JP2007125829A - インクタンク及びインクカートリッジ - Google Patents

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Abstract

【課題】インク保持体としての多孔質体を使用せず、大気導入口を設けることなく、使用済みの際にインク残量を実質的に「0」とすることができるインクジェット式プリンタにインクを供給するためのインクタンク及びこのインクタンクを使用したインクカートリッジを提供すること。
【解決手段】本発明のインクタンク10は、インク収容部16、負圧発生部12及びプリンタヘインクを供給するインク供給部13を備え、負圧発生部12はそれぞれ微小断面の通路18(一方は図示せず)を介してインク収容部16及びインク供給部13へ連通され、インク収容部16は剛性材料からなるインクタンク10の外周枠11の両側壁を極薄の可撓性フィルム23、24で密閉した構成を備え、かつ極薄の可撓性フィルム23、24の一方は、負圧発生部12とインク収容部16との間の通路18を構成するように、負圧発生部12の側壁と一体に接着された構成を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット式プリンタにインクを供給するためのインクタンク及びこのインクタンクを備えたインクカートリッジに関し、特にインク保持体としての多孔質体を使用せず、大気導入口を設けることなく、使用済みの際にインク残量を実質的に「0」とすることができるインクジェット式プリンタにインクを供給するためのインクタンク及びこのインクタンクを使用したインクカートリッジに関する。
従来から、インクジェットプリンタで使用されるインクカートリッジ内でインクを保持させる部材として、スポンジに代表される多孔質体が採用されていた。その理由としては、プリンタの画像印刷範囲を往復動するキャリッジにカートリッジを搭載するためにインクのみを容器に収納すると、インクが内部で空気と共に激しく動き、気泡を発生させるが、その状態で使用を継続して行くと、やがてその気泡がインク供給を分断することによる「カスレ」等の致命的問題を誘発するので、これを防止することが目的である。この多孔質体は、細かなセルを有する連続気泡の発砲体であるが、インクを保持できるセルの全容積は多孔質体の約50%程度しかなく、しかも容器に圧縮収納しているため、インクの充填量に対し大型なカートリッジになるという大きな制約を有している。
なお、従来から、このような多孔質体内でのインクの移動原理は圧縮による毛細管力によるものとされている(下記特許文献1及び2参照)が、従来の多孔質体内のインクの移動が「毛細管力作用」であるなら使用後のインク残量は限りなく「0」に近くなる筈であるが、実際には約30%もの残インクが存在する。このことは、多孔質体をいかに圧縮しても毛細管力は安定して得られないだけでなく、多孔質体内でのインクの移動は、毛管力というよりは、インクの消費により発生した負圧が負圧上位の箇所から負圧の下位の箇所に向かって伝播することにより行われるものであることを示している。
そのため、多孔質体を用いたインク保持体が正常に機能するためには各セルに均一にインクが充填されていることが必須条件であるが、多孔質体の充填装置や多孔質体の安定化に問題が多いため、インク保持体として多孔質体を使用した従来品は印字品質に問題が生じることが多かった。この理由としては、多孔質体の各セル内でのインクがバランスよく移動せず、ある箇所で大気によるリークが発生するためで、一度大気がリークするとインクがこのリークを修復することができず、インクは移動手段を失うので永久に移動できなくなる。
このように、従来からインクカートリッジに多く使用されている多孔質体は、圧縮収納した孔質体中での各セルのインク移動を安定させるために予め多孔質体を界面活性剤等で前処理する必要がある等の煩わしさがあった。しかも、この多孔質体のカートリッジヘの装着工程は圧縮収納工程であるため実施困難である上、収納後の多孔質体の状態はセル配列等の安定性に欠けるなど管理不能な欠点が多いという問題点が生じている。
更に、従来の多孔質体を用いたインクカートリッジにおいては、使用時にインクの流れを大気の流入によって確保するため、大気導入孔を設けて大気がインクカートリッジ内に流入できるようにすることが必要不可欠であった。従って、インク漏れを防止するために、インクカートリッジの使用前には大気導入孔をシールして流通に供し、インクカートリッジの使用前に顧客に所定のシールを剥がすよう促している。
しかし、実際にシールテープを剥がす際には多くの問題点が存在している。すなわち、これらシールを剥がす際のテープの引っ張る方向、速さ等によって、時に内部のインクが飛び散り、手や衣服を汚すトラブルを誘発している。加えて、顧客により剥がしてはならないシールまで剥がされてしまうこともあった。
このような従来品のシールテープを剥がす際の問題を防止するため、インクカートリッジの構成は複雑化してきている。例えば、インク保持容器の内部空気を脱気(減圧)しながら密封用のシールテープを溶着することで、開封時に大気をインク保持容器内へ積極的に流入させてインクを外部へ飛散させない構成としたものが存在するが、これに係る生産設備はかなり大掛かりでコスト的に問題である。更には、インクの飛散防止対策を施したインクカートリッジ(下記特許文献3参照)も知られている。
特開平 7−68774号公報(段落[0003]) 特開平 7− 76098号公報(段落[0004]) 特開2005−153506号公報(特許請求の範囲)
上述のように、従来の多孔質体を用いたインクカートリッジは、その多孔質体内のセルをインクが移動し易いように前処理工程を必要とする外、多孔質体のカートリッジヘの装着は圧縮収納のため工程が実施困難である上、収納後の多孔質体の状態もセルの配列等の安定性に欠け、管理不可能な欠点が多く、しかも、多孔質体の収納状態のバラツキ等に起因してインク残量も多く、印字品質の低下等インクカートリッジの性能を大きく左右する不安定要素が多いという問題点が存在していた。更に、従来の多孔質体を用いたインクカートリッジは、その性能を維持するために、多孔質体内部のセルに存在する空気を全て除去した上でインクを注入させる必要があるため、非常に大掛かりな生産設備を要する上、時間の係る工程を必要とするという問題点も存在している。
加えて、従来の多孔質体を用いたインクカートリッジは、大気導入孔を設けて大気がインクカートリッジ内に流入できるようにすることが必要不可欠であるため、インク漏れを防止するためにインクカートリッジの使用前には大気導入孔をシールして流通に供し、インクカートリッジの使用前に顧客に所定のシールを剥がさせる必要があるという問題点も存在している。
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、従来技術のように多孔質体を使用することなく部品点数の低減を図りつつ、印字品質の安定化を図ることができるとともに、使用済の時のインク残量を低減することができ、しかも、透明な可撓性フィルムを用いることにより、インク注入後及び使用途中のインク収容部の状態等を全て外部から確認することができるようにしたインクタンクを提供することにある。
更に、本発明の第2の目的は、上述のようなインクタンクを使用したインクカートリッジを提供することにある。
上記第1の目的を達成するため、請求項1に係るインクタンクの発明は、インク収容部、負圧発生部及びプリンタヘインクを供給するインク供給部を備え、前記負圧発生部はそれぞれ微小断面の通路を介して前記インク収容部及びインク供給部へ連通され、前記インク収容部は剛性材料からなる前記インクタンクの外周枠の両側壁を極薄の可撓性フィルムで密閉した構成を備え、かつ前記極薄の可撓性フィルムの一方は前記負圧発生部の側壁と一体に接着されていることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のインクタンクにおいて、前記可撓性フィルムは、それぞれの総厚が0.01mm以上0.06mm以下であり、かつ、前記インク収容部内にインクを注入する前にはインク収容部で両側の前記可撓性フィルムが密接できる形状となされていることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載のインクタンクにおいて、前記可撓性フィルムは前記インクタンクの容量及び形状に応じて予め形状加工されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項1に記載のインクタンクにおいて、前記主構造体は、前記負圧発生部に直結した負圧発生部用インク注入口と、前記インク収容部用インク注入口とをそれぞれ独立に備えていることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載のインクタンクにおいて、前記インク収容部は大気導入孔を備えていないことを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、請求項4に記載のインクタンクにおいて、前記インク注入口は、ゴム又は樹脂製の栓、又は、ゴム又は樹脂製の栓とフィルムにより密閉されていることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明は、請求項1に記載のインクタンクにおいて、前記インク収容部と負圧発生部との連通位置は、前記主構造体の底辺に接する箇所に設けられていることを特徴とする。
また、請求項8に係る発明は、請求項7記載のインクタンクにおいて、前記インク収容部と負圧発生部との連通位置は、前記主構造体の底辺に設けた傾斜の最下点になるように構成されていることを特徴とする。
また、請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれかに記載のインクタンクにおいて、前記負圧発生部とインク収容部との間を連通する通路及び前記負圧発生部とプリンタヘインクを供給するインク供給部との間を連通する微小断面の通路は、それぞれ断面最長径が0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする。なお、インクの経路となる第1連通路及び第2連通路の断面形状は任意であるが、本発明における断面最長径とは通路の断面の最も長い部分の寸法を意味する。
更に、上記第2の目的を達成するため、請求項10に係るインクカートリッジの発明は、請求項1〜9の何れかに記載のインクタンク及びプリンタへの装着用部材とからなることを特徴とする。
また、請求項11に係る発明は、請求項10に記載のインクカートリッジにおいて、前記プリンタへの装着用部材は前記インクタンクの外周枠の周壁に直接取り付けられていることを特徴とする。
また、請求項12に係る発明は、請求項10に記載のインクカートリッジにおいて、前記プリンタへの装着用部材は内部に前記インクタンクを収納する部材からなることを特徴とする。
本発明は上記のような構成を備えることにより以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る発明のインクタンクは、従来例のような多孔質体等のインク保持体を有しておらず、プリンタの記録ヘッドによって消費されたインクはインク供給部及び微小断面の通路を介して負圧発生部内に負圧を生じさせるが、この負圧によりインク収容部内のインクは微小断面の通路を介して負圧発生部内に引き出される。そして、インク収容部内のインク容量が減少するに従ってインクタンクの両側壁を構成している極薄の可撓性フィルムが変形することによりインク収容部の容積も縮小し、負圧発生部へのインク供給はインク収容部を構成している可撓性フィルムの変形で順応することにより継続される。従って、従来品に比べてインクの移動がスムーズになり、印字品質及びインクの利用効率について大幅な改善を図ることができる。しかも、インク収容部内はインクのみしか存在しないことから、従来例のような多孔質部材が占める無駄な容積が小さくなるとともに、インクを使い終えた段階でインク収容部内の残インク量を極めて少なくすることができる。なお、本発明における「接着」とは、接着剤によるものでも溶着によるものでもかまわないが、特に熱溶着によるものが簡便であるため好ましい。
また、請求項2に係る発明によれば、可撓性フィルムの厚さが極めて薄く、しかも、インク収容部内にインクを注入する前にはインク収容部で両側の前記可撓性フィルムが密接できる形状となされており、実使用に供してはインクの消費に追従してフィルムは内側へ撓みながら、安定的にインクをプリンタに供給するため、印字品質及びインクの有効利用等大幅な改善を図ることができ、しかも、インクを使い終えた段階でインク収容部内の残インク量を限りなく「0」にすることができるのでインクの利用率が非常に効率的となる。
また、一般に可撓性フィルムの接着に際して中央部をたるませた状態では溶着部にしわが発生しないようにして正確に接着することは困難であるが、請求項3に係る発明によれば、ヒートプレス等の方法により、予め形状加工しているので、中央部をたるませた状態でも接着部にしわができないように接着することができるため、密閉度の向上が図れ、しかも、インクを使い終えた段階でインク収容部内の残インク量を容易に「0」近くにすることができるようになる。なお、可撓性フィルムを平らな状態で接着部にしわが生じないように接着した後、バリスターパック製法のように熱をかけて形状を整えることによって請求項3に係る発明の構成を備えるようにしてもよい。
また、請求項4に係る発明によれば、負圧発生部とインク収容部及びインク供給部とは微小断面の通路を介して接続されているため、インク供給部をシールした後に、負圧発生部用インク注入口から負圧発生部全体を吸引して真空に近い減圧状態を維持した後、インクを注入して全域にインクを充填させると、インク収容部は両側壁が可撓性フィルムで形成されているため、両側の可撓性フィルムは実質的に密接状態となっているので、インク収容部のインク注入口から分注器等により容易にインクを注入することができる。
また、請求項5に係る発明によれば、インクは負圧発生部及びインク供給部を経由してプリンタ等の記録ヘッドに供給されるが、この時インク収容部を構成している可撓性フィルムがインク容積変化に順応して内側へ萎んでインクの流れを阻害しないため、従来の多孔質体をインクタンク内に収納する方式の場合に必須である大気導入孔を必要としない。そのため、請求項5に係る発明のインクタンクは、完全密閉のまま、物流、実使用することができ、これにより気温、気圧等に関する耐候性向上と、振動、落下等の耐輸送性に大きな効果を発揮するとともに、従来例のように大気導入孔のシールテープを剥がす必要もなくなり、顧客に対して余分な作業等を強いる等、従来例の有する問題点から完全に開放させ、包装材から取り出してそのままプリンタにセットして使用することができるようになる。
また、請求項6に係る発明によれば、インクタンク内にインクを注入するためにインク注入孔を設ける必要があるが、インク注入後にインク収容部内から完全に空気を排除した後、ゴム又は樹脂製の栓、又は、ゴム又は樹脂製の栓と熱溶着フィルムによりインク注入孔を密閉すると、インク収容部内でのインクの往復動によるインクの泡立ちを防止することができ、しかも、インク消費の際の減圧を確実に可撓性フィルムの変位に変換することができるようになる。
また、請求項7に係る発明によれば、インクは消費されて最後はインク収容部の最下点に集まるので、負圧発生部への連通位置は主構造体の底辺に接する箇所に設けることでインクの流れが助長され、最後のインクまで消費させることができるようになる。
また、請求項8に係る発明によれば、負圧発生部へのインク供給出口に向かうインクの流れが安定的に促進され、インク収容部から負圧発生部へのインクの流れがスムーズになる。
また、請求項9に係る発明によれば、負圧発生部とインク収容部との間を連通する通路及び前記負圧発生部とプリンタヘインクを供給するインク供給部との間を連通する微小断面の通路は、断面最長径が0.1mm以上3mm以下で負圧伝達を確実にするのでインクの流れがスムーズとなり、良好な印字品質を与える。この断面最長径は、3mmを超えるとインクが消費されても負圧発生部12内に十分な負圧を伝達できず、インクの移動に支障を招き、また、0.1mm未満であるとインクが詰まりやすくなるので、いずれも印字品質上好ましくない。
更に、請求項10に係る発明によれば、請求項1〜9の何れかに記載のインクタンクに対してそれぞれのプリンタへの装着用部材を設けることによりインクカートリッジとして使用できるようになる。
また、請求項11に係る発明によれば、それぞれのプリンタへの装着用に必要な部材をインクタンクの外周枠に直接取りつけることにより、簡単な構成のインクカートリッジが得られる。
更に、請求項12に係る発明によれば、各種プリンタに対応したインクカートリッジに組み合わせて使用する内部のインクタンクとしたため、多種多様なプリンタに対して単に収納部材を変えるだけで適用できるようになるため、それぞれのプリンタに合わせてインクカートリッジを作製するというような無駄を省くことができるようになる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するためのインクタンク及びこれを使用したインクカートリッジの一実施形態を示すものであって、本発明をこのインクタンク及びこれを使用したインクカートリッジに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
まず最初に実施例1に係るインクタンク10を図1〜図9を参照して説明する。なお、図1はインク注入前の実施例1のインクタンクの分解斜視図であり、図2は組立後のインク注入前の実施例1のインクタンクの斜視図であり、図3はインク収納部を構成する可撓性フィルムの加工形状を示す斜視図であり、図4はインク注入前のインク収容部の状態を示す断面図であり、図5はインクを充填した後のインク収容部の状態を示す断面図であり、図6はインクタンク底面から負圧発生部へのインク流れを示す連通孔部分の拡大図であり、図7は実施例1のインクタンクのインク注入時のインクの流れを具体的に示す斜視図であり、図8は実施例1のインクタンクのインク注入後の状態を示す斜視図であり、更に、図9は実施例1のインクタンクのインクを使い終えた状態を示す斜視図である。
この実施例1に係るインクタンク10は、樹脂成形体等の剛性部材の外周枠からなる主構造体11、負圧発生部12、プリンタ(図示せず)へのインク供給部13、インク注入孔14及び15を備えている。負圧発生部12は、中空円盤状の形状を有し、主構造体11の大部分を占めるインク収容部16とは第1の連結部17内に設けられた微少断面の第1連通路18を介して連通されており、また、インク供給部13とは第2連結部19内に設けられた微少断面の第2連通路19aを介して連通されている。
そして、インクタンク10の組立前においては、中空円盤状の負圧発生部12の一方側は外部に向かって開放されており、他方側は閉鎖されている。また、インクタンク10の組立時には、内部に圧縮コイルバネ12a、ゴム弁12bを組み込み、更にそれを保護する蓋12cで密閉することによって負圧発生部12の中空室を形成している。また、第1連結部17は横断面が半円柱状となっており、その方形状の縦断面20が外部に向くように配置されている。そして、第1連通路18は、第1連結部17の外部側に向かう方形状の縦断面20(図6参照)に沿って溝状に設けられており、側面は開放されている。
なお、第1連結部17に設けられた第1連通路18は、下端側は第1連結部17の下端側壁に設けられた連通孔21を介してインク収容部16と連通しており、また、上端側は負圧発生部12に設けられた蓋12cの溝部12dに連なり、この溝部12dの端部に設けられた連通孔22、ゴム弁12bに設けられた微小サイズの貫通孔12eを経て負圧発生部の12の中央部内側と連通している。同じく第2連通部19に設けられた第2連通路19aは、上側は負圧発生部12の側壁下部と連通し、下端側はインク供給部13と連通している。また、インク注入孔14及び15は、主構造体11の頂面に設けられており、一方のインク注入孔14は負圧発生部12と連通しており、もう一方のインク注入孔15はインク収容部16と連通している。
このインクタンク10の組立は次のようにして行われる。まず、主構造体11の負圧発生部12内部に圧縮コイルバネ12a、ゴム弁12b、蓋12cを組み込んで第1連結部17の第1連通路18と蓋12cの溝12dを合致させる。その後、インク供給部13の外側から、同様に図示しない部品を組み込んだ後、シールフィルムを溶着する。次にインク収容部16を構成する可撓性フィルム23及び24を主構造体11の外周枠両側面に溶着する。このとき可撓性フィルム23の一方の面は負圧発生部12及び第1連結部17の縦断面を同時に一体で溶着する。なお、図2においてハッチングを付与してある部分が溶着面である。このインク供給部13の外側のシールフィルム及び可撓性フィルム23、24としては、接着剤を使用したフィルム、熱溶着性フィルムないしは超音波溶着性フィルムを使用し得るが、熱溶着性フィルムの方が、製造が容易であるため、好ましい。なお、この段階でシールは完全に密閉状態に溶着されているようにする必要がある。
ここで、平らな可撓性フィルム23及び24を溶着面にしわが生じないように完全に主構造体11の外枠等に溶着させるのは困難であるので、図3に示すように、予めヒートプレス等で成形して形を整えることが有効である。これにより、溶着面にしわが発生することなく、平面を保ちながら完全溶着させることが可能となる。この状態を得る別の方法として、図示しないが、主構造体11に平面のフィルムを外枠と負圧発生部12に溶着し、その後、バリスターパック製法のように、熱をかけて形状を整えることによって、結果として図3に示したものと同等の溶着効果を得るようにしてもよい。
本発明の一つの特徴であるインク収容部16は、多孔質体のような保持部材を有せずに、限りなくインクを使い切ることにある。それを可能とする手段は、インク収容部の断面図である図4に示すように、主構造体11に溶着する可撓性フィルム23と24との間及び前記可撓性フィルム23、24と前記主造体11との間に空間を限りなく形成しないことにある。そのため、可撓性フィルム23、24としては、容易に変形できるようにするため、総膜厚0.06mm以下のものを使用している。なお、可撓性フィルム23、24の総膜厚の下限は、プリンタ内におけるインクの動きによって破壊しない程度ないしそれ以上の強度があればよく、しかも、膜形成材料によっても強度は異なるために臨界的限度はないが、好ましくは0.01mm以上のものが使用される。
また、実施例1のインクタンク10においては、更にインクを積極的に負圧発生部12へ送り出すことができるようにするため、図6に示す様に、第1連結部17に設けられた第1連通路18の連通孔21は主構造体11の底面25に近接して設けられ、かつ、底面25は連通孔21に向かって積極的にインクが流れるよう双方から所定の傾斜角(α)が設けられている。この傾斜角αは5°〜10°程度であればよい。
この実施例1のインクタンク10内へのインクの注入は、図7に示すように、インク注入口14及び15から負圧発生部12及びインク収容部16へ別々に行なわれる。また、負圧発生部12は負圧を的確に維持伝達させるため、インクの経路となる第1連通路18及び第2連通路の断面最長径及びゴム弁12bの貫通孔12eの径は、例えば1mmと小さくされている。なお、本発明におけるインクの経路となる第1連通路18及び第2連通路の断面形状は任意であるが、本発明における断面最長径とは通路の断面の最も長い部分の寸法を意味する。この断面最長径及び貫通孔12eの径は0.1mm以上3mm以下が好ましい。この断面最長径は、3mmを超えるとインクが消費されても負圧発生部12内に十分な負圧を伝達させることができないためにインクの流れを阻害し、また、0.1mm未満であるとインクが詰まりやすくなるので、いずれも印字品質の面で好ましくない。
このように、インクの経路となる第1連通路18及び第2連通路の断面最長径が小さいので、インク注入口14から負圧発生部12全体を吸引して真空に近い減圧状態を維持した後、インクを注入して負圧発生部12及びインク供給部13の全域にインクを充填させる。一方、インク収容部16は両側壁が可撓性フィルム23、24で形成されているため、インク注入孔14から減圧のために吸引した際は、図4に示すように、両側の可撓性フィルム23及び24は実質的に密接状態となっているので、インク注入口15から分注器等でインクに圧力をかけながら所定量を注入するのが効率的である。
このようにしてインク注入が完了したら、インク注入口14及び15にゴム栓又は樹脂栓26、27をしっかりはめ込む。このとき空気は混入しない方が好ましいが、わずかであれば混入したとしても差し支えない。空気を排除する場合は、インク収容部16の可撓性フィルム23、24を両側から押し付けながらインク注入孔15から空気を追い出すことにより容易に行うことができる。この結果、インクタンク10内のインクは、図5に示すように、インク収容部16内に充満する。
本実施例1のインク供給方式は、プリンタの記録ヘッドにより消費されたインクにより発生した負圧を受け、インク収容部16の可撓性フィルム23、24が内側に萎むことにより順応するものであるので、インク収容部16はインクを使い終えるまで完全に密閉状態を維持しなくてはならない。また、途中で空気が混入するとインク収容部内で気泡等が発生する危険がある。そのため、実施例1のインクタンク10においては、図7に示したように、インク注入完了後に栓26、27の上から熱溶着フィルム28を直接構造体11に係るように溶着する。
実施例1のインクタンク10のインク注入完了の状態を図8に示し、この場合のインク収容部16の概略断面を図5に示す。インク注入前のインク収容部16の断面は図4に示したとおりであるが、インク使用終了時のインク収容部16の断面は図4に示したものと同様になる。
このインクタンク10の使用時のインクの流れは次のようになる。すなわち、インクは、インク収容部16より連通孔21を通って第1連通路18へ入り、第1連通路18から蓋12cの溝12dを経て連通孔22を通り、蓋12cとゴム弁12bの間に設けられた僅かな空間に入る。この僅かな空間に入ったインクは、プリンタの記録ヘッドにより消費されたインクにより発生した負圧発生部12内の負圧によって、ゴム弁12bの中央部に設けられた微細な貫通孔12eを通って、圧縮コイルバネ12a側を経て負圧発生部12の内部に入る。そして、負圧発生部12から第2連通路19aを経てインク供給部13へと流れ、このインク供給部13から図示しないプリンタの印字ヘッドに供給される。
本発明によれば、インク保持体である多孔質体を用いず、インク収容部にインクのみを収容するようにしたので、シンプルで小型化が可能である。しかも、インク収容部を構成する可撓性フィルム23、24は、透明で内部を確認できるため、インク充填状態の状況を目視で確認することができ、更に、インクタンク10全体の経時変化を常時視認可能としたことで、多孔質部材を備えた従来例のインクカートリッジが備えている問題点の検討を容易に行うことができ、インクカートリッジの確実な性能改善に繋げることが可能となる。
しかも、本実施例1のインクタンク10においては、インク収容部16から負圧発生部12へのインク供給経路には、多孔質体等の別途インクを保持すための部材は存在せず、インクに直接負圧がかかってインク自体の移動により、負圧を可撓性フィルムの変形(撓み)で解消されるため、従来品に比しインクの移動がスムーズになり、印字品質及びインクの有効利用大幅な改善を図ることができる。しかも、インク収容部16内はインクのみしか存在しないことから、インクを使い終えた段階でインク収容部16内及び負圧発生部12内の残インク量は限りなく「0」にすることが可能であるので非常に効率的である。
また、本実施例1のインクタンク10においては、インク自体が受けた負圧によりインクは負圧発生部12及びインク供給部13を経由して記録ヘッドに供給される。この時インク収容部16を構成している可撓性フィルム23、24がインク容積変化に順応して内側へ萎んでインクの流れを阻害しないため、従来の多孔質体をインクタンク内に収納する方式の場合に必須である大気導入孔を必要としない。そのため、実施例1のインクタンク10は、インク注入後は完全密閉のまま生産、物流、実使用することができる。これにより気温、気圧等に関する耐候性向上と、振動、落下等の耐輸送性に大きな効果を発揮する。
従って本実施例1のインクタンク10の優れているところは、大気導入孔設置に係る形状設定や、部品を一切不要としたため、構成は簡素化され、部品点数の削減、工程の低減とインクの最小限注入を可能にしたこと等大幅なコスト低減を達成することができる点である。加えて、本実施例1のインクタンク10によれば、完全密閉のまま実使用を可能としたことにより、シールテープを剥がす必要も無く、顧客に対して余分な作業等の従来例の有する問題点から完全に開放させ、包装材から取り出してそのままプリンタにセットして使用することができるようになる。
しかも、本実施例1のインクタンク10によれば、大気導入孔を必要としない上、インク収容部16は常時密封状態であるので、インク移動は記録ヘッドにて吸引されない限り行われない。従って、本実施例1のインクタンク10をプリンタにて使用途中にプリンタから取り外した場合、従来の多孔質体を用いかつ大気導入孔を設けたカートリッジのように、インクが滴下することはない。
実施例1ではインクタンク10の例を示したが、このインクタンク10を用いてインクカートリッジとすることができる。このインクタンク10を単体でインクカートリッジ30とした例を図10に示す。すなわち、実施例2のインクカートリッジ30は、実施例1のインクタンク10の主構造体11としてプリンタへの取付け固定部材31及び32を備えたものを使用したものである。この取付け固定部材31及び32は、それぞれ使用するプリンタ毎に異なる構成のものを使用する。なお、実施例1のインクタンク10の主構造体11の周辺に別途プリンタへの取付け固定部材31及び32を固定する構成としてもよい。
実施例2では実施例1のインクタンク10を単体でインクカートリッジ30とした例を示したが、プリンタ本体に装着するカートリッジ40を別に設け、実施例1のインクタンク10をインクカートリッジ40の内部に載置するインクタンクとして利用することも可能である。このインクカートリッジ40の例を図11に示す。すなわち、インクカートリッジ40は、それぞれ使用するプリンタ毎に異なる構成の固定部材41を備え、内部にインクタンク10を挿入することのできる外ケース42と、この外ケース42内に挿入されるインクタンク10を固定するとともに外ケース42の開放部を塞ぐことができる蓋部材43とからなっている。
この外ケース42と蓋部材43とは、完全密閉型としてインクカートリッジ40を使い捨て型としても、或は開閉可能に構成してインクタンク10を交換可能にすることができるようにしてもよい。いずれの場合においても外ケース42と蓋部材43とは透明部材からなるものを使用して内部を視認できるようにしてもよい。このような構成とすることにより、インクタンク10のみを各色毎に予め生産し、必要に応じて合体完成させることも可能であり、生産の合理性にも寄与することができる。
インク注入前の実施例1のインクタンクの分解斜視図である。 組立後のインク注入前の実施例1のインクタンクの斜視図である。 インク収納部を構成する可撓性フィルムの加工形状を示す斜視図である。 インク注入前のインク収容部の状態を示す断面図である。 インクを充填した後のインク収容部の状態を示す断面図である。 インクタンク底面から負圧発生部へのインク流れを示す連通孔部分の拡大図である。 実施例1のインクタンクのインク注入時のインクの流れを具体的に示す斜視図である。 実施例1のインクタンクのインク注入後の状態を示す斜視図である。 実施例1のインクタンクのインクを使い終えた状態を示す斜視図である。 実施例2のインクカートリッジを示す斜視図である。 実施例3のインクカートリッジを示す斜視図である。
符号の説明
10 インクタンク
11 主構造体
12 負圧発生部
12a 圧縮コイルバネ
12b ゴム弁
12c 蓋
12d 溝
12e 貫通孔
13 インク供給部
14、15 インク注入孔
16 インク収容部
17 第1連結部
18 第1連通路
19 第2連結部
19a 第2連通路
20 第1連結部の縦断面
21 連通孔
22 連通孔
23、24 可撓性フィルム
25 主構造体の底面
26、27 栓
30 インクカートリッジ
31、32、41 プリンタへの取付け固定部材
40 インクカートリッジ
42 外ケース
43 蓋部材

Claims (12)

  1. インク収容部、負圧発生部及びプリンタヘインクを供給するインク供給部を備え、前記負圧発生部はそれぞれ微小断面の通路を介して前記インク収容部及びインク供給部へ連通され、前記インク収容部は剛性材料からなる前記インクタンクの外周枠の両側壁を極薄の可撓性フィルムで密閉した構成を備え、かつ前記極薄の可撓性フィルムの一方は前記負圧発生部の側壁のインク経路と一体に接着されていることを特徴とするインクタンク。
  2. 前記可撓性フィルムは、それぞれの総厚が0.01mm以上0.06mm以下であり、かつ、前記インク収容部内にインクを注入する前にはインク収容部で両側の前記可撓性フィルムが密接できる形状となされていることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
  3. 前記可撓性フィルムは前記インクタンクの容量及び形状に応じて予め形状加工されていることを特徴とする請求項2に記載のインクタンク。
  4. 前記主構造体は、前記負圧発生部に直結した負圧発生部用インク注入口と、前記インク収容部用インク注入口とをそれぞれ独立に備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
  5. 前記インク収容部は大気導入孔を備えていないことを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。
  6. 前記インク注入口は、ゴム又は樹脂製の栓、又は、ゴム又は樹脂製の栓とフィルムにより密閉されていることを特徴とする請求項4に記載のインクタンク。
  7. 前記インク収容部と負圧発生部との連通位置は、前記主構造体の底辺に接する箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のインクタンク。
  8. 前記インク収容部と負圧発生部との連通位置は、前記主構造体の底辺に設けた傾斜の最下点になるように構成されていることを特徴とする請求項7記載のインクタンク。
  9. 前記負圧発生部とインク収容部との間を連通する通路及び前記負圧発生部とプリンタヘインクを供給するインク供給部との間を連通する微小断面の通路は、それぞれ断面最長径が0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインクタンク。
  10. 請求項1〜9の何れかに記載のインクタンク及びプリンタへの装着用部材とからなることを特徴とするインクカートリッジ。
  11. 前記プリンタへの装着用部材は前記インクタンクの外周枠の周壁に直接取り付けられていることを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
  12. 前記プリンタへの装着用部材は内部に前記インクタンクを収納する部材からなることを特徴とする請求項10に記載のインクカートリッジ。
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