振器20aの内側に線路幅の異なる可変共振器20bを設け、2つの回路開閉器であるスイッチ3a,3bを介してお互いを電気的に接続している。スイッチ3bは、可変共振器20aの環状線路2aにおいて、スイッチ3aが接続された位置を起点として可変共振器20aの共振周波数における半波長もしくはその整数倍の位置に接続され、かつ、可変共振器20bの環状線路2bにおいて、スイッチ3aが接続された位置を起点として可変共振器20bの共振周波数における半波長もしくはその整数倍の位置に接続されている。可変共振器20は、図11Cに示した特性インピーダンスの異なる2つの可変共振器を用いた帯域幅可変フィルタの変形形態であり、このようにすることで回路の構築に要する面積を小さくすることが出来る。この変形形態においては線路幅の異なる共振器の組合せであるが、同じ線路幅の共振器を組み合わせてもよい。
図28に示す可変共振器では、可変共振器20の環状線路の途中に、長さの異なる2つの線路を選択する2つの回路開閉器である分岐スイッチ39を設けている。各分岐スイッチ39の連動した切り替えによって、長さの異なる線路部分2cおよび線路部分2dのいずれかが選択されることで、共通の線路部分2eと線路部分2cとで閉じた環状線路となる可変共振器と、共通の線路部分2eと線路部分2dとで閉じた環状線路となる可変共振器という、周長の異なる2種類の可変共振器が実現する。このように、分岐スイッチ39によって環状線路を選択することで可変共振器の線路長を変化させ、共振周波数を可変としている。図28に示す可変共振器は、図11Aに示した可変共振器と同様の働きを示すが、占有面積を小さくすることが出来る。
なお、共通の線路部分2eと線路部分2cとで閉じた環状線路および、共通の線路部分2eと線路部分2dとで閉じた環状線路は、共振周波数における1波長もしくはその整数倍である長さで、それぞれ異なる長さである。
ここでは、2つの線路2c,2dで例示したが、異なる周長を有する3つ以上の線路でも同様に構成することができる。
図1A,1Bに示す可変共振器20の2つの実施形態について補足しておく。図1Aの可変共振器20であれば、スイッチ3の他端32が環状線路2の外側に設けられるから、入出力線路7との接触を防ぐ観点から、可変共振器20と入出力線路7との結合部位の付近にスイッチ3を設けることが制限される。一方、図1Bの可変共振器20であれば、スイッチ3の他端32が環状線路2の内側に設けられるから、そのような制限がない。ただし、図1Bの可変共振器20を用いる場合、例えばスイッチ3を操作するための配線を可変共振器20の外側からつなげようとすると、場合によっては環状線路2を跨いで可変共振器20の内側に延長させねばならず、可変共振器20を単層基板上で実現困難となる。しかし、複層基板として構成し、例えば下層には可変共振器20を設け、上層にはスイッチ3を操作するための配線を設けるなどにより、この困難は容易に解消される。この点、図1Aの可変共振器20であれば、このような困難がない。
また、これまでの実施形態はマイクロストリップ線路構造を用いて示されてきたが、このような線路構造に限定する趣旨ではなく、コプレーナ導波路等他の線路構造を用いてもよい。
図29に、コプレーナ導波路による場合を例示する。誘電体基板の同一面上に、接地導体4aと4bとが配置され、これらの間隙に、可変共振器20が結合した入出力線路7が配置される。また、可変共振器20の環状線路2の内側に、環状線路2とは非接触に接地導体4cが配置される。接地導体4bと4cとは、電位を等しくするためエアブリッジ95が架橋されて電気的に接続されている。なお、エアブリッジ95は、コプレーナ導波路による場合において必須の構成要素ではなく、例えば、接地導体4a,4b,4cや入出力線路7などが配置された誘電体基板の面とは反対側の面上に背面接地導体(図示しない)を配置し、接地導体4cと背面接地導体とをビアホールを介して電気的に接続し、接地導体4bと背面接地導体とをビアホールを介して電気的に接続することで、接地導体4bと4cとの電位を等しくする構成であってもよい。
以上の各種実施例においては、ポートP1,P2のインピーダンスと入出力線路7のインピーダンスが等しいものとして説明したが、実際の設計においてはこれらのインピーダンスが一致しない場合もあり、その場合、オンとするスイッチの位置を替えると、共振周波数がずれてしまう場合がある。
図30Aは前述したこの発明による可変共振器20の1つを入出力線路7に接続した具体例である。可変共振器20は50Ωの特性インピーダンスを有する環状線路(長さが5GHzの1波長)2を形成し、環状線路2に複数のスイッチ(図中では31,32の2つの場合を示す)の一端を接続したもので、各スイッチの他端は接地導体に接続されている。図30Aでは電気長が環状線路2の、入出力線路7との接続点から180°の位置から10°と、90°の角度位置にスイッチ31と32を設けた場合を示している。入出力ポートP1,P2のインピーダンスZ0は50Ωである。ここでは、入出力線路7の特性インピーダンスZ1が入出力ポートP1,P2のインピーダンスZ0と異なる場合を、Z1=70Ωの例について説明する。
この発明の特徴は、環状線路2に接続されたスイッチ31,32のうちオンとするスイッチを1つ選択することで、共振周波数はそのままに帯域幅を変化させることが可能なことである。しかしながら、図30AのようにポートインピーダンスZ0と異なる特性インピーダンスZ1を持つ入出力線路7に可変共振器20を接続した場合、図30Bと30Cにスイッチ31をオンとした場合と32をオンとした場合のそれぞれについて入出力ポート間の伝達係数(実践)と反射係数(破線)の周波数特性を示すように、オンにするスイッチに応じて共振周波数が変化してしまうという問題がある。
またこの問題は図31に示す回路においても生ずる。図31は、可変共振器20に信号を入出力する線路7a,7bを、立体構造とした場合の例である。図32は図31の反射係数の周波数特性を示したもので、オンとされたスイッチの角度位置は図31の角度位置θに相当し、このθの値を0°、20°、40°、60°、80°と変化させることでオンにするスイッチを選択することを代替している。ただし、この例では可変共振器の共振周波数を約10GHzとして設計した場合である。図32から明らかなように、角度位置θの値に応じて共振周波数が10GHz付近で変化していることがわかる。これは、図31中の入出力線路7a,7bにおいて、線路が上下で対向している部分や、上下の線路を結ぶビアホール66の部分で生じる電磁界結合の影響により特性インピーダンスZ1がポートのインピーダンスZ0と一致しないためであり、図30Aと類似した現象が起こっているためである。また、入出力線路7の幅が変わっても、特性インピーダンスZ1が変わる。
図33Aは入出力線路7の、可変共振器20との接続部近傍における電磁界結合によるインピーダンスの変化が入出力ポートP1,P2間の特性に与える影響をシミュレートするための回路である。シミュレートのためこのような可変共振器の接続部近傍の線路部分を入出力線路7aと可変共振器20間を接続する線路7cとして示している。2つの線路7c間をクロスして結ぶ線は線路7cの入出力端の電磁界結合を表している。
図33B,33Cは入出力線路7cを近接させた時に入出力線路7の偶モードインピーダンス、奇モードインピーダンスがそれぞれ66Ω、26Ωとなった際のポートP1,P2間の伝達係数(実践)と反射係数(破線)の周波数特性を示すもので、図33Bはθが90°の時の特性、図33Cはθが10°の時の特性である。この場合も図31および32と同様に、θ=90°の場合の共振周波数は4.88GHz、θ=10°の場合の共振周波数は5GHzとなり、オンにするスイッチに応じて共振周波数が変化する。
この問題を解決するため、以下の実施例では、線路及び/又は共振器に、新たに調整回路素子を追加する。図34A及び図36Aは追加する調整回路素子8の機能を説明する回路図である。ここでは調整回路素子8の1例として先端を開放したスタブを適用した場合につき説明する。可変共振器20に接続する入出力線路7の特性インピーダンスは70Ωとし、ポートP1,P2のインピーダンスは50Ωとする。可変共振器20はその経路長を5GHzで1波長とする。入出力線路7の、可変共振器20が接続されている位置に先端開放スタブ8が接続されている。
まずこのスタブ8を付加しない場合、図34Aではスタブの電気長を0°として示しており、図34BのようなS21とS11の周波数特性が得られる。4つの曲線が描かれており、実線はS21(伝達係数),破線はS11(反射係数)で、太線が90°の位置のスイッチをオンにした時の特性、細線が10°の位置のスイッチをオンにした時の特性である。オンにするスイッチの位置が10°のときは5GHz、90°のときは5.1GHzで共振しており、これまでと同様に共振周波数が変化している。
図35AにポートP1の反射係数S11をスミスチャート上に示す。太線は図34Aの回路全体の特性、細線は図34Aの回路から可変共振器20を除いた、入出力線路7のみの特性である。5GHzのとき、図34Aの可変共振器20の部分は共振しているため、入出力線路7と可変共振器20接続点における可変共振器20側を見たインピーダンスは無限大である。したがって5GHzにおいて可変共振器20が無い場合と等価であるため、入出力線路7のみの特性と一致する。S11が最小となるのは太線上の、ポートインピーダンス50Ωの点(図中点O)から最も近い点Sで、その点S上の共振周波数5.18GHzが可変共振器20の共振周波数5GHzと異なっている。
θ=10°の時は、図35Bに示すようにθ=90°の場合に比べ可変共振器20自体のインピーダンスのリアクタンス成分が周波数に関し急激に変化するため、点Sの周波数が5.006GHzと、5GHzからあまりずれない。このようにオン状態のスイッチの角度位置θにより回路全体の共振周波数(S11最小となる周波数)が変化する。なお図34Aのようにポートのインピーダンスと異なる入出力線路7と可変共振器20を接続した場合でも、環状の可変共振器20自体の共振周波数はオン状態のスイッチ位置θによらず一定であるため、5GHzにおけるインピーダンスはオン状態のスイッチの位置θが変わっても動かない。仮に入出力線路7の特性インピーダンスZ1がポートインピーダンスZ0と同じ50Ωの場合、細線は、点Oとなり、このような変化はおきない。
次にスタブ8を追加した場合につき説明する。図36Aは特性インピーダンス50Ω、電気長13°の先端開放スタブ8を可変共振器20と並列に接続したものである。図36Bに図34Bと対応する特性を示す。図36Bから分かるように、スタブ8を加えることによりオン状態のスイッチの角度位置によらず回路全体の共振周波数が5GHzで一定となることが分かる。これについて図37A,37Bを用いて説明する。ここでも破線は、図34Aから可変共振器20を除いた、入出力線路7のみの特性である。90°の角度位置のスイッチがオン状態である図37Aにおいて、点Pは図35Aにおける5GHzの反射係数である。これをスタブ8により点Sへと移動させる。これにより5GHzにおけるS11が極小となる。前述したように、5GHzにおける可変共振器20のインピーダンスは開放で、これがオン状態のスイッチの位置によらず一定なため、10°のスイッチがオン状態である図37Bでも5GHzでの反射係数はS点から動かない。したがって全体の共振周波数は、スタブ8を適切に設けることでオン状態のスイッチの位置によらず不変とすることが可能であることが分かる。
図38は前述のスタブの効果を電磁界シミュレーションで確認するためのモデルで、図31のモデルにスタブ8が追加されている。その反射係数の周波数特性を図39に示す。図32の特性に比べ、S11が極小となる周波数が収束していることが分かり、これからこのスタブの効果が確認される。なお、ここでは回路調整素子8として先端開放スタブを用いたが、リアクタンスを調整する素子であれば構わない。また、回路調整素子8を接続する場所についても、共振器と入出力線路との接続点に限ったものではない。
図40のA〜Dに回路調整素子8の接続場所の例を示す。図40のAは、回路調整素子8を入出力線路7と可変共振器20の接続点で可変共振器20と並列に接続した例を示す。Bは回路調整素子8を入出力線路7と可変共振器20の接続点とポートP1との間において入出力線路7に可変共振器20と並列に接続した例を示す。Cは回路調整素子8を入出力線路7と直列に挿入した例を示す。Dは回路調整素子8を可変共振器20のNπの角度位置で環状線路2とグランド間に接続した例を示す。ここではNは1以上の整数であるが、後述の図41BはN=0の場合である。
図41は回路調整素子8の更に他の接続例を示し、Aは回路調整素子8を介して入出力線路7と可変共振器20を接続する例を示し、Bは回路調整素子8を環状線路2の内側に配置し、環状線路2の、入出力線路7との接続位置とグランド間に接続した例を示す。
図42は回路調整素子8のさまざまな例を示す。Aは個別素子としてのキャパシタである。Bはキャパシタとして作用するよう同一平面内でギャップを形成した線路である。Cはキャパシタとして作用するよう高さの異なる線路を誘電体を挟んで対向させた立体線路構造である。Dは個別素子としてのインダクタであり、Eはインダクタとして作用する平面内の屈曲線路であり、Fは線路に形成された渦巻状コイルである。Gは直列に挿入される線路であり、Hは先端開放スタブとして作用する線路である。
また回路調整素子8を付加しなくてもこの効果が得られる場合がある。それは、ポートインピーダンスZ0と異なる特性インピーダンスZ1を持つ入出力線路7の位相が図43のように180°、若しくはその整数倍である場合である。この場合、180°線路により必ずポートP1から見た入力インピーダンスがポートP2のインピーダンスとなるためである。
図44から図47は回路調整素子が設けられた帯域可変フィルタの構成例で、その特性のシミュレーション結果を合わせて示す。いずれの場合も、ポートP1,P2のインピーダンスは50Ωとし、入出力線路7のインピーダンスを60オームとし、2つのスイッチ31,32が10°の位置と90°の位置に設けられている。スイッチ31をオンとしたときの特性をBに、スイッチ32をオンとしたときの特性をCにそれぞれ示す。これらの特性のうち、実線は伝達係数S21を、破線は反射係数S11を示し、細線で示したものは、回路調整素子8が設けられない場合の特性である。
図44Aは入出力線路7と可変共振器の環状線路2との接続点から共振周波数で10/360波長の位置で入出力線路7に先端開放スタブ8を形成した例を示す。スイッチ31をオンとした状態からスイッチ32をオンとした状態に切り替えても、図44のBとCから分かるように共振周波数は5GHzのままである。しかしながら、スタブ8を設けない場合は、図44のCに細線で示すように、共振周波数が5.1GHzに変化してしまう。
図45Aは回路調整素子8として共振周波数で7/360波長の長さの線路を入出力線路7と環状線路2との間に挿入した例を示す。この例においても、図45のBとCに示すように、スイッチ31と32の選択を切り替えてオンとしても共振周波数は5GHzと変化しない。
図46Aは回路調整素子8として特性インピーダンスが57Ωの線路を入出力線路7の入力端に直列に接続した例であり、この場合も図45のBとCから明らかなように、スイッチ31と32を切り替えても共振周波数は変化しない。
図47Aは図44Aにおける先端開放スタプ8の代わりに0.08pFのキャパシタを回路調整素子8として入出力線と7とグランド間に接続した例を示す。この場合も図47のBとCに示すようにスイッチ31と32の選択切り替えによる共振周波数の変化はない。
このように、いずれの例においても、回路調整素子8の働きにより、オン状態のスイッチの位置によらず共振周波数が不変となっている。
前述の各実施例における可変共振器20では、環状導体線路2上の異なる位置でスイッチ3を介して直接接地するか、あるいは受動素子を介して接地することができるように構成された場合を示したが、スイッチ3を介して所望の特性の調整伝送線路を接続可能とする構成としてもよい。その構成例を図48Aに示す。
図48Aは、図13の帯域幅可変フィルタ10の変形例であり、図48Aと同様に入出力線路7に直列に可変共振器20が挿入されている。しかし、環状導体線路2を所望の位置でスイッチ3により接地可能にする代わりに、スイッチ3により所望の特性の調整伝送線路21に接続可能とされている。この例では、各調整伝送線路21の電気長は使用周波数帯域の中心周波数において75°とされ、先端は開放とされている。
図48Bは、図48Aにおいてθ=30°のスイッチ3をオンとした場合の伝達係数の周波数特性を示す。この例では図13の帯域幅可変フィルタの特性である図14と異なり、共振周波数5GHzを中心にほぼ対称な2つの零点が現れている。これらの零点は共振周波数を挟んで現れるので、共振周波数の高域側と低域側の減衰特性をそれぞれ制御することができる。図48Aでは各調整伝送線路21の電気長を同じ75°とした場合を示したが、必要とされる特性に応じてそれぞれの位置のスイッチ3に対し所望の電気長の調整伝送線路21を接続してもよい。これは以下の実施例においても同様である。
図49Aは、図48Aにおいて調整伝送線路21の電気長を50°と短くし、その先端をキャパシタ22を介して接地した例を示す。この構成による伝達係数の周波数特性を図49Bに示す。この場合もθ=30°のスイッチ3をオンとした場合であり、各スイッチ3に接続された調整伝送線路21とその先端に接続されたキャパシタ22は1つのスイッチ3についてのみ図示し、その他は調整伝送線路21の中間部から先端とそれに接続されるキャパシタ22の図示を省略している。図49Bと図48Bを比較すれば、5GHzを中心とする通過帯域幅は同じであることが分かる。つまり、同じ通過帯域幅を実現するが、調整伝送線路21の先端をキャパシタ22で接地することにより等価的に電気長を長くでき、その調整分伝送線路21の電気長を短くできることを意味している。
図50の実施例は、図49Aにおける各キャパシタ22の代わりに可変容量素子22’を使用した例を示す。ただし、調整伝送線路21の電気長は50°と限るものでない。調整伝送線路21と可変容量素子22’の構成により、等価的な電気長の調整可能にしている。つまり、図49Bにおける零点の位置を調整可能である。図49Aにおけるそれぞれのスイッチ3に接続された各調整伝送線路21の電気長及びキャパシタ22の容量は要求される特性に応じて所望の値に決めてもよい。
図51の実施例は、図48Aの実施例における各調整伝送線路21に対応する所望の電気長の調整伝送線路211の先端にさらにスイッチ23を介して所望の電気長の調整伝送線路212が接続されている。スイッチ23をオン・オフすることにより、スイッチ3に接続された調整伝送線路の電気長を変えることができるので、周波数特性の零点の位置を調整することができる。
図52の実施例は、図48Aにおける各スイッチ3に接続された調整伝送線路21の長さ方向に先端を含む異なる位置で2つ以上、ここでは3つのスイッチ231,232,233によりそれぞれ接地可能とされている。この構成によっても周波数特性の零点の位置を調整可能である。ただし、調整伝送線路21の電気長は75°とは限らない。スイッチ231,232,233の所望の1つをオンとすることにより調整伝送線路21を所望の電気長で接地する場合と、いずれのスイッチもオフとして接地せずに開放端とする場合を選択できる。
図49Aでは調整伝送線路21の先端をキャパシタ22を介して接地可能とすることにより、調整伝送線路21の電気長を短く設計できることを説明したが、図53に示すように、調整伝送線路21を接続せず、一端が環状導体線路2に接続された各スイッチ3の他端を直接キャパシタ22を介して接地可能にしても良い。この場合も図49Bと同様に共振周波数の両側近傍に2つの零点を有する周波数特性を得ることができる。
上記図48A,49A,50,51,52,53において、可変共振器20は帯域幅可変フィルタ10を構成するために使用された例を示したが、これら可変共振器20を前述した図5A,5B,7B,7D,8,9,10,11A,11B,11C,15,16,18,19,20A,20B,21A、23A,23B,24,26〜29、40A〜40D,41A,41B,44A,45A,46A,47A中のどの可変共振器に使用してもよい。
図49〜53では図13の実施例と同様に入出力線路に直列に可変共振器を挿入した場合の帯域幅可変フィルタ例を示したが、入出力線路に並列に可変共振器を接続した場合の帯域幅可変フィルタにおいても、可変共振器を構成する環状導体線路の各スイッチ3に調整伝送線路を接続してもよい。
図54は図1A又は1Bの可変共振器20を入出力線路7に並列に接続した実施例において、環状導体線路2に一端が接続された各スイッチ3の他端を接地する代わりに、先端開放の調整伝送線路21を接続した例を示す。ここでは、各スイッチ3の環状導体線路2との接続点から調整伝送線路21の開放先端までの電気長が使用周波数で90°(λ/4)となるように設計されている。図では1つのスイッチ3に対してのみ調整伝送線路21を示し、他のスイッチに対する図示は省略している。これにより、スイッチ3がオンのときにスイッチ3の環状導体線路2との接続点が等価的に接地されるので、スイッチ3の構造(例えばスイッチの信号伝達方向の長さ)に由来する位相変化の影響を避けることができる。これに対し、図1A,1Bでは、オンとされたスイッチ3の環状導体線路2との接続点から接地点までの構造に由来する信号の位相変化が生じるので、そのような位相変化の影響を避けるには図54の構成が有効である。
図55は図54の変形例であり、各スイッチ3に先端が接地短絡された調整伝送線路21が接続されている。ここでは、各スイッチ3の環状導体線路との接続点から調整伝送線路21の先端短絡点までの電気長が使用周波数で180°(λ/2)となるように設計されている。この場合も、図54の場合と同様に、オンとされたスイッチ3の環状導体線路2との接続点は等価的に接地されるので、スイッチ3の構造に由来する信号の位相変化を避けることができる。
図54,55の先端開放調整伝送線路21又は先端短絡調整伝送線路21は、図1A,1Bのみならず、図5A,5B,8〜11、13,15〜21、23,24,26〜31、38,40,41,43から47の各実施例にも適用できる。