JP2007093900A - 光学素子およびそれを有する撮像装置 - Google Patents

光学素子およびそれを有する撮像装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 入射角度の変動に対する出射光束の分離幅の変動が少なく、良好なる光学的ローパス効果が得られる光学素子を得ること。
【解決手段】 入射光束が、出射するとき、互いに直交する偏光状態の光束で、所望の幅で分離した光束とする光学的な異方性を有する光学素子であって、該光学素子の材料は、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率N、該光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、該光学素子の入射面に垂直入射した光束が互いに直交する偏光状態の光束として、分離屈折するときの、分離角度が最大となる光軸軸の方向と入射面法線との成す角度をθmaxとするとき、
0.1<|n−n
θmax<θ
を満足すること。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学的な異方性を利用して光学的ローパス効果を得る光学素子及びそれを用いた撮像装置に関し、例えばCCDやMOS等の固体撮像素子を使用するデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像光学系に好適なものである。
CCDやMOS等の二次元固体撮像素子を用いたデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置は、被写体像を画素ピッチ毎にサンプリングすることで画像情報を得ている。
しかし、この画素ピッチの空間周波数より高い空間周辺数成分を持った被写体を撮影すると、その高周波成分が低周波に折り返り雑音成分として検出される。
また、単板式のカラー撮像素子を用いた場合、空間周波数の高い成分を持った被写体を撮影すると、画素の前方に配置されるカラーフィルターの配列によって決まる偽色雑音が発生する。
このような雑音成分を、画像情報を電気信号に変換した後に除去することは非常に難しい。
そこで、従来、その雑音成分を、光学的ローパスフィルタを用いて除去している。
ここで光学的ローパスフィルタとは、空間周波数的に高周波の光学信号を除去する光学作用を有する光学部材をいう。光学的ローパスフィルタとして、水晶の光束分離作用を利用した光学的ローパスフィルタが知られている(特許文献1〜4)。
水晶を用いた光学的ローパスフィルタでは、光学的な異方性媒質の光束分離作用を用いてローパス効果を得ている。
特許文献1、2では、カラーフィルタとしてストライプ上のフィルタを想定し、被写体の空間周波数がこのカラーフィルタと同期性を持ったときに発生する偽色信号を光学的ローパスフィルタで低減している。
具体的には、水晶等の複屈折性を有する平行平板によって光線を常光線と異常光線に分離して撮像面上に結像させる光学的ローパスフィルタを開示している。
特許文献2では、水晶の単結晶をその光学軸が平行平板の入出射面に対して略45度の角度をなすように切り出して使用する構成を開示している。
また、特許文献3、4では、カラーフィルタとして例えばベイヤー配列のカラーフィルタを想定し、複数枚の複屈折板を組み合わせることによって入射光線を常光線と異常光線に分離出射させて結像させている。これにより被写体の高周波数成分によって発生する偽解像信号や偽色信号の発生を効果的に低減させる構成を開示している。
さらに水晶よりも異方性の強い異方性媒質の光束分離作用を有する光学素子が知られている(特許文献5,6)。
特許文献5では、水晶よりも異方性の強いニオブ酸リチウム材料を用いることで、単位厚みあたりの光線の分離幅を大きく取り、これにより機械的な厚みを薄くした光学的ローパスフィルタを開示している。
しかしながら、一般にあまり強い異方性の材料を用いると分離幅が大きくなりすぎる。この結果所望の分離幅を得ようとすると厚みが薄くなりすぎてくる。そうすると材料の加工が難しくなり、さらに機械的な強度も弱くなってくる。
そこで、引用文献5では、光学素子の面法線と光学軸のなす角θを分離幅が最大となる角度45度からずらして、10°<θ<30°、60°<θ<80°の範囲で設定している。
特許文献6では、ニオブ酸リチウムの単結晶を平行に切り出して光学的ローパスフィルタを構成している。
ここでは、切り出す主面の法線が、結晶のx軸に対してy軸から46.1±20度、もしくは133.9±0度回転した位置より、z軸を中心にして ±3度回転した範囲内にある構成を開示している。
一般にニオブ酸リチウムは水晶に比べて屈折率差が大きいために、機械的な厚みを薄くすることが容易となる。
実公昭47−18688号公報 実公昭47−18689号公報 特開昭59−75222号公報 特開昭60−164719号公報 特開2001−147404号公報 特開2002−107540号公報
光学軸と入射面法線との角度が特定された異方性媒質より成る平行平板へ光束が入射するとき、光束の入射角度によって出射光束の分離幅が異なってくる。即ち光束の入射角度によって得られる光学的ローパス効果が異なってくる。
この為、光学的ローパスフィルタを撮像装置に用いても、光学的ローパスフィルタに入射する光束の入射角度に差があると、画面全体にわたり、均一な光学的ローパス効果を得るのが難しい。
この為、異方性媒質を用いた光学的ローパスフィルタは、材質の屈折率、入射面法線に対する光学軸の方向、厚さ等を適切に設定し、入射角度の変化によって光束の分離幅の変化を少なくすることが重要になっている。
本発明は、入射光束の入射角度の変動に対する出射光束の分離幅の変動が少なく、良好なる光学的ローパス効果が得られる光学素子及びそれを有する撮像装置の提供を目的とする。
本発明の光学素子は、
◎光学的な異方性を有し、互いに直交する偏光状態の光線を所望の幅で分離して射出する光学素子であって、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率n、該光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、該光学素子の入射面に垂直入射した光線が互いに直交する偏光状態の光線として分離するときの分離角度が最大となる光軸軸の方向と入射面法線との成す角度をθmaxとするとき、
0.1<|n−n
θmax<θ
なる条件を満足することを特徴としている。
◎互いに直交する偏光状態の光線を所望の幅で分離して射出する光学素子であって、該光学素子を構成する材料は、ニオブ酸リチウムであり、該ニオブ酸リチウムの光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき、
50°<θ<60°
なる条件を満足することを特徴としている。
◎互いに直交する偏光状態の光線で所望の幅で分離して射出する光学的な異方性を有する光学素子であって、該光学素子を構成する材料は水晶であり、該水晶の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき、
51°<θ<61°
なる条件を満足することを特徴としている。
本発明の撮像装置は、
◎光学的な異方性を有する光学素子と、撮影光学系によって形成された像を、該光学素子を介して受光する固体撮像素子と、を有する撮像装置であって、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率をN、該光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、該光学素子の入射面に垂直入射した光線が互いに直交する偏光状態の光線として分離するときの分離角度が最大となる光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθmax、入射面法線方向の厚さをt、該固体撮像素子の光束の分離方向の画素ピッチをPとするとき、
0.02≦|n−n
θmax<θ
P/t<0.035
なる条件を満足することを特徴としている。
本発明によれば、入射角度の変動に対する出射光束の分離幅の変動が少なく、良好なる光学的ローパス効果が得られる光学素子を得ることができる。
図1は、光学的な異方性を有する媒質の光束分離作用を利用した本発明の光学的ローパス効果を有する光学素子の要部斜視図である。光学的な異方性を有する媒質としては、例えば水晶やニオブ酸リチウム等の結晶材料や、光学的異方性を有するよう構成した樹脂製フィルムが知られている。
図1において、1は光学的ローパス効果を有する光学素子である。1aは光学素子を構成する材料の光学軸であり、入射面法線1bとのなす角はθ度である。1at,1aHは光学軸1aの各面への正射影である。
光線が光学素子1に垂直入射すると入射光は、光学素子1によってP偏光PとS偏光Sの出射光として、水平方向Hに分離幅ΔLで分離して出射する。
ここで異方性媒質とは、偏光の方向(振動方向)によって屈折率が異なる媒質を指す。そしてその両偏光の法線速度が一致する方向に光学軸を持つ。
水晶のように3方向のうち1方向のみ屈折率が異なる媒質は一軸性結晶と呼ばれ、その異なる屈折率の方向が光学軸となる。
この異方性媒質を平行平板状に切り出し、光学軸をその入出射面法線から所定の角度傾けたものに円偏光を入射させると、入射光は、その光学軸の傾いている方向に異方性を示して常光線と異常光線に分離して出射する。このとき、常光線と異常光線の分離幅はその異方性媒質の各屈折率と厚み、さらには光学軸と入射面法線との角度によって決定される。
図2は、光の波長よりも細かい構造の光学的な異方性を利用して入射光を分離する光束分離作用を有する光学素子の要部断面図である。
図2において、2は光学素子であり、後述する図10に示す周期構造で光の波長より短い矩形格子を一方向に配列した1次元周期構造より成っている。
図2において、2aは光学軸であり、入射面法線2bとの成す角はθ度である。
2cは矩形格子(周期構造)であり、基板2dに対して斜めに配置されている。
入射光Laが光学素子2を通過して2つの光線La1、La2に分離幅ΔLだけ分離して出射する様子を示している。
本実施例において、光学的な異方性を有する光学素子は、入射光の波長よりも短い格子を一定のピッチで配列した一次元周期構造体より成っている。
図1、図2において、入射光が光学素子によって2つの光束S・Pに分離するとき、分離角度φが最大となる光学軸1aの方向と入射面法線1bとのなす角をθmaxとする。
又、常光線と異常光線の屈折率を各々、n、nとするとき、
0.1<|n−n|・・・・(1)
θmax<θ・・・(2)
となるように構成している。
尚、条件式(1)を満足する媒質としては、例えば、酸化チタン結晶(TiO)がある。波長550nmにおいて酸化チタン結晶の常光屈折率は2.6485、異常光線屈折率は2.9454である。
図3は本発明の光学素子をCCD等の固体撮像素子の光入射側に取着した撮像部材の該略図である。
図3において、31は撮像部材、32は光学的ローパス効果を有する光学素子である。33は固体撮像素子であり、光入射側に光学素子32が設けられている。
次に本発明の光学素子の特徴について説明する。
光学的な異方性を有する媒質又は構造を用いて光束を分離させる構成の光学的ローパスフィルタでは、常光線と異常光線の屈折率差、さらには厚みと光学軸の角度の3つのパラメータで光束の分離方向と分離幅が決定される。
一般に一軸性結晶の平行平板をその入射面の法線と光学軸の成す角をθとなるように作成したとき、円偏光の光がその平行平板に垂直に入射するときの常光線と異常光線の進行方向の成す角φは、次式で表される。
ここでnは常光線の屈折率、nは異常光線の屈折率である。
又、入射光が2つの光線に分離されて出射するときの分離幅ΔLは光学素子の厚さをtとすると
ΔL=t×tanφ・・・(a1´)
となる。
(a1)式を考えるには、光の波動光学的な解釈が必要となる。異方性媒質では光の屈折率が偏光方向によって異なるために、光の波動ベクトルとポインティングベクトルの方向がずれるといった現象が見られる。これはつまり光の波面の向きと実際にエネルギーの流れる方向がずれることを表す。
平行平板へ入射するとき、垂直入射では波面の向きは媒質内に入っても変わらないが、エネルギーの流れる方向がずれる。このために、垂直入射に対して光が屈折するといった現象が見られる。その概要を図4に示す。
図4はポインティングベクトルによる光の分離であり、光学軸に対する入射光の分離状態を示している。
は入射光、SrsはS偏光成分、SrpはP偏光成分である。
次に、このような平行平板に光が斜めに入射する場合を考える。一般的に光は境界面に入射角度を持って入射した場合、スネルの法則を満たす形で屈折する。しかし、異方性媒質の場合は、その偏光方向によって屈折率が異なるために、偏光ごとに別のスネルの法則の式を満たす形で屈折する。その概要を図5に示す。光学軸が入射平面内にあるとき、入射光は、紙面垂直に振動するs波と紙面内に振動するp波に分離する。s波とp波のそれぞれの媒質内での屈折率をn、nとすると、屈折率n、nは以下の式で求められる。
これより、nは一定で、nはy、zの関数となっており、進む方向によって屈折率が異なることを表している。ここで入射媒質の屈折率をn、光の入射角度をθ、それぞれの偏光の屈折角をθrs、θrpとすると、以下の式を満足する。
sinθ=nsinθrs=nsinθrp (a4)
これにより求まった屈折角θrs、θrp方向に波動ベクトルkが進む。これは波動ベクトルによる光の分離である。
以上の話を総合して、異方性媒質に光が入射角度をつけて入射する場合、まず境界面で波動ベクトルのずれによる分離が(a4)式を満たす形で求められる。さらに、その求めた波動ベクトル方向に対して(a1)式を満たす形でポインティングベクトルのずれによる分離が生じる。ここで重要なのが(a1)式での角度θの取り扱いである。
(a1)式では垂直入射を仮定していたために、単純に入射面法線と光学軸の成す角θが(a1)式のθに用いられる。しかし厳密には(a1)式の角度θは光学軸と波動ベクトルkの成す角を表している。それを用いると、図6に示すように、s波は境界面でスネルの法則を満たす角度で屈折し、ポインティングベクトルは波動ベクトルからずれない。p波はs波とは異なる角度で屈折し、そこからポインティングベクトルがずれる。この両偏光のポインティングベクトル方向に着目して分離幅を求めることが必要となってくる。
光学的異方性媒質としてのニオブ酸リチウムは、波長530nmにおける常光屈折率n=2.3247、異常光屈折率n=2.2355である。これを用いて、光学軸の角度に対する垂直入射の分離幅の関係を求めたものを図7に示す。ニオブ酸リチウムのような屈折率差(0.0892)の比較的小さな結晶では(a1)式が最大となる光学軸の角度はおよそ45度で、そのときの単位厚み当たりの分離幅は0.03911となる。そこで光学軸の角度を45度、厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅の関係を図8に示す。入射角度0度での分離幅3.9μmに対して各入射角度での分離幅が変化している様子がわかる。基本的に分離幅は厚みに対して比例関係にあるため、厚みが増えると分離幅の変化量は大きくなってくる。
設計の指標として機械的な厚みと分離幅が決定されたとき、所望の分離幅ΔLを得るには光学軸の角度θを調整する必要がある。
もし厚み100μmで分離幅を2μmとしたとき、単位厚み当たりの分離幅は0.02μm必要となり、図7より光学軸の角度θは15度と74度となる。そのそれぞれの入射角度θiに対する分離幅ΔLの関係を図9に示す。両者とも入射角度0度に対する分離幅はおよそ2μmとなっているが、入射角度θiをつけたときの分離幅ΔLの変化量が74度に設定した時に比べて15度としたときの方が大きい。
また、光学軸の角度を15度としたとき、入射角度35度付近で分離が一度0になっている。これは媒質内での波動ベクトルが光学軸方向に進む光で、境界面における波動ベクトルのずれも媒質内におけるポインティングベクトルのずれも発生していないためである。
また、この入射角度35度付近を境に常光線と異常光線の分離の方向が逆転するため、このような設計は好ましくない。
次に、図2の実施例のように、光の波長よりも細かい構造の光学的な異方性を用いて光束分離作用を有する光学素子について説明する。
図2に示す光学素子2の周期構造は図10に示すように一次元的に周期構造となっている。この周期構造2cのピッチが光の波長よりも細かいと、光はその構造そのものを認識できずに一様な媒質のような特性を示す。
また、このような周期構造2cの異方性は通常の結晶材料のそれに比べて大きい。
今、周期構造2cの媒質にTiOを仮定して構造のピッチを80nm、TiOの占有率を50%とする。そうすると有効屈折率法より波長530nmでの各屈折率はおよそ常光屈折率n=1.8252、 異常光屈折率n=1.3209となる。このときの光学軸2aの角度に対する垂直入射の分離幅の関係を図11に示す。垂直入射の分離幅が最大となる光学軸の角度は約36度で、そのときの単位厚み当たりの分離幅は0.32904である。これはニオブ酸リチウムに比べて1桁程度大きい。光学軸の角度を36度、厚みを10μmとしたときの入射角度に対する分離幅の関係を図12に示す。これを見ると入射角度θiに対する分離幅ΔLの変化がニオブ酸リチウムの図8に比べて大きくなっていることがわかる。異方性が強い光学素子を用いて最大の分離幅が得られる光学軸の角度を選択することで、所望の分離幅を得るための厚みを薄くできる。
しかしながら入射角度の分離幅への影響が大きくなることがわかる。
もし厚みを10μmで設計分離幅を2μmとしたとき図11より光学軸の角度は14度と65度となる。そのそれぞれの入射角度に対する分離幅の関係を図13に示す。両者とも0度に対する分離幅はおよそ2μmとなっているが、入射角度に対する分離幅の変化が14度だと非常に大きくなる。異方性が強い光学素子を用いた場合、光学軸の角度の範囲によっては分離幅の変化が非常に大きくなってしまう。
一般的にこのような光学的ローパス作用のある光学素子を撮像装置と組み合わせて使用する場合、撮像装置のセンサーの画素ピッチに対応させて分離幅は設定される。
ここで、固体撮像素子の画素ピッチpが10μmとする。この固体撮像素子の空間周波数は100mm−1である。
サンプリング定理より、この固体撮像素子で再現できる情報の空間周波数は50mm−1である。これ以上の空間周波数を持つ情報は、サンプリングすることで低い周波数に折り返る。これがモアレといわれる一種の折り返り雑音の原因となる。
これを防ぐために、そのピッチ方向に光束を10μm分離させるような光束分離用の光学素子を上記撮像素子の前面に配置する。そのときのMTFを図14に示す。この光束分離用の光学素子は空間周波数50mm−1の情報を完全にぼかすような光学ローパスフィルタとして機能することがわかる。これにより、高周波成分の雑音成分を取り除くことができる。
入射角度に対する分離幅の変化が大きな光学素子を用いた場合、画像の位置(画角)によってこのローパスフィルタの効果が変わってしまう。つまりはこの分離幅の変化量が直接画像へ影響すると考えられる。
この画像への影響は、入射角度に対する分離幅の変化が大きいほど大きく、さらに固体撮像素子の画素ピッチpが細かいほど大きくなる。また、その分離幅の変化は、用いる材料の異方性が強いほど、さらに厚みtが厚いほど大きくなる。
そこで本発明では、光学軸の角度を適切に設定することで入射角度に対する分離幅の変化を抑え、より高性能な異方性点像分離作用のある光学素子を得ている。
本発明の光学素子は、CCD、MOS等の固体撮像素子と撮像光学系の間に配置され、固体撮像素子の画素ピッチに対応させて点像(画像)を分離させる光学的ローパスフィルタとして好適なものである。
また、それに用いられる複屈折板を、常光線と異常光線の屈折率差が大きい一軸性単結晶や、入射光の波長よりも短い格子を一定のピッチで配列した一次元周期構造体で構成している。
本発明の光学素子を、撮像装置に適用したときの実施例について説明する。
本実施例の光学素子は、入射光が出射するとき、互いに直交する偏光状態の光線で所望の幅で分離した光線とする光学的な異方性を有し、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率をN、光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、光学素子の入射面に垂直入射した光束が互いに直交する偏光状態の光束として、分離屈折するときの、分離角度が最大となる光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθmax、入射面法線方向の厚さをt、固体撮像素子の光束の分離方向の画素ピッチをPとするとき、
0.02≦|n−n|・・・(3)
θmax<θ・・・・(4)
P/t<0.035・・・・(5)
を満足している。
本実施例では、このように光学素子の光学軸と入射面の法線となす角θを適切に設定することにより、入射角度に対する分離幅の変化を小さくしている。
これにより、所望の分離幅を得るために用意された光学素子の入射角度に対する分離幅の変化を抑えている。高画素化に伴って微小化されていく撮像素子の画素に対して、このような光学素子を用いることで画像全体でより均一なローパス効果を得ている。
尚、(3)式は屈折率差が
0.1≦|n−n|・・・(3a)
と大きいものを用いると更に好ましい。
条件式(4)は本実施例の光学素子の構成の特徴を数値化したものであり、光学軸と入射面の法線がなす角θの最適な設定範囲を表している。
条件式(4)で特定される範囲は、厚みを固定して光学軸の角度θによって所望の分離幅を求める際に、上記範囲内に光学軸の角度θを設定することで入射角度に対する分離幅の変化を抑えた設計を容易にしている。
この影響が大きくなるのが条件式(5)で与えられた範囲である。通常、このような光学素子は固体撮像素子の画素ピッチPに対応させて分離幅が設定される。その画素ピッチPが細かくなると、分離幅の変化に対する画像への影響度が大きくなってしまう。
さらに、光学素子の屈折率差が大きい、もしくは厚みが大きくなると、分離幅の変化が大きくなってしまう。そこでこのような影響が大きな範囲で特に条件式(4)を満たす形にすることでより好適な光学素子が得られる。
条件式(5)を満たす、もしくは屈折率差が0.1以上の媒質を用いて条件式(4)の範囲外で設計した場合、特に角度θmaxから離れた値を設定すると入射角に対する分離幅の変化が非常に大きな光学素子が得られる。
例えば、ニオブ酸リチウムを用いて光学軸の角度を入射面法線から15度、厚みを100μmとした平行平板を製作した場合、その入射角度に対する分離幅は図9(a)のようになる。
このような光学素子を光学的ローパスフィルタとして機能させた場合、結像光学系によっては光学素子への入射角度がきつくなることが予想される。
このような結像光学系で撮像した場合、入射角度に対する分離幅が異なるために画角方向と中心部にローパス効果の差異が出る。さらに左右に非対称な画像情報となることが予想される。さらに入射角度35度で分離幅が0となっているため、その入射角度方向の光学的ローパスフィルタとしての機能は果たさない。
角度θの値が(4)式を満たす角度になるように設定した場合は、分離幅の変化による画像の劣化が抑えられる。
例えば、ニオブ酸リチウムを用いて光学軸の角度を入射面法線から74度、厚みを100μmとした平行平板を製作した場合、その入射角度に対する分離幅は図9(b)のようになる。入射角度に対する分離幅の変化が小さいために、画像全体での光学的ローパスフィルタとしての機能に変化が少なく、より高性能な光学的ローパスフィルタを製作することができる。
なお、複数枚の複屈折板を重ね合わせた複合結晶板を光学的ローパスフィルタとして使用する場合、それを構成する各複屈折板の光学軸の角度を(4)式を満たす形で設定することで高性能な光学的ローパスフィルタが得られる。
もし機械的な厚みに制限がなく光学軸の角度を自由に設計することができた場合には最適値が存在する。ニオブ酸リチウムを用いた場合、光学軸を入射面法線からの角度θが55度に設定したものを考える。その厚みを100μmとした平行平板の入射角度に対する分離幅の関係を図15に示す。入射角度 ±60度までの広い範囲で分離幅が変化しない。
このように最適な角度を用いることで入射角度に対する分離幅がほとんど変化しない設計も可能となる。同様に水晶の場合は光学軸の入射面法線から角度θが56度とすることでこの最適値になる。
このような設計の場合、所望の分離幅を得るためには厚みを変化させることで調整する。また、光学軸の角度θをその最適値から±5度の範囲に設定することで、入射角度範囲±30度での分離幅の変化量が垂直入射の分離幅に対して10%以下に抑えることが可能となる。ニオブ酸リチウムのときは、このとき角度θが
50°<θ<60°
程度、好ましくは
53°<θ<57°
程度とするのが良い。
又、水晶のときは、このとき角度θが、
51°<θ<61°
となるのが良い。好ましくは
54°<θ<58°
とするのが良い。
また、異方性を有する光学素子を複数用いて構成する光学的ローパスフィルタとしては、図16に示すような配置とすることが好ましい。すなわち、光学軸1aの入射面への正射影1aVが固体撮像素子の長辺方向を向いた第一の光学素子16aと、同光学軸1aの正射影1aVが固体撮像素子の短辺方向を向いた第二の光学素子16bとを含むように構成することが好ましい。
上記構成では、まず第一の光学素子16aに入射する光線17aは、そのまま進む光線17aと、図17に示すように固体撮像素子の長辺方向に光線17bとに分離する。その分離した光線17a,17bは、それぞれ、固体撮像素子の長辺方向、短辺方向に振動している。この2つの光線をこのまま上記第二の光学素子16bに入射しても分離は起きない。
そこで、上記第一、第二の光学素子16a、16bの中間に、固体撮像素子の長辺方向から45度の方向に光学軸を持つ単結晶16cを挟み込むことで、第一の光学素子16aから出射される光を円偏光に偏光変換させる。これにより、光線17a、17bのそれぞれは、第2の光学素子16bで固体撮像素子の短辺方向への光線17c、17dとして更に分離することになる。
以上により三層積層型の光学的ローパスフィルタ16が構成される。この光学的ローパスフィルタ16に入射した光17aは、図17に示すように正方形に分離されて出射される。これで二次元方向に光束の分離作用を有する光学的ローパスフィルタ(光学素子)が得られる。
次に本発明の光学素子の具体的な実施例について説明する。
所望の分離幅を7μmとして、光学素子(平行平板)の厚みtを200μmとした場合、単位厚み当たりの分離幅は0.035mm必要となる。異方性媒質としてニオブ酸リチウムを用いた場合、図7より入射面法線と光学軸のなす角度は31度か57度となる。それぞれの入射角度θに対する分離幅ΔLの関係を図18に示す。固体撮像素子の画素ピッチが7μmとしたとき、p/tは0.035となる。θmax=45°であるから、(4)式の条件θmax<θを満たす光学軸の角度θは57度である。結像光学系が±30度の画角範囲を持つ場合、入射角度に対する分離幅の変化は左右(±30度において)で1μm以下となる。
もし光学軸の角度θを31度に設定した場合、左右(±30度において)で分離幅は4μmずれる。これは画素ピッチの半分以上ずれることを表し、光学的ローパスフィルタ効果の変化が大きいことがわかる。この変化が少ないほうが好ましいため、光学軸の角度は57度に設定するほうが良い。
もし、同様の光学素子を画素ピッチが10μmの固体撮像素子に組み合わせる場合、分離幅の変化は画素ピッチの半分以下に抑えられる。このとき、p/tは0.05となる。
尚、本実施例及び以下の実施例において、光学素子の材料がニオブ酸リチウムのときは、光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき、
50°<θ<60°
好ましくは、
53°<θ<57°
を満足するようにしている。
所望の分離幅を7μmとして光学素子平行平板の厚みtを400μmとした場合、単位厚み当たりの分離幅は0.0175mm必要となる。
異方性媒質としてニオブ酸リチウムを用いた場合、図7より入射面法線と光学軸のなす角度は13度か76度となる。その入射角度θに対する分離幅ΔLの関係を図19に示す。固体撮像素子の画素ピッチが7μmとしたとき、p/tは0.0175となる。
(4)式の条件θmax<θを満たす光学軸の角度θは76度である。もし13度に設定した場合、入射角度30度で分離幅が0となってしまう。この角度には光学的ローパスフィルタとして機能しないため、このような設計は好ましくない。そのため、光学軸の角度は76度に設定するほうが良い。
所望の分離幅を5μmとして光学素子(平行平板)の厚みtを20μmとした場合、単位厚み当たりの分離幅は0.25mm必要となる。
光学素子としてTiOを用いて構造ピッチを80nm、占有率を50%の図10に示すような一次元周期構造体の光学的な異方性を用いたとする。そうすると図11より入射面法線と光学軸のなす角度は19度か57度となる。その入射角度に対する分離幅の関係を図20に示す。
(4)式の条件θmax<θを満たす光学軸の角度は57度である。もし19度に設定した場合、入射角度35度で分離幅が0となってしまう。この角度には光学的ローパスフィルタとして機能しないため、このような設計は好ましくない。そのため、光学軸の角度は57度に設定するほうが良い。
所望の分離幅を7μmとして光学素子(平行平板)の厚みを制限しない場合を考える。
異方性媒質としてニオブ酸リチウムを用いた場合、入射面法線と光学軸の角度のなす角を55度に設定する。このとき、単位厚み当たりの分離幅は0.0363mmとなる。その厚みを193μmとすることで所望の分離幅が得られる。その入射角度に対する分離幅の特性を図21に示す。分離幅が入射角度に対して変化していない様子がわかる。
所望の分離幅を7μmとして光学素子(平行平板)の厚みを制限しない場合を考える。異方性媒質として水晶を用いた場合、入射面法線と光学軸のなす角度θを56度に設定する。このとき、単位厚み当たりの分離幅は0.00547mmとなる。その厚みを1280μmとすることで所望の分離幅が得られる。その入射角度に対する分離幅の特性を図22に示す。分離幅が入射角度に対して変化していない様子がわかる。
尚、本実施例において、光学素子の材料が水晶のときは、光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき
51°<θ<61°
好ましくは、
53°<θ<57°
を満足するようにしている。
以上説明したように、各実施例によれば、光学的な異方性を用いて光分離を行うとき、光学軸と入射面の法線の関係を適切に設定することで、入射角度に対する分離幅の変化を抑えることができ、良好なる光学的ローパス効果を有する光学素子が得られる。
図23は本発明の光学的ローパスフィルタ効果を有する光学素子を組み込んだ撮影レンズ101を有するデジタル一眼レフカメラの要部概略図である。
図23において、101は交換可能な撮影レンズ、102は回転ミラー(クイックリターンミラー)であり、一部がハーフミラー面となっており、回転軸102a中心に回動している。103はピント板(焦点板)であり、その面上には撮影レンズ101によって被写体像が形成される。104はペンタプリズム(像反転部材)であり、ピント板103に形成された被写体像を正立正像としている。
105は接眼レンズであり、ピント板103に形成された被写体像をペンタプリズム104を介して観察している。106はサブミラーであり、回転ミラー102に固着されており。回転ミラー102とともに回動している。108は焦点検出装置であり、撮影レンズ101を通過してきた光束で回転ミラー102の一部を通過し、サブミラー106で反射した光束を用いて撮影レンズ101の焦点状態を検出している。
126は光学素子である。107は固体撮像素子である。109は画像処理部であり、固体撮像素子107からの信号を処理し、画像情報を得ている。
本実施例において、被写体像のファインダ観察時には、撮影レンズ101を通過した光像は回転ミラー102で反射してピント板103に結像し、ペンタプリズム104、接眼レンズ105を介して観察される。
又、撮影レンズ101の焦点検出は回転ミラー102の半透過ミラー部を透過しサブミラー106でミラーボックス下方に反射され焦点検出装置108に導かれた像を処理して行われる。
一方撮影時は回転ミラー102及びサブミラー106が一体的に回動して撮影回路から退避する。そして撮影レンズ101からの自然光が光学素子126に入射し、所望のボケ
をもって光学素子126を射出し、撮像素子107面上に被写体像が撮像される。撮像された像は電気信号に変換され、画像処理部109でデジタル画像処理され図示していない記憶メディアに記憶される。
本発明の光学素子の要部概略図 本発明の光学素子の要部断面図 本発明の光学素子を有した撮像部材の説明図 異方性媒質へ垂直に入射する光のポインティングベクトルSのずれによる分離の説明図 異方性媒質へ入射角度をつけて入射する光の波動ベクトルkのずれによる分離の説明図 異方性媒質へ入射角度をつけて入射する光のs、p波の屈折の様子の説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムの光学軸の角度に対する垂直入射の分離幅の説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムの光学軸の角度を45度、厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅の説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムを用いて厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅において(a)光学軸の角度15度、(b)光学軸の角度74度の説明図 微細周期構造の模式図 波長530nmにおけるTiO微細周期構造の光学軸の角度に対する垂直入射の分離幅の説明図 波長530nmにおけるTiO微細周期構造の光学軸の角度36度、厚みを10μmとしたときの入射角度に対する分離幅の説明図 波長530nmにおけるTiO微細周期構造の光学軸の角度36度、厚みを10μmとしたときの入射角度に対する分離幅において(a)光学軸の角度14度、(b)光学軸の角度65度の説明図 分離幅10μmとした光束分離素子の空間周波数に対するMTFの説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムの光学軸の角度を55度、厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅の説明図 光学的な異方性により光束を分離させる基材を複数枚用いて構成される光学素子の模式図。図中矢印は光学軸のそれぞれの面への正射影の説明図 図13の光学素子に円偏光を垂直入射したときの出射光の模式図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムを用いて厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅において(a)光学軸の角度31度、(b)光学軸の角度57度の説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムを用いて厚みを100μmとしたときの入射角度に対する分離幅において(a)光学軸の角度13度、(b)光学軸の角度76度の説明図 波長530nmにおけるTiO構造異方性を用いて厚みを20μmとしたときの入射角度に対する分離幅において(a)光学軸の角度19度、(b)光学軸の角度57度の説明図 波長530nmにおけるニオブ酸リチウムを用いて光学軸の角度を54度、厚みを193μmとしたときの入射角度に対する分離幅の説明図 波長530nmにおける水晶を用いて光学軸の角度を54度、厚みを1200μmとしたときの入射角度に対する分離幅の説明図 本発明の光学素子を有する撮像装置の説明図
符号の説明
1、2、32 光学素子
1a、2a 光学軸
31 撮像部材
33 固体撮像素子
16a 第1の光学素子
16b 第2の光学素子
16c 単結晶

Claims (7)

  1. 光学的な異方性を有し、互いに直交する偏光状態の光線を所望の幅で分離して射出する光学素子であって、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率n、該光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、該光学素子の入射面に垂直入射した光線が互いに直交する偏光状態の光線として分離するときの分離角度が最大となる光軸軸の方向と入射面法線との成す角度をθmaxとするとき、
    0.1<|n−n
    θmax<θ
    なる条件を満足することを特徴とする光学素子。
  2. 前記光学素子は、樹脂製フィルム又は、入射光束の波長よりも短い格子を一定のピッチで配列した一次元周期構造体より成ることを特徴とする請求項1の光学素子。
  3. 互いに直交する偏光状態の光線を所望の幅で分離して射出する光学素子であって、該光学素子を構成する材料はニオブ酸リチウムであり、該ニオブ酸リチウムの光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき、
    50°<θ<60°
    なる条件を満足することを特徴とする光学素子。
  4. 互いに直交する偏光状態の光線を所望の幅で分離して射出する光学素子であって、該光学素子を構成する材料は水晶であり、該水晶の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθとするとき、
    51°<θ<61°
    なる条件を満足することを特徴とする光学素子。
  5. 請求項1から4のいずれか1項の光学素子と、固体撮像素子を有し、該固体撮像素子の光入射側に該光学素子を設けたことを特徴とする撮像部材。
  6. 撮像光学系によって得られる像を光電変換するための請求項5に記載の撮像部材とを有することを特徴とする撮像装置。
  7. 光学的な異方性を有する光学素子と、撮影光学系によって形成された像を、該光学素子を介して受光する固体撮像素子とを有する撮像装置であって、波長530nmにおいて、常光線における屈折率をn、異常光線における屈折率をn、該光学素子の光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθ、該光学素子の入射面に垂直入射した光線が互いに直交する偏光状態の光線として分離するときの分離角度が最大となる光学軸の方向と入射面法線との成す角度をθmax、入射面法線方向の厚さをt、該固体撮像素子の光線の分離方向の画素ピッチをPとするとき、
    0.02≦|n−n
    θmax<θ
    P/t<0.035
    なる条件を満足することを特徴とする撮像装置。
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