JP2007103242A - 固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】局所的な電解質膜の乾燥と加湿水または生成水の凝縮が抑制されている長寿命と電圧性能が向上する固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子形燃料電池は、アノードセパレータは、膜電極接合体に相対する面にアノードガス入口マニホールドとアノードガス出口マニホールドとを連通するアノードガス流路群が設けられ、カソードセパレータは、膜電極接合体に相対する面にカソードガス入口マニホールドとカソードガス出口マニホールドとを連通するカソードガス流路群が設けられ、アノードセパレータまたはカソードセパレータの一方は、膜電極接合体に相対する面の裏面に冷媒入口マニホールドと冷媒出口マニホールドとを連通する冷媒流路群が設けられ、冷媒流路群は、冷媒入口マニホールドに直近する部分がアノードガス流路群のアノードガス入口マニホールドに直近する部分で直交する。
【選択図】図1

Description

この発明は、電気化学反応を利用して発電する固体高分子形燃料電池に関する。
燃料電池のアノード電極とカソード電極の反応は、全体でみれば水素と酸素から水が生成され、電気エネルギーが外部に取り出されることである。
燃料電池に投入されるエネルギーは、HHVベースの水素(高位発熱量基準)で考えると285.8kJ/molであり、そのうち電力として取り出せるのは自由エネルギー変化量としての237.1kJ/molである。実際には電池反応におけるエネルギー損失があり、負荷条件などによって変化するが、投入エネルギーの約半分は熱になる。発生する熱は電池スタックの各セルの間を流れる冷媒によって取り除かれ、他に利用される。
冷媒は各電池間に均等に分配され、一定の速度で流されるので冷媒温度は入口から流路に沿って徐々に上昇し、出口で最も高温になる。その結果、冷媒と接触するセル固体部もほぼ冷媒に沿った温度分布を示し、冷媒入口付近が最も低温で、冷媒出口付近が最も高温になる。従って、冷媒入口付近のガスの相対湿度は高く、冷媒出口付近のガスは乾燥気味となる。
そこで、この相対湿度の不均衡を電池反応によって生成する水分で緩和する方法として、面内温度分布の低い部分から反応ガス流路に流入し、温度の高い部分から排出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、燃料ガス、酸化剤ガスの流れと冷却水の流れを並行流にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
また、アノードとカソードの流路が対向流の場合、カソード流路の湿度分布に沿って冷媒流路を並行流にする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平05−144451号公報 特許第3389551号公報 特開2002−184428号公報
しかし、これらはすべて発電性能のみに着目した提案であり、電池寿命の観点から発明されたものではない。また、ガスや冷媒のマニホールドの位置を含めた流路パターンを開示するものではない。
電池反応によりアノードで生成するプロトンは電解質膜中をアノードからカソードに同伴水とともに移動するため、電解質膜のカソード側よりもアノード側の方が一般的に乾燥している。また、ガスは流路に沿って上流側から下流側に流れるため、上流側の方が相対的に乾燥している。従って、セル内で最も乾燥している領域はアノードガス入口領域であり、最も低温である冷媒入口領域とアノードガス入口領域を最も隣接させる必要がある。
アノードガス入口領域の次に乾燥する領域はカソードガス入口領域である。特に、カソード排出ガス中の反応生成水を熱交換型加湿器で回収するシステムにおいてはカソードガス入口領域も低温化して乾燥を抑制する必要がある。単電池では、アノード入口領域、カソード入口領域、冷媒入口領域を同じ位置に配置して、両ガス同時低温化も可能であるが、積層された燃料電池スタックではアノードガスとカソードガスの入口マニホールドを同一場所に設置することは物理的に不可能である。
また、相対的に湿潤な下流域では、上述の乾燥とは反対の課題が存在する。ガス流路の中流域から出口領域では反応生成水増大によって相対湿度が高くなり、水蒸気圧が飽和蒸気圧を超える温度領域では水分が凝縮し、流路内を流れるガスは気液二相流になっている。液体の水が流路に多量に存在すると流路閉塞や圧力損失の局所的増大による配流ばらつきによる電圧性能の低下が懸念される。
この発明の目的は、局所的な電解質膜の乾燥と加湿水または生成水の凝縮が抑制されている長寿命と電圧性能が向上する固体高分子形燃料電池を提供することである。
この発明に係わる固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜が両側からアノード電極とカソード電極とにより挟持されて構成される膜電極接合体と、上記膜電極接合体を両側から挟持するアノードセパレータおよびカソードセパレータとを備える単電池が複数積層されて構成される固体高分子形燃料電池において、上記アノードセパレータは、上記膜電極接合体に相対する面にアノードガス入口マニホールドとアノードガス出口マニホールドとを連通するアノードガス流路群が設けられ、上記カソードセパレータは、上記膜電極接合体に相対する面にカソードガス入口マニホールドとカソードガス出口マニホールドとを連通するカソードガス流路群が設けられ、上記アノードセパレータまたはカソードセパレータの一方は、上記膜電極接合体に相対する面の裏面に冷媒入口マニホールドと冷媒出口マニホールドとを連通する冷媒流路群が設けられ、上記冷媒流路群は、上記冷媒入口マニホールドに直近する部分が上記アノードガス流路群の上記アノードガス入口マニホールドに直近する部分と直交する。
この発明に係わる固体高分子形燃料電池の効果は、アノードガス入口領域においてアノードガスの流れが冷媒入口マニホールドから離れていない冷媒流路群を流れる冷媒の流れと直交しており、アノードガス入口領域の温度が流れ込んだ冷媒の温度と等しいので、燃料電池に供給するアノードガスの露点を比較的低温にしても電解質膜が乾燥気味になることを防げるし、電解質膜の寿命を長持ちすることができる。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる燃料電池を構成する単電池の構成図である。
燃料電池の単電池1は、膜電極接合体2とその周囲に電池外部とのガスの漏れを遮断するためのガスシール部3とからなる部材4をアノードセパレータ5とカソードセパレータ6とで挟み込んだ構成である。
膜電極接合体2は、一般的であるので図示は省略するが、厚さ約50μmのパーフルオロスルホン酸系のプロトン伝導電解質膜の両面に、厚さ約20μmのカソード触媒層およびアノード触媒層が形成され、カソード触媒層およびアノード触媒層の電解質膜に面していない面にカソードガス拡散層およびアノードガス拡散層が接して構成されている。
アノード触媒層には、耐一酸化炭素被毒性を高めるための白金ルテニウム合金微粒子を担持したカーボン粒子が用いられている。また、カソード触媒層には、白金微粒子を担持したカーボン粒子が用いられている。
アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層には、カーボンペーパー、カーボンクロスまたはカーボンフェルトが用いられている。
アノードセパレータ5およびカソードセパレータ6の膜電極接合体2に面する面に、アノードガス流路群(図1の点線)10およびカソードガス流路群11が設けられている。
また、アノードセパレータ5のアノードガス流路群10が設けられていない面に、冷媒流路群12が設けられている。
なお、アノードガス流路群10、カソードガス流路群11および冷媒流路群12は、それぞれ複数の流路が並行するようにして設けられており、1本1本を分けて説明することがないので、流路群として以下まとめて説明する。
アノードセパレータ5およびカソードセパレータ6には、一般にカーボン、または貴金属メッキを表面に施した金属板などの電気伝導度が高く、ガス透過性の無い材料が用いられる。
燃料電池の単電池1は、アノードガス流路群10に水素または改質ガスが流され、カソードガス流路群11に空気が流されることにより、アノードとカソード間に起電力が発生し、負荷を介して発電する。そして、燃料電池の単電池1の出力電圧は1V未満と小さいため、発電システムとして実用的な直流電圧を得るために単電池を必要数積層させて燃料電池スタックとして組み立てられる。
次に、この発明の実施の形態1に係わるアノードセパレータ5について説明する。
図2は、実施の形態1に係わるアノードセパレータ5の冷媒流路群12が設けられた面(以下、冷媒流路面と称す。)(a)およびアノードガス流路群10が設けられた面(以下、アノードガス流路面と称す。)(b)の平面図である。なお、図2(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図2(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5を冷媒流路面から眺めた位置である。
冷媒流路群12は、図2(a)に示すように、冷媒が、アノードセパレータ5の上左隅から上中央に亘って設けられた冷媒入口マニホールド14から冷媒流路面内に流れ込み、冷媒流路面内全面に冷媒が行き渡る流路パターンの冷媒流路群12を流れた後、アノードセパレータ5の下右隅から下中央に亘って設けられた冷媒出口マニホールド15から燃料電池の系外に流れ出るように冷媒流路面に設けられている。
アノードガス流路群10は、図2(b)に示すように、アノードガスが、アノードセパレータ5の左横上隅から左横中央に亘って設けられたアノードガス入口マニホールド16からアノードセパレータ5のアノードガス流路面内に流れ込み、アノードガス流路面内全面にアノードガスが行き渡る流路パターンのアノードガス流路群10を流れた後、アノードセパレータ5の右横下隅から右横中央に亘って設けられているアノードガス出口マニホールド17から燃料電池の系外に流れ出るようにアノードガス流路面に設けられている。
そして、図2(a)、(b)に点線の三角形で表したアノードセパレータ5のアノードガス入口領域21において、アノードセパレータ5の冷媒流路面に設けられた冷媒流路群12とアノードガス流路面に設けられたアノードガス流路群10は、冷媒とアノードガスとが直交して流れるように設けられている。
このように冷媒流路群12とアノードガス流路群10とが設けられたアノードセパレータ5において、燃料電池に流入する冷媒は、冷媒流路群12の入口領域が他の領域に比べて最も温度が低いため、図2に示すアノードセパレータ5のアノードガス入口領域21を他の領域に比べて低温にしている。例えば、冷媒入口マニホールド14を流れる冷媒の温度を70℃に制御した冷媒を燃料電池に供給すると、アノードセパレータ5のアノードガス入口領域21の温度も供給される冷媒の温度とほぼ等温の70℃になっている。そして、アノードガス露点70℃のアノードガスを供給すると、アノードガス入口領域21のアノードガス流路群10を流れるアノードガスの相対湿度を電解質膜の含水率が最も高い100%に合わせることができる。そこで、アノードガスの加湿には相当の熱が必要なので、アノードガスのアノードガス露点を低くできることは燃料電池システム全体の効率をよくすることができる。
図3は、実施の形態1に係わるカソードセパレータ6のカソードガス流路群11が設けられた面(以下、カソードガス流路面と称す。)(a)およびアノードセパレータ5の冷媒流路面(b)の平面図である。
カソードガス流路群11は、図3(a)に示すように、カソードガスが、カソードセパレータ6の右横上隅から右横中央に亘って設けられたカソードガス入口マニホールド18からカソードセパレータ6のカソードガス流路面内に流れ込み、カソードガス流路面内全面にカソードガスが行き渡る流路パターンのカソードガス流路群11を流れた後、カソードセパレータ6の左横下隅から左横中央に亘って設けられているカソードガス出口マニホールド19から燃料電池の系外に流れ出るようにカソードガス流路面に設けられている。
そして、図3(a)、(b)に点線の三角形で表したカソードセパレータ6のカソードガス入口領域22において、アノードセパレータ5の冷媒流路面に設けられた冷媒流路群12とカソードガス流路面に設けられたカソードガス流路群11は、冷媒とカソードガスとが直交して流れるように設けられている。このカソードガス入口領域22は、冷媒流路群12を流れる冷媒の流れる方向に向かってアノードガス入口領域21の近い下流に位置しているので、このカソードガス入口領域22を流れるカソードガスの温度はアノードガス入口領域21を流れるアノードガスの温度より僅かに高いだけに抑えられる。
例えば、冷媒入口マニホールド14を流れる冷媒の温度を70℃に制御した定格運転の燃料電池において、カソードガス入口領域22を流れるカソードガスの温度を71℃にすることができる。これにより、カソードガスのカソードガス露点を71℃に設定して運転することでカソードガス入口領域22を電解質膜の含水率の高い飽和加湿条件で運転することが可能となる。
そして、カソード排ガス中の水分回収を前提とした燃料電池システムでは効率面での利点が大きい。すなわち、冷媒入口温度を70℃、冷媒出口温度を75℃となるように冷媒を流す運転条件において、カソードガス出口における排ガスは温度約75℃の加湿ガスである。この排ガスから水分をカソードガス入口に回収、循環させた場合、未回収水分量のために、コンパクトな水分回収装置を用いた場合、カソードガス入口領域でのカソードガス露点は71℃程度が上限となる。そこで、カソードガス入口領域22の温度を71℃に抑えることができるので、水分回収率を向上させなくてもカソードガス入口領域22の相対湿度100%での運転が可能になる。
次に、この発明の効果に係わる燃料電池における発熱と水分の様子を説明する。
燃料電池の単電池1の電圧は理論起電力より低く、原因は電極反応抵抗による反応過電圧と電解質膜抵抗とによるIR損に起因する。高効率発電を行うときには抵抗低減が重要であるが、これら抵抗は電池内部の水分量と密接に関係している。電解質膜の抵抗は電解質膜の水分量と相関関係にあり、水分量が多いほどプロトンの伝導性が向上し、電解質膜のイオン抵抗が小さくなる。
また、プロトンが関与するアノード、カソードそれぞれの電極反応抵抗も水分量の影響を受ける。燃料電池の触媒はカーボンに担持した白金と電解質膜と同じ成分のイオノマーとで構成された多孔体であるため、水分量の多い条件では電極内のイオノマーのイオン抵抗が低下する。
逆に、多孔体の空間は反応ガスの拡散経路であるため、水分量過多の条件ではガス拡散阻害による反応抵抗の上昇を招くことになる。固体高分子形燃料電池に使われるパーフルオロスルホン酸系電解質膜は乾燥に比較的弱い。乾燥による膜の劣化が原因で発生するクロスオーバーを抑制するためには、セル内で最も膜が乾燥する温度条件領域の相対湿度を上げる必要がある。以上のように電池内の水分量の制御は電池特性にとって重要な因子である。
図4は、実施の形態1に係わる単電池の初期および連続運転後の電圧のアノードガス露点に対する依存性を示した図である。
この単電池1の運転条件は、電流密度0.25A/cm、アノードガス利用率70%、カソードガス利用率50%、冷媒入口温度70℃、冷媒出口温度75℃、カソードガスは排出ガスから回収した水蒸気で加湿したガス露点70℃のガスである。
アノードガス入口領域21を流れるアノードガスの相対湿度は、電解質膜が乾燥することを抑制するために飽和水蒸気条件に近いことが好ましいが、図4に示すように、飽和水蒸気条件を越えるとアノードガス入口マニホールドで凝縮が起こるため、セル電圧が低下する。
積層スタックの各セルへの均等分配の視点からはアノードガス入口領域21の温度はアノードガス露点以上であることが好ましい。
また、それらの差が5℃以上になると電解質膜のイオン導電率低下によるセル電圧の低下が顕著になる。また、セル寿命の視点からは入口露点差が3℃を越えると劣化が顕著になり始め、セル電圧を長期間安定に維持することが困難になる。
このような燃料電池は、アノードガス入口領域においてアノードガスの流れが冷媒入口マニホールドから離れていない冷媒流路群を流れる冷媒の流れと直交しており、アノードガス入口領域の温度が流れ込んだ冷媒の温度と等しいので、燃料電池に供給するアノードガスの露点を比較的低温にしても電解質膜が乾燥気味になることを防げるし、電解質膜の寿命を長持ちすることができる。
また、カソードガス入口領域においてアノードガス入口領域の冷媒流路群を流れてくる冷媒がカソードガス流路群を流れるカソードガスの流れと直交しており、冷媒の温度が少しいしか上昇していないので、カソード排ガスからの水分回収率を引き上げなくてもカソードガス入口領域の電解質膜が乾燥気味になることを防げるし、電解質膜の寿命を長持ちすることができる。
また、実施の形態1のように冷媒により比較的低温に維持されたアノードガス入口領域の温度がアノードガス流路群に流れるアノードガスのアノードガス露点に対して零℃以上、3℃以下になるように冷媒の温度とアノードガスのアノードガス露点を制御しているので、アノードガス入口マニホールドでの凝縮が起こらずに、単電池の電圧低下もなく、電解質膜の寿命を長持ちするように運転できる。
なお、実施の形態1においてアノードセパレータに冷媒流路群がある場合について説明したが、カソードセパレータに冷媒流路群を設けてもよい。
実施の形態2.
図5は、実施の形態2に係わるアノードセパレータ5Bの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。なお、図5(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図5(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12、第2の冷媒流路群26、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5Bを冷媒流路面から眺めた位置である。
実施の形態2に係わるアノードセパレータ5Bは、図5(a)に示すように、実施の形態1に係わるアノードセパレータ5に上右隅の近傍に第2の冷媒入口マニホールド25および冷媒入口マニホールド25と冷媒出口マニホールド15とを連通する第2の冷媒流路群26とが追加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
実施の形態2に係わる第2の冷媒流路群26は、冷媒流路群12と比較すると、流路の本数が少なく、流路の長さが短く、流路の断面積が大きくなっている。すなわち、冷媒流路群12の本数が7本であるのに対して第2の冷媒流路群26の本数が2本である。また、第2の冷媒流路群26の流路の長さは、冷媒流路群12の流路の長さの40%である。また、冷媒流路群12の流路の幅1.0mm、深さ0.8mmに対して、第2の冷媒流路群26の流路の幅1.0mm、深さ1.3mmである。
そして、第2の冷媒流路群26を流れる冷媒の流速を、実施の形態1に比べて40%遅くし、冷媒出口マニホールド15での冷媒の温度を冷媒流路群12を流れてきた冷媒の温度に等しくなるようにしている。
図6は、実施の形態2に係わるカソードセパレータ6Bのカソードガス流路面(a)およびアノードセパレータ5Bの冷媒流路面(b)の平面図である。
図6(a)と図6(b)で点線の三角形で囲まれたカソードガス入口領域22において、冷媒流路群12と第2の冷媒流路群26が並行し、冷媒流路群12と第2の冷媒流路群26をそれぞれ流れる冷媒の流れは、カソードガス流路群11を流れるカソードガスの流れと直交している。
このようにカソードガス入口マニホールド16から流れ込んだカソードガスが直後に流れるカソードガス入口領域22の温度を、冷媒流路群12と第2の冷媒流路群26に流す冷媒の条件を個別に制御することができるので、アノードガスの加湿量制御とカソードガスの加湿量制御とを別々に行うことができる。例えば、回収効率の低い水分回収装置をカソードガスラインに設置したために、カソードガスのカソードガス露点が69℃までしか上がらない場合でも、低い温度の冷媒を第2の冷媒流路群26に流すことでカソードガス入口領域22を飽和加湿条件にして運転することができる。
実施の形態3.
図7は、実施の形態3に係わるアノードセパレータ5Cの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。なお、図7(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図7(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12、第2の冷媒流路群26、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5Cを冷媒流路面から眺めた位置である。
実施の形態3に係わるアノードセパレータ5Cは、図7(a)に示すように、実施の形態2に係わるアノードセパレータ5Bに下右隅の近傍の位置に第2の冷媒出口マニホールド27を追加し、第2の冷媒流路群26で第2の冷媒入口マニホールド25と第2の冷媒出口マニホールド27とを連通したことが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
図8は、実施の形態3に係わるカソードセパレータ6Cのカソードガス流路面(a)およびアノードセパレータ5Cの冷媒流路面(b)の平面図である。
図8(a)と図8(b)で点線の三角形で囲まれたカソードガス入口領域22において、冷媒流路群12と第2の冷媒流路群26が並行し、冷媒流路群12と第2の冷媒流路群26をそれぞれ流れる冷媒の流れは、カソードガス流路群11を流れるカソードガスの流れと直交している。
このように、2箇所の冷媒出口マニホールド15、27から連続する冷媒を燃料電池スタックの両側から配管を出すことによって、アノードガスとカソードガスを燃料電池スタックに隣接する個々の場所で加湿することが可能になり、コンパクトな燃料電池スタックを実現することができる。
実施の形態4.
図9は、実施の形態4に係わるアノードセパレータ5Dの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。なお、図9(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図9(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12D、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5Dを冷媒流路面から眺めた位置である。
実施の形態4に係わるアノードセパレータ5Dは、図9(a)に示すように、実施の形態1に係わるアノードセパレータ5と冷媒流路群12Dが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
実施の形態4に係わる冷媒流路群12Dは、冷媒流路群12Dを上流域、中流域、下流域に分けてみると、下流域の流路の幅を上流域、中流域の流路の幅の1.0mmを1.2mmに拡張して流路断面積が大きくなっている。このように下流域の流路断面積を大きくすることにより、冷媒の流速が遅くなり、温度勾配が上流域、中流域に比べて大きくなる。
図10は、実施の形態4に係わる燃料電池を所定の条件に基づいて電流密度0.25A/cmで発電しているときのアノードガス流路群の入口から出口に亘る温度を示す図である。なお、図10には、この発明の特徴を適用していない従来例の燃料電池を所定の条件に基づいて電流密度0.25A/cmで発電しているときのアノードガス流路群の入口から出口に亘る温度も示している。また、反応生成水がアノードガス中に放出された結果を考量して計算したアノードガス流路群の入口から出口に至るアノードガスのアノードガス露点も点線で示している。
なお、燃料電池の運転条件は、燃料ガス利用率70%、酸化剤ガス利用率50%、供給するアノードガスのアノードガス露点70℃、アノードガス入口領域の温度70℃である。
実施の形態4に係わる燃料電池では、アノードガス流路群の全領域に亘ってアノードガス露点よりもアノードガス流路群の温度が低く、電池電圧特性も従来例よりも15mV以上大きくなり、電圧振幅も5mV以内に安定している。
一方、従来例の燃料電池では、入口だけはアノードガス流路群の温度とアノードガス露点とが等しいので飽和加湿条件を満たしているが、上流域から中流域に亘りアノードガス流路群の温度がアノードガス露点よりも高くなっているので電解質膜が乾燥する環境に置かれている。また、出口付近では、アノードガス流路群の温度がアノードガス露点よりも低くなるので、一転してフラッディングする環境にアノードガス流路群が置かれて電池特性が低下する。
このように実施の形態4に係わる燃料電池では、アノードガス露点がアノードガス流路群の温度より全流域で高いので、電解質膜の乾燥が抑制されて高いイオン導電率の環境に置かれて、電池電圧が高く維持され、電圧振幅も低く抑えられる。
なお、実施の形態4において流路の断面積を大きくするために幅を広くしているが、流路の深さを深くしても同様の効果が得られる。
実施の形態5.
図11は、実施の形態5に係わるアノードセパレータ5Eの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。なお、図11(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図11(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12E、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5Eを冷媒流路面から眺めた位置である。
実施の形態5に係わるアノードセパレータ5Eは、図11(a)に示すように、実施の形態4に係わるアノードセパレータ5Dと冷媒流路群12Eが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
実施の形態5に係わる冷媒流路群12Eでは、冷媒流路群12Eを上流域、中流域、下流域に分けてみたとき、下流域の冷媒流路群12Eの流路の本数が増加されている。
このように下流域の流路の本数が増加されると、冷媒の流速が遅くなり、温度勾配が上流域、中流域に比べて大きくなる。
このような燃料電池は、下流域の冷媒流路群12Eの流路の本数を増やして下流域の温度勾配を大きくしているので、電解質膜の乾燥が抑制され、下流域におけるフラッディングが回避される。
実施の形態6.
図12は、実施の形態6に係わるアノードセパレータ5Fの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。なお、図12(b)は、一点鎖線で示される折り返し線を中心として図12(a)で図示される冷媒流路面を折り返したアノードガス流路面の平面図である。そして、冷媒流路群12F、アノードガス流路群10、各種のマニホールドの位置は、アノードセパレータ5Fを冷媒流路面から眺めた位置である。
実施の形態6に係わるアノードセパレータ5Fは、図12(a)に示すように、実施の形態1に係わるアノードセパレータ5に冷媒緩衝区域28を冷媒流路群12Fの途中に介在させることが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分の説明は省略する。
実施の形態1のように冷媒入口マニホールドから冷媒流路内をそのまま流れて冷媒出口マニホールドから排出されるとき、負荷によって電池からの発熱量が異なるために入口温度と出口温度を一定に保つためには、冷媒流速を変化させる必要がある。例えば、0.25A/cmの負荷電流を0.10A/cmに低下させると、冷媒流速を40%減少させなければならない。冷媒流速を低下させると冷媒の入口と出口間の圧力損失が低下し、特に、積層数の多い電池スタックの各セルへの冷媒の均等な分配が困難になる。
しかし、このように冷媒流路群を流れてきた冷媒を途中で一旦集合する冷媒緩衝区域28を設けることにより冷媒圧力を流路の途中で均一化することができ、均等に冷媒を流すことができる。例えば、50セル積層した電池スタックでは、これまで積層方向にあった温度差1.2℃が0.5℃に低減し、より安定な電池スタック運転を実現することができる。
この発明の実施の形態1に係わる燃料電池を構成する単電池の構成図である。 実施の形態1に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。 実施の形態1に係わるカソードセパレータのカソードガス流路面(a)およびアノードセパレータの冷媒流路面(b)の平面図である。 実施の形態1に係わる単電池の初期および連続運転後の電圧のアノードガス露点に対する依存性を示した図である。 実施の形態2に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。 実施の形態2に係わるカソードセパレータのカソードガス流路面(a)およびアノードセパレータの冷媒流路面(b)の平面図である。 実施の形態3に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。 実施の形態3に係わるカソードセパレータのカソードガス流路面(a)およびアノードセパレータの冷媒流路面(b)の平面図である。 実施の形態4に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。 実施の形態4に係わる燃料電池を所定の条件で発電しているときのアノードガス流路群の入口から出口に亘る温度を示す図である。 実施の形態5に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。 実施の形態6に係わるアノードセパレータの冷媒流路面(a)およびアノードガス流路面(b)の平面図である。
符号の説明
1 単電池、2 膜電極接合体、3 ガスシール部、4 部材、5、5B、5C、5D、5E、5F アノードセパレータ、6、6B、6C カソードセパレータ、10 アノードガス流路群、11 カソードガス流路群、12、12D、12E、12F、26 冷媒流路群、14、25 冷媒入口マニホールド、15、27 冷媒出口マニホールド、16 アノードガス入口マニホールド、16 カソードガス入口マニホールド、17 アノードガス出口マニホールド、18 カソードガス入口マニホールド、19 カソードガス出口マニホールド、21 アノードガス入口領域、22 カソードガス入口領域、28 冷媒緩衝区域。

Claims (8)

  1. 高分子電解質膜が両側からアノード電極とカソード電極とにより挟持されて構成される膜電極接合体と、上記膜電極接合体を両側から挟持するアノードセパレータおよびカソードセパレータとを備える単電池が複数積層されて構成される固体高分子形燃料電池において、
    上記アノードセパレータは、上記膜電極接合体に相対する面にアノードガス入口マニホールドとアノードガス出口マニホールドとを連通するアノードガス流路群が設けられ、
    上記カソードセパレータは、上記膜電極接合体に相対する面にカソードガス入口マニホールドとカソードガス出口マニホールドとを連通するカソードガス流路群が設けられ、
    上記アノードセパレータまたは上記カソードセパレータの一方は、上記膜電極接合体に相対する面の裏面に冷媒入口マニホールドと冷媒出口マニホールドとを連通する冷媒流路群が設けられ、
    上記冷媒流路群は、上記冷媒入口マニホールドに直近する部分が上記アノードガス流路群の上記アノードガス入口マニホールドに直近する部分と直交することを特徴とする固体高分子形燃料電池。
  2. 上記冷媒流路群は、上記カソードガス流路群の上記カソードガス入口マニホールドに直近する部分と直交する部分を有することを特徴とする請求項1に記載する固体高分子形燃料電池。
  3. 上記アノードガス流路群の上記アノードガス入口マニホールドに直近する部分の温度が上記アノードガス入口マニホールドに供給されるアノードガスの露点より3℃以内の範囲で高くなるように冷媒を供給することを特徴とする請求項1または2に記載する固体高分子形燃料電池。
  4. 上記アノードセパレータまたは上記カソードセパレータの一方は、冷媒を別に供給される第2の冷媒入口マニホールドおよび上記第2の冷媒入口マニホールドと上記冷媒出口マニホールドとを連通する第2の冷媒流路群が設けられ、
    上記第2の冷媒流路群は、上記第2の冷媒入口マニホールドに直近する部分が上記カソードガス流路群の上記カソードガス入口マニホールドに直近する部分と直交することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載する固体高分子形燃料電池。
  5. 上記アノードセパレータまたは上記カソードセパレータの一方は、冷媒を別に供給される第2の冷媒入口マニホールド、冷媒を別に排出する第2の冷媒出口マニホールドおよび上記第2の冷媒入口マニホールドと上記第2の冷媒出口マニホールドとを連通する第2の冷媒流路群が設けられ、
    上記第2の冷媒流路群は、上記第2の冷媒入口マニホールドに直近する部分が上記カソードガス流路群の上記カソードガス入口マニホールドに直近する部分と直交することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載する固体高分子形燃料電池。
  6. 上記冷媒流路群と上記第2の冷媒流路群とを流れる冷媒の流速が異なることを特徴とする請求項4または5に記載する固体高分子形燃料電池。
  7. 上記冷媒流路群を流れる冷媒の流速が、上流域に比べて下流域の方が遅いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載する固体高分子形燃料電池。
  8. 上記アノードセパレータまたは上記カソードセパレータの一方は、上記冷媒流路群の途中に流れる冷媒を集合した後各流路に分配する冷媒緩衝区域が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載する固体高分子形燃料電池。
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