JP2007106737A - 抗菌剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の抗菌剤は、イオン交換により抗菌性を有する第四級アンモニウムイオンまたは三級アミンイオンを導入したマガディアイトまたはケニヤアイトを含む抗菌性層状珪酸からなる。イオン交換されたマガディアイト及びケニヤアイトは鱗片状の結晶が積層した粒子形状になっていることが好ましい。
【選択図】図4
Description
(1)〔マガディアイト及びケニヤアイト〕
層状珪酸塩には、カネマイト(NaHSi2O3・3H2O)、KHSi2O5、マカタイト(Na2Si4O9・xH2O)、マガディアイト、ケニヤアイトなどがある。これらのうち本発明においては、製造工程や製品形状の点から、マガディアイト(Magadiite:Na2Si14O29・xH2O)及びケニヤアイト(Kenyaite:Na2Si22O41・xH2O)を用いている。マガディアイト及びケニヤアイトには天然物もあるが、不純物が少ない等の点で合成品が良い。合成方法に関しては、J. Ceramic Society of Japan, Vol.100, No. 3, 326−331(1991)に詳細な記載がある。
脂肪族第四級アンモニウム塩はカチオン界面活性剤として多量に使用されている。脂肪族第四級アンモニウム塩には、長鎖アルキル基がモノとジのものがある。一般にアルキル鎖長の短いほうが殺菌力が強い。ジアルキルジメチルアンモニウム塩では長鎖アルキル基がデシルのものが殺菌剤で市販されている。ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドは長鎖アルキル基が炭素数16と18の混合物で殺菌消毒剤である。炭素数12から24の混合物は一般名が塩化ベンザルコニウムで、殺菌消毒剤として日本薬局方に収載されている。塩化ベンゼトニウムは脂肪族第四級アンモニウム塩であり、細菌、カビ類に広く抗菌性をもっており、水溶液は殺菌消毒剤として日本薬局方に収載されている。テトラメチルアンモニウム塩も強い殺菌剤であることが広く知られており、水を含む製品の防腐剤として使用されている。塩化セチルピリジニウム等のピリジニウム類は第四級アンモニウム塩であり、殺菌剤として使用されている。8−キノリノール等のキノリノール類は三級アミンであり殺菌性を有する。チアゾリルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール類も三級アミンであり殺菌性を有する。市販品としては牛脂ジアミンジオレイン酸塩、ヤシジアミンジアジピン酸塩、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなどもある。抗菌性を有する第四級アンモニウムイオン及び三級アミンイオンは、これらのうちの何れか1種を用いることもでき、或いは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明では、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオンなどの抗菌性金属イオンを必要に応じ使用する。これは、(イ)抗菌スペクトルを広げる、(ロ)抗菌性の持続期間を長くする、(ハ)耐候性を改善する、(ニ)耐薬品性を改善するなどの効果がある。第四級アンモニウムイオンや三級アミンイオンと、亜鉛イオン、銅イオン、銀イオンのどれを組み合わせるかは目的に応じて任意に選定でき、複数を組み合わせることもできる。特に亜鉛イオンとの組み合わせでは完全白色化ができ好ましい。イオン交換は、第四級アンモニウムイオンや三級アミンイオンと金属イオンの混合溶液を用いてもよく、或いは1種類の溶液毎に順次用いても良い。また、交換容量の全てを第四級アンモニウムイオンや三級アミンイオン及び抗菌性金属イオンで満たす必要はなく、ナトリウムイオンやプロトンを残存させることもできる。ナトリウムイオンやプロトンでなく、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2価金属イオン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルなどの各種金属のイオンとイオン交換しておくことも好ましい。
前記の合成方法によって得られたマガディアイトやケニヤアイトの水懸濁液を、ろ過、水洗して、余剰のナトリウムを除去し、再び脱イオン水に分散させ、濃度5〜35重量%の水懸濁液とし、均一に分散するまで充分攪拌を行う。水懸濁液はナトリウムイオンに起因してpH10程度のアルカリ性を示す。従って、金属水酸化物の生成を防ぐために、イオン交換に先立って水懸濁液に予め酸を加えて中和を行いpHを7〜4にしておくことが好ましい。中和にはハロゲンを含まない酸である硝酸や硫酸、酢酸などが好ましい。第四級アンモニウム塩または三級アミン塩に水酸化物を使用した場合にも中和が必要となる。
(1)脂肪酸及びその金属塩類:
合成または天然脂肪酸及びそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など。例えばステアリン酸、オレイン酸等及びそれらのナトリウム塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
(2)アマイド、アミン類:
例えば、エルカ酸アミド、オレイルパルミトアマイド、ステアリルエルカミド、2−ステアロミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、N,N'−オレオイルステアリルエチレンジアミン、N,N'−ビス(2ヒドロキシエチル)アルキル(C12〜C18)アマイド、N,N'−ビス(ヒドロキシエチル)ラウロアマイド、脂肪酸ジエタノールアミン等が挙げられる。
(3)脂肪酸エステル・アルコールエステル類:
例えば、ステアリン酸n−ブチル、水添ロジンメチルエステル、セバチン酸ジブチル(n−ブチル)、セバチン酸ジオクチル(2−エチルヘキシル、n−オクチル共)、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、ジエチレングリコール脂肪酸酸ジエステル、プロピレングリコール脂肪酸ジエステル等が挙げられる。
(4)ワックス類:
例えば、スパームアセチワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜蝋、木蝋、ラノリン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エポキシ変性ポリエチレンワックス、石油系ワックス等が挙げられる。
(5)低融点樹脂類:
融点或いは軟化点が40〜200℃、特に70〜160℃である各種樹脂、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、クロマン−インデン樹脂、その他の石油樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、低融点コポリアミド、低融点コポリエステル等を挙げることができる。
(1)シラン系カップリング剤:
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、などのアミノ系シラン。γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などのメタクリロキシ系シラン。
ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、などのビニル系シラン。
β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、などのエポキシ系シラン。γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのメルカプト系シラン。γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、などのクロロプロピル系シラン。
(2)チタネート系カップリング剤:
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ポリジイソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ポリジノルマルブチルチタネート。
(a)組成分析:
ナトリウム及び抗菌性金属はICP(Varian製LIBERTYII型)によって定量した。第四級アンモニウムイオン及び三級アミンイオンは、全有機炭素計(島津製作所製、TOC−5000A)により炭素量を測定し、分子量に換算して定量した。
(b)粒子の形状:
SEM(日立製作所製S−4500型)により観察した。
(c)X線回折パターン(XRD):
X線回折装置(理学製RINT2400型)を用いた。
(d)水分測定
TG/DTA(熱重量示差熱分析;セイコーインスツルメンス製のTG/DTA6300型)を用いて、昇温速度10℃/minで40〜800℃の重量変化を測定し、170℃までの重量減を水分量とした。
(1)マガディアイトの合成
J. Ceramic Society of Japan Vol.100, No.3, 326-331(1992)に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:H2O=1:0.23:18.5(モル比)の原料組成でマガディアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH9.2重量部、水193重量部をオートクレーブに仕込み、150℃で48時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、120℃で乾燥し、マガディアイト(Na2Si14O29・xH2O) を得た。SEM像は、図1に示すように、板厚0.05μmで一辺が3μmの方形面をした板状結晶が、花弁状に集合した球状の結晶であった。粒子径は7.0μm、Na2Oは5.8重量%、170℃までの加熱減量は13重量%であった。XRDはJCPDS#42−1350に一致し、面間隔d001は15.6Åであった。
合成したマガディアイト100gをNa量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(東京化成、テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、図4に示すように、鱗片状(板状)の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は7μmであった。また、170℃までの加熱減量は3.1重量%であった。XRDでは元のd001の15.6Åが弱くなり、新たなd001の32.6Åの大きなピークと、そのd002が16.3Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より(ベンザルコニウム)1.0・Na1.0・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。
実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH3)2CH2C6H5]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した。このマガディアイトを、再度0.5倍当量の塩化ベンザルコニウムの水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、IKA社製MF-10型卓上粉砕機で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は3μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.9重量%であった。XRDでは、もとのd001の15.6Åはなくなり、新たなd001の32.9Åの大きなピークと、そのd002が16.5Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、Naは存在せず、(ベンザルコニウム)2・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。
実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の1.0倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH3)2CH2C6H5]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åはなくなり、新たなd001の32.9Åの大きなピークと、そのd002が16.5Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、(ベンザルコニウム)1.5・Na0.5・Si14O29・xH2O が得られたことを確認した。
実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH3)2CH2C6H5]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。次いで0.2Nの塩酸を滴下してpHを7とし、0.5倍当量の塩化亜鉛を加え室温で24時間攪拌した。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は5μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åはなくなり、新たなd001の32.9Åの大きなピークと、そのd002が16.5Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、Naは存在せず(ベンザルコニウム)1.0・Zn0.3・H0.2・Si14O29・xH2O が得られたことを確認した。
実施例1で合成したマガディアイト100gのNa量に対して、0.5倍当量の硝酸亜鉛と0.5倍当量の硝酸銀を純水に溶解した水溶液1000mlを調製した。この水溶液に実施例1で合成したマガディアイト100gを投入し、イオン交換させた。この分散液から固体をろ過分離し水洗し、箱型乾燥機で50℃で乾燥した。得られた粉末は、SEM観察では鱗片状の結晶が花弁状もしくはキャベツ状に集合した球状の粒子形状であって、マイクロトラック(日機装製 HRA型)による平均粒子径(D50)は6.5μmであった。また、化学分析より、Ag0.15・Zn0.91・Na0.03・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。この粉末と、実施例2で製造した、ベンザルコニウムイオンを導入したマガディアイトとを、等量で均一に混合し抗菌性金属とベンザルコニウムを含有するマガディアイト粉末を得た。
実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の1.0倍当量の塩化ベンゼトニウム(試薬:東京化成)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンゼトニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状及び少し壊れた花弁状の粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åと、新たなd001の32.7Åのピークが現れており、マガディアイトの層間にベンゼトニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、(ベンゼトニウム)0.4・Na1.6・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。
実施例1で合成したマガディアイト100gのNa量の1.0倍当量の8−キノリノール(純正化学製、[C9H7NO])を、塩酸酸性水溶液1000ml(pH=1.8)に溶解した。この水溶液に、実施例1で合成したマガディアイト100gを投入し、室温で24時間攪拌して、Naと8−キノリノールをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。得られた粉末は黄色であり、粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は5μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åはなくなり、新たなd001の16.6Åの大きなピークが現れており、マガディアイトの層間に8−キノリノールが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、(8−キノリノール)1.7・H0.3・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。
(1)板状マガディアイトの合成
特開2003−531801号公報に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:H2O=1:0.50:18.5(モル比)の原料組成でマガディアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH19.6重量部、水203重量部をオートクレーブに仕込み、160℃で24時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、110℃で乾燥し、マガディアイト(Na2Si14O29・xH2O) を得た。SEM像は、図2に示すように、板厚0.1μmで一辺が平均1.0μmの方形面をした板状(鱗片状)結晶であった。この結晶は凝集していなかった。XRDはJCPDS#42−1350に一致し、面間隔d001は15.5Åであった。
合成したマガディアイト100gをNa量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH3)2CH2C6H5]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した。このマガディアイトを、再度0.5倍当量の塩化ベンザルコニウムの水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、IKA社製MF-10型卓上粉砕機で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、図5に示すように、結晶形態は鱗片状(板状)であり、この結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は平均1.0μmであった。また、170℃までの加熱減量は2.7重量%であった。XRDでは元のd001の15.5Åが弱くなり、新たなd001の30.9Åの大きなピークと、そのd002が15.5Åに現れており、マガディアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より(ベンザルコニウム)2.0・Si14O29・xH2Oが得られたことを確認した。
(1)ケニヤアイトの合成
J. Ceramic Society of Japan Vol. 100, No.3, 326-331(1992)に記載の方法に従った。SiO2:NaOH:K2CO3:H2O=1:0.23:0.16:18.5(モル比)の原料組成でケニヤアイトを合成した。すなわち、SiO2が30重量%のコロイダルシリカ(日本化学工業(株)製品シリカドール30)200重量部と、試薬のNaOH9.2重量部、試薬のK2CO322.1重量部、水193重量部をオートクレーブに仕込み、170℃で24時間の水熱合成を行った。合成後、固形物を濾過水洗し、110℃で乾燥し、ケニヤアイト(Na0.97K0.72Si22O41・xH2O) を得た。SEM像は、板厚0.05μmで一片が3μmの方形面をした板状結晶が、花弁状に集合した球状の結晶であった。粒子径は7.0μm、Na2Oは1.91重量%、K2Oは2.15重量%、170℃までの加熱減量は6.5重量%であった。XRDではJCPDS#20−1157に一致し、面間隔d001は19.7Åであった。
合成したケニヤアイト100gをNa量の0.5倍当量の塩化ベンザルコニウム(東京化成、テトラデシルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Na及びKとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した。このケニヤアイトを、再度0.5倍当量の塩化ベンザルコニウムの水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Na及びKとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。また、170℃までの加熱減量は1.6重量%であった。XRDでは、もとのd001の19.7Åはなくなり、新たなd001の36.6Åの大きなピークと、そのd002が18.3Åに現れており、ケニヤアイトの層間にベンザルコニウムが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、NaとKは存在せず、(ベンザルコニウム)1.68・Si22O41・xH2Oが得られたことを確認した。
本実施例では、イオン交換によって導入された抗菌成分の徐放性の確認を行った。実施例2で得られたベンザルコニウムイオン交換マガディアイト粉末5gを、純水、エタノール及びグリセリンの各45gに投入し24時間攪拌を続けた。その後、ろ過分離して水洗し、110℃で乾燥し、粉末を回収した。粉末を化学分析して溶出したベンザルコニウムの量を算出した。その結果、何れの液に分散させた場合も溶出量は8重量%であった。また、純水への分散は、粉末が撥水性を示したため、均一な分散とはならなかった。
本比較例では、膨潤性フッ素置換雲母を使用した抗菌剤を製造した。膨潤性フッ素置換雲母(コープケミカル(株)製のソマシフME−100)50gを、Na量の1.0倍当量の塩化ベンザルコニウム(関東化学製、[RN(CH3)2CH2C6H5]Cl、RはC8〜C18)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、Naとベンザルコニウムをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。化学分析の結果、Naの70重量%がベンザルコニウムに置換されていることを確認した。この粉末について、実施例9と同じくベンザルコニウムの溶出量を測定した。その結果、純水、エタノール及びグリセリンの何れに対しても溶出が認められなかった。
本比較例では、モンモリロナイトを使用した抗菌剤を製造した。モンモリロナイト(クニミネ工業(株)製のクニピアF)50gを、Na量の1.0倍当量の塩化ベンザルコニウム16.25gの水溶液1000mlに添加し、分散を行う操作を開始したところ、10分後には全体がペースト状になり、固体をろ過分離することができず、水洗することもできなくなった。
本比較例では、特開2000−128521号公報に記載の方法に従い抗菌剤を製造した。第四級アンモニウムイオンとしてドデシルトリメチルアンモニウムを使用した。実施例1で合成したマガディアイト100gを、Na量の1.0倍当量のドデシルトリメチルアンモニウムクロライド(試薬:東京化成、以下DTMA−Clと記載)の水溶液1000mlに分散させ、室温で24時間攪拌して、NaとDTMAをイオン交換させた。分散液から固体をろ過分離し水洗した後、110℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して粉末を得た。粉末を一部取り出してSEM観察を行ったところ、鱗片状の結晶が積層した粒子形状が観察できた。SEM観察による平均粒子径は10μmであった。XRDでは、もとのd001の15.6Åがなくなり、新たなd001の28.3Åの大きなピークが現れており、マガディアイトの層間にDTMAが導入されていることが確認できた。また、化学分析より、(DTMA)1.8・Na0.2・Si14O29・xH2O が得られたことを確認した。
実施例1ないし9及び比較例3で得られた抗菌剤について、抗菌性試験を行った。試験結果を以下の表1に示す。試験方法は以下の通りである。
A)試験菌
(1)Escherichia coli NBRC 3301 (大腸菌)
(2)Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275 (緑膿菌)
(3)Aspergillus niger IFO 6341 (クロコウジカビ)
(4)Penicillium citrinum IFO 6352 (アオカビ)
B)試験用培地
NA培地:普通寒天培地[栄研化学株式会社]
NB培地:肉エキスを0.2%添加した普通ブイヨン培地[栄研化学株式会社]
PDA培地:ポテトデキストロース寒天培地[栄研化学株式会社]
SDA培地:サブロー寒天培地[栄研化学株式会社]
C)菌液の調製
a)試験菌(1)及び(2)
NA培地で37℃±1℃、24〜48時間培養した試験菌をNB培地に接種し、37℃±1℃、22〜26時間培養した。この培養液をNB培地を用いて1ml当たりの菌数が106〜107となるように調整し、菌液とした。
b)試験菌(3)及び(4)
PDA培地で25℃±1℃、7日間培養後、形成された胞子を0.05%ポリソルベート80添加生理食塩水に懸濁させ、1ml当たりの胞子数が106〜107となるように調整し、菌液とした。
D)試験用平板培地の作成
試験菌(1)及び(2)はNA培地、試験菌(3)及び(4)はSDA培地150mlに菌液10mlをそれぞれ添加、混合し、これらをシャーレに15ml分注して固化させた。さらに、シャーレを室温で30分間放置して培地表面を乾燥させた後、乾熱滅菌(180℃、30分間)した円筒ガラス(直径:12mm)で穴を開け、これを試験用平板培地とした。
E)試験操作
検体を試料とした。試験用平板培地中央の穴全体に試料を充填し、試験菌(1)及び(2)は37℃±1℃、24時間、試験菌(3)及び(4)は25℃±1℃、7日間培養後、試料の周囲のハローの有無を肉眼観察により判定した。なお、菌液の生菌数を試験菌(1)及び(2)はNA培地を用いた混釈平板培養法(37℃±1℃、2日間培養)、試験菌(3)及び(4)はSDA培地を用いた混釈平板培養法(25℃±1℃、7日間培養)により測定し、試験用平板培地1mlあたりの菌濃度に換算した。
本実施例及び比較例では塩化ビニル製シートを製造した。実施例12では、抗菌剤として、実施例1で製造したベンザルコニウムイオン交換マガディアイトを2重量部配合した。比較例4では、抗菌剤は配合しなかった。比較例5では、ブランクとして、実施例1で得られたNaマガディアイトを配合した。比較例6では、市販の抗菌剤である銀イオン交換ゼオライトを配合した。
塩化ビニルシートの試験片を蛍光灯(60W×2本)の直下1mの位置に置き、30日間暴露後の変色度を下記の評点で評価した。
○:変色しない。
△:やや変色した。
×:激しく変色した。
抗菌製品の抗菌力評価試験法(抗菌製品技術協議会)で制定された方法に準拠して評価した。
試験方法:フィルム密着法
評価菌種:大腸菌、黄色ブドウ球菌
菌液接種時間:24時間
評価:抗菌剤添加樹脂成形品に菌液を接種して、フィルムでカバーして24時間後の菌数を測定し、以下の基準で評価する。
○:接種菌液からの減少率が1/100以上。
△:接種菌液からの減少率が1/10以上、1/100未満。
×:接種菌液からの減少率が1/10未満。
Claims (11)
- イオン交換可能なイオンの少なくとも一部が抗菌性を有する第四級アンモニウムイオン及び/または三級アミンイオンであるマガディアイト及び/またはケニヤアイトを含有することを特徴とする抗菌剤。
- マガディアイト及び/またはケニヤアイトはその結晶が鱗片状の形態であることを特徴とする請求項1記載の抗菌剤。
- マガディアイト及び/またはケニヤアイトが、鱗片状の結晶が積層した粒子形状であることを特徴とする請求項2記載の抗菌剤。
- 抗菌性を有する第四級アンモニウムイオン及び/または三級アミンイオンが、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、ピリジニウム又は8−キノリノールであることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の抗菌剤。
- マガディアイト及び/またはケニヤアイトのイオン交換可能なナトリウムイオンの全てが第四級アンモニウムイオン及び/または三級アミンイオンで交換されており、実質的に第四級アンモニウムイオン及び/または三級アミンイオンと珪酸のみからなることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤。
- 第四級アンモニウムイオン及び/または三級アミンイオン以外のイオン交換可能なイオンが、ナトリウムイオン、プロトン、亜鉛イオン、銅イオンまたは銀イオンであることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の抗菌剤。
- 粒子径が1〜500μmであり、水分が5重量%以下に調整されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の抗菌剤。
- 請求項1ないし7の何れかに記載の抗菌剤を含有する化粧料組成物。
- 請求項1ないし7の何れかに記載の抗菌剤を含有する樹脂組成物。
- 請求項1ないし7の何れかに記載の抗菌剤を含有する塗料。
- 請求項1ないし7の何れかに記載の抗菌剤を含有する植物用殺菌剤。
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