JP2007119336A - 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガラス母材から切り出された磁気ディスク用ガラス基板となる領域において、端面にテーパがつかないようにし、後の形状加工を容易として、例えば、1平方インチ当り60ギガビット以上の高記録密度を実現することができる平坦平滑な磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、磁気ディスクを、大量に、かつ、廉価にて安定的に供給する。
【解決手段】ガラス母材2の主表面に対しこのガラス母材2の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有しガラス母材2における磁気ディスク用ガラス基板となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みを入れ、この切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域をガラス母材2より分離させる。
【選択図】図2

Description

本発明はHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気ディスク装置に用いられる磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法に関する。
今日、情報記録技術、特に、磁気記録技術は、いわゆるIT産業の発達に伴って飛躍的な技術革新が要請されている。そして、コンピュータ用ストレージとして用いられるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気ディスク装置に搭載される磁気ディスクにおいては、磁気テープやフレキシブルディスクなどの他の磁気記録媒体と異なり、急速な情報記録密度の増大化が続けられている。パーソナルコンピュータ装置に収納することのできる情報容量は、このような磁気ディスクの情報記録密度の増大に支えられて、飛躍的に増加している。
そして、磁気ディスク用の基板としては、ガラス製の基板を好適に用いることができる。ガラス基板においては、平滑な表面が得られるので、磁気ディスク上を飛行走行しながら記録再生を行う磁気ヘッドの浮上量を狭隘化することが可能だからである。すなわち、ガラス基板を用いることにより、高い情報記録密度の磁気ディスクを得ることができる。
通常、磁気ディスクの高記録密度化に資するガラス基板としては、例えば、特許文献1において実施例として記載されているように、まず、溶融ガラスから円板状にプレス成型されたガラスディスクを作成し、このガラスディスクに対して、順次、研削加工及び研磨加工等を施して製造されたものが使用されている。
また、本件出願人は、先に、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法として、特許文献2に記載されているように、ガラス母材から切り出してガラスディスクを製造する方法を提案している。この磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、磁気ディスク用ガラス基板の大きさに略々相当するガラスディスクの大きさに対して、十分に大きな面積を有するガラス母材をまず作成し、このガラス母材に対してカッター刃などによって切り込みを入れ、この切り込みにおいてガラス母材を割ることにより、ガラスディスクを切り出すようにしたものである。この磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、ガラスディスクの周縁部における欠け、ひび、割れといった欠陥の発生が防止され、磁気ディスク用ガラス基板を大量に安定的に供給することができる。
特開平11−154325号公報 特開2005−225713公報
ところで、近年、磁気ディスクにおいては、情報記録密度が1平方インチ当り60ギガビットを超えるまでに到っており、さらに、1平方インチ当り100ギガビットを超えるような超高記録密度をも実現されようとしている。このように高い情報記録密度が実現できるようになった近年の磁気ディスクは、従来の磁気ディスクに比較してずっと小さなディスク面積であっても、実用上十分な情報量を収納できるという特徴を有している。
また、磁気ディスクは、他の情報記録媒体に比較して、情報の記録速度や再生速度(応答速度)が極めて敏速であり、情報の随時書き込み及び読み出しが可能であるという特徴も有している。
このような磁気ディスクの種々の特徴が注目された結果、近年においては、携帯型のいわゆるMP3プレーヤ、携帯電話装置、デジタルカメラ、携帯情報機器(例えば、PDA(personal digital assistant):パーソナルデジタルアシスタント)、あるいは、「カーナビゲーションシステム」などのように、パーソナルコンピュータ装置よりも筐体がずっと小さく、かつ、高い応答速度が求められる機器に搭載できる小型のハードディスクドライブが求められるようになってきている。
このような、携帯用のいわゆる「モバイル機器」において使用される小型のハードディスクドライブは、常に、落下や振動等による衝撃といった撃力に曝される。したがって、このような機器に使用されるハードディスクドライブに使用する磁気ディスクとして、いっそうガラス基板を用いた磁気ディスクの有用性が着目されている。硬質材料であるガラスからなるガラス基板は、軟質材料である金属からなる基板に比較して、剛性が高いという特徴を有しているからである。また、ガラス基板は、化学強化等の手段により、所望の強度を得ることができるという特徴をも有しているからである。
そこで、本件出願人らは、前述したように、まず比較的大径のガラス母材を作成し、このガラス母材を切断することによって、このガラス母材から小径のガラスディスクを切り出すという製造方法を用いることにより、大量の同一品質のガラスディスクを同時に得ることを可能とし、大量の安定した品質の磁気ディスク用ガラス基板を廉価に供給している。
ところが、近年においては、安定した品質の磁気ディスク用ガラス基板をより大量に、かつ、より廉価に供給することに対する要望が高まっており、前述した従来の製造方法よりも一層の製造の容易化や迅速化が必要となってきている。前述した特許文献2に記載された技術においては、ガラスディスクの外縁に相当する第1の切り込みの他に、補助的に第2の切り込みを入れることによって、ガラスディスクの切り出しが良好に行われるようにしている。ここで、切り出されるガラスディスクの品質を劣化させることなく、第2の切り込みを入れることを不要とすることができれば、より一層の製造の容易化及び迅速化を実現することができる。
そこで、本発明は、前述のような実情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、欠陥が少なく、例えば、1平方インチ当り60ギガビット以上の高記録密度を実現することができる平坦平滑な磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、磁気ディスクを、大量に、かつ、廉価にて安定的に供給することである。
また、本発明の第2の目的は、例えば、携帯用のいわゆるMP3プレーヤ、携帯電話装置、デジタルカメラ、携帯情報機器(例えば、PDA(personal digital assistant):パーソナルデジタルアシスタント)、あるいは、「カーナビゲーションシステム」のような、パーソナルコンピューターよりも筐体が小さく、かつ、高い応答速度を求められる機器に搭載できる小型ハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、磁気ディスクを、大量に、かつ、廉価にて安定的に供給することである。
本発明者は、前記課題を解決すべく研究を進めた結果、磁気ディスク用ガラス基板の製造工程において、ガラス母材の主表面に対し磁気ディスク用ガラス基板となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みを入れるにあたり、この切り込みの深さのガラス母材の厚さに対する割合を制御することによって、前記課題が解決できるとの知見を得た。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
〔構成1〕
板状のガラス母材から磁気ディスク用ガラス基板を切り出す磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、ガラス母材の主表面に対しこのガラス母材の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有し該ガラス母材における磁気ディスク用ガラス基板となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みを入れ、この切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域をガラス母材より分離させることを特徴とするものである。
〔構成2〕
構成1を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材の主表面に対し、切り込みの描く閉曲線の外側となる部分において力を加えることにより、切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域を前記ガラス母材より分離させることを特徴とするものである。
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、切り込みは、ガラス母材の主表面に対して略々垂直に形成されることを特徴とするものである。
〔構成4〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、切り込みは、カッター刃によって形成され、カッター刃は、カッター刃の稜線の両側におけるガラス母材の主表面に対する刃角が略々同一となされて使用されることを特徴とするものである。
〔構成5〕
構成1乃至構成4のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材の厚さは、2.0mm以下であり、磁気ディスク用ガラス基板となる領域は、直径30mm以下の円形であることを特徴とするものである。
〔構成6〕
構成1乃至構成5のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材は、アルミノシリケートガラスからなることを特徴とするものである。
〔構成7〕
構成1乃至構成6のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、1インチ型ハードディスクドライブ、または、1インチ型ハードディスクドライブよりも小径の磁気ディスクを用いるハードディスクドライブに搭載する磁気ディスク用ガラス基板を製造することを特徴とするものである。
〔構成8〕
構成1乃至構成7のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、板状のガラス母材は、溶融金属の上で板状とされたものであり、ガラス母材が溶融金属に接触した側の面に、切り込みを入れることを特徴とするものである。
〔構成9〕
構成1乃至構成7のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、板状のガラス母材は、溶融金属の上で板状とされたものであり、ガラス母材の2つの表面のうち、相対的に表面うねりが小さい面に、切り込みを入れることを特徴とするものである。
〔構成10〕
磁気ディスクの製造方法であって、構成1乃至構成9のいずれか一を有する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られた磁気ディスク用ガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とするものである。
本発明による磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、ガラス母材の主表面に対してこのガラス母材の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有しガラス母材における磁気ディスク用ガラス基板となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みを入れ、この切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域をガラス母材より分離させる。
したがって、本発明によれば、ガラス母材から切り出された磁気ディスク用ガラス基板となる領域において、端面が主表面に対して略々垂直となり、後の形状加工が容易となるので、欠陥が少なく、例えば、1平方インチ当り60ギガビット以上の高記録密度を実現することができる平坦平滑な磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、磁気ディスクを、大量に、かつ、廉価にて安定的に供給することができる。
また、本発明によれば、例えば、携帯用のいわゆるMP3プレーヤ、携帯電話装置、デジタルカメラ、携帯情報機器(例えば、PDA(personal digital assistant):パーソナルデジタルアシスタント)、あるいは、「カーナビゲーションシステム」のような、パーソナルコンピューターよりも筐体が小さく、かつ、高い応答速度を求められる機器に搭載できる小型ハードディスクドライブに用いて好適な磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、磁気ディスクを、大量に、かつ、廉価にて安定的に供給することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法は、図1に示すように、板状ガラス1の表面を研削加工してガラス母材2とし、このガラス母材2を切断してガラスディスク3を切り出し、少なくともガラスディスク3の表面の研磨加工を行って磁気ディスク用ガラス基板4を製造するものである。
本発明において研削加工に供する板状ガラス1としては、様々な板状ガラスを用いることができる。この板状ガラス1の形状は、矩形状であっても、ディスク状(円盤状)であってもよい。ディスク状の板状ガラスは、従来の磁気ディスク用ガラス基板の製造において用いられている研削装置を用いて研削加工を行うことができ、信頼性の高い加工を安価にて行うことができる。
板状ガラス1のサイズは、製造しようとする磁気ディスク用ガラス基板4より大きいサイズである必要がある。例えば、「1インチ型ハードディスクドライブ」、あるいは、それ以下のサイズの小型ハードディスクドライブに搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板4を製造する場合にあっては、この磁気ディスク用ガラス基板4の直径は略々20mm乃至30mm程度であるので、ディスク状の板状ガラス1の直径としては、30mm以上、好ましくは、48mm以上であることが好ましい。特に、直径が65mm以上のディスク状の板状ガラス1を用いれば、1枚の板状ガラス1から、複数の「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板4を採取することができ、大量生産に好適である。板状ガラス1のサイズの上限については、特に限定する必要はないが、ディスク状の板状ガラス1の場合には、直径が100mm以下のものを用いることが好ましい。
この板状ガラス1は、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、または、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、プレス法を用いれば、板状ガラス1を廉価に製造することができる。
フロート法は、溶解させたガラス材料を、溶融金属上に流し、板状に成形した板状ガラスを製造する方法の一つである。このフロート法によって製造された板状ガラスは、その製造工程の特性から、他の板状ガラスの製造方法に比べて平坦な板状ガラスを製造することができる。そのため、フロート法によって製造した板状ガラスから磁気ディスク用ガラス基板を製造する際には、表面の粗研削加工を行うことなく、磁気ディスク用ガラス基板を製造することが可能である。
ところで、そして、フロート法によって製造された板状ガラスの一方の主表面は溶融金属と接した状態でシート状に形成され、他方の主表面は大気と接した状態でシート状に形成される。その結果、このフロート法によって製造された板状ガラスの2つの主表面は、表面うねりに差がある。具体的には、フロート法で製造された板状ガラスの、溶融金属に接していた側の主表面のほうが、他方の主表面よりも表面うねりが小さい。
また、本発明で利用する板状ガラス1の材料としては、アモルファスガラスやガラスセラミクス(結晶化ガラスともいう)を用いることができる。そして、後述するガラスディスクの切り出しにおける加工性や安全性等を勘案すると、アモルファスガラスが好ましい。このようなアモルファスガラスとしては、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
研削加工は、ワーク、すなわち、板状ガラス1の主表面の形状精度(例えば、平坦度)や寸法精度(例えば、板厚の精度)を向上させることを目的とする加工である。この研削加工は、板状ガラス1の主表面に、砥石、あるいは、定盤を押圧させ、これら板状ガラス1及び砥石または定盤を相対的に移動させることにより、板状ガラス1の主表面を研削することにより行われる。このような研削加工は、遊星歯車機構を利用した両面研削装置を用いて行うことができる。
また、この研削加工においては、板状ガラス1の主表面に研削液を供給することにより、スラッジ(研削屑)を研削面から洗い流し、また、研削面を冷却するとよい。さらに、この研削液に遊離砥粒を含有させたスラリーをワークの主表面に供給して研削してもよい。
研削加工において用いる砥石としては、ダイヤモンド砥石を用いることができる。また、遊離砥粒としては、アルミナ砥粒やジルコニア砥粒、または、炭化珪素砥粒などの硬質砥粒を用いるとよい。
この研削加工により、板状ガラス1の形状精度が向上し、主表面の形状が平坦化されるとともに板厚が所定の値となるまで削減されたガラス母材2が形成される。
本発明においては、ガラス母材2の主表面が研削加工により平坦となされ、また、板厚が削減されているので、このガラス母材2を切断して、このガラス母材2からガラスディスク3を切り出すことができる。すなわち、本発明においては、ガラス母材2からガラスディスク3を切り出すときに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生することを防止することができる。
ガラス母材2の平坦度としては、例えば、7088mm(直径95mmの円の面積)において、30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。ガラス母材2の平坦度が30μmを超えると、表面の平坦性が充分といえず、ガラスディスク3を切り出すときに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生しやすいことが判明している。
また、ガラス母材2の板厚としては、2mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがより好ましい。なお、ガラス母材2の板厚が0.2mm未満であると、ガラス母材2自体が、ガラスディスク3を切り出す工程における負荷に耐えられない虞れがあるので、ガラス母材2の板厚は、0.2mm以上とすることが好ましい。ガラス母材2の板厚が2mmを超えると、板厚が厚すぎるために精密な切り出しができない虞れがあり、また、ガラスディスク3を切り出すときに、欠け、ひび、割れといった欠陥が発生する虞れがある。
ガラス母材2のサイズは、製造しようとする磁気ディスク用ガラス基板4より大きいサイズである必要がある。例えば、「1インチ型ハードディスクドライブ」、あるいは、それ以下のサイズの小型ハードディスクドライブに搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板4を製造する場合にあっては、磁気ディスク用ガラス基板4の直径は略々20mm乃至30mm程度であるので、ガラス母材2の直径としては、30mm以上、好ましくは、48mm以上であることが好ましい。特に、直径が65mm以上のガラス母材2を用いれば、1枚のガラス母材2から、「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板4となるガラスディスク3を複数枚切り出すことができ、大量生産に好適である。ガラス母材2のサイズの上限については、特に限定する必要はないが、ディスク状のガラス母材2の場合には、直径が100mm以下とすることが好ましい。
ガラス母材2の切断は、ダイヤモンドカッタやダイヤモンドドリルなど、ガラスよりも硬質な物質を含む切刃や砥石を用いて行うことができる。また、ガラス母材2の切断は、レーザカッタを用いて行ってもよい。ただし、レーザカッタを用いて直径30mm以下のような小型のガラスディスク3を精密に切り出すことは困難な場合があり、切刃や砥石を用いるほうが簡便に切り出しを行うことができ、好適である。
ガラス母材2からのガラスディスク3の切り出しを行うには、まず、図2に示すように、ガラス母材2の主表面に対し、このガラス母材2における磁気ディスク用ガラス基板4となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みCを入れる。この切り込みCは、ガラス母材2の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有するものとすることが好ましい。
ガラス母材2がフロート法によって製造されたものである場合には、このガラス母材2の主表面に対する切り込みCは、このガラス母材2が溶融金属に接触していた側の面(ボトム面)に入れることが好ましい。
また、ガラス母材2がフロート法によって製造されたものである場合には、切り込みCは、このガラス母材2の2つの表面のうち、相対的に表面うねりが小さい面に入れることが好ましい。なお、ここで表面うねりとは、ガラス母材2の表面に形成されている表面形状であって、形状波長が0.1mm以上5mm以下である波長帯域の形状を選択したものである。
なお、このような表面うねりの観察装置としては、フェイズシフトテクノロジー社製のオプチフラットを好ましく利用することができる。
なお、本実施形態で表面うねりの最大高さをPVと呼称することがある。表面うねりの最大高さ(PV)とは、表面うねり形状の平均面を算出し、この平均面に対して最も高い山の高さの絶対値と、この平均面に対して最も低い谷の深さの絶対値とを足し合わせた値である。
そして、ガラス母材2の主表面に対し切り込みCの描く閉曲線の外側となる部分において力を加えることにより、図3乃至図5に示すように、切り込みCにおいて、磁気ディスク用ガラス基板となる領域、すなわち、ガラスディスク3をガラス母材2より分離させる。このようにして、ガラスディスク3が切り出される。
ここで、ガラス母材2から切り出されるガラスディスク3のサイズとして、特に好適なサイズは、直径30mm以下である。このような小径サイズのガラスディスク3を切り出す場合において、特に、本発明の作用効果が顕著に発揮されることとなる。
そして、本発明においては、ガラス母材2から切り出されたガラスディスク3に対して、少なくとも研磨加工を施し、ガラスディスク3の主表面を鏡面化し、磁気ディスク用ガラス基板4とする。この研磨加工を施すことにより、磁気ディスク用ガラス基板4の主表面の表面粗さは、Rmaxで6nm以下、Raで0.6nm以下となされる。磁気ディスク用ガラス基板4の主表面がこのような鏡面となっていれば、この磁気ディスク用ガラス基板4を用いて製造される磁気ディスクにおいて、磁気ヘッドの浮上量が、例えば、10nm未満である場合であっても、いわゆるクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生を防止することができる。
この研磨加工においては、例えば、前出の特許文献1(特開平11−154325号公報)に記載されているような研磨方法を利用することができる。すなわち、この研磨加工は、ガラスディスク3の主表面に、研磨パッドが貼り付けられた定盤を押圧させ、ガラスディスク3の主表面に研磨液を供給しながら、これらガラスディスク3及び定盤を相対的に移動させ、ガラスディスク3の主表面を研磨することにより行われる。このとき、研磨液には、研磨砥粒を含有させておくとよい。研磨砥粒としては、酸化セリウムやコロイダルシリカを用いることができる。
なお、本発明においては、ガラスディスク3を研磨する前に、研削加工をしておくことが好ましい。このときの研削加工は、前述した板状ガラス1に対する研削加工と同様の手段により行うことができる。ガラスディスク3を研削加工してから研磨加工を行うことにより、より短時間で、主表面が鏡面化された磁気ディスク用ガラス基板4を得ることができる。
また、本発明においては、ガラスディスク3の端面を鏡面研磨しておくことが好ましい。ガラスディスク3の端面は切断形状となっているので、この端面を鏡面に研磨しておくことにより、パーティクルの発生を抑制することができ、この磁気ディスク用ガラス基板4を用いて製造された磁気ディスクにおいて、いわゆるサーマルアスペリティ障害を良好に防止することができるからである。
そして、本発明においては、ガラスディスク3の研磨工程の後には、化学強化処理を施すことが好ましい。化学強化処理を行うことにより、磁気ディスク用ガラス基板4の表面に高い圧縮応力を生じさせることができ、耐衝撃性を向上させることができる。特に、ガラスディスク3の材料としてアルミノシリケートガラスを用いている場合には、好適に化学強化処理を行うことができる。
前述のようにして磁気ディスク用ガラス基板4を製造する本発明は、「1インチ型ハードディスクドライブ」、または、「1インチ型」よりも小型のハードディスクドライブに搭載するための磁気ディスク用ガラス基板4を製造する方法として好適である。なお、「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板4の直径は、約27.4mmである。また、「0.85インチ型ハードディスクドライブ」に搭載する磁気ディスクを製造するための磁気ディスク用ガラス基板4の直径は、約21.6mmである。
そして、本発明に係る磁気ディスクの製造方法において、磁気ディスク用ガラス基板4上に形成される磁性層としては、例えば、コバルト(Co)系強磁性材料からなるものを用いることができる。特に、高い保磁力が得られるコバルト−プラチナ(Co−Pt)系強磁性材料系からなる磁性層として形成することが好ましい。なお、磁性層の形成方法としては、DCマグネトロンスパッタリング法を用いることができる。
なお、本発明においては、ガラスディスクを切り出すためのガラス母材として、「2.5インチ型ハードディスクドライブ」用などとして製造された、あるいは、製造される過程の半製品である磁気ディスク用ガラス基板を利用することができる。これらは、研削工程を経ており、主表面の平坦度が30μm以下に平坦化されているからである。
この場合、直径が30mm以上、板厚が2mm以下の磁気ディスク用ガラス基板、あるいは、その半製品を用いることが好ましい。「2.5インチ型ハードディスクドライブ」用の磁気ディスク用ガラス基板は、直径が65mm、板厚が0.635mmとなされ、主表面の平坦度が3μm以下となされて製造されているので、好適に使用することができる。
例えば、「2.5インチ型ハードディスクドライブ」用などとして製造された磁気ディスク用ガラス基板のうち、主表面の欠陥、端部形状の不良、あるいは、主表面の表面粗さの不良などの理由により市場に出荷されなかった在庫品を再利用して、本発明におけるガラス母材とすることができる。これらの不良項目については、ガラスディスクを切り出した後の研削工程や研磨工程において、取り除くこと、あるいは、修正することが十分に可能である。
このようにすれば、他製品における不良品をリサイクルでき、産業廃棄物として廃棄する必要がなくなるので、地球環境に優しい製造プロセス及び製品(エコプロセス及びエコプロダクト)を提供することができる。また、磁気ディスクの一層の低価格化をも実現することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例の構成に限定されるものではない。
〔実施例1〕
この実施例1においては、以下の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板を製造した。
(1)形状加工工程及び第1研削工程
まず、溶融させたアルミノシリケートガラスをプレス加工によりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、化学強化用のガラスを使用した。
得られたディスク状の板状ガラスは、直径が96mm、板厚が1.8mm、平坦度は100μmであった。この平坦度は、この板状ガラスの片面の略々全主表面(直径95mmの円の面積≒7088mm)を対象として、レーザ干渉計で測定したものである。
次に、この板状ガラスの両主表面を研削加工し、ディスク状のガラス母材とした。この研削加工は、遊星歯車機構を利用した両面研削装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させて研削加工を行った。
この研削加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。また、この研削加工により、ガラス母材の板厚は、板状ガラスよりも削減され、0.6mmとなった。
このようにして得られたディスク状のガラス母材の平坦度を、前述した条件により、すなわち、7088mmを対象として測定したところ、5μmであった。
(2)切り出し工程
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、直径29mmのガラスディスクを切り出した。ガラス母材の直径は96mmであり、1枚のガラス母材から、6枚のガラスディスクを採取することができた。
ガラス母材からのガラスディスクの切り出しは、以下のようにして行った。
図2は、ガラス母材からガラスディスクを切り出す工程においてガラス母材に形成される切り込みを示す平面図である。
すなわち、図2に示すように、まず、ガラス母材2をキャリア101により作業台上に固定する。キャリア101は、例えば、ガラスエポキシなどの合成樹脂材料により、ガラス母材2を固定し得る形状に形成されている。そして、このガラス母材2の主表面に対し、ダイヤモンドカッタを用いて、切り込みCを入れる。この切り込みCは、このガラス母材2における磁気ディスク用ガラス基板4となる領域の外縁をなす閉曲線を描くものである。すなわち、この切り込みCは、直径が30mm以下、もしくは、1インチ以下の円を描くものとなる。図2に示す例においては、1枚のガラス母材2から、5枚のガラスディスクを切り出すための切り込みCを示している。
この切り込みCは、ガラス母材2の主表面に対して、略々垂直に形成する。すなわち、この切り込みCを形成するときには、ダイヤモンドカッタのカッタ刃は、このカッタ刃の稜線の両側におけるガラス母材2の主表面に対する刃角が略々同一となるようにして使用する。
この切り込みCは、ガラス母材2の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有するものとすることが好ましく、この実施例1においては、切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの66%(0.4mm)とした。
そして、ガラス母材2の主表面に対し切り込みCの描く閉曲線の外側となる部分において力を加えた。ガラス母材2の主表面に対する力の印加は、切り込みCの描く閉曲線の外側となる部分を、金属製のピンを用いて押圧することによって行った。このようにガラス母材2に力を加えることによって、図3に示すように、ガラス母材2の切り込みCの描く閉曲線の外側の部分が割れた。
さらに力を加えることにより、図4及び図5に示すように、切り込みCにおいて、磁気ディスク用ガラス基板となる領域、すなわち、ガラスディスク3をガラス母材2より分離させ、ガラスディスク3を切り出した。
次に、ダイヤモンドドリルを用いて、このガラスディスクの中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラスディスクとした。
得られた複数のガラスディスクについては、それぞれ平坦度は略々同一であり、また、板厚も略々同一であった。
図6は、ガラス母材から切り出されたガラスディスクの縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す平面図である。
これらガラスディスクを検査したところ、図6に示すように、磁気ディスクの製造上の問題となるような欠け、ひび、割れといった欠陥は確認されなかった。
図7は、ガラス母材から切り出されたガラスディスクの縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す側面図である。
また、これらガラスディスクを複数枚重ねて検査したところ、図7に示すように、これらガラスディスクの端面は、略々平滑であり、かつ、主表面に対して垂直となっていることがわかった。
(3)端面研磨工程
次に、ガラスディスクの端面について、従来より用いられているブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。次に、内周側端面については、磁気研磨法により鏡面研磨を行った。
なお、この端面研磨工程においては、ガラスディスクを重ね合わせて端面を研磨するが、この際に、ガラスディスクの主表面にキズ等が付くことを避けるため、後述する第1研磨工程よりも前、あるいは、第2研磨工程の前後に行うことが好ましい。
そして、端面研磨工程を終えたガラスディスクを水洗浄した。
この端面研磨工程により、ガラスディスクの端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。端面研磨工程後にガラスディスクの直径を測定したところ、27.4mmであった。
(4)第2研削工程
次に、得られたガラスディスクの両主表面について、第1研削工程と同様に、第2研削加工を行った。この第2研削工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
(5)主表面研磨工程
(5−1)第1研磨工程
次に、主表面研磨工程として、第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述の研削工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
この第1研磨工程を終えたガラスディスクを、純水(1)、中性洗剤、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
(5−2)第2研磨工程
次に、主表面の鏡面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
この第2研磨工程を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、中性洗剤(1)、純水(1)、中性洗剤(2)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
(6)化学強化工程
次に、前述の研削工程及び研磨工程を終えた磁気ディスク用ガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400°Cに加熱しておくとともに、洗浄済みの磁気ディスク用ガラス基板を300°Cに予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、磁気ディスク用ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数の磁気ディスク用ガラス基板が端面で保持されるように、ホルダーに収納した状態で行った。
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、磁気ディスク用ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、磁気ディスク用ガラス基板が強化される。
磁気ディスク用ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm乃至200μmであった。
化学強化処理を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、20°Cの水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持した。
そして、急冷を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えた磁気ディスク用ガラス基板を、純水(1)、中性洗剤、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
前述したように、第1研削工程、切り出し工程、端面研磨工程、第2研削工程、第1及び第2研磨工程、精密洗浄、化学強化工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
得られた磁気ディスク用ガラス基板は、内径が7mm、外径が27.4mm、板厚は0.381mmであり、「1.0インチ型」磁気ディスクに用いる磁気ディスク用ガラス基板の所定寸法であることを確認した。
また、前述の工程を経て得られた磁気ディスク用ガラス基板の主表面の表面粗さRaは、0.2nm乃至0.6nm(AFMで測定)であった。また、Rmaxは、2nm乃至6nmであった(なお、Ra及びRmaxは、日本工業規格(JIS)B0601に従う)。電子顕微鏡(4000倍)で端面表面を観察したところ、鏡面状態であった。
さらに、この磁気ディスク用ガラス基板の円孔の内周側端面の表面粗さは、面取り部Rmaxで0.4μm、Raで0.04μm、側壁部Rmaxで0.4μm、Raで0.05μmであった。外周端面における表面粗さRaは、面取部で0.04μm、側壁部で、0.07μmであった。このように、内周側端面は、外周側端面と同様に、鏡面状に仕上がっていることを確認した。
また、磁気ディスク用ガラス基板の表面に異物やサーマルアスペリティの原因となるパーティクルは認められず、円孔の内周側端面にも異物やクラックは認められなかった。
そして、抗折強度試験機(島津オートグラフDDS−2000)を用いて、この磁気ディスク用ガラス基板の抗折強度を測定したところ、5kgであった。なお、化学強化レベルを変化させて同様に抗折強度を測定したところ、約2乃至12kgであった。
(7)磁気ディスクの製造(成膜)工程
次に、以下の工程を経て、磁気ディスクを製造した。
前述の工程により得た磁気ディスク用ガラス基板の両主表面に、静止対向型のDCマグネトロンスパッタリング装置を用いて、Al−Ru合金のシード層、Cr−Mo合金の下地層、Co−Cr−Pt−B合金の磁性層、水素化炭素保護層を順次成膜した。
図9は、本発明の実施により製造された磁気ディスクの層構成を模式的に示す断面図である。
この磁気ディスク10は、図9に示すように、非磁性基板である磁気ディスク用ガラス基板4と、この磁気ディスク用ガラス基板4上に形成された磁性層7と、この磁性層7上に形成された保護層8と、この保護層8上に形成された潤滑層9とを少なくとも備えて構成される。
そして、磁気ディスク用ガラス基板4と磁性層7との間には、シード層5及び下地層6からなる非磁性金属層(非磁性下地層)が形成されている。この磁気ディスク10において、磁性層7以外は、全て非磁性体からなる層である。この実施例1においては、磁性層7及び保護層8、保護層8及び潤滑層9は、それぞれ接した状態で形成されている。
すなわち、まず、スパッタリングターゲットとして、Al−Ru(アルミニウム−ルテニウム)合金(Al:50at%、Ru:50at%)を用いて、磁気ディスク用ガラス基板4上に、膜厚30nmのAl−Ru合金からなるシード層5をスパッタリングにより成膜した。次に、スパッタリングターゲットとして、Cr−Mo(クロム−モリブデン)合金(Cr:80at%、Mo:20at%)を用いて、シード層5上に、膜厚20nmのCr−Mo合金からなる下地層6をスパッタリングにより成膜した。次いで、スパッタリングターゲットとして、Co−Cr−Pt−B(コバルト−クロム−プラチナ−ボロン)合金(Cr:20at%、Pt:12at%、B:5at%、残部Co)からなるスパッタリングターゲットを用いて、下地層6上に、膜厚15nmのCo−Cr−Pt−B合金からなる磁性層7をスパッタリングにより形成した。
次に、磁性層7上に保護層8を形成し、さらに、アルコール変性パーフロロポリエーテルからなる潤滑層9をディップ法で成膜した。このようにして、磁気ディスク10を得た。
得られた磁気ディスクを用い、浮上量が6nmのグライドヘッドによりグライド検査を行ったところ、衝突する異物等は検出されず、安定した浮上状態を維持することができた。また、この磁気ディスクを用いて、700kFCIで記録再生試験を行ったところ、十分な信号強度比(S/N比)を得ることができた。また、信号のエラーは確認されなかった。
さらに、1平方インチ当り60ギガビット以上の情報記録密度を必要とする「1インチ型ハードディスクドライブ」に搭載して駆動させたところ、特に問題なく記録再生を行うことができた。すなわち、クラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害は発生しなかった。
なお、本発明においては、磁気ディスク用ガラス基板の直径(サイズ)については、特に限定されるものではない。しかし、本発明は、特に、小径の磁気ディスク用ガラス基板を製造する場合に優れた有用性を発揮する。ここでいう小径とは、例えば、直径が30mm以下の磁気ディスク用ガラス基板である。
すなわち、例えば、直径が30mm以下の小径の磁気ディスクは、いわゆる「カーナビゲーションシステム」などの車載用機器や、いわゆる「PDA」や携帯電話端末装置などの携帯用機器における記憶装置において用いられ、固定されて使用される機器における通常の磁気ディスクに比較して、高い耐久性や耐衝撃性が要求されるからである。
〔実施例2〕
この実施例2においては、切り出し工程における切り込みCの深さを、ガラス母材2の厚さの50%(0.3mm)とし、他は実施例1と同様に磁気ディスク用ガラス基板を作成し、さらに、磁気ディスクを作成した。
この実施例2において得られた磁気ディスク用ガラス基板は、寸法、主表面の表面粗さ、円孔の内周側端面の表面粗さ、外周端面における表面粗さ、パーティクルの有無、クラックの有無及び抗折強度のいずれについても、実施例1における磁気ディスク用ガラス基板と遜色なかった。
また、この実施例2において得られた磁気ディスクは、グライド検査及び記録再生試験におけるクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生状況のいずれについても、実施例1における磁気ディスクと遜色なかった。
〔実施例3〕
この実施例3においては、切り出し工程における切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの83%(0.5mm)とし、他は実施例1と同様に磁気ディスク用ガラス基板を作成し、さらに、磁気ディスクを作成した。
この実施例3において得られた磁気ディスク用ガラス基板は、寸法、主表面の表面粗さ、円孔の内周側端面の表面粗さ、外周端面における表面粗さ、パーティクルの有無、クラックの有無及び抗折強度のいずれについても、実施例1における磁気ディスク用ガラス基板と遜色なかった。
また、この実施例3において得られた磁気ディスクは、グライド検査及び記録再生試験におけるクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害の発生状況のいずれについても、実施例1における磁気ディスクと遜色なかった。
なお、この実施例では、切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの83%としたが、ガラス母材2の厚さの85%程度までは、実施例1における磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクと遜色なかった。
〔実施例4〕
この実施例4においては、ガラス母材2をフロート法によって製造し、このガラス母材2が溶融金属に接触していた側の面(ボトム面)に切り込みCを入れ、または、このガラス母材2の2つの表面のうち、相対的に表面うねりが小さい面に切り込みCを入れて、他は実施例1と同様に磁気ディスク用ガラス基板を作成し、さらに、磁気ディスクを作成した。
この板状フロートガラス素材の両面について、フェイズシフトテクノロジー社製のオプチフラットを用いて表面うねり形状を観察した。測定条件は以下の通りである。
1)測定領域:内周の半径が16mm、外周の半径が29mmであるドーナツ状の領域
2)測定面積:1837mm
3)選択した形状波長:0.1mm以上5mm以下である形状波長帯域
この結果、ガラス素材のボトム面においては、表面うねりの最大高さ(PV)は40nmであった。ガラス素材のボトム面においては、表面うねりの平均高さ(Wa)は4.5nmであった。他方で、ガラス素材のトップ面(ボトム面の反対側の面)においては、表面うねりの最大高さ(PV)は55nmであった。ガラス素材のボトム面においては、表面うねりの平均高さ(Wa)は6.5nmであった。
比較のため、触針式表面粗さ計を用いて、表面粗さを測定したところ、トップ面とボトム面の形状に差異を観察することはできなかった。
また、切り込みCの深さは、以下の〔表1〕に示すように、ガラス母材2の厚さの70%、または、30%とした。なお、ガラス母材2の板厚は1mmであった。
この実施例4において、ガラス母材2から切り出されたガラスディスク3の不良品率を、以下の〔表1〕に示す。サンプル数Nは、各例について10000である。
Figure 2007119336
〔表1〕からわかるように、ガラス母材2のボトム面は、トップ面よりも相対的に表面うねりが小さく、このボトム面に、ガラス母材2の厚さの70%の切り込みCを入れたものが、最も不良品率が低い。
〔比較例1〕
この比較例1においては、切り出し工程における切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの17%(0.1mm)とした。
図8は、比較例1において、ガラス母材から切り出されたガラスディスク3の縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す平面図である。
この比較例1におけるガラスディスクを検査したところ、図8に示すように、凹欠陥及び凸欠陥が確認され、後工程である端面研磨工程が円滑に行えないものであることがわかった。また、このような欠陥は、磁気ディスクの製造上においても問題となる。これら凹欠陥や凸欠陥は、クラックの自己拡大がガラス母材の主表面に対して垂直ではない方向に進行するためである。したがって、この比較例においては、ガラスディスクの端面は、主表面に対して垂直となっていない。
このように、この比較例1においては、ガラスディスク3をガラス母材2から良好に切り出すことはできなかった。すなわち、切り込みCの深さが不十分であるため、この切り込みCにおける分離が正常に行えなかった。したがって、このガラスディスク3に対して後の工程を実施することはできなかった。
〔比較例2〕
この比較例2においては、切り出し工程における切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの33%(0.2mm)とした。
この比較例2においても、上記比較例1と同様に、ガラスディスク3をガラス母材2から良好に切り出すことはできなかった。すなわち、切り込みCの深さが不十分であるため、この切り込みCにおける分離が正常に行えなかった。したがって、このガラスディスク3に対して後の工程を実施することはできなかった。
〔比較例3〕
この比較例3においては、切り出し工程における切り込みCの深さをガラス母材2の厚さの100%(0.6mm)とした。
この比較例3においては、ガラスディスク3をガラス母材2から良好に切り出すことはできなかった。すなわち、切り込みCの深さが深すぎるため、切り出されたガラスディスク3の外縁部は、目視で確認できる程度に、明かに乱れた形状となっていた。したがって、このガラスディスク3に対して後の工程を実施することはできなかった。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法における各工程を示す工程図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法におけるガラス母材からガラスディスクを切り出す工程において、ガラス母材に形成される切り込みを示す平面図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材を割った状態を示す平面図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材からガラスディスクを切り出している状態を示す平面図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材からガラスディスクを切り出した状態を示す平面図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材から切り出されたガラスディスクの縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す平面図である。 前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法において、ガラス母材から切り出されたガラスディスクの縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す側面図である。 比較例1において、ガラス母材から切り出されたガラスディスクの縁部分を顕微鏡により観察した画像を示す平面図である。 本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により製造した磁気ディスク用ガラス基板を用いて製造された本発明に係る磁気ディスクの構成を示す断面図である。
符号の説明
1 板状ガラス
2 ガラス母材
3 ガラスディスク
4 磁気ディスク用ガラス基板
5 シード層
6 下地層
7 磁性層
8 保護層
9 潤滑層
10 磁気ディスク
C 切り込み

Claims (10)

  1. 板状のガラス母材から磁気ディスク用ガラス基板を切り出す磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
    前記ガラス母材の主表面に対し、前記ガラス母材の厚さの50%乃至85%にあたる深さを有し、前記ガラス母材における磁気ディスク用ガラス基板となる領域の外縁をなす閉曲線を描く切り込みを入れ、
    前記切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域を前記ガラス母材より分離させる
    ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  2. 前記ガラス母材の主表面に対し、前記切り込みの描く閉曲線の外側となる部分において力を加えることにより、前記切り込みにおいて磁気ディスク用ガラス基板となる領域を前記ガラス母材より分離させる
    ことを特徴とする請求項1記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  3. 前記切り込みは、前記ガラス母材の主表面に対して略々垂直に形成される
    ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  4. 前記切り込みは、カッター刃によって形成され、
    前記切り込みを形成するときには、前記カッター刃は、前記カッター刃の稜線の両側における前記ガラス母材の主表面に対する刃角が略々同一となされて使用される
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記ガラス母材の厚さは、2.0mm以下であり、磁気ディスク用ガラス基板となる領域は、直径30mm以下の円形である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記ガラス母材は、アルミノシリケートガラスからなる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
    1インチ型ハードディスクドライブ、または、1インチ型ハードディスクドライブよりも小径の磁気ディスクを用いるハードディスクドライブに搭載する磁気ディスク用ガラス基板を製造する
    ことを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  8. 前記板状のガラス母材は、溶融金属の上で板状とされたものであり、
    前記ガラス母材が前記溶融金属に接触した側の面に、前記切り込みを入れる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  9. 前記板状のガラス母材は、溶融金属の上で板状とされたものであり、
    前記ガラス母材の2つの表面のうち、相対的に表面うねりが小さい面に、前記切り込みを入れる
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  10. 請求項1乃至請求項9のいずれか一に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法により得られた磁気ディスク用ガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成する
    ことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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