JP3738956B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自己加湿方式の燃料電池システムに関し、より詳しくは、イオン交換膜を備えた固体高分子型燃料電池であって、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを有する燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池にはいくつかの種類があるが、その中で固体高分子型燃料電池はコンパクトであり比較的低温でも発電可能な特徴を有している。
固体高分子型燃料電池本体は、通常セルが複数枚積層されてスタックを構成している。スタック内の各単位セルは、図4に示すように、導電性かつ気体不透過性のプレートであるインターコネクター9を介して直列に接続・積層されている。
固体高分子燃料電池の主要構成部分であるイオン交換膜11には、一般にプロトン交換膜と呼ばれる陽イオン交換膜が用いられている。燃料電池の基本構成単位である単位セルは、通常、このプロトン交換膜11(プロトン導電性高分子膜)の両側に触媒7,8が担持されており、その外側にはガス拡散層3が配置されている。この拡散層3は通常カーボンペーパーが用いられ、触媒上で発生した電子を通す集電体層、カーボン製電極(水素極・酸素極)として作用する。また、上記触媒としては白金等の金属触媒が用いられ、例えばカーボン粒子等に担持させて、バインダーである導電性高分子と混合した触媒層7,8を形成している。
【0003】
上記各セルの外側には、ガス流路を有する構造体であるプレートがあり、インターコネクター9と呼ばれる。インターコネクター9に設けられたガス流路4,5から反応ガスが供給される構造になっており、送られる燃料ガスおよび酸化ガスによってセルの発電の能力が決まる。ガス流通経路としては2系統が存在しており、一方は、燃料ガスが供給されて排出される流路4であり、他方は、酸化ガスが供給されて排出される流路5である。よって、インターコネクター9には、一方に燃料ガスを供給するガス流路を有する面が設けられ、他方に酸化ガスを供給するガス流路を有する面が設けられている。
【0004】
インターコネクター9は通電体であり、図4に示すように燃料ガスと酸化ガスとを分離する機能を兼ね備えている。ここで、燃料ガスとは通常、水素ガスと水蒸気からなり、この水素ガスを含む燃料ガスに接する触媒層を水素極という。また、酸化ガスとは空気などの酸素含有ガスのことであり、酸化ガスに接する触媒層を酸素極という。
【0005】
この固体電解質燃料電池は外部に負荷を繋ぐことにより、水素極で水素ガスがプロトンと電子とに分解され、電解質膜中を酸素極側に移動する。その際、プロトンは周辺にある水分子を引き連れて、クラスターの形で移動する。これが水の電気浸透であり、この現象により膜の水素極側は乾燥することになる。
そのため、一般的には水素極の水素ガスは外部で加湿した状態として送り込まれ、膜の乾燥による電気抵抗の増大を抑制している。
しかしながら、十分な水蒸気圧を得るために、水素ガスを加温する必要があるが、温度が上昇し過ぎると、水素・水蒸気の混合ガスの水蒸気分圧が大きくなりすぎ、反応に必要な水素ガス自体の供給に悪影響を及ぼすことが知られている。
この点を考慮して、燃料電池の種々の膜については検討がなされている。
【0006】
燃料電池では、酸素極側に運ばれたプロトンは電極上で酸素と反応して水を生成する。この水は、電気浸透による水と同様に、速やかに外へ排出されなければならない。過剰の水は、隣接する拡散層のガス拡散チャンネルを閉塞させ、有効電極面積を減少させるからである。また、これらの水は、水素極側との水分濃度勾配に従い水素極側に拡散する。この現象を、一般に逆拡散という。
したがって、膜の厚みを薄くすることにより、この濃度勾配を大きくして水の逆拡散を促進させる方法が主流となっている。この方法によれば、無加湿に近づけて加湿条件を緩和することができる。
しかしながら、膜を薄くすることにより、水素ガスがそのまま膜を物理的条件で通常1%程度透過してしまうので、起電力が減少するという問題があった。
【0007】
また、内部加湿としては様々な方法が試されている。例えば、1つには、通常表面に分散されている電極触媒と同じ触媒を一定量膜中に分散させ、透過する水素と酸素をトラップして内部で水を生成することにより、必要な水分量を得る方法である。しかし、この方法でも同様に、起電力の低下の問題が起こる。また、膜内部で反応熱によりピンホールが形成し、膜の劣化による性能低下を招くおそれがあった。
2つ目には、機械的にスタックの出口で水分をトラップし、スタックの前段の加湿部に循環する方法である。スタックとは、燃料電池セルを複数枚積層して、単位モジュールとした構造体である。しかし、この方法では、スタック後段で水分をトラップする機構であるため、装置が大型化してしまい、移動体用の燃料電池としては適さないという問題点があった。
3つ目には、インターコネクターの水素通路の反対側に冷却通路を設け、そのインターコネクター自体に水を拡散させ、反対側の水素を加湿する方法である。通常、インターコネクターはカーボン材料を使用するが、そのままでは水素ガスが透過してしまうので、フェノール樹脂などの高分子を含浸させて、気密性を高めている。しかし、水素ガスの気密性を高めることと、水の拡散による水素の加湿とを、バランス良く行えるようにインターコネクターを製造するのは容易ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、加湿器などの補助装置を必要とせずに水が過剰となるのを抑制できるとともに、反応ガスに水の供給が可能である、自己加湿方式の燃料電池システムを開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、アニオン交換膜MEA(膜電極接合体)とカチオン交換膜MEAとを交互に配置し、水の内部循環を行う自己加湿型燃料電池とすることで、それぞれの膜の反対方向に移動するイオンの移動に伴い、電気浸透による水と生成水が循環して使用されることによって、かかる問題点が解決されることを見い出した。
本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、単位セルを複数枚積層して構成される固体高分子型燃料電池において、同一の単位セル内に、アニオン交換膜による電極とカチオン交換膜による電極とが接触させずに隣接して配置されており、その両側に触媒上で発生した電子を通す共通のガス拡散層が設けられているとともに、さらにその外側に、ガス通路を有する通電体であるインターコネクターが備えられていることを特徴とする燃料電池システムを提供するものである。
本発明の燃料電池では通常、単位セル内にガスを供給する前記ガス通路が、アニオン交換膜に接するガス拡散層の部分、および、カチオン交換膜に接するガス拡散層の部分、の両方を接続するように設置される。
【0010】
本発明によれば、加湿器などの補助装置を省略することができ、部品装置の削減によるシステムの簡略化、コストダウンや省スペース化が可能である。
また、本発明の燃料電池では、外部から送り込まれるガスが加湿によって加わる水蒸気分圧の影響を受けない。そして、カチオン交換膜とアニオン交換膜とを用いるので、互いに水の生成と電気浸透側とが逆側になり、前段で加湿して、反応に要する水分を得ることができる。さらに、OH-イオンとH+イオンとの輸率の違いから、膜面積や膜厚の違いにより膜の特性を変化させることができる。
なお、出力電圧を計測していれば、湿度の過不足を把握することが可能であり、運転状態を調節すれば外部からの加湿は一切不要にできる。また、水の循環比率は、水が過剰になってガスが通りにくくなるフラッディング現象が生じない範囲で、主に空気側の流量や温度により調整可能である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、2種類のイオン交換膜を用いて単位セルを構成する、水自己循環システムによる燃料電池システムである。本発明では、カチオン交換膜(プロトン交換膜)に加えて、アニオン交換膜を使用する。
セル内にカチオン交換膜が設けられている部分の反応は、以下のようになる。
水素極: H2 → 2H+ +2e-
酸素極: 1/2O2 + 2H+ +2e- → H2
セル内にアニオン交換膜が設けられている部分の反応は、以下のようになる。
水素極: H2 + 2OH- → 2H2O +2e-
酸素極: 1/2O2 + H2O +2e- → 2OH-
【0012】
同一セル内に、アニオン交換膜による電極とカチオン交換膜による電極とを隣接した形態で配置し、共通のガス拡散層を両側に設ける。但し、電極同士は互いに接触しないようにする。この拡散層は通常カーボンペーパーが用いられ、触媒上で発生した電子を通す集電体層である。その外側には、ガス通路の構造体であるインターコネクターが設けられ、このインターコネクターは通電体であり、燃料ガスと酸化ガスとを分離する機能を兼ね備えている。
カチオン交換膜の部分では外部に負荷を繋ぐことにより、水素極で水素ガスがプロトンと電子とに分解され、電解質膜中を酸素極側に移動する。その際、プロトンは周辺にある水分子を引き連れて、クラスターの形で移動する。これが水の電気浸透であり、この現象により膜の水素極側は乾燥する。
【0013】
一方、アニオン交換膜の移動イオン種は、上記反応式に示すようにOH-イオンであり、この部分ではカチオン交換膜の部分とは逆方向にイオンの移動が起こる。水の生成は水素極で起こり、OH-イオンによる電気浸透も起こるため、水分の濃度勾配はカチオン交換膜と逆になる。
水素、酸素ガスの流れについて、これら2つの交換膜を交互に通過することにより、生成する水のリサイクルを行うことができる。
ここで、本発明に用いられるカチオン交換膜としては、例えばNafion(商標)などが挙げられる。また、アニオン交換膜は基本的に耐熱高分子であってアニオン基を持っているものであれば使用可能であり、特に限定されるものではないが、例えばTOSFLEX(商標)などの高分子化合物を好適に用いることができる。
【0014】
本発明のセル内の配置を最も簡略化した一例として、図1を示す。
ここでは、2つの種類の異なるカチオン膜1とアニオン膜2とを上下に配置し、その外側に配置されたガス流路4,5にガスを流す方法である。カチオン交換膜1とアニオン交換膜2とは接触せず、その間には空間として分離帯6が設けられている。ここで例えば、カチオン交換膜1が上、アニオン交換膜2が下の場合、水素ガスを下側から導入する必要がある。カチオン交換膜1が上であるから、電気浸透水と生成水とは拡散層3を通って下部に流れる。その水を利用して、下側のアニオン膜電極による反応を行う。上側のカチオン膜1での反応において、水素は加湿されている必要があるので、水素ガスは下側のアニオン膜で得られた水分を上側に供給するように水分をリサイクルする。酸素ガスは、上側から流れてカチオン膜1で得られた水分をリサイクルする。したがって、本発明における膜のレイアウトは上下方向に限られるものではなく、ガスの供給方向によって適宜定めることができる。
図2には、ガス通路や交換膜のレイアウトを定めた他の実施の形態を示す。図2(a)では、アニオン交換膜2とカチオン交換膜1の間を、1本のガス流路が複数の箇所で横断する形態である。また、(b)では、同一面上に複数のアニオン交換膜2とカチオン交換膜1を交互に配置して、それらの膜の面上を複数のガス流路が横断する形態である。カチオン交換膜およびアニオン交換膜の厚さは特に限定されるものではなく任意に定めることができるが、電極反応の効率やセルとして積層する観点から、通常約10μm〜1.0mmの範囲である。
図3は、本発明を用いた場合の水の電気分解を模式的に表した図である。
【0015】
本発明の燃料電池では、上記のようなイオン交換膜を配置した単位セルを基本構成とし、インターコネクターを介して積層して、スタックを構成する。
すなわち、イオン交換膜の両側には白金触媒等が塗布された触媒層があり、その外側に電極である水素極および酸素極が設けられている。これらの電極には通常カーボン部材が用いられており、例えばカーボンペーパー又はカーボンクロス等が使用される。このイオン交換膜を水素極および酸素極で挟み込んだ構造が一単位のセルであり、圧着プレスなどによって張り付けて製造される。
単位セルの両側には反応ガス流路を有するインターコネクター9が設けられており、これらが一体となって燃料電池本体を構成する。このセル/インターコネクターを積層したものが燃料電池スタックであり、1つのセルで発生する起電力が例えば1Vである場合、セルを100枚積層すれば約100Vのスタックになる。
【0016】
また、インターコネクターに要求される基本性能としては、電子が移動できる電子伝導性を有していることである。そして、水素と酸素とを、電極に供給するような構造を有していなければならない。インターコネクターの一方の面、水素極に接する面には水素供給用のガス流路が備えられ、他方の面、酸素極に接する面には酸素供給用のガス流路が備えられている。これらのガス流路をガスが流通して、水素極および酸素極に、燃料ガスおよび酸化ガスを供給できるようになっている。インターコネクターの厚さは適宜定められるが、通常約1.0〜3.0mm程度で用いられる。材料強度としては、圧縮強度を一定以上に維持することによって使用に耐えられる材料として選定可能であり、導電性を維持しながら強度を上げることが必要である。
なお、酸化ガスの供給については通常空気をそのまま導入することができる。燃料ガスの供給については種々の供給方法を適用でき、特に限定されるものではないが、例えばメタノール等の原料を水素製造装置において水蒸気改質反応によって水素に変換し、該水素を水素精製装置等を経て供給する態様が挙げられる。
【0017】
【発明の効果】
本発明の燃料電池によれば、加湿器などの補助装置を省略可能であり、部品装置の削減によるシステムの簡略化、コストダウンや省スペース化が可能である。また、本発明の燃料電池では、外部から送り込まれるガスが加湿によって加わる水蒸気分圧の影響を受けない。そして、セル内において水が過剰となって有効電極面積を減少させてしまうのを防止できるとともに、自己加湿方式にて反応ガスに水の供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるイオン交換膜による単位セル構成の一例を示す構成斜視図である。
【図2】本発明で用いられるイオン交換膜の他の配置例を示す概略構成図である。
【図3】本発明を用いた場合の水の電気分解を模式的に表した図である。
【図4】燃料電池システムの層構成および作用を、1つの単位セルによって模式的に表した図である。
【符号の説明】
1 カチオン交換膜
2 アニオン交換膜
3 ガス拡散層
4 ガス流路(燃料ガス)
5 ガス流路(酸化ガス)
6 分離帯
7 触媒層(水素極側)
8 触媒層(酸素極側)
9 インターコネクター
10 負荷
11 イオン交換膜

Claims (2)

  1. 単位セルを複数枚積層して構成される固体高分子型燃料電池において、同一の単位セル内に、アニオン交換膜による電極とカチオン交換膜による電極とが接触せずに隣接して配置されており、それらの膜の両側に触媒上で発生した電子を通す共通のガス拡散層が設けられているとともに、さらにその外側に、ガス通路を有する通電体であるインターコネクターが備えられていることを特徴とする燃料電池。
  2. 単位セルにガスを供給する前記ガス通路が、アニオン交換膜に接するガス拡散層の部分、および、カチオン交換膜に接するガス拡散層の部分、の両方を接続するように設置されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
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