JP2007095322A - 同軸ケーブルおよびシールドワイヤハーネス - Google Patents
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Abstract
【課題】電磁シールド層の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】この同軸ケーブル1は、中心導体3と、中心導体3上に被覆形成された第1絶縁層5と、第1絶縁層5上に被覆形成された電磁シールド層7とを備え、電磁シールド層7は、第1絶縁層5上に被覆形成された導体層7a,7bと、導体層7b上に第2絶縁層7dを介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立される磁性体層7cとを備える。
【選択図】図6
【解決手段】この同軸ケーブル1は、中心導体3と、中心導体3上に被覆形成された第1絶縁層5と、第1絶縁層5上に被覆形成された電磁シールド層7とを備え、電磁シールド層7は、第1絶縁層5上に被覆形成された導体層7a,7bと、導体層7b上に第2絶縁層7dを介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立される磁性体層7cとを備える。
【選択図】図6
Description
本発明は、車載用信号伝送用の同軸ケーブルに適した同軸ケーブルおよびシールドワイヤハーネスに関する。
従来の同軸ケーブル100は、図9の様に、中心導体103と、中心導体103上に被覆形成された絶縁層105と、絶縁層105上に被覆形成された導体層(内側から順に第1導体層107a、第2導体層107b)と、導体層107b上に被覆形成された磁性体層107cと、磁性体層107c上に被覆形成された外被109とを備えて構成される(特許文献1)。導体層107a,107bおよび磁性体層107cにより電磁シールド層107が構成されている。
一般に電磁シールド層107の電磁シールド効果SEは、電磁シールド層107の抵抗値をRs、自己インダクタンスをLsとすると、式1の様に与えれる。
式1より、電磁シールド層107の電磁シールド効果SEは、抵抗値Rsの増/減に応じて減/増し、また自己インダクタンスLsの増/減に応じて増/減する事が分かる。この事を考慮して、上記の従来の同軸ケーブル100では、電磁シールド効果SEを増加させるべく、電磁シールド層107を多層化(例えば導体層107a,107bおよび磁性体層107cの3層化)して電磁シールド層107の抵抗値Rsを減少させると共に、多層化した電磁シールド層107のうちの1層(例えば最外層)107cを磁性体層にして電磁シールド層107の自己インダクタンスLsを増加させている。
また、従来の同軸ケーブル100では、使用時には、中心導体103には例えば信号電流等の電流が通電され、導体層107a,107bには信号の帰路電流と共にノイズ電流等の電流が通電される。
上記の従来の同軸ケーブル100では、導体層107b上に直接に(即ち電気的に接続して)磁性体層107cが被覆形成されるので、使用時に、導体層107a,107b中の電流の一部が磁性体層107cに流出することになる。この点につき、本願発明者は、自身の研究により、導体層107a,107b中の電流が磁性体層107cに流出すると、電磁シールド層107の自己インダクタンスLsが低減することを発見している。
従来の同軸ケーブル100では、自己インダクタンスLsを増加させるために電磁シールド層107の最外層107cを磁性体層にしているが、導体層107a,107b中の電流が磁性体層107cに流出するので、上記の理由から、電磁シールド層107の自己インダクタンスLsの増加が妨げられているという欠点があった。
そこで、この発明の課題は、電磁シールド層の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる同軸ケーブルおよびシールドワイヤハーネスを提供することにある。
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、中心導体と、前記中心導体上に被覆形成された第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に被覆形成された電磁シールド層とを備え、前記電磁シールド層は、前記第1絶縁層上に被覆形成された導体層と、前記導体層上に第2絶縁層を介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立される磁性体層と、を備えるものである。
請求項2に記載の発明は、前記磁性体層は、前記電磁シールド層の最外層であるものである。
請求項3に記載の発明は、前記第2絶縁層は、絶縁性テープであるものである。
請求項4に記載の発明は、前記磁性体層は、鉄または鉄合金により形成されるものである。
請求項5に記載の発明は、前記導体層は、銅または銅合金により形成されるものである。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの端部に接続される回路基板と、を備え、前記同軸ケーブルの前記中心導体および前記導体層は、前記回路基板上の配線パターンに電気接続され、前記同軸ケーブルの前記磁性体層は、前記回路基板上の配線パターンに電気接続されないものである。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の同軸ケーブルと、前記同軸ケーブルの端部に接続されるコネクタと、を備え、前記同軸ケーブルの前記中心導体および前記導体層は、前記コネクタの接続端子に電気接続され、前記同軸ケーブルの前記磁性体層は、前記コネクタの接続端子に電気接続されないものである。
請求項1に記載の発明によれば、磁性体層は、導体層上に第2絶縁層を介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立されるので、使用時に、前記導体層を流れる電流が前記磁性体層に流れ込む事を防止でき、電磁シールド層の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる。
請求項2に記載の発明によれば、磁性体層は電磁シールド層の最外層であるので(即ち電磁シールド層の各層のうち磁界が最大となる層である最外層が磁性体層にされるので)、電磁シールド層中の各層のうちで最大の透磁率を有する磁性体層に大きな磁界を掛ける事ができ、電磁シールド層の電磁シールド性能を効果的に高める事ができる。
請求項3に記載の発明によれば、第2絶縁層は絶縁性テープであるので、入手容易な材料を用いて簡単な工程で導体層と磁性体層との間に絶縁層を介装できる。
請求項4に記載の発明によれば、磁性体層は鉄または鉄合金により形成されるので、安価且つ入手容易な材料を用いて高い電磁シールド性能を確保できる。
請求項5に記載の発明によれば、導体層は銅または銅合金により形成されるので、安価且つ入手容易な材料を用いて高い電磁シールド性能を確保できる。
請求項6に記載の発明によれば、同軸ケーブルの磁性体層は回路基板上の配線パターンに電気接続されないので、使用時に磁性体層を電気的に孤立させる事ができ、電磁シールド層の電磁シールド効果を効果的に高めたシールドワイヤハーネスを提供できる。
請求項7に記載の発明によれば、同軸ケーブルの磁性体層はコネクタの接続端子に電気接続されないので、使用時に磁性体層を電気的に孤立させる事ができ、電磁シールド層の電磁シールド効果を効果的に高めたシールドワイヤハーネスを提供できる。
<原理>
本願発明に係る同軸ケーブルの電磁シールド効果の原理を説明する。
本願発明に係る同軸ケーブルの電磁シールド効果の原理を説明する。
図1を参照して、一般に同軸ケーブルの電磁シールド層の自己インダクタンスLsは式2の様に与えられる。
式2中のIは、電磁シールド層に流れる電流であり、φは、電流Iにより生じる総磁束である。式2から、自己インダクタンスLsを増加させるにはφを増加させればよい事が分かる。
また、φは、電磁シールド層が多層(例えば内側から順に第1導体層、第2導体層、第3導体層の3層)の場合は式3−1および式3−2の様に与えられる。
式3−1および式3−2中のφn(n=1,2,3)は、第n導体層に交差する磁束であり、φoutは第3導体層の外側の磁束である。またHは電流Iにより生じる磁界であり、μは透磁率である。式3−2および式3−1から、φは、電磁シールド層の各部分での磁界Hと透磁率μとの積の和からの寄与を受ける事が分かる。
ここで、電磁シールド層中の磁界Hを概略的に把握するため、以下、電磁シールド層を円柱状導体と見なして磁界を考える。円柱状導体内の磁界Hは、その円柱状導体内を電流Iが均一に流れる場合は式4の様に与えられる。
式4中のr0は電磁シールド層の半径であり、rは電磁シールド層中の着目部分までの半径であり、Irは電流Iのうちの半径rの閉路(不図示)の内側を通過する電流である。式4より、磁界Hは、半径rが大きいほど(即ち電磁シールド層中では外側の層ほど)強くなる事が分かる。この事から、φを増加させるには、電磁シールド層の最外層(即ち電磁シールド層の各層中で磁界Hが最大となる層、即ち第3導体層)の透磁率を各層のうちで最大の透磁率に(即ち最外層を磁性体層に)すればよい事が分かる(尚、電磁シールド層の各層ともに磁性体層にすると、電磁シールド層の抵抗値Rsが増大し過ぎるので最外層(第3導体層)だけ磁性体層にする事が望ましい)。これが従来の同軸ケーブル100において電磁シールド層107の最外層(第3導体層)107cだけを磁性体層にしている理由である。
また式4から、半径rでの磁界Hは、半径rの閉路の内側を流れる電流Irに比例する事が分かる。即ち概略的に換言すると、第n導体層中の磁界Hnは、第n導体層の内側の層(即ち、第1導体層から第(n−1)導体層の各層)を流れる電流I1,…,In-1の総和(I1+…+In-1)に比例する事が分かる。この事から、式3−2中のφn(即ち第n導体層を交差する磁束)は、式5の様に、その層の透磁率μnとその層の内側の各層を流れる電流の総和(I1+…+In-1)との積の形に概算できる事が分かる。
式3−1および式5から、最大の透磁率(例えばμn)を有する層(例えば第n導体層)の内側の層(即ち第1導体層から第(n−1)導体層の各層)を流れる電流の総和(I1+…+In-1)を最大限に増加させれば、最大の透磁率μnと最大の電流(I1+…+In-1)との積の寄与により、φを効果的に増加できる事が分かる。究極的には、電磁シールド層中の電流Iを、第n導体層から第3導体層(最外導体層)の各層に流れない様にして、最大の透磁率μnを有する第n導体層の内側の各層(即ち、第1導体層から第(n−1)導体層の各層)に全て流れる様にすれば、φを効率良く最大限に増加できる。
以上の考察から、自己インダクタンスLsを効果的に増加させるには(即ちφを効果的に増加させるには)、図2の様に、電磁シールド層の最外層(第3導体層)だけを磁性体層にし、且つ電磁シールド層中の電流Iをその最外層(磁性体層)に流れない様にしてその最外層の内側の各層(第1導体層および第2導体層)に全て流れる様にすればよい事が分かる。実際的には、下記の<構成>で詳述する様に、第2導体層と磁性体層(第3導体層)との間に絶縁層(図2では不図示)を介装すると共に使用時に前記磁性体層を電気的に孤立させることにより、電磁シールド層中の電流Iが前記磁性体層には全く流れずに前記磁性体層(第3導体層)の内側の各層(第1導体層および第2導体層)に全て流れる様にしている。本願発明に係る同軸ケーブルでは、この様に自己インダクタンスLsを増加させることにより、従来の同軸ケーブル100よりも電磁シールド効果を増加させている。
次に、本願発明に係る同軸ケーブルの自己インダクタンスが従来の同軸ケーブル100の自己インダクタンスよりも増加しているか(即ち、本願発明に係る同軸ケーブルの電磁シールド効果が従来の同軸ケーブル100の電磁シールド効果よりも増加しているか)を理論計算で確認する。
ここでは、電磁シールド層に流れる電流Iの一部が磁性体層(最外層)に流れるか否かによって、自己インダクタンスLsの大小関係がどの様になるかを示せれば十分なので、計算便宜上、電磁シールド層の第1導体層および第2導体層をまとめて直線状円柱導体として扱って計算する。即ちこの計算では、電磁シールド層は、図4または図5の様に、第1導体層および第2導体層に相当する直線状円柱導体V1の外周に磁性体層V2が被覆されて構成される。そしてこの構成の下、本願発明に係る同軸ケーブルでは、図4の様に、電磁シールド層を流れる電流Iが全て、磁性体層V2に流れずに直線状円柱導体V1に流れる場合(以後、本願構造と呼ぶ)を考え、他方、従来の同軸ケーブル100では、図5の様に、電流IのうちαIが直線状円柱導体V1に流れ、残り(1−α)Iが磁性体層V2に流れる場合(以後、従来構造と呼ぶ)を考える。
まず直線状円柱導体V1(以後、基本構造と呼ぶ)の自己インダクタンスLsCを求める。基本構造の自己インダクタンスLsCは、図3を参照して、電磁気学における影像電流を用いた周知の計算技法を用いると、式6の様に与えられる。
尚、図3および式6中のφaは、直線状円柱導体V1内の磁束であり、φbは、直線状円柱導体V1の表面から厚さtまでの範囲の磁束であり、φcは、直線状円柱導体V1の表面上の厚さtから仮想直線状円柱導体V1’の表面上の厚さtまでの範囲の磁束であり、φdは、仮想直線状円柱導体V1’の表面から厚さtまでの範囲の磁束であり、φeは、仮想直線状円柱導体V1’内の磁束である。
直線状円柱導体V1と仮想直線状円柱導体V1’との構造対称性を考慮するとφa=φe、φb=φdの関係が成立するので、この関係を考慮すると式6は式7の様になる。
次に本願構造(本願発明に係る同軸ケーブル)の自己インダクタンスLsAを求める。本願構造の自己インダクタンスLsAは、図4を参照して、上記の基本構造の場合と同様の計算技法を用いると、式8の様に与えられる。
尚、式8中のφa’は、直線状円柱導体V1内の磁束であり、φb’は、磁性体層V2(厚さt)内の磁束であり、φc’は、磁性体層V2の表面から仮想磁性体層V2’(厚さt)の表面までの範囲の磁束であり、φd’は、仮想磁性体層V2’内の磁束であり、φe’は、仮想直線状円柱導体V1’内の磁束である。尚、本願構造の場合は、仮想直線状円柱導体V1’に影像電流Iが流れ、仮想磁性体層V2’には電流は流れない。
直線状円柱導体V1および磁性体層V2と仮想直線状円柱導体V1’および仮想磁性体層V2’との構造対称性を考慮するとφa’=φe’、φb’=φd’の関係が成立し、また本願構造と上記の基本構造の違いを考慮するとφa’=φa、φb’=μr・φb、φc’=φcの関係が成立するので、これらの関係を考慮すると、式8は式9の様になる。尚、μrは磁性体層V2,V2’の比透磁率である。
次に従来構造(従来の同軸ケーブル100)の自己インダクタンスLsBを求める。従来構造の自己インダクタンスLsBは、図5を参照して、上記の基本構造の場合と同様の計算技法を用いると、式10の様に与えられる。
尚、式10中のφa''は、直線状円柱導体V1内の磁束であり、φb''は、磁性体層V2(厚さt)内の磁束であり、φc''は、磁性体層V2の表面から仮想磁性体層V2’(厚さt)の表面までの範囲の磁束であり、φd''は、仮想磁性体層V2’内の磁束であり、φe''は、仮想直線状円柱導体V1’内の磁束である。尚、従来構造の場合は、仮想直線状円柱導体V1’には影像電流αIが流れ、仮想磁性体層V2’には影像電流(1−α)・I(但し、αは0<α<1である)が流れる。
直線状円柱導体V1および磁性体層V2と仮想直線状円柱導体V1’および仮想磁性体層V2’との構造対称性を考慮するとφa''=φe''、φb''=φd''の関係が成立し、また従来構造と上記の基本構造の違いを考慮するとφa''=α・φa、φb''=μr・α・φb、φc''=φcの関係が成立するので、これらの関係を考慮すると、式10は式11の様になる。尚、μrは磁性体の比透磁率である。
以上の計算結果から、本願構造の自己インダクタンスLsAと従来構造の自己インダクタンスLsCとの差ΔLsを計算すると、式12の様になる。
αは0<α<1なので、ΔLs>0となる事が分かる。即ち、本願構造の自己インダクタンスLsAの方が従来構造の自己インダクタンスLsCよりも大きい事が分かる。この事から、本願発明に係る同軸ケーブルの電磁シールド効果の方が従来の同軸ケーブル100の電磁シールド効果よりも増加している事が分かる。
<構成>
次に、上記<原理>に基づき本発明の実施の形態に係る同軸ケーブルの構成の一例を説明する。
次に、上記<原理>に基づき本発明の実施の形態に係る同軸ケーブルの構成の一例を説明する。
この実施の形態に係る同軸ケーブル1は、図6の様に、中心導体3と、中心導体3上に被覆形成された第1絶縁層5と、第1絶縁層5上に被覆形成された電磁シールド層7と、電磁シールド層7上に被覆形成された外被9とを備えて構成される。電磁シールド層7は、第1絶縁層5上に被覆形成された導体層(例えば内側から順に第1導体層7aおよび第2導体層7bの2層)と、導体層7b上に第2絶縁層7dを介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立される磁性体層(電磁シールド層7の最外層)7cとを備えて構成される。
中心導体3は、銅または銅合金(例えば錫メッキ軟銅)等の導電性金属により構成される。中心導体3として、複数本の導電性金属素線を撚り合わせた撚り線を用いてもよい。
第1絶縁層5は、中心導体3の周囲に架橋PE等の樹脂が押出成形されて形成される。
第1導体層7aおよび第2導体層7bはそれぞれ、複数本の導体素線(磁性体層7cよりも小さい透磁率を有し、導電性に優れた金属線)が網目状に編まれてなる導体編組として構成される。前記導体素線としては、例えば銅線や銅合金(軟銅線またはそれらを錫や亜鉛等でメッキしたもの)が用いられる。尚、第1導体層7aを、導体編組として構成する代わりに、テープ状の導体部材を第1絶縁層5上に巻き付けて(例えば縦添え、螺旋巻きまたは2重巻きで巻き付けて)構成してもよい。同様に、第2導体層7bも、導体編組として構成する代わりに、テープ状の導体部材を第1導体層7a上に巻き付けて構成してもよい。
第2絶縁層7dは、例えば絶縁性テープ(例えばPETテープ、ALPETテープ(片面にアルミ等の金属をコーティングしたPETテープ)または通常の通信ケーブルで用いられる紙テープ)を第2導体層7b上に巻き付けて形成される。巻き付け方としては、例えば縦添え、螺旋巻きまたは2重巻きして巻き付けられる。尚、第2絶縁層7dとして、絶縁性テープを用いずに、第1絶縁層5の場合と同様に第2導体層7bの周囲に架橋PE等の樹脂を押出成形して形成してもよい。
磁性体層7cは、鉄や例えば軟鉄等の鉄合金(導体層7a,7bよりも大きな透磁率を有する金属)からなる複数本の磁性体素線が網目状に編まれてなる磁性体編組として構成される。尚、磁性体層7cを、磁性体編組として構成する代わりに、テープ状の磁性体部材を第2導体層7b上に巻き付けて(例えば縦添え、螺旋巻きまたは2重巻きで巻き付けて)構成してもよい。
この様な同軸ケーブル1の製造方法としては例えば、従来の同軸ケーブル100の製造方法(周知の製造方法)において、第2導体層107b(本発明の第2導体層7bに対応)を被覆形成する工程と磁性体層107c(本発明の磁性体層7cに対応)を被覆形成する工程との間に、第2絶縁層7dを被覆形成する工程(例えば絶縁性テープを巻き付ける工程:この工程としては例えば既存の各種の通信ケーブルの製造工程で用いられているテープ巻き付け工程を用いればよい。)を追加すればよい。
即ち、周知の製造方法に基づき、中心導体3上に順に第1絶縁層5、第1導体層7aおよび第2導体層7bまでを被覆形成した中間製品を製造する。そして、磁性体層形成工程において、まず例えば周知の絶縁性テープの巻き付け方法に基づきその中間製品の第2導体層7b上に第2絶縁層7dとして絶縁性テープを巻き付け、次にその第2絶縁層7d上に磁性体層7cを被覆形成する。そして、外被形成工程においてその磁性体層7c上に外被9を形成する。この様にして同軸ケーブル1を製造すればよい。
この様に構成された同軸ケーブル1の端部は、例えば図7の様に、中心導体3が露出されると共に、電磁シールド層7のうち少なくとも第1導体層7aまたは第2導体層7bが露出される様にして端末加工される(図7では、電磁シールド層7のうち、第2導体層7bおよび磁性体層7cが露出され、第1導体層7aは第2導体層7bで覆われて露出されない場合が図示されている)。尚、磁性体層7cを外被9で被覆したままにして露出しない様にしてもよい。
そして、同軸ケーブル1の端部を回路基板11に接続する場合は、図8の様に、同軸ケーブル1の中心導体3および第2導体層7b(第1導体層7aおよび第2導体層7bのうちの露出した方)を回路基板11上の配線パターン11a,11bにハンダ付け等で電気的に接続し、同軸ケーブル1の磁性体層7cは、回路基板11上の配線パターン11a,11bに電気的に接続せずに電気的に孤立させる(図8では、中心導体3は回路基板11上の信号線11aに直接ハンダ付けで接続され、第2導体層7bは配線13を介して回路基板11上のグランド線11bにハンダ付けで接続されている)。同軸ケーブル1の端部に回路基板11を接続したシールドワイヤハーネスを構成する場合は、この様にして同軸ケーブル1の端部に回路基板11が電気接続される。
また、同軸ケーブル1の端部にコネクタを接続する場合は、図示省略されるが、同軸ケーブル1の中心導体3および第2導体層7b(第1導体層7aおよび第2導体層7bのうちの露出した方)を、コネクタの接続端子に電気接続し、同軸ケーブル1の磁性体層7cは、コネクタの接続端子に電気的に接続せずに電気的に孤立させる。同軸ケーブル1の端部にコネクタを接続したシールドワイヤハーネスを構成する場合は、この様にして同軸ケーブル1の端部にコネクタが電気接続される。
以上の様に構成された同軸ケーブル1によれば、磁性体層7cは、導体層7b上に第2絶縁層7dを介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立されるので、使用時に、導体層7a,7bを流れる電流Iが磁性体層7cに流れ込む事を防止でき、電磁シールド層7の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる。
また、磁性体層7cは電磁シールド層7の最外層であるので(即ち電磁シールド層7の各層7a,7b,7cのうち磁界Hが最大となる層である最外層7cが磁性体層にされるので)、電磁シールド層7中の各層7a,7b,7cのうちで最大の透磁率を有する磁性体層7cに大きな磁界を掛ける事ができ、電磁シールド層7を効果的に高める事ができる。
また、同軸ケーブル1の端部に回路基板11が接続される場合において、同軸ケーブル1の磁性体層7cは回路基板11上の配線パターン11a,11bに電気接続されないので、使用時に磁性体層7cを電気的に孤立させる事ができ、電磁シールド層7の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる。
また、同軸ケーブル1の端部にコネクタが接続される場合において、同軸ケーブル1の磁性体層7cはコネクタの接続端子に電気接続されないので、使用時に磁性体層7cを電気的に孤立させる事ができ、電磁シールド層7の電磁シールド効果を効果的に高める事ができる。
また、第2絶縁層7dは絶縁性テープであるので、入手容易な材料を用いて簡単な工程で第2導体層7bと磁性体層7cとの間に第2絶縁層7dを介装できる。
また、磁性体層7cは鉄または鉄合金により形成されるので、安価且つ入手容易な材料を用いて高い電磁シールド性能を確保できる。
また、導体層7a,7bは銅または銅合金により形成されるので、安価且つ入手容易な材料を用いて高い電磁シールド性能を確保できる。
また、従来の同軸ケーブル100の製造工程において第2絶縁層7dを被覆形成する工程を追加することにより製造するので、従来の同軸ケーブル100の製造工程を利用して容易且つ簡易に製造できる。特に第2絶縁層7dとして絶縁テープを用いる場合には、既存の各種の通信ケーブルの製造工程で用いられているテープ巻き付け工程を利用できて一層容易に且つ処理時間的にも殆ど増大させずに製造できる(従って、従来の同軸ケーブル100の製造工程における磁性体層形成工程内で連続的に実施できる)他、絶縁テープは薄いので同軸ケーブル1の外径を増大させること無く電磁シールド効果を増加できる。また、絶縁テープとしてPETテープを用いた場合は、PETテープは安価であるため、低コストで電磁シールド効果を増加できる。
尚、この実施の形態では、使用時に磁性体層7cを電気的に孤立して磁性体層7cに電流が流れない様にする。この様にすると電磁シールド層7の抵抗値Rsが大きくなるが、元々磁性体層7cは、導体層7a,7bよりも導電率が低いので、磁性体層7cを電気的に孤立させて電流が流れない様にしても、それによる抵抗値Rsの増加は問題にならない程度である。それよりも自己インダクタンスLsを最大限に増加させる効果の方が大きく、結局、電磁シールド効果を改善できる。
尚、この実施の形態では、電磁シールド層7中の導体層を2層(第1導体層7aおよび第2導体層7bの2層)の場合で説明したが、電磁シールド層7中の導体層を1層、3層またはN層(N:3以上の自然数)としても良い。尚、第2絶縁層7dとしてALPETテープを用いた場合において、そのALPETテープをそのアルミコーティング面を第2導体層7b側に向けて巻き付けることにより、そのアルミアルミコーティング層を第3導体層として機能させてもよい。この様にすれば、電磁シールド層7の抵抗値Rsを低減できて電磁シールド効果を増大できる。
尚、電磁シールド層中に導体層だけを含み磁性体層を含まない既存の同軸ケーブルに対し、その同軸ケーブルの外被を本願の第2絶縁層7dと見なし、その外被上に磁性体層7cを被覆形成し、その磁性体層7c上に実質的な外被(本願の外被9に対応する外被)を被覆形成することにより、本願発明に係る同軸ケーブル1を製造してもよい。この様にすれば、電磁シールド層中に磁性体層を含まない既存の同軸ケーブルを利用して本願発明に係る同軸ケーブル1を製造できる。
1 同軸ケーブル
3 中心導体
5 第1絶縁層
7 電磁シールド層
7a 第1導体層
7b 第2導体層
7c 磁性体層
7d 第2絶縁層
9 外皮
3 中心導体
5 第1絶縁層
7 電磁シールド層
7a 第1導体層
7b 第2導体層
7c 磁性体層
7d 第2絶縁層
9 外皮
Claims (7)
- 中心導体と、前記中心導体上に被覆形成された第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に被覆形成された電磁シールド層とを備え、
前記電磁シールド層は、
前記第1絶縁層上に被覆形成された導体層と、
前記導体層上に第2絶縁層を介して被覆形成され、使用時に電気的に孤立される磁性体層と、
を備えることを特徴とする同軸ケーブル。 - 前記磁性体層は、前記電磁シールド層の最外層であることを特徴とする請求項1に記載の同軸ケーブル。
- 前記第2絶縁層は、絶縁性テープであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の同軸ケーブル。
- 前記磁性体層は、鉄または鉄合金により形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の同軸ケーブル。
- 前記導体層は、銅または銅合金により形成されることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の同軸ケーブル。
- 請求項1〜請求項5の何れかに記載の同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの端部に接続される回路基板と、
を備え、
前記同軸ケーブルの前記中心導体および前記導体層は、前記回路基板上の配線パターンに電気接続され、前記同軸ケーブルの前記磁性体層は、前記回路基板上の配線パターンに電気接続されないことを特徴とするシールドワイヤハーネス。 - 請求項1〜請求項5の何れかに記載の同軸ケーブルと、
前記同軸ケーブルの端部に接続されるコネクタと、
を備え、
前記同軸ケーブルの前記中心導体および前記導体層は、前記コネクタの接続端子に電気接続され、前記同軸ケーブルの前記磁性体層は、前記コネクタの接続端子に電気接続されないことを特徴とするシールドワイヤハーネス。
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---|---|---|---|
JP2005279217A JP2007095322A (ja) | 2005-09-27 | 2005-09-27 | 同軸ケーブルおよびシールドワイヤハーネス |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2012011503A1 (ja) * | 2010-07-23 | 2012-01-26 | 矢崎総業株式会社 | ワイヤハーネス |
CN109326377A (zh) * | 2018-11-19 | 2019-02-12 | 无锡市明珠电缆有限公司 | 一种电力保障特种车辆用机车电缆及其制备方法 |
EP4220814A2 (en) | 2007-03-30 | 2023-08-02 | Sony Group Corporation | Battery pack |
-
2005
- 2005-09-27 JP JP2005279217A patent/JP2007095322A/ja active Pending
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