JP2007102016A - 偏光素子、液晶パネル、および液晶表示装置 - Google Patents

偏光素子、液晶パネル、および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract


【課題】 全方位でコントラスト比が高く、かつ、斜め方向のカラーシフト量が小さい液晶表示装置を実現し得る偏光素子を提供すること。
【解決手段】 本発明の偏光素子は、偏光子と、下記式(1)および(2)を満足する第1光学素子と、下記式(3)および(4)を満足する第2光学素子と、下記式(5)および(6)を満足する第3光学素子とをこの順に備える:
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
Re[590]>Rth[590] …(2)
70nm≦Re[590]≦210nm …(3)
Re[590]>Rth[590] …(4)
Re[590]>0nm …(5)
Re[590]<Rth[590] …(6)
[ただし、Re[590]、Rth[590]は、それぞれ23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値、厚み方向の位相差値とする。]
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学素子と偏光子とを有する偏光素子、ならびにそれを用いた液晶パネルおよび液晶表示装置に関する。
OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、従来のTNモード液晶表示装置と比較して高速応答特性を有し、将来、CRT代替の可能性が期待されている。しかし、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、正面方向および斜め方向で、コントラスト比が低下したり、見る角度に伴って変化する画像の色づき(斜め方向のカラーシフトともいう)が生じたりといったように表示特性が悪化することが問題となっている。そこで、これらの表示特性を改善するために、液晶セルの両面に、偏光子とλ/4板とを、偏光子の吸収軸とλ/4板の遅相軸とが45°となるように積層した円偏光板を配置して、コントラストを高くする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような技術では、正面方向のコントラスト比は改善されるものの、斜め方向のコントラスト比やカラーシフト量の改善は、十分ではない。
特開2003−107477号公報
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全方位でコントラスト比が高く、かつ、斜め方向のカラーシフト量が小さい液晶表示装置を実現し得る偏光素子を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の位相差値を有する複数枚の光学素子を偏光子に積層した偏光素子を液晶セルの少なくとも片側に配置することにより、従来の偏光素子を用いたものに比べ、全方位でコントラスト比が高く、かつ、斜め方向のカラーシフト量が小さい液晶表示装置を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の偏光素子は、偏光子と、下記式(1)および(2)を満足する第1光学素子と、下記式(3)および(4)を満足する第2光学素子と、下記式(5)および(6)を満足する第3光学素子とをこの順に備える:
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
Re[590]>Rth[590] …(2)
70nm≦Re[590]≦210nm …(3)
Re[590]>Rth[590] …(4)
Re[590]>0nm …(5)
Re[590]<Rth[590] …(6)
[ただし、Re[590]、Rth[590]は、それぞれ23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値、厚み方向の位相差値とする。]
好ましい実施形態においては、上記第1光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])は0.20〜0.80である。
好ましい実施形態においては、上記第1光学素子の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とは、実質的に平行または直交になるように配置されてなる。
好ましい実施形態においては、上記第1光学素子は1枚の位相差フィルムで構成されている。
好ましい実施形態においては、上記第2光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])は0.20〜0.80である。
好ましい実施形態においては、上記第2光学素子は1枚の位相差フィルムで構成され、該位相差フィルムの遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が、45±2.0°になるように配置されてなる。
別の実施形態においては、上記第2光学素子は、第1の位相差フィルムと第2の位相差フィルムとの積層体で構成され、該第1の位相差フィルムの遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度をα、該第2の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をβとしたとき、αとβは下記式(7)の関係を満足する:
2α+40°<β<2α+50° ・・・(7)。
好ましい実施形態においては、上記角度αは、上記吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに15°〜20°または70°〜75°である。
さらに別の実施形態においては、上記第2光学素子は、第3の位相差フィルムと第4の位相差フィルムと第5の位相差フィルムとの積層体で構成され、該第3の位相差フィルムの遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度をα、該第4の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をβ、該第5の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をγとしたとき、α、βおよびγは下記式(8)の関係を満足する:
2(β−α)+40°<γ<2(β−α)+50° ・・・(8)。
好ましい実施形態においては、上記角度αは、上記吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに81°〜87°であり、上記角度βは、該吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに52°〜62°である。
好ましい実施形態においては、上記第3光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])は2〜10である。
好ましい実施形態においては、上記第3光学素子は、ポリイミドを主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムからなる。
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記偏光素子と液晶セルとを備える。好ましい実施形態においては、上記液晶セルはOCBモードである。
本発明のさらに別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを含む。
本発明によれば、特定の構成部材(代表的には、位相差フィルム)を特定の位置関係で組み合わせて有する偏光素子を作製することにより、それぞれの構成部材の利点が相乗効果的に発揮される。その結果、このような偏光素子を用いた液晶パネル(結果的には、液晶表示装置)によれば、従来の液晶パネルに比べて格段に優れたコントラスト比および斜め方向のカラーシフトが実現される。より具体的には、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置において、角度に依存せず、正面方向からも斜め方向からも直線偏光を円偏光に変換できるような円偏光板を用いることにより、ベンド配向状態の液晶分子の旋光性に起因する悪影響を排除することができる。このような円偏光板は、所定のλ/4板(第2光学素子)を偏光子に所定の角度で配置することにより実現される。この第2光学素子は、特定の積層構造を採用することにより、さらに優れた円偏光特性を実現することが可能となる。同時に、所定のλ/2板(第1光学素子)を偏光子に所定の角度で配置することにより、直交配置した2枚の偏光子の偏光度を斜め方向で低下しないようにすることができる。その結果、液晶表示装置のコントラスト比を全方位で大幅に高くすることができる。
加えて、本発明においては、二軸性位相差フィルムの軸精度を改善することにより、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置において全方位のコントラスト比をより一層高くすることが可能となる。すなわち、従来、当該液晶セルに用いられる位相差フィルムは、ベンド配向状態の液晶セルを補償するために、100μ〜200μm程度の厚みが必要であり、非常に分厚かった。一方、本発明によれば、厚み方向の複屈折率が大きな材料を選択して、厚み方向の位相差値を維持しつつ位相差フィルムを(例えば、10μm程度まで)薄くすることにより(第3光学素子)、軸精度を顕著に向上させることができる。これは、位相差フィルムを従来よりも大幅に薄くすることによりはじめて得られた知見であり、予期せぬ優れた効果である。その結果、液晶表示装置のコントラスト比を全方位でさらに高くすることができる。
A.本発明の偏光素子および液晶パネルの概略
図1は、本発明の好ましい実施形態による偏光素子の概略断面図である。図2は、本発明の液晶パネルの好ましい実施形態の代表例において、偏光子の吸収軸、第1光学素子の遅相軸、第2光学素子の遅相軸、および第3光学素子の遅相軸の関係を説明する概略斜視図である。なお、見易くするために、図1および図2における各構成部材の縦、横および厚みの比率は実際とは異なって記載されていることに留意されたい。
図1に示すように、本発明の好ましい実施形態による偏光素子50は、偏光子10と、偏光子10の片側にこの順に配置された第1光学素子20、第2光学素子30および第3光学素子40とを備える。なお、実用的には、偏光子10の外側(第1光学素子が配置されない側)には、任意の適切な保護フィルム(図示せず)が配置され得る。
本発明においては、第1光学素子は下記式(1)および(2)を満足し、第2光学素子は下記式(3)および(4)を満足し、第3光学素子は下記式(5)および(6)を満足する。このような特定の光学素子を特定の順序で偏光子の片側に配置することにより、きわめて良好な光学補償が行われ、その結果、全方位でコントラスト比が高く、かつ、斜め方向のカラーシフト量が小さい液晶表示装置を実現し得る偏光素子が得られ得る。
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
Re[590]>Rth[590] …(2)
70nm≦Re[590]≦210nm …(3)
Re[590]>Rth[590] …(4)
Re[590]>0nm …(5)
Re[590]<Rth[590] …(6)
[ただし、Re[590]、Rth[590]は、それぞれ23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値、厚み方向の位相差値とする。]
図2に示すように、本発明の好ましい実施形態による液晶パネル70は、液晶セル60と、液晶セル60の少なくとも一方の側に本発明の偏光素子50とを備える。目的や液晶セルの配向モードによっては、液晶セル60の片側には、任意の適切な偏光板や位相差板が配置され得る。図示例においては、液晶パネル70は、液晶セル60の両側に偏光素子50、50’を備える。図示例のように液晶セル60の両側に本発明の偏光素子50、50’を配置するのが好ましい。上記のように、偏光素子50(50’)は、偏光子10(10’)から液晶セル60の方に順に、偏光子10(10’)と、第1光学素子20(20’)と、第2光学素子30(30’)と、第3光学素子40(40’)とを有する。偏光子10、10’の吸収軸は互いに直交するように配置されている。第1光学素子20(20’)の遅相軸は、偏光子10(10’)の吸収軸に対して平行または直交に配置されている。図示例では、第1光学素子20の遅相軸が、偏光子10の吸収軸に対して平行に配置され、第1光学素子20’の遅相軸が、偏光子10’の吸収軸に対して直交するように配置されている。第2光学素子30(30’)が1枚の位相差フィルムで構成される場合には、第2光学素子30(30’)の遅相軸は、偏光子10(10’)の吸収軸に対して好ましくは45°±2°(図示例では45°)となるように配置される。第3光学素子40(40’)の遅相軸は、液晶セル60のラビング方向に対して直交するように配置されている。なお、第1光学素子、第2光学素子および第3光学素子の詳細については、それぞれ、C項、D項およびE項で後述する。
B.偏光子
本明細書において「偏光子」とは、自然光や偏光から任意の偏光に変換するフィルムをいう。本発明に用いられる偏光子としては、特に制限はないが、自然光または偏光を直線偏光に変換するものが好ましく用いられる。
本発明に用いられる偏光子10としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を含む高分子フィルムの延伸フィルム、二色性物質と液晶性化合物とを含む液晶性組成物を一定方向に配向させたゲスト・ホストタイプのO型偏光子(米国特許5,523,863号)、およびリオトロピック液晶を一定方向に配向させたE型偏光子(米国特許6,049,428号)等が挙げられる。
上記偏光子の透過率は、23℃において波長440nmの光で測定した値が、好ましくは41%〜45%であり、さらに好ましくは43%〜45%である。
上記偏光子の偏光度は、好ましくは99.85%〜100%であり、さらに好ましくは99.90%〜100%である。上記の範囲であれば、液晶表示装置に用いた際に正面方向のコントラスト比をより一層高くすることができる。上記偏光度は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。
上記偏光子の偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光子の平行透過率(H)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光子の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光子2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光子の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlSZ8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
本発明に用いられる偏光子の厚みは、偏光度等の光学特性や、機械的強度等の製造上の利便性などを考慮して適宜に選択され得る。当該厚みは、好ましくは1μm〜80μmであり、さらに好ましくは10μm〜50μmであり、特に好ましくは20μm〜40μmである。上記の範囲であれば、液晶表示装置の薄型化に貢献することができる。
上記のような特性を有する偏光子の製法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを繰り出して、水100重量部に対して0.01〜0.1重量部のヨウ素を含む水溶液中に浸漬し、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を加えながら、膨潤および染色処理を施し、次いで、水100重量部に対して1〜7重量部のホウ酸と1〜7重量部のヨウ化カリウムとを含む水溶液中に浸漬し、速比の異なるロールでフィルムの長手方向に張力を加えながら、架橋処理を施し、次いで、ヨウ化カリウムを含む水溶液中に浸漬し水洗処理を施し、最後に乾燥オーブンで乾燥させ、水分率を10〜30%に調節する工程等を経て、上記高分子フィルムを元長の5〜7倍に延伸することで得ることができる。
C.第1光学素子
本発明に用いられる第1光学素子20は、下記式(1)および(2)を満足する。図1および図2を参照すると、第1光学素子20は、第2光学素子30と偏光子10との間に配置される。
200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
Re[590]>Rth[590] …(2)
本発明において、上記第1光学素子は光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム面内の位相差値が約1/2であるλ/2板として用いられる。本明細書において「λ/2板」とは、ある特定の振動方向を持った直線偏光を、当該直線偏光の振動方向とは直交する振動方向を持った直線偏光に変換したり、右円偏光を左円偏光(または、左円偏光を右円偏光)に変換したりする機能を有するものをいう。通常、直交配置にした2枚の偏光子は、正面方向からは光漏れは生じにくいが、斜め方向では光漏れが生じ、各偏光子の吸収軸を0°,90°とした場合に、45°方位で光漏れ量が最大となる傾向がある。本発明に用いられる第1光学素子は、液晶表示装置の斜め方向で生じる光漏れを低減し、斜め方向のコントラスト比を高くする効果を有することが特徴である。
C−1.第1光学素子の光学特性
本明細書において、Re[590]とは、23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値をいう。Re[590]は、波長590nmにおけるフィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率をそれぞれ、nx、nyとし、d(nm)をフィルムの厚みとしたとき、式:Re[590]=(nx−ny)×dによって求めることができる。なお、遅相軸とはフィルム面内の屈折率の最大となる方向をいう。
本発明に用いられる第1光学素子のRe[590]は、200nm〜350nmであり、さらに好ましくは240nm〜300nmであり、特に好ましくは260nm〜280nmである。上記Re[590]を測定波長の約1/2とすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
本明細書において、Rth[590]とは、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値をいう。Rth[590]は、波長590nmにおけるフィルムの遅相軸方向、厚み方向の屈折率をそれぞれ、nx、nzとし、d(nm)をフィルムの厚みとしたとき、式:Rth[590]=(nx−nz)×dによって求めることができる。
本発明に用いられる第1光学素子のRth[590]は、Re[590]>Rth[590]を満足する範囲において、好ましくは50nm〜270nmであり、さらに好ましくは60nm〜230nmであり、特に好ましくは65nm〜210nmである。上記Rth[590]は、後述する厚み方向の位相差値とフィルム面内の位相差値との比(Nz係数ともいう)に応じて、適宜選択され得る。
Re〔590〕およびRth〔590〕は、王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21−ADH」〕を用いても求めることができる。23℃における波長590nmのフィルム面内の位相差値(Re)、遅相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定した位相差値(R40)、位相差フィルムの厚み(d)および位相差フィルムの平均屈折率(n0)を用いて、以下の式(i)〜(vi)からコンピュータ数値計算によりnx、nyおよびnzを求め、次いで式(iv)によりRthを計算できる。ここで、φおよびny’はそれぞれ以下の式(v)および(vi)で示される。
Re=(nx−ny)×d …(i)
R40=(nx−ny’)×d/cos(φ) …(ii)
(nx+ny+nz)/3=n0 …(iii)
Rth=(nx−nz)×d …(iv)
φ =sin−1[sin(40°)/n0] …(v)
ny’=ny×nz[ny×sin(φ)+nz×cos(φ)]1/2 …(vi)
本明細書において、Rth[590]/Re[590]は、23℃における波長590nmの光で測定した厚み方向の位相差値とフィルム面内の位相差値との比をいう(Nz係数ともいう)。
上記第1光学素子のNz係数は、1より小さいことが好ましい。Nz係数を1より小さくすることにより、位相差値の角度依存性を小さくし、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。したがって、第1光学素子は、Re[590]>Rth[590]であるものが好適に用いられる。上記第1光学素子のNz係数のさらに好ましい範囲は、液晶表示装置の構成等に応じて適切選択され得る。例えば、上記第1光学素子のNz係数は、好ましくは0.20〜0.80である。なお、本発明の偏光素子を液晶セルの上下に配置する場合、上下に使用される第1光学素子のNz係数は、それぞれ同じであってもよく異なっていてもよい。
液晶セルの上下に同じNz係数を有する第1光学素子が用いられる場合には、第1光学素子のNz係数は、それぞれ実質的に0.75であるもの、またはそれぞれ実質的に0.25であるものが好ましい。液晶セルの上下に異なるNz係数を有する第1光学素子が用いられる場合には、一方の第1光学素子のNz係数は実質的に0.75であるもの、他方は実質的に0.25であるものが好ましく用いられる。なお、本明細書において、「実質的に0.75」とはNz係数が0.75±0.05である場合を包含し、好ましくは0.75±0.03であり、特に好ましくは0.75±0.02である。また、「実質的に0.25」とはNz係数が0.25±0.05である場合を包含し、好ましくは0.25±0.03であり、特に好ましくは0.25±0.02である。
本発明においては、好ましくは、液晶セルの上下に異なるNz係数を有する第1光学素子が組み合わせて用いられる。さらに好ましくは、一方にNz係数が実質的に0.75であるもの、他方にNz係数が実質的に0.25であるものが組み合わせて用いられる。このように組み合わせて用いることで、液晶表示装置のコントラスト比と、見る角度に伴って変化する画像の色づき(斜め方向のカラーソフトともいう)を、著しく低減することができる。Nz係数が異なる2つの第1光学素子を液晶セルの上下に配置することにより、位相差値の波長依存性が大きな材料(例えば、ポリカーボネート)を用いた場合であっても、位相差値の波長依存性が互いに補償され、広い波長領域で、かつ、角度にも依存せずに、光学補償ができるからである。
上記第1光学素子の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
C−2.第1光学素子の配置手段
図2を参照すると、第1光学素子20を偏光子10と第2光学素子30との間に配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記第1光学素子30は、その両側に接着剤層または粘着剤層(図示せず)を設け、偏光子10および第2光学素子30に接着させる。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の層間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際にコントラストを高くすることもできる。
上記接着剤層または粘着剤層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜、適切な範囲に決定できる。好ましくは1μm〜500μmであり、さらに好ましくは5μm〜200μmであり、特に好ましくは10μm〜100μmである。
上記接着剤層または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤としては、任意の適切な接着剤または粘着剤が採用され得る。例えば、熱可塑性接着剤、ホットメルト接着剤、ゴム系接着剤、熱硬化性接着剤、モノマー反応型接着剤、無機系接着剤、天然物接着剤、溶剤型粘着剤、非水系エマルジョン型粘着剤、水系粘着剤、ホットメルト粘着剤、液状硬化型接着剤、硬化型接着剤、カレンダー法による接着剤等を適宜に選択して用いることができる。特に、光学透明性に優れ、適度なぬれ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性に優れるという点で、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする溶剤型粘着剤が好ましく用いられる。
本発明に用いられる第1光学素子は、好ましくは、その遅相軸が隣接する偏光子の吸収軸と実質的に平行または直交となるように配置される。さらに好ましくは、第1光学素子は、その遅相軸が隣接する偏光子の吸収軸と実質的に平行となるように配置される。ロール作製が可能で、貼り合せが容易となり、結果として、製造効率が大幅に向上し得るからである。なお、本明細書において「実質的に平行」とは、第1光学素子の遅相軸と隣接する偏光子の吸収軸とのなす角度が0°±2.0°である場合を包含し、好ましくは0°±1.0°であり、さらに好ましくは0°±0.5°である。また、「実質的に直交」とは、第1光学素子の遅相軸と隣接する偏光子の吸収軸とのなす角度が90°±2.0°である場合を包含し、好ましくは90°±1.0°であり、さらに好ましくは90°±0.5°である。これらの角度範囲から外れる程度が大きくなるほど、偏光素子の偏光度が低下し、液晶表示装置に用いた際に、正面および斜め方向のコントラスト比が低下する傾向がある。
C−3.第1光学素子の構成
第1光学素子の構成(積層構造)は、上記C−1項に記載の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。具体的には、第1光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムで構成される積層体であってもよい。好ましくは、第1光学素子は、単独の位相差フィルムである。偏光子の収縮応力やバックライトの熱による位相差値のズレやムラを低減し、かつ、液晶パネルを薄くすることができるからである。第1光学素子が積層体である場合には、接着剤層や粘着剤層を含んでもよい。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていてもよい。なお、位相差フィルムの詳細についてはC−4項で後述する。
第1光学素子に用いられる位相差フィルムのRe[590]は、用いられる位相差フィルムの枚数によって、適宜選択することができる。例えば、第1光学素子が位相差フィルム単独で構成される場合には、位相差フィルムのRe[590]は、第1光学素子のRe[590]と等しくすることが好ましい。従って、偏光子や液晶セルに上記第1光学素子を積層する際に用いられる粘着剤層や接着剤層等の位相差は、できる限り小さいことが好ましい。また、例えば、第1光学素子が2枚以上の位相差フィルムを含む積層体である場合には、それぞれの位相差フィルムのRe[590]の合計が、第1光学素子のRe[590]と等しくなるように設計することが好ましい。具体的には、2枚の位相差フィルムを用いる場合、それぞれの位相差フィルムは、Re[590]が100〜175nmであるものが好ましく用いられる。また、2枚の位相差フィルムの遅相軸は、それぞれ平行に積層されることが好ましい。
また、上記位相差フィルムのRth[590]/Re[590](Nz係数ともいう)は、用いられる位相差フィルムの枚数によらず、上記第1光学素子のNz係数と等しくすることが好ましい。例えば、Nz係数が0.75であり、Re[590]が280nmの光学素子は、Nz係数が0.75でありRe[590]が140nmである2枚の位相差フィルムを、遅相軸が互いに平行となるように積層して得ることができる。また例えば、Nz係数が0.25である光学素子を2枚の位相差フィルムで作製する場合も、上述した方法が適用可能である。なお、簡単のため、位相差フィルムが2枚以下の場合についてのみ示したが、3枚以上の位相差フィルムを含む積層体についても同様の方法が適用可能であることはいうまでもない。
上記第1光学素子の全体厚みは、好ましくは50μm〜240μm、さらに好ましくは50μm〜150μm、最も好ましくは50μm〜120μmである。第1光学素子がこのような範囲の厚みを有することにより、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
C−4.第1光学素子に用いられる位相差フィルム
第1光学素子に用いられる位相差フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるものが好ましく用いられる。上記位相差フィルムは、好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。なお、本明細書において、「延伸フィルム」とは、適当な温度で未延伸のフィルムに張力を加え、または予め延伸されたフィルムに張力を加えて、特定の方向に分子の配向を高めたフィルムをいう。
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値C[590](m/N)は、好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−8であり、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−9であり、特に好ましくは1.0×10−12〜5.0×10−10である。上記の範囲とすることによって、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記位相差フィルムの厚みは、目的や第1光学素子の積層構造に応じて適宜選択され得る。好ましくは20μm〜100μmであり、さらに好ましくは30μm〜80μmであり、特に好ましくは、40μm〜80μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や表示均一性に優れ、上記C−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が用いられ、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、粉末成形法、FRP成形法、および注型(キャスティング)法等から適宜、適切なものが選択され得る。これらの製法の中でも、押出成形法または注型(キャスティング)法が好ましい。得られる位相差フィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。上記押出成形法は、具体的には、主成分となる熱可塑性樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を加熱溶融し、これをTダイ等を用いてキャスティングロールの表面に薄膜状に押出して、冷却させてフィルムを製造する方法である。上記注型(キャスティング)法は、具体的には、主成分となる熱可塑性樹脂、可塑剤、添加剤等を含む樹脂組成物を溶剤に溶解した濃厚溶液(ドープ)を脱泡し、エンドレスステンレススチールベルトまたは回転ドラム表面に均一に薄膜状に流延し、溶剤を蒸発させてフィルムを製造する方法である。なお、成形条件は、用いる樹脂の組成や種類、成形加工法等によって、適宜選択され得る。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリノルボルネン、ポリ塩化ビニル、セルロースアセテート、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の汎用プラスチック;ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。また、上記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記のポリマー変性の具体例としては、共重合、分岐、架橋、分子末端、および立体規則性等の変性が挙げられる。また、上記の熱可塑性樹脂を2種類以上混合して用いてもよい。第1光学素子に用いられる材料としては、これらの中でも、ポリカーボネートが好ましい。透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れ、かつ、位相差値の発現性や位相差値の制御のし易さに優れるからである。
上記ポリカーボネートとしては、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とからなる芳香族ポリカーボネートが好ましく用いられる。芳香族ポリカーボネートは、通常、芳香族2価フェノール化合物とカーボネート前駆物質との反応によって得ることができる。具体的には、芳香族2価フェノール化合物を苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは、芳香族2価フェノール化合物とビスアリールカーボネートとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法により得ることができる。
上記芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カーボネート前駆物質としては、ホスゲン、上記2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられ、なかでもホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。
第1光学素子にポリカーボネートが用いられる場合は、市販のポリカーボネートフィルムをそのまま用いてもよく、延伸処理や表面処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販のポリカーボネートフィルムとしては、具体的には、帝人化成(株)製 商品名「ピュアエースシリーズ」、(株)カネカ製 商品名「エルメックシリーズ」(R140,R435等)、日本GEプラスチックス製 商品名「イルミネックスシリーズ」等が挙げられる。
上記ポリカーボネートは、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量が、好ましくは5,000〜500,000であり、さらに好ましくは10,000〜300,000であり、特に好ましくは、20,000〜200,000である。上記の範囲であれば、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れるものを得ることができる。
第1光学素子に用いられる位相差フィルムは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で加熱延伸して得ることができる。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの片面または両面に上記収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が、作業性、経済性に優れる点から好ましい。
上記収縮性フィルムは、140℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S(MD)が4.7%〜6.7%であって、幅方向の収縮率:S(TD)が6.6%〜8.6%であるものが好ましく用いられる。上記収縮率S(MD)およびS(TD)は、JIS Z 1712−1997の加熱収縮率A法に準じて求めることができる(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。
上記収縮性フィルムは、好ましくは、二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルム等の延伸フィルムである。上記収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された未延伸フィルムを同時二軸延伸機等で所定の倍率に縦および/または横方向に延伸して得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類や目的に応じて、適宜選択され得る。
上記収縮性フィルムを形成する材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。本発明に用いられる収縮性フィルムとしては、これらのなかでも、特に、機械的強度、熱安定性、表面均一性等に優れる点で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
また、上記収縮性フィルムとしては、本発明の目的を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、および電気絶縁用等の用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販の収縮性フィルムの具体例としては、王子製紙(株)製 商品名「アルファンシリーズ」、グンゼ(株)製 商品名「ファンシートップシリーズ」、東レ(株)製 商品名「トレファンシリーズ」、サン・トックス(株) 商品名「サントックス−OPシリーズ」、東セロ(株) 商品名「トーセロOPシリーズ」等が挙げられる。
熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸オーブン内の温度(延伸温度)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃の範囲であること好ましい。位相差値が幅方向で均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。より具体的には、上記延伸温度は、好ましくは110℃〜185℃であり、さらに好ましくは120℃〜180℃であり、特に好ましくは135℃〜175℃である。
また、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、好ましくは1.02倍〜1.70倍であり、さらに好ましくは1.02倍〜1.50倍であり、特に好ましくは1.02倍〜1.30倍である。Nz係数が0.75である位相差フィルムを作製する場合の延伸倍率は、好ましくは1.05倍〜1.07倍であり、Nz係数が0.25である位相差フィルムを作製する場合の延伸倍率は、好ましくは1.02倍〜1.05倍である。上記の延伸条件であれば、上記C−1項に記載の光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
D.第2光学素子
本発明に用いられる第2光学素子は、下記式(3)および(4)を満足する。図1および図2を参照すると、第2光学素子30は、第1光学素子20と第3光学素子40との間に配置される。
70nm≦Re[590]≦210nm …(3)
Re[590]>Rth[590] …(4)
本発明において、上記第2光学素子は光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルム面内の位相差値が約1/4であるλ/4板として用いられる。本明細書において「λ/4板」とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光(または、円偏光を直線偏光)に変換する機能を有するものをいう。本発明においては、2枚のλ/4板を液晶セルの上下に配置することが好ましい。このようにすることによって、液晶セルに透過する光を円偏光または楕円偏光とすることができる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を向上させることができる。さらに、直線偏光が液晶セルを透過する場合に生じる悪影響を排除することができる。直線偏光が液晶セルを透過する場合に生じる悪影響とは、例えば、液晶セルの旋光性に起因する光漏れ(コントラストの低下)や、液晶分子のディスクリネーションに起因する液晶表示装置の輝度の低下などが挙げられる。
D−1.第2光学素子の光学特性
本発明に用いられる第2光学素子のRe[590]は、70nm〜210nmであり、好ましくは100nm〜180nmであり、さらに好ましくは120nm〜160nmであり、特に好ましくは130nm〜150nmである。上記Re[590]は、測定波長の約1/4とすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
上記第2光学素子のRth[590]は、好ましくは35〜105nmであり、さらに好ましくは50〜90nmであり、特に好ましくは60〜80nmであり、最も好ましくは65〜75nmである。上記Rth[590]は、上記Re[590]の約1/2とすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
上記第2光学素子のRth[590]/Re[590](Nz係数ともいう)は、1より小さくすることが好ましい。Nz係数を1より小さくすることにより、位相差値の角度依存性を小さくし、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。したがって、第2光学素子は、Re[590]>Rth[590]であるものが好適に用いられる。より具体的には、上記第2光学素子のNz係数は、好ましくは0.2〜0.8であり、さらに好ましくは0.3〜0.7であり、特に好ましくは0.4〜0.6であり、最も好ましくは0.5である。Nz係数を0.5とすることによって、角度によらず位相差値がほぼ一定の特性を達成することができ、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
D−2.第2光学素子の配置手段
図2を参照すると、第2光学素子30を第1光学素子20と第3光学素子40との間に配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、第2光学素子30は、その両側に接着剤層または粘着剤層(図示せず)を設け、第1光学素子20と第3光学素子40に接着させる。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の層間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際にコントラストを高くすることもできる。
上記接着剤層または粘着剤層の厚み、および接着剤層または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤の種類は、上記C−2項に記載のとおりである。
上記第2光学素子を配置する方向は、当該第2光学素子を構成する位相差フィルムの枚数によって異なる。第2光学素子の構成については、次のD−3項で詳細に説明する。
D−3.第2光学素子の構成
第2光学素子の構成(積層構造)は、上記D−1項に記載の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。具体的には、第2光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムで構成される積層体であってもよい。好ましくは、第2光学素子は、2枚以上の位相差フィルムで構成される積層体であり、さらに好ましくは3枚の位相差フィルムで構成される積層体である。第2光学素子として積層体を採用することにより、例えば、位相差フィルムを形成する材料が大きな位相差値の波長依存性を有するもの(例えば、ポリカーボネート)であっても、第2光学素子全体として位相差値の波長依存性の小さいもの(すなわち、広い波長領域で一定の位相差値を示すもの)とすることができる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができ、かつ、斜め方向のカラーシフトも小さくすることができる。第2光学素子が積層体である場合には、接着剤層や粘着剤層を含んでもよい。積層体が2枚以上の位相差フィルムを含む場合には、これらの位相差フィルムは、同一であっても異なっていてもよい。なお、位相差フィルムの詳細についてはD−4項で後述する。
第2光学素子に用いられる位相差フィルムのRe[590]および遅相軸の角度は、用いられる位相差フィルムの枚数によって、適宜選択することができる。
図3は、第2光学素子の1つの実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。本実施形態は、第2光学素子30が単独の位相差フィルム31で構成される場合である。図3(a)および(b)において、位相差フィルム31は、その遅相軸と隣接する偏光子10の吸収軸とのなす角度がαとなるように配置される。角度αは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは45°±2.0°であり、さらに好ましくは45°±1.0°であり、特に好ましくは45°±0.5°である。
また、図3に示す実施形態においては、位相差フィルム31のRe[590]は、第2光学素子30のRe[590]と等しくすることが好ましい。具体的には、位相差フィルム31のRe[590]は、好ましくは70nm〜210nmであり、さらに好ましくは100nm〜180nmであり、特に好ましくは120nm〜160nmであり、最も好ましくは130nm〜150nmである。なお、図3(a)および(b)に示すように、偏光子10の吸収軸と第1光学素子20の遅相軸とは、互いに平行であっても直交であってもよい。
図4は、第2光学素子の別の実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子(の構成部材)の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。本実施形態は、第2光学素子30が、2枚の位相差フィルム(すなわち、第1の位相差フィルム32および第2の位相差フィルム33)で構成される場合である。図4(a)および(b)において、第1の位相差フィルム32は、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度がαとなるように配置される。さらに、第2の位相差フィルム33は、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度がβとなるように配置される。なお、図4(a)および(b)に示すように、偏光子10の吸収軸と第1光学素子20の遅相軸とは、互いに平行であっても直交であってもよい。
好ましくは、上記角度αとβは、下記式(7)の関係を満足する:
2α+40°<β<2α+50° ・・・(7)。
角度αと角度βとの関係は、さらに好ましくは2α+42°<β<2α+48°であり、とりわけ好ましくは2α+43°<β<2α+47°であり、最も好ましくはβ=2α+45°である。より具体的には、角度αは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは15°〜20°または70°〜75°であり、さらに好ましくは16°〜18°または72°〜73°であり、最も好ましくは17.5°または72.5°である。したがって、最も好ましい実施形態(β=2α+45°)においては、角度βは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは75°〜85°または5°〜15°であり、さらに好ましくは77°〜81°であり、最も好ましくは80°または10°である。
好ましくは、第1の位相差フィルム32はλ/2板であり、第2の位相差フィルム33はλ/4板である。このような場合には、上記第1の位相差フィルム32のRe[590]は、好ましくは200nm〜350nmであり、さらに好ましくは240nm〜300nmであり、特に好ましくは260nm〜280nmである。上記第2の位相差フィルム33のRe[590]は、好ましくは100nm〜180nmであり、特に好ましくは120nm〜160nmであり、最も好ましくは130nm〜150nmである。
図4の実施形態においては、2枚の位相差フィルムを用いて第2光学素子を構成することによって、各位相差フィルムの持つ位相差値の波長依存性を補償し、広い波長領域で位相差値が1/4となるようにすることができる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比やカラーシフトをより一層改善することができる。
図5は、第2光学素子のさらに別の実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子(の構成部材)の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。本実施形態は、第2光学素子30が、3枚の位相差フィルム(すなわち、第3の位相差フィルム34、第4の位相差フィルム35および第5の位相差フィルム36)で構成される場合である。図5(a)および(b)において、第3の位相差フィルム34は、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度がαとなるように配置される。第4の位相差フィルム35は、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度がβとなるように配置される。さらに、第5の位相差フィルム36は、その遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度がγとなるように配置される。なお、図5(a)および(b)に示すように、偏光子10の吸収軸と第1光学素子20の遅相軸とは、互いに平行であっても直交であってもよい。
好ましくは、上記角度α、βおよびγは、下記式(8)の関係を満足する:
2(β−α)+40°<γ<2(β−α)+50° ・・・(8)。
角度α、βおよびγの関係は、さらに好ましくは2(β−α)+42°<γ<2(β−α)+48°であり、とりわけ好ましくは2(β−α)+43°<γ<2(β−α)+47°であり、最も好ましくはγ=2(β−α)+45°である。より具体的には、角度αは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは81°〜87°であり、さらに好ましくは82°〜86°であり、特に好ましくは83°〜85°である。また、角度βは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは52°〜62°であり、さらに好ましくは54°〜60°であり、特に好ましくは56°〜58°である。したがって、最も好ましい実施形態(γ=2(β−α)+45°)においては、角度γは、偏光子10の吸収軸に対して時計まわりまたは反時計まわりに、好ましくは165°〜177°であり、さらに好ましくは167°〜175°であり、特に好ましくは169°〜173°である。
好ましくは、第3の位相差フィルム34はλ/2板であり、第4の位相差フィルム35はλ/2板であり、第5の位相差フィルム36はλ/4板である。このような場合には、上記第3の位相差フィルム34のRe[590]は、好ましくは200nm〜350nmであり、さらに好ましくは240nm〜300nmであり、特に好ましくは260nm〜280nmである。上記第4の位相差フィルム35のRe[590]は、好ましくは200nm〜350nmであり、さらに好ましくは240nm〜300nmであり、特に好ましくは260nm〜280nmである。上記第5の位相差フィルム36のRe[590]は、好ましくは100nm〜180nmであり、特に好ましくは120nm〜160nmであり、最も好ましくは130nm〜150nmである。
図5の実施形態においては、上述のように3枚の位相差フィルムを用いて第2光学素子を構成することによって、各位相差フィルムの持つ位相差値の波長依存性をより正確に補償し、可視光のほぼ波長全域で位相差値が1/4となるようにすることができる。その結果、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比やカラーシフトを著しく改善することができる。
なお、上述したような第2光学素子が2枚以上の位相差フィルムで構成される場合、各位相差フィルムのNz係数は、用いられる位相差フィルムの枚数やRe[590]にはよらず、好ましくは0.2〜0.8であり、さらに好ましくは0.3〜0.7であり、特に好ましくは0.4〜0.6であり、最も好ましくは0.5である。また、上記C−3項で述べたように、例えば、Re[590]が140nmでありNz係数が0.5である光学素子を2枚の位相差フィルムで構成することも可能である。この場合は、Re[590]が70nmであり、Nz係数が0.5である位相差フィルム2枚をそれぞれの遅相軸が平行になるように積層すればよい。
上記第2光学素子30の全体厚みは、目的や積層構造によって変化し得るが、好ましくは60μm〜500μm、さらに好ましくは90μm〜300μm、最も好ましくは120μm〜250μmである。第1光学素子がこのような範囲の厚みを有することにより、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記第2光学素子30の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
D−4.第2光学素子に用いられる位相差フィルム
第2光学素子に用いられる位相差フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるものが好ましく用いられる。上記位相差フィルムとして好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値C[590](m/N)は、好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−10であり、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−10であり、特に好ましくは1.0×10−12〜8.0×10−11である。上記の範囲とすることによって、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記位相差フィルムの厚みは、目的や第2光学素子の積層構造に応じて適宜選択され得る。好ましくは20μm〜100μmであり、さらに好ましくは30μm〜80μmであり、特に好ましくは、40〜65μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や表示均一性に優れ、上記D−1項に記載の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、特に制限はなく、例えば、上記C−4項に記載したのと同様の成形加工法が挙げられる。第2光学素子に用いられる高分子フィルムを得るための好ましい成形加工法は、押出成形法および注型(キャスティング)法である。得られる位相差フィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるからである。なお、成形条件は、用いる樹脂の組成や種類、成形加工法等によって、適宜選択され得る。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを形成する材料は、上記C−4項に記載したものと同様の熱可塑性樹脂が挙げられる。第2光学素子の材料としては、これらの中でもポリカーボネートが好ましく用いられる。透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れ、かつ、位相差値の発現性や位相差値の制御のし易さに優れるからである。第2光学素子にポリカーボネートが用いられる場合、当該ポリカーボネートの具体例もまた、上記C−4項に記載したとおりである。
第2光学素子に用いられる位相差フィルムは、第1光学素子に用いられる位相差フィルムと同様、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で加熱延伸して得ることができる。当該収縮性フィルムも上記C−4項に記載したのと同様の収縮性フィルムを用いることができる。
熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸オーブン内の温度(延伸温度)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃の範囲である。位相差値が幅方向で均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。より具体的には、上記延伸温度は、好ましくは110℃〜185℃であり、さらに好ましくは120℃〜180℃であり、特に好ましくは135℃〜175℃である。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、好ましくは1.02倍〜1.70倍であり、さらに好ましくは1.02倍〜1.50倍であり、特に好ましくは1.02倍〜1.30倍である。さらに詳細には、例えばNz係数が0.5のλ/4板を作製する場合の延伸倍率は、好ましくは1.10倍〜1.40倍である。また例えば、Nz係数が0.5のλ/2板を作製する場合の延伸倍率は、好ましくは1.05倍〜1.15倍である。上記の延伸条件であれば、上記D−1項に記載の光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
E.第3光学素子
本発明に用いられる第3光学素子は、下記式(5)および(6)を満足する。図1および図2を参照すると、第3光学素子40は、第2光学素子30の表面(第1光学素子が積層されない側)に配置される。
Re[590]>0nm …(5)
Re[590]<Rth[590] …(6)
本発明において、第3光学素子は液晶セルの位相差値を光学的に補償し、キャンセルするために用いられる。図6は、第3光学素子を用いて液晶セルの位相差値をキャンセルする方法を説明する代表的な概念図である。本明細書において、「液晶セルの位相差値をキャンセルする」とは、液晶セルと光学素子との積層体が実質的にnx=ny=nzの関係を有する実質的に等方的な屈折率分布となるように、光学的に補償することをいう。図6に示すように、例えば、屈折率分布がnz>nx>nyの関係を示す液晶セルの位相差値をキャンセルするためには、好ましくは、屈折率分布がnx>ny>nzの関係を示す第3光学素子を互いの遅相軸が直交するように配置する。ここで、nx>ny>nzの関係を示す第3光学素子とは、Re[590]>0nmであり、かつRe[590]<Rth[590]である光学素子(すなわち、上記式(5)および(6)を満足する光学素子)とも言い換えることができる。
E−1.第3光学素子の光学特性
上記第3光学素子のRe[590]は、液晶セルのRe[590]をキャンセルするために、0nmを超えるものが用いられる。好ましくは10nm〜300nmである。本発明の偏光素子がOCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置に用いられる場合、上記第3光学素子のRe[590]の好ましい範囲は、採用される表示モードにより異なる。なお、OCBモードの液晶セルについての詳細は、後述する。
例えば、低電圧印加時に明状態(白表示)となるノーマリーホワイトモードの液晶セルに対しては、高電圧印加時の液晶セルの位相差値をキャンセルすればよく、上記第3光学素子のRe[590]は、好ましくは20〜100nmであり、さらに好ましくは30〜80nmであり、特に好ましくは40〜60nmである。
一方、低電圧印加時に暗状態(黒表示)となるノーマリーブラックモードの液晶セルに対しては、低電圧印加時の液晶セルの位相差値をキャンセルすればよく、上記第3光学素子のRe[590]は、好ましくは100〜280nmであり、さらに好ましくは110〜170nmであり、特に好ましくは130〜150nmである。上記の範囲とすることで、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高くすることができる。
上記第3光学素子のRth[590]は、液晶セルのRth[590]をキャンセルするために、好ましくは100nm〜1000nmであり、さらに好ましくは150nm〜800nmであり、特に好ましくは200nm〜600nmである。上記Rth[590]は、液晶セルのRth[590]とほぼ等しくすることによって、液晶表示装置の斜め方向のコントラスト比を高めることができる。
上記第3光学素子は、Re[590]<Rth[590]であるものが好ましく用いられる。上記第3光学素子のRth[590]/Re[590](Nz係数ともいう)は、好ましくは2〜14であり、さらに好ましくは4〜12であり、特に好ましくは6〜10である。上記Nz係数は、液晶セルのNz係数と実質的に等しくすることによって、液晶セルの異方性を等方的になるように、光学的に補償することができる。このようにすることによって、液晶セルの異方性に起因する液晶表示装置の表示特性への悪影響を排除することができる。
上記第3光学素子の23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
E−2.第3光学素子の配置手段
図2を参照すると、第3光学素子40を第2光学素子30と液晶セル60との間に配置する方法としては、目的に応じて任意の適切な方法が採用され得る。好ましくは、第3光学素子40は、その両側に接着剤層または粘着剤層(図示せず)を設け、第2光学素子30と液晶セル60に接着させる。各光学素子の隙間をこのように接着剤層または粘着剤層で満たすことによって、液晶表示装置に組み込んだ際に、各光学素子の光学軸の関係がずれることを防止したり、各光学素子同士が擦れて傷ついたりすることを防ぐことができる。また、各光学素子の層間の界面反射を少なくし、液晶表示装置に用いた際にコントラストを高くすることもできる。
上記接着剤層または粘着剤層の厚み、および接着剤層または粘着剤層を形成する接着剤または粘着剤の種類は、上記C−2項に記載のとおりである。
図7は、上記第3光学素子の好ましい実施形態の代表例において、第3光学素子の遅相軸と液晶セルのラビング方向との関係を説明する概略斜視図である。図7(a)〜(d)に示すように、第3光学素子40は、その遅相軸が液晶セル60のラビング方向に対して実質的に直交するように配置される。図7(a)〜(d)において、第1光学素子20の遅相軸と偏光子10の吸収軸との関係は、平行である場合を示しているが、これは直交であってもよい。なお、本明細書において「ラビング方向」とは、液晶分子の巨視的な配向方向を示すものであって、液晶分子を配向させる手段をラビング処理法のみに限定するものではない。従って、ラビング処理法以外の方法(例えば、光配向法など)を用いて液晶分子を配向させた場合も、その配向方向は「ラビング方向」に包含される。
本発明において、第3光学素子は、液晶セルの位相差値をキャンセルすることを目的としているので、第3光学素子の遅相軸は、ラビング方向と実質的に直交していればよい。言い換えれば、第3光学素子を偏光子/第1光学素子/第2光学素子の積層体に積層する場合であっても、第3光学素子の遅相軸の方向は、当該積層体の各層の光軸(吸収軸、遅相軸)との関係によって制限されない。例えば、図7(b)および(d)に示すように、第3光学素子は、液晶セルのラビング方向によっては、その遅相軸が隣接する偏光子10の吸収軸と平行でもなく直交でもない方向に配置され得る。
E−3.第3光学素子の構成
第3光学素子の構成(積層構造)は、上記E−1項に記載の光学特性を満足するものであれば、特に制限はない。具体的には、第3光学素子は、位相差フィルム単独であってもよく、2枚以上の位相差フィルムで構成される積層体であってもよい。好ましくは、第3光学素子は、位相差フィルム単独で構成されることが好ましい。このようにすることによって、光学均一性の良好な液晶表示装置を得ることができる。
第3光学素子に用いられる位相差フィルムのRe[590]および遅相軸の角度は、用いられる位相差フィルムの枚数によって、適宜選択することができる。例えば、第3光学素子が位相差フィルム単独で構成される場合には、位相差フィルムのRe[590]およびRth[590]は、第3光学素子のRe[590]およびRth[590]とそれぞれ等しくすることが好ましい。従って、偏光子や液晶セルに上記第3光学素子を積層する際に用いられる粘着剤層や接着剤層等の位相差は、できる限り小さいことが好ましい。
また、例えば、第3光学素子として、2枚以上の位相差フィルムを含む積層体をそれぞれの遅相軸が平行となるように配置して用いる場合は、それぞれの位相差フィルムのRe[590]の合計が、第3光学素子のRe[590]と等しくなるように設計することが好ましい。また、それぞれの位相差フィルムのRth[590]の合計が、第3光学素子のRth[590]と等しくなるように設計することが好ましい。例えば、2枚の位相差フィルムをそれぞれの遅相軸が平行となるように配置して、Re[590]が140nmおよびRth[590]が400nmの第3光学素子を作製する場合には、それぞれの位相差フィルムのRe[590]を70nmおよびRth[590]を200nmとすることができる。あるいは、例えば一方の位相差フィルムのRe[590]を100nmおよびRth[590]を300nmとし、他方の位相差フィルムのRe[590]を40nmおよびRth[590]を100nmとすることもできる。一方、第3光学素子として、2枚以上の位相差フィルムを含む積層体をそれぞれの遅相軸が直交するように配置して用いる場合は、それぞれの位相差フィルムのRe[590]は、2枚の位相差フィルムのRe[590]の差が第3光学素子のRe[590]と等しくなるように設計することが好ましく、また、それぞれの位相差フィルムのRth[590]は、2枚の位相差フィルムのRth[590]の和が第3光学素子のRe[590]と等しくなるように設計することが好ましい。例えば、2枚の位相差フィルムをそれぞれの遅相軸が直交するように配置して、Re[590]が50nmおよびRth[590]が400nmの第3光学素子を作製する場合には、一方の位相差フィルムのRe[590]を150nmおよびRth[590]を200nmとし、他方の位相差フィルムのRe[590]を100nmおよびRth[590]を200nmとすることができる。
上記第3光学素子の全体厚みは、好ましくは1μm〜50μm、さらに好ましくは2μm〜40μm、最も好ましくは2μm〜30μmである。第3光学素子がこのような範囲の厚みを有することにより、液晶表示装置に用いても、偏光子の収縮やバックライトの熱により表示ムラが生じにくく、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
E−4.第3光学素子に用いられる位相差フィルム
第3光学素子に用いられる位相差フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるものが好ましく用いられる。上記位相差フィルムとして好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムである。
上記位相差フィルムの23℃における波長590nmの光で測定した透過率は、好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
上記位相差フィルムの光弾性係数の絶対値C[590](m/N)は、好ましくは2.0×10−13〜1.0×10−10であり、さらに好ましくは1.0×10−12〜1.0×10−10である。上記の範囲とすることによって、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
第3光学素子に用いられる位相差フィルムの厚みは、目的に応じて適宜選択され得る。好ましくは1μm〜30μmであり、さらに好ましくは2μm〜20μmであり、特に好ましくは2μm〜15μmである。上記の範囲であれば、光学均一性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、特に制限はなく、例えば、上記C−4項に記載した同様の成形加工法が挙げられる。注型(キャスティング)法が好ましい。得られる位相差フィルムの平滑性を高め、良好な光学的均一性を得ることができるほか、液晶セルを光学的に補償するために好適な、厚み方向の位相差値(Rth)の大きな位相差フィルムを得ることができるからである。なお、成形条件は、用いる樹脂の組成や種類、成形加工法等によって、適宜選択され得る。
上記注型(キャスティング)法に用いる溶剤としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶剤は、表面均一性の高い位相差フィルムを得るのに好適である。また、上記溶剤の乾燥温度は、好ましくは50℃〜250℃であり、さらに好ましくは80℃〜150℃である。上記の範囲とすることによって、より一層表面均一性の高い位相差フィルムを得ることができる。
上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを形成する材料は、上記C−4項に記載したものと同様の熱可塑性樹脂が挙げられる。第3光学素子としては、これらのなかでも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるほか、厚み方向の位相差値(Rth)の大きくすることができる点で、ポリイミドが好ましく用いられる。さらに好ましくは、透明性、溶解性が高く、分子構造が剛直で直線性が高いポリイミドである。
上記ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって得ることができる。上記テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させる方法としては、例えば、ディーンスターク装置を備えた反応容器中で、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とイソキノリン(触媒)をm−クレゾール等の高沸点の有機溶剤に溶解させ、この溶液を攪拌しながら、175〜180℃で加熱する方法が挙げられる。
上記テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく用いられる。さらに好ましくは、2個以上の芳香環が、単結合、エーテル基、ヘキサフルオロプロピレン基、メチレン基、カルボニル基およびスルホン基から選ばれるいずれか1種で結合された部位を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物である。このような芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビスフェノールA酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、ジアミンとの反応性に優れ、かつ、本発明の目的を満足するポリイミドが得られ得るものとして、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、および2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく用いられる。
上記ジアミンとしては、芳香族ジアミンが好ましく用いられる。さらに好ましくは、2個以上の芳香環が、単結合、エーテル基、ヘキサフルオロプロピレン基、メチレン基、カルボニル基およびスルホン基から選ばれるいずれか1種で結合された部位を含む芳香族ジアミンである。このような芳香族ジアミンの具体例としては、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、テトラカルボン酸二無水物との反応性に優れ、かつ、本発明の目的を満足するポリイミドが得られ得るものとして、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルが好ましく用いられる。
第3光学素子に用いられるポリイミドとして特に好ましくは、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物と、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとを反応させて得られる下記式(1)で表される繰り返し単位からなるポリイミドである。
また、第3光学素子にポリイミドが用いられる場合は、市販のポリイミドフィルムをそのまま用いてもよく、延伸処理や表面処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販のポリイミドフィルムとしては、具体的には、日立電線(株)製 商品名「ホピアシリーズ」(HOP−400,HOP−500等)、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ(株)製 商品名「FLUPIシリーズ」、(株)アイ.エス.テイ製「透明ポリイミドフィルム」等が挙げられる。
本発明に用いられるポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ジメチルホルムアミド溶液(10mMの臭化リチウムと10mMのリン酸を加えメスアップして1Lのジメチルホルムアミド溶液としたもの)を展開溶媒とするポリエチレンオキサイド標準の重量平均分子量(Mw)が、20,000〜180,000であるものが好ましく用いられる。さらに好ましくは、50,000〜150,000であり、特に好ましくは、70,000〜130,000である。上記の範囲であれば、機械的強度、熱安定性、寸法安定性等に優れた位相差フィルムを得ることができる。さらに、本発明の偏光素子が高温・高湿下に曝されても光学特性が変化しにくいという効果も有する。
本発明に用いられるポリイミドのイミド化率としては、特に制限はないが、90%以上であるものが好ましく用いられる。さらに好ましくは95%以上であり、特に好ましくは98%以上である。上記イミド化率は、核磁気共鳴(NMR)スペクトルにて、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸由来のプロトンピークと、ポリイミド由来のプロトンピークとのピーク積分強度比から求めることができる。
第3光学素子に用いられる位相差フィルムの残留揮発成分量としては、特に制限はないが、好ましくは0を超え5%以下、さらに好ましくは0を超え3%以下である。このような範囲であれば、位相差値の安定性に優れたポリイミドフィルム(結果として、第3光学素子)が得られる。上記ポリイミド層の残留揮発成分量は、250℃で10分間加熱したときの、加熱前後の重量減少量から求めることができる。
一般的に、ポリイミドに代表される分子構造が剛直で直線性が高い熱可塑性樹脂は、その溶液を基材上に流延し溶剤を蒸発させて成形する過程で、樹脂自身の性質により、分子が自発的に、フィルム面内に配向する傾向がある。すなわち、フィルム面内の屈折率(nxおよびny)が、厚み方向の屈折率(nz)よりも大きくなり、厚み方向の複屈折率:Δn[xz](=nx−nz)を大きくすることができる。すなわち、注型(キャスティング)法により成形された当該熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムは、Re[590]<Rth[590]の関係を達成することができる。
上記高分子フィルムの厚み方向の複屈折率(Δn[xz])としては、好ましくは0.007〜0.23であり、さらに好ましくは0.015〜0.12であり、特に好ましくは0.03〜0.09である。上記の範囲とすることによって、所望の厚み方向の位相差値(Rth)を有する位相差フィルムを薄く作製することができる。
第3光学素子に用いられる位相差フィルムを得る方法としては、注型(キャスティング)法により成形された熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムに延伸処理する方法が好ましく用いられる。延伸処理は、当該高分子フィルムに、フィルム面内の位相差値(Re)を所望の値に制御するために用いられる。
上記延伸処理法としては、特に制限はなく、縦一軸延伸法、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、縦横逐次二軸延伸法等が挙げられる。上記延伸処理法は、例えば、ロール延伸機、テンター延伸機、または二軸延伸機等の適宜な延伸機を用いて行うことができる。また、上記延伸処理は、2回または3回以上の工程に分けて行うこともできる。延伸処理する方向は、フィルム長手(MD)方向であってもよく、幅(TD)方向であってもよい。
上記延伸処理法としては上述した方法の他にも、特開2003−262721号公報の図1に記載の延伸法を用いて、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸することもできる。この場合、第3光学素子と第2光学素子の遅相軸の関係が、それぞれ平行でも直交でもない積層体を製造する場合に、各位相差フィルムの長手方向を揃えて連続的に貼り合せが可能であるため、生産性を大幅に向上させることができる。また、特開2003−344856号公報の段落[0028]の記載のように、プラスチック基材の表面に形成した高分子フィルムを、プラスチック基材ごと延伸することもできる。この場合、当該高分子フィルムの厚みが薄くても、フィルムが破断することなく、幅方向で均一な延伸が可能となる。また、上記プラスチック基材が位相差値を持つ場合は、本発明の目的を満足する範囲において、プラスチック基材と高分子フィルムとの積層体を、そのまま第3光学素子として用いてもよい。本発明に用いられる第3光学素子にポリイミドが用いられる場合は、特に、プラスチック基材の表面に形成した高分子フィルムをプラスチック基材ごと延伸する方法が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸する際の延伸オーブン内の温度(延伸温度)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。延伸温度は、好ましくは110℃〜185℃であり、さらに好ましくは120℃〜180℃であり、特に好ましくは135℃〜175℃である。
また、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸する際の延伸する倍率(延伸倍率)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、好ましくは1.02倍〜1.70倍であり、さらに好ましくは1.02倍〜1.50倍であり、特に好ましくは1.02倍〜1.30倍である。上記の延伸条件であれば、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
F.偏光素子の保護膜
本発明の偏光素子の第1光学素子、第2光学素子および第3光学素子を接着させない面(すなわち、図1および図2の偏光子10の外側)には、偏光子の保護膜として透明フィルムを配置することができる。
上記透明フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れるものが好ましい。上記透明フィルムを形成する材料としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、および生分解性プラスチック等が挙げられる。本発明では、これらのなかでも、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムが好ましく用いられる。作業性、製品の品質、経済性に優れるからである。上記熱可塑性樹脂は、非晶性ポリマーであっても、結晶性ポリマーであっても良い。非晶性ポリマーは透明性に優れるという利点を有し、結晶性ポリマーは剛性、強度、耐薬品性に優れるという利点を有する。
上記透明フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理や、拡散処理(アンチグレア処理ともいう)を適宜、選択して用いることができる。上記ハードコート処理は偏光素子の表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えば、アクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬化や滑り性等に優れる硬化皮膜を上記透明フィルムの表面に形成することができる。上記反射防止処理は、偏光板表面での外光の反射防止を目的に施される。上記アンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光素子から透過してくる光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えば、サンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や、透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて、透明フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。また、上記アンチグレア処理層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
G.液晶表示装置(液晶パネル)
本発明の偏光素子は、好ましくは液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとして用いられる。さらに好ましくは、本発明の偏光素子は液晶セル両側に配置して用いられる。当該液晶セルの種類には特に制限はなく、透過型、反射型、反射半透過型いずれの形でも使用することができる。上記液晶セルの駆動モードとしては、例えばツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モードや、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モード等が挙げられる。このうち、本発明の偏光素子は、特にベンドネマチック(OCB)モードの液晶セルに用いることが好ましい。
図8は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。液晶パネル70は、液晶セル60と、液晶セル60の視認側に配置された偏光素子50と、液晶セル60のバックライト側に配置された偏光素子50’とを備える。図示例においては、偏光素子50および50’はいずれも、本発明の偏光素子であり、上記A〜F項で説明したとおりである。すなわち、偏光素子50は、視認側から順に、偏光子10と、第1光学素子20と、第2光学素子30と、第3光学素子40とを有する。偏光素子50’は、バックライト側から順に、偏光子10’と、第1光学素子20’と、第2光学素子30’と、第3光学素子40’とを有する。偏光子10および10’は、代表的には、その吸収軸が互いに直交するように配置される。液晶セル60は、一対のガラス基板66,67と、該基板間に配された表示媒体としての液晶層65とを有する。一方のガラス基板67(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するアクティブ素子68(代表的には、TFT)と、このアクティブ素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられている(いずれも図示せず)。他方のガラス基板66(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターとしての着色層61と、遮光層62(ブラックマトリクスともいう)と、ITO層63が設けられる。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー64によって制御されている。ガラス基板66,67の液晶層と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。また、一方の偏光子10の外側には、保護膜80が設けられ、さらに該保護膜の外側には、反射防止フィルム90が設けられる。他方の偏光子10’の外側にも保護膜80’が設けられ、さらに該保護膜の外側には、輝度向上フィルム100が設けられる。液晶表示装置200は、上記の液晶パネル70に加え、プリズムシート110、導光板120、およびランプ130から構成されるバックライトユニットが設けられる。
図9は、ベンドネマチック(OCB)モードの液晶セルおける液晶分子の配向状態を説明する概略斜視図である。OCBモードは、液晶層65をいわゆるベンド配向といわれる配向によって構成する表示モードである。ベンド配向とは、図9(c)に示すように、ネマチック液晶分子の配向が基板近傍においては、ほぼ平行の角度(配向角)を有し、配向角は液晶層の中心に向かうに従って基板平面に対して垂直な角度を呈し、液晶層の中心から離れるに従って対向する基板表面と配向になるように漸次連続的に変化し、かつ、液晶層全体にわたってねじれ構造を有しない配向状態をいう。このようなベンド配向は、以下のようにして形成される。図9(a)に示すように、何ら電界等を付与していない状態(初期状態)では、液晶分子は実質的にホモジニアス配向をとっている。ただし、液晶分子は、プレチルト角を有し、かつ、基板近傍のプレチルト角とそれに対向する基板近傍のプレチルト角とが異なっている。ここに所定のバイアス電圧(代表的には、1.5V〜1.9V)を印加すると(低電圧印加時)、図9(b)に示すようなスプレイ配向を経て、図9(c)に示すようなベンド配向への転移が実現され得る。ベンド配向状態からさらに表示電圧(代表的には、5V〜7V)を印加すると(高電圧印加時)、液晶分子は図9(d)に示すように基板表面に対してほぼ垂直に立ち上がる。ノーマリーホワイトの表示モードにおいては、一方の偏光子を通過して、高電圧印加時に図9(d)の状態にある液晶層に入射した光は、第3光学素子40で補償された結果、偏光方位を変えずに進み、他方の偏光子で吸収される。したがって、暗状態の表示となる。表示電圧を下げると、ラビング処理の配向規制力により、ベンド配向に戻り、明状態の表示に戻すことができる。また、表示電圧を変化させて液晶分子の傾きを制御して偏光子からの透過光強度を変化させることにより、階調表示が可能となる。なお、OCBモードの液晶セルを備えた液晶表示装置は、スプレイ配向状態からベンド配向状態への相転移を非常に高速でスイッチングできるため、TNモードやIPSモード等の他駆動モードの液晶表示装置に比べ、動画表示特性に優れるという特徴を有する。
上記OCBモードの液晶セルの表示モードは、高電圧印加時に暗状態(黒表示)をとるノーマリーホワイトモード、高電圧印加時に明状態(白表示)をとるノーマリーブラックモードのいずれのモードでも使用することができる。本発明においては、好ましくは、上記第3光学素子を用いて高電圧印加時(図9中(d)の状態)の液晶セルを補償したノーマリーホワイトモード表示の液晶セルである。液晶表示装置に用いた際に高いコントラスト比が得られ、黒表示の均一性が優れるからである。
上記OCBモードの液晶セルのセルギャップは、好ましくは2μm〜10μmであり、さらに好ましくは3μm〜9μmであり、特に好ましくは4μm〜8μmである。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
上記OCBモードの液晶セルに使用されるネマチック液晶は、好ましくは、誘電率異方性が正のものが使用される。誘電率異方性が正のネマチック液晶の具体例としては、特開平9−176645号公報に記載のものが挙げられる。また、市販のネマチック液晶をそのまま用いてもよい。市販のネマチック液晶としては、例えば、メルク社製 商品名「ZLI−4535」、および商品名「ZLI−1132」等が挙げられる。上記ネマチック液晶の常光屈折率(no)と異常光屈折率(ne)との差、すなわち複屈折率(ΔnLC)は、上記液晶の応答速度や透過率等によって適宜に選択されるが、好ましくは0.05〜0.30であり、さらに好ましくは0.10〜0.30であり、さらに好ましくは0.12〜0.30である。
上記OCBモードの液晶セルに用いられるネマチック液晶のプレチルト角は、好ましくは1°〜20°であり、さらに好ましくは2°〜15°であり、特に好ましくは3°〜10°である。上記の範囲内であれば、応答時間を短くすることができ、良好な表示特性を得ることができる。
上記OCBモードの液晶セルにおいて、低電圧印加時(図9中(c)の状態)のRe[590]は、好ましくは100nm〜400nmであり、さらに好ましくは130nm〜350nmであり、特に好ましくは260nm〜300nmである。また、Rth[590]は、好ましくは−200nm〜−600nmであり、さらに好ましくは−240nm〜−480nmであり、特に好ましくは−280nm〜−360nmである。
上記OCBモードの液晶セルにおいて、高電圧印加時(図9中(d)の状態)のRe[590]は、好ましくは50nm〜150nmであり、さらに好ましくは65nm〜125nmであり、特に好ましくは80nm〜100nmである。また、Rth[590]は、好ましくは−300nm〜−1200nmであり、さらに好ましくは−450nm〜−1000nmであり、特に好ましくは−600nm〜−800nmである。
本発明について、以下の実施例および比較例を用いてさらに説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例に用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)偏光子の水分率の測定方法:
カールフィッシャー水分計[京都電子工業(株)製 製品名「MKA−610」]を用いて、150℃±1℃の加熱炉にサイズ10mm×30mmに切り出したサンプルを入れ、窒素ガス(200ml/分)を滴定セル溶液中にバブリングさせて測定した。
(2)偏光子の単体透過率、偏光度、Δab値の測定方法:
分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて23℃の室内において測定した。
(3)フィルムの屈折率の測定方法:
アッべ屈折率計[アタゴ(株)製 製品名「DR−4」]を用いて、23℃の室内において波長589nmの光で測定した。
(4)位相差値の測定方法:
平行ニコル回転法を原理とする位相差計[王子計測機器(株)製 製品名「KOBRA21−ADH」]を用いて、23℃の室内において波長590nmの光で測定した。
(5)光透過率の測定方法:
紫外可視分光光度計[日本分光(株)製 製品名「V−560」]を用いて、23℃の室内において波長590nmの光で測定した。
(6)光弾性係数の測定方法:
分光エリプソメーター[日本分光(株)製 製品名「M−220」]を用いて、23℃の室内において波長590nmの光で、サイズ2cm×10cmのサンプルに応力(5N〜10N)をかけながら位相差値を測定し、応力と位相差値の関数の傾きから求めた。
(7)ポリカーボネートの分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリスチレンを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具および条件にて測定した。
・サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液を調整した
・前処理:8時間静置し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した
・分析装置:東ソー製「HLC−8120GPC」
・カラム:TSKgel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流量:0.6ml/min.
・検出器:RI(示差屈折計)
・カラム温度:40℃
・流入量:20μl
(8)ポリイミドの分子量の測定方法:
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法よりポリエチレンオキサイドを標準試料として算出した。具体的には、以下の装置、器具および条件にて測定した。
・サンプル:試料を溶離液に溶解して0.1重量%の溶液を調整した
・前処理:8時間静置し、0.45μmのメンブレンフィルターでろ過した
・分析装置:東ソー製「HLC−8020GPC」
・カラム:GMHXL+GMHXL+G2500HXL
・カラムサイズ:各7.8mmΦ×30cm(計90cm)
・溶離液:
ジメチルホルムアミド溶液(10mMの臭化リチウムと10mMの燐酸に、ジメチルホルムアミドを加えメスアップして1Lとしたもの)
・流量:0.8ml/min.
・検出器:RI(示差屈折計)
・カラム温度:40℃
・流入量:100μl
(9)イミド化率の測定方法:
H−NMR装置[日本電子(株)製 製品名「LA400」]を用い、11ppm付近のポリアミック酸NH由来のピーク積分強度をXとし、7.0〜8.5ppmのポリアミック酸およびポリイミドの芳香族由来のピーク積分強度をYとして、式:A(%)=((Y−6X)/Y)×100により求めた。
(10)厚み測定方法:
厚みが10μm未満の場合、薄膜用分光光度計[大塚電子(株)製 製品名「瞬間マルチ測光システム MCPD−2000」]を用いて測定した。厚みが10μm以上の場合、デジタルマイクロメーター[アンリツ(株)製 製品名「K−351C型」]を用いて測定した。
(11)収縮フィルムの収縮率の測定方法:
JIS Z 1712−1997の加熱収縮率A法に準じて求めた(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃とし、試験片に加重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦(MD)、横(TD)方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製した。該試験片を、温度140℃±3℃に保持された空気循環式恒温槽に、加重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出し、標準状態(室温)に30分間放置してから、JIS B 7507に規定するノギスを用いて、標準間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求め、S(%)=[(加熱前の標準間距離(mm)−加熱後の標準間距離(mm))/加熱前の標準間距離(mm)]×100より、S(MD)およびS(TD)を算出した。
(12)液晶表示装置のコントラスト比の測定方法:
液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、表示画面の方位角45°方向、極角60°方向におけるXYZ表示系のY値を測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、斜め方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計回りに45°回転させた方位を表す。また、極角60°とは、パネルに対し鉛直方向を0°としたときに60°斜めから見た方位を表す。
(13)液晶表示装置のカラーシフト量の測定方法:
液晶表示装置に、黒画像を表示させ、ELDIM社製 製品名「EZ Contrast160D」を用いて、極角60°方向における全方位(360°)の色相、a値およびb値を測定した。極角60°方向における全方位のa値、b値の平均値をそれぞれ、aave.値、bave.値とし、また、極角60°方位角45°におけるa値、b値をそれぞれa45°値、b45°値とした。斜め方向のカラーシフト量(Δab値)は、次式:{(a45°−aave.+(b45°−bave.}1/2から算出した。なお、方位角45°とは、パネルの長辺を0°としたときに反時計回りに45°回転させた方位を表す。また、極角60°とは、パネルに対し鉛直方向を0°としたときに60°斜めから見た方位を表す。
[参考例1]
偏光子の作製
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを主成分とする高分子フィルム(平均重合度2400、けん化度99.9モル%)[クラレ(株)製 商品名「9P75R」]をヨウ素とヨウ化カリウム配合の染色浴(30℃±3℃)中で、ロール延伸機を用いて、染色しながら2.5倍に一軸延伸した。次いで、ホウ酸とヨウ化カリウム配合の水溶液中で、架橋反応を行いながら、ポリビニルアルコールの元長の6倍となるように一軸延伸した。得られたフィルムを50℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内で30分間乾燥させて、水分率26%、厚み28μmの偏光子(巾1300mm)を得た。上記偏光子Aの偏光度は99.91%、透過率は44.0%(23℃/波長440nm)であった。
[参考例2]
第1光学素子に用いるλ/2板(Nz係数0.25)の作製
芳香族2価フェノール成分としてビスフェノールA、カーボネート前駆物質としてホスゲンを用いて、常法に従って得られるポリカーボネートを主成分とする高分子フィルム[(株)カネカ製 商品名「エルメックRフィルム」(厚み74μm、巾1300mm)]の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム[東レ(株)製 商品名「トレファン」(厚み60μm)]をアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、150℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で1.041倍に延伸し、位相差フィルムAを作製した。得られた位相差フィルムAの特性を、後述の参考例3〜8のフィルム特性と併せて下記表1に示す。
なお、本例で用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、140℃における収縮率がMD方向に5.7%、TD方向に7.6%であった。アクリル系粘着剤は、ベースポリマーとして、溶液重合により合成されたイソノニルアクリレート(重量平均分子量=550,000)を用い、該ポリマー100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物の架橋剤[日本ポリウレタン(株)製 商品名「コロネートL」]3重量部、触媒[東京ファインケミカル(株)製 商品名「OL−1」]10重量部を混合したものを用いた。
[参考例3]
第1光学素子に用いるλ/2板(Nz係数0.75)の作製
高分子フィルムとして延伸前の厚みが69μmのものを用い、延伸倍率を1.041倍に代えて1.056倍とした以外は、参考例2と同様の方法で位相差フィルムBを作製した。得られた位相差フィルムBの特性は上記表1の通りである。
[参考例4]
第2光学素子に用いるλ/2板(Nz係数0.5)の作製
スチレン系樹脂(重量平均分子量1,300)とポリカーボネート系樹脂(重量平均分子量60,000)とを含む高分子フィルム[(株)カネカ製 商品名「エルメックPFフィルム」(厚み55μm、巾1300mm)]の両側に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムをアクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合せた。その後、ロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、147℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で1.29倍に延伸し、位相差フィルムCを作製した。得られた位相差フィルムCの特性は上記表1の通りである。なお、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムとアクリル系粘着剤は、参考例2と同じものを用いた。
[参考例5]
第2光学素子に用いるλ/4板(Nz係数0.5)の作製
延伸温度を147℃に代えて141℃とし、延伸倍率を1.29倍に代えて1.10倍とした以外は参考例4と同様の方法で位相差フィルムDを作製した。得られた位相差フィルムDの特性は上記表1の通りである。
[参考例6]
λ/4板(Nz係数1.0)の作製
ノルボルネン系樹脂を主成分とする高分子フィルム[JSR(株)製 商品名「アートン」(厚み100μm、巾1300mm)]をロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、170℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で1.35倍に一軸延伸し、位相差フィルムEを作製した。得られた位相差フィルムEの特性は上記表1の通りである。
[参考例7]
第3光学素子に用いるポリイミドフィルムの作製
テトラカルボン酸二無水物として、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物[クラリアント(株)製]を用い、ジアミンとして2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを用いて、常法に従って下記式(1)の繰り返し構造を有するポリイミドを得た。上記ポリイミドの重合平均分子量(Mw)は124,000、イミド化率は99.9%であった。上記ポリイミド17.7重量部をメチルイソブチルケトン100重量部に溶解し、15重量%のポリイミド溶液を調整した。このポリイミド溶液をトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製 商品名「フジタックUZ」(厚み80μm、巾1300mm)]上に一方向に塗工し(塗工巾1240mm)、135℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で5分間乾燥させた。続いて、テンター延伸機を用いて、150℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内で加熱しながら、ポリイミドフィルムとトリアセチルセルロースフィルムの積層体を、長手方向を固定して幅方向に1.09倍で一軸延伸し、その後、幅方向に0.97倍で緩和処理を施した。トリアセチルセルロースフィルムを剥離して、ポリイミドからなる位相差フィルムFを作製した。得られた位相差フィルムFの特性は上記表1の通りである。
[参考例8]
ポリカーボネートフィルムの作製
ポリカーボネート系樹脂を主成分とする高分子フィルム[帝人(株)製 商品名「ポカロン」(厚み112μm、巾1300mm)]をロール延伸機でフィルムの長手方向を保持して、160℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で1.14倍に延伸した。その後、テンター延伸機でフィルムの長手方向を固定して、169℃±1℃の空気循環式恒温オーブン内(フィルム裏面から3cmの距離の温度を測定)で幅方向に1.20倍で一軸延伸し、その後、幅方向に0.97倍で緩和処理を施し、位相差フィルムGを得た。得られた位相差フィルムGの特性は上記表1の通りである。
[参考例9]
OCBモードの液晶セルの作製
ガラス基板上にポリシリコンTFTと走査線、信号線、画素電極を形成し、画素数が縦480、横640×3画素のアクティブマトリクス基板を作製した。次に、別のガラス基板上に、上記アクティブマトリクス基板の各画素電極に対応した三原色(R(赤)、G(緑)、B(青))からなるカラーフィルターと、これら各色のカラーフィルターを区画するように形成されたブラックマトリクスとを形成し、この上にITO電極を形成してカラーフィルター基板を作製した。この2枚の基板上に配向膜としてポリイミド膜[日産化学(株)製 商品名「SE−5211」(プレチルト角9.5°)]を80nmの厚さに塗工、乾燥して形成した。次いで、このポリイミド膜の表面をレーヨン素材のラビング布で、走査線に平行に一方向に擦った。
次に、アクティブマトリクス基板上にスペーサーとして、直径6.6μmの球状微粒子を80個/mmの密度で散布した。カラーフィルター基板の有効表示領域の周辺部に、エポキシ樹脂の接着剤[三井東圧化学(株)製 商品名「XN−21」]を、液晶注入のための開口部を除いてスクリーン印刷法によって塗工した。その後、アクティブマトリクス基板とカラーフィルター基板とを配向膜同士が対向し、かつ、ラビング方向が互いに平行となる状態で重ね合わせ、加圧しながら加熱して接着し、セルギャップが6.6μmの空セルを作製した。
この空セルに、誘電率異方性が正のネマチック液晶[メルク社製 商品名「ZLI1132」(Δn=0.14)]にカイラル剤[メルク社製 商品名「S811」]を添加したものを真空注入法により注入し、注入後液晶の注入口を紫外線硬化樹脂[(株)ソニーケミカル製 UV−1000]にて封止してOCBモードの液晶セルを作製した。この液晶セルの高電圧印加時(6V)のRe[590]は90nmであり、Rth[590]は−670nmであった。
参考例1で作製した偏光子の片面に、ポリビニルアルコールを主成分とする硬化型接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」を塗工して、第1光学素子として参考例2で作製した位相差フィルムAを、その遅相軸が該偏光子の吸収軸と平行(0°±0.5°)となるように積層し、乾燥させて接着した(接着剤層の厚み0.05μm)。
次に、該位相差フィルムAの表面に、参考例4で作製した位相差フィルムCを、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とがなす角度αが、該偏光子の吸収軸の方向を0°として反時計回りに84°となるように、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。次に、該位相差フィルムCの表面に、参考例4で作製した位相差フィルムC’(位相差フィルムCと同様の特性を有する)を、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とがなす角度βが、該偏光子の吸収軸の方向を0°として反時計回りに57°となるように、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。次に、該位相差フィルムC’の表面に、参考例5で作製した位相差フィルムDを、その遅相軸と該偏光子の吸収軸とがなす角度γが、該偏光子の吸収軸の方向を0°として反時計回りに171°(すなわち、時計回りに9°)となるように、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。以上の位相差フィルムC、C’、Dの積層体を、第2光学素子として用いた。
次に、該位相差フィルムDの表面に、第3光学素子として参考例7で作製した位相差フィルムFを、その遅相軸が該偏光子の吸収軸と直交(90°±0.5°)するように、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。また、該偏光子の光学素子を接着させない面には、ポリビニルアルコールを主成分とする硬化型接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」を塗工して、市販のトリアセチルセルロースフィルム[富士写真フィルム(株)製 商品名「フジタックUZ」(80μm)]を積層し、乾燥させて接着した(接着剤層の厚み0.05μm)。このように作製した偏光素子Aの構成は、図10の偏光素子50と同様である。
第1光学素子として位相差フィルムAに代えて位相差フィルムBを用い、該位相差フィルムBの遅相軸が、偏光子の吸収軸に対して平行となるように貼着したこと以外は、実施例1と同様の方法で各光学フィルムを貼着した。このように作製した偏光素子Bの構成は、図10の偏光素子50’と同様である。
参考例9で作製したOCBモードの液晶セルの視認側に、実施例1で作製した偏光素子Aを、第3光学素子の遅相軸が該液晶セルのラビング方向と直交するようにして、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。また、該液晶セルのバックライト側に、実施例2で作製した偏光素子Bを、第3光学素子の遅相軸が該液晶セルのラビング方向と直交するようにして、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着し、図10に示すような液晶パネルAを作製した。この液晶パネルAをバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Aを作製した。該液晶表示装置Aの全方位のコントラスト比、斜め方向のカラーシフト量を、23℃の暗室にて測定した。その結果を、後述の比較例3の結果と併せて表2に示す。
[比較例1]
参考例1で作製した偏光子の片面に、ポリビニルアルコールを主成分とする硬化型接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」を塗工して、第1光学素子として参考例6で作製した位相差フィルムEを、その遅相軸が該偏光子の吸収軸と45°の角度をなすように積層し、乾燥させて接着した(接着剤層の厚み0.05μm)。次に、位相差フィルムEの表面に、参考例8で作製した位相差フィルムGを、その遅相軸が偏光子の吸収軸と平行となるように、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。このようにして、図11に示すような偏光素子Xを作製した。
[比較例2]
参考例1で作製した偏光子の片面に、ポリビニルアルコールを主成分とする硬化型接着剤[日本合成化学(株)製 商品名「ゴーセファイマーZ200」を塗工して、第1光学素子として参考例6で作製した位相差フィルムE’(位相差フィルムEと同様の特性を有する)を、その遅相軸が該偏光子の吸収軸と135°の角度をなすように積層し、乾燥させて接着した(接着剤層の厚み0.05μm)。このようにして、図11に示すような偏光素子Yを作製した。
[比較例3]
参考例9で作製したOCBモードの液晶セルの視認側に、比較例1で作製した偏光素子Xを、位相差フィルムGの遅相軸が該液晶セルのラビング方向と直交するようにして、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着した。また、該液晶セルのバックライト側に、比較例2で作製した偏光素子Yを、位相差フィルムEおよびE’の遅相軸が互いに直交するように、かつ、該液晶セルの上下に配した偏光子の吸収軸が互いに直交するようにして、アクリル系粘着剤(20μm)を介して貼着し、図11に示すような液晶パネルXを作製した。この液晶パネルXをバックライトユニットと結合し、液晶表示装置Xを作製した。該液晶表示装置Xの全方位のコントラスト比、斜め方向のカラーシフト量を、23℃の暗室にて測定した。その結果を上記表2に示す。
[評価]
実施例3に示すように、OCBモードの液晶セルの両面に、本発明の偏光素子(実施例1および実施例2)をそれぞれ積層した液晶表示装置Aは、比較例1で示す従来の技術で作製した液晶表示装置Xよりも、コントラスト比を全方位で大幅に高くすることができた。さらに、斜め方向のカラーシフト量を、格段に小さくすることができた。本発明の効果は、桁違いに優れたものであった。このような素晴らしい効果が得られた要因としては、(1)ベンド配向状態の液晶分子の旋光性に起因する悪影響を、角度に依存せず、正面方向からも斜め方向からも直線偏光を円偏光に変換できるような円偏光板を用いることによって排除できたこと、(2)偏光子の偏光度が斜め方向で低下することを、所定のλ/2板を用いて防止できたこと、および(3)ベンド配向状態の液晶セルを補償するための位相差フィルムに厚み方向の複屈折が大きな材料を用いて、当該フィルムを薄くすることによって、位相差値や遅相軸の角度のバラツキを小さくすることができたこと、などが考えられる。
本発明の液晶パネルは、パーソナルコンピューター、液晶テレビ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)等の液晶表示装置や、プロジェクター、プロジェクションテレビ等の画像表示装置に用いることができる。また、本発明の偏光素子は、液晶表示装置に好適に用いられ、液晶テレビに特に好適に用いられる。
本発明の好ましい実施形態による偏光素子の概略断面図である。 本発明の液晶パネルの好ましい実施形態において、偏光子の吸収軸、第1光学素子の遅相軸、第2光学素子の遅相軸、および第3光学素子の遅相軸の関係を説明する概略斜視図である。 第2光学素子の1つの実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。 第2光学素子の別の実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。 第2光学素子のさらに別の実施形態において、偏光子の吸収軸と第2光学素子の遅相軸との関係を説明する概略斜視図である。 第3光学素子を用いて液晶セルの位相差値をキャンセルする方法を説明する代表的な概念図である。 第3光学素子の好ましい実施形態において、第3光学素子の遅相軸と液晶セルのラビング方向との関係を説明する概略斜視図である。 本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。 ベンドネマチック(OCB)モードの液晶セルおける液晶分子の配向状態を説明する概略斜視図である。 本発明の実施例により得られた液晶パネルの構成を説明する概略斜視図である。 比較例により得られた液晶パネルの構成を説明する概略斜視図である。
符号の説明
200 液晶表示装置
10 偏光子
20 第1光学素子
30 第2光学素子
40 第3光学素子
50 偏光素子
60 液晶セル
65 液晶層
70 液晶パネル




Claims (15)

  1. 偏光子と、下記式(1)および(2)を満足する第1光学素子と、下記式(3)および(4)を満足する第2光学素子と、下記式(5)および(6)を満足する第3光学素子とをこの順に備える、偏光素子:
    200nm≦Re[590]≦350nm …(1)
    Re[590]>Rth[590] …(2)
    70nm≦Re[590]≦210nm …(3)
    Re[590]>Rth[590] …(4)
    Re[590]>0nm …(5)
    Re[590]<Rth[590] …(6)
    [ただし、Re[590]、Rth[590]は、それぞれ23℃における波長590nmの光で測定したフィルム面内の位相差値、厚み方向の位相差値とする。]
  2. 前記第1光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])が0.20〜0.80である、請求項1に記載の偏光素子。
  3. 前記第1光学素子の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが、実質的に平行または直交になるように配置されてなる、請求項1または2に記載の偏光素子。
  4. 前記第1光学素子が1枚の位相差フィルムで構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光素子。
  5. 前記第2光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])が0.20〜0.80である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏光素子。
  6. 前記第2光学素子が1枚の位相差フィルムで構成され、該位相差フィルムの遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が、45±2.0°になるように配置されてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光素子。
  7. 前記第2光学素子が、第1の位相差フィルムと第2の位相差フィルムとの積層体で構成され、該第1の位相差フィルムの遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度をα、該第2の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をβとしたとき、αとβが下記式(7)の関係を満足する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光素子:
    2α+40°<β<2α+50° ・・・(7)。
  8. 前記角度αが、前記吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに15°〜20°または70°〜75°である、請求項7に記載の偏光素子。
  9. 前記第2光学素子が、第3の位相差フィルムと第4の位相差フィルムと第5の位相差フィルムとの積層体で構成され、該第3の位相差フィルムの遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度をα、該第4の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をβ、該第5の位相差フィルムの遅相軸と該偏光子の吸収軸とのなす角度をγとしたとき、α、βおよびγが下記式(8)の関係を満足する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の偏光素子:
    2(β−α)+40°<γ<2(β−α)+50° ・・・(8)。
  10. 前記角度αが、前記吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに81°〜87°であり、前記角度βが、該吸収軸に対して時計回りまたは反時計回りに52°〜62°である、請求項9に記載の偏光素子。
  11. 前記第3光学素子のフィルム面内の位相差値と厚み方向の位相差値の比(Rth[590]/Re[590])が2〜10である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の偏光素子。
  12. 前記第3光学素子が、ポリイミドを主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムからなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の偏光素子。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の偏光素子と液晶セルとを備える、液晶パネル。
  14. 前記液晶セルがOCBモードである、請求項13に記載の液晶パネル。
  15. 請求項13または14に記載の液晶パネルを含む、液晶表示装置。







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