以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1は封止操作後の太陽電池モジュールの一例の断面模式図である。図2〜4は封止操作前の積層体の一例の断面模式図である。図5は複数のモジュールを同時に封止する場合の封止操作前の積層体の断面模式図である。図6は封止処理装置の一例の模式図である。
本発明の製造方法によって得られる太陽電池モジュール1は、基板2とフィルム3との間に太陽電池セル4が樹脂5で封止されてなるものである。太陽電池モジュール1中に封止される太陽電池セル4の数は、一つであっても良いが、通常、複数の太陽電池セル4が封止されたものである。通常、隣接する太陽電池セル4の受光面6と裏面7とが、導線8を介して接続される。その場合の断面模式図を図1に示す。この例では、基板2側から光が入射するが、フィルム3側から光が入射しても構わない。
本発明で使用される太陽電池セル4は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、化合物半導体太陽電池、薄膜太陽電池など、各種の太陽電池のセルが使用可能である。ここで、薄膜太陽電池を使用する場合、薄膜が形成された基板全体をセルという。これらの太陽電池セルは一般的には2mm以下、より一般的には1mm以下、さらに一般的には0.5mm以下の厚さの薄板であり、1辺が5cm以上の四角形であることが多い。このとき、四角形の角部が面取りされていることも多い。その基板の材質は、シリコンやゲルマニウム等の半導体基板、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などを使用できるが、シリコン基板が、実用的には最も重要である。シリコン基板の場合、コスト面の要請から薄板化が望まれている一方で、硬くて脆い材質であることから、封止時に特に割れ易く、注意して封止することが必要である。
1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数は、特に限定されず、1枚だけであっても良い。その場合には太陽電池セル4から外部への配線が接続されるだけになる。1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数が多いほど、太陽電池モジュール1全体の寸法が大きくなる。大型の太陽電池モジュール1は、フィルム3の面積も大きくなるので、封止時のシワや凹凸が発生しやすく、本発明の製造方法を採用する実益が大きい。したがって、10個以上、好適には20個以上の太陽電池セル4が一つの太陽電池モジュール1内に配置されることが好ましい。また、多数の太陽電池セル4が封入される場合には、気泡が発生しやすくなるし、封止操作中に太陽電池セル4が移動した場合に、外観上問題になりやすい。また、1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数が多いほど、太陽電池セル4の破損に由来する不良品率が上昇するので、注意して封止することが必要である。
隣接する太陽電池セル4間の間隙部9の幅は特に限定されないが、通常0.5mm以上であり、これ以下の場合には隣接する太陽電池セル4同士が接触して封止する際にセルが破損するおそれがある。採光性を優先するのであれば間隙部9を広くすることが好ましく、光の利用効率を優先するのであれば間隙部9を狭くすることが好ましい。用途やデザイン面の要請などによって適当に調整される。
複数の太陽電池セル4は、所定の幅を介して配列して相互に導線8で接続される。このとき、隣接する太陽電池セル4同士は、受光面6及び裏面7との間で導線8によって接続され、直列方式で多数の太陽電池セル4が接続される。薄膜太陽電池セルの場合には、受光面6側同士を接続する場合がある。導線8による接続は、ハンダ等の導電性接着剤を用いて行われる。また、発生した電流を効率良く集めるために、受光面6上に導電ペーストなどで集電パターンを形成し、それを導線8と導通させるようにすることも好ましい。さらにまた、隣接しないセル同士や離れた位置にある導線8同士を接続する場合や、基板2やフィルム3に孔を開けて導線8を外部に引き出す場合もある。
導線8は、インターコネクタとも呼ばれるものであるが、その材質は特に限定されず、銅線などが使用される。基板2とフィルム3との間に挟み込んで配置するため、薄いリボン状の導線8を使用することが好ましく、その厚みは通常0.5mm以下であり、好適には0.3mm以下である。また普通0.05mm以上である。導線8に予めハンダ等の導電性接着剤が塗布されていることが、接続作業が容易になって好ましい。導線8が接続された状態では、太陽電池セル4の表面から導線8の一番高い部分までの高さは、場所によってバラツキがあるが、接続操作によっては、導線8の厚みよりも0.5mm程度厚くなるところもある。このような厚みムラがフィルム3の表面の凹凸形成の原因になることがあるから、本発明の製造方法を採用することが好ましい。
基板2は、太陽電池モジュール1全体の強度を担うものであり、剛性を有する板状体である。基板2の厚みは、2〜25mmであることが好ましい。薄すぎる場合には、モジュール全体の強度が低下するおそれがあり、より好適には3mm以上である。一方、厚すぎる場合にはモジュール全体の重量が重くなりすぎるおそれがあり、より好適には15mm以下である。基板2の面積は用途によって調整されるが、0.5m2以上である場合に本発明の製造方法を採用する実益が大きい。基板2の材質は特に限定されず、ガラス、プラスチック、金属、セラミックスなどを使用することができる。受光面側に使用する場合には、太陽光に対して透明である必要があり、ガラスや、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの透明樹脂を使用することができる。
なかでも、耐久性、硬度、難燃性などを考慮するとガラスを使用することが好ましい。屋外に配置された際に飛来物が衝突するおそれがあるし、広い面積の構造材を構成することもあることから、表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板であることが、強度の面から好ましい。また、面積が広い場合には日照などによる温度上昇に伴う熱割れも生じやすいので、この点からも表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板を使用することが好適である。ここで、板ガラスの表面圧縮応力は、JIS R3222に準じて測定される値である。表面圧縮応力が20MPa以上のガラス板としては、具体的には、倍強度ガラス、強化ガラス、超強化ガラスなどが挙げられる。倍強度ガラスは表面圧縮応力が通常20〜60MPaのものであり、強化ガラスは表面圧縮応力が通常90〜130MPaのものであり、超強化ガラスは表面圧縮応力が通常180〜250MPaのものである。表面圧縮応力を大きくするほど、強度は向上するが、反りが大きくなりやすく製造コストも大きくなりやすい。また倍強度ガラスは、比較的反りの少ないものを製造しやすく、破損したときに細片になって落下することがない点で好ましい。ガラス板は、用途や目的に応じて選択される。
ガラスの材質は特に限定されず、ソーダライムガラスが好適に使用されるが、なかでも、受光面側に使用される場合には、高透過ガラス(いわゆる白板ガラス)が好適に使用される。高透過ガラスは、鉄分の含有量の少ないソーダライムガラスであり、光線透過率の高いものである。また、表面にエンボス模様を形成した型板ガラスも好適に使用される。例えば、屋根の上に太陽電池モジュール1を配置する場合などに、反射光が眩しくて周辺環境に悪影響を与える場合があり、このような場合には適度な凹凸が形成された型板ガラスが好適に使用される。裏面側に使用される場合には、前記高透過ガラスや、鉄分の含有量の比較的多いソーダライムガラス(いわゆる青板ガラス)を使用するほかに、熱線反射ガラス、熱線吸収ガラスなどを使用することも用途によっては好ましい。
基板2は、平坦なものであっても良いし、湾曲を有するものであっても構わない。基板2が湾曲している場合には、従来、フィルム3の表面が平滑になるように封止することが困難であったので、本発明の製造方法を採用する利益が大きい。太陽電池セル4以外の部分は大きく湾曲していても構わないが、通常、太陽電池セル4の存在する領域では曲率半径が500〜10000mmの湾曲を有することが好適である。曲率半径が500mm未満の場合には、セル割れを防止しながら封止することが困難な場合があり、好適には700mm以上である。一方、曲率半径が10000mmを超える場合には、湾曲した基板2を使用して封止する困難性が小さくなるので、本発明を採用する必要性が低下する場合がある。曲率半径は好適には5000mm以下であり、より好適には2000mm以下である。ここで、基板2の形状は円筒の一部であっても構わないし、球の一部であっても構わないが、フィルム3を上手く沿わせるためには円筒の一部であることが好ましい。また、場所や向きによって曲率が変化していてもよく、その場合には、本発明でいう曲率半径は、太陽電池セル4が存在する領域における最小の曲率半径のことをいう。
フィルム3の材質は特に限定されないが、通常、樹脂フィルム又は少なくとも1層以上の樹脂層を有する多層フィルムである。使用される樹脂は特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂や、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系樹脂が好適に使用される。太陽電池モジュールは長時間屋外に配置されることが多いことから、耐候性に優れたフッ素系樹脂が特に好適に使用される。多層フィルムにする場合には、種類の異なる樹脂を積層してもかまわないし、アルミ箔に代表される金属箔などと積層しても構わない。多層フィルムの好適な構成としては、強度や寸法安定性に優れた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムやアルミ箔からなる中間層の両側を、耐候性に優れたフッ素系樹脂層でサンドイッチする方法などが例示される。このとき、適当な接着剤を用いることが好ましい。フィルム3の厚みは通常0.01〜0.3mmである。フィルム3の厚みが0.01mm未満である場合には、フィルムの強度が低下して保護性能が低下するおそれがあり、より好適には0.02mm以上、さらに好適には0.03mm以上である。一方、フィルム3の厚みが0.3mmを超える場合には柔軟性が低下するので、もはや本発明の製造方法を採用する必要性が小さくなり、より好適には0.2mm以下である。フィルムが受光面側に配置される場合には、透明でなければならないが、裏側に配置されるのであれば、透明である必要はなく、着色したものを用いても構わない。
樹脂5の材質は、透明であって接着性や柔軟性を有するものであればよく、特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂が好適に使用される。このとき、架橋された樹脂であることが、強度や耐久性の面から好ましい。したがって、樹脂5の原料は、架橋可能な熱可塑性樹脂、特に加熱することによって架橋反応が進行する樹脂であることが好ましい。このような樹脂をシートの形態で基板2とフィルム3との間に挟み、加熱溶融してから、必要に応じて架橋反応を進行させ、その後冷却固化させて太陽電池セル4を封止する。加熱によって架橋されるものを使用することによって、耐久性や接着性に優れたものにすることができる。架橋可能な熱可塑性樹脂としては、加熱した時に架橋反応が進行するものであれば特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂が好適に使用される。例えばEVAであれば架橋剤を配合して加熱することで架橋させることができるし、ポリウレタンであればイソシアネート基と水酸基とを反応させることによって架橋させることができる。
ポリウレタンの場合には、比較的低温で架橋反応が進行するので、基板2又はフィルム3の少なくとも一方に耐熱性の低いものを使用する場合などに好適である。また、ポリウレタンは柔軟性にも優れているので、プラスチックのように撓みやすい材料の基板2を使用する場合に、剥離が生じにくく好適である。さらにポリウレタンは、貫通強度にも優れている。
架橋可能な熱可塑性樹脂のうちでも、架橋剤を含有する熱可塑性樹脂を使用することが好適である。このときの熱可塑性樹脂は、架橋剤とともに加熱した時に架橋反応が進行するものであれば特に限定されないが、透明性、柔軟性、耐久性などに優れたエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が最も好適に使用される。
封止樹脂シートを基板2とフィルム3との間に挟み、加熱溶融してから冷却固化させて、太陽電池セル4を封止する。封止樹脂シートがEVA樹脂に架橋剤を含有するものであることが好ましく、この場合には、加熱溶融してから架橋反応を進行させ、その後冷却することで架橋されたEVAで封止することができる。封止樹脂シート中のEVAは、DSC法で測定した融点が50〜80℃のものであることが、透明性と形態保持性のバランスの観点から好ましい。
封止樹脂シートは、その片面又は両面に適当なエンボスを有することがブロッキングを防止でき、気泡残りも抑制しやすいので好ましい。好適なエンボス深さは10〜100μmであり、深すぎると逆に気泡が残存するおそれがある。シート厚みは好適には0.2〜2mm、より好適には0.3〜1mmであり、これを一枚又は複数枚重ねて厚み調節して使用することができる。
当て板11は、封止する際に、フィルム3の外側に配置される板のことをいう。フィルム3の外側とは、フィルム3の樹脂5と接しない側のことをいう。基板2が平坦である場合には当て板11も平坦なものを使用し、基板2が湾曲している場合には、基板2と同程度の曲率で湾曲したものを使用する。当て板11には、封止操作中に容易に撓むことがない程度の剛性が必要である。当て板11の厚みは、1〜25mmであることが好ましい。薄すぎる場合には、封止時に撓むおそれがあり、より好適には2mm以上である。一方、厚すぎる場合には封止時に過大な荷重がかかって、太陽電池セル4が破損するおそれがあり、より好適には15mm以下である。当て板11の面積は、フィルム3の実質的に全体を覆うことのできる面積であればよい。当て板11の材質は特に限定されず、ガラス、プラスチック、金属、セラミックスなどを使用することができる。後に説明するように、同時に複数の太陽電池モジュール1を製造する場合には、隣接する太陽電池モジュール1の基板2を当て板として使用することもできる。
以下、本発明の製造方法による封止操作方法を説明する。
まず、図2の例について説明する。図2の例は、平坦な基板2を用い、太陽電池セル4の外側の余白部10に、太陽電池セル4の厚みよりも厚い封止樹脂シート片を配置する例である。図2は、封止操作前の積層体60の一例の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。
最初に、基板2の上に、実質的にその全面を覆うように第1封止樹脂シート20を重ねる。図2の例では、基板2を下においてから重ねる操作を行ったが、逆の順番で重ねても構わない。第1封止樹脂シート20の厚さは0.3mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、通常5mm以下、好適には3mm以下である。一定以上の厚みとすることで、太陽電池セル4を有効に保護することができる。第1封止樹脂シート20を、複数の封止樹脂シートを積層することによって構成してもよい。第1封止樹脂シート20は、基板2の実質的に全面を覆っていればよく、導線の配置などのために一部が欠落していても構わないし、サイド・バイ・サイドに配置された複数枚の封止樹脂シートから構成されていても構わない。また、基板2の端部近傍においては、第1封止樹脂シート20が存在しない部分が少しあっても構わない。
第1封止樹脂シート20の上に、太陽電池セル4を載置する。このとき、前述の要領で相互に接続した複数の太陽電池セル4を載置して、必要に応じて縦横を揃えて配列する。この場合には、予め接続した太陽電池セル4を載置しても良いし、第1封止樹脂シート20上で接続しても良いし、一部接続したものを載置してから残りを接続しても良い。
続いて、太陽電池セル4の外側の余白部10において、第1封止樹脂シート20の上に、相互に間隔をあけて配置された封止樹脂シート片40を配置する。ここで、太陽電池セル4間の間隙部9が広い場合には、間隙部9に封止樹脂シート片を配置することもできる。封止樹脂シート片40の厚みが、太陽電池セル4の厚みよりも0.2mm以上厚いことがより好ましい。具体的には、封止樹脂シート片40の厚みが0.3〜5mmであることが好適である。封止樹脂シート片40の厚みはより好適には0.5mm以上である。当該厚みが薄すぎる場合には、封止操作時にセル割れが発生するおそれがある。一方、封止樹脂シート片40の厚みはより好適には3mm以下であり、より好適には2mm以下である。当該厚みが厚すぎる場合には、太陽電池セル4の周囲に気泡が残りやすくなる。ここで、封止樹脂シート片40の厚みとは、複数枚の封止樹脂シート片を重ねて使用した場合には、重なった部分の合計の厚みということである。
太陽電池セル4の外側の余白部10又は太陽電池セル4間の間隙部9に封止樹脂シート片40を配置することによって、内部を減圧した際に、表裏両面からの大気圧による荷重が太陽電池セル4に直接かかることがなく、封止樹脂シート片40がその荷重を受ける。したがって、モジュール内に配置された太陽電池セル4に対して直接当て板11の荷重が掛からないようにすることができ、減圧工程でのセル割れを防止することができる。また、封止方法によっては、封止操作時に積層体60の上下から大気圧に由来する荷重を受けるので、このような構成とすることが好ましい。そして、温度が上昇するにしたがって樹脂は軟化して荷重のかかった封止樹脂シート片40の厚みが減少していき、太陽電池セル4又は導線8が、第1封止樹脂シート20及び第2封止樹脂シート30と接触する。そのときには樹脂シート全体が軟化しているので局所的な荷重がかかることがなく、太陽電池セル4又は導線8が軟化した封止樹脂シートに埋まりこむように密着する。これによって、減圧工程でのセル割れを防止することができる。1つの太陽電池モジュール1に封入される太陽電池セル4の個数が多いほど、太陽電池セル4の破損に由来する不良品率が上昇することから、当該封止樹脂シート片40を配置する実益が大きい。
封止樹脂シート片40を、水平方向に相互に間隔をあけて配置し、そこから内部の空気を排出できるようにすることが好ましい。内部の空気を積極的に排出する通路を確保することで、気泡の残存を抑制することができ、外観の良好な太陽電池モジュール1を製造することができる。このとき、封止樹脂シート片同士が直接重ねられた構成である場合には、その少なくとも1枚において樹脂シート片相互の間に水平方向に間隔をあけて、そこから内部の空気を排出できれば良い。封止樹脂シート片40の寸法は特に限定されず、太陽電池セル4の一辺よりも短い長さであっても構わないし、太陽電池モジュール1の一端から他端まで延びたテープ状のものであっても構わない。
こうして、封止樹脂シート片40を載置した後、その上に第2封止樹脂シート30を載置する。第2封止樹脂シート30の好適な構成、形状及び厚さは、第1封止樹脂シート20と同様である。次に、第2封止樹脂シート30の上に、当て板11に縁部12が固定されたフィルム3が載置される。図2の例では、予め当て板11の片面にフィルム3を重ねて、フィルム3の縁部12を折り返して当て板11の裏面側で、耐熱粘着テープ13を用いて固定し、それを第2封止樹脂シート30上に載置している。フィルム3が当て板11に固定されることで、封止操作中にシワや凹凸が発生するのを防止できる。単にフィルム3と当て板11とを重ねただけであれば、フィルム3が収縮するのを防止することができず、シワや凹凸が発生する。フィルム3が樹脂のみからなる場合には、加熱によって収縮する場合がほとんどであるので、その縁部12を固定することが重要である。そして、収縮力に由来する張力がフィルム3にかかった状態で封止することによって、封止後のフィルム3の表面が極めて平滑になる。また、アルミ箔と樹脂を積層した多層フィルムを用いた場合のように収縮率が小さい場合であっても、太陽電池モジュール1の面積が大きな場合にはその収縮量を無視できない。また、封止されるセルや配線の偏在や、減圧時に局所的に発生する圧力差などによって、フィルム3の表面にシワや凹凸が発生するのを効果的に防止するためにも、フィルム3の縁部12を当て板11に固定することが好ましい。以上のようにして準備された積層体60が封止操作に供される。
次に、図3の例について説明する。図3の例は、基板2が湾曲している例である。図3は、封止操作前の積層体60の一例の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。作業性の点から、凹面側が上になるように基板2を配置し、その上に封止樹脂シートを重ねることが好適である。
図3の例では、基板2が、円筒の一部分からなる形状である。基板2の上に、第1封止樹脂シート20、太陽電池セル4、封止樹脂シート片41,42,43,44及び第2封止樹脂シート30をこの順番に重ねる。図3の例では、太陽電池セル4の外側の余白部10において、第1封止樹脂シート20の上に、余白部10の全周にわたり実質的に連続して配置された封止樹脂シート片41と、それと重ねられて相互に間隔をあけて配置された封止樹脂シート片42とを配置する。また、太陽電池セル4間の間隙部9に封止樹脂シート片43,44を配置する。基板2の湾曲によって太陽電池セル4に荷重がかかりやすいため、図2の例よりも厚い封止樹脂シート片を余白部10と間隙部9の両方に配置している。封止樹脂シート片41,42,43,44の配置方法を除けば、ここまでの操作は図2の例とほとんど同じである。
次に、第2封止樹脂シート30の上に、当て板11に縁部12が固定されたフィルム3が載置される。当て板11は、基板2と実質的に同じ曲率で湾曲したものを使用する。予め当て板11の片面にフィルム3を重ね、フィルム3が湾曲した当て板11の凸面に沿うようにして、フィルム3の縁部12を折り返して当て板11の裏面側で、耐熱粘着テープ13を用いて固定した。フィルム3を当て板11に固定してから、第2封止樹脂シート30の上に載置した。フィルム3が当て板11に固定されることで、封止操作中にシワや凹凸が発生するのを防止できる。基板2が湾曲している場合、単にフィルム3と当て板11とを重ねただけであれば、平坦な場合に比べてフィルムにかかる様々な力が不均一になりやすく、平坦な基板2を用いる場合に比べてシワや凹凸が発生しやすい。したがって、本発明の封止方法を採用する利益が特に大きい。以上のようにして準備された積層体60が封止操作に供される。このとき、基板2が湾曲している場合には、ヒーターからの伝熱によって積層体60を均一に加熱することが困難であるから、後述の封止装置を採用することが特に好適である。また、上下からの不均一な荷重によって基板2が割れるのを防止するには、封止処理容器61が気体不透過性の柔軟なシートからなる袋であることが好ましい。
次に、図4の例について説明する。この例は、封止する際に、フィルム3の縁部12を枠体14に固定する例である。図4は、封止操作前の積層体60の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。
基板2の上に、第1封止樹脂シート20、太陽電池セル4、封止樹脂シート片40及び第2封止樹脂シート30をこの順番に重ねる。ここまでの操作は図2の例のときと同様である。引き続き、第2封止樹脂シート20の上に、枠体14に縁部12が固定されたフィルム3が載置される。図4の例では、基板2よりも少し広い枠体14を準備し、これにフィルム3の縁部12を固定し、それを第2封止樹脂シート30上に載置している。枠体14は、フィルム3の収縮力によって変形しない程度の剛性を有するものであればよく、金属製やプラスチック製の枠を使用することができる。フィルム3の縁部12を固定する方法は特に限定されず、図2の例のように耐熱粘着テープ13で固定してもよいし、ネジやクランプなどで機械的に固定してもよい。フィルム3が枠体14に固定されることで、封止操作中にシワや凹凸が発生するのを防止できる。フィルム3の上に当て板11が載置される。以上のようにして準備された積層体60が封止操作に供される。
次に、図5の例について説明する。この例は、1つの封止処理容器61内で複数のモジュールを同時に封止する例である。図5は、複数のモジュールを同時に封止する場合の封止操作前の積層体60の断面模式図であり、複数の太陽電池セル4が直列に接続される方向に対して平行に切断した断面を示したものである。
基板2の上に、第1封止樹脂シート20、太陽電池セル4、封止樹脂シート片40及び第2封止樹脂シート30をこの順番に重ねる。ここまでの操作は図2の例のときと同様である。次に、第2封止樹脂シート30の上に、フィルム3が載置され、フィルム3の縁部12を折り返して基板2の裏面側で、耐熱粘着テープ13を用いて固定する。これと全く同じ操作で作成したものを3セット重ねる。これによって、上に載せられたセットの基板2が下側のセットの当て板として働くことになる。そして、一番上のセットのフィルム3の上には当て板11が載置される。以上のようにして準備された積層体60が封止操作に供される。この方法によれば、1つの封止処理容器61内で複数のモジュールを同時に封止することができるので、生産性が大きく向上する。前述のように基板2の裏面側で、耐熱粘着テープ13を用いて固定した場合には、その部分においてフィルム3の表面に凹みが発生するので、その部分の凹凸が問題になる用途の場合には、基板2の側面で固定したほうがよい場合もある。
以上、図2〜5を使用して、封止操作前の積層体60の構成について説明した。引き続き、基板2とフィルム3との間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させてから冷却して封止する。このとき、加熱して樹脂を溶融させ、架橋反応を進行させてから冷却して封止することが好ましい。
封止に使用される装置は、空気の排出操作と加熱操作の可能なものであれば良く、特に限定されない。積層体60を内部に収容する封止処理容器61を有し、空気の排出操作と加熱操作の可能なものが好ましく使用される。このとき、当該封止処理容器61はその一部又は全部が気体非透過性の柔軟な膜からなるものであることが好ましい。気体非透過性の柔軟な膜からなる封止処理容器61の外側が大気圧に保たれている、いわゆる一重真空方式も採用できるし、気体非透過性の柔軟な膜からなる隔壁を隔てた二室の両側の真空度を調整できる、いわゆる二重真空方式も採用できる。一重真空方式は設備が簡易な点から好ましい。前記膜の素材は、気体非透過性の柔軟な膜であれば良く、一定以上の柔軟性と強度があって、膜の内部が真空になった時に外気圧が積層体全体に均一にかかるようになるものであれば特に限定されず、ゴムや樹脂のシートやフィルムが使用できる。
図6は、封止処理装置の一例の模式図である。この封止処理装置は、積層体60を内部に収容する複数の封止処理容器61を有し、空気の排出操作と加熱操作の可能なものである。このとき、封止処理容器61はその一部又は全部が気体非透過性の柔軟な膜からなるものである。当該膜の素材は、気体非透過性の柔軟な膜であれば良く、一定以上の柔軟性と強度があって、膜の内部が真空になった時に外気圧が積層体60全体に均一にかかるようになるものであれば特に限定されず、ゴムや樹脂のシートやフィルムが使用できる。このとき、全体が気体非透過性の柔軟な膜からなる袋を使用することが好ましい。この場合には、封止処理容器61は単なる袋であるから、様々な形状や寸法の太陽電池モジュールを製造する際に柔軟に対応することが可能であり、建材など、多様な寸法の製品を製造することが要求される用途に対して好適である。
特に、積層体60において、基板2が湾曲している場合に、このような封止処理容器61を使用することが好ましい。封止処理容器61の内部を減圧して上下からの荷重が積層体60にかかった時に、基板2が割れるのを防止することができる。この場合には、封止処理容器61である袋を、基板2及び当て板11の表面に沿わせてから封止するのが好ましい。
積層体60を封止処理容器61に導入する際には、積層体60の外縁を通気性のある素材からなるブリーダー62で覆って、積層体60内部の溶融樹脂が流出するのを防ぐとともに、積層体60内部からの空気の排出ルートを確保することが好ましい。ブリーダー62に使用される素材としては、織布、編地、不織布などの布帛が使用可能である。
このようにして積層体60が入れられた複数の封止処理容器61をオーブン63内に導入して相互に間隔をあけて平行に配置する。これによって、封止処理容器61内の積層体60は相互に平行に配置されることになる。複数の封止処理容器61は、上下方向に、間隔をあけて重ねて配置されることが好ましい。所定の間隔をあけて配置する方法は特に限定されず、所定の間隔を有する棚をオーブン63内に設ける方法などが例示される。
オーブン63内において積層体60と平行の向きに熱風を流すことによって積層体60を加熱する。積層体60と平行の向きに熱風を流すことによって、積層体60に効率良くかつ均一に熱を伝えることが可能である。このとき、封止処理容器61の下面にも熱風が接触するようにすることが好ましく、そのためには、封止処理容器61と棚との間にスペーサーを配置する方法や、棚自体を網棚にする方法などが好適に採用される。熱風を供給する方法は特に限定されず、オーブン63内にヒーターを設けて、ファンを用いて積層体60と平行の向きに熱風を流しても良い。しかしながら、オーブン63の外部にヒーターを設けて、熱風をオーブン63内に導入する方法が、均一に加熱しやすくて好ましい。この場合、オーブン63が、熱風導入口と、その反対側に設けられた熱風導出口とを有し、熱風導入口から熱風導出口へと流れる通路の間に複数の封止処理容器61が配置されることが好ましい。また、オーブン63内を実質的に大気圧に維持しながら積層体を加熱することが、装置コストの面から好ましい。
封止処理に際しては、前記封止処理容器61内を減圧して基板2とフィルム3との間の空気を排出する。図6の封止処理装置では、それぞれの封止処理容器61に排気するためのパイプ64が接続されている。パイプ64は、3本まとめられてパイプ65に接続されている。さらにこのようにまとめられたパイプ65が6本(一部図示を省略)、タンク66に接続されている。タンク66は真空ポンプ67に接続されており、これによって封止処理容器61内部の空気を排出することが可能である。封止処理容器61の数は、複数であれば特に限定されないが、生産効率を考慮すれば、6個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。
6本のパイプ65のそれぞれには、バルブ68を介して圧力計69が接続され、またパイプ65中の流れを遮断することの可能な電磁弁70が設けられている。これによって、パイプ65に接続された封止処理容器61のいずれかに漏れが発生した場合に、圧力計69が圧力の上昇を検知し、制御回路71が電磁弁70に信号を送って電磁弁70を閉じる。これによって、封止操作の途中で一つの封止処理容器61に漏れが発生しても、他の封止処理容器61にその悪影響が及ぶのを防止することができる。本発明で使用する封止処理容器61は、柔軟なシートからなるものであるし、太陽電池モジュールの形態にしたがってさまざまな形状のものを準備する必要があるので、漏れが発生するおそれがある。しかも、太陽電池モジュールはかなり高価である。したがって、このような制御方法を採用することが好ましい。図6の例では、3つの封止処理容器61ごとに一つの制御を行っているが、これは設備コストと効果とのバランスに基づくものである。圧力計69と電磁弁70のセットは、2セット以上あればよいが、好適には3セット以上、より好適には5セット以上である。制御回路71からアラーム信号を出して、オペレーターに知らせることもできる。
6本のパイプ65はタンク66に接続されており、電磁弁70が開いている状態では、全ての封止処理容器61がタンク66と連通している。タンク66の空気は真空ポンプ67によって排出される。また、タンク66にはコントロールバルブ72を介して外気を導入することができる。
後に説明するように、封止処理容器61内の圧力は、厳密に制御する必要がある。図6の封止処理装置においては、タンク66内の圧力を制御することによって全ての封止処理容器61の内部の圧力を同時に制御することができる。タンク66内部の圧力は、バルブ73を介して接続された圧力計74で計測され、この圧力データを受け取った制御回路75がコントロールバルブ72に信号を送って外気を取り入れながら所望の圧力に微調整する。この間真空ポンプ67は運転を継続している。比較的容量の大きなタンク66に対して外気を取り込みながら制御することで封止処理容器61内の圧力の微調整が可能である。
また、封止処理容器61内の減圧操作を開始する前に、電磁弁70及びコントロールバルブ72を閉めた状態で真空ポンプ67の運転を行うことによって、タンク66内を予め減圧しておくこともできる。この場合には、電磁弁70を開くことによって迅速に封止処理容器61内の空気を排出することができる。これによって、真空ポンプ67の排気能力が小さい場合であっても、封止処理容器61内を迅速に減圧するのに役立つ。
タンク66の容量は特に限定されるものではないが、10リットル以上であることが好ましく、20リットル以上であることがより好ましい。また、容量が大きすぎる場合には、コントロールバルブ72による圧力制御が迅速にできなくなるおそれがあるので、500リットル以下であることが好ましい。後に説明する実施例で使用した封止処理装置は、50リットルのタンク66を備えていた。
以上説明したような封止処理装置を用いて基板2とフィルム3との間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させてから冷却して封止する。このときの温度条件は特に限定されるものではなく、樹脂が溶融することの可能な温度まで上昇させれば良く、結晶性の樹脂であればその樹脂の融点以上まで加熱すれば良い。また、封止樹脂が架橋可能な熱可塑性樹脂であれば、架橋可能な温度まで上昇させて、所定の時間架橋可能な温度に保持する。圧力も積層体60内の空気を排出できて気泡残りが低減できるような圧力まで減圧できるのであればその圧力は特に限定されない。
なかでも、封止処理容器61内で封止するに際して、封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を減圧する工程(工程2)、減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程(工程3)、前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程(工程4)、及び冷却する工程(工程6)の各工程からなる封止操作を行うことが好適である。このとき、工程2において封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧することがより好ましい。前記工程2において封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を0.01MPa以下の圧力まで減圧するとともに、該工程2に先立って、封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程(工程1)を有することがさらに好ましい。以下、各工程について説明する。
前記工程1は、封止処理容器61内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程である。封止処理容器61内の圧力を0.05MPa以上に保つことによって、積層体60の上下方向からセルに大きな荷重がかかるのを防止することができる。より好適には当該圧力は0.06MPa以上である。封止樹脂シート片を全く使用しない場合、太陽電池セル4の外側の余白部10のみに封止樹脂シート片を配置し、太陽電池セル4間の間隙部9に封止樹脂シート片を配置しない場合、封止樹脂シート片の厚さが薄い場合、基板2の寸法が大きい場合、基板2が湾曲している場合、太陽電池セルが特に割れやすい場合、複数の太陽電池モジュールを1つの封止処理容器内で重ねて封止する場合など、セル割れが発生しやすい場合には特に工程1を採用することが好ましい。
工程1における封止処理容器61内の圧力は実質的に大気圧(0.1MPa)と同じであることが、セルに対して上下からかかる荷重が小さくて好ましい。また、装置や操作が簡便になる点からも好ましい。一方、一旦0.09MPa以下まで減圧することで、封止処理容器61の漏れをチェックすることができる。工程1においては、封止樹脂が未だ溶融していないので、封止処理容器61に漏れがあった場合には、この段階で補修することが可能である。本発明の製造方法で使用する封止処理容器61は柔軟なシートからなり、破損や漏れが生じる場合があるので、このように少し減圧してもよい。大気圧から0.05MPa以上の所定の圧力まで減圧する際には、減圧操作に要する時間を10分以上かけることが好ましい。大きな荷重はかからないものの、急激な減圧操作はセル割れを引き起こす可能性があるからである。
以上のように、封止処理容器61内の圧力が高い状態で封止樹脂を加熱することによって、封止樹脂を予め軟化させる。このときの加熱によって到達する温度は、封止樹脂が溶融しない温度でありながら、弾性率が低下する温度である。ここで、封止樹脂が溶融しない温度とは、通常、融点(Tm)よりも低い温度ということであり、好適には(Tm−5)℃以下であり、より好適には(Tm−10)℃以下である。封止樹脂が融点を有しない場合には、ここでいう融点をガラス転移点又は軟化点と置き換えて考えればよい。多くの封止樹脂において好適な温度は70℃以下であり、より好適な温度は65℃以下である。当該温度が高すぎると、工程2において封止処理容器61内の圧力が0.01MPa以下まで下がる前に樹脂の流動が開始してしまい、積層体60の内部の空気を排出するための通路が塞がれて、気泡残りが発生するおそれがある。また、前記加熱によって到達する温度は、好適には(Tm−30)℃以上であり、より好適には(Tm−20)℃以上である。多くの封止樹脂において好適な温度は40℃以上であり、より好適な温度は45℃以上である。当該温度が低すぎる場合には、封止樹脂の弾性率の低下が不十分であり、工程2において封止処理容器61内の圧力を下げた場合にセル割れが発生するおそれがある。このような温度範囲で5分以上維持してから工程2の減圧操作を開始することが好ましい。
工程2は、封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器61内を減圧する工程であり、工程1が採用される場合には、工程1に引き続いて行われる工程である。封止樹脂の融点未満の温度で減圧することによって積層体60の内部の空気が排出される通路が確保されるものである。このとき、封止処理容器61内の圧力は、好適には0.01MPa以下、より好適には0.005MPa以下まで減圧される。十分に減圧することによって封止後の気泡残りを効果的に抑制することができる。工程2において0.05MPaから0.01MPaまで減圧する間の温度は、工程1で説明した前記加熱によって到達する温度と同じ温度範囲に維持されることが好ましい。また、急激な減圧操作によるセル割れを防止するためには、0.05MPaから0.01MPaまで、5分以上かけてゆっくり減圧することが好ましい。
工程3は、減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程であり、工程2に引き続いて行われる工程である。封止樹脂を昇温すると融点付近で弾性率が大きく低下し高粘度の液体へと変化することになるが、工程3は、そのような温度に到達するまで減圧したままにする工程である。弾性率が高いうちに減圧度を下げて昇圧したのでは、積層体60の内部へ空気が流入してしまい、封止樹脂中に気泡が残留するおそれがある。ここで、工程3の昇温操作で到達する温度の下限値は、好適には(Tm+3)℃以上であり、より好適には(Tm+6)℃以上である。多くの封止樹脂において好適な下限値は72℃以上であり、より好適には77℃以上である。また上限値は、通常200℃以下である。
工程3で昇温する速度はゆっくりであることが好ましく、工程3の開始から上記温度まで昇温するのにかかる時間が15分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、1時間以上であることがさらに好ましい。ゆっくり昇温することによって、急に荷重がかかることがなく、セル割れを効率的に防止することができる。このとき、途中で昇温速度を変化させてもよいし、昇温を停止して積層体60の内部の温度分布を解消させる、バランシング操作を施しても良い。生産性の観点から、昇温時間は通常10時間以下であり、好適には5時間以下である。
工程4は封止処理容器61内の圧力を上昇させる工程であり、工程6は冷却する工程であり、いずれも工程3に引き続いて行われる工程である。工程4と工程6は、どちらを先に行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。
工程4において、昇圧に要する時間は特に限定されないが、通常1分以上かけて昇圧する。より好適には2分以上かけて昇圧する。生産性の観点から、昇圧時間は通常5時間以下であり、好適には2時間以下である。昇圧後の圧力は、0.05MPa以上、より好適には0.06MPa以上とすることが好ましく、大気圧と同じ圧力(0.1MPa)まで昇圧することもできる。このとき、段階的に昇圧しても構わない。工程4において、圧力を上昇させる際の温度が高すぎる場合には、不必要に溶融樹脂が流動して、セルの移動が生じるおそれがある。通常120℃以下、好適には100℃以下であることが好ましい。
また、工程4において、前記封止処理容器61内の圧力を上昇させながら同時に昇温する過程を有することが好ましい。こうすることによって、徐々に流動性を増していく過程で、積層体60にかかる圧力を徐々に解除することができ、残留気泡の発生を抑制しながら、不必要に溶融樹脂が流動するのを抑制するのに効果的である。この場合には、昇圧開始時の温度を(Tm−10)℃〜(Tm+20)℃、より好適には(Tm−5)℃〜(Tm+15)℃とし、そこから2〜30℃、より好適には4〜20℃温度を上昇させる間に昇圧させることが望ましい。昇温速度(℃/分)に対する昇圧速度(MPa/分)の比は、0.001〜0.1(MPa/℃)であることが好ましく、0.002〜0.05(MPa/℃)であることがより好ましい。
封止樹脂として、架橋可能な熱可塑性樹脂を使用する場合には、減圧したままで封止樹脂の融点付近以上まで昇温する工程(工程3)の後に、前記封止処理容器61内の圧力を上昇させる工程(工程4)を経て、架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる工程(工程5)及び冷却する工程(工程6)を有することが好ましい。
この場合、工程4で封止処理容器61内の圧力を上昇させた後、一旦融点以下の温度まで冷却してから、工程5で架橋反応が進行する温度範囲まで昇温することも好ましい。圧力を上昇させた後、そのまま架橋反応が進行する温度範囲まで昇温することも可能であるが、一旦冷却することによって、残留する応力が緩和する時間を確保できて、溶融樹脂のはみ出し、ヒケ(端部で樹脂の欠損した部分)、セルの移動がより効果的に抑制できる。このとき、樹脂が十分に流動性を失うまで冷却することが好ましく、(Tm−10)℃以下、より好適には(Tm−20)℃以下まで冷却することが好ましい。
以上のように、工程4で封止処理容器61内の圧力を上昇させた後、工程5において架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる。通常100℃以上、好適には120℃以上、より好適には130℃以上、さらに好適には140℃以上に加熱して架橋反応を進行させる。樹脂の劣化を防止するために、通常は200℃以下の架橋温度が採用される。架橋反応が進行する温度範囲に保つ時間は、目指す架橋度などにより異なるが、通常5分〜2時間、好適には10分〜1時間である。
工程5で架橋反応を進行させるときの封止処理容器61内の圧力は、好適には0.05MPa以上、より好適には0.06MPa以上である。封止処理容器61内の圧力を上昇させることによって、上下からかかる圧力を低減させることができる。架橋反応は高温で進行するため、その時の封止樹脂の溶融粘度は、融点付近に比べてかなり低い。そのため、このときに上下から不要な圧力をかけず、セルの移動や、樹脂のはみ出しを抑制することが重要である。しかしながら、大気圧と同じ圧力まで昇圧した場合には、積層体60の構成によってはヒケを生じることがあるので、そのようなときには大気圧より低い圧力に設定することが好適である。また、大気圧と同じ圧力まで昇圧した場合には、ブリーダー62が積層体60の周囲を押えることが困難になり樹脂がはみ出すこともあるので、そのようなときにも大気圧より低い圧力に設定することが好適である。その場合の圧力は大気圧よりも0.001MPa以上低い圧力とすることが好ましく、0.01MPa以上低い圧力(この場合、0.09MPa以下)とすることが好ましい。なお、本発明でいう大気圧とは、積極的に加圧あるいは減圧操作を施していない状態をいい、例えばオーブン63の中にファンで強制的に熱風を吹き込むために若干大気圧よりも高くなってしまうような場合であっても、それは大気圧と実質的に同一である。
工程5で架橋反応を進行させたあとで、工程6の冷却工程に供する。工程6の冷却工程では、通常室温付近まで冷却するが、冷却速度が早すぎるとガラスが割れるおそれがあるので、好適には10分以上、より好適には20分以上かけて冷却する。封止操作後に耐熱粘着テープ13を剥離して当て板11を外し、余分なフィルム3を切り落とす。
こうして得られた太陽電池モジュールは、モジュールの周縁部まで封止樹脂が充填されており、封止樹脂層の周縁にスペーサーを有さないものである。接着性や耐久性に優れた封止樹脂で周縁部まで封止することができるので、信頼性の高い太陽電池モジュールを提供することができる。封止樹脂層の厚みは全体で0.8〜6mmであることが好ましい。より好適には1mm以上であり、また4mm以下である。
本発明の製造方法によれば、基板とフィルムとの間に太陽電池セルが樹脂で封止され、当該フィルムの表面が極めて平滑な太陽電池モジュールを製造することができる。しかも、気泡残りが抑制され、端部からの樹脂のはみ出しも抑制され、正しく整列された太陽電池モジュールを得ることも容易である。したがって、得られる太陽電池モジュールは外観が美麗であり、外観、特にフィルムの表面の外観が重視されるような用途において好適に使用される。
本発明の製造方法によれば、多数の太陽電池セルを破損することなく樹脂で封止することも容易なので、大型の太陽電池モジュールを提供することもできる。また、基板が湾曲している場合であっても、封止操作が容易であるので、建築物のデザインの多様化の要求に応えることもできる。したがって、屋根など上に載置される太陽電池モジュールはもちろんのこと、各種建築物の外壁、屋根、窓などにも好適に使用される。
実施例1
太陽電池セル4として、125mm×125mm×0.22mmの正方形の多結晶シリコン太陽電池セルを54枚使用した。四隅は数mm程度面取りがされている。導線8としては、日立電線株式会社製のハンダディップ銅リボン線を使用した。当該リボン線の幅は1.5mmで厚さは約0.1mmである。太陽電池セル4の受光面6と裏面7の導線8を接着する部分には予めハンダを印刷してある。導線8の一端を太陽電池セル4の受光面6のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けし、他端を隣接する太陽電池セル4の裏面7のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けした。隣接するセル間は2本の導線8で接続し、その間隔が2mmになるようにした。すなわち、間隙部9の幅は2mmである。
基板2としては、1200mm×802mm×3.2mmのフロート板強化ガラス(白板ガラス)を使用した。基板2は表裏にエンボスが形成された型板ガラスである。基板2の光入射側の面には、小さなエンボスが形成されていて防眩性が付与されている。基板2の太陽電池セル4と向かい合う面には、それより大きなエンボスが形成されており、封止に際して減圧した際に内部の空気が排出されやすくなっている。当該強化ガラスの表面圧縮応力は100MPaである。本実施例において、封止樹脂シートとしては、三井化学ファブロ株式会社製「ソーラーエバSC36」の厚さ0.6mmのものを切断して使用した。当該封止樹脂シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に架橋剤、シランカップリング剤、安定剤などを配合したものであり、架橋前の樹脂のDSC法で測定した融点は71℃である。封止樹脂シートの片面には浅いエンボス模様(梨地)が形成されていて、その深さは約45μmである。基板2の上に、1200mm×802mmの寸法の第1封止樹脂シート20を1枚重ねた。
前述の要領で相互に接続した複数の太陽電池セル4を、第1封止樹脂シート20の上に載置して、縦横を揃えて図7に示すように配列した。引き続き、左右の余白部10において、導線8を導線51で接続した。導線51に対しては外部への引き出し線(図示を省略)が接続される。隣接する太陽電池セル4間の間隙部9の幅は、縦横ともに2mmとした。また、太陽電池セル4の外側の余白部10の幅は、長手方向(9枚のセルが並んでいる方向)で29.5mm、幅方向(6枚のセルが並んでいる方向)で21mmとした。
続いて、図7に示すように、余白部10において、第1封止樹脂シート20の上に封止樹脂シート片40を12枚配置した。封止樹脂シート片40の寸法は、5×10×0.6mmである。余白部10の封止樹脂シート片40を間欠的に配置することによって、内部の空気を排出する際の通路が確保できて、気泡残りを防止することができる。封止樹脂シート片40を配置してから、その上に1200mm×802mmの寸法の第2封止樹脂シート30を重ねた。
当て板11として、基板2で使用したのと同じフロート板強化ガラスを使用した。フィルム3として、厚さが50μmのポリフッ化ビニリデンフィルム(デュポン社製「テドラーTST20BG4」)を、当て板11よりも少し大きい寸法に切り出したものを使用した。当て板11の片面をフィルム3で覆い、その端部12を折り返し、耐熱粘着テープ13を用いて当て板11の裏側で固定した。そしてフィルム3が下になるようにして第2封止樹脂シート30の上に重ねた。
こうして得られた積層体60を用い、図6に示す封止処理装置を用いて封止操作を行った。まず、積層体60の外縁の全周をブリーダー62で覆い、封止処理容器61であるゴム製の袋の中に投入し、パイプ64と接続してオーブン63に入れた。
以上のようにセッティングしてから、以下の工程1〜6の封止処理操作を行った。このときの温度と圧力は、表1及び図8に示すとおりに制御した。このときの温度はオーブン63内の温度であり、圧力は圧力計74で測定された圧力である。
工程1:「封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程」
大気圧(0.1MPa)に保ったままで、室温(30℃)から昇温を開始し、25分かけて53℃まで昇温した。次いで、5分かけて53℃から57℃まで昇温するとともに大気圧から0.08MPaまで減圧した。次いで、57℃に保ったままで、10分かけて0.08MPaから0.05MPaまで減圧した。
工程2:「封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を減圧する工程」
13分かけて57℃から60℃まで昇温するとともに0.05MPaから0.005MPa未満まで減圧した。
工程3:「減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程」
47分かけて60℃から71℃まで昇温し、71℃で5分間維持し、3分かけて71℃から80℃まで昇温した。この間、圧力は0.005MPa未満に維持した。
工程4:「前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程」
2分かけて80℃から85℃まで昇温し、それと同時に、0.005MPa未満であった圧力を0.07MPaまで昇圧した。このときの昇温速度(℃/分)に対する昇圧速度(MPa/分)の比は、0.014(MPa/℃)であった。
工程5:「架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる工程」
25分かけて85℃から155℃まで昇温し、155℃で17分間維持して架橋反応を進行させた。この間0.07MPaの圧力を維持した。
工程6:「冷却する工程」
0.07MPaの圧力を維持しながら60分かけて155℃から30℃まで冷却した。30℃になったところで約1分かけて0.07MPaから0.1MPa(大気圧)まで昇圧して、オーブン63から取り出した。
積層体60をオーブン63に投入する前にはフィルム3には部分的に僅かなたるみが認められていたが、封止処理を終えてオーブン63から取り出したところ、フィルム3は全体がピンと張られていた。このことから、フィルム3の縁部12を固定することによって、封止処理中にフィルム3が収縮しようとするのを効果的に防止することができ、フィルム3が収縮しようとする張力がかかった状態で封止操作が行われたことがわかる。引き続き、耐熱粘着テープ13を剥離して当て板11を外し、余分なフィルム3を切り落とした。得られた太陽電池モジュール1は、セルの割れや欠け、導線の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケもほとんど観察されなかった。また、太陽電池セル4は、規則正しく配列されていて、フィルム3の表面は極めて平滑であった。
比較例1
実施例1において、フィルム3を当て板11に固定せずに、第2封止樹脂シート30と当て板11の間に挟んだ点以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュール1を製造した。その結果、得られた太陽電池モジュール1は、セルの割れや欠け、導線8の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケもほとんど観察されなかった。また、太陽電池セル4は、規則正しく配列されていた。しかしながら、フィルム3の表面にはセルや配線に由来する凹凸が転写されていて、一部領域に局所的なシワが発生していた。
実施例2
太陽電池セル4として、125mm×125mm×0.35mmの正方形の多結晶シリコン太陽電池セルを24枚使用した。四隅は数mm程度面取りがされている。導線8としては、日立電線株式会社製のハンダディップ銅リボン線を使用した。当該リボン線の幅は1.5mmで厚さは約0.1mmである。太陽電池セル4の受光面6と裏面7の導線8を接着する部分には予めハンダを印刷してある。導線8の一端を太陽電池セル4の受光面6のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けし、他端を隣接する太陽電池セル4の裏面7のハンダ印刷部に重ねてハンダ付けした。隣接するセル間は2本の導線8で接続し、その間隔が50mmになるようにした。すなわち、間隙部9の幅は50mmである。ハンダ付けに際しては、太陽電池セル4を、受光面6が上になるようにホットプレートに載せて、加熱しながら導線8を受光面6にハンダ付けしてから、ガラス板上で放冷した。これによって、受光面6が凸面側になる向きに湾曲した。その後、裏面7に導線8をハンダごてでハンダ付けしたが、前記湾曲は維持されたままであった。このようにして導線8が接続された太陽電池セル4は、受光面6が凸面側になるように、直列方向と垂直に2〜3mm程度湾曲していた。
基板2としては、1200mm×800mm×5mmの強化曲げガラス(白板ガラス)を使用した。当該強化曲げガラスの形状は、円筒の一部からなるものであり、その短辺が湾曲しているものである。当該湾曲の曲率半径は1000mmであり、短辺の長さ800mmは、曲線としての長さである。また、当該強化曲げガラスの表面圧縮応力は100MPaである。本実施例において、封止樹脂シートとしては、三井化学ファブロ株式会社製「ソーラーエバSC36」の厚さ0.6mmのものを切断して使用した。当該封止樹脂シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)に架橋剤、シランカップリング剤、安定剤などを配合したものであり、架橋前の樹脂のDSC法で測定した融点は71℃である。封止樹脂シートの片面には浅いエンボス模様(梨地)が形成されていて、その深さは約45μmである。基板2の凹面が上になるようにして、その上に1200mm×800mmの寸法の封止樹脂シート21,22,23を3枚重ねた。この3枚の封止樹脂シート21,22,23が厚み1.8mmの第1封止樹脂シート20を構成する。
図9に示すように、短辺方向に4枚の太陽電池セル4を直列に接続したものを50mm間隔で平行に6組並べ、合計24枚のセルを、第1封止樹脂シート20の上に配置した。隣接する太陽電池セル4間の間隙部9の幅は、縦横ともに50mmである。太陽電池セル4の端から基板2の端部までの距離、すなわち余白部10の幅は、図9における左右端で100mm、上下端で75mmとした。引き続き、上下の余白部10において、導線8を導線51で接続した。導線51に対しては外部への引き出し線(図示を省略)が接続される。
続いて、図10に示すように、余白部10に封止樹脂シート片45を配置する。封止樹脂シート片45は余白部10の全周にわたり、基板2の端部に沿って配置した。左右の余白部10(幅が100mm)では、封止樹脂シート片45の幅は80mmであり、上下の余白部10(幅が75mm)では、封止樹脂シート片45の幅は60mmである。次に、図11に示すように幅45mmで長さ1200mmの封止樹脂シート片46を太陽電池セル4間の間隙部9に3本平行に載置した。封止樹脂シート片46は、両端部において封止樹脂シート片45の上に重なっていて、一部が導線8の上に重なっている。次に、幅45mmで長さ800mmの封止樹脂シート片47を太陽電池セル4間の間隙部9に5本平行に載置した。封止樹脂シート片47は、両端部において封止樹脂シート片45の上に重なっていて、一部が封止樹脂シート片45及び導線の上に重なっている。
引き続き図12に示すように、相互に隣接する太陽電池セル4同士の間隙部9において、封止樹脂シート片46,47の上に40mm×100mmの封止樹脂シート片48を38枚配置した。さらに、モジュールの四隅の封止樹脂シート片45の上に、50mm×50mmの封止樹脂シート片49を4枚配置した。図13において、斜線で示された部分では封止樹脂シート片の厚さが合計で1.2mmであり、その他の部分の封止樹脂シート片の厚さは0.6mmである。このような構成とすることにより、引き続き積層される封止樹脂シート31と封止樹脂シート片45との間に間隙を設けることができ、封止樹脂シート23と封止樹脂シート31の間に形成される空間の空気を円滑に排出することができる。続いて、その上に1200mm×800mmの寸法の封止樹脂シート31,32,33を3枚重ねた。この3枚の封止樹脂シート31,32,33が厚み1.8mmの第2封止樹脂シート30を構成する。
当て板11として、基板2で使用したのと同じ強化曲げガラスを使用した。フィルム3として、厚さが50μmのポリフッ化ビニリデンフィルム(デュポン社製「テドラーTST20BG4」)を、当て板11よりも少し大きい寸法に切り出したものを使用した。当て板11の凸面を、表面に沿うようにフィルム3で覆い、その端部12を折り返し、耐熱粘着テープ13を用いて当て板11の裏側で固定した。そしてフィルム3が下になるようにして第2封止樹脂シート30の上に重ねた。
こうして得られた積層体60を用い、図6に示す封止処理装置を用いて封止操作を行った。まず、積層体60の外縁の全周をブリーダー62で覆い、封止処理容器61であるゴム製の袋の中に投入し、パイプ64と接続してオーブン63に入れた。
以上のようにセッティングしてから、以下の工程1〜6の封止処理操作を行った。このときの温度と圧力は、表2及び図14に示すとおりに制御した。このときの温度はオーブン63内の温度であり、圧力は圧力計74で測定された圧力である。
工程1:「封止処理容器内の圧力を0.05MPa以上に保って封止樹脂を加熱する工程」
45分かけて圧力を大気圧(0.1MPa)からゆっくりと0.07MPaまで低下させ、その間、温度を室温(30℃)からゆっくりと50℃まで上昇させた。
工程2:「封止樹脂の融点未満の温度において封止処理容器内を減圧する工程」
30分かけて圧力を0.07MPaから0.005MPa未満まで減圧した。この間、温度を50℃に保った。
工程3:「減圧したままで封止樹脂の融点以上の温度まで昇温する工程」
50℃から60℃まで120分かけて昇温し、60℃から71℃まで150分かけて昇温し、71℃で10分間維持してから、71℃から78℃まで45分かけて昇温した。この間、封止処理容器内の圧力を0.005MPa未満に維持した。
工程4:「前記封止処理容器内の圧力を上昇させる工程」
前記工程3において、温度が78℃になったところで昇圧を開始し、0.005MPa未満から0.07MPaまで70分かけてゆっくりと昇圧した。この間、温度は78℃から90℃まで75分かけてゆっくりと上昇させた。このときの昇温速度(℃/分)に対する昇圧速度(MPa/分)の比は、0.0063(MPa/℃)であった。この後、90℃で30分間維持し、30分かけて30℃まで冷却し、30℃で5分間維持し、その間0.07MPaの圧力を維持した。
工程5:「架橋反応が進行する温度範囲まで昇温して架橋反応を進行させる工程」
90分かけて30℃から155℃まで昇温し、155℃で36分間維持して架橋反応を進行させた。その間0.07MPaの圧力を維持した。
工程6:「冷却する工程」
60分かけて155℃から30℃まで冷却した。30℃になったところで約1分かけて0.07MPaから0.1MPa(大気圧)まで昇圧して、オーブン63から取り出した。
積層体60をオーブン63に投入する前にはフィルム3には部分的に僅かなたるみが認められていたが、封止処理を終えてオーブン63から取り出したところ、フィルム3は全体がピンと張られていた。このことから、フィルム3の縁部12を固定することによって、封止処理中にフィルム3が収縮しようとするのを効果的に防止することができ、フィルム3が収縮しようとする張力がかかった状態で封止操作が行われたことがわかる。引き続き、耐熱粘着テープ13を剥離して当て板11を外し、余分なフィルム3を切り落とした。得られた太陽電池モジュールは、セルの割れや欠け、導線の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケもほとんど観察されなかった。また、太陽電池セルは、規則正しく配列されていて、フィルム3の表面は極めて平滑な曲面であった。
比較例2
実施例1において、フィルム3を当て板11に固定せずに、第2封止樹脂シート30と当て板11の間に挟んだ点以外は実施例1と同様にして太陽電池モジュール1を製造した。その結果、得られた太陽電池モジュール1は、セルの割れや欠け、導線8の断線は一切なく、気泡残りも観察されず、周辺部での封止樹脂のはみ出しやヒケもほとんど観察されなかった。また、太陽電池セル4は、規則正しく配列されていた。しかしながら、フィルム3の表面にはセルや配線に由来する凹凸が転写されていて、一部領域に局所的なシワが発生していた。