本発明における燃料電池用隔膜は、架橋型のイオン交換樹脂からなる固体高分子電解質膜の少なくとも一方の表面に、該固体高分子電解質膜のイオン交換樹脂の有するイオン交換基と逆極性の荷電基を有する重合体(以下、「逆極性重合体」とも略する)が付着されてなる。特に、後述するように逆極性重合体として、重量平均分子量が5000〜100万の大きいものを用いた場合には、固体高分子電解質膜を該逆極性重合体の溶液に浸漬させた際に、該逆極性重合体は、上記架橋型のイオン交換樹脂の密な架橋構造内部に侵入し難くなる。したがって、こうした場合、該逆極性重合体は固体高分子電解質膜の表面に、多量に残留することになり好ましい。
このように逆極性重合体が、表面に付着する固体高分子電解質膜に触媒電極層を接合した場合、この膜表面に付着する逆極性重合体の作用により、両部材は下記の如くに強固に接合するようになる。すなわち、両部材の間に存在する逆極性重合体は、固体高分子電解質膜が有するイオン交換基とは逆極性の荷電基を有しているため、このうちの固体高分子電解質膜との接触界面付近に存在するものは、該固体高分子電解質膜のイオン交換基とイオン結合する。他方、触媒電極層にも、前記したとおりイオン伝導性の付与を目的に、該固体高分子電解質膜のイオン交換基と同極性のイオン交換基を有するイオン交換樹脂が含有されているため、上記逆極性重合体のイオン交換基のうち、該触媒電極層との接触界面付近に存在するものは、そのイオン交換基とイオン結合する。その結果、固体高分子電解質膜と触媒電極層とは、係る逆極性重合体を介して、共にイオン結合していることになり、その接合性は著しく向上する。
ここで、固体高分子電解質膜の表面に付着する重合体が有する荷電基は、固体高分子電解質膜のイオン交換基と逆極性である必要がある。即ち、固体高分子電解質膜のイオン交換基が陽イオン交換基(すなわち、陰イオン性基)であれば陽イオン性基が選ばれ、固体高分子電解質膜の有するイオン交換基が陰イオン交換基(すなわち、陽イオン性基)であれば陰イオン性基が選ばれる。これに反して、重合体の荷電基が、固体高分子電解質膜のイオン交換基と同極性の場合には、固体高分子電解質膜の表面に付着させた該重合体と固体高分子電解質膜との間でイオン結合が形成されず、両部材の接合性の向上効果が発揮されなくなる。なお、固体高分子電解質膜の有するイオン交換基の極性とは、該固体高分子電解質膜のイオン交換基のうち過半数を占める極性を言う。
逆極性重合体が有する荷電基の具体例を例示すると、後述する固体高分子電解質膜と同様にイオン交換樹脂のイオン交換基として公知のものが制限なく使用可能である。具体的には、陽イオン交換基として、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等が挙げられる。これらのイオン交換基は単独でも、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。さらに、陽イオン交換基と陰イオン交換基を組み合わせて使用することも可能であり、この場合には、もちろん、重合体の有するイオン交換基のうち過半数を占める極性を重合体の極性とする。
後述する固体高分子電解質膜のイオン交換基の好ましい例示に対応して、重合体の荷電基は、陰イオン交換基が好ましく、特に、外部に他のイオン種が存在してもイオン結合を形成しやすい1〜3級アミノ基、ピリジル基、イミダゾール基が好ましく、さらに、ピリジル基が最も好ましい。
本発明では、上記の、固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体は、該電解質膜を、30℃の50質量%メタノール水溶液に浸漬した際に、浸漬の前後でその付着量に実質的に差がない状態で付着されてなる。
ここで、メタノール水溶液への浸漬前後における付着量の差は、以下の方法により求める。すなわち、まず、固体高分子電解質膜への該逆極性重合体の付着量を後述する方法により測定する。続いて、同じ電解質膜を30℃の50質量%メタノール水溶液に30分間浸漬する。この浸漬操作を、新しい同じ温度及び濃度のメタノール水溶液に交換して3回繰り返したのち再度、逆極性重合体の付着量を測定し、浸漬前の付着量との差を求める。
固体高分子電解質膜の表面に付着させた逆極性重合体のうち、前述のごとく固体高分子電解質膜のイオン交換基とイオン対を形成している重合体は、燃料電池の燃料であるメタノール水溶液へ実質的に溶解することはない。一方で、前記イオン対を形成していない逆極性重合体が存在した場合、これらの重合体はメタノール水溶液に溶解し易く、該溶解した重合体は触媒電極層へと拡散して触媒を被毒して燃料電池の出力を低下させる。
従って、本発明の直接メタノール型燃料電池隔膜では、上記固体高分子電解質膜の表面に付着させた逆極性重合体が、該固体高分子電解質膜を形成するイオン交換樹脂の有するイオン交換基と高率でイオン対を形成して強固に固定されており、前述の方法で求められるメタノール水溶液への浸漬前後での該逆極性重合体の付着量が実質的に差がない状態になっていることが必要である。このような状態で逆極性重合体を付着させるには、一般に、後述の洗浄工程で、イオン対を形成していない逆極性重合体を、洗浄除去すれば良い。
なお、本発明において、電解質膜を、前記温度及び濃度のメタノール水溶液に浸漬した際に、浸漬の前後で、逆極性重合体の付着量に実質的に差がない状態とは、浸漬の前後で、該付着量に全く変化がないのが最も好ましいが、測定の誤差範囲や効果にほとんど影響しない若干の範囲で減少する程度は許容される。具体的には、浸漬後の付着量が、浸漬前の付着量に対して10%以下、より好適には5%以下で低減する程度は許容される。
固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体の付着量は、0.0001〜0.01mg/cm2であることが好ましい。係る逆極性重合体の付着量になるように、該逆極性重合体の重量平均分子量、付着工程で使用する該逆極性重合体溶液の濃度や接触時間、さらには使用する固体高分子電解質膜の架橋度等を調整し、さらに洗浄工程を施す。
固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体の付着量は、0.001〜0.5mg/cm2の場合には、次の方法によって求められる。
先ず、該電解質膜をゲルマニウム光学結晶の上下両面に重ねて試料を作製する。次に、試料上の電解質膜に対する入射角を45°に設定し、全反射吸収スペクトル法に従って試料の多重反射法赤外分光スペクトルを測定する。得られるスペクトルから、逆極性重合体が有するイオン交換基に基づく特性吸収強度を求める。
一方、予め既知の量の逆極性重合体をポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、同様にしてスペクトルの吸収強度を測定する。このデータにより、逆極性重合体量とスペクトルの吸収強度との関係を示す検量線が作製される。この検量線を用いて、前記測定した試料の吸収強度に対応する逆極性重合体の付着量(単位平面積(cm2)当たり)が算出される(以下、この測定方法を、「ATR法」と称する)。
この方法において、ゲルマニウム光学結晶は、通常、20mm×50mm×3mmのものが用いられ、測定に供する固体高分子電解質膜は、10mm×45mmの面積のものが用いられる。
ここで、上記逆極性重合体が有するイオン交換基に基づく特性吸収とは、例えば、該逆極性重合体がポリ4−ビニルピリジン等のピリジル基を有するものであれば1636〜1644cm−1付近に吸収を有する該ピリジル基の特性吸収を示し、ポリエチレンイミン等のイミン基を有するものであれば1637〜1645cm−1付近に吸収を有する該イミン基の特性吸収を示す。
上記方法によれば、測定に用いる赤外線は固体高分子電解質膜の表層近傍から内部に向けて深く透過しない。従って、固体高分子電解質膜の表面付近に存在する逆極性重合体の量が正確に測定できる。即ち、該膜表面に付着する逆極性重合体の実質的な量を求めることができる。
固体高分子電解質膜表面に付着している逆極性重合体の付着量は、必ずしも均一ではない。しかし、付着量が多い箇所や少ない箇所の微細なバラツキは前記程度の面積のゲルマニウム光学結晶を用い、前記程度の大きさの固体高分子電解質膜を測定試料として用いれば、測定結果にほとんど影響を与えない。
上記ATR法により逆極性重合体の付着量を測定する方法に代えて、本発明の燃料電池用隔膜を、0.5mol/l水酸化ナトリウム水溶液とメタノールの等質量混合溶液に長時間浸漬し、膜の表面に付着し、及び内部に浸入しているかも知れない逆極性重合体を完全に溶出させ、その溶出量を液体クロマトグラフィーなどで定量することによっても逆極性重合体の付着量を求めることができる(以下、この測定方法を、「溶媒浸漬法」と称する)。この求めた逆極性重合体の質量を膜の総面積(cm2)で割った値は、前記ATR法で求められる膜の表面だけでなく、膜の内部に浸入している逆極性重合体の量も合わさった付着総量が求められるものであるが、この方法により求められた値は上記のATR法で求められる付着量と通常は同程度であることが確認されている。このことから、架橋型のイオン交換膜に分子量の大きい逆極性重合体を付着させている場合、該逆極性重合体は電解質膜の内部へ殆ど侵入せず、その多くが膜表面に単に付着していることが確認されている。
上記ATR法では、逆極性重合体の付着量が0.001mg/cm2よりも少なくなると、その測定精度が低下し、該逆極性重合体の付着量の測定精度が低下する。したがって、固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体の付着量が、0.001mg/cm2を下回り、0.0001mg/cm2に至るまでの範囲の場合には、前記した溶媒浸漬法を応用した次の方法によって、その表面への付着量が求められる。
まず、本発明の燃料電池用隔膜に対して、前記した溶媒浸漬法を実施して、この方法による逆極性重合体の付着量を求める。前記したように本発明の燃料電池用隔膜において、逆極性重合体は膜の内部へは殆ど侵入せず、その多くは膜表面に付着している。したがって、この方法によって求められる逆極性重合体の量は、膜表面における付着量に極めて近い値になるが、この測定方法では、以下の測定により、逆極性重合体の内部への実質的な浸入量も求めて、この値を差し引くことで、より正確な表面への付着量を求める。
すなわち、前記と同じ方法で作成した燃料電池隔膜の表層部を、サンドブラスト処理で1μmの厚さ削り取る。このようにして得られた、表層部を削り取った燃料電池隔膜を用いて、再び、溶媒浸漬法を実施して、その量を求めることにより、該表層部を削り取った燃料電池隔膜内に浸入していた逆極性重合体の実質的な量を求める。なお、前記ATR法において、測定に用いる赤外線は固体高分子電解質膜の表層への透過深さは一般に0.4μm程度と推定されるため、上記燃料電池隔膜の表層部を1μm削り取れば、該方法により逆極性重合体の表面への付着量として測定していた部分は除去できる。
そうして、表層部を削り取る前の逆極性重合体の量から、表層部を削り取った後の逆極性重合体の量を差し引くことで、本発明の燃料電池隔膜の表面に付着した逆極性重合体の正確な量を求めることができる。
この方法において、溶出させる隔膜も、通常、8cm×8cmのものが用いられる。この場合にも、逆極性重合体の隔膜表面への付着量にバラツキがあったとしても、上記程度の面積の隔膜を用いれば、バラツキが測定結果に影響を及ぼすことはほとんどない。
なお、固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体の付着量は、上記方法以外の方法であっても、この方法と相関があり、実質的に同じ測定値を求めることが可能な方法であれば、こうした他の方法により求めても良い。
こうした固体高分子電解質膜の表面に付着する逆極性重合体の付着量が、0.001mg/cm2未満の場合には、重合体量が不足して接合性が十分に満足できなくなる。また、メタノール水溶液への浸漬前後で付着量が実質的に変化しない状態にするため、0.01mg/cm2を超える付着量にすることは通常は困難である。より好ましくは、重合体付着量は0.0003〜0.01mg/cm2、さらに0.001〜0.005mg/cm2が好ましい。
前記逆極性重合体の重量平均分子量は、5000〜100万であることが好ましい。重量平均分子量が5000未満の場合には、逆極性重合体を固体高分子電解質膜に付着させる工程において、該逆極性重合体が固体高分子電解質膜の内部に侵入し易くなり、その結果、固体高分子電解質膜の表面における逆極性重合体の持つ逆極性を有する荷電基の密度が低減する。これにより、触媒電極層中のイオン交換樹脂のイオン交換基との間の静電的引力が弱まり、燃料電池用隔膜と触媒電極層との接合性が不十分となる。接合性をより充分なものとするためには、逆極性重合体の重量平均分子量は3万以上がより好ましく、10万以上が特に好ましい。また、逆極性重合体の重量平均分子量が100万を超えると、固体高分子電解質膜への付着工程において重合体の溶液化が困難になる。均一な溶液として、良好な接合性の効果を発揮させるためには、この逆極性重合体の重量平均分子量の上限は30万が好ましく、25万が特に好ましい。
固体高分子電解質膜表面への逆極性重合体の付着形態は、特に制限されるものではなく、固体高分子電解質膜の片面全部を覆うように薄膜層を形成していてもよく、また、固体高分子電解質膜の片面において部分的に存在させても良い。重合体が固体高分子電解質膜の一部にのみ付着する場合には、得られる膜・電極接合体の接合性を良好なものとするため、付着面積は固体高分子電解質膜の片面当たりの1/2以上の面積であることが好ましい。無論、このように逆極性重合体を部分的に存在させる場合、該逆極性重合体の付着量は、この逆極性重合体を存在させた膜部分を対象にして求める。
本発明において使用される逆極性重合体の具体例を例示すると、陽イオン交換基を有する重合体として、DuPont社製Nafion(商品名)などのパーフルオロカーボンスルホン酸類や、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック類のスルホン化物やアルキルスルホン化物、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などのエラストマー類のスルホン化物、ポリスチレンスルホン酸、さらにこれらの誘導体などが挙げられ、陰イオン交換基を有する重合体として、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアニリン、ポリジエチルアミノエチルスチレン、ポリビニルイミダゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、クロルメチル化ポリスチレンのアルキル化物、さらにこれらの誘導体や、これらの完全または部分N−4級化物が挙げられる。これらの中でも、陰イオン交換基を有する重合体が好ましく、特にポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアニリン、ポリビニルイミダゾール、ポリベンズイミダゾールなどの3級窒素を有する重合体が好ましく、さらに、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)等のポリビニルピリジンが最も好ましい。
次に、本発明において使用する固体高分子電解質膜について説明する。イオン交換樹脂としては、架橋型のものを用いることにより、寸法安定性、耐熱性、機械的強度及びメタノール非透過性等、種々の物性に優れたものとすることができ、これにより固体高分子型燃料電池等の隔膜として好適に使用できる。さらに、逆極性重合体溶液と接触された際に、これが電解質膜内部に過度に浸入して、その表面での存在量が少なくなることを抑制する。
このようなイオン交換樹脂としては、イオン交換性基を有する公知の如何なる架橋型のイオン交換樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなイオン交換樹脂が有するイオン交換基を具体的に例示すると、陽イオン交換基として、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、陰イオン交換基としては、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム基、4級イミダゾリウム基等が挙げられる。これらのイオン交換基は単独でも、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。さらに、陽イオン交換基と陰イオン交換基を組み合わせて使用することも可能である。
燃料電池用の隔膜として使用されることから、イオン交換樹脂は陽イオン交換基を有するものが好ましい。陽イオン交換樹脂はイオン伝導性が高いので、プロトン伝導型燃料電池が現在主流である。特に、強酸性基であるスルホン酸基が好ましい。さらに、直接メタノール型燃料電池に使用されることを考慮すると、メタノールや水のクロスオーバーを抑制するため、陽イオン交換基と陰イオン交換基を組み合わせて使用することが好ましく、特に、スルホン酸基に1〜3級アミノ基やピリジル基、イミダゾール基を組み合わせたものが好ましい。この場合、陽イオン交換基と陰イオン交換基はモル比で1:0.95〜1:0.1であることが好ましい。
また、イオン交換樹脂における上記イオン交換性基以外の部分(以下、樹脂骨格部分ともいう)としては、架橋構造を有する限り制限なく使用でき、例えば、この要件を満足するものであれば、フッ素原子で置換されたフッ素系樹脂でも良い。前記したパーフルオロカーボンスルホン酸膜に代表されるように、高度にフッ素化されたフッ素系樹脂は非架橋型のものが多いため、通常は、こうしたフッ素原子による置換が成されていない、いわゆる炭化水素系樹脂が使用される。
樹脂骨格部分の具体例としては、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリエーテルスルホン系等が挙げられる。炭素−炭素結合を主とするために主鎖の化学的安定性に優れ、一方で種々のイオン交換基の導入が容易であり、さらには原料が安価な点でポリスチレン系のものであることが特に好ましい。
こうした樹脂骨格部分の架橋は、得られるイオン交換樹脂膜において、前記逆極性重合体溶液を塗布しても、膜内への該重合体の浸入が抑制され、その膜表面に該重合体が有意な量残存する程度に行うのが好ましい。イオン交換基を有するか、またはイオン交換基を導入可能な重合性単量体を二官能以上の架橋性単量体と共重合することにより膜を形成する場合であれば、該架橋性単量体が、全重合性単量体中において0.5〜40モル%、より好適には3.0〜30モル%を占める量で使用されて形成されているのが、より好ましい。
こうした架橋型のイオン交換樹脂は、イオン交換基や樹脂骨格部分、さらには架橋構造が互いに異なる、複数のものを併用して用いても良い。さらには、目的に応じた種々の物性を損なわない範囲で、非架橋型のイオン交換樹脂が配合されていても構わない。
これら架橋型のイオン交換樹脂の膜形成は、該イオン交換樹脂だけをキャスト成形する等して形成しても良いが、機械的強度や寸法安定性をより向上させ、また柔軟性を付与するために、基材(補強材とも言われる)を用いて行うのが好ましい。
当該基材としては、イオン交換膜の基材として公知の如何なるものを用いても良く、多孔質フィルム、不織紙、織布、不織布、紙、無機膜等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物あるいは無機物でも又はそれらの混合物でも構わないが、その製造が容易であるばかりでなく炭化水素系のイオン交換樹脂との密着強度が高いという観点から、熱可塑性樹脂組成物であることが好ましい。当該熱可塑性樹脂組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル径樹脂;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素径樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が例示される。これらのなかでも、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、炭化水素系のイオン交換樹脂との馴染みが特によいことからポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂が特に好ましく、ポリエチレン樹脂が最も好ましい。
さらに表面が平滑で、触媒電極層との密着性をより優れたものとでき、かつ強度に優れる点でポリオレフィン樹脂製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン樹脂製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。
このようなイオン交換膜の基材として用いられる多孔質フィルムとしては、その有する細孔の平均孔径は0.005〜5.0μm、特に0.01〜2.0μmであることが好ましく、空隙率(気孔率とも呼ばれる)は20〜95%、特に30〜90%であるのが好ましく、透気度(JIS P−8117)は1500秒以下、特に1000秒以下であるのが好ましい。また、その厚みは得られるイオン交換膜を薄くすることができ、かつ充分な強度が得られるように5〜150μmであることが好ましく、10〜120μmがより好ましく、15〜50μmが特に好ましい。
このような多孔質フィルムは、例えば特開平9−216964号公報、特開平9−235399号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」等)として入手することも可能である。
また本発明における固体高分子電解質膜においては、本発明の効果を損なわない限り、可塑剤、無機充填剤等のその他の成分が配合されていても良い。
本発明で使用される上記の固体高分子電解質膜は、如何なる方法により製造しても良いが、一般には、以下の方法により製造することが好適である。
すなわち、イオン交換基を有するか、またはイオン交換基を導入可能な重合性単量体と二官能以上の架橋性単量体とを含む単量体組成物を前述した基材の空隙部分に含浸させた後、上記の単量体組成物を重合し、必要に応じてイオン交換基を導入する方法である。
上記単量体組成物において、イオン交換基を有するか、またはイオン交換基を導入可能な重合性単量体としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、クロルメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、スチレンスルホン酸等の単官能の芳香族ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の単官能(メタ)アクリル酸類又はその誘導体類;ビニルホスホン酸、無水マレイン酸等のその他のビニル化合物類等の単官能の重合性単量体が挙げられる。このうち強酸性基であるスルホン酸基を導入しやすい点で、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−ハロゲン化スチレンあるいはビニルナフタレン等の単官能の芳香族ビニル化合物類が好ましく、特にイオン交換膜におけるイオン交換基密度をより高くできる点でスチレンが最も好適である。
他方、二官能以上の架橋性単量体としては、一般には2〜3官能のものが使用され、具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン等の多官能の芳香族ビニル化合物;トリメチロールメタントリメタクリル酸エステル、メチレンビスアクリルアミド、ヘキサメチレンジメタクリルアミド等の多官能(メタ)アクリル酸誘導体類;あるいはブタジエン、クロロプレン、ジビニルスルホン等のその他の多官能の重合性単量体等が挙げられる。このうちジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン等の多官能の芳香族ビニル化合物が好ましい。
またこの単量体組成物には、重合性単量体を重合させるために、重合開始剤が配合されていることが好ましい。当該重合開始剤としては、上記したような重合性単量体を重合させることが可能な重合開始剤であれば特に制限されることはなく、具体的には、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。該重合開始剤の配合量は、重合性単量体の重合に際して用いる公知の範囲でよく、一般的には、重合性単量体100質量部に対して0.01〜10質量部程度である。
この単量体組成物には、必要に応じて溶媒が配合されていても良く、さらに、可塑剤、有機または無機の充填材等の公知の添加剤が含まれていても良い。特に、特願2003−377454号公報等に記載される、一次粒子の長径の平均値が、基材の平均孔径の0.1倍以上であり且つ50μm以下である層状ケイ酸塩等の非導電性粒子を配合することは、メタノール非透過性を向上させる上で好ましい。
本発明で使用される固体高分子電解質膜の製造では、次いで、このような単量体組成物を、基材と接触させる。接触の方法としては、上記単量体組成物を基材へ塗布やスプレーしたり、あるいは基材を単量体組成物中へ浸漬したりする方法が例示される。製造が容易な点で、浸漬による方法が特に好ましい。浸漬時間は基材の種類や単量体組成物の組成にもよるが、一般的には0.1秒〜十数分である。
単量体組成物の重合は、公知の重合方法が制限なく採用される。一般的には、前記過酸化物からなる重合開始剤を用い、加熱により重合させる方法が、その操作が容易で、また比較的均一に重合させることができ好ましい。重合に際しては、酸素による重合阻害を防止し、また表面の平滑性を得るため、ポリエステル等のフィルムにより覆った後に重合させることがより好ましい。さらにフィルムで覆うことにより、過剰の単量体組成物が取り除かれ、薄く均一な固体高分子電解質膜とすることができる。
また、熱重合により重合させる場合の重合温度は特に制限されず、公知の条件を適宜選択して適用すればよいが、一般的には50〜150℃程度、好ましくは60〜120℃程度である。なお、単量体組成物中に溶媒が含まれている場合には、重合に先立って該溶媒を除去しておくことも可能である。
このようにして重合させて得られた膜状物は、重合性単量体にイオン交換基を有する重合性単量体を用いた場合には、そのまま本発明で使用される固体高分子電解質膜とすることもできるが、こうしたイオン交換基を導入可能な重合性単量体を用いた場合には、その導入操作を行う必要がある。当該イオン交換基の導入方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用すればよい。例えば、重合性単量体として主としてスチレンを用いた場合には、三酸化硫黄やクロルスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸と接触させ、その後必要に応じて加水分解することによりスルホン酸基を導入することができる。また、重合性単量体としてメタクリル酸エステルを用いた場合には、該エステル部分を加水分解することにより、カルボン酸基を導入することができる。むろん、重合性単量体としてイオン交換基を有す重合性単量体を用いた場合でも、膜状物に重合させた後、さらに必要に応じてイオン交換基を導入し、イオン交換基の密度を向上させても良い。
以上の方法によって得られる、本発明で使用される固体高分子電解質膜は、使用した単量体組成部やイオン交換基、基材の種類にもよるが通常、3mol/L−硫酸水溶液中での膜抵抗が、0.005〜0.6Ωcm2であり、好適には0.01〜0.5Ωcm2であることが好ましい。膜抵抗が0.005Ωcm2未満とすることは現実的には困難であり、0.6Ωcm2を超える場合には、膜抵抗が大きすぎ燃料電池用隔膜としては不利である。
このような膜抵抗を達成するよう、イオン交換容量は、0.2〜5mmol/g、好適には0.5〜3mmol/gであるのが好ましい。
また、乾燥によるプロトン伝導性の低下が生じ難いように含水率は7%以上、好適には10%以上であるのが好ましい。一般には含水率は7〜90%程度で保持される。このような範囲の含水率とするためには、イオン交換基の種類、イオン交換容量及び架橋度を制御すればよい。
さらに、固体高分子電解質膜は、膜抵抗を低く抑えるという観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与するという観点から、通常、5〜150μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは10〜90μmの厚みを有するものが望ましい。また、破裂強度が0.08〜1.0MPaであることが好ましい。破裂強度が0.08MPa未満である場合、機械的強度に劣るため燃料電池に組み込む際に亀裂が生じたり、ガス拡散電極として通常使用されるカーボンペーパーの繊維によってピンホールが発生するなどして好ましくない。さらに、破裂強度は、燃料電池を長期にわたって安定に運転するために0.1MPa以上であることが好ましく、一般には1.0MPaのものまで製造可能である。
本発明において、以上説明した固体高分子電解質膜表面への逆極性重合体の付着方法は特に限定されず、例えば、該逆極性重合体の溶液を一旦ポリテトラフルオロエチレンシートに塗布、乾燥して薄膜を形成し、これを固体高分子電解質膜に熱プレスなどで転写する方法や、該逆極性重合体を形成可能な単量体を固体高分子電解質表面にプラズマ重合して堆積させる方法などで製造することも可能であるが、製造方法の簡便性や、得られる本発明の燃料電池用隔膜における触媒電極層の高い接合性を勘案すると、以下の方法によるのが好適である。
即ち、前述の固体高分子電解質膜の少なくとも一方の表面に、逆極性重合体溶液を接触させ、該固体高分子電解質膜の表面に逆極性重合体を付着させる方法である。
本方法において、前記の重合体を溶解させる溶媒には特に制限はなく、溶解させる重合体の重量平均分子量や構造によって適宜選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−エトキシエタノール等のアルコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、1−オクタン等の脂肪族炭化水素類、オクタン酸等の脂肪酸類、ジメチルオクチルアミン等のアミン類、トルエン、キシレン、ナフタレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、メチレンクロライド、クロロホルム、エチレンブロマイド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等の芳香族酸や脂肪族酸のアルコールエステル類やアルキルリン酸エステル類等、水が挙げられる。
前記重合体溶液における逆極性重合体の濃度には特に制限はないが、0.005〜8質量%が好ましく、0.02〜2質量%がより好ましく、0.05〜1質量%が更に好ましい。0.005質量%未満の場合には、固体高分子電解質膜に逆極性重合体が所定量付着するに要する時間が長くなる。さらに、付着量が不十分となり、得られる燃料電池用隔膜−電極接合体の接合性が不十分となる場合がある。8質量%を超える場合には、固体高分子電解質膜表面に必要以上に逆極性重合体が付着して、メタノール水溶液への浸漬前後における付着量の差を実質的になくすことが困難になる。
上記逆極性重合体の付着方法では、次いで、この逆極性重合体溶液を固体高分子電解質膜へ接触させる。この接触の方法も特に制限されるものではなく、上記逆極性重合体溶液を固体高分子電解質膜へ塗布やスプレーしたり、あるいは固体高分子電解質膜を逆極性重合体溶液中へ浸漬したりする方法が例示される。製造が容易な点で、浸漬による方法が特に好ましい。浸漬による場合には、その浸漬時間は固体高分子電解質膜や逆極性重合体の種類、さらに逆極性重合体溶液の濃度や溶媒にもよるが、一般的には1分〜24時間である。電解質膜のイオン交換基と、逆極性重合体の有する荷電基がイオン結合を形成して、電解質膜上に逆極性重合体が強固に付着するよう、好適には5分以上浸漬するのが好ましく、また、逆極性重合体が必要以上に電解質膜に付着してメタノール浸漬前後での付着量に差が生じないように、浸漬時間が15時間を超えないようにするのが好ましい。
次いで、逆極性重合体溶液に接触させた固体高分子電解質膜を該溶液から取り出し、必要に応じて、乾燥させて溶媒を除去する。逆極性重合体を溶解させた溶媒が高誘電率の溶媒であったり、溶媒への逆極性重合体の溶解度が高い場合には、電解質膜のイオン交換基と、重合体の逆極性の荷電基とのイオン対形成が不十分となることがあるため、この場合には乾燥によりイオン対形成を促進することが有効である。ここで乾燥方法には特に制限はなく、使用した逆極性重合体溶液の濃度や溶媒に応じて、0〜100℃で1分〜5時間乾燥すればよい。充分に乾燥するために、熱風などを吹き付けたり、減圧下で乾燥してもよく、また、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中で乾燥してもよい。さらに、乾燥に際しては、溶媒の除去が不均一に起こって、重合体の付着量が不均一とならないように燃料電池用隔膜を枠体に固定するなどして張力をかけながら乾燥するのが有効である。
以上の方法によって得られる燃料電池隔膜は、一般的に、上記の付着方法で付着させた逆極性重合体の全てにおいて、固体高分子電解質膜のイオン交換基とイオン対を形成させるのは困難である。固体高分子電解質膜のイオン交換基とイオン対を形成していない逆極性重合体が存在した場合、この電解質膜を直接メタノール型燃料電池の隔膜として用いると、上述のように、これら重合体が電極触媒を被毒し燃料電池出力を低下させる原因になる。このため、本発明では、以下の洗浄方法によって、イオン対を形成していない逆極性重合体を除去し、該膜を、30℃の50質量%メタノール水溶液に浸漬した際に、浸漬の前後で、係る逆極性重合体の付着量に実質的に差がない状態のものにする。
すなわち、逆極性重合体を付着させた固体高分子電解質膜を、逆極性重合体を溶解可能な有機溶媒で洗浄する方法である。
本方法において、洗浄に用いる有機溶媒は、付着させた逆極性重合体を溶解可能であれば特に制限はなく、逆極性重合体の重量平均分子量や構造によって適宜選択すればよい。具体的には、付着工程における逆極性重合体溶液の溶媒がそのまま例示され、一般的には、付着工程で用いた逆極性重合体溶液の溶媒が用いられる。
洗浄の方法には特に制限はないが、操作の簡便性から、前記有機溶媒に逆極性重合体を付着させた固体高分子電解質膜を浸漬する方法が好適である。
浸漬による洗浄方法は、30℃の50質量%メタノール水溶液に浸漬した際に、浸漬の前後で、係る逆極性重合体の付着量に実質的に差がない状態になるまで適宜に実施すればよい。好適には0〜100℃で、10分間〜24時間、より好適には10分間〜10時間浸漬すれば良い。さらに、洗浄を効率的にするため、有機溶媒を新しく変えながら、2〜5回浸漬を繰り返すことも有効である。この場合には、全浸漬時間を10分間〜24時間となるようにする。
次いで、固体高分子電解質膜を該洗浄溶媒から取り出し、乾燥させて溶媒を除去する。得られる燃料電池隔膜に実質的に溶媒が残存していなければ、乾燥方法には特に制限はなく、洗浄溶媒の種類に応じて、0〜100℃で1分〜5時間乾燥すればよい。充分に乾燥するために、熱風などを吹き付けたり、減圧下で乾燥してもよく、また、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気中で乾燥してもよい。さらに、乾燥に際しては、溶媒の除去が不均一に起こって、燃料電池隔膜に歪が残らないように燃料電池用隔膜を枠体に固定するなどして張力をかけながら乾燥するのが有効である。
本発明の燃料電池用隔膜は、その両面に触媒電極層を接合させることで本発明の燃料電池用膜−電極接合体となる。触媒電極層は、固体高分子電解質型燃料電池に使用される公知のものを特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒電極層は触媒の金属粒子及びイオン伝導性物質からなる。このものは、多孔性材料からなる電極により支持されているものを、本発明の燃料電池用隔膜に接合してもよく、触媒電極層のみで燃料電池用隔膜に接合し、その上から多孔性材料からなる電極を積層して使用することも可能である。
上記の触媒電極層において、イオン伝導性物質には、使用した固体高分子電解質膜の有するイオン交換基と同極性のイオン交換基を有するものが使用される。イオン伝導性物質は、電解質膜と同極性のイオン交換基を有する点を除けば特に制限はなく、従来公知の同機能を有する物質が使用可能である。具体的には、陽イオン伝導性物質としてはDu Pont社製Nafion(商品名)などのパーフルオロカーボンスルホン酸類や、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリビニルイミダゾール、ポリオキサゾール、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィドなどのエンジニアリングプラスチック類のスルホン化物やアルキルスルホン化物、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロック共重合体などのエラストマー類のスルホン化物、ポリスチレンスルホン酸、さらにこれらの誘導体などが挙げられ、陰イオン伝導性物質としては、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアニリン、ポリジエチルアミノエチルスチレン、ポリビニルイミダゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、クロルメチル化ポリスチレンのアルキル化物、さらにこれらの誘導体や、これらの完全な又は部分的な窒素原子の4級化物が挙げられる。
上記の触媒電極層における触媒としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に制限されるものではないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中でも、触媒活性が優れている白金やルテニウムあるいは白金とルテニウムの合金が好適である。
なかでも、燃料電池用として用いることを考慮すると、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックや、活性炭、黒鉛等の導電性カーボンからなる担体上に、反応触媒となる金属が坦持されたものが特に好ましい。このような触媒を坦持した導電性カーボンとしては公知のいかなるものを用いてもよい。燃料電池の電極用として用いられる触媒を坦持した導電性カーボンとしては、例えば、特開2002−329500号公報、特開2002−100373号公報、特開平7−246336号公報等に記載のものが使用できるし、また、坦持されている触媒や担体の異なる様々なものが商業的に入手可能であり、それをそのまま、あるいは必要な処理を行った後に用いても良い。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒となる金属の含有量は、電極触媒層をシートとした状態で、通常、0.01〜10mg/cm2、より好ましくは0.1〜5.0mg/cm2である。触媒の含有量が0.01mg/cm2未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cm2を超えて担持させても性能は飽和する。
これら成分からなる触媒電極層を、本発明の燃料電池用隔膜上に形成させて燃料電池用隔膜−触媒電極接合体が得られる。触媒電極層は、燃料電池用隔膜との接合側表面に5〜50μmの厚みになるよう形成されるのが好ましい。その製造方法は、前記各成分と有機溶媒とが混合された触媒電極ペーストを燃料電池用隔膜にスクリーン印刷やスプレー塗布して乾燥させる方法によるのが一般的である。上記触媒電極ペーストには、触媒坦持量の調整や触媒電極層の膜厚を調整するため、暫時有機溶媒を添加して粘度調整を行なうのが一般的である。
また、前記触媒電極層をそのまま本発明の燃料電池用隔膜上に形成させる方法として、上記と同様の方法により触媒電極層を一旦ポリテトラフルオロエチレンやポリエステルフィルム上に形成させ、これを、燃料電池用隔膜に転写させる方法も好適に採用できる。
この場合には、触媒電極層の転写は一般に、ホットプレス機、ロールプレス機等の加圧、加温できる装置を用いて熱圧着により実施される。プレス温度は一般的には80℃〜200℃であり、プレス圧力は、使用する触媒電極層の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
さらに本発明の燃料電池用隔膜−触媒電極接合体は、触媒電極層を多孔質の電極基材に支持させた後本発明の燃料電池用隔膜に接合して製造しても良い。多孔質の電極基材には、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは50〜300μmであることが、その空隙率は50〜90%であることが好ましい。これら電極基材に前記触媒電極ペーストを塗布した後乾燥させ、次いで上記と同様に本発明の燃料電池用隔膜に熱圧着させることで製造される。
このようにして製造された燃料電池用隔膜−触媒電極接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質用燃料電池に装着されて使用される。
本発明を更に具体的に説明するため、以下、実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例および比較例に示す燃料電池用隔膜や燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性は、以下の方法により測定した値を示す。
1)イオン交換容量
燃料電池用隔膜を1mol/l−HCl水溶液に10時間以上浸漬する。
その後、燃料電池用隔膜が陽イオン交換性の場合には、1mol/l−NaCl水溶液でイオン交換基の対イオンを水素イオンからナトリウムイオンに置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。一方、燃料電池用隔膜が陰イオン交換性の場合には、1mol/l−NaNO3水溶液で対イオンを塩化物イオンから硝酸イオンに置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。
次に、同じ隔膜を1mol/l−HCl水溶液に4時間以上浸漬した後、イオン交換水で隔膜を十分水洗した。隔膜表面のイオン交換水を除去した後、湿潤時の重さ(Wg)を測定した。その後、60℃で5時間減圧乾燥して乾燥時の重さ(Dg)を測定した。
上記測定値に基づいて、燃料電池用隔膜のイオン交換容量、含水率を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[mmol/g−乾燥重量]
含水率=100×(W−D)/D[%]
2)膜抵抗
白金黒電極を備えた2室セル中に燃料電池用隔膜を挟み、隔膜の両側に3mol/L−硫酸水溶液を満たして、交流ブリッジ(周波数1000サイクル/秒)により25℃における電極間の抵抗を測定した。同様にして燃料電池用隔膜を設置せずに電極間の抵抗を測定し、これと隔膜を設置した場合の電極間の抵抗の差により膜抵抗を求めた。上記測定に使用する隔膜は、あらかじめ3mol/L−硫酸水溶液中で平衡にしたものを用いた。
3)逆極性重合体の固体高分子電解質膜への付着総量(溶媒浸漬法)
0.5mol/l水酸化ナトリウム水溶液とメタノールの等質量混合溶液40mlを用意した。この溶液に、逆極性重合体が付着した燃料電池用隔膜(8cm×8cm)を、室温で16時間浸漬し、逆極性重合体を溶出させた。次いで、得られた溶液を液体クロマトグラフィーで分析した。ポリ4−ビニルピリジン(重量平均分子量16万)、またはポリエチレンイミン(重量平均分子量7万)を用いて作製した検量線を用いて、溶出した逆極性重合体量を求めた。この測定結果を燃料電池用隔膜の上下両面の面積(128cm2)で除して、燃料電池用隔膜片面の単位面積(cm2)当たりの付着量を算出し、この値を逆極性重合体の付着総量とした。
4)逆極性重合体の固体高分子電解質膜表面への付着量
・ATR法(付着量が0.001mg/cm2以上の場合に適用)
逆極性重合体が付着した燃料電池用隔膜(10mm×45mm)2枚をゲルマニウム光学結晶(20mm×50mm×3mm)の上下両面に重ねて試料を調製した。25℃で50%RHの環境下で、赤外分光装置(パーキンエルマー製スペクトラムワン)を用いて、全反射吸収スペクトル法に従って、入射角45°で、前記試料の多重反射法赤外分光スペクトルを測定した。
一方、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリ4−ビニルピリジン(重量平均分子量16万)、またはポリエチレンイミン(重量平均分子量7万)を所定量塗布して標準サンプルを調製した。調製した標準サンプルを用いて同様の測定を行い、ピリジン基(1640cm−1)またはイミン基(1641cm−1)の特性吸収に元づく吸収強度を測定した。これらのデータを用いて検量線を作製した。この検量線を用いて、燃料電池用隔膜表面における逆極性重合体の、単位平面積(cm2)当たりの付着量を求めた。
・溶媒浸漬法を応用した方法(付着量が0.001mg/cm2未満の場合に適用)
まず、上記3)で説明した溶媒浸漬法を実施して、この状態での逆極性重合体の付着総量を求めた。
次いで、別に切り出した燃料電池用隔膜について、粗粒がなく平均粒子径が約30μmの酸化アルミナの粉末を0.2MPaの圧力で電解質膜表面より100mmの高さから30秒間吹き付けることにより、1μmの厚みで表層部を削り取った。その後、この表層部を削り取った電解質膜を用いて、再び、溶媒浸漬法を実施して、その量を求めることにより、該表層部を削り取った電解質膜内部に浸入していた逆極性重合体の実質的な量を求めた。そして、表層部を削り取る前の付着総量より、表層部を削り取った後の付着総量を差し引くことにより、逆極性重合体の膜表面への付着量を算出した。
なお、後述する実施例7と実施例10で製造した固体電解質膜を用いて、この溶媒浸漬法を応用した方法による求められる電解質膜表面への付着量と、前記ATR法により求められる同付着量を比べると、前者の方法により求められる付着量は、実施例7が0.0015mg/cm2であり、実施例10が0.0021mg/cm2であった。一方、ATR法で求められる、これら実施例の付着量は、後述の表4に示されるように上記値と全く同じであった。この結果から、両方法により実質的に同じに逆極性重合体の電解質膜への表面付着量が求められることが確認できた。
5)50質量%メタノール水溶液浸漬前後における逆極性重合体の固体高分子電解質膜表面への付着量
燃料電池隔膜(8cm×8cm)を、30℃の50質量%メタノール水溶液50mlに室温で30分間浸漬した。隔膜をメタノール水溶液から取り出し、同じ浸漬操作を3回繰り返した後、隔膜を室温で5時間乾燥した。その後、3)で説明したATR法または溶媒浸漬法を応用した方法により逆極性重合体の付着量を測定し、メタノール水溶液浸漬後の電解質膜表面への逆極性重合体の付着量を求めた。
6)接合性
作成直後の燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を用い、JISK−5400のXカットテープ法に準拠し、テープ剥離試験を行った。テープ剥離後、イオン交換膜上に残った電極層の状態を目視で10点法により評価し、作成直後の接合性とした。
また、後述の直接メタノール型での燃料電池出力電圧試験において耐久性評価後にセルから燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を取り出し、作成直後と同様にしてテープ剥離試験を行い、その接合性を評価した。
7)直接メタノール型燃料電池出力電圧
燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の両面を、厚みが200μmであり、空孔率が80%のカーボンペーパーで挟み込み、図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んだ。次いで、燃料電池セル温度を25℃に設定し、燃料極側に20重量%メタノール水溶液を1ml/minの流量で供給し、酸化剤極側には大気圧の酸素を200ml/minで供給して発電試験を行ない、電流密度0A/cm2、0.1A/cm2におけるセルの端子電圧を測定した。
8)耐久性評価
上記の燃料電池出力電圧の測定後、25℃、0.1A/cm2で連続発電試験を行い、250時間後の出力電圧を測定し、燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の耐久性を評価した。
製造例1
スチレン100質量部、ジビニルベンゼン10質量部(全重合性単量体中8.0モル%)、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート5質量部よりなる単量体組成物を調整し、これにポリエチレン(PE、重量平均分子量25万)製の多孔質膜(膜厚25μm、空隙率37%、平均孔径0.03μm)を大気圧下、25℃で10分浸漬し、単量体組成物を含浸させた。
続いて、多孔質膜を単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。
得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1混合物中に40℃で45分間浸漬し、スルホン酸型陽イオン交換膜を得た。得られた陽イオン交換膜のイオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚を測定した。これらの結果を表2に示した。
製造例2〜4
製造例1の単量体組成物と多孔質膜を表1に示すものに変えた以外は同様にして陽イオン交換膜を得た。これら陽イオン交換膜のイオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚を測定した結果を表2に示した。
製造例5
製造例1の陽イオン交換膜を室温で24時間乾燥した後、4−ビニルピリジン100質量部、ジビニルベンゼン80質量部(全重合性単量体中39.0モル%)、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート5質量部、トルエン900質量部、ピリジン200質量部よりなる単量体組成物中に室温で30分間浸漬した。
続いて、上記イオン交換膜を単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材としてイオン交換膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合し、さらに得られた重合物をメタノールに2時間浸漬して、アニオン交換基を持つ陽イオン交換膜を得た。
上記陽イオン交換膜のカチオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚測定した結果を表2に示す。さらに、上記陽イオン交換膜を元素分析し、カチオン交換基量はSの含有量から、アニオン交換基量はNの含有量から求めたところ、それぞれ、カチオン交換基量は2.4mmol/g、アニオン交換基量は1.2mmol.gであった。
製造例6
クロルメチルスチレン90質量部、ジビニルベンゼン10質量部(全重合性単量体中8.0モル%)、ポリエチレングリコールジエポキシド(分子量400)5質量部、t−ブチルパーオキシエチルヘキサノエート5質量部よりなる単量体組成物を調整し、これにポリエチレン(PE、重量平均分子量25万)製の多孔質膜(膜厚25μm、空隙率37%、平均孔径0.03μm)を大気圧下、25℃で10分浸漬し、単量体組成物を含浸させた。
次いで、多孔質膜を単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離材として多孔質膜の両側を被覆した後、0.3MPaの窒素加圧下、80℃で5時間加熱重合した。
続いて、得られた膜状物を30質量%トリメチルアミン10質量部、水5質量部、アセトン5質量部よりなるアミノ化浴中、室温で5時間反応せしめ4級アンモニウム塩型陰イオン交換膜を得た。
得られた陰イオン交換膜のアニオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚を測定した結果を表2に示した。
実施例1
製造例1の陽イオン交換膜を、ポリエチレンイミン(重量平均分子量1万)の0.3質量%水溶液に室温で15分間浸漬し、次いで、25℃、大気圧下で16時間、さらに40℃の減圧下で5時間乾燥した。その後、隔膜をイオン交換水に室温で30分間、溶媒を変えて浸漬を3回行い、さらに、室温で5時間乾燥し、本発明の燃料電池用隔膜を得た。
別に、ポリテトラフルオロエチレンシート上に、白金とルテニウム合金触媒(ルテニウム50mol%)50質量%担持のカーボンブラックと、パーフルオロカーボンスルホン酸のアルコールと水の5%溶液(デュポン社製、商品名ナフィオン)を混合したものを触媒が3mg/cm2となるように塗布し、80℃で4時間減圧乾燥し触媒電極層を作成した。
次に、燃料電池用隔膜の両面に上記の触媒電極層をセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスして燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を作成した。得られた燃料電池用隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚、逆極性重合体の付着量を測定した結果と、本燃料電池隔膜を用いて作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の接合性、燃料電池出力電圧、耐久性を評価した。結果を表4に示した。
実施例2
ポリエチレンイミンの重量平均分子量を7万に変えた以外は、実施例1と同様にして燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚、逆極性重合体の付着量を測定した結果と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の接合性、燃料電池出力電圧、耐久性を評価した。結果を表4に示した。
比較例1
製造例1の陽イオン交換膜をそのまま燃料電池用隔膜として、実施例1と同様にして燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を作成した。接合性、燃料電池出力電圧、耐久性を評価した結果を表4に示した。
比較例2
イオン交換水への浸漬洗浄を行わなかった点を除き、実施例2と同様にして燃料電池隔膜を作成した。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
比較例3
非架橋の陽イオン交換膜であるパーフルオロカーボンスルホン酸膜(Du Pont社製Nafion117、膜物性は表2に記載)を用いた以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンイミンを付着させた燃料電池用隔膜を得た。本燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
実施例3
製造例1の陽イオン交換膜を、ポリ−2−ビニルピリジン(重量平均分子量1.6万)の0.2質量%メタノール溶液に室温で15分間浸漬し、次いで、25℃、大気圧下で10時間乾燥した。引き続き、隔膜を100%メタノールに室温で30分間、溶媒を変えながら3回浸漬し、さらに室温で5時間乾燥して、本発明の燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
実施例4〜13
陽イオン交換膜、付着させる逆極性重合体の種類、逆極性重合体のメタノール溶液濃度を表3に示したものに変えた以外は実施例3と同様にして燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
実施例14
製造例1の陽イオン交換膜を、ポリ4−ビニルピリジン(重量平均分子量16万)の0.2質量%メタノール溶液に、室温で15分間浸漬した。次いで、陽イオン交換膜を取り出して、25℃、大気圧下で10時間乾燥した。引き続き、隔膜を50質量%のメタノール水溶液に50℃で24時間浸漬し、さらに室温で5時間乾燥して、本発明の燃料電池隔膜を得た。得られた燃料電池隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
比較例4
メタノールへの浸漬洗浄を行わなかった点を除き、実施例4と同様にして燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
比較例5
パーフルオロカーボンスルホン酸膜(Du Pont社製Nafion117、膜物性は表2に記載)を用いた以外は実施例4と同様にして、ポリ4−ビニルピリジンを付着させた燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
比較例6
製造例5の陽イオン交換膜をそのまま燃料電池用隔膜として、実施例1と同様にして燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を作成した。接合性、直接メタノール型での燃料電池出力電圧、耐久性を評価した結果を表4に示した。
比較例7
メタノールへの浸漬洗浄を行わなかった点を除き、実施例13と同様にして燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜と、本燃料電池隔膜を用いて実施例1と同様にして作成した燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の特性を評価した結果を表4に示した。
実施例15
製造例6の陰イオン交換膜を、ポリスチレンスルホン酸(分子量75000)の0.2質量%水溶液に室温で15分間浸漬し、次いで、25℃、大気圧下で16時間、さらに40℃の減圧下で5時間乾燥した。その後、隔膜をイオン交換水に室温で30分間、溶媒を変えて浸漬を3回行い、さらに、室温で5時間乾燥し、本発明の燃料電池用隔膜を得た。得られた燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜抵抗、膜厚、逆極性重合体の付着量を測定した結果を表4に示した。
次いで、この燃料電池用隔膜上に、実施例1で用いた白金とルテニウム合金触媒が担持されたカーボンブラックと、ポリ(4−ビニルピリジン)のN−メチル化樹脂(分子量6万、メチル化率20mol%)の5%N,N−ジメチルホルムアミド溶液を混合したものを触媒が3mg/cm2となるように塗布し25℃で5時間、80℃で4時間減圧乾燥した。続いて、上記の膜状物を100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱圧着し、更に室温で2分間放置し、燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を得た。得られた燃料電池用隔膜−触媒電極接合体の接合性、燃料電池出力電圧、耐久性を評価した。結果を表4に示した。
比較例8
製造例6の陰イオン交換膜をそのまま燃料電池用隔膜として、実施例15と同様にして燃料電池用隔膜−触媒電極接合体を作成した。接合性、水素燃料型での燃料電池出力電圧、耐久性を評価した結果を表4に示した。