JP2007098332A - 有機溶剤回収システム - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶剤の回収を確実にし大気への蒸散を効果的に防止するとともに、機器をコンパクトで安価に製作できるシステムを提供することを目的としている。
【解決手段】有機溶剤を貯留する洗浄槽101の上方に吸引口2を臨ませた吸引配管1と、洗浄槽101の内部に吐出口5を臨ませた吐出配管4と、吸引配管1および吐出配管4に接続された処理装置3とからなり、吸引口2から吸引した低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気を、処理装置3で濃縮し高濃度の有機溶剤蒸気にした後に、吐出口5から洗浄槽101内部に戻す。また、処理装置3は、吸着剤が内部に充填された複数の吸着塔10a、10bと、吸着排出管13、吸着吸入管11、脱着排出管12、吸着用送風機31および脱着用ポンプ33とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機溶剤を用いて工業用部品などを洗浄する開放式洗浄槽に使用される、揮発性有機化合物(VOC)排出抑制のための有機溶剤回収システムに関する。
近年、大気汚染防止の観点から、開放式洗浄槽を用いた工業用部品などの洗浄工程において、揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制、すなわち有機溶剤などの大気への蒸散防止が求められている。これを解決するために、種々の有機溶剤回収システムが開発されてきた。
従来、この種の有機溶剤回収システムは、洗浄槽内部に吸引孔と吐出孔を配設し、その間をダクトとブロワと凝縮器とで連結されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
以下、そのシステムについて、図3および図4を参照しながら説明する。
まず、図3において開放式洗浄槽のしくみを説明する。101は洗浄槽で、隔壁102によって浸漬洗浄槽103と蒸気洗浄槽104に分かれており、浸漬洗浄槽103には液体有機溶剤105が貯留され、蒸気洗浄槽104の底部には少量の液体有機溶剤106に浸されたヒータ107が備えつけられている。108は、洗浄槽101の内壁109周囲に配置された冷却管で、冷却水供給装置110に接続されている。
つぎに、図3において洗浄工程を説明する。洗浄部品を入れた籠であるワーク111を、まず上方(111a)から浸漬洗浄槽103の液体有機溶剤105に浸漬させ洗浄し(111b)、つぎに蒸気洗浄槽104内に充満している有機溶剤蒸気112に曝し蒸気洗浄し(111c)、その後上方(111d)へ引上げ洗浄工程は完了する。洗浄槽101内では、ヒータ107によって加熱沸騰した液体有機溶剤106が蒸発し、有機溶剤蒸気112として蒸気洗浄槽104内に充満するのみならず、冷却管108の下部高さに形成されたベーパーライン113から下の空間に、高濃度蒸気層114として漂う。ベーパーライン113とは、高濃度蒸気層114と低濃度蒸気層115とを隔てる境界層で、一般に有機溶剤蒸気は比重が空気より重く、また冷却水供給装置110から供給される冷却水を通すことより冷却管108が十分冷却された場合は、有機溶剤蒸気が凝縮し体積減少とともに上昇拡散が妨げられるため、この境界層は安定して存在する。ただし、洗浄工程にあるように、ワーク111を引上げた時には、ワーク111とともに一部の高濃度蒸気も持出され、また冷却管108による冷却が十分できていない場合はベーパーライン113が上昇し、いずれも高濃度蒸気が矢印116の如く洗浄槽101の上端縁117から溢れ出す。その時、有機溶剤蒸気は比重が空気より重いため、上空に発散するのではなく、あくまで上端縁117に沿って溢れ出て、洗浄槽101周囲の下方に拡散するものである。
一方、低濃度蒸気層115は、高濃度蒸気層114に比べると有機溶剤蒸気濃度は低いものの、ワーク111の出入がない非作業時でも、洗浄槽101内で拡散し僅かずつではあるが前述同様矢印116の如く洗浄槽101上端縁117より外部へ漏れ出る。これを防止する目的で、洗浄槽101の上方の壁面118(図3では奥側の壁)に局所排気用吸込口119を設け、局所排気を行っている。なお、この局所排気用吸込口119は、開放式の洗浄槽101、すなわち、上方へワーク111の出入がある場合、洗浄槽101の直上に設けることができず、図3のように周囲上端縁117の1辺の上方壁面118(図3では奥側の壁)に設けることとなる。
この図3の洗浄槽において有機溶剤を回収する従来の有機溶剤回収システムを、図4を用いて説明する。なお図4において、図3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。洗浄槽101内部の高濃度蒸気層114内に吸引孔131を、低濃度蒸気層115に吐出孔132をそれぞれ配設し、その間を往ダクト133、ブロワ134、凝縮器135、復ダクト136で連結している。吸引孔131から吸引された高濃度の有機溶剤蒸気は、ブロワ134の動力によって往ダクト133から凝縮器135に導かれ、熱交換器136からの冷却水によって有機溶剤が凝縮し、液化された有機溶剤は油水分離器137で水と分離された後、戻り管138を通って浸漬洗浄槽103に戻される。一方、凝縮器135で液化しきれなかった未凝縮有機溶剤蒸気は、復ダクト136を通って洗浄槽101の低濃度蒸気層115に戻される。
このような従来の有機溶剤回収システムでは、高濃度蒸気層114から吸引し一部の有機溶剤を液化し浸漬洗浄槽103に戻すとともに、未凝縮有機溶剤蒸気を低濃度蒸気層115に戻している。これは冷却管108による冷却が十分できておらずベーパーライン113が上昇する場合は、ベーパーライン113を下げ高濃度蒸気が洗浄槽101の上端縁117から溢れ出すことを未然に防止する効果があるが、冷却が十分でベーパーライン113が一定高さに制御されている場合は、本来蒸気で充満されている空間から高濃度蒸気を吸引するため、高濃度蒸気層114への有機溶剤の蒸発をかえって促進することになり、結局は蒸発と液化を繰り返すサイクル内を循環するのみで、本来の目的である有機溶剤の大気への蒸散を防止する目的を果たしていない。つまり、ワーク(図4では図示せず)を引上げた時に生じる洗浄槽101上端縁117からの有機溶剤蒸気の外部漏出や、ワーク(図4では図示せず)の出入がない非作業時での低濃度蒸気の外部漏出に対して、なんら有効な解決手段となっていない。
また、別の有機溶剤回収システムは、凝縮器、溶剤回収器、冷凍機および一対の吸脱着塔から構成されたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
以下、そのシステムについて、図5を参照しながら説明する。
151a、151bは内部に活性炭を有する一対の吸脱着塔で、入口に弁162a、162b、163a、163bを介して管路152、153が、出口に弁164a、164b、165a、165bを介して管路154、155が接続されている。管路152の上流には、送風機171と凝縮器172が設けられ、凝縮器172には冷凍機173と溶剤回収器174が接続されている。また、管路153は冷凍機173に、管路154は送風機171と凝縮器172との間の管路156に、それぞれ接続されている。
洗浄槽(図示せず)などから吸引された有機溶剤蒸気を含む空気は、送風機171によって管路156から凝縮器172に送られ、冷凍機173の冷熱によって有機溶剤を凝縮させた後、管路152を通って吸脱着塔151aまたは151bのいずれかに送られる。ここで、一対の吸脱着塔151a、151bは、一方が吸着動作を行っている時に、他方は脱着動作を行うもので、仮に吸脱着塔151aで吸着動作を、吸脱着塔151bで脱着動作を行っている場合は、弁162a、165a、163b、164bが開き、他の弁は閉じる。そして、吸脱着塔151aで有機溶剤蒸気を吸着させた後の空気は、管路155から系外に排出される。一方、冷凍機173の排熱を受けて系外から吸引された空気は、管路153から吸脱着塔151bに送られ、熱脱着した後に管路154から管路156に送られ、再び凝縮器172での凝縮工程を行う。このようにして濃縮された有機溶剤の液体は、溶剤回収器174で集められ、洗浄槽の液層(図示せず)などに戻される。
このような従来の有機溶剤回収システムでは、有機溶剤を完全に液体として回収するために、吸脱着塔151a、151bと冷凍機173による凝縮とを組合せた複雑なシステムとなり、機器の大型化とコスト高を招いている。
実開平07−01068号公報(第2頁、第1図) 特開昭52−69869号公報(第1−3頁、図)
このような従来の有機溶剤回収システムでは、洗浄槽の高濃度蒸気層から吸引しているため、洗浄槽上端縁からの有機溶剤蒸気の外部漏出を防ぐことができず、有機溶剤の大気への蒸散を十分防止できないという課題があった。
また、別の従来の有機溶剤回収システムでは、吸引した有機溶剤蒸気を完全に液化して洗浄槽液層へ戻す場合ためシステムが複雑になり、機器が大型化しコストが高くなるという課題があった。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、有機溶剤の回収を確実にし大気への蒸散を効果的に防止するとともに、機器をコンパクトで安価に製作できるシステムを提供することを目的としている。
本発明の有機溶剤回収システムは、上記目的を達成するために、有機溶剤を貯留する洗浄槽の上方に吸引口を臨ませた吸引配管と、洗浄槽の内部に吐出口を臨ませた吐出配管と、吸引配管および吐出配管に接続された処理装置とを備え、吸引口から吸引した低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気を、処理装置で濃縮し高濃度の有機溶剤蒸気にした後に、吐出口から洗浄槽内部に戻すようにしたものである。
この手段により、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止することができる。
また、他の手段は、吸引口を洗浄槽の上方に設けられた局所排気用吸込口としたものである。
これにより、既存の排気設備を利用でき、システムのコストを安価にすることができる。
また、他の手段は、吸引口を洗浄槽の上端縁周囲に配設したものである。
これにより、少量の風量で効果的に吸引する、すなわち処理装置を小型化することができる。
また、他の手段は、吐出口を洗浄槽内部の有機溶剤蒸気が充満された高濃度蒸気層内に設けたものである。
これにより、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止することができる。
また、他の手段は、洗浄槽内の有機溶剤蒸気濃度分布に応じて、吐出口の高さを可変することができるものである。
これにより、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止することができる。
また、他の手段の処理装置には、吸着剤が内部に充填された複数の吸着塔と、一端を吸着塔に接続された吸着排出管と、一端を吸着塔に他端を吸引配管に接続された吸着吸入管と、一端を吸着塔に他端を吐出配管に接続された脱着排出管と、吸着用送風機および脱着用ポンプとを備えたものである。
これにより、吸引した有機溶剤を効果的に濃縮し、しかも冷凍機などの装置を不要とし、処理装置をコンパクトで安価に製作することができる。
また、他の手段は、脱着排出管に気液分離器を設けたものである。
これにより、吐出配管内の結露による詰まりを防止し、信頼性を向上させることができる。
また、他の手段は、脱着排出管に冷却器を設けたものである。
これにより、吐出配管内の結露による詰まりを防止し、信頼性を向上させることができる。
また、他の手段は、気液分離器の液槽から洗浄槽の液槽へ有機溶剤凝縮液を送り込む搬送手段を設けたものである。
これにより、人の手間をかけずに自動的に運転することができる。
また、他の手段は、吐出配管から洗浄槽内部に戻す有機溶剤蒸気の濃度を調整する吐出濃度調整手段を備えたものである。
これにより、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止することができる。
また、他の手段は、吐出濃度調整手段として、脱着用ポンプの能力を変化させて行うものである。
これにより、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するとともに、脱着用ポンプを適正能力で運転し消費電力を低減させることができる。
また、他の手段は、吐出濃度調整手段として、ガス濃度検知器と、温度検知器と、これら検知器の情報に基づき脱着用ポンプの能力を制御する制御装置とを備えたものである。
これにより、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するとともに、脱着用ポンプを適正能力で運転し消費電力を低減させることができる。
本発明によれば、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止する有機溶剤回収システムを提供できる。
また、システムをシンプルにし、機器をコンパクトで安価に製作することができる。
また、信頼性を向上させる、人の手間をかけずに自動的に運転することができる、消費電力を低減することができる、などの効果も奏するものである。
本発明の請求項1記載の発明は、吸引口から吸引した低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気を、処理装置で濃縮し高濃度の有機溶剤蒸気にした後に、吐出口から洗浄槽内部に戻すようにしたため、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するという作用を有する。
本発明の請求項2記載の発明は、吸引口が洗浄槽の上方に設けられた局所排気用吸込口であるため、既存の排気設備を利用でき、システムのコストを安価にするという作用を有する。
本発明の請求項3記載の発明は、吸引口が洗浄槽の上端縁周囲に配設されたため、少量の風量で効果的に吸引する、すなわち処理装置を小型化するという作用を有する。
本発明の請求項4記載の発明は、吐出口を洗浄槽内部の有機溶剤蒸気が充満された高濃度蒸気層内に設けたため、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するという作用を有する。
本発明の請求項5記載の発明は、洗浄槽内の有機溶剤蒸気濃度分布に応じて、吐出口の高さを可変することができるため、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するという作用を有する。
本発明の請求項6記載の発明は、吸着剤を用いた吸脱着方式のため、吸引した有機溶剤を効果的に濃縮し、しかも冷凍機などの装置を不要とし、処理装置をコンパクトで安価に製作できるという作用を有する。
本発明の請求項7記載の発明は、気液分離器を設けたため、吐出配管内の結露による詰まりを防止し、信頼性を向上させるという作用を有する。
本発明の請求項8記載の発明は、冷却器を設けたため、吐出配管内の結露による詰まりを防止し、信頼性を向上させるという作用を有する。
本発明の請求項9記載の発明は、気液分離器の液槽から洗浄槽の液槽へ有機溶剤凝縮液を送り込む搬送手段を設けたため、人の手間をかけずに自動的に運転できるという作用を有する。
本発明の請求項10記載の発明は、吐出配管から洗浄槽内部に戻す有機溶剤蒸気の濃度を調整する吐出濃度調整手段を備えたため、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するという作用を有する。
本発明の請求項11記載の発明は、吐出濃度調整手段として、脱着用ポンプの能力を変化させるため、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するとともに、脱着用ポンプを適正能力で運転し消費電力を低減させるという作用を有する。
本発明の請求項12記載の発明は、吐出濃度調整手段として、ガス濃度検知器と、温度検知器と、これら検知器の情報に基づき脱着用ポンプの能力を制御する制御装置とを備えたため、洗浄槽内部の濃度差によるベーパーラインの乱れを防ぎ、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するとともに、脱着用ポンプを適正能力で運転し消費電力を低減させるという作用を有する。
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図2を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における有機溶剤回収システムの断面構成図である。本実施の形態1において、従来例と同じ構成要素については同じ符号を用い、詳細な説明は省略する。
図1において、吸引配管1は、洗浄槽101の上端縁117周囲に配設された吸引口2を備えており、処理装置3の吸着吸入管11に接続されている。吐出配管4は、洗浄槽101内のベーパーライン113下方の高濃度蒸気層114に設けられて、処理装置3の脱着排出管12に接続されている。洗浄槽101の冷却管108の冷却能力や周囲温度変化によってベーパーライン113の高さが変化することを勘案して、確実に高濃度蒸気層114内に吐出口5が臨むように、吐出口5の高さは可変できるようになっている(例えば、2重になった管をスライドさせネジ等で位置決めすることによって、吐出口5の高さを調整するなどの高さ可変手段)。吸着塔10a、10bは、吸着剤が内部に充填されており、本実施の形態1では、吸着動作と脱着動作を交互に行うため2個の吸着塔となっているが、吸着時間と脱着時間との関係において、例えば吸着時間が短く脱着時間が長い場合などは、1塔で吸着動作を、残り2塔で脱着動作を行う、というように、必要に応じて吸着塔の数を増加してもよい。この吸着塔10a、10bは、それぞれ、一端に弁21a、弁21bを介して吸着吸入管11が、同じく一端に弁22a、弁22bを介して脱着排出管12が、また、他端に弁23a、23bを介して吸着排出管13が、同じく他端に弁24a、24bを介して脱着吸入管14が、接続されている。吸着排出管13および脱着吸入管14は、吸着塔10a、10bに接続されていない他端を処理装置3外に開放している。吸着用送風機31は、吸着吸入管11に設けられ、また、流量制御弁32は、脱着吸入管14に設けられている。脱着排出管12には、脱着用ポンプ33と冷却器34を組込んだ気液分離器35が設けられている。搬送手段としての液送配管36は、液送ポンプ37と逆止弁38とを有し、一端を気液分離器35の液槽39に、他端を洗浄槽101の液槽である浸漬洗浄槽103に接続されている。制御装置40は、脱着排出管12に設けられたガス濃度検知器41と温度検知器42、および脱着用ポンプ33と電気的に接続され、吐出濃度調整手段43を形成している。冷却水熱交換器44は、本実施の形態1では、冷却水配管45を通じて処理装置3外部のクーリングタワー(図示せず)に接続されている。
つぎに、本実施の形態1における動作を説明する。洗浄槽101での洗浄工程において、ワーク(図1では図示せず)を引上げた時に生じる洗浄槽101からの有機溶剤(一例としてジクロロメタンなど)蒸気漏出や、非作業時の低濃度蒸気の微量外部漏出は、前述の通り、有機溶剤蒸気の比重が空気より重いため(ジクロロメタンの場合は空気の約3倍)、上空に発散するのではなく、あくまで上端縁117に沿って溢れ出る。そこで、本実施の形態1に示すように、吸引口2を洗浄槽101の上端縁117周囲に配設し、有機溶剤蒸気を含む空気を吸引することは極めて有効である。この時、吸引風量はベーパーライン113を乱さないように、つまり不要に高濃度の蒸気を巻上げないように、少量に抑えることが肝要である。実験によると、開口面積2m2程度の洗浄槽101で、吸引口2からの吸引風量を10m3/分とした場合に対し、吸引風量を30m3/分とした場合は、ベーパーライン113の乱れにより、風量を多くしたにもかかわらず有機溶剤蒸気濃度が2倍以上となった。これは、ベーパーライン113が乱れることにより、高濃度蒸気層114内の高濃度蒸気を巻上げて吸引した結果である。なお、ここでいう「低濃度」、「高濃度」とは、本実験の一例ではジクロロメタン濃度として、低濃度=50〜100ppm程度、高濃度=10〜20%程度の濃度を指す。このように、吸引風量をベーパーライン113が乱れない程度に少量に抑えることで、後述の吸着塔10a、10bの通過風量も少なくて済むため、吸着塔10a、10bの大きさを小さくすることができる。
この吸引口2から吸引された比較的低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気は、吸着用送風機31によって吸引配管1から吸着吸入管11を通り、一対の吸着塔10aまたは10bのいずれかに送られる。ここで、一対の吸脱着塔10a、10bは、一方が吸着動作を行っている時に、他方は脱着動作を行うもので、仮に吸着塔10aで吸着動作を、吸着塔10bで脱着動作を行っている場合は、弁21a、23a、22b、24bが開き、他の弁は閉じる。そして、吸着塔10aで有機溶剤蒸気を吸着させた後の空気は、有機溶剤蒸気がほとんど含まれない状態で、吸着排出管13から系外に排出される。なお、一連の吸着動作と脱着動作(後述)が終了した後は、弁21a、23a、22b、24bを閉じ他の弁を開き、吸着塔10a、10bの機能を切替えて、吸着塔10aで脱着動作を、吸着塔10bで吸着動作を行い、これを交互に繰返すことにより、有機溶剤蒸気を連続的に処理することができるものである。
つぎに、脱着動作について説明する。吸着塔10b内の吸着剤に既に吸着された有機溶剤は、脱着用ポンプ33によって真空吸引された後、濃縮有機溶剤蒸気として、脱着排出管12から吐出配管4を通って、洗浄槽101内のベーパーライン113下方に設けられた吐出口5から高濃度蒸気層114に戻される。脱着用ポンプ33によって真空吸引する場合は、吸着吸入管14から適量の空気をパージガスとして吸引した方が、吸着塔10b内部の吸着剤に吸着された有機溶剤を完全に脱着させることができるため、このパージガスの流量調整を流量制御弁32によって行うことが望ましい。また、脱着用ポンプ33による真空吸引状態により、濃縮有機溶剤蒸気の吐出濃度も変わるため、制御装置40により脱着用ポンプ33の能力を調整し、濃縮有機溶剤蒸気の吐出濃度を、洗浄槽101の高濃度蒸気層114の有機溶剤濃度と同じにすることが望ましい。その理由は、もし濃縮有機溶剤蒸気の吐出濃度が高濃度蒸気層114の有機溶剤濃度に比べ希薄の状態で洗浄槽101に戻した場合、ベーパーライン113の下で有機溶剤蒸気濃度に濃淡ができ、高濃度蒸気層114内に対流が生じ、安定していたベーパーライン113が乱れて、洗浄槽101上方の低濃度蒸気層115にも高濃度有機溶剤蒸気が拡散し、吸引口2からの吸引有機溶剤蒸気濃度が上昇する。そのために、吸着塔10aで処理しきれない有機溶剤蒸気が、吸着排出管13から外部へ排出されるおそれがあるためである。また、脱着用ポンプ33の能力を調整するということは、脱着用ポンプ33を適正能力で運転し消費電力を低減させるということにもつながる。そして、この吐出濃度をさらに精度良く調整する手段として、ガス濃度検知器41と温度検知器42とで、吸着排出管13内の有機溶剤濃度と温度を測定し、これらの測定情報に基づき脱着用ポンプ33の能力を制御する。必要に応じて、洗浄槽101内の高濃度蒸気層114内に同様の検知器を取付け(図示せず)、比較測定してもよい。具体的には、高濃度蒸気層114内は有機溶剤蒸気が飽和蒸気圧になっていることが多いため、吐出口5から戻される濃縮有機溶剤蒸気が飽和状態になるように、吸着排出管13内の有機溶剤濃度と温度を調整するものである。
ところで、このように吸着排出管13内の有機溶剤濃度が飽和状態に近くなると、少しの温度低下でも有機溶剤の液化が発生し、吸着排出管13内が結露して詰まり、蒸気の排出に支障をきたすことがある。それを回避し信頼性を向上させる手段として、冷却器34を組込んだ気液分離器35を設けることが有効である。すなわち、冷却水熱交換器44で冷却された有機溶剤蒸気の一部が凝縮し、気液分離器35の液槽39に回収液として溜まる。この回収液は、液送ポンプ37によって液送配管36から浸漬洗浄槽103に自動搬送されるため、回収液を人手をかけて洗浄槽101へ戻す必要はない。なお、液槽39と浸漬洗浄槽103との間に高低差がある場合は、回収液が逆流しないように逆止弁38が必要である。ここで、冷却水熱交換器44に流す冷却水は、前述の通りクーリングタワーを循環する空冷冷却水程度でよく、従来技術(図5)に示すような冷凍機を用いた冷却装置は不要である。
このように、洗浄槽101の上端縁117周囲に配設された吸引口2から吸引した低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気を、処理装置3で濃縮し高濃度の有機溶剤蒸気にした後に、ベーパーライン113下方の高濃度蒸気層114に設けられた吐出口5から洗浄槽101内部に戻す方式は、有機溶剤の回収を確実にし、大気への蒸散を効果的に防止するとともに、有機溶剤を完全に液体として回収する方式と違い、冷凍機を組合せた複雑なシステムが不要となり、機器をコンパクトで安価に製作することができるものである。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における有機溶剤回収システムの断面構成図である。本実施の形態2において、従来例、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を用い、詳細な説明は省略する。
図2の実施の形態2では、洗浄槽101の上方の壁面118(図2では奥側の壁)の局所排気用吸込口119を利用して、吸引口2としている。この構成は、既設の洗浄槽101に有機溶剤回収システムを追加設置する場合、既存の局所排気装置の吸気口を利用するため、設置工事に係るシステムのコストを安価にすることができるものである。
本発明は、有機溶剤を用いて工業用部品などを洗浄する開放式洗浄槽に使用される、揮発性有機化合物(VOC)排出抑制のための有機溶剤回収システムとして有用である。また、有機溶剤以外の有害物質排出抑制の用途にも適用できる。
本発明の実施の形態1の有機溶剤回収システムを示す断面構成図 本発明の実施の形態2の有機溶剤回収システムを示す断面構成図 従来の洗浄槽を示す縦断面図 同有機溶剤回収システムを示す断面構成図 従来の別の有機溶剤回収システムを示す断面構成図
符号の説明
1 吸引配管
2 吸引口
3 処理装置
4 吐出配管
5 吐出口
10a 吸着塔
10b 吸着塔
11 吸着吸入管
12 脱着排出管
13 吸着排出管
31 吸着用送風機
33 脱着用ポンプ
34 冷却器
35 気液分離器
36 液送配管(搬送手段)
39 液槽
40 制御装置
41 ガス濃度検知器
42 温度検知器
43 吐出濃度調整手段
101 洗浄槽
103 浸漬洗浄槽(液槽)
114 高濃度蒸気層
117 上端縁
119 局所排気用吸込口

Claims (12)

  1. 有機溶剤を貯留する洗浄槽の上方に吸引口を臨ませた吸引配管と、前記洗浄槽の内部に吐出口を臨ませた吐出配管と、前記吸引配管および前記吐出配管に接続された処理装置とを備え、前記吸引口から吸引した低濃度の有機溶剤蒸気を含む空気を、前記処理装置で濃縮し高濃度の有機溶剤蒸気にした後に、前記吐出口から前記洗浄槽内部に戻す有機溶剤回収システム。
  2. 吸引口は、洗浄槽の上方に設けられた局所排気用吸込口である請求項1記載の有機溶剤回収システム。
  3. 吸引口は、洗浄槽の上端縁周囲に配設された請求項1記載の有機溶剤回収システム。
  4. 吐出口は、洗浄槽内部の有機溶剤蒸気が充満された高濃度蒸気層内に設けられた請求項1〜3のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
  5. 洗浄槽内の有機溶剤蒸気濃度分布に応じて、吐出口の高さを可変することができる請求項4記載の有機溶剤回収システム。
  6. 処理装置には、吸着剤が内部に充填された複数の吸着塔と、一端を前記吸着塔に接続された吸着排出管と、一端を前記吸着塔に他端を吸引配管に接続された吸着吸入管と、一端を前記吸着塔に他端を吐出配管に接続された脱着排出管と、吸着用送風機および脱着用ポンプとを備えた請求項1〜5のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
  7. 脱着排出管に、さらに気液分離器を設けた請求項6記載の有機溶剤回収システム。
  8. 脱着排出管に、さらに冷却器を設けた請求項7記載の有機溶剤回収システム。
  9. 気液分離器の液槽から洗浄槽の液槽へ有機溶剤凝縮液を送り込む搬送手段をさらに設けた請求項7または8記載の有機溶剤回収システム。
  10. 吐出配管から洗浄槽内部に戻す有機溶剤蒸気の濃度を調整する吐出濃度調整手段を備えた請求項1〜9のいずれかに記載の有機溶剤回収システム。
  11. 吐出濃度調整手段として、脱着用ポンプの能力を変化させて行う請求項10記載の有機溶剤回収システム。
  12. 吐出濃度調整手段として、ガス濃度検知器と、温度検知器と、これら検知器の情報に基づき脱着用ポンプの能力を制御する制御装置とを備えた請求項11記載の有機溶剤回収システム。
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