JP2007095607A - 電気光学装置、電子機器、および電気光学装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 液状組成物を塗布、乾燥させて薄膜を形成するにあたって、薄膜の形成位置精度をさらに向上することのできる電気光学装置、電子機器、および電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 電気光学装置の製造方法において、隔壁112を形成した後、隔壁12の内側に液状組成物を塗布、乾燥させて、発光素子の正孔注入・輸送層や発光層を形成する。その際、隔壁112の上部を構成する有機物隔壁112aの表面に対してプラズマ処理を利用して、液状組成物に対する撥液性を高めるための微細な凹凸を多数形成しておく。
【選択図】 図2
【解決手段】 電気光学装置の製造方法において、隔壁112を形成した後、隔壁12の内側に液状組成物を塗布、乾燥させて、発光素子の正孔注入・輸送層や発光層を形成する。その際、隔壁112の上部を構成する有機物隔壁112aの表面に対してプラズマ処理を利用して、液状組成物に対する撥液性を高めるための微細な凹凸を多数形成しておく。
【選択図】 図2
Description
本発明は、電気光学装置、電子機器および電気光学装置の製造方法に関するものである。
近年、有機蛍光材料等の発光材料を液状組成物とし、この液状組成物を基材上にインクジェット法により吐出することにより、発光材料のパターニングを行う方法を採用して、陽極および陰極の間に該発光材料からなる発光層が挟持された構造の有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置の開発が行われており、かかる有機EL装置は、例えば、複写機などの画像形成装置のラインヘッドや、表示装置などといった電気光学装置として用いられる。
また、液状組成物を吐出する際、所定領域から液状組成物がはみ出ないように、液状組成物の塗布領域をバンクと称せられる隔壁で囲むとともに、隔壁の少なくとも上部を有機物から構成することにより、隔壁に撥液性を付与する技術が提案されている(特許文献1参照)。
特開2003−249375号公報
近年、表示装置などでは画素の微細化が進んでおり、かかる微細化に対応するには、液状組成物の塗布位置の精度をさらに向上する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術で隔壁に撥液性を付すだけでは、塗布領域が微細化した場合には、塗布した液状組成物が隔壁を乗り越えて隣接する領域にはみ出すのを確実に防止することができないという問題点がある。
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、液状組成物を塗布、乾燥させて薄膜を形成するにあたって、薄膜の形成位置精度をさらに向上することのできる電気光学装置、電子機器、および電気光学装置の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、複数の薄膜形成領域の全域にわたって薄膜が薄膜形成領域毎に独立して形成された電気光学装置において、前記複数の薄膜形成領域は、少なくとも上面に微細な凹凸が多数、形成された隔壁で囲まれていることを特徴とする。
本発明において、複数の薄膜形成領域の全域にわたって薄膜が当該薄膜形成領域毎に独立して形成された電気光学装置の製造方法において、前記薄膜形成領域を囲む隔壁を形成する隔壁形成工程と、当該隔壁の内側に液状組成物を塗布した後、乾燥させて前記薄膜を形成する薄膜形成工程とを有し、前記隔壁形成工程の後、前記薄膜形成工程を行う前に、前記隔壁の少なくとも上面に対して前記液状組成物に対する撥液性を高めるための微細な凹凸を多数形成する撥液化工程を有することを特徴とする。
本発明では、隔壁の少なくとも上面に微細な凹凸を多数形成してあるため、かかる隔壁の少なくとも上面は、薄膜を形成するための液状組成物に対して接触角が70°以上の撥液性、さらには接触角が150°以上の超撥液性を発揮する。このため、隔壁の内側に液状組成物を塗布した際、液状組成物が隔壁を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがない。従って、液状組成物の塗布位置の精度が高いので、隔壁により囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができる。
本発明において、前記薄膜は、例えば、発光素子の機能層であり、この場合、前記複数の薄膜形成領域の各々には、前記機能層の下層側に第1の電極が形成され、前記機能層の上層には第2の電極が形成されている。このような電気光学装置の製造方法では、前記隔壁形成工程の前に、前記複数の薄膜領域の各々に第1の電極を形成する第1の電極形成工程を行い、前記薄膜形成工程の後、前記薄膜の上層側に第2の電極を形成する第2の電極形成工程を行う。本発明において、機能層は、発光素子の発光層を含んでおり、さらに正孔注入・輸送層などが機能層に含まれている場合もある。
本発明において、前記隔壁の上面の算術平均表面粗さRaは、20nmから200nmであることが好ましい。すなわち、前記撥液化工程では、前記凹凸の形成により、前記隔壁の上面の算術平均表面粗さRaを20nmから200nmとすることが好ましい。
本発明において、前記隔壁の少なくとも上面の前記液状組成物に対する接触角が70°以上であることが好ましい。
本発明において、前記隔壁は、例えば、少なくとも上部が有機物により構成された有機物隔壁からなり、前記有機物隔壁の表面に前記凹凸が形成されている構成を採用することができる。
このような電気光学装置の製造方法では、前記撥液化工程において前記凹凸を形成するには、前記有機物隔壁の表面に対して、アルゴン含有雰囲気中で当該有機物隔壁表面にスパッタリング効果を有する条件でのプラズマ処理を行う。また、前記撥液化工程において前記凹凸を形成するには、フッ素含有雰囲気中でのプラズマ処理を行った後、当該有機物隔壁の表面をエッチング可能な条件でプラズマ処理を行う。ここで、前記撥液化工程では、前記プラズマ処理により前記凹凸を形成した後、前記有機物隔壁の少なくとも最表層をフッ素化することが好ましい。この場合、前記有機物隔壁の少なくとも最表層にはフッ素が含まれている構成となる。
本発明において、前記隔壁形成工程では、前記液状組成物に対して撥液性を備えた樹脂材料により前記有機物隔壁を形成することが好ましい。
本発明に係る電気光学装置は、複写機などの画像形成装置のラインヘッドや、表示装置などといった電子機器に用いられる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明は、複数の薄膜形成領域の全域にわたって薄膜が薄膜形成領域毎に独立して形成された電気光学装置に適用されるものであるが、以下の説明では、有機EL装置において、各画素毎に発光素子(有機EL素子の機能層(正孔注入・輸送層および発光層)を形成する場合に本発明を適用した例を説明する。なお、なお、参照する図面において、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材に縮尺は実際のものとは異なるように表している。
[実施の形態1]
図1は、本発明が適用される電気光学装置の一例としてのアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の電気的構成を示すブロック図である。図1に示す電気光学装置1は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101および信号線102の各交点付近に、画素領域100が設けられている。信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオラインおよびアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続され、走査線101には、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。画素領域100の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ112と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量7と、保持容量7によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極111(陽極/第1の電極)と、この画素電極111と陰極12(第2の電極)との間に挟まれた機能層110とが設けられている。ここで、画素電極111、機能層110および陰極12は、有機EL素子からなる発光素子5を構成している。
図1は、本発明が適用される電気光学装置の一例としてのアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の電気的構成を示すブロック図である。図1に示す電気光学装置1は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に並列に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有するとともに、走査線101および信号線102の各交点付近に、画素領域100が設けられている。信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオラインおよびアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続され、走査線101には、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。画素領域100の各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ112と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ112を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量7と、保持容量7によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極111(陽極/第1の電極)と、この画素電極111と陰極12(第2の電極)との間に挟まれた機能層110とが設けられている。ここで、画素電極111、機能層110および陰極12は、有機EL素子からなる発光素子5を構成している。
かかる構成によれば、走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ112がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量7に保持され、該保持容量7に状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、さらに機能層110を介して陰極12に電流が流れる。その結果、機能層110は、これを流れる電流量に応じて発光する。
[各画素領域の構成]
図2は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の断面図である。有機EL装置の基本的な構造は周知であるため、その詳細説明は省略するが、本形態の電気光学装置1の断面構造は概ね、図2に示すように表される。図2には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色分の画素領域100が示されており、基板2上には、薄膜トランジスタなどにより画素駆動回路が形成された回路素子部14と、画素電極111と、機能層110を備えた発光素子部11と、陰極12とが順次積層された構成になっている。陰極層12の表面側には、封止樹脂、封止基板、封止缶などにより封止部が構成されるが、本発明と直接的な関係がないので、その図示を省略してある。
図2は、本発明の実施の形態1に係る電気光学装置の断面図である。有機EL装置の基本的な構造は周知であるため、その詳細説明は省略するが、本形態の電気光学装置1の断面構造は概ね、図2に示すように表される。図2には、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色分の画素領域100が示されており、基板2上には、薄膜トランジスタなどにより画素駆動回路が形成された回路素子部14と、画素電極111と、機能層110を備えた発光素子部11と、陰極12とが順次積層された構成になっている。陰極層12の表面側には、封止樹脂、封止基板、封止缶などにより封止部が構成されるが、本発明と直接的な関係がないので、その図示を省略してある。
本形態の電気光学装置1において、陰極12はAlなどの反射材料から構成されており、機能層110から基板2側に発した光は、回路素子部14および基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、機能層110から基板2の反対側に発した光は、陰極12により反射されて回路素子部14および基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。なお、陰極12として、ITO、Pt、Ir、Ni、Pdなどの透明な材料を用い、かつ、画素電極111の下層側に反射層を形成すれば、陰極12側から光を出射させることができる。
以下、各部分の構成を具体的に説明する。まず、回路素子部14では、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141aおよびドレイン領域141bが高濃度P(リン)イオン打ち込みにより形成され、Pが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。また、回路素子部14には、下地保護膜2cおよび半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143およびゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に形成されている。また、層間絶縁膜144a、144bには、これらの絶縁膜を貫通して半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されたコンタクトホール145、146が形成されている。
第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定形状にパターニング形成されており、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続され、他方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。なお、回路素子部14には、前述した保持容量7およびスイッチング用の薄膜トランジスタ142も形成されているが、図2ではこれらの図示を省略してある。
次に、発光素子部11には、複数の画素電極111の上層に積層された機能層110と、隣接する機能層110の間に形成されて各機能層110の周りを囲むバンク状の隔壁11とが構成されている。本形態では、機能層110が本発明における薄膜に相当し、隔壁11で囲まれた領域が本発明における薄膜形成領域に相当する。
機能層110上には陰極12が形成されており、画素電極111、機能層110および陰極12によって発光素子5が構成されている。
機能層110は、画素電極111上に積層された正孔注入・輸送層110aと、正孔注入・輸送層110a上に積層された発光層110bとから構成されている。なお、発光層110bに隣接してその他の機能を有する他の機能層、例えば、電子輸送層を形成することもある。正孔注入・輸送層110aは、正孔を発光層110bに注入する機能を有するとともに、正孔を正孔注入・輸送層110a内部において輸送する機能を有する。また、発光層110bでは、正孔注入・輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子が発光層で再結合し、発光が行われる。ここで、発光層110bは、各画素が対応する色毎に、赤色(R)に発光する赤色発光層、緑色(G)に発光する緑色発光層、および青色(B)に発光する青色発光層として形成されている。
正孔注入・輸送層110aは、後述するように、正孔注入・輸送層形成材料および極性溶媒を含む液状組成物を隔壁112の内側に吐出してから極性溶媒を除去して形成されたものである。発光層110bも、発光層形成材料および非極性溶媒を含む液状組成物を隔壁112の内側に吐出してから非極性溶媒を除去して形成されたものである。
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって機能層110に電流を流す役割を果たす。陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。なお、発光層112bの材料によっては発光効率を高めることを目的に、発光層110と陰極12との間にLiFを形成する場合もある。ここで、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等を用いることができる。
(隔壁の構成)
隔壁112は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物を塗布する範囲を規定するものであり、本形態では、下層側(基板2側)に位置する無機物隔壁112aと、この無機物隔壁112aの上層に積層された有機物隔壁112bとから構成されている。ここで、無機物隔壁112aは、有機物隔壁112bの下端部よりも画素電極111の中央側に向けてはみ出している。なお、無機物隔壁112aおよび有機物隔壁112は、一部が画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されているが、画素電極111の外周縁からわずかに離れた位置に隔壁112が形成されることもある。
隔壁112は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物を塗布する範囲を規定するものであり、本形態では、下層側(基板2側)に位置する無機物隔壁112aと、この無機物隔壁112aの上層に積層された有機物隔壁112bとから構成されている。ここで、無機物隔壁112aは、有機物隔壁112bの下端部よりも画素電極111の中央側に向けてはみ出している。なお、無機物隔壁112aおよび有機物隔壁112は、一部が画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されているが、画素電極111の外周縁からわずかに離れた位置に隔壁112が形成されることもある。
このような構成の隔壁112において、無機物隔壁112aは、例えば、SiO、SiO2、TiO2等の無機材料からなり、その膜厚は、例えば50〜200nmの範囲である。
有機物隔壁112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶媒性に優れたレジストから形成され、その厚さは、例えば0.1〜3.5μmの範囲である。
このような隔壁112において、無機物隔壁112aは、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対して親液性を備えている。また、画素電極111の無機物隔壁112aからの露出部分も、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対して親液性を備えている。このような親液性は、後述する製造方法で説明するように、無機物隔壁112a、および画素電極111の無機物隔壁112aからの露出部分に対して、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって実現できる。
これに対して、有機物隔壁112bは、その上面112fを含めた表面全体が、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対して撥液性を備えている。このような撥液性を実現するために、本発明では、有機物隔壁112bとしては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対して撥液性を備えた樹脂材料により形成されている。
また、有機物隔壁112bは、その上面112fを含めた表面全体に微細な凹凸が多数、形成され、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが20nm〜200nmである。かかる凹凸の形成は、有機物隔壁112bがアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等から形成されていることによる撥液性に加えて、接触面積が極めて小さいことにより、撥液性を発揮する。すなわち、表面に算術平均表面粗さRaが10nm以上になるように微細な凹凸を形成すると、接触角が大になって撥液性を発揮する。従って、有機物隔壁112bの表面は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。このような撥液性を実現するにあたって、本形態では、有機物隔壁112bの表面には、製造方法を後述するとおり、酸素を処理ガスとするプラズマ処理が施されている。
(電気光学装置1の製造方法)
図3〜図6を参照して本形態の電気光学装置1の製造方法を説明する。図3は、本形態の電気光学装置1の製造工程を示す工程図である。図4〜図6は、本形態の電気光学装置1の製造工程を示す工程断面図である。
図3〜図6を参照して本形態の電気光学装置1の製造方法を説明する。図3は、本形態の電気光学装置1の製造工程を示す工程図である。図4〜図6は、本形態の電気光学装置1の製造工程を示す工程断面図である。
図3に示すように、本形態の電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。なお、製造方法はこれに限られるものではなく必要に応じてその他の工程が除かれる場合、また追加される場合もある。
以下、図4〜図6も参照して、上記の各工程を説明する。図4(a)に示す隔壁形成工程ST11では、まず、無機物隔壁形成工程ST111として、基板2上の所定の位置(機能層110の形成領域(薄膜形成領域)を囲む位置)に無機物隔壁112aを形成する。このような無機物隔壁112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機材料をCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって、例えば50〜200nmの厚さに成膜した後、フォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより形成される。
次に、図4(b)に示す有機物隔壁形成工程ST112では、無機物隔壁112a上に有機物隔壁112bを形成する。このような有機物隔壁112bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を全面に形成した後、フォトリソグラフィ技術等によりパターニングすることにより形成される。ここで、有機物隔壁112bの厚さは、0.1〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後述する正孔注入・輸送層および発光層の合計厚より有機物隔壁112bが薄く、発光層110bが溢れてしまうので好ましくない。また、厚さが3.5μmを越えると、陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるので好ましくない。また、有機物隔壁112bの厚さを2μm以上にすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる。
次に、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、本形態では、アルゴン含有雰囲気中で有機物隔壁112b表面にスパッタリング効果を有する条件でプラズマ処理ST121を行う。それには、プラズマに対する投入パワーと、自己バイアスとを別々に制御可能なプラズマ処理装置において、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを用い、かつ、比較的低い圧力で高いバイアスパワーを印加して、有機物隔壁112bの上面112fも含めて、表面全体にプラズマ処理を行う。このような条件ではスパッタリング効果が高いため、そのスパッタリング効果により、有機物隔壁112bの表面には微細な凹凸が多数形成され、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが20nm〜200nmとなる。かかる凹凸は、有機物隔壁112bがアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等から形成されていることによる撥液性に加えて、接触面積が極めて小さいことにより、撥液性を発揮する。すなわち、表面に算術平均表面粗さRaが10nm以上になるように微細な凹凸を形成すると、撥液性を発揮する。従って、有機物隔壁112bの表面は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。ここで、有機物隔壁112bの表面の算術平均表面粗さRaが1000nmを超えるまでプラズマ処理を行うと、有機物隔壁112bの膜質も変化してしまうため、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが10nm以上、1000nm以下が好ましく、20nm〜200nmがより好ましい。
なお、このプラズマ処理ST121では、ラジカルによる反応も副次的に起こるので、無機物隔壁112a、および画素電極111の無機物隔壁112aからの露出部分にもプラズマ処理が施され、その表面では、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する親液性が向上する。また、画素電極111は、プラズマ処理により、洗浄、仕事関数の調整も同時に行われる。
次に、図5(a)に示す正孔注入・輸送層形成液塗布工程ST13では、例えば、インクジェットヘッドH1と基板2とを相対的に移動させながら、インクジェットヘッドH1の複数のノズルH2から正孔注入・輸送層形成材料を含む液状組成物を画素電極111上に吐出する。こで、画素電極111の周囲には隔壁112が形成されており、インクジェットヘッドH1のノズルH2から吐出された液滴110cは、隔壁112で囲まれた領域に着弾し、画素電極111上で広がる。その際、液滴110cが所定の吐出位置からはずれて隔壁112の上面112f上に吐出されたとしても、上面112fは撥液性を備えているため、液滴110cで濡れることがなく、はじかれた液滴110cが隔壁112内に転がり込む。ここで、液状組成物としては、ポリオレフィン誘導体である3、4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)や、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1、1−ビス−(4−N、N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の正孔注入・輸送層形成材料を極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。なお、正孔注入・輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各画素で同じ材料を用いても良く、各画素で組成を変えても良い。
次に、図5(b)に示す正孔注入・輸送層定着工程ST14を行う。それには、吐出後の液状組成物を加熱、乾燥処理し、液状組成物に含まれる極性溶媒を蒸発させ、正孔注入・輸送層110aを定着させる。なお、上記の定着処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入・輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を完全に除去することが好ましい。
次に、発光層110bを形成するが、その前に正孔注入・輸送層110aに対する表面改質工程を行うことがある。発光層形成工程ST15では、正孔注入・輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる液状組成物の溶媒として、正孔注入・輸送層110aに対して不溶な非極性溶媒を用いる。しかしその一方で正孔注入・輸送層110aは、非極性溶媒に対する親和性が低いため、非極性溶媒を含む液状組成物を正孔注入・輸送層110a上に吐出しても、正孔注入・輸送層110aと発光層110bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層110bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、発光層形成工程ST15の前に、発光層110bを形成する際に用いる液状組成物の非極性溶媒と同一溶媒またはこれに類する溶媒からなる表面改質材、例えば、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、トルエン、キシレン、あるいはそれらの混合物等をインクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法またはディップ法により正孔注入・輸送層110a上に塗布した後に乾燥させる。このような表面改質工程を行うことで、正孔注入・輸送層110aの表面が非極性溶媒になじみやすくなり、この後の工程で、発光層形成材料を含む液状組成物を正孔注入・輸送層110aに均一に塗布することができる。なお、上記の表面改質材に、正孔輸送性材料を溶解した組成物をインクジェット法により正孔注入・輸送層110a上に塗布して乾燥させても良い。
次に、図6(a)に示す発光層形成工程ST15では、例えば、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動させながら、インクジェットヘッドH5の複数のノズルH6から発光層形成材料を含む液状組成物を正孔注入・輸送層110a上に吐出する。その際、発光層形成用の液状組成物は、各画素が対応する色に応じた組成の液状組成物が吐出される。ここで、正孔注入・輸送層110aの周囲には隔壁112が形成されており、インクジェットヘッドH5のノズルH6から吐出された液滴110eは、隔壁112で囲まれた領域に着弾し、正孔注入・輸送層110a上で広がる。その際、液滴110eが所定の吐出位置からはずれて隔壁112の上面112f上に吐出されたとしても、上面112fは撥液性を備えているため、液滴110eで濡れることがなく、はじかれた液滴110eが隔壁112内に転がり込む。
このような液状組成物としては、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9、10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープした発光層形成材料を非極性溶媒に配合したものを用いる。発光層形成材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。また、非極性溶媒としては、正孔注入・輸送層110aに対して不溶なものが好ましく、例えば、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を用いることができる。このような非極性溶媒を発光層形成用の液状組成物に用いることにより、正孔注入・輸送層110aを再溶解させることなく発光層形成用の液状組成物を塗布できる。
次に、図6(b)に示す発光層定着工程を行う。それには、吐出後の液状組成物を加熱、乾燥処理し、液状組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、発光層110bを定着させる。なお、上記の定着処理は、例えば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度として5〜10分行う。圧力が低すぎると液状組成物が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、非極性溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が隔壁112の壁面に多く付着してしまうので好ましくない。なお、その他の乾燥の手段としては、遠赤外線照射法、高温窒素ガス吹付法等を例示できる。
このようにして、画素電極111上に正孔注入・輸送層110aおよび発光層110bを形成した後は、図示を省略するが、対向電極形成工程において、発光層110bおよび有機物隔壁112bの全面に陰極12(対向電極)を形成した後、封止樹脂、封止基板、封止缶などで陰極12の表面を覆う。
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、有機物隔壁112bの表面は、微細な凹凸の形成により、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができる。
以上説明したように、本形態では、有機物隔壁112bの表面は、微細な凹凸の形成により、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができる。
また、有機物隔壁112bの撥液性を高めた分、隔壁112を低くできるので、陰極12のカバレッジ性を向上することができる。
さらに、有機物隔壁112bの撥液性を高めるにあたって、プラズマ処理を利用しているので、同時に画素電極111の親液性を高めることができる。
[実施の形態2]
図7は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。なお、本形態および後述する形態はいずれも、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
図7は、本発明の実施の形態2に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。なお、本形態および後述する形態はいずれも、基本的な構成が実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
図7に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、実施の形態1では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、スパッタリング効果が高い条件でのプラズマ処理を1回のみ行う構成であったが、本形態では、2回のプラズマ処理ST121、ST122を行う。
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、実施の形態1では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、スパッタリング効果が高い条件でのプラズマ処理を1回のみ行う構成であったが、本形態では、2回のプラズマ処理ST121、ST122を行う。
すなわち、プラズマに対する投入パワーと、自己バイアスとを別々に制御可能なプラズマ処理装置において、まず、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを用い、かつ、比較的低い圧力で高いバイアスパワーを印加して、有機物隔壁112bの表面にプラズマ処理ST121を行う。このような条件ではスパッタリング効果が高いため、そのスパッタリング効果により、有機物隔壁112bの表面には微細な凹凸が多数形成される。
次に、同一のプラズマ処理装置において、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを用いてプラマズ処理ST122を行うが、その際の条件は、バイアスパワーを低く設定し、ラジカル反応が主体に起こる条件である。その結果、先に行ったプラズマ処理ST121で発生した残滓を除去でき、かつ、無機物隔壁112a、および画素電極111の無機物隔壁112aからの露出部分の表面では親液性が向上する。また、画素電極111は、プラズマ処理により、洗浄、仕事関数の調整も同時に行われる。また、このような条件でのプラマズ処理では、先に行ったプラズマ処理ST121で有機物隔壁112bの表面に形成した凹凸はそのまま転写されることになる。従って、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが20nm〜200nmとなる。それ故、有機物隔壁112bの表面は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。また、プラズマ処理条件を変えて有機物隔壁112bの撥液性を高めるため、各処理を連続して行うことができ、生産効率が高い。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
[実施の形態3]
図8は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図8に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、本形態では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、2回のプラズマ処理ST321、ST322を行う。
図8は、本発明の実施の形態3に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図8に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、本形態では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、2回のプラズマ処理ST321、ST322を行う。
第1回目のプラズマ処理ST321では、フッ素含有雰囲気内で、有機物隔壁112aの表面を簡単にフッ素化する程度の条件でプラズマ処理を行い、最表層の数nm〜数十nmをフッ素化する。このようなプラズマ処理では、各種のフルオロカーボンガス、SF6ガス、NF3ガスを用いる。
次に、第2回目のプラズマ処理ST322では、酸素含有雰囲気内で、中程度のバイアスを印加しながら有機物隔壁112aの表面にプラズマ処理を行い、有機物隔壁112aの表面をエッチングする。その結果、第1回目のプラズマ処理ST322において、フッ素化された表面のうち、厚くフッ素化された部分はエッチング速度が遅く、薄くしかフッ素化されなかった部分はエッチング速度が速いので、有機物隔壁112bの表面には微細な凹凸が多数形成される。従って、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが20nm〜200nmとなる。それ故、有機物隔壁112bの表面は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が70°以上の撥液性を備えており、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。また、プラズマ処理条件を変えて有機物隔壁112bの撥液性を高めるため、各処理を連続して行うことができ、生産効率が高い。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
[実施の形態4]
図9は、本発明の実施の形態4に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図9に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、本形態では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、3回のプラズマ処理ST321、ST322、ST323を行う。
図9は、本発明の実施の形態4に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図9に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、本形態では、図4(c)に示す撥液化工程ST12において、3回のプラズマ処理ST321、ST322、ST323を行う。
第1回目のプラズマ処理ST321では、実施の形態3と同様、フッ素含有雰囲気内で、有機物隔壁112aの表面を簡単にフッ素化する程度の条件でプラズマ処理を行い、最表層の数nm〜数十nmをフッ素化する。このようなプラズマ処理では、各種のフルオロカーボンガス、SF6ガス、NF3ガスを用いる。
次に、第2回目のプラズマ処理ST322では、実施の形態3と同様、酸素含有雰囲気内で、中程度のバイアスを印加しながら有機物隔壁112aの表面にプラズマ処理を行い、有機物隔壁112aの表面をエッチングする。その結果、第1回目のプラズマ処理ST321において、フッ素化された表面のうち、厚くフッ素化された部分はエッチング速度が遅く、薄くしかフッ素化されなかった部分はエッチング速度が速いので、有機物隔壁112bの表面には微細な凹凸が多数形成される。従って、有機物隔壁112bの表面は、算術平均表面粗さRaが20nm〜200nmとなる。
次に、第3回目のプラズマ処理ST323では、CF4などのフロオロカーボンを含有する酸素含有雰囲気内で、低レベルのバイアスを印加しながら有機物隔壁112aの表面にプラズマ処理を行い、有機物隔壁112aの表面をフッ素化し、撥液性を高める。従って、本形態では、有機物隔壁112bがアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等から形成されていることによる撥液性に加えて、凹凸の形成により液状組成物との接触面積が極めて小さく、かつ、有機物隔壁112bの表面がフッ素化されているため、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が100°以上の撥液性を備え、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができるなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。また、プラズマ処理条件を変えて有機物隔壁112bの撥液性を高めるため、各処理を連続して行うことができ、生産効率が高い。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
[実施の形態5]
図10は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図11は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置1の断面図である。図10に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、実施の形態1では、隔壁形成工程ST11において無機物隔壁形成工程ST111と有機物隔壁形成工程ST112とを行ったが、本形態では、隔壁形成工程ST11において、有機物隔壁112bを形成する有機物隔壁形成工程ST112のみを行い、無機物隔壁形成工程を行わない。従って、本形態では、図11に示すように、隔壁112の全体が有機物隔壁112bによって構成されている。
図10は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置1の製造方法を示す工程図である。図11は、本発明の実施の形態5に係る電気光学装置1の断面図である。図10に示すように、本形態でも、実施の形態1と同様、電気光学装置1を製造するにあたっては、素子回路部14を形成した後、以下の工程
ST11:隔壁形成工程
ST12:撥液化工程
ST13:正孔注入・輸送層形成液塗布工程
ST14:正孔注入・輸送層定着工程
ST15:発光層形成液塗布工程
ST16:発光層定着工程
を行う。但し、実施の形態1では、隔壁形成工程ST11において無機物隔壁形成工程ST111と有機物隔壁形成工程ST112とを行ったが、本形態では、隔壁形成工程ST11において、有機物隔壁112bを形成する有機物隔壁形成工程ST112のみを行い、無機物隔壁形成工程を行わない。従って、本形態では、図11に示すように、隔壁112の全体が有機物隔壁112bによって構成されている。
ここで、撥液化工程ST12では、実施の形態1〜4のいずれの方法を採用してもよいが、例えば、実施の形態4と同様、3回のプラズマ処理ST321、322、323を行う。すなわち、第1回目のプラズマ処理ST321ではフッ素含有雰囲気内でプラズマ処理を行い、第2回目のプラズマ処理ST322では、酸素含有雰囲気内で、中程度のバイアスを印加しながら有機物隔壁112aの表面にプラズマ処理を行い、有機物隔壁112aの表面をエッチングする。そして、第3回目のプラズマ処理ST323では、CF4などのフロオロカーボンを含有する酸素含有雰囲気内で、低レベルのバイアスを印加しながら有機物隔壁112aの表面にプラズマ処理を行い、有機物隔壁112aの表面をフッ素化し、撥液性を高める。従って、有機物隔壁112bの表面は、正孔注入・輸送層110aや発光層110bを形成するための液状組成物に対する接触角が100°以上の撥液性を備え、さらには、接触角が150°以上の超撥液性を備えている。よって、正孔注入・輸送層形成用の液状組成物および発光層形成用の液状組成物を隔壁112の内側に塗布した際、液状組成物が隔壁112を乗り越えて隣接する領域にはみ出すことがないので、隔壁112で囲まれた領域が狭い場合でも、液状組成物を正確に塗布することができる。その他の構成は実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
[その他の実施の形態]
本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記形態では、有機EL装置において、発光素子5を形成するのに本発明を適用したが、薄膜が隔壁により囲まれた領域内の全域にわたって形成されている場合であれば、カラーフィルタを形成するのに適用してもよい。このようなカラーフィルタは、例えば、有機EL装置において、白色光を出射する発光素子5を形成し、この白色光をカラーフィルタに通すことによりカラー画像を表示するのに利用される。また、カラーフィルタは、例えば、電気光学装置のうち、液晶装置において、カラー画像を表示するのに利用される。さらに、液状組成物の塗布、乾燥により薄膜を配線や電極として形成する場合に本発明を適用してもよい。
本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記形態では、有機EL装置において、発光素子5を形成するのに本発明を適用したが、薄膜が隔壁により囲まれた領域内の全域にわたって形成されている場合であれば、カラーフィルタを形成するのに適用してもよい。このようなカラーフィルタは、例えば、有機EL装置において、白色光を出射する発光素子5を形成し、この白色光をカラーフィルタに通すことによりカラー画像を表示するのに利用される。また、カラーフィルタは、例えば、電気光学装置のうち、液晶装置において、カラー画像を表示するのに利用される。さらに、液状組成物の塗布、乾燥により薄膜を配線や電極として形成する場合に本発明を適用してもよい。
[電子機器への搭載例]
本発明を適用した電気光学装置を備えた電子機器の具体例について説明する。図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、符号600は携帯電話本体を示し、符号601は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。図12(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)において、符号700は情報処理装置、符号701はキーボードなどの入力部、符号703は情報処理装置本体、符号702は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(c)において、符号800は時計本体を示し、符号801は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。
本発明を適用した電気光学装置を備えた電子機器の具体例について説明する。図12(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図12(a)において、符号600は携帯電話本体を示し、符号601は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。図12(b)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図12(b)において、符号700は情報処理装置、符号701はキーボードなどの入力部、符号703は情報処理装置本体、符号702は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。図12(c)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図12(c)において、符号800は時計本体を示し、符号801は前記の電気光学装置を用いた表示部を示している。
1・・電気光学装置、2・・基板、5・・発光素子、12・・陰極(第2の電極)、100・・画素領域、110・・機能層、110a・・正孔注入・輸送層(機能層)、110b・・発光層(機能層)、111・・画素電極(第1の電極)、112・・隔壁、112a・・無機物隔壁、112b・・有機物隔壁
Claims (14)
- 複数の薄膜形成領域の全域にわたって薄膜が薄膜形成領域毎に独立して形成された電気光学装置において、
前記複数の薄膜形成領域は、少なくとも上面に微細な凹凸が多数、形成された隔壁で囲まれていることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1において、前記薄膜は、発光素子の機能層であり、
前記複数の薄膜形成領域の各々には、前記機能層の下層側に第1の電極が形成され、前記機能層の上層には第2の電極が形成されていることを特徴とする電気光学装置。 - 請求項1または2において、前記隔壁の上面の算術平均表面粗さRaが20nmから200nmであることを特徴とする電気光学装置。
- 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記隔壁は、少なくとも上部が有機物により構成された有機物隔壁からなり、前記有機物隔壁の表面に前記凹凸が形成されていることを特徴とする電気光学装置。
- 請求項4において、前記有機物隔壁の少なくとも最表層にはフッ素が含まれていることを特徴とする電気光学装置。
- 請求項1ないし5のいずれかに規定する電気光学装置を備えていることを特徴とする電子機器。
- 複数の薄膜形成領域の全域にわたって薄膜が当該薄膜形成領域毎に独立して形成された電気光学装置の製造方法において、
前記薄膜形成領域を囲む隔壁を形成する隔壁形成工程と、
当該隔壁の内側に液状組成物を塗布した後、乾燥させて前記薄膜を形成する薄膜形成工程とを有し、
前記隔壁形成工程の後、前記薄膜形成工程を行う前に、前記隔壁の少なくとも上面に対して前記液状組成物に対する撥液性を高めるための微細な凹凸を多数形成する撥液化工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項7において、前記薄膜は、発光素子の機能層であり、
前記隔壁形成工程の前に、前記複数の薄膜領域の各々に第1の電極を形成する第1の電極形成工程を有し、
前記薄膜形成工程の後、前記薄膜の上層側に第2の電極を形成する第2の電極形成工程を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項7または8において、前記撥液化工程では、前記凹凸の形成により、前記隔壁の上面の算術平均表面粗さRaを20nmから200nmとすることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項7ないし9のいずれかにおいて、前記隔壁の少なくとも上面の前記液状組成物に対する接触角が70°以上であることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項7ないし10のいずれかにおいて、前記隔壁形成工程では、前記隔壁の少なくとも上部を有機物からなる有機物隔壁により形成し、
前記撥液化工程では、前記有機物隔壁の表面に対して、アルゴン含有雰囲気中で当該有機物隔壁表面にスパッタリング効果を有する条件でのプラズマ処理を行うことにより前記凹凸を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項7ないし10のいずれかにおいて、前記隔壁形成工程では、前記隔壁の少なくとも上部を有機物からなる有機物隔壁により形成し、
前記撥液化工程では、フッ素含有雰囲気中でのプラズマ処理を行った後、当該有機物隔壁の表面をエッチング可能な条件でプラズマ処理を行うことにより前記凹凸を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。 - 請求項11または12において、前記撥液化工程では、前記プラズマ処理により前記凹凸を形成した後、前記有機物隔壁の少なくとも最表層をフッ素化することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
- 請求項11ないし13のいずれかにおいて、前記隔壁形成工程では、前記液状組成物に対して撥液性を備えた樹脂材料により前記有機物隔壁を形成することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
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