JP5266936B2 - エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤、一液性エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤、一液性エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤、一液性エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物に関する。
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の点で優れた性能を有することから、塗料、電気電子用絶縁材料、接着剤等の幅広い用途に利用されている。現在一般に使用されているエポキシ樹脂組成物の多くは、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤の二液を混合する、いわゆる二液性のものである。
二液性エポキシ樹脂組成物は室温で硬化しうる反面、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管し、必要に応じて両者を計量、混合した後、使用する必要があるため、保管や取り扱いが煩雑である。その上、可使用時間が限られているため、予め大量に混合しておくことができず、配合頻度が多くなり、能率の低下を免れない。
こうした二液性エポキシ樹脂配合品の問題を解決する目的で、これまでいくつかの一液性エポキシ樹脂組成物が提案されている。例えば、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、アミン塩、変性イミダゾール化合物等の潜在性硬化剤をエポキシ樹脂に配合したものがある。
また、粉末状アミン化合物の表面をイソシアネートと反応させ、アミン化合物の表面を不活性化して硬化剤に潜在性を付与する検討が行われている(特許文献1〜5)。さらに、粉末状アミン化合物をエポキシ樹脂中でイソシアネートと反応させることによりカプセル化したマイクロカプセル型硬化剤も提案されている(特許文献6〜8)。
特公昭58−55970号公報 特開昭59−27914号公報 特開昭59−59720号公報 欧州特許出願公開第193,068号明細書 特開昭61−190521号公報 特開平1−70523号公報 特開2004−269721号公報 特開2005−344046号公報
しかし、従来の潜在性硬化剤の場合、貯蔵安定性に優れているものは硬化性が低く、硬化に高温または長時間が必要である一方、硬化性が高いものは貯蔵安定性が低く、例えば−20℃のような低温で貯蔵する必要がある。例えば、ジシアンジアミドを配合した一液性エポキシ樹脂組成物は、常温保存の場合に6ヵ月以上の貯蔵安定性を有するものの、170℃以上の硬化温度を必要とする。この硬化温度を低下させるために硬化促進剤を併用すると、例えば130℃での硬化が可能であるが、その場合は室温での貯蔵安定性が不十分であるため、低温での貯蔵を余儀なくされる。また、フィルム状成形品や、基材にエポキシ樹脂組成物を含浸した製品を製造する際に用いられるエポキシ樹脂組成物は、溶剤や反応性希釈剤等を含む配合品が用いられる場合が多いが、係る配合品において従来の潜在性硬化剤を用いると貯蔵安定性が極端に低下する。そのため、配合品を実質的に二液性とする必要があり、その改善が求められていた。
特許文献1〜5の硬化剤は、粉末状アミン化合物の表面処理により得られるものであり、貯蔵安定性が十分ではない。さらに、エポキシ樹脂中に均一分散させる際に、ロール等の装置によりせん断力を受けて表面層が破壊されるため、貯蔵安定性が損なわれるという問題を有している。
特許文献6〜8には、粉末状アミン化合物をエポキシ化合物中でイソシアネートと反応させることによりカプセル化を行い、一液化を達成したことが示されている。しかしながら、特許文献6〜8の方法では、例えば硬化特性向上のためにマイクロカプセル型潜在性硬化剤の量を増加させる場合、エポキシ樹脂中に多量の粉末状アミン化合物を添加する必要があり、粘度が高くなり、均一なカプセル化反応を行うことが困難となる。このため、カプセル化が十分進行せず貯蔵安定性と両立できない問題がある。別の方法として、コアとなる成分の硬化特性を高めるために、エポキシ樹脂との反応性を高めると、エポキシ中で硬化反応が進行し、充分な特性を有する潜在性硬化剤が合成できないという課題がある。
以上のように、優れた硬化性と優れた貯蔵安定性を両立し得る一液性エポキシ樹脂組成物が強く求められていた。特に近年、電子材料用途での生産性向上のために、一液性樹脂組成物に対して、硬化特性及び貯蔵安定性のさらなる向上が求められている。
本発明は、低温硬化性と貯蔵安定性を両立するエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤、一液性エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物を提供することを目的とする。
本発明は、コア及びこれを被覆するカプセルを有するエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤であって、上記コアがアミンアダクトを含み、上記カプセルがイソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水との反応生成物を含み、該反応生成物のうち少なくとも一部が上記アミンアダクトとの反応により上記コアに結合しており、上記カプセルが、イソシアネート基、アミノ基及び水酸基のうち少なくともいずれか1種と反応する反応性官能基を有する化合物との反応により処理されていることを特徴としる。
上記本発明に係るマイクロカプセル型硬化剤によれば、一液性エポキシ樹脂組成物の優れた低温硬化性と優れた貯蔵安定性の両立が可能である。
反応性官能基は、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる官能基を含むことが好ましい。
上記本発明に係るマイクロカプセル型硬化剤によれば、カプセル中に存在するイソシアネート基、アミノ基及び/又は水酸基を不活性化することができ、一液性エポキシ樹脂組成物中においてカプセルとエポキシ樹脂との反応を低減することができる。よって、貯蔵安定性を向上させることができる。
本発明による硬化をより一層顕著なものとするため、上記コアは質量比で50〜100%のアミンアダクトを含むことが好ましい。
また、本発明はエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤の製造方法を提供する。本発明に係る製造方法は、コアに含まれるアミンアダクトとイソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水とを分散媒中で反応させることにより、上記コアを被覆するカプセルを形成させる工程と、上記カプセルに、イソシアネート基、アミノ基及び水酸基のうち少なくともいずれか1種と反応する反応性官能基を有する化合物を反応させる工程と、を備え、上記分散媒の沸点が1気圧で150℃以下かつ粘度が25℃で1000mPa・s以下であることを特徴とする。
通常、エポキシ樹脂中でカプセル化を行う場合、未反応のイソシアネートや副生成物、水及び/又は活性水素基を有する化合物が残存し、貯蔵安定性が低下する。また、粉末状のアミンアダクト粒子を高濃度でエポキシ樹脂に添加すると、粘度が著しく高くなり、均一な反応が出来ず、ロット間の特性の差が大きくなる、カプセル化反応自体ができない等の問題がある。また、反応性を高めるために、エポキシ樹脂との反応性の高い化合物を添加したコアや、反応性の高いエポキシ樹脂を分散媒として用いて、カプセル化を行うと、コアとエポキシ樹脂との反応が優先的に進行し、マイクロカプセル型潜在性硬化剤又は一液性エポキシ樹脂組成物の製造が困難となる。
上記本発明に係る製造方法によれば、未反応のイソシアネートや副生成物、水及び/又は活性水素基を有する化合物の残存を低減できるため、優れた貯蔵安定性を得ることができる。また、ロット間の特性の差が小さいエポキシ樹脂用マイクロカプセル型硬化剤を得ることができる。さらに、カプセル中に存在するイソシアネート基、アミノ基及び/又は水酸基を不活性化することができるため、一液性エポキシ樹脂組成物中においてカプセルとエポキシ樹脂との反応を低減することができる。したがって、一液性エポキシ樹脂組成物の優れた低温硬化性と優れた貯蔵安定性の両立を可能にするエポキシ樹脂用マイクロカプセル型硬化剤を得ることができる。本発明に係るエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、上記本発明に係る製造方法により得られるものであってもよい。
さらに、本発明は、上記エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、エポキシ樹脂とを含有する一液性エポキシ樹脂組成物を提供する。
本発明に係る一液性エポキシ樹脂組成物は、優れた低温硬化性と優れた貯蔵安定性を有する。
本発明に係る一液性エポキシ樹脂組成物は、上記マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、エポキシ樹脂とを、上記コアの融点又は軟化点以下で加温処理することによって得られるのであってもよい。
また、本発明は上記一液性エポキシ樹脂組成物を加熱により硬化して形成される硬化物を提供する。本発明に係る硬化物は、電気的特性の点で特に優れている。
本発明のエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤、一液性エポキシ樹脂組成物及びエポキシ樹脂硬化物は、優れた低温硬化性と優れた貯蔵安定性を両立できる。また、エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤が、固体(粉状)で得られるため、配合の自由度が高い。これらの理由から電子材料用途等で生産性及び特性を向上させるために好ましく用いられる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係るエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、粒子状のコア及びこれを被覆するカプセルを有する。カプセルはコア表面の少なくとも一部を被覆する膜である。
コアは、アミンアダクトを主成分として含む。より具体的には、コアは通常質量比で50〜100%、好ましくは60〜100%のアミンアダクトを含む。アミンアダクトの質量比が50%未満では、硬化特性と貯蔵安定を両立させることが比較的困難になる傾向がある。
アミンアダクトは、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応により得られる、アミノ基を有する化合物である。
アミンアダクトを得るために用いられるエポキシ樹脂として、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物を用いることができる。モノエポキシ化合物としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエートを挙げることができる。多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタン、m−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイドが例示される。
エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を高めることができるので、多価エポキシ化合物が好ましい。多価エポキシ化合物は、アミン化合物の生産性が圧倒的に高いので、グリシジル型エポキシ樹脂であることが好ましい。硬化物の接着性や耐熱性が優れることから、多価エポキシ化合物は、多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂であることがより好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂、及び、ビスフェノールFをグリシジル化したエポキシ樹脂が一層好ましい。ビスフェノールAをグリシジル化したエポキシ樹脂であるビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用してもよい。
アミンアダクトを得るために用いられるアミン化合物は、好ましくは、一級アミノ基及
び/又は二級アミノ基を有し三級アミノ基を有さない化合物と、三級アミノ基及び活性水
素基を有する化合物とから選ばれる。一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を有し三級ア
ミノ基を有しない化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、アニリン、トルイジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の三級アミノ基を有さない第一アミン類;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルへキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミン等の三級アミノ基を有さない第二アミン類が挙げられる。
三級アミノ基及び活性水素基を有する化合物において、活性水素基としては一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボン酸及びヒドラジド基が例示される。三級アミノ基及び活性水素基を有する化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、1−メチル−2−ジメチルアミノエタノール、1−フェノキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−ブトキシメチル−2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−β−ヒドロキシエチルモルホリン等のアミノアルコール類;2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等のアミノフェノール類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1−(2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル)−2−フェニルイミダゾリン、1−(2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル)−2−メチルイミダゾリン、2−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−ベンジルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−(o−トリル)−イミダゾリン、テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−イミダゾリン、1,1,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,3,3−トリメチル−1,4−テトラメチレン−ビス−4−メチルイミダゾリン、1,2−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,3−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−イミダゾリン、1,4−フェニレン−ビス−4−メチルイミダゾリン等のイミダゾリン類;ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジプロピルアミノエチルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、ジエチルアミノエチルピペラジン等の三級アミノアミン類;2−ジメチルアミノエタンチオール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等のアミノメルカプタン類;N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸等のアミノカルボン酸類;N,N−ジメチルグリシンヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジド等のアミノヒドラジド類を挙げることができる。
アミン化合物としては、貯蔵安定性と硬化性のバランスが優れているので、三級アミノ基及び活性水素基を有する化合物が好ましい。その中でも、イミダゾール類が更に好ましく、2−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾールが一層好ましい。
コアは、アミンアダクトに加えて1種又は2種以上のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分を加えることにより、所望の特性を付与することができる。例えば、更に低温で又は短時間での硬化を可能にするために、アミンアダクトよりもエポキシ樹脂との反応性の高い化合物や硬化促進剤をコアが含むことができる。また、硬化物において必要な添加剤を予めコア中に添加していてもよい。
その他の成分は、常温(25℃)で固体状であることが望ましい。好ましくは40℃で固体状であり、より好ましくは60℃で固体状であることが好ましい。常温で液体の成分を用いるとカプセル化が困難となるか、カプセル化が可能であっても一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
アミンアダクトとその他成分は、コア中で均一に混合されていることが好ましい。このような分布を実現する方法として、アミンアダクトとその他の成分を共に加熱融解し、十分混合した後、常温まで冷却し粉砕する方法や、どちらか一方を加熱融解し、それに他方を分散させ、均一分散物を形成させ、常温まで冷却し粉砕する方法がある。
コアは、0.1〜50μmの平均粒径を有する粒子状であることが好ましい。コアの平均粒径はより好ましくは0.5〜10μmであり、さらに好ましくは0.5〜5μmである。コアの平均粒径が0.1μm未満では、硬化性と貯蔵安定性の両立が比較的困難となる傾向がある。また、コアの平均粒径が50μm以下であると、均質な硬化物を得やすくなる。上記平均粒径は、メディアン径を指す。コアの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
コアの形状は特に制限は無く、球状、不定形いずれでも良いが、一液性エポキシ樹脂組成物の低粘度化のためには、球状が好ましい。ここで球状とは、真球に加え、不定形の角が丸みを帯びた形状をも包含する。
マイクロカプセル型硬化剤は、コアに含まれるアミンアダクトとイソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水とを分散媒中で反応させることにより、コアを被覆するカプセルを形成させる工程と、反応後の混合物からコア及びカプセルを有するマイクロカプセル型硬化剤を取り出す工程とを備える製造方法により得ることができる。
イソシアネートは、1個以上のイソシアネート基、好ましくは2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。好ましいイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、低分子トリイソシアネート及びポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。脂環式ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、4−4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,4−イソシアナトシクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,3−ビス(2−イソシアナトプロピル−2−イル)−シクロヘキサンが挙げられる。芳香族ジイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。低分子トリイソシアネートの例としては、1,6,1,1−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−2−イソシアナトエチル、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸−1−メチル−2−イソシアネートエチル等の脂肪族トリイソシアネート化合物;トリシクロヘキシルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂環式トリイソシアネート化合物;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートや上記ジイソシアネート、低分子トリイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートが例示される。上記ジイソシアネート、トリイソシアネートより誘導されるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロハネート型ポリイソシアネート、カルボジイミド型ポリイソシアネート等がある。これらイソシアネートは単独又は2種以上を用いることができる。
アミンアダクトが有する活性水素基とイソシアネートとの反応により、アミンアダクトとイソシアネートとが結合して、コア表面に生成物による被膜が形成される。そして、反応系中に活性水素基を有する化合物及び/又は水を存在させることにより、それらとイソシアネートとの反応生成物を含む被膜が成長して、カプセルが形成される。カプセルに含まれる反応生成物のうち少なくとも一部は、イソシアネートとアミンアダクトとの反応により生成するウレタン結合によってコアに結合している。このように被膜が成長したマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることにより、一液性エポキシ樹脂組成物の十分な貯蔵安定性が得られると考えられる。
活性水素基を有する化合物の活性水素基としては、一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基、カルボン酸及びヒドラジド基が例示される。1分子中に1個以上の活性水素基を有する化合物であればよいが、好ましくは1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物が用いられる。2個以上の活性水素基を有する化合物を用いることにより、コア表面の被膜が効率的に成長して、貯蔵安定性が特に優れたマイクロカプセル型潜在性硬化剤を製造することができる。活性水素基を有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
カプセル形成の反応は、分散媒中にコアを分散させた反応液中で行うことができる。反応はコアを構成する成分(特にアミンアダクト)の融点又は軟化点以下の温度で行うことが好ましい。
分散媒は、沸点が1気圧で150℃以下かつ粘度が25℃で1000mPa・s以下であることが好ましい。分散媒の沸点が150℃以上であると、反応液から分散媒を除去することが困難になる傾向がある。また、分散媒の粘度が1000mPa・s以上であると、均一な反応が困難になって、得られるマイクロカプセル型潜在性硬化剤が凝集し、硬化特性を著しく低下させる可能性がある。同様の観点から、より好ましくは、分散媒の沸点は50〜120℃であり、分散媒の粘度は0.2〜10mPa・sである。
分散媒は、活性水素基や、アミンアダクトと反応するエポキシ基等の置換基を有しないことが好ましい。これらの置換基は、カプセル形成の反応を阻害する可能性がある。好適な分散媒の具体例として、シクロヘキサン(沸点80.7℃、粘度0.898mPa・s:25℃)及びヘキサン(沸点69℃、粘度0.299mPa・s:25℃)が挙げられる。
カプセル形成の後、マイクロカプセル型潜在性硬化剤及び分散媒等を含む混合物から、分散媒が除去される。これにより、分散媒中に残存する未反応物から分離してマイクロカプセル型潜在性硬化剤を取り出すことができる。未反応物がマイクロカプセル型潜在性硬化剤に含まれていると、貯蔵安定性が低下する可能性がある。
分散媒の除去の方法は特に限定されないが、未反応のイソシアネートや副生成物、水及び活性水素基を有する化合物等の残存物を分散媒と共に除去することが好ましい。このような方法として、ろ過が挙げられる。分散媒を除去した後、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を洗浄することが好ましい。洗浄の方法は特に限定されないが、ろ過後、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を溶解しない溶媒を用いて洗浄することができる。係る溶媒として分散媒と同種のものを用いてもよい。洗浄により、マイクロカプセル型潜在性硬化剤表面に付着している未反応の化合物を除去できる。ろ過したマイクロカプセル型潜在性硬化剤は、乾燥することにより粉末状になる。乾燥の方法は特に限定されないが、コアの融点または軟化点以下の温度で乾燥することが好ましい。このような方法として減圧乾燥が挙げられる。分散媒を除去することにより、未反応のイソシアネートや副生成物、水及び/又は活性水素基を有する化合物の残存を低減できるため、優れた貯蔵安定性を有するマイクロカプセル型硬化剤を得ることができる。
カプセル形成の反応は、必要であれば2回以上行ってもよい。このとき、少なくとも一回は、アミンアダクトとイソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水との反応を行えばよく、これ以外に、イソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水とから選ばれるいずれか一方を用いて反応を行ってもよい。カプセル形成の反応は5回以下が製造コストを抑える点から好ましく、より好ましくは3回以下である。
本実施形態に係るエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤は、上記カプセル形成の反応及び分散媒の除去の後、形成されたカプセルに、反応性官能基を有する化合物を反応させる工程と、反応後の混合物からマイクロカプセル型硬化剤を取り出す工程とを備える製造方法により得ることができる。
反応性官能基を有する化合物の反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基等が挙げられる。反応性官能基を有する化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、エチルへキシルアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ピペリジン、ピペリドン、ジフェニルアミン、フェニルメチルアミン、フェニルエチルアミンが挙げられる。また、化合物あたりの反応性官能基の数は、一つであることが好ましい。
カプセルには、通常、イソシアネート基、アミノ基及び水酸基が含まれており、これらの官能基がエポキシ樹脂と反応することで貯蔵安定性が低下する。本実施形態においてカプセルに、反応性官能基を有する化合物を反応させることにより、カプセル中のイソシアネート基、アミノ基及び/又は水酸基を不活性化することができ、よって、貯蔵安定性を向上させることができる。イソシアネート基の不活性化に好適な反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等が挙げられ、アミノ基の不活性化に好適な反応性官能基としては、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられ、水酸基の不活性化に好適な反応性官能基としては、イソシアネート基等が挙げられる。これらの反応性官能基を併用してもよい。
なお、反応性官能基を有する化合物によるカプセル処理は、上述の1)カプセル形成反応及び分散媒の除去の後、マイクロカプセル化したコアが分散しうる分散媒に、マイクロカプセル化したコアと反応性官能基を有する化合物と添加し反応させることに加え、2)カプセル形成反応時に、反応性官能基を有する化合物を添加し反応させること、3)カプセル形成反応後に、分散媒中に反応性官能基を有する化合物を添加し反応させることにより行うことができる。
カプセル処理の反応に用いる分散媒は、マイクロカプセル化したコアが分散しうる分散媒であり、カプセル形成の反応に用いる分散媒として挙げた上記分散媒を使用することができる。また、カプセル処理の反応後に行う分散媒の除去は、カプセル形成の反応後に行う分散媒の除去として挙げた上記方法により行うことができる。粉末状のマイクロカプセル型硬化剤は、一液性エポキシ樹脂組成物において、幅広い種類の配合のために容易に適用することができる。
本実施形態に係る一液性エポキシ樹脂組成物は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤と、エポキシ樹脂とを含有する。マイクロカプセル型潜在性硬化剤の量は、特に限定されないが、通常、エポキシ樹脂及びマイクカプセル型潜在性硬化剤の合計量100質量部に対して5〜70質量部程度である。
一液性エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂としては、平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を好ましく用いることができる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラックビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p−オキシ安息香酸、β−オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。エポキシ樹脂の他の例としては、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いても2種類以上併用して用いても良い。
一液性エポキシ樹脂組成物は、マイクロカプセル型潜在性硬化剤に加えて、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類及びグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤を更に含有していても良い。また、一液性エポキシ樹脂組成物は、所望によって、増量剤、補強材、充填材、導電微粒子、顔料、有機溶剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、樹脂類、結晶性アルコール、カップリング剤等を含有していてよい。
充填剤の例としては、例えば、コールタール、ガラス繊維、アスベスト繊維、ほう素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリエチレン粉、ポリプロピレン粉、石英紛、鉱物性ケイ酸塩、雲母、アスベスト粉、スレート粉、カオリン、酸化アルミニウム三水和物、水酸化アルミニウム、チョーク粉、石こう、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、ペントン、シリカ、エアロゾル、リトポン、バライト、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化鉄、金、銀、アルミニウム粉、鉄粉、ナノサイズの金属結晶、金属間化合物等を挙げることができる。これらはいずれもその用途に応じて有効に用いられる。
導電微粒子の例としては、例えば、半田粒子、ニッケル粒子、ナノサイズの金属結晶、金属の表面を他の金属で被覆した粒子、銅と銀の傾斜粒子等の金属粒子や、例えば、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の樹脂粒子に金、ニッケル、銀、銅、半田等の導電性薄膜で被覆を施した粒子等が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル、N,N’−グリシジル−o−トルイジン、フェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジベート、石油系溶剤等が挙げられる。
樹脂類としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂やウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂が挙げられる。
結晶性アルコールとしては、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖、トリメチロールプロパンが挙げられる。
一液性エポキシ樹脂組成物は、好ましくは、マイクロカプセル型潜在性硬化剤とエポキシ樹脂と混合した混合物中でマイクカプセル型潜在性硬化剤を分散させる工程と、分散したマイクロカプセル型潜在性硬化剤を加熱処理する工程とを備える製造方法により得ることができる。
マイクロカプセル型潜在性硬化剤とエポキシ樹脂との混合物をミキサーやロールなどを用いて攪拌することにより、マイクロカプセル型潜在性硬化剤をエポキシ樹脂中に分散させることができる。
エポキシ樹脂中のマイクロカプセル型潜在性硬化剤を加熱処理することにより、カプセルにエポキシ樹脂が取り込まれて、貯蔵安定性が更に向上する。加熱処理の温度は、常温(25℃)より高く、コアを構成するアミンアダクトの融点又は軟化点以下が好ましい。常温より低い温度では、貯蔵安定性向上効果がほとんど得られず、アミンアダクトの融点又は軟化点より高い温度では、エポキシ樹脂との反応により硬化剤の特性が低下しやすい。処理時間は5分から72時間が生産性の観点から好ましい。
本実施形態に係る一液性エポキシ樹脂組成物は、加熱により硬化して硬化物を形成する。係る一液性エポキシ樹脂組成物及び加熱によって得られるエポキシ樹脂硬化物は、接着剤及び/又は接合用ペースト、接合用フィルムの他に、導電材料、異方導電材料、絶縁材料、封止材、コーティング材、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料等として有用である。
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.アミンアダクト粒子の合成
アミンアダクト粒子1
冷却管、等圧滴下ロート、攪拌装置を備えた3000mlの3口セパラブルフラスコに、1−ブタノールとトルエンを1/1(wt/wt)で混合した溶液824.2gに2−メチルイミダゾール288gを加え、撹拌しながらオイルバスで80℃に加熱して2−メチルイミダゾールを溶解させた。次いで、1−ブタノールとトルエンを1/1(wt/wt)で混合した混合溶媒300gにビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量173g/eq,加水分解塩素量0.01重量%)946gを溶解させた溶液を、等圧滴下ロートを用いて90分間で滴下した。滴下終了後、80℃で5時間加熱した。その後、180℃まで昇温して温度を180℃に保ち、最終的に装置内の圧力が10mmHg以下になるまで減圧した。圧力が10mmHg以下になってから、さらに2時間減圧下での加熱により溶媒を留去して、暗赤褐色の粘調液体を得た。この粘調液体を室温まで冷却して暗赤褐色の固体状アミンアダクトを得た。このアミンアダクトをジェットミルで粉砕し、平均粒径1.96μmのアミンアダクト粒子1を得た。
・平均粒径の測定方法
アミンアダクト粒子の粒径を、Malvern社製レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000:乾式測定ユニットScirocco2000)を用いて測定した。3回測定を行い、50%径(メディアン径)の平均値をアミンアダクト粒子の平均粒径とした。
2.マイクロカプセル型潜在性硬化剤の合成
マイクロカプセル型潜在性硬化剤1
冷却管、熱電対、撹拌装置を備えた3口セパラブルフラスコにアミンアダクト粒子1を45.0gとシクロヘキサン171.0gを加え、40℃に加熱した後、水1.2gを加えた。10分間攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.0gを加えて40℃で2時間反応させた。次いで50℃に昇温して6時間反応させた。反応終了後、分散液をろ過し、回収された粉末を50℃に加熱したシクロヘキサンで洗浄した。得られた粉末を、シクロヘキサン171.0gに分散させ、水1.2gとフェニルグリシジルエーテル1.8gを添加し、50℃で6時間反応させた。反応終了後、分散液をろ過し、回収された粉末を50℃に加熱したシクロヘキサンで洗浄した。得られた粉末を10mmHg以下の圧力で24時間減圧乾燥することにより溶媒を除去し、マイクロカプセル型潜在性硬化剤1を得た。
マイクロカプセル型潜在性硬化剤2
冷却管、熱電対、撹拌装置を備えた3口セパラブルフラスコにアミンアダクト粒子1を45.0gとシクロヘキサン171.0gを加え、40℃に加熱した後、水1.2gを加えた。10分間攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.0gを加えて40℃で2時間反応させた。次いで50℃に昇温して6時間反応させた。反応終了後、分散液をろ過し、回収された粉末を50℃に加熱したシクロヘキサンで洗浄した。得られた固体を、シクロヘキサン171.0gに分散させ、水1.2gとエチルへキシルアミン2.3gを添加し、50℃で2時間反応させた。反応終了後、分散液をろ過し、回収された粉末を50℃に加熱したシクロヘキサンで洗浄した。得られた粉末を10mmHg以下の圧力で24時間減圧乾燥することにより溶媒を除去し、マイクロカプセル型潜在性硬化剤2を得た。
3.一液性エポキシ樹脂組成物の調製(実施例1及び2)
マイクロカプセル型潜在性硬化剤1又は2を33gと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq,加水分解塩素量0.007重量%)67gを配合し、実施例1及び2の一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
以下、比較例のためのマイクロカプセル型潜在性硬化剤及び一液性エポキシ樹脂組成物を準備した。
マイクロカプセル型潜在性硬化剤3
冷却管、熱電対、撹拌装置を備えた3口セパラブルフラスコにアミンアダクト粒子1を45.0gとシクロヘキサン171.0gを加え、40℃に加熱した後、水1.2gを加えた。10分間攪拌した後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート3.0gを加えて40℃で2時間反応させた。次いで50℃に昇温して6時間反応させた。反応終了後、分散液をろ過し、回収された粉末を50℃に加熱したシクロヘキサンで洗浄した。得られた粉末を10mmHg以下の圧力で24時間減圧乾燥することにより溶媒を除去し、マイクロカプセル型潜在性硬化剤3を得た。
一液性エポキシ樹脂組成物(比較例1)
このマイクロカプセル型潜在性硬化剤3を33gと、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq,加水分解塩素量0.007重量%)67gを配合し、比較例1の一液性エポキシ樹脂組成物を得た。
4.マイクロカプセル型潜在性硬化剤の特性評価
実施例1及び2、並びに、比較例1の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化特性及び貯蔵安定性を以下の方法により評価した。結果を表1にまとめて示す。
(測定方法)
・硬化特性の評価
一液性エポキシ樹脂組成物について、Perkin−Elmer社製DSC7示差熱量計を用い、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30℃〜300℃、窒素雰囲気で硬化特性を測定した。硬化発熱に由来するピークの極大点の温度が115℃未満ならばAA、115℃以上120℃未満ならばA、120℃以上130℃未満ならばB、130℃以上ならばCとした。
・貯蔵安定性の評価
一液性エポキシ樹脂組成物に、同重量のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量173g/eq,加水分解塩素量0.01重量%)を加え、40℃恒温槽中で保管した。初期及び30日後における一液性エポキシ樹脂組成物の25℃での粘度を、E型粘度計を用いて測定した。30日後の初期からの粘度増加率により貯蔵安定性を判断した。粘度測定は、3°(角度)のコーンを用い、粘度が3〜40Pa・sのときは10rpm、粘度が40〜200Pa・sのときは2.5rpm、200〜1000Pa・sのときは0.5rpmの回転数で行った。30日後の粘度増加率が25%以下であればAA、50%以下であればA、100%未満であればB、100%以上であればCとした。
実施例1の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化発熱に由来するピークの極大点の温度は113.4℃(評価AA)であり、優れた低温硬化特性を示した。また、30日後の粘度増加率は4%(評価AA)であり、優れた貯蔵安定性を示した。また、実施例2の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化発熱に由来するピークの極大点の温度は112.8℃(評価AA)であり、優れた低温硬化特性を示した。また、30日後の粘度増加率は9%(評価AA)であり、優れた貯蔵安定性を示した。比較例1の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化発熱に由来するピークの極大点の温度は113.3℃(評価AA)であった。また、30日後の粘度増加率は46%(評価A)であった。
したがって、本発明に係るマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることにより、優れた低温硬化特性及び優れた貯蔵安定性を兼ね備える一液性エポキシ樹脂組成物が得られることが確認された。

Claims (3)

  1. コアに含まれるアミンアダクトとイソシアネートと活性水素基を有する化合物及び/又は水とを前記コアを分散させた分散媒中で反応させることにより、前記コアを被覆するカプセルを形成させる工程と、
    前記カプセルに、イソシアネート基、アミノ基及び水酸基のうち少なくともいずれか1種と反応する反応性官能基を有する化合物を反応させる工程と、
    反応後の混合物から粉末状のエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤を取り出す工程と、を備え、
    前記活性水素基を有する化合物が、一級アミノ基、二級アミノ基、水酸基、チオール基及びヒドラジド基から選ばれる活性水素基を有する1種又は2種以上であり、
    前記分散媒が、シクロヘキサン及び/又はヘキサンを含む、
    エポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤の製造方法。
  2. 前記反応性官能基が、水酸基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項記載のエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤の製造方法。
  3. 前記コアが質量比で50〜100%の前記アミンアダクトを含む、請求項1又は2記載のエポキシ樹脂用マイクロカプセル型潜在性硬化剤の製造方法。
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