JP2007130538A - 導電性皮膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができる導電性皮膜の製造方法を提供する。
【解決手段】アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布し、硬化させて導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は導電性皮膜の製造方法およびこの方法で製造された導電性皮膜に関する。
導電性皮膜形成技術は、半導体素子や液晶表示素子等の電子デバイス製造のキー技術の一つである。現在、半導体素子や液晶表示素子等においては、導電性皮膜は主にスパッタ法、蒸着法により形成されている。また、導電性皮膜のより簡便で安価な形成方法として、金属化合物の溶液またはペーストを、基板上に塗布またはスクリーン印刷法等で印刷し、これを高温で焼成して導電性皮膜を形成する方法も知られている。
導電性皮膜の材料としては、銅、銀、金、アルミ、白金、パラジウム、タングステン、クロム等種々の金属が用いられる。これらの金属は目的に応じて、抵抗値、基材との密着性、パタン形成のためのエッチングに対する部品全体の耐性等の観点から使い分けられている。特に、近年は抵抗値が低く、安定性に優れ(酸化されにくい)、比較的安価であるという理由から銀が多く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
国際公開第2003/085052号パンフレット 特開2003−308732号公報 特開2003−308729号公報
しかしながら、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合は、銀とポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性が十分ではなかった。一方、ポリイミド等の可撓性のある基材を用いる場合は、屈曲にも耐えうる高い密着性が要求されている。
したがって、本発明は、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができる導電性皮膜の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討した結果、アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布し、硬化させて導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法によれば、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができることを知見した。
また、エポキシ樹脂と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布して、導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法によれば、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができることを知見した。
本発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成させた。
即ち、本発明は下記(1)〜(10)を提供する。
(1)アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、
前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布し、硬化させて導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法。
(2)前記プライマー組成物が、更に、ウレタンプレポリマーを含有する上記(1)に記載の導電性皮膜の製造方法。
(3)エポキシ樹脂と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、
前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布して、導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法。
(4)前記硬化剤が、ケチミン化合物である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(5)前記ウレタンプレポリマーが、分子内の少なくとも一部のイソシアネート基が第二級炭素、または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有するウレタンプレポリマーである上記(2)〜(4)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(6)前記プライマー組成物が、溶剤を含有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(7)前記粒子状銀化合物が、酸化銀、炭酸銀および酢酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(8)前記銀カルボン酸塩が、第三級脂肪酸銀である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(9)前記導電性組成物が、バインダを含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法で製造された、導電性皮膜。
本発明の導電性皮膜の製造方法によれば、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができる。
また、本発明の製造方法により製造された導電性皮膜は、絶縁性基材との密着性に優れる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の導電性皮膜の製造方法(以下、本発明の製造方法という。)の第1の態様は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、上記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布し、硬化させて導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法である。
また、本発明の製造方法の第2の態様は、エポキシ樹脂と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、上記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布して、導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法である。
まず、本発明の製造方法の第1の態様に用いられるプライマー組成物(以下、第1態様のプライマー組成物ともいう。)について詳細に説明する。
第1態様のプライマー組成物は、アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有する。
上記アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂(以下、NBR変性エポキシ樹脂という。)は、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂を両末端にカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムで変性して得られるものが挙げられる。
上記両末端にカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムは、例えば、Hycar CTBN(宇部興産社製)として市販されている。
NBR変性エポキシ樹脂に用いられる変性前のエポキシ樹脂は、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂等の二官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好適に挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150〜3000eq/gが好ましい。エポキシ当量がこの範囲であると、溶融粘度が低くなり過ぎず、また、密着性にも優れる。
両末端にカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムによる変性量は、変性前のエポキシ樹脂100質量部に対して、導電性皮膜の絶縁性基材に対する密着性に優れる点から、20〜100質量部が好ましい。
変性方法は、公知の方法によって行うことができ、例えば、バッチニーダー中で両末端にカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムと当量比において過剰の2官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂とを加熱により変性させる方法や、両末端にカルボキシ基を有するアクリロニトリル−ブタジエンゴムと当量比において過剰の2官能グリシジルエーテル型エポキシ樹脂とを溶剤の存在下トリフェニルホスフィン等の触媒存在下変性させる方法等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、通常、ゴム変性エポキシ樹脂とその原料となったエポキシ樹脂の混合物として市販されている。例えば、アデカレジンEPRシリーズ(旭電化工業社製)として、エポキシ当量が230〜400のものが挙げられる。
上記NBR変性エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂のグリシジル基と、活性水素を有する多官能カルボン酸または多官能アミンとを反応させた後、ジイソシアネートを加えて残存する活性水素と反応させることにより得られるものが挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂としては、密着性に優れる点から、エポキシ樹脂のグリシジル基に対して、過剰量の活性水素を有するような量で多官能カルボン酸または多官能アミンを用いて変性し、その後残存する活性水素とジイソシアネ−トとを更に反応させて鎖延長されたものが好ましい。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂に用いられる変性前のエポキシ樹脂としては、上記NBR変性エポキシ樹脂に用いられる変性前のエポキシ樹脂と同様のものが挙げられる。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂の製造に用いられる多官能カルボン酸または多官能アミンとしては、1分子中に活性水素を2個以上有するものが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記多官能カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ピロメリット酸および上記単量体の無水物等の多官能カルボン酸が挙げられる。
上記多官能アミンとしては、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミン等の第一級アルカノールアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン等の第一級アルキルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、キシレンジアミン、アミノエチルピペラジン、ノルボルナンジアミノメチル等の多官能アミンが挙げられる。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂の製造に用いられるジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族イソシアネート;およびこれらの混合物を用いることができる。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂の製造方法としては、例えば、上記エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂中のグリシジル基に対して、活性水素が1.1〜1.8倍当量となるような量で多官能カルボン酸または多官能アミンを混合し、70〜150℃で4〜10時間反応させた後、残存する多官能カルボン酸またはアミンの活性水素に対し0.1〜0.9倍当量のジイソシアネートを添加して、30〜100℃で更に反応を行うことにより製造する方法等が挙げられる。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は、2000〜12000が好ましく、3000〜11000がより好ましく、3000〜8000が更に好ましい。
また、上記ウレタン変性エポキシ樹脂の水酸基価は、150〜300が好ましく、180〜280がより好ましく、210〜270が更に好ましい。
上記ウレタン変性エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記硬化剤としては、公知のエポキシ樹脂の硬化剤を用いることができ、特に制限されない。上記硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、チオール系化合物、イミダゾール、3フッ化ホウ素−アミン錯体、グアニジン誘導体等を使用することができ、アミン系化合物、酸無水物系化合物、チオール系化合物等が好ましい。
アミン系化合物としては、具体的には、例えば、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン(IPDA)、ジシアンジアミド、ジメチルベンジルアミン、ケチミン化合物等のアミン系化合物、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド骨格のポリアミン等が挙げられる。中でも、メタキシリレンジアミン(MXDA)、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)、ノルボルナンジアミン(NBDA)、トリエチレンテトラミン等が室温で液状であり、作業性が良く、硬化性も高いという点から好ましい。また、1液型とすることができ、プライマーの使用時に混合する手間がなく、導電性皮膜の生産性を向上できる点から、ケチミン化合物が好ましい。
酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でも、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が、室温で液状であり、作業性が良く、硬化性も高いという点から好ましい。
フェノール系化合物としては、具体的には、例えば、ビスフェノール類、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類と芳香族ジメチロールとの重縮合物、またはビスメトキシメチルビフェニルとナフトール類もしくはフェノール類との縮合物等、ビフェノール類およびこれらの変性物等が挙げられる。
チオール系硬化剤としては、具体的には、例えば、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、エポメートQX10(ジャパンエポキシレジン社製)、エポメートQX11(ジャパンエポキシレジン社製)等のジチオール;
チオコール(東レ・ファインケミカル社製)、カップキュア3−800(ジャパンエポキシレジン社製)、エピキュアQX40(ジャパンエポキシレジン社製)等のポリチオール等のチオール化合物が挙げられる。中でも、エポメートQX10、エポメートQX11、カップキュア3−800、エピキュアQX40等が、市販の速硬化性ポリチオールとして好適に用いられる。
硬化剤の使用量は、組成物中のエポキシ基1当量に対して0.8〜1.1当量が好ましく、0.95〜1.05当量がより好ましい。
ここで、上記ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有する化合物であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、下記式(1)で表されるケトンおよび/または下記式(2)で表されるケトンと、ポリアミンとを反応させて得られうるケチミン化合物が好適に挙げられる。
Figure 2007130538
式中、R1は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。R2はメチル基またはエチル基を表す。R3は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。R4およびR5は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
上記式(1)で表されるケトンは、ケチミン化された際にケチミン結合を構成する炭素原子(ケチミン炭素原子)の隣の炭素原子の一方が、2個または3個の置換基を有しており、いわば分岐炭素原子となっている。上記式(1)で表されるケトンは、このようにケチミン炭素原子が、嵩高い基とメチル基とを有するため、ケチミンを後述する使用量で用いたときに、硬化性と可使時間とがいずれも好適範囲になる。
また、上記式(2)で表されるケトンは、ケチミン炭素原子の両隣(α位)の炭素原子が、いずれも分岐炭素原子ではないが、いずれも炭素原子数1〜6のアルキル基と結合している。β位の炭素原子は分岐していることが好ましい。上記式(2)で表されるケトンは、このようにケチミン炭素原子が2個の炭素原子数2〜7のアルキル基を有するため、ケチミンを後述する使用量で用いたときに、硬化性と可使時間とがいずれも好適範囲になる。
これに対し、ケチミン炭素原子に分岐炭素原子でない炭素原子と、メチル基とが結合している場合(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルイソブチルケトン)には、反応性が高すぎるため可使時間が短くなり、実用的でない。
上記式(1)で表されるケトンとしては、例えば、メチルt−ブチルケトン(MTBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、メチルシクロヘキシルケトンが挙げられる。
上記式(2)で表されるケトンとしては、例えば、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトンが挙げられる。
ポリアミンは、特に限定されず、例えば、メタフェニレンジアミン、オルトフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、デュポン・ジャパン社製のMPMD、メタキシリレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、3−ブトキシイソプロピルアミン等の主鎖にエーテル結合を有するモノアミンや、サンテクノケミカル社製のジェファーミンEDR148に代表されるポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン等の脂環式ポリアミン;三井化学社製のNBDAに代表されるノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、ポリプロピレングリコール(PPG)を骨格に持つサンテクノケミカル社製のジェファーミンD230、ジェファーミンD400等が具体例として挙げられる。
中でも、アミノ基が芳香環に直結しないポリアミン、即ち、脂肪族ポリアミンが、加水分解後のアミンの活性が高く、硬化が速い点で好ましい。例えば、メタキシリレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、PPG骨格のポリアミン(サンテクノケミカル社のジェファーミンシリーズ)、ポリアミドアミンが挙げられる。
上述したケトンとポリアミンとを適宜組み合わせて、ケチミンを得ることができる。好適なケチミンとしては、ノルボルナンジアミンとメチルイソプロピルケトンとから得られる下記式(3)で表されるケチミン、メタキシリレンジアミンとメチルイソプロピルケトンとから得られる下記式(4)で表されるケチミン、メタキシリレンジアミンとジエチルケトンとから得られる下記式(5)で表されるケチミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとジイソブチルケトンとから得られる下記式(6)で表されるケチミンが挙げられる。
Figure 2007130538
ケチミンは、例えば、ケトンとポリアミンとを無溶媒下、または、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒存在下、加熱還流させ、脱離してくる水を共沸により除きながら反応させることにより得ることができる。
上記プライマー組成物は、上記ケチミン化合物の加水分解触媒を含有するのが好ましい態様の一つである。
上記加水分解触媒は、特に限定されず、その具体例としては、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸等のカルボン酸類;ポリリン酸、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等のリン酸類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の有機金属類等が挙げられる。
このような加水分解触媒を含有していれば、絶縁性基材の表面にプライマー組成物を塗布した際に、ケチミン化合物の湿気(水)による加水分解が促進され、作業性および密着性のバランスが向上するため好ましい。
上記加水分解触媒の含有量は、上記ケチミン化合物100質量部に対して0.01〜30質量部であるのが好ましく、0.1〜20質量部であるのがより好ましい。
上記第1態様のプライマー組成物は、粘度を低くして作業性を向上できる点から、更に溶剤を含有するのが好ましい態様の一つである。
上記溶剤としては、上記エポキシ樹脂および硬化剤に対して不活性であれば特に限定されず、従来公知の各種の溶媒を用いることができる。
具体的には、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、上記溶剤は、充分に乾燥または脱水してから用いることが好ましい。これらのうち、酢酸エチルやエチルエチルケトンが沸点が低く乾きが速い等の理由から好ましい。
本発明において、上記溶剤の含有量は、プライマー組成物の固形分濃度を、1〜30%、好ましくは2〜20%に調整するように添加することが、得られるプライマー組成物の塗布性が優れるという理由から好ましい。
上記第1態様のプライマー組成物は、更に、ウレタンプレポリマーを含有するのが好ましい。ウレタンプレポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーが好適に挙げられる。
上記ウレタンプレポリマーに用いられるポリオール化合物は、炭化水素の複数個の水素をヒドロキシ基で置換したアルコール類である。例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を、分子中に活性水素を2個以上有する活性水素含有化合物に付加重合させた生成物が挙げられる。
上記活性水素含有化合物としては、例えば、多価アルコール類、アミン類、アルカノールアミン類、多価フェノール類等が挙げられる。
多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
多価フェノール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン、ビスフェノール類等が挙げられる。
上記ポリオール化合物としては、具体的には、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール;アジペート系ポリオール;ラクトン系ポリオール;ヒマシ油等のポリエステル系ポリオール等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリオール化合物は、重量平均分子量が500〜10000程度であるのが好ましく、2000〜6000程度であるのがより好ましい。
上記ウレタンプレポリマーに用いられるポリイソシアネート化合物としては、通常のポリウレタン樹脂の製造に用いられる種々のものを用いることができる。具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のTDI;ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等のMDI;テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ノルボルナン骨格を有するジイソシアネート(NBDI)、および、これらの変成品(ヌレート、ビュレット、トリメチロールプロパンアダクト等)等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポリイソシアネート化合物の中でも、安価かつ入手が容易である点から、TDIおよびMDIが好ましい。
上記ウレタンプレポリマーの製造時におけるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを混合する割合は、ポリオール化合物のヒドロキシ基の数に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の数の比(NCO/OH)が、1.0以上であるのが好ましく、1.5〜2.0であるのがより好ましい。
上記ウレタンプレポリマーの製造は、通常のウレタンプレポリマーと同様に行うことができ、通常、所定量比のポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を混合し、常圧下、60〜100℃で、加熱撹拌することによって行うことができる。
また、上記ウレタンプレポリマーは、下記式(7)で表されるように、分子内の少なくとも一部のNCO基が第二級炭素、または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有していることが、得られるプライマー組成物の貯蔵安定性がより良好となり、また、硬化後の耐熱性および耐水性も良好となる理由から好ましい。これらの特性により優れる点から、分子内のNCO基の50モル%以上が第二級炭素、または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有していることがより好ましく、分子内の全てのNCO基が第二級炭素、または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有していることが更に好ましい。
Figure 2007130538
上記式(7)中、pは2以上の整数を表し、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、O、NおよびSからなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいてもよい有機基であり、R7は水素原子であってもよい。また、複数のR6およびR7は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。更に、R7が水素原子である場合においては、R6とR7の一部とが結合して環を形成していてもよい。
ここで、上記有機基としては、具体的には、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等の炭化水素基;O、NおよびSからなる群より選ばれるヘテロ原子を少なくとも1つ有する基(例えば、エーテル、カルボニル、アミド、尿素基(カルバミド基)、ウレタン結合等)を含む有機基等が挙げられる。これらのうち、R6およびR7で表される有機基は、アルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基であることが好ましい。
上記式(7)で表されるウレタンプレポリマーを生成するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、上記で例示した各種ポリイソシアネート化合物のうち、TMXDI、IPDI、水添MDI、水添TDI等が好適に例示される。
上記ウレタンプレポリマーの含有量は、上記NBR変性エポキシ樹脂および上記ウレタン変性エポキシ樹脂の合計100質量部に対して、10〜500質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。
第1態様のプライマー組成物は、上述した各成分以外に、エポキシ樹脂を含有することができる。具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヘキサヒドロビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ピロカテコール、レゾルシノール、クレゾールノボラック、テトラブロモビスフェノールA、トリヒドロキシビフェニル、ビスレゾルシノール、ビスフェノールヘキサフルオロアセトン、テトラメチルビスフェノールF、ビキシレノール、ジヒドロキシナフタレン等の多価フェノールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル型;グリセリン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル型;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテルエステル型;フタル酸、メチルフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラハイドロフタル酸、ヘキサハイドロフタル酸、エンドメチレンテトラハイドロフタル酸、エンドメチレンヘキサハイドロフタル酸、トリメリット酸、重合脂肪酸等のポリカルボン酸から誘導されるポリグリシジルエステル型;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエーテル型;アミノ安息香酸から誘導されるグリシジルアミノグリシジルエステル型;アニリン、トルイジン、トリブロムアニリン、キシリレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン等から誘導されるグリシジルアミン型;更にエポキシ化ポリオレフィン、グリシジルヒダントイン、グリシジルアルキルヒダントイン、トリグリシジルシアヌレート等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
また、上記エポキシ樹脂は、少なくとも1つの芳香環を有するのが、硬化物の機械的強度および耐湿熱性に優れる点から好ましい。特に、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型エポキシ化合物が、入手の容易さおよび硬化物の性質(性能)のバランスが良好であることから好ましい。
第1態様のプライマー組成物は、更に、硬化触媒を含有するのが好ましい。
硬化触媒としては、具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第三級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物、第四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
硬化触媒の含有量は、プライマー組成物中の全てのエポキシ樹脂の合計100質量部に対して0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
第1態様のプライマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、分散剤、溶剤が挙げられる。
第1態様のプライマー組成物を製造する方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機、ボールミル等により混合する方法が挙げられる。
次に、本発明の製造方法の第2の態様に用いられるプライマー組成物(以下、第2態様のプライマー組成物という。)は、エポキシ樹脂と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するプライマー組成物である。
第2態様のプライマー組成物に用いられるエポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、上述した第1態様のプライマー組成物に所望により添加されるエポキシ樹脂を用いることができる。
第2態様のプライマー組成物に用いられるウレタンプレポリマーおよび硬化剤ならびに所望により添加される溶剤、加水分解触媒、硬化触媒および各種添加剤は、上述した第1態様のプライマー組成物に用いられるものと同様である。また、第2態様のプライマー組成物の製造方法は、上述した第1態様のプライマー組成物の製造方法と同様である。
本発明の製造方法のプライマー塗布工程は、上述した第1態様のプライマー組成物または第2態様のプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布する工程である。
上記絶縁性基材の材料は、絶縁性を有する材料であれば特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、フェノール等の樹脂、ガラス、セラミックス、ホウロウ等が挙げられ、目的に応じて使用できる。
上記プライマー組成物を絶縁性基材の表面に塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。具体的には、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、ディップ塗布等が挙げられる。
プライマー組成物を塗布した後、後述する導電性組成物を塗布する前に、室温下で、または必要に応じて加熱して、溶剤を揮発させるのが好ましい。
次に、本発明の製造方法の導電性皮膜形成工程について説明する。
上記導電性皮膜形成工程は、上記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布して、導電性皮膜を形成する工程である。
上記導電性組成物に用いられる粒子状銀化合物は、単なる加熱または還元剤の存在下での加熱によって還元されて金属銀となる性質を有する固体粒子状の化合物である。
上記粒子状銀化合物としては、具体的には、例えば、酸化銀、炭酸銀、酢酸銀が好適に挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記粒子状銀化合物は、工業生産されたものをそのまま、または分級して用いることができる他、粉砕後分級して用いることができる。また、後述する液相法によって得られたものを用いてもよい。
上記粒子状銀化合物の平均粒径は、0.01〜10μmの範囲が好ましく、還元反応条件、例えば加熱温度、還元剤の有無、還元剤の還元力等に応じて適宜選択することができる。特に、平均粒径が0.5μm以下の粒子状銀化合物を用いると還元反応の速度が速くなるのでより好ましい。
平均粒径が0.5μm以下のものは銀化合物と他の化合物との反応によって生成させる液相法、例えば、硝酸銀と水酸化ナトリウム等のアルカリを反応させて酸化銀を得る方法によって製造することができる。この場合、溶液中に分散安定剤を添加して、析出した粒子状銀化合物の凝集を防止することが望ましい。
また、平均粒径が0.1μm以下の粒子状銀化合物を得るには、上記液相法で得られた分散液を遠心分離して、平均粒径0.01〜0.1μmの粒子を捕捉する方法で可能になる。遠心分離の条件は、例えば4万回転以上で、30分程度とされる。
上記導電性組成物に用いられる銀カルボン酸塩は、銀のカルボン酸塩であり、導電性皮膜の製造に用いられる公知の銀カルボン酸塩を用いることができ、特に限定されないが、例えば、特開2003−308729号公報に記載の銀化合物を用いることができる。
銀カルボン酸塩の原料となるカルボン酸は、特に限定されないが、第三級脂肪酸が好ましく、炭素数が10以上の第三級脂肪酸がより好ましい。第三級脂肪酸銀化合物の多くは分解温度が200℃以下であり、さらに炭素数が10以上のものは熱分解温度より融点が低いので、加熱した場合、熱分解する前に融解して液状となるので、粒子状の固まりが形成されることがなく、緻密かつ均一で連続した銀被膜を形成させることができる。よって、導電性および塗膜の強度の高い銀被膜が得られる。
第三級脂肪酸は、カルボキシル基と結合した炭素原子が水素原子と結合していない脂肪族カルボン酸であり、例えば、ピバリン酸、ネオノナン酸、ネオデカン酸、エクアシッド9(出光石油化学社製)、エクアシッド13(出光石油化学社製)等が挙げられる。
炭素数が10以上の第三級脂肪酸銀化合物としては、例えば、ネオデカン酸銀、エクアシッド13(出光石油化学製)の銀塩等が挙げられる。
第三級脂肪酸銀化合物は、一般的な金属石けんの製法である複分解法によって製造できる。例えば、第三級脂肪酸を水酸化ナトリウムにより中和してナトリウム塩とし、このナトリウム塩に硝酸銀水溶液を混合し、複分解反応させて水不溶性塩にして三級脂肪酸銀化合物を析出、回収する。また、酸化銀に直接カルボン酸を反応させる方法でも第三級脂肪酸銀化合物を容易に得ることができる。
上記導電性組成物は、バインダを含有するのが好ましい態様の一つである。バインダは、得られる導電性皮膜を保護し、柔軟性を付与するものである。
上記バインダとしては、具体的には、例えば、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、バインダとしては、これらの樹脂、化合物のなかでもそれ自体が還元作用を有するもの、または酸化重合性を有し、加熱時に粒子状銀化合物を還元するとともにそれ自体が重合するものが好ましく、このようなバインダを選択することにより、還元剤の添加量を減量することができ、または還元剤を不要とすることもできる。このような還元作用を有するバインダには、多価フェノール化合物、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。
バインダとして酸化重合性を有しない熱硬化性樹脂を用いる場合には、未硬化樹脂とこれを硬化させるための硬化剤、触媒等を用いる。
また、バインダとして、熱可塑性樹脂、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の平均粒子径が20nm〜5μmの微細粉末を粉末状のまま使用することもできる。
この熱可塑性樹脂微細粉末からなるバインダを使用した場合、加熱時の熱で溶融し、粒子状銀化合物が還元されて生成した銀皮膜と対象物表面との間隙を埋めることになる。これにより生成した導電性皮膜の密着性が高められる。
バインダの使用量は、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩100質量部に対して、0.2〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。バインダの使用量がこの範囲であれば、これを配合した効果が得られ、得られる導電性皮膜の抵抗が高くなることもない。
上記導電性組成物は、上記バインダが還元作用を有していない場合、還元剤を含有するのが好ましい。上記バインダが還元作用を有している場合でも、還元剤を用いてもよい。
上記還元剤は、粒子状銀化合物を還元するもので、還元反応後の副生成物が気体や揮発性の高い液体となり、生成された導電性皮膜内に残らないものが好ましい。このような還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールジアセテート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
還元剤の使用量は、粒子状銀化合物1モルに対して、20モル以下が好ましく、0.5〜10モルがより好ましく、1〜5モルが更に好ましい。
上記導電性組成物は、上記各成分を分散または溶解し液状の導電性組成物を得るために、溶媒を含有するのが好ましい。
上記溶媒は、特に限定されないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、イソホロン、テルピネオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられる。
また、上記還元剤が液状で粒子状銀化合物およびバインダを分散、溶解するものであれば、還元剤が溶媒を兼ねることができ、このようなものとしては、エチレングリコール等が挙げられる。
この溶媒の種類の選択とその使用量は、粒子状銀化合物、バインダや成膜条件、例えば、スクリーン印刷では刷版のメッシュ粗さや印刷パターンの精細度等によって異なり、最適な成膜ができるように適宜調整される。
また、上記導電性組成物は、上記粒子状銀化合物の二次凝集を防止できることから、分散剤を含有するのが好ましい。この分散剤には、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が用いられる。
本発明に用いられる導電性組成物の好適な一例としては、上記粒子状銀化合物と上記バインダと、上記溶媒とを含有するものである。必要に応じて、分散剤が添加されていてもよい。
この例で用いられる粒子状銀化合物は、その平均粒径が1μm以下の粒径の小さいものが還元反応速度が速くなる点から好ましい。
また、この例の導電性組成物の粘度は、成膜条件によって異なるが、例えば、スクリーン印刷の場合、30〜300dPa・sec程度とすることが好ましい。
また、この例の導電性組成物の使用方法は、対象物にこれを適宜の手段で塗布したのち、これを単に加熱するだけでよい。加熱温度は140〜200℃、加熱時間は10秒〜180分程度とされる。
上記導電性組成物の好ましい他の一例としては、上記粒子状銀化合物と、上記バインダと、上記還元剤と、上記溶媒とを含有するものである。必要に応じて、分散剤を添加してもよい。
この例で用いられる粒子状銀化合物の平均粒径は、小さいものに限られることはなく、0.01〜10μmの範囲であれば特に支障はなく、還元剤の存在により、1μm以上の粒子でも、還元反応がスムースに進行する。
また、この例の導電性組成物の粘度は、成膜条件によって異なるが、例えばスクリーン印刷の場合、30〜300dPa・sec程度とすることが好ましい。
この例の導電性組成物の使用方法は、やはり対象物にこれを適宜の手段で塗布したのち、これを単に加熱するだけでよい。加熱温度は還元剤の存在により、先のものよりも低くてよく140〜160℃、加熱時間は10秒〜180分程度とされる。
なお、いずれの場合においても、対象物の表面を清浄にしておくことが好ましい。
上述した導電性組成物から形成される導電性皮膜では、粒子状銀化合物が還元される際の反応熱で、析出した金属銀粒子が溶融し、互いに融着して、連続した金属銀の薄い皮膜となる。また、バインダは銀粒子の編み目構造の隙間を埋め、または皮膜の表面を覆うように存在し、または銀皮膜と対象物表面を埋めるため、バインダの添加によって得られる導電性皮膜の体積抵抗率が高くなることがない。また、バインダが存在することで、導電性皮膜の表面が保護され、機械的強度が高められ、皮膜自体の柔軟性が良好となり、基材に対する密着性も高いものとなる。
このため、得られる導電性皮膜の体積抵抗率は、3〜8×10−6Ω・cmに至る値を示し、ほぼ金属銀の体積抵抗率と同等になる。
また、粒子状銀化合物の平均粒径が0.01〜10μmである場合、この導電性組成物を絶縁性基材に印刷して形成した電気回路の線幅を10μm以下とすることができ、しかも回路自体の導電性が極めて高いので、回路の厚みを厚くする必要もない。このため、回路の形成が容易であり、回路自体の可撓性も高いものとなる。
更に、導電性皮膜形成のための加熱温度は、180〜200℃または140〜160℃で十分であるので、耐熱性の低いプラスチックフィルム等の対象物にも適用でき、高導電性皮膜を形成することができるとともに対象物の熱劣化を招くこともない。
更に、得られる導電性皮膜の体積抵抗率が極めて低いので、皮膜の厚みを極めて薄くしても問題のない導電性を得ることができ、皮膜厚みを0.1μm程度にまで薄くすることができる。また、得られる導電性皮膜の表面は、金属銀の光沢に富む鏡面を呈するので、反射率の高い鏡として、家庭用、工業用等の用途に使用でき、例えばレーザー装置の共振器の反射鏡等に使用することができる。
上述した導電性組成物は、上記導電性皮膜形成工程において、上記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に塗布されて、導電性皮膜を形成する。
導電性組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、スクリーン印刷、インクジェット、フォトリソグラフ、凹版オフセット等が挙げられる。
上記導電性組成物を塗布した後、加熱して導電性皮膜を形成する。加熱温度は、用いる導電性組成物に応じて適宜選択すればよく、通常140〜200℃である。
本発明の製造方法によれば、導電性組成物を絶縁性基材に塗布する前に上述したプライマー組成物を用いるので、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でもポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができる。
また、本発明の製造方法により製造された導電性皮膜は、絶縁性基材との密着性に優れ、折り曲げても絶縁性基材から剥離することがない。
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<プライマー組成物の調製(配合例1〜5)>
下記第1表の各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、撹拌機を用いて混合し、第1表に示される各プライマー組成物を得た。これらを後述する実施例および比較例で用いた。
Figure 2007130538
上記第1表に示す各成分は下記のとおりである。
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:エピコート828、ジャパンエポキシレジン社製
・NBR変性エポキシ樹脂:EPR1508、旭電化工業社製
・ウレタン変性エポキシ樹脂:EPU1348、旭電化工業社製
・TMXDIウレタンプレポリマー:ポリカーボネートポリオール(旭化成工業社製、分子量2000)と、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI、サイテック社製)とをNCO/OHが2/1となるように混合し、90℃で24時間かくはんして得られたウレタンプレポリマー(NCO%=1.4%)。
・ケチミン化合物:エピキュアHOK−01、ジャパンエポキシレジン社製
・芳香族アミン:エタキュア300、アルベマール日本社製
<導電性組成物の調製>
(合成例1)
ネオデカン酸塩25gに酸化銀16gを乳鉢でよく混ぜながら反応させた。酸化銀の黒色がなくなったら、α−テルピネオール12g、イソホロン3.0gを投入し、十分に混合して、合成例1の導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物を実施例1〜3および比較例1〜2に用いた。
(合成例2)
上記合成例1の導電性組成物100質量部に、酸化銀(平均粒径0.1μm)1質量部を添加し、十分に分散させて得た組成物を合成例2の導電性組成物とし、実施例4に用いた。
(合成例3)
上記合成例1の導電性組成物100質量部に、酢酸銀(平均粒径0.1μm)1質量部を添加し、十分に分散させて得た組成物を合成例3の導電性組成物とし、実施例5〜7に用いた。
<実施例1〜7および比較例1〜2>
下記第2表に示す、絶縁性基材の表面に、第2表に示すプライマー組成物を塗布して、150℃で10分乾燥して、溶剤を揮発させた。その後、第2表に示す導電性組成物をプライマー塗布面に塗布して、70℃で30分加熱し、更に150℃で30分加熱して、厚さ20μmの導電性皮膜を形成させた。
なお、第2表中のポリイミド基材は、ポリイミドフィルム(カプトン100V、東レ社製、厚さ25μm)である。ガラス基材は、白スライドガラスである。
得られた各導電性皮膜について、下記の方法により基材との密着性(テープ剥離試験、折り曲げ試験)および体積抵抗率を評価した。
結果を第2表に示す。
(テープ剥離試験)
JIS K5600−1999に準じて、テープ剥離試験を行った。
25個の皮膜片のうち、テープ剥離後に基材上に残った皮膜片の個数で評価した。
(折り曲げ試験)
得られた各導電性皮膜付き基材の両端を手で持って、半分に1回折り曲げたときにの導電性皮膜の破壊状態を目視で観察した。
基材から導電性皮膜が剥離していなかったものを「○」とし、基材から導電性皮膜が剥離していたものを「×」とした。
(体積抵抗率の測定)
得られた各導電性皮膜(長さ5cm、幅5cm、厚さ20μm)について、ロレスターAP・MCP−400(三菱化学社製)を用いて体積抵抗率を測定した。
Figure 2007130538
第2表に示す結果から明らかなように、プライマーを用いなかった比較例2の導電性皮膜は基材との密着性が悪かった。
また、樹脂成分としてビスフェノールA型エポキシ樹脂のみを含有するプライマー組成物を用いた比較例1の導電性皮膜は、比較例1に比べて基材との密着性が向上していたが、十分ではなかった。これは硬化後のプライマーの柔軟性が低いからであると考えられる。
一方、実施例1〜7は、導電性皮膜と基材との接着性に優れ、折り曲げても剥離しなかった。即ち、本発明の導電性皮膜の製造方法によれば、導電性皮膜の材料として銀を用いた場合でも、ポリイミドやガラス等の絶縁性基材との密着性に優れた導電性皮膜を得ることができた。

Claims (10)

  1. アクリロニトリル−ブタジエンゴム変性エポキシ樹脂および/またはウレタン変性エポキシ樹脂と、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、
    前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布し、硬化させて導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法。
  2. 前記プライマー組成物が、更に、ウレタンプレポリマーを含有する請求項1に記載の導電性皮膜の製造方法。
  3. エポキシ樹脂と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するプライマー組成物を、絶縁性基材の表面に塗布するプライマー塗布工程と、
    前記プライマー塗布工程で塗布されたプライマーの表面に、粒子状銀化合物および/または銀カルボン酸塩を含有する導電性組成物を塗布して、導電性皮膜を形成する導電性皮膜形成工程とを有する導電性皮膜の製造方法。
  4. 前記硬化剤が、ケチミン化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  5. 前記ウレタンプレポリマーが、分子内の少なくとも一部のイソシアネート基が第二級炭素、または芳香環を含まない第三級炭素に結合した構造を有するウレタンプレポリマーである請求項2〜4のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  6. 前記プライマー組成物が、溶剤を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  7. 前記粒子状銀化合物が、酸化銀、炭酸銀および酢酸銀からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  8. 前記銀カルボン酸塩が、第三級脂肪酸銀である請求項1〜7のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  9. 前記導電性組成物が、バインダを含有する請求項1〜8のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の導電性皮膜の製造方法で製造された、導電性皮膜。
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