JP2007107502A - 蒸発燃料漏れ検査装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】蒸発燃料漏れを高精度に検査する蒸発燃料漏れ検査装置を提供する。
【解決手段】燃料タンクに連通するタンク通路140と、大気に開放される大気通路と、ポンプにより減圧されるポンプ通路160と、タンク通路140とポンプ通路160との間に弁座311を有し、弁体320の駆動状態を弁座311に対する離座状態と着座状態との間で切り換える切換弁300と、弁体320に設けられ、弁座311に対する弁体320の着座状態において一端側がタンク通路140及び大気通路に連通し且つ他端側がポンプ通路160に連通する基準オリフィス510と、ポンプ通路160における流体流れに相関する物理量を弁座311に対する弁体320の着座状態と離座状態との各々において検出する検出手段とを設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料タンクにおいて発生した蒸発燃料の燃料タンクからの漏れを検査する蒸発燃料漏れ検査装置に関する。
近年、環境保護の観点から、車両に搭載されている内燃機関からの排出ガスの規制に加え、燃料タンクから外部へ漏れる蒸発燃料の排出規制が強化されている。特にアメリカ合衆国環境庁(EPA)及びカリフォルニア州環境庁(CARB)の定める基準では、燃料タンクの僅かな開口から漏れる蒸発燃料の検査を要求している。そこで、燃料タンクの内部を減圧又は加圧することにより燃料タンクからの蒸発燃料の漏れを検査する蒸発燃料漏れ検査装置が広く用いられている。
このような蒸発燃料漏れ検査装置については、従来、検査精度を高める種々の方法が考えられている。例えば特許文献1には、燃料タンクに許容される開口面積に対応した断面積の基準オリフィスを減圧しつつ基準圧力を検出し、その後、燃料タンクを減圧して検出したタンク内圧を基準圧力と比較することにより蒸発燃料漏れを判定する技術が開示されている。具体的に特許文献1の技術では、大気開放の開放通路と燃料タンクに連通の通気通路とを基準オリフィスの一端側に連通させ、ポンプにより減圧される切換弁接続通路(以下、単に「接続通路」という)を基準オリフィスの他端側に連通させた状態の下、基準圧力を検出する。即ち、開放通路及び通気通路の双方を接続通路に基準オリフィスを通じて連通させて、基準圧力を検出する。一方、タンク内圧の検出時には、基準オリフィスを通さないで通気通路のみを接続通路に連通させて、タンク内圧を検出する。
特開2004−232521号公報
しかし、特許文献1の技術による基準圧力検出時には、基準導管の一端側に設置された基準オリフィスを経由して蒸発燃料を接続通路に導く一方、タンク内圧検出時には、基準オリフィスを経由しないで基準導管の他端側から蒸発燃料を接続通路に導いている。そのため、蒸発燃料の流通経路が基準圧力検出時とタンク内圧検出時とで大きく異なることにより接続通路での圧力検出に誤差を生むことがあり、また基準オリフィスには両端側から異物が流入し易くなっている。尚、基準オリフィスへの異物流入を防止する場合、基準オリフィスの両端側にフィルタを設置することが考えられるが、そうしたフィルタの設置は、部品点数及び製造工数を増大させてコストの高騰を惹起する。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、蒸発燃料漏れを高精度に検査する蒸発燃料漏れ検査装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、コストを低減する蒸発燃料漏れ検査装置を提供することにある。
請求項1〜7に記載の発明によると、燃料タンクに連通するタンク通路と、ポンプにより減圧又は加圧されるポンプ通路との間の弁座に対して弁体が離座状態にあるときには、タンク通路とポンプ通路とが弁座と弁体との間を通じて連通する。故にこのときには、ポンプによるポンプ通路の減圧作用又は加圧作用を燃料タンクにタンク通路を通じて及ぼしながら、ポンプ通路での流体流れに相関する物理量を検出できる。また、弁座に対して弁体が着座状態にあるときには、弁体に設けられた基準オリフィスの一端側がタンク通路及び大気通路に連通し且つ当該基準オリフィスの他端側がポンプ通路に連通する。故にこのときには、ポンプによるポンプ通路の減圧作用又は加圧作用を基準オリフィスに及ぼしながら、ポンプ通路での流体流れに相関する物理量を検出できる。
こうした請求項1〜7に記載の発明によれば、燃料タンクにおいて発生しタンク通路に流入した蒸発燃料は、弁体の離座状態と着座状態との双方で弁座近傍箇所を経由してポンプ通路に導かれる。故に、蒸発燃料の流通経路が弁体の離座状態と着座状態とで大きく変化しないので、それら各状態での物理量検出に誤差が生じ難くなる。したがって、弁体の各駆動状態で精確に検出された物理量に基づいて蒸発燃料漏れを高精度に判定することが可能になる。
さらに請求項1〜7に記載の発明によれば、弁体の離座状態では、タンク通路から弁座と弁体との間に向かう流体流れが生じることにより、弁体に設けられた基準オリフィスには異物が流入し難くなる。したがって、異物流入防止用のフィルタ等を削減してコストの低減を図ることができる。
尚、弁体の各駆動状態において検出される物理量は、ポンプ通路における流体流れが基準オリフィスの断面積及び燃料タンクの開口面積に応じて変化するときに当該変化を反映する物理量であればよく、例えば請求項2に記載の発明のようなポンプ通路の圧力の他、ポンプ通路における流体流量であってもよい。
また、タンク通路は、例えば請求項3に記載の発明のように、燃料タンクにおいて発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着するキャニスタを通じて燃料タンクに連通するものであってもよいし、燃料タンクに直接連通するものであってもよい。
請求項4に記載の発明によると、弁体において基準オリフィスを形成するオリフィス形成部よりも低剛性の弾性部は、弁体の着座状態においてオリフィス形成部と弁座との間で圧縮される。故に離座状態の弁体を駆動して弁座に着座させるときには、弾性部の圧縮によって衝撃を緩和でき、また弁体の着座状態では、圧縮された弾性部によりオリフィス形成部と弁座との間をシールできる。さらに、弁体の着座状態においてタンク通路及び大気通路に連通すると共に、弾性部の形成する連通通路を通じてポンプ通路に連通し得る基準オリフィスは、弾性部よりも高剛性のオリフィス形成部によって形成されるため、変形し難い。したがって、基準オリフィスの変形に起因する物理量の検出誤差を抑えて、蒸発燃料漏れの検査精度を高めることができる。
請求項5に記載の発明によると、切換弁は、有底筒状を呈するオリフィス形成部の内周側に挿入される軸部に電磁駆動力を与えることによって、弁体を駆動する。このように電磁駆動力を利用すれば、弁体の駆動応答性を高めることができる。さらに、オリフィス形成部の底壁が形成する基準オリフィスは、弁体の着座状態において軸部とオリフィス形成部との間の間隙通路を通じてタンク通路及び大気通路に連通する。故に、間隙通路を可及的に小さくすることによって、間隙通路を通じた基準オリフィスへの異物流入を防止することが可能になるので、異物流入防止用のフィルタ等を削減してコストの低減を図ることができる。
請求項6に記載の発明によると、軸部において球面状の軸方向端面はオリフィス形成部の底壁における円錐面状の内面に常時当接し、オリフィス形成部の周壁の内周面は軸部の外周面よりも大径とされる。これによりオリフィス形成部に対する軸部の傾きが許容されるが、そうした傾きが生じたとしても、軸部端面が底壁内面に対して滑ることによりオリフィス形成部を正規の姿勢に保つことができる。したがって、弁座と向き合うオリフィス形成部の底壁又はそれに対する固定要素等を、軸部の傾きによらずに正しく弁座に着座させることができる。また、間隙通路の一部は底壁内面に開口する溝により形成され、間隙通路の残部は軸部外周面と周壁内周面との間の空間により形成されるので、オリフィス形成部に対して軸部が傾いたとしても間隙通路を確保できる。しかも、そうした溝及び空間により形成される間隙通路はラビリンス化するので、基準オリフィスへの異物流入防止効果が高くなる。
間隙通路の形成溝に軸部が引っ掛かると、オリフィス形成部の底壁内面に対して軸部端面が滑らなくなるため、オリフィス形成部を正規の姿勢に保つことができなくなる。
請求項7に記載の発明によると、基準オリフィスはオリフィス形成部の底壁内面の中心部に開口し、間隙通路の形成溝は当該開口から放射状に延伸する形態で複数設けられる。故に、各溝を小さくしたとしても、それら溝のトータルにより間隙通路の断面積を基準オリフィスの断面積よりも大きくすることができる。したがって、例えば燃料タンクの許容開口に対応するという基準オリフィスの役割を阻害することなく、各溝に軸部が引っ掛かるような事態を回避できる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施形態による蒸発燃料漏れ検査装置(以下、「検査装置」という)を適用した蒸発燃料漏れ検査システム(以下、「検査システム」という)を図2に示す。この検査システム10は、燃料タンク20、キャニスタ30、吸気装置40及び電子制御ユニット(以下、「ECU」という)50、検査装置100等から構成されている。
燃料タンク20の上部空間は、キャニスタ30に連通している。キャニスタ30は例えば活性炭、シリカゲル等からなる吸着材31を有しており、燃料タンク20で発生した蒸発燃料を吸着材31に脱離可能に吸着する。そのため、キャニスタ30から検査装置100側に流出する流体中の蒸発燃料濃度は所定値以下となる。吸気装置40は、内燃機関に吸気を送る吸気通路41を有している。吸気通路41には、吸気流量を調整するスロットル弁42が設置されていると共に、パージ通路33を通じてキャニスタ30が連通している。パージ通路33には、パージ通路33を開閉するパージ弁34が設置されており、キャニスタ30の吸着材31から脱離した蒸発燃料がパージ弁34の開度に応じて吸気通路41にパージされるようになっている。
ECU50は、例えばマイクロコンピュータ等の電気回路からなり、検査装置100と電気接続されて当該装置100の作動を制御する。尚、本実施形態のECU50は、例えば内燃機関等の車両搭載装置を制御する機能を有しているが、そうした機能を有していなくてもよい。
図2及び図3に示すように検査装置100は、ハウジング110、ポンプ200、切換弁300及び圧力センサ400を備えている。
ハウジング110は例えば樹脂製の複数部材からなり、タンク通路140、大気通路150、ポンプ通路160、排出通路170、圧力導入通路171及びセンサ室172を形成している。タンク通路140は、一端141がキャニスタ30に接続することによりキャニスタ30を通じて燃料タンク20に連通する。また、タンク通路140の他端142は切換弁300に接続している。大気通路150の一端151側は大気に開放され、また大気通路150の他端152は切換弁300に接続している。L字状を呈するポンプ通路160の一端161はポンプ200に接続しており、当該接続端161にメッシュ状のフィルタ180が設置されている。また、ポンプ通路160の他端162は切換弁300に接続している。排出通路170は、ポンプ200と大気通路150との間を接続している。圧力導入通路171は、ポンプ通路160から分岐してセンサ室172に接続している。
図3に示すようにポンプ200は、ハウジング110に収容されている。ポンプ200のベーンポンプ部202は、ケーシング203、ロータ204及びベーン205を有している。ケーシング203は例えば樹脂製の複数部材からなり、吸入口206、排出口207及びポンプ室208を形成している。吸入口206は、ポンプ室208及びポンプ通路160に連通している。排出口207は、ポンプ室208及び排出通路170に連通している。ポンプ室208には、ロータ204及びベーン205が収容されている。ロータ204はポンプ室208に対して偏心して配置されており、当該偏心軸線周りに回転する。ベーン205はロータ204の周方向に略等間隔をあけて複数設けられており、ロータ204によって径方向移動可能に支持されている。各ベーン205は、ロータ204の回転によって生じる遠心力を受けて径方向移動し、ケーシング203の内周壁に摺動する。以上の構成によりポンプ通路160の流体は、ロータ204の回転時に吸入口206から各ベーン205間に吸入されて排出口207から排出される。即ち本実施形態のポンプ200は、ポンプ通路160を減圧する減圧ポンプとして機能する。
ポンプ200のモータ部220は例えばブラシレス直流モータ等からなり、モータ軸224、通電制御回路225及び図示しないコイルを有している。モータ軸224はケーシング203を貫通し、ポンプ室208内のロータ204に同軸固定されている。通電制御回路225はコイルに電気接続されていると共に、ハウジング110に設けられたコネクタ部111の端子を介してECU50に電気接続される。通電制御回路225は、ECU50の制御に従ってコイルを通電し、その結果生じる磁界によってモータ軸224をロータ204と共に回転駆動する。尚、本実施形態において通電制御回路225は、モータ軸224及びロータ204の回転数、即ちポンプ200の回転数を一定に制御する。
切換弁300は、ハウジング110が形成する第一及び第二弁座310,311と、ハウジング110に収容される弁体320及び弁駆動部330とを有している。
第一弁座310は、タンク通路140の切換弁側端142と大気通路150の切換弁側端152との間に形成されて円環状を呈している。第二弁座311は、タンク通路140の切換弁側端142とポンプ通路160の切換弁側端162との間に形成されて円環状を呈している。
弁体320は、軸部材321、第一弁部材322、第二弁部材323及び弾性部材324を組み合わせてなり、第一及び第二弁座310,311と略同軸に且つ軸方向に往復移動可能に配置されている。軸部材321は円柱棒状を呈し、第一弁座310の内周側を貫通している。図1及び図3に示すように、第一弁部材322は円板状を呈しており、軸部材321の中間部に固定されている。第二弁部材323は有底円筒状を呈しており、その周壁325が軸部材321の一端に外挿されている。弾性部材324は円板状を呈しており、第二弁座311と向き合う第二弁部材323の底壁326の外面側に固定されている。尚、本実施形態では、第二弁部材323とハウジング110との間に押圧スプリング327が介装されており、この押圧スプリング327の付勢力によって第二弁部材323が軸部材321に押し当てられて当該軸部材321と常時係合している。
図3に示すように弁駆動部330は、駆動スプリング331、固定コア333、可動コア334及びコイル335を有している。固定コア333と可動コア334とは磁性材で形成されており、弁体320の軸方向において互いに向き合っている。固定コア333はハウジング110に対して位置固定されている。可動コア334は、軸部材321の第二弁部材323とは反対側端に同軸固定されている。固定コア333と可動コア334との間に介装される駆動スプリング331は、弁体320を第二弁座311側に付勢している。コイル335は、コネクタ部111の端子を介してECU50に電気接続される。コイル335への通電は、ECU50の制御に従って断続される。
コイル335の非通電時には、可動コア334が固定コア333側に磁気吸引されない。そのため、弁体320は駆動スプリング331の付勢力によって第二弁座311側(図3の下側)に駆動された状態となり、第一弁部材322を第一弁座310から離座させると共に弾性部材324を第二弁座311に着座させる。故にこの状態では、第一弁部材322と第一弁座310との間を通じてタンク通路140と大気通路150とが連通する一方、弾性部材324と第二弁座311との間を通じたタンク通路140とポンプ通路160との連通が遮断される。
コイル335の通電時には、可動コア334が固定コア333側に磁気吸引され、電磁駆動力としてのスラスト力が軸部材321に与えられる。そのため、弁体320は駆動スプリング331の付勢力に抗して固定コア333側(図3の上側)に駆動された状態となり、第一弁部材322を第一弁座310に着座させると共に弾性部材324を第二弁座311から離座させる。故にこの状態では、第一弁部材322と第一弁座310との間を通じたタンク通路140と大気通路150との連通が遮断される一方、弾性部材324と第二弁座311との間を通じてタンク通路140とポンプ通路160とが連通する。
圧力センサ400は例えば絶対圧センサ等からなり、コネクタ部111の端子を介してECU50に電気接続される。圧力センサ400はセンサ室172内に設置されており、センサ室172の圧力を検出し、当該検出結果に応じた信号をECU50に出力する。ここで、センサ室172は圧力導入通路171を通じてポンプ通路160と連通しているので、圧力センサ400により検出される圧力は、ポンプ通路160での流体流れに応じて変化する通路圧力と実質的に等しくなる。
次に、弁体320の特徴部分について図1及び図4を参照しつつ説明する。
第二弁部材323の底壁326の内面500は円錐面状に形成されている。また、軸部材321の第二弁部材323側の端面502は球面状に形成されており、押圧スプリング327の付勢力によって底壁326の内面500に常時当接している。さらに、第二弁部材323の周壁325の内周面504は、軸部材321の外周面506よりも大径の円筒面状に形成されている。したがって、本実施形態では、第二弁部材323に対する軸部材321の傾きが許容されているが、そうした傾きが生じたとしても、底壁326の内面500に対して軸部材321の端面502が滑ることにより第二弁部材323の姿勢が保たれる。故に、第二弁部材323に固定の弾性部材324を軸部材321の傾きによらずに正しく第二弁座311に着座させることができるので、当該着座状態においては常に第二弁部材323と第二弁座311との間が気密にシールされる。
弁体320には、基準オリフィス510、連通通路511及び間隙通路512からなる基準通路513が設けられている。基準オリフィス510は、第二弁部材323の底壁326の中心部を同軸に貫通する円筒孔状に形成されている。基準オリフィス510の径は軸方向に一定であり、燃料タンク20に蒸発燃料漏れが許容される開口径に対応して設定されている。例えば、CARBおよびEPAの基準では、燃料タンク20からの蒸発燃料漏れの検査精度として、φ0.5mm相当の開口からの漏れを検査できることを要求している。そこで本実施形態では、基準オリフィス510の径がφ0.5mm以下に設定されている。さらに本実施形態では、第二弁部材323が樹脂で形成されており、基準オリフィス510の変形が防止されている。尚、弁部材323の形成樹脂は、剛性が高く且つ耐燃料性に優れるものが望ましく、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)である。
連通通路511は、弾性部材324の中心部を同軸に貫通するテーパ孔状に形成されている。連通通路511の径は、基準オリフィス510と常時連通する一端側から他端側に向かって漸次拡大しており、軸方向の全域で基準オリフィス510よりも大径に設定されている。故に連通通路511の断面積は、軸方向の全域で基準オリフィス510の断面積よりも大きい。弾性部材324が第二弁座311に着座した状態では、弾性部材324が圧縮され、その状態で連通通路511の大径側端がポンプ通路160に連通する。故に本実施形態では、弾性部材324の圧縮変形によって連通通路511の断面積が基準オリフィス510の断面積よりも小さくならないように、連通通路511の拡径率や弾性部材324の厚さ及び形成素材等が決められている。尚、ここで弾性部材324の形成素材はゴムであり、第二弁部材323の形成樹脂よりも剛性が低く且つ耐燃料性に優れるものが望ましく、例えば水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)である。また、本実施形態では、弾性部材324の第二弁座311側の表面にポリテトラフルオロエチレンによるコーティングが施されており、弾性部材324と第二弁座311との粘着が防止されている。
間隙通路512は、軸部材321と第二弁部材323との間に形成されている。具体的に間隙通路512の一部は、第二弁部材323の底壁326の内面500に開口する複数の溝514によって形成されており、基準オリフィス510の連通通路511とは反対側端に常時連通している。ここで各溝514は、基準オリフィス510が開口する内面500の中心部から放射状に延伸しており、内面500の周方向において互いに等間隔をあけて並んでいる。各溝514の断面積は、それらの総和が基準オリフィス510の断面積よりも大きく設定されており、特に本実施形態では互いに同一である。また、上述したように本実形態では、第二弁部材323が高剛性の樹脂で形成されているので、各溝514の変形が防止されている。
間隙通路512において溝514による形成部分を除く残部は、第二弁部材323の周壁325の内周面504と軸部材321の外周面506とが挟む空間515により形成されており、弾性部材324の第二弁座311への着座状態でタンク通路140と連通する。ここで空間515の断面積は、基準オリフィス510の断面積よりも大きく設定されている。また、特に本実施形態では、金属で軸部材321が形成されると共に線膨張率等、環境変化に伴う寸法変化が軸部材321の形成金属に近い樹脂で第二弁部材323が形成されることにより、第二弁部材323に対して軸部材321が傾いたとしても空間515の断面積が実質的に変化しないように配慮されている。尚、軸部材321の形成金属は、例えばSUSである。
次に、検査システム10の作動について図5を参照しつつ説明する。
(1)検査システム10では、内燃機関の停止から所定時間が経過すると、ECU50の制御に従って燃料タンクからの蒸発燃料漏れの検査処理が開始される。まず、この処理開始直後の期間Aでは、切換弁300のコイル335が非通電状態とされる。そのため、第一弁部材322が第一弁座310から離座して大気通路150がタンク通路140に連通すると共に、弾性部材324が第二弁座311に着座して基準通路513が両端側のタンク通路140とポンプ通路160に連通する。したがって、ポンプ通路160は基準オリフィス510及びタンク通路140を通じて大気通路150に連通することになるが、期間Aでは、ポンプ200が停止状態に保持されるため、ポンプ通路160の圧力が大気圧と実質的に等しくなる。故に期間Aでは、圧力センサ400により大気圧が検出される。
(2)大気圧の検出が完了した後、漏れ検査に必要なパラメータを補正するに使用される車両停車位置の標高値がECU50によって算出されると、期間Bにおいて、ポンプ200が停止状態に保持されつつコイル335が通電される。そのため、第一弁部材322が第一弁座310に着座して大気通路150とタンク通路140との連通が遮断されると共に、弾性部材324が第二弁座311から離座してタンク通路140が基準オリフィス510を通さないでポンプ通路160と連通する。したがって、ポンプ通路160は、大気通路150と非連通になると共にタンク通路140及びキャニスタ30を通じて燃料タンク20に連通することになるので、当該通路160の圧力は燃料タンク20の内圧と実質的に等しくなる。故に、燃料タンク20で蒸発燃料が発生している場合には、燃料タンク20の内圧が大気圧よりも高くなるため、圧力センサ400の検出圧力が上昇する。尚、この検出圧力の上昇度が所定値を超える場合には、以下の処理(3)〜(5)が実施されることなく、検査処理が終了する。
(3)圧力センサ400の検出圧力の上昇度が所定値以下である場合には、期間Cにおいてコイル335への通電が停止される。そのため、ポンプ通路160が、基準オリフィス510を通じてタンク通路140に連通すると共に、基準オリフィス510及びタンク通路140を通じて大気通路150に連通する。また加えて期間Cでは、ポンプ200が回転駆動されてポンプ通路160が減圧され、当該減圧作用がタンク通路140及び大気通路150に及ぶ。そのため、キャニスタ30からタンク通路140への流入蒸発燃料や大気通路150からタンク通路140への流入空気が、第二弁座311近傍の基準通路513を経由してポンプ通路160に流入する(図6(A)参照)。これによりポンプ通路160の圧力は、基準オリフィス510の径(通路面積)に応じた所定値Prにまで低下した後、安定傾向を示すことになるので、期間Cでは、圧力センサ400の検出圧力の安定値Prが基準圧力PrとしてECU50に記憶される。
(4)基準圧力Prの検出が完了すると、期間Dにおいて、ポンプ200の回転駆動が停止されると共にコイル335が通電される。そのため、ポンプ通路160が、大気通路150と非連通になると共にタンク通路140及びキャニスタ30を通じて燃料タンク20に連通し、ポンプ通路160の圧力が燃料タンク20の内圧と実質的に等しくなるまで上昇する。この後、期間Dでは、コイル335への通電が継続されつつポンプ200が回転駆動される。これにより、ポンプ通路160が減圧されて当該減圧作用が燃料タンク20内に及ぶので、蒸発燃料及び空気の混合流体が燃料タンク20の開口面積に応じた流量にてタンク通路140に流入し、さらに第二弁座311と弾性部材324との間を経由してポンプ通路160に流入する(図6(B)参照)。その結果として、圧力センサ400の検出圧力がポンプ通路160における流体流量に応じて低下することになる。ここで図5に示すように、圧力センサ400の検出圧力が基準圧力Pr以下にまで低下する場合には、ECU50によって、燃料タンク20からの蒸発燃料漏れは許容以下であると判定される。一方、圧力センサ400の検出圧力が基準圧力Prにまで低下しない場合には、ECU50によって、蒸発燃料漏れは許容超過であると判定される。尚、この許容超過判定が下された場合、例えば車両のインストルメントパネルにおいて蒸発燃料漏れを表す異常ランプが点灯される。
(5)蒸発燃料漏れの判定が完了すると、期間Eにおいてポンプ200の回転駆動が停止されると共にコイル335への通電が停止され、それによりポンプ通路160の圧力が大気圧に回復すると、検査処理が終了する。
以上説明した本実施形態によると、上記処理(3),(4)では、タンク通路140に流入した蒸発燃料が第二弁座311の近傍箇所を経由してポンプ通路160に導かれる。即ち処理(3),(4)間では、ポンプ通路160に至る蒸発燃料の流通経路が大きく変化しないので、それら各処理(3),(4)間での圧力検出に誤差が生じ難くなる。そして本実施形態では、このように精確に検出された圧力に基づいて蒸発燃料漏れが判定されるので、判定精度が高くなる。
また、本実施形態において間隙通路512は、図1に示すように、弁体320の円錐面500に沿ってテーパ方向に延伸する溝514と、弁体320の円筒面504に沿って軸方向に延伸する空間515とから形成されることで、ラビリンス化している。故に、流体が基準通路513を流通する上記処理(3)では、間隙通路512よりも下流側の基準オリフィス510に異物が流入することを防止できる。さらに、溝514や空間515の断面積を可及的に小さく設定することで、異物流入の防止効果を高めることができる。またさらに上記処理(4)では、第二弁座311と弁体320との間を経由して流体流れが生じるため、弁体320に設けられた基準オリフィス510には、異物が流入し難くなる。このように本実施形態によれば、基準オリフィス510への異物流入が防止されるので、異物流入防止用のフィルタ等を削減してコストの低減を図ることができる。
加えて本実施形態によると、第二弁部材323の底壁326の内面500に開口する溝514が複数設けられるので、各溝514の断面積を小さくしたとても、それら溝514のトータルで断面積を大きくすることができる。したがって、燃料タンク20の許容開口に対応するという基準オリフィス510の役割を阻害することなく、内面500に当接の軸部材321が各溝514に引っ掛かるような事態を回避できる。
さらに加えて本実施形態によると、複数の溝514や基準オリフィス510が設けられた複雑な形状の第二弁部材323を例えば樹脂成形によって容易に形成することができるので、コストが低減する。
尚、本実施形態では、第二弁座311が特許請求の範囲に記載の「弁座」に相当し、第二弁部材323が特許請求の範囲に記載の「オリフィス形成部」に相当し、弾性部材324が特許請求の範囲に記載の「弾性部」に相当し、軸部材321が特許請求の範囲に記載の「軸部」に相当し、圧力センサ400が特許請求の範囲に記載の「検出手段」に相当する。
さて、ここまで本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
例えば、弾性部材324及び連通通路511を設けないで、第二弁部材323を直接第二弁座311に着座させるようにしてもよい。
また、第二弁部材323を金属で形成してもよい。この場合には、基準オリフィス510の加工精度を高めることができるので、より精確な漏れ検査が可能になる。
さらにまた、軸部材321を樹脂で形成してもよい。特に弁部材321及び第二弁部材323の双方を樹脂で形成した場合には、第二弁部材323に対して軸部材321が傾いたとしても空間515の断面積が実質的に変化しないようになる。尚、軸部材321の形成樹脂としては、剛性が高く且つ耐燃料性に優れるものが望ましい。
さらに、図7に変形例を示すように、第二弁部材323を軸部材321に嵌合させてもよい。尚、この場合には、例えば図7に示すように間隙通路512を、第二弁部材323の底壁326の内面500及び軸部材321の端面502が軸方向に挟む空間520と、第二弁部材323の周壁325の内周面504に開口して軸方向に延びる溝520とから形成する。
またさらに、図8に変形例を示すように、第二弁部材323の底壁326の内面500に開口する溝514を一つだけ設けるようにしてもよい。尚、この場合に溝514の断面積は、それ単独で基準オリフィス510の断面積よりも大きくなるように設定される。あるいは、図示はしないが、第二弁部材323の底壁326の内面500に開口する溝514を二つ又は四つ以上設けてもよい。尚、この場合には、各溝514を内面500の周方向で等間隔に設けることが望ましく、また各溝514の断面積は、それらの総和が基準オリフィス510の断面積よりも大きく設定される。
加えて、ポンプ通路160における流体流れが変化するときに当該変化を反映する物理量を検出可能なセンサであれば、圧力センサ400に代えて使用することができる。尚、そのようなセンサとしては、例えばポンプ通路160での流体流量を検出する流量センサ等を挙げることができる。
また加えて、圧力センサ400等の検出結果から蒸発燃料漏れを判定する判定手段としてのECU50については、上述した実施形態のように検査装置10の外部に設けてもよいし、検査装置10の一構成要素として検査装置10に一体に設けてもよい。
さらに加えて、ベーンポンプ以外のポンプ、例えばダイヤフラムポンプをポンプ200として使用してもよい。
またさらに加えて、上述の実施形態では、ポンプ通路160を減圧して空気漏れを検査する検査装置に本発明を適用した例を説明したが、ポンプ通路160を加圧して空気漏れを検査する検査装置にも本発明を適用可能である。
本発明の一実施形態による蒸発燃料漏れ検査装置の要部断面図である。 本発明の一実施形態による蒸発燃料漏れ検査システムの概略構成図である。 本発明の一実施形態による蒸発燃料漏れ検査装置の全体断面図である。 図1に示す第二弁部材の平面図である。 図2に示す蒸発燃料漏れ検査システムの作動を説明するための特性図である。 図2に示す蒸発燃料漏れ検査システムの作動を説明するための模式図である。 図1の変形例を示す要部断面図である。 図4の変形例を示す要部断面図である。
符号の説明
10 蒸発燃料漏れ検査システム、20 燃料タンク、30 キャニスタ、100 蒸発燃料漏れ検査装置、140 タンク通路、150 大気通路、160 ポンプ通路、200 ポンプ、202 ベーンポンプ部、220 モータ部、300 切換弁、310 第一弁座、311 第二弁座(弁座)、320 弁体、321 軸部材(軸部)、322 第一弁部材、323 弁部材、323 第二弁部材(オリフィス形成部)、324 弾性部材(弾性部)、325 周壁、326 底壁、327 押圧スプリング、330 弁駆動部、400 圧力センサ(検出手段)、500 内面、502 端面、505 内周面、506 外周面、510 基準オリフィス、511 連通通路、512 間隙通路、513 基準通路、514 溝、515 空間

Claims (7)

  1. 燃料タンクからの蒸発燃料の漏れを検査する蒸発燃料漏れ検査装置であって、
    前記燃料タンクに連通するタンク通路と、
    大気に開放される大気通路と、
    ポンプにより減圧又は加圧されるポンプ通路と、
    前記タンク通路と前記ポンプ通路との間に弁座を有し、弁体の駆動状態を前記弁座に対する離座状態と着座状態との間で切り換える切換弁と、
    前記弁体に設けられ、前記着座状態において一端側が前記タンク通路及び前記大気通路に連通し且つ他端側が前記ポンプ通路に連通する基準オリフィスと、
    前記ポンプ通路における流体流れに相関する物理量を前記着座状態と前記離座状態との各々において検出する検出手段と、
    を備えることを特徴とする蒸発燃料漏れ検査装置。
  2. 前記物理量は前記ポンプ通路の圧力であることを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。
  3. 前記タンク通路は、前記燃料タンクにおいて発生した蒸発燃料を脱離可能に吸着するキャニスタを通じて前記燃料タンクに連通することを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。
  4. 前記弁体は、
    前記着座状態において前記タンク通路及び前記大気通路に連通する前記基準オリフィスを形成するオリフィス形成部と、
    前記オリフィス形成部よりも低剛性とされ、前記着座状態において前記オリフィス形成部と前記弁座との間で圧縮される弾性部であって、前記基準オリフィスに常時連通し且つ前記着座状態において前記ポンプ通路に連通する連通通路を形成する弾性部と、
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。
  5. 前記弁体は、
    有底筒状を呈し、前記弁座と向き合う底壁に前記基準オリフィスを形成するオリフィス形成部と、
    前記オリフィス形成部の内周側に挿入されて前記オリフィス形成部との間に間隙通路を形成し、前記着座状態において前記基準オリフィスを前記タンク通路及び前記大気通路に前記間隙通路を通じて連通させる軸部と、
    を有し、
    前記切換弁は、前記軸部に電磁駆動力を与えることにより前記弁体を駆動することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。
  6. 前記底壁の内面は円錐面状を呈し、
    前記内面に常時当接する前記軸部の軸方向端面は球面状を呈し、
    前記内面に開口する溝により前記間隙通路の一部が形成され、前記軸部の外周面と、前記オリフィス形成部の周壁において前記外周面よりも大径の内周面とが挟む空間により前記間隙通路の残部が形成されることを特徴とする請求項5に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。
  7. 前記基準オリフィスは前記内面の中心部に開口し、前記溝は当該開口から放射状に延伸する形態で複数設けられることを特徴とする請求項6に記載の蒸発燃料漏れ検査装置。



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