JP2007132523A - 一方向クラッチ、一方向クラッチの組立方法ならびに一方向クラッチ付きの転がり軸受 - Google Patents

一方向クラッチ、一方向クラッチの組立方法ならびに一方向クラッチ付きの転がり軸受 Download PDF

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Abstract

【課題】組み立て作業を無駄なく簡単にし、生産性の向上を図ること。
【解決手段】複数のスプラグ6と、円筒形の保持器5と、複数のばね片73,83とを備える一方向クラッチであって、保持器5は、円周数箇所に径方向内外に貫通するように設けられかつスプラグ6が傾動可能に収納されるスプラグポケット92,102を備え、この各スプラグポケット92,102の周方向一端側が軸方向一側に開放されており、ばね片73,83は、保持器5の各スプラグポケット92,102の周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケット92,102に収納される各スプラグ6の一側面との間の隙間に、各スプラグ6を起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装される。ばね片73,83を保持器5に対して軸方向から挿入できるようになっている。
【選択図】図1

Description

本発明は、スプラグ式の一方向クラッチ、一方向クラッチの組立方法ならびに一方向クラッチ付きの転がり軸受に関する。
従来のスプラグ式の一方向クラッチの一例として、例えば特開昭63−106432号公報(特許文献1)に示すようなものが知られている。
図11および図12は前記公報の一方向クラッチを示しており、図11は、一方向クラッチの一部破断の側面図、図12は、保持器周辺の平面展開図である。
前記公報の一方向クラッチは、内・外輪51,52、玉53および保持器54からなる深溝型玉軸受50に一体的に組み込まれており、深溝型玉軸受50の保持器54に取り付けられるスプラグ55とコイルバネ56とからなる。
保持器54は、玉53を軸方向両側から挟むようにして結合される二つの環体57,58からなる。この二つの環体57,58の円周数箇所には、径方向内外に貫通する貫通孔からなるスプラグポケット59,60が設けられており、このスプラグポケット59,60に対して各々三つのスプラグ55が周方向隣り合わせに収納されている。また、各環体57,58において各スプラグポケット59,60の周方向一端側には、径方向外向きに開放するとともに、スプラグポケット59,60に向けて開放する凹状のコイルバネポケット61,62が設けられており、このコイルバネポケット61,62に各スプラグ55を起立姿勢に押圧するコイルバネ56が圧縮状態で収納されている。
このような深溝型玉軸受50の組み立てについては、まず、保持器54を構成する各環体57,58に、スプラグ55およびコイルバネ56を挿入して、コイルバネ56の押圧力で各スプラグ55をスプラグポケット59,60内に拘束して抜け止めさせるようにする。この二つの環体57,58を、内・外輪51,52間に振り分け配置させてある玉53を軸方向両側から挟むように突き合わせて、二つの環体57,58を結合させるようにしている。
なお、前述の組み立ての際、まず、二つの環体57,58に対して、スプラグ55およびコイルバネ56を保持させるようにしている理由は、構造上、コイルバネ56を外径側からコイルバネポケット61,62に入れなければならないが、内・外輪51,52間に二つの環体57,58を入れてからでは、環体57,58のコイルバネポケット61,62に対してコイルバネ56を入れることができないからである。
特開昭63−106432号公報
このような理由から、組立の第1段階として、二つの環体57,58に対して、スプラグ55およびコイルバネ56を保持させるようにしているのだが、この場合、コイルバネ56の押圧力でもってスプラグ55が起立姿勢とされるため、スプラグ55の外径部分および内径部分が環体57,58のスプラグポケット59,60の外径側開口および内径側開口から突出する状態となる。このため、組立の第2段階として、各環体57,58を内・外輪51,52間に入れて結合するときには、各環体57,58を内・外輪51,52間に無理なく簡単に入れることができない。それゆえ、従来では、内・外輪51,52のいずれか一方を回転させることにより、環体57,58に保持されるスプラグ55を傾倒させるようにしながら、各環体57,58を内・外輪51,52間に入れるようにする作業が必要となる。
上記公報の一方向クラッチでは、上述しているように、二つの環体57,58を内・外輪51,52間に入れて結合する作業がきわめて煩雑で、かつ、難しいため、自動化が不可能であるなど、生産性が悪いことが指摘される。それに伴い、当然に、高コスト化を余儀なくされることも指摘される。
したがって、本発明は、組み立て作業を無駄なく簡単にし、生産性の向上を図ることを目的としている。
本発明の第1の一方向クラッチは、複数のスプラグと、円筒形の保持器と、複数のばね片とを備えるもので、前記保持器は、円周数箇所に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットを備え、この各スプラグポケットの周方向一端側が軸方向一側に開放されており、前記ばね片は、前記保持器の各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである。
上記第1の一方向クラッチの組立方法は、前記保持器の各スプラグポケットにスプラグを収納する工程と、前記ばね片を保持器の開放部分から挿入して、このばね片を、前記保持器の各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装する工程とを含む。
本発明の第2の一方向クラッチは、複数のスプラグと、円筒形の保持器と、環状側板とを備えるもので、前記保持器は、円周数箇所に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットと、各スプラグポケットの間の各領域に設けられかつ軸方向外側およびスプラグポケットの周方向一端側へ向けてそれぞれ開放するとともに前記環状側板の下記ばね片が干渉しない大きさに設定される作業用凹部とを備え、前記環状側板は、前記保持器の軸方向端面に取り付けられるものでかつ一側の円周数箇所に周方向で伸縮するばね片を備え、このばね片は、前記環状側板が前記保持器に取り付けられた状態において各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである。
上記第2の一方向クラッチの組立方法は、前記保持器の各スプラグポケットにスプラグを収納する工程と、前記環状側板を前記保持器の軸方向一側からあてがって環状側板のばね片を保持器の作業用凹部に仮に入れてから、該環状側板を周方向一方に回すことにより各ばね片をスプラグポケット内のスプラグの一側面に当接させるとともに、それからさらに回してばね片を圧縮させておき、環状側板を保持器側へ押し付けることにより圧縮状態のばね片を各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に挿入する工程と、前記環状側板を保持器に固定状態に取り付ける工程とを含む。
本発明の一方向クラッチ付きの転がり軸受は、内・外輪と、転動体と、円筒形の保持器と、複数のスプラグと、環状側板とを備え、前記保持器は、円周数箇所に設けられる転動体ポケットと、各転動体ポケットの間の領域における軸方向両端側に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットと、転動体ポケットの軸方向両側に設けられかつ軸方向外側およびスプラグポケットの周方向一端側へ向けてそれぞれ開放するとともに前記環状側板の下記ばね片が干渉しない大きさに設定される作業用凹部とを備え、前記環状側板は、前記保持器の軸方向端面に取り付けられるものでかつ一側の円周数箇所に周方向で伸縮するばね片を備え、このばね片は、前記環状側板が前記保持器に取り付けられた状態において各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである。
そして、上記第1の一方向クラッチの場合、その組立方法で説明しているように、ばね片を保持器に対して軸方向から挿入できるようになっているから、この一方向クラッチの保持器を転がり軸受の保持器に兼用する場合の組み立て時に、内・外輪間に保持器を入れておいてから、この保持器に対してばね片を組み込めるようになる。そのため、作業が簡単に行えるようになる。
上記第2の一方向クラッチの場合、複数のばね片を環状側板に一体化しているから、複数のばね片を個別に組み込む場合に比べて作業効率が改善される。また、その組立方法で説明しているように、環状側板を保持器の側方からあてがって周方向に回しつつ所定位置で保持器側へ押し込むという操作でもって環状側板のばね片を保持器に組み込めるようにしているから、組み立て作業が従来例に比べてはるかに単純化され、簡単に行えるようになる。
本発明では、保持器、スプラグ、ばね要素などの組み立て作業を従来例に比べてはるかに単純化して簡単に行えるようにしているから、組み立てを自動化できるようになるなど、生産性の向上および価格低減に貢献できる。
以下、本発明の詳細を図1ないし図10に示す実施例に基づいて説明する。ここでは、スプラグ式の一方向クラッチを内蔵した深溝型玉軸受を例に挙げる。
図1ないし図5は本発明の実施例1にかかり、図1は、スプラグ式の一方向クラッチ付きの深溝型玉軸受の側面図、図2は、図1の(2)−(2)線断面の矢視図、図3は、保持器および環状側板の分解斜視図、図4は、保持器の斜視図、図5は、保持器に対する環状側板の取付動作説明用の部分拡大図である。
図中、1は深溝型玉軸受の全体を示している。この深溝型玉軸受1は、内輪2と、外輪3と、複数の玉4と、保持器5とを備えており、保持器5の軸方向両側部分には、それぞれ一方向クラッチを構成する複数のスプラグ6、二つの環状側板7,8が組み込まれている。
第1、第2環状側板7,8は、互いに同一形状に形成されたもので、その一側面の外周側の円周数箇所には、平面視ほぼT字形の折り曲げ片71,81が、また、内周側において前記各折り曲げ片71,81と同一位相位置には、保持器5への位置決め固定用のV字形切欠き72,82が、それぞれ設けられている。折り曲げ片71,81において周方向に沿う帯状部分の両端には、ほぼV字形で周方向に伸縮する第1、第2ばね片73,74,84,83が設けられている。なお、後で説明するが、第1ばね片73,84は、スプラグ6に対して押圧力を付加するために利用されるものとされ、第2ばね片74,83は、組み立て時に環体9,10に対して第1、第2環状側板7,8を位置決めするために利用されるものとされる。ここでは、第1、第2環状側板7,8を単一種類として互いに共用できるように、折り曲げ片71,81に二つのばね片73,74,84,83を設けているが、第1、第2環状側板7,8を共用しない場合だと、各環状側板7,8の折り曲げ片71,81に一つ例えば第1ばね片73,84のみを設けることで事足りる。
保持器5は、軸方向隣り合わせに離脱可能に結合される二つ一対の環体9,10からなる。この環体9,10は、合成樹脂で形成されている。
第1環体9の軸方向一側の円周数箇所には、玉4を保持するためのボールポケット用凹部91が、また、第1環体9の軸方向他側において前記ボールポケット用凹部91の間の各領域には、スプラグ6を収納するためのスプラグポケット92が、それぞれ設けられている。さらに、第1環体9の軸方向一側において各スプラグポケット92と同一位相位置には、軸方向に突出する二つ割り係止片93が、また、第1環体9の軸方向他側において各ボールポケット用凹部91と同一位相位置には、第1環状側板7に備える複数の折り曲げ片71が干渉しない大きさに設定される作業用凹部94が、それぞれ設けられている。
第2環体10の軸方向一側の円周数箇所には、玉4を保持するためのボールポケット用凹部101が、また、第2環体10の軸方向他側において前記ボールポケット用凹部101の間の各領域には、スプラグ6を収納するためのスプラグポケット102が、それぞれ設けられている。さらに、第2環体10の軸方向一側において各スプラグポケット102と同一位相位置には、軸方向に突出して第1環体9の二つ割り係止片93が内嵌係合されるコ字形係合片103が、また、第2環体10の軸方向他側において各ボールポケット用凹部101と同一位相位置には、第2環状側板8に備える複数の折り曲げ片81が干渉しない大きさに設定される作業用凹部104が、それぞれ設けられている。
これら両環体9,10の各スプラグポケット92,102は、径方向内外および軸方向他側へ向けて開放する凹状切欠きからなる。また、両環体9,10において各作業用凹部94,104それぞれの奥壁には、第1、第2環状側板7,8に備える複数の折り曲げ片71,81の第2ばね片74,83が嵌入されるV字形溝95,105が設けられており、さらに、各作業用凹部94,104それぞれの近傍には、第1、第2環状側板7,8を位置決め固定するための三角形凸部96,106が設けられている。
なお、上記第1,第2の環体9,10は、二つ割り係止片93とコ字形係合片103についてだけ相違しているだけで、その他の部分は基本的に互いに同一位置、同一形状に形成されている。この二つ割り係止片93とコ字形係合片103とを係合させた状態において、その内径側には、空間が形成されるようになっている。この空間は、グリースなどの潤滑剤を貯溜するために利用される。
スプラグ6は、長方体の上面、下面が湾曲したカム面とされているとともに、前面に部分円弧状の凸状カム部が設けられており、保持器5のスプラグポケット92,102に対してそれぞれ一つずつ傾動可能に収納されている。
ところで、第1、第2環状側板7,8を、保持器5を構成する各環体9,10に取り付けた状態では、第1、第2環状側板7,8の第1ばね片73,84は、各スプラグポケット92,102の周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケット92,102に収納される各スプラグ6の一側面との間の隙間に、各スプラグ6を起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されている。
次に、上記深溝型玉軸受1における一方向クラッチの動作を説明する。例えば内輪2を主動側とし、外輪3を従動側とする場合を例に挙げる。
図1の矢印A方向つまり折り曲げ片71,81の各第1ばね片73,84による押圧方向と逆向きに内輪2を回転させると、スプラグ6が起立姿勢にさせられるようになり、それに伴い、第1ばね片73,84の押圧力が加担されるので、スプラグ1がロック状態となる。このため、内輪2と外輪3とが一体化されるので、内輪2と外輪3とが同期して回転するようになる。
一方、図1の矢印B方向つまり折り曲げ片71,81の各第1ばね片73,84による押圧方向と同じ向きに内輪2を回転させると、スプラグ6が第1ばね片73,84の押圧力に抗して傾倒する姿勢にさせられるようになるので、スプラグ1がフリー状態となる。このため、内輪2から外輪3へ回転力が伝達されないので、内輪2が空回りするだけで外輪3は回転しない。
次に、上記深溝型玉軸受1の組み立て手順および動作を説明する。
(1) 内・外輪2,3の間に所要個数の玉4を介装する。
(2) これら玉4を円周ほぼ等配に振り分けておいて、玉4を挟むように軸方向両方から、分離してある第1、第2環体9,10を個別にあてがい、第1環体9の二つ割り係止片93を第2環体10のコ字形係合片103に係合させる。これで、第1、第2環体9,10が一体化されて保持器5を構成する。
(3) 第1環体9のスプラグポケット92に対してスプラグ6を一つずつ軸方向から挿入しておいて、第1環体9に第1環状側板7を位置決めして取り付け、固定する。
(4) 第2環体10のスプラグポケット102に対してスプラグ6を一つずつ軸方向から挿入しておいて、第2環体10に第2環状側板8を位置決めして取り付け、固定すれば、組み立て完了となる。
なお、前述の第1、第2環体9,10に対する第1、第2環状側板7,8の取り付け方法について詳述する。但し、第1環体9に対する第1環状側板7の取り付け方法と、第2環体10に対する第2環状側板8の取り付け方法とが、同様であるので、第1環体9についての例のみを挙げる。
まず、第1環状側板7を第1環体9の軸方向一側からあてがって、図5に示すように、第1環体9の外側に露出する作業用凹部94それぞれに第1環状側板7の各折り曲げ片71の全体を仮に入れる。この作業用凹部94は、第1環状側板7の折り曲げ片71が干渉することなく自然状態で嵌まるような大きさに設定しているので、この状態では、第1環状側板7は、まだ位置決めもされていないし、固定もされていない。この状態から、第1環状側板7のみを図5の矢印X方向に回すことにより、折り曲げ片71の第1ばね片73をスプラグ6の背面に当接させるとともに、それからさらに回して第1ばね片73を圧縮させる。このとき、第1環状側板7のV字形切欠き72が第1環体9の三角形凸部95の存在する位置へ到達すると、回すのを止めて、第1環状側板7を第1環体9側へ押すことにより、該V字形切欠き72を三角形凸部96に嵌める。これにより、折り曲げ片71の第2ばね片74が第1環体9の作業用凹部94における奥壁のV字形溝95に嵌入する。この後、合成樹脂製である第1環体9の三角形凸部96を熱変形させるなどして潰す。これにより、図2の拡大部に示すように、三角形凸部96の熱変形部分97が環状側板7のV字形切欠き72の外側に盛り上がるので、第1環体9に環状側板7が固定されることになる。ところで、前述の三角形凸部96を潰すとき、すべての熱変形部分97の内径が図2に示すように内輪2の外周面に対して非接触となるように注意して、深溝型玉軸受1の回転トルクが増大するのを回避するようにしている。
以上説明したように、一方向クラッチの構成要素である第1ばね片73,84を環状側板7,8に一体化しているから、複数のコイルバネを用いている従来例に比べて作業効率が改善される。また、環状側板7,8を保持器5の側方からあてがって周方向に回しつつ所定位置で保持器5側へ押し込むという操作でもって環状側板7,8の第1ばね片73,84を保持器5の所定位置に組み込めるようにしているから、組み立て作業が従来例に比べてはるかに単純化され、簡単に行えるようになっている。したがって、自動化が容易となり、生産性の向上に貢献する。しかも、保持器5を構成する二つの環体9,10の結合部分において内径側に潤滑剤の貯溜空間を設けるようにしているから、深溝型玉軸受1の潤滑作用、一方向クラッチのフリー動作時の潤滑作用を長期にわたって良好とすることができる。
図6ないし図10は本発明の実施例2にかかり、図6は、図1に対応する図、図7は、図2に対応する図、図8は、図3に対応する図、図9は、環状側板の一部を拡大した斜視図、図10は、図5に対応する図である。
実施例2において上記実施例1との相違は、保持器5に対して第1、第2環状側板7,8をワンタッチで簡単に取り付けできるようにしていることである。
つまり、両環状側板7,8は、上記実施例1でのV字形切欠き72,82の代わりに、舌片72a,82aが設けられている。この舌片72a,82aは、両環状側板7,8の本体部分の内周側から90度屈曲されていて、先端側の周方向両側に切り目を入れて屈曲されることにより抜け止め片72b,82bが設けられている。
保持器5を構成する第1、第2環体9,10は、上記実施例1での作業用凹部94,104の代わりに、隣り合うスプラグポケット92,102間の領域に径方向で所要間隔離れた一対のガイドフランジ94a,94b,104a,104bが周方向に沿って設けられており、また、上記実施例1での三角形凸部96,106の代わりに、軸方向に貫通する係合孔96a,106aが設けられている。係合孔96a,106aは、一対のガイドフランジ94a,94b,104a,104bの間に配置されている。
この実施例2での環状側板7,8の取り付け手順を説明する。ここでも上記実施例1と同様、第1環状側板7の取り付け手順のみを例に挙げる。
第1環状側板7を第1環体9の側方にあてがった状態で周方向一方へ所要角度回すという動作に変わりないが、その動作を行うときの作業内容が異なる。
つまり、第1環体9の一対のガイドフランジ94a,94bの間で係合孔96aのない領域に、第1環状側板7の舌片72aの先端側をはめ込む。この状態では、舌片72aの抜け止め片72bがガイドフランジ94a,94b間に若干弾性変形した状態で入り込むため、この抜け止め片72bによって第1環状側板7が第1環体9に対して仮止めされた状態で保持されることになる。このとき、第1環状側板7のばね片73,74は、図10の仮想線で示すようにスプラグ6に対して非接触となっていて、自然状態のままになる。
この状態から、第1環状側板7を図10の反時計方向に所要角度だけ回す。これにより、第1環状側板7の舌片72aが一対のガイドフランジ94a,94bの間で係合孔96aの存在する領域に到達すると、第1環状側板7を第1環体9へ向けて押圧し、係合孔96aに舌片72aをはめ込ませる。このはめ込みにより、舌片72aの抜け止め片72bが復元して係合孔96aに対する引っ掛かりとなるので、舌片72aが簡単に抜け出なくなり、取り付けが完了する。このとき、第1環状側板7の第1ばね片73が、図6の仮想線で示すようにスプラグ6を押圧した状態で圧縮させられる。
このように、この実施例2では、環状側板7,8を動かすだけの簡単な操作で取り付けできるようにして、先の実施例で行っていた熱変形処理を省くようにしているため、組立を効率よく行うことができて、生産性アップに貢献できる。
この他、実施例2では、第2環体10のコ字形係合片103に切欠き103aを設けることにより、第1環体9の二つ割り係止片93を係合するときに撓みやすくなるようにしている。
なお、本発明は上記実施例1,2のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
(1) 実施例1,2では、転がり軸受に一方向クラッチを組み込んだ例を挙げているが、保持器とスプラグとばね要素とで一方向クラッチを構成することができる。この場合、一方向クラッチは一列または二列のいずれでもよい。
(2) 実施例1,2において、第1、第2環状側板7,8の折り曲げ片71,81は、外周側に設けられているが、内周側に設けるようにしてもよい。
(3) 実施例2において、第1、第2環状側板7,8の舌片72a,82aの形状や、保持器5を構成する第1、第2環体9,10のガイドフランジ94a,94b,104a,104bおよび係合孔96a,106aの形状については、例示しないが他の形態とすることができる。
本発明の実施例1の一方向クラッチ付きの深溝型玉軸受の側面図 図1の(2)−(2)線断面の矢視図 実施例1の保持器および環状側板の分解斜視図 実施例1の保持器の斜視図 実施例1の保持器に対する環状側板の取付動作説明用の部分拡大図 本発明の実施例2で、図1に対応する図 本発明の実施例2で、図2に対応する図 本発明の実施例2で、図3に対応する図 本発明の実施例2で、環状側板の一部を拡大した斜視図 本発明の実施例2で、図5に対応する図 従来の一方向クラッチの一部破断の側面図 従来の一方向クラッチの保持器周辺の平面展開図
符号の説明
1 深溝型玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 スプラグ
7 第1環状側板
8 第2環状側板
71,81 折り曲げ片
73,83 第1ばね片
72,82 V字形切欠き
9 第1環体
10 第2環体
91,101 ボールポケット用凹部
92,102 スプラグポケット
93 二つ割り係止片
103 コ字形係合片
94,104 作業用凹部
95,105 V字形溝
96,106 三角形凸部

Claims (5)

  1. 複数のスプラグと、円筒形の保持器と、複数のばね片とを備える一方向クラッチであって、
    前記保持器は、円周数箇所に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットを備え、この各スプラグポケットの周方向一端側が軸方向一側に開放されており、
    前記ばね片は、前記保持器の各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである、ことを特徴とする一方向クラッチ。
  2. 請求項1に記載の一方向クラッチの組立方法であって、
    前記保持器の各スプラグポケットにスプラグを収納する工程と、
    前記ばね片を保持器の開放部分から挿入して、このばね片を、前記保持器の各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装する工程とを含む、ことを特徴とする一方向クラッチの組立方法。
  3. 複数のスプラグと、円筒形の保持器と、環状側板とを備える一方向クラッチであって、
    前記保持器は、円周数箇所に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットと、各スプラグポケットの間の各領域に設けられかつ軸方向外側およびスプラグポケットの周方向一端側へ向けてそれぞれ開放するとともに前記環状側板の下記ばね片が干渉しない大きさに設定される作業用凹部とを備え、
    前記環状側板は、前記保持器の軸方向端面に取り付けられるものでかつ一側の円周数箇所に周方向で伸縮するばね片を備え、このばね片は、前記環状側板が前記保持器に取り付けられた状態において各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである、ことを特徴とする一方向クラッチ。
  4. 請求項3に記載の一方向クラッチの組立方法であって、
    前記保持器の各スプラグポケットにスプラグを収納する工程と、
    前記環状側板を前記保持器の軸方向一側からあてがって環状側板のばね片を保持器の作業用凹部に仮に入れてから、該環状側板を周方向一方に回すことにより各ばね片をスプラグポケット内のスプラグの一側面に当接させるとともに、それからさらに回してばね片を圧縮させておき、環状側板を保持器側へ押し付けることにより圧縮状態のばね片を各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に挿入する工程と、
    前記環状側板を保持器に固定状態に取り付ける工程とを含む、ことを特徴とする一方向クラッチの組立方法。
  5. 内・外輪と、転動体と、円筒形の保持器と、複数のスプラグと、環状側板とを備える一方向クラッチ付きの転がり軸受であって、
    前記保持器は、円周数箇所に設けられる転動体ポケットと、各転動体ポケットの間の領域における軸方向両端側に径方向内外に貫通するように設けられかつ前記スプラグが傾動可能に収納されるスプラグポケットと、転動体ポケットの軸方向両側に設けられかつ軸方向外側およびスプラグポケットの周方向一端側へ向けてそれぞれ開放するとともに前記環状側板の下記ばね片が干渉しない大きさに設定される作業用凹部とを備え、
    前記環状側板は、前記保持器の軸方向端面に取り付けられるものでかつ一側の円周数箇所に周方向で伸縮するばね片を備え、このばね片は、前記環状側板が前記保持器に取り付けられた状態において各スプラグポケットの周方向一端側の壁面と当該各スプラグポケットに収納される各スプラグの一側面との間の隙間に、各スプラグを起立姿勢に押圧する圧縮状態で介装されるものである、ことを特徴とする一方向クラッチ付きの転がり軸受。
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