JP2007126904A - 耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性に優れたキッチンシンク - Google Patents

耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性に優れたキッチンシンク Download PDF

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Setsuko Koura
節子 小浦
Katsumasa Anami
克全 阿波
Kazuhiko Takahashi
和彦 高橋
Hiroshi Iwata
浩史 岩田
Kenji Koshiishi
謙二 輿石
Yoichi Murata
洋一 村田
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
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Abstract

【課題】耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性が改善され、長期にわたり美麗な表面を維持するステンレス鋼製キッチンシンクを提供する。
【解決手段】シンク形状に絞り加工されたステンレス鋼板の表面に、OH基を有する酸化物層を介し有機・無機複合タイプのクリア塗膜が設けられたキッチンシンクである。クリア塗膜は潤滑性を有する樹脂粉末や艶消し外観を呈する無機粉末を含み、酸化物層はSiO2,TiO2,ZrO2,Al2O3等を主成分としている。樹脂粉末には、フッ素樹脂粉末,ポリエチレン-フッ素樹脂複合粉末,ポリアクリロニトリル樹脂粉末,シリコーンレジン粉末等がある。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性を改善する表面処理が施されたステンレス鋼製キッチンシンクに関する。
ステンレス鋼製キッチンシンクは、ステンレス鋼本来の靭性,弾性等の特性を活用し、不用意に茶碗等の食器を落としても割れ発生に至らない長所を呈する。しかし、表面硬度が低く、疵付き汚れ易いことが欠点である。ステンレス鋼製キッチンシンクは、ステンレス鋼特有の美麗な外観も長所の一つであるが、疵や汚れは外観を著しく損ねる。そのため、耐疵付き性,耐汚染性を改善するため、従来から種々の方法が提案されている。
たとえば、疵を目立たなくするためエンボス加工でステンレス鋼板表面に複数の凹凸を形成させること(特許文献1,2),無機酸化物からなる膜厚:100nm以下の防錆皮膜を形成して汚れ防止を図ること(特許文献3),膜厚:0.1〜50μmの金属酸化物皮膜により耐疵付き性,防汚性を改善すること(特許文献4)等
特開2001-246433号公報 特開2004-137796号公報 特開2001-173056号公報 特開2004-76071号公報
エンボス加工で凹凸を付けたキッチンシンクでは、陶器の底面で削られてできる疵は目立たなくなるものの、凸部が疵付くことには変わりない。清掃時にタワシでステンレス鋼板表面を擦ると、タワシの穂先が達する凹部にも細かな疵が付く。すなわち、凹凸付与で疵が目立たなくなるが、耐疵付き性の改善は期待できない。
金属酸化物皮膜を100nm以下の薄膜で形成すると、初期防汚性は改善されるが耐久性に問題がある。金属酸化物皮膜の厚膜化により疵が付きにくくなり、親水性が付与され耐防汚性も向上する。しかし、実質的には5μm以下の膜厚を得ることしかできない。しかも、金属酸化物皮膜は硬質であるが脆いため、長期にわたって耐疵付き性を維持できない。温水に曝される頻度の高いキッチンシンクでは、密着性不足に起因する皮膜剥離も懸念され、皮膜剥離によって初期の機能を維持できなくなる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、密着性を改善する酸化物層を介して有機・無機複合クリア塗膜をステンレス鋼板表面に設けることにより、耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性に優れたステンレス鋼製キッチンシンクを提供することを目的とする。
本発明のキッチンシンクは、シンク形状に絞り加工されたステンレス鋼板を基材とし、潤滑性を有する樹脂粉末及び/又は艶消し外観を呈する無機粉末を含む有機・無機複合クリア塗膜がOH基を有する酸化物層を介し基材表面に設けられていることを特徴とする。基材には、ステンレス鋼板のBA材が通常使用されるが、酸洗,研磨等で表面仕上げすることもできる。
OH基を有する酸化物層,クリア塗膜の形成は絞り加工の前後何れでも良いが、加工に伴う欠陥導入を考慮するとシンク形状に加工されたステンレス鋼板を前処理し塗装することが好ましい。OH基を有する酸化物層は、好ましくはSiO2,TiO2,ZrO2,Al23の一種又は二種以上を主成分とし、0.01〜1.0μmの膜厚で形成される。
OH基を有する酸化物層を介して設けられる有機・無機複合クリア塗膜は、潤滑性を有する樹脂粉末及び/又は艶消し外観を呈する無機粉末をバインダで固定した膜厚:1〜30μmの塗膜である。バインダは、アルコキシシランを含むオルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物:20〜70質量%,不飽和エチレン性単量体の重合体又は共重合体:20〜70質量%,コロイダルシリカ:10〜60質量%の組成に調整されている。
潤滑性を有する樹脂粉末にはフッ素樹脂粉末,ポリエチレン-フッ素樹脂複合粉末(ポリエチレン樹脂の粒子表面にフッ素樹脂粒子が結合した粉末),ポリアクリロニトリル樹脂粉末,シリコーンレジン粉末の一種又は二種以上が使用され、粒径:1〜30μmの樹脂粉末を1〜20質量%配合することが好ましい。艶消し外観を呈する無機粉末としてはシリカ粒子が一般的であり、艶消しによりゴミ,ブツ等の視認性を低下させると落ち着いた外観を呈する塗膜が得られる。
耐疵付き性付与のためにシンク基材を被覆する際、硬質の無機皮膜を形成することが一般的である。しかし、無機皮膜で表面を硬質化しても、耐疵付き性が必ずしも良好にならない。これは、無機皮膜は硬質であるが脆いため、荷重をかけた研磨紙を皮膜表面に押し付けて面内方向に移動させると、皮膜が局部的に破壊され視認性の高い疵が付きやすいことからも理解できる。
皮膜破壊に起因する疵付きの防止策として潤滑性を有する樹脂粉末の配合が考えられるが、クリア感を出すため無機皮膜の膜厚上限を10μm程度にする必要があり、潤滑性発現に必要な量の樹脂粉末を確保できない。そこで、クリア塗膜と耐疵付き性との関係を種々調査・検討した結果、有機・無機複合タイプにすることにより鉛筆硬度:5H以上のクリア塗膜が得られ、耐疵付き性も大幅に向上することを見出した。
有機・無機複合タイプのクリア塗膜では、シリカ分が多く、アクリルシリコーンの有機成分がある程度含まれるため、無機塗膜としての硬度を十分維持しながら、アクリルシリコーンによって柔軟性が付与されている。そのため、塗膜表面に押し付けた研磨紙を面内方向に移動させても、疵付きの原因である塗膜破壊が生じ難い。しかも、塗膜表面に露出したアクリルシリコーン成分の潤滑作用も期待できる。このようなことから、耐疵付き性が改善されたものと考えられる。
潤滑性を有する樹脂粉末を有機・無機複合タイプのクリア塗膜に配合すると、樹脂粉末の潤滑作用が重畳され耐疵付き性が一層向上する。潤滑性を有する樹脂粉末としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン),PE(ポリエチレン)-PTFE,PAN(ポリアクリロニトリル),シリコーンレジン等の樹脂粉末を単独添加しても耐疵付き性が改善されるが、PTFE,PANを混合添加し、或いはこれらを混合添加すると更に耐疵付き性が向上する。
有機・無機複合タイプのクリア塗膜では、塗膜表面に存在するアクリルシリコーン成分により非粘着性が付与されており、サラダ油等の汚れが付着しても塗膜表面との結合力が弱いので流水洗浄で容易に除去される。その結果、防汚性に優れ、長期にわたって美麗な外観が維持される。
耐温水性は、ステンレス鋼板の表面状態,鋼板表面の酸化物層に大きく影響される。シンク基材に常用されているステンレス鋼板のBA材は、加工後に十分脱脂しても温水環境下での塗膜密着性に劣る。低い塗膜密着性は、ステンレス鋼板表面の酸化皮膜にSi,Mn等の酸化物が焼鈍時に濃縮することに原因がある。すなわち、化学的に不活性なSi,Mnの酸化物がステンレス鋼板表面に濃縮すると、鋼板表面が塗料で濡れ難くなって鋼板表面/塗料の結合が得られない部分も存在するため、耐温水性に劣るものと考えられる。
酸洗や研磨でステンレス鋼板を表面仕上げすると、Si,Mnの濃化層が表面から除去され塗膜密着性が向上する。しかし、表面仕上げだけでは温水環境下での塗膜密着性が十分に改善されないので、ステンレス鋼板基材/塗膜の界面にOH基を多く有する酸化物層を設けている。OH基を多く有する酸化物層は、基材表面,塗膜との結合点を増加させて塗膜密着性を向上させるだけでなく、温水の浸入をも抑制しているものと推察される。OH基を多く有する酸化物層を形成することにより、BA材でも耐温水性が向上する。
〔基板材料〕
シンク基材には、所定形状に深絞り加工できる材料である限り鋼種に制約を受けるものではないが、具体的にはオーステナイト系,フェライト系等のステンレス鋼板が使用される。ステンレス鋼板のBA材を研磨,酸洗等で表面仕上げすると、塗膜密着性に有害なSi,Mnの濃化層が除去された表面に改質される。ステンレス鋼板は、シンク形状に加工された後、必要に応じアルカリ脱脂,酸洗,リン酸塩処理等の前処理が施される。
〔酸化物層〕
前処理したステンレス鋼板をシンク形状に加工した後、酸化物前駆体の水性分散液を塗布し、300℃以下で焼成することによりOH基を有する酸化物層が形成される。BA材の表面に濃化するSi,Mnの酸化物は、900℃以上の温度で形成されるためOH基や結晶水を全く含まない不活性な酸化物となる。他方、酸化物前駆体の水性分散液を塗布し300℃以下で焼成することにより得られる酸化物層は、多くのOH基や結晶水を含んでいる。生成した酸化物層のOH基がステンレス鋼基材及び塗料中のOH基と脱水縮合反応するので、強固な結合が得られる。
水性分散液は、Si,Ti,Zr,Alの水酸化物やアルコキシドの加水分解物,水和酸化物等の酸化物前駆体を主成分とし、好ましくは乾燥膜厚が0.01〜1.0μmとなる塗布量でシンク基材に塗布される。薄すぎる酸化物層ではシンク基材の全表面を覆う均一皮膜になりがたく、温水環境下での塗膜密着性の低下が懸念される。逆に厚すぎると、膜厚変動や凝集破壊が生じやすくなる。
目標とする酸化物層をステンレス鋼板表面に形成させるためには水性分散液の水分を飛ばす必要があり、100℃未満でも時間をかけると乾燥されるが、100℃以上に加熱すると短時間に水分を飛ばすことができる。しかし、加熱温度が高すぎるとゲル内の付着水,結晶水の消失に起因して膜質が変化するので、焼付け温度の上限を300℃に設定することが好ましい。
〔クリア塗膜〕
OH基を有する酸化物層を形成した後、潤滑性を有する樹脂粉末及び/又は艶消し外観を呈する無機粉末を含む塗料を塗布し焼き付けることにより、有機・無機複合クリア塗膜を形成する。有機・無機複合クリア塗膜のバインダは、シリカ,オルガノアルコキシシラン,オルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物からなる固形分及び不飽和エチレン性単量体の重合体又は共重合体を水,アルコール等の溶媒に分散混合することにより調製される。
シリカにはコロイダルシリカがあり、高分子量の無水ケイ酸を水,アルコール等の溶媒に分散させた状態で使用される。コロイダルシリカは、平均粒径:150nm以下(更には、30nm以下),配合量:10〜60質量%で水,アルコール等の溶媒に分散させることが好ましい。
有機・無機複合バインダに含まれるオルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物は、一般式:R1Si(OH)3で表されるオルガノヒドロキシシラン又はその部分縮合物であり、一般式:R1Si(OR2)3で表されるオルガノアルコキシシランを酸性のコロイダルシリカ分散液中で加水分解することにより用意される。式中、R1は炭素数1〜3のアルキル基,ビニル基,3,4-エポキシシクロヘキシルエチル基,γ-グリシドキシプロピル基,γ-メルカプトプロピル基又はγ-クロロプロピル基、R2は炭素数1〜4のアルキル基,炭素数1〜4のアルコキシエチル基又はアリール基である。
塗膜硬度を考慮すると、メチルヒドロキシシランが好ましいが、他のオルガノアルコキシシランを少量混合することも可能である。オルガノアルコキシシランの80質量%以上がメチルヒドロキシシランであることが好ましい。
オルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物の添加量は、バインダ組成物の固形分総量に対して20〜70質量%の範囲で選定される。オルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物が20質量%未満では塗膜の密着性が低下し、逆に70質量%を超えると耐疵付き性が低下する。
有機・無機複合バインダの有機ソースとなる不飽和エチレン性単量体には、メチルアクリレート,エチルアクリレート,2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート,t-ブチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート,n-ブチル(メタ)アクリレート,イソブチル(メタ)アクリレート,グリシジル(メタ)アクリレート,ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート,ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート,メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート,メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート,アリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルが挙げられる。不飽和エチレン性単量体にスチレン等の他の単量体を少量添加することもできる。
不飽和エチレン性単量体の重合体又は共重合体の添加量は、有機・無機複合バインダの固形分総量に対し20〜70質量%の範囲で選定される。20質量%未満の添加量では、造膜可能な膜厚が最高でも数μmに留まり、熱収縮等で塗膜にクラックが発生することを防止できない。逆に70質量%を超える添加量では、塗膜硬度が低下して十分な耐疵付き性が得られない。
有機・無機複合バインダの溶媒には、低級脂肪族アルコール,グリコール誘導体等の混合溶媒が使用され、水性コロイダルシリカ等に由来する少量の水を含むこともある。低級脂肪族アルコールには、メタノール,エタノール,プロパノール,イソプロパノール。n-ブタノール,t-ブタノール等がある。グリコール誘導体には、エチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,エチレングリコールモノエチルエーテル,エチレングリコールモノブチルエーテル,酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等がある。
有機・無機複合バインダは,保存安定性を維持するためpH3〜6.5(更には、pH3〜5)の範囲に調整することが好ましい。pH調製には、アンモニア水の他にトリエタノールアミン,ジメチルアミノエーテル等の有機アミン類も使用できる。
有機・無機複合クリア塗膜に含ませる樹脂粉末としては、潤滑性を有する限り樹脂種に制約を受けないが、フッ素樹脂粉末,ポリエチレン-フッ素樹脂複合粉末,ポリアクリロニトリル樹脂粉末,シリコーンレジン粉末等が好適な樹脂粉末である。ポリエチレン-フッ素樹脂複合粉末は、加熱・軟化したポリエチレン樹脂粒子にフッ素樹脂粒子を接触させることにより、ポリエチレン樹脂粒子にフッ素樹脂粒子を吸着させて複合化した粉末を用いる。樹脂粉末は単独添加も可能であるが、複数種の樹脂粉末を混合することにより耐疵付き性が一層向上する。
樹脂粉末は、平均粒径:1〜30μmの粉末が好ましい。粒径が1μmに達しない微粉末では凝集しやすく、有機・無機複合バインダに分散させ難い。逆に粒径が30μmを超える樹脂粉末は、塗膜表面に大きな突起となって分布し、摩耗時に脱落しやすくなる。樹脂粉末の添加量は、塗膜全体を基準として1〜20質量%の範囲で選定する。添加量が1質量%未満では潤滑性向上に有効な樹脂粉末の効果が不十分であり、逆に20質量%を超えると塗膜のクリア感が損なわれる。
クリア塗膜表面の艶消しによりゴミやブツの視認性を下げ落ち着いた外観を付与するため、艶消し外観を呈する無機粉末を有機・無機複合クリア塗膜に分散させても良い。無機粉末としては、一般的に平均粒径:1〜10μmのシリカ粒子が使用される。平均粒径が1μm未満の微粉末では塗料に対する分散性が悪く、逆に10μmを超える粒径では潤滑性発現に有効な樹脂粉末の特性が損なわれかねない。この種の無機粉末は、塗膜全体を基準として20質量%以下の割合で添加される。
樹脂粉末,無機粉末を有機・無機複合バインダに配合した塗料は、乾燥膜厚:1〜30μmのクリア塗膜が形成される塗布量でシンク基材に塗布され、150〜300℃で焼き付けられる。1μm未満の薄膜では均一塗布が困難であり、30μmを越える厚膜では塗膜硬度,ひいては耐疵付き性が低下する。焼付け温度が150℃に達しないと有機・無機複合塗膜の縮重合が十分に進展せず密着不良を引き起こしやすいが、300℃を超えると塗膜にクラックが入り温水環境下での塗膜密着性が低下する虞がある。
このようにしてクリア塗装されたステンレス鋼製キッチンシンクは、耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性に優れ、長期にわたって冷水,温水等の流水に曝される環境下でも美麗な外観を維持する。また、白っぽい艶消し調で高級感のある外観を呈するので、システムキッチンとして設置した場合に周辺家具と良く調和し、印象的な厨房環境を醸し出す。
酸性の水性コロイダルシリカ分散液:21.2g(平均粒径:10〜20nm,固形分:20質量%)をメタノール性コロイダルシリカ分散液:38.8g(平均粒径:10〜20nm,固形分:30質量%)と混合した後、メチルメトキシシラン:13.9gを加え、室温で5時間攪拌することにより加水分解を完了させた。得られた生成物にイソプロパノールを添加し、固形分:20質量%のコロイダルシリカ,オルガノアルコキシシランの分散液Aを得た。
他方、メチルメタクリレート:20g,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:10gの混合物をイソプロパノール:20g,エチレングリコールモノブチルエーテル:50gの混合溶媒で希釈し、80℃で6時間重合させることにより、不飽和エチレン性単量体の重合体又は共重合体として固形分:30質量%の樹脂溶液Bを得た。
分散液A:83gと樹脂溶液B:22gを混合し、pH4.5の有機・無機複合バインダを調製した。この有機・無機複合バインダに平均粒径:3μmのPE-PTFE,平均粒径:10μmのPAN,平均粒径:5μmのシリコーンレジン,平均粒径:3.5μmのシリカ粒子を加えることにより、有機・無機複合タイプのクリア塗料を用意した。
塗装原板には各種仕上げを施した板厚:0.7mmのSUS304ステンレス鋼板を用い、シンク形状に絞り加工した。成形後のシンク基材をアルカリ脱脂した後、酸化物前駆体の水性分散液で処理し、120℃×20分の乾燥で酸化物層を形成した。次いで、クリア塗料をスプレーし、200℃×20分の焼成で膜厚:5μmのクリア塗膜を形成した。
ステンレス鋼板の表面に設けた酸化物層及び有機・無機複合クリア塗膜を表1に示す。
Figure 2007126904
塗装されたステンレス鋼製キッチンシンクの底部から試験片を切り出し、疵付き試験,汚染試験,温水試験に供した。
〔疵付き試験〕
土鍋の底と粗さ,硬さが同じ耐水ペーパを貼り付けた直径:30mmの金属棒を荷重:1kgで塗膜面に対して直角にセットし、ストローク:50mm,100往復/分の条件で塗膜を金属棒で擦った。1000往復後に塗膜面を観察し、全面が著しく疵付いた塗膜を×,基板に達する1〜5本の疵が付いた塗膜を△,基板に達する疵はないが疵付きが視認される塗膜を○,基板に達する疵がなく疵付きも目立たない塗膜を◎として耐疵付き性を評価した。
〔汚染試験〕
塗装鋼板にサラダ油:1mlを滴下し、水道水を1分間流しつづけた後、外観を観察した。サラダ油が歴然と残存している塗膜を×,僅かに残存している塗膜を△,残存が検出されなかった塗膜を○として耐汚染性を評価した。
〔温水試験〕
85℃の温水に塗装鋼板を168時間連続浸漬した後、乾燥し、テープ剥離試験で温水環境下での塗膜密着性を調査した。10面積%以上の剥離が生じた塗膜を×,点状に剥離した塗膜を△,全く剥離しなかった塗膜を○として耐温水性を評価した。
表2の調査結果にみられるように、有機・無機複合クリア塗膜を形成するとSUS304の表面仕上げに拘わらず、耐疵付き性に優れた塗装鋼板となることが判る。耐疵付き性は、粉末を含有していない層構成Fでも付与されているが、PTFE,PANを複合添加した層構成C,L,R,TやPTFE,シリコーンレジンを複合添加した層構成E,NやPE-PTFE,シリコーンレジンを複合添加した層構成H,Qでは耐疵付き性が一層向上している。艶消し外観を得るためにシリカを添加しても、優れた耐疵付き性が維持されている。
耐汚染性は、粉末含有の有無に拘わらず有機・無機複合クリア塗膜の形成により改善されていた。
耐温水性は、OH基を多く有する酸化物層を介して有機・無機複合クリア塗膜を形成することにより、SUS304の表面仕上げに拘わらず向上していた。ただし、BA仕上げに比較すると、酸洗仕上げや研磨仕上げの方が耐温水性に有効であった。
比較例1
表1の層構成Eにおいて、有機・無機複合バインダから有機成分を除いた無機塗膜とする以外は、実施例1と同様にSUS304酸洗仕上げ材の表面に膜厚:5μmのクリア塗膜を形成した。得られた塗装鋼板は、鉛筆硬度:9Hと塗膜硬度が高いものの、疵付き試験では原板に達する疵が発生し(△)、有機・無機複合クリア塗膜に比較して耐疵付き性に劣っていた。
比較例2
表1の層構成Eにおいて、フッ素樹脂塗料を使用する以外は、実施例1と同様にSUS304酸洗仕上げ材の表面に膜厚:5μmのクリア塗膜を形成した。得られた塗装鋼板は、鉛筆硬度:Fと柔らかく、疵付き試験でも原板に達する疵が著しく発生し(×)、耐疵付き性が極端に劣っていた。
Figure 2007126904
板厚:0.7mmのSUS430ステンレス鋼板を塗装原板に使用する外は、実施例1と同じ条件下でクリア塗膜を形成し、耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性を調査した。
表3の調査結果にみられるように、SUS430ステンレス鋼板を使用した場合でも、表面仕上げの如何に拘わらず有機・無機複合クリア塗膜の形成により耐疵付き性,耐汚染性が改善された。耐温水性も、OH基を多く有する酸化物層を介して有機・無機複合クリア塗膜を設けることにより、表面仕上げの如何に拘わらず改善された。ただし、BA材に比較して酸洗仕上げ材や研磨仕上げ材の方が確実に耐温水性が向上していた。
Figure 2007126904
以上に説明したように、本発明のキッチンシンクは、OH基を有する酸化物層を介して有機・無機複合クリア塗膜をステンレス鋼板表面に設けているので、耐疵付き性,耐汚染性,耐温水性に優れ、長期にわたって美麗な表面を維持する製品として重宝される。しかも、白味がかった艶消し調の外観を呈するため、ステンレス鋼特有の冷たい金属感が抑えられ、周辺家具と調和しやすく高級感のある厨房雰囲気を醸し出す。OH基を有する酸化物層,有機・無機複合クリア塗膜の組合せによりもたらされる特性改善は、キッチンシンクに留まらず、耐温水性が要求される浴槽,浴室の壁,キッチンパネル,キッチン天板,レンジフード等にも応用できる。

Claims (5)

  1. シンク形状に絞り加工されたステンレス鋼板を基材とし、潤滑性を有する樹脂粉末及び/又は艶消し外観を呈する無機粉末を含む有機・無機複合クリア塗膜がOH基を有する酸化物層を介して基材表面に設けられていることを特徴とするキッチンシンク。
  2. 基材が酸洗仕上げ又は研磨仕上げされたステンレス鋼板である請求項1記載のキッチンシンク。
  3. 酸化物層がSiO2,TiO2,ZrO2,Al23から選ばれた一種又は二種以上を主成分としている請求項1記載のキッチンシンク。
  4. 有機・無機複合クリア塗膜のバインダが、アルコキシシランを含むオルガノアルコキシシラン部分加水分解縮合物:20〜70質量%,不飽和エチレン性単量体の重合体又は共重合体:20〜70質量%,コロイダルシリカ:10〜60質量%の組成をもつ請求項1記載のキッチンシンク。
  5. 潤滑性を有する樹脂粉末がフッ素樹脂粉末,ポリエチレン-フッ素樹脂複合粉末,ポリアクリロニトリル樹脂粉末,シリコーンレジン粉末から選ばれた一種又は二種以上である請求項1記載のキッチンシンク。
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