JP2007089511A - ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターター及び該スターターを用いたヨーグルトの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ヨーグルトの製造に用いられる高濃度乳酸菌スターター、その製造方法、及び、該高濃度乳酸菌スターターを用いた発酵を促進したヨーグルトの製造方法を提供すること。
【解決手段】ホエーから、ホエータンパク質を凝集させて取り除いた脱タンパクホエーを培地にして、ヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、ヨーグルト製造用のスターターを製造することにより、ヨーグルト製造用のスターターとして、高い活性や機能を維持する乳酸菌の培養が可能であり、スターター培養原料に含まれるタンパク質のヨーグルト呈味への影響もなく、乳酸菌体の分離・濃縮を容易にしてヨーグルト用の高濃度乳酸菌スターターを容易に製造することが可能である。本発明の高濃度乳酸菌スターターを用いて、比較的短い発酵時間で、高品質のヨーグルトを製造することが可能となる。
【選択図】なし
【解決手段】ホエーから、ホエータンパク質を凝集させて取り除いた脱タンパクホエーを培地にして、ヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、ヨーグルト製造用のスターターを製造することにより、ヨーグルト製造用のスターターとして、高い活性や機能を維持する乳酸菌の培養が可能であり、スターター培養原料に含まれるタンパク質のヨーグルト呈味への影響もなく、乳酸菌体の分離・濃縮を容易にしてヨーグルト用の高濃度乳酸菌スターターを容易に製造することが可能である。本発明の高濃度乳酸菌スターターを用いて、比較的短い発酵時間で、高品質のヨーグルトを製造することが可能となる。
【選択図】なし
Description
本発明は、ヨーグルトの製造に用いられる高濃度乳酸菌スターター、その製造方法、及び、該高濃度乳酸菌スターターを用いた発酵を促進したヨーグルトの製造方法に関する。
一般に、ヨーグルトは、牛乳(全乳)や脱脂乳等を主体としたヨーグルトミックスに乳酸菌スターターを添加し、これを発酵させて得られる発酵産物(カード)を破砕して容器に充填する、いわゆる前発酵型といわれる製造方法と、ヨーグルトミックスに乳酸菌スターターを添加して、これを容器に充填し、発酵を行なって、容器入りヨーグルトを製造する、いわゆる後発酵型といわれる製造方法がある。
これらは、一般には、次のような方法により行なわれる。すなわち、まず、ヨーグルトの製造に際して、ヨーグルト製造原料を乳酸発酵するために用いられる乳酸菌スターターが調製される。乳酸菌スターターを調製するための培地としては、牛乳または脱脂粉乳水溶液を用いることが多い。この牛乳等は、タンパク質を約3.5%程度含有している。そのタンパク質の内訳はカゼイン(等電点4.6)が約80%、それ以外(ホエータンパク質)が20%である。この牛乳等(PH6.7)にスターター(牛乳等をヨーグルト用のLactobacillus bulgaricus、Streptococcus thermophilus等の乳酸菌で発酵させたもの)を加え、培養・発酵する。乳酸発酵が進み、PHが低下してくると、タンパク質が不溶化し凝集して、ゲル状になってくる。このゲルを回収して粉砕し、液状化したものをヨーグルト製造用(製品用)スターターとして用いる。
このヨーグルト製造用(製品用)スターターを用いて、ヨーグルトを製造するには、次のような方法で行われる。すなわち、上記のようにして調製されたヨーグルト製造用(製品用)スターターを、通常ヨーグルトの製造に用いられる牛乳、脱脂(粉)乳、生クリーム等からなるヨーグルト製造原料ミックス水溶液を用いた培地(PH6.3)に添加し、37℃で17〜24時間培養・発酵する。その後、乳酸発酵が進み、PHが低下してくるが、このPHが4.6になった時点で培養を終了し、続いて、10℃以下で、冷却する。この過程で、タンパク質がゲル状になってくる。このゲル(カード)を破砕することで、ヨーグルト製品とする。
そこで、前記のような従来のヨーグルトの製造方法では、その発酵温度は、通常、37℃程度の比較的低い温度が使用されるため,発酵時間が前述の通り、17〜24時間程度とかなり長い時間が必要となり、生産効率が低下するという問題があった。そこで、この問題を解決するために、発酵温度の上昇や、スターターとして添加する乳酸菌の菌数を増加させることが考えられるが、従来、これらの方法には制約があった。すなわち、発酵温度を上昇する方法については、発酵温度は、製品の呈味等の品質に直接影響を及ぼす因子であるから、これをむやみに上昇させることは、製品の呈味のバランスをくずし、避けなければならないことであった。
また、スターターとして添加する乳酸菌の菌数を増加させる方法にも、制約があった。すなわち、ヨーグルトの製造に際して、スターターを大量に添加すると、添加する乳酸菌の菌数は増大するが、スターターに含まれるタンパク質等の成分が、製造したヨーグルトの品質に影響し、したがって、大量のスターターの添加は難しいという制約があった。従来のヨーグルトの製造用のスターターでは、通常、原料培地の5重量%が限度であったが、この添加量では添加する乳酸菌の菌数を増加させることは困難であった。
一方、スターターとして添加する乳酸菌の菌数を増大するために、高濃度乳酸菌スターターを用いることが考えられるが、従来、ヨーグルト用の高濃度乳酸菌スターターを容易に製造することは難しかった。すなわち、ヨーグルト用の乳酸菌スターターは、前記のとおり、通常、牛乳または脱脂粉乳水溶液を用い、これに、ヨーグルト用の乳酸菌を添加して、培養・発酵し、PHが低下して、タンパク質が不溶化し凝集して、ゲル状になってくるものを回収して粉砕し、液状化してヨーグルト製造用(製品用)スターターとして調製されているが、このスターターには、カゼインやホエータンパク質のようなタンパク質が大量に含まれているため、これから乳酸菌を分離濃縮することは難しく、したがって、乳酸発酵後のスターターから、乳酸菌を分離濃縮して高濃度乳酸菌スターターを調製することは困難であった。
最近、ヨーグルト製造時のスターターの使用量を低減したり、スターター管理を容易にすることを目的として、ヨーグルトスターター乳酸菌の高濃度培養方法が開示されている(特開2001−211878号公報)。この方法は、ろ過培養装置を用い、大豆タンパク分解物、酵母エキス、ラクトースを主体とした培地を用いて、ヨーグルトスターター乳酸菌を連続培養することにより高濃度培養液を得る方法よりなるものである。しかしながら、この方法は、特別な培養装置を必要とするものであり、また特別の培養方法を採用するものであって、この方法を、通常のヨーグルトの製造現場には適用するのは難しいという問題がある。したがって、現在、上記問題を解決する効果的な方法の開発が望まれているところである。
本発明の課題は、従来技術の問題点、すなわち、発酵時間が長く、生産効率が低下するという問題を解決するために、ヨーグルトの製造に用いられる高濃度乳酸菌スターター、その製造方法、及び、該高濃度乳酸菌スターターを用いた発酵を促進したヨーグルトの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討する中で、ホエーから、ホエータンパク質を凝集させて取り除いた脱タンパクホエーを培地にして、ヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、ヨーグルト製造用のスターターを製造することにより、ヨーグルト製造用のスターターとして、高い活性や機能を維持する乳酸菌の培養が可能であり、しかも、従来、問題であったスターター培養原料に含まれるタンパク質のヨーグルト呈味への影響の問題を解消し、更に、乳酸菌体の分離・濃縮を容易にしてヨーグルト用の高濃度乳酸菌スターターを容易に製造することが可能であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することによりヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造する方法からなる。上記のとおり、本発明においては、ホエーから、ホエータンパク質を凝集させて取り除いた脱タンパクホエーを培地として用いても、乳酸菌を培養してヨーグルト製造用のスターターとしての高い活性や機能を有した乳酸菌スターターを得ることができることを見い出し、また、ホエーに含まれるタンパク等を除去しているため、比較的多量のスターターを用いても、例えば、ヨーグルト原料の10重量%という量を用いても、スターターに含まれるタンパク質等によるヨーグルト呈味への影響を回避することができ、更には、タンパク等の除去によって、乳酸発酵後の乳酸菌体の分離・濃縮を、乳酸菌体に過当な負担をかけることなく行うことが可能となって、ヨーグルト用の高濃度乳酸菌スターターの製造を容易に行うことができることを見い出し、本発明をなした。
本発明において、スターター製造に用いられる脱タンパクホエーの調製に用いられるホエーとしては、チーズ製造時に副生するチーズホエー等が挙げられる。該ホエーから調製される脱タンパクホエーとしては、ホエーに乳酸等を加え、pHを調整して、ホエータンパク質を凝集させて取り除くことにより製造されたものを挙げることができる。
本発明のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造に用いられる乳酸菌としては、Lactobacillus paracasei KW3110、Lactobacillus acidophilus、或いはLactobacillus bulgaricusからなる単菌、又はStreptococcus thermophilus+Lactobacillus bulgaricusからなる複合菌のいずれか1種類から選ばれる乳酸菌が、好ましい乳酸菌の例として挙げることができる。
本発明において、ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造するには、脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することにより行うことができるが、脱タンパクホエーを培地にして、ヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵して第1次高濃度乳酸菌スターターを製造し、次に、新たな脱タンパクホエーを培地にして、第1次高濃度乳酸菌スターターを加えて培養・発酵して、第2次高濃度乳酸菌スターターを調製する方法を用いて、より高濃度の乳酸菌を含有し、しかも、スターターに残存するタンパク質等の割合を少なくしたヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造することができる。
本発明は、本発明の高濃度乳酸菌スターターを用いる、発酵を促進したヨーグルトの製造方法を包含する。すなわち、本発明のヨーグルトの製造方法は、ヨーグルト製造原料に、スターターとして本発明の高濃度乳酸菌スターターを添加し、培養・発酵することにより、従来の発酵期間を短縮した形で、ヨーグルトの製造を行う。本発明の高濃度乳酸菌スターターを用いたヨーグルトの製造方法においては、高濃度乳酸菌スターターのヨーグルト製造原料への添加量は、乳酸菌の菌数から見て、好ましくは、2×107〜109個/ml原料、特に好ましくは、2×108〜109個/ml原料の範囲で行われる。また、ヨーグルト製造原料に対して、0.1〜10重量%の割合で添加される。本発明のヨーグルトの製造方法により、風味が良く、短い発酵時間でヨーグルトを製造することが可能で、生産効率がよく、高粘度で、流動性の良好なヨーグルトを得ることができる。
すなわち具体的には本発明は、(1)脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することからなるヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法や、(2)脱タンパクホエーが、ホエーに乳酸を加え、pH4.5〜5.5とし、ホエータンパク質を凝集させて取り除くことにより製造したものであることを特徴とする前記(1)記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法や、(3) ホエーが、チーズ製造時に副生するチーズホエーであることを特徴とする前記(1)又は(2)記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法や、(4) ヨーグルトスターター用乳酸菌が、Lactobacillus paracasei KW3110、Lactobacillus acidophilus、或いはLactobacillus bulgaricusからなる単菌、又はStreptococcus thermophilus+Lactobacillus bulgaricusからなる複合菌のいずれか1種類から選ばれる乳酸菌であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法や、(5)脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収して、第1次高濃度乳酸菌スターターを製造し、次に、新たな脱タンパクホエーを培地にして、第1次高濃度乳酸菌スターターを加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することにより第2次高濃度乳酸菌スターターを調製し、該第2次高濃度乳酸菌スターターを濃縮することからなるヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法や、(6)前記(1)〜(5)のいずれか記載の乳酸菌スターターの製造方法によって製造されたヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターからなる。
また本発明は、(7)ヨーグルト製造原料に、スターターとして前記(6)記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを添加し、培養・発酵することを特徴とする発酵を促進したヨーグルトの製造方法や。(8)ヨーグルト製造原料への高濃度乳酸菌スターターの添加量が、2×107〜109個/ml原料であることを特徴とする前記(7)記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法や、(9)ヨーグルト製造原料への高濃度乳酸菌スターターの添加量が、2×108〜109個/ml原料であることを特徴とする前記(8)記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法や、(10)ヨーグルト製造原料に、該原料に対して、前記(6)記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを0.1〜10重量%添加した後、25〜50℃で培養・発酵させ、PH4.0〜5.0にて、発酵を終了させることを特徴とする発酵を促進したヨーグルトの製造方法や、(11)前記(7)〜(10)のいずれか記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法によって製造されたヨーグルトからなる。
本発明のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを用いたヨーグルトの製造方法は、ヨーグルトの製造に適した比較的低温度の発酵温度においても、その発酵を促進することができ、比較的短時間の発酵が可能であることから、よい品質のヨーグルトの製造が可能であるとともに、生産効率においても優れた結果を得ることができる。また、比較的短時間の発酵が可能ということは、その生産性のメリットのみならず、その製造過程で可能性として考えられる種々のリスクの回避が可能となるというメリットもある。本発明の高濃度乳酸菌スターターは、ヨーグルト製造用のスターターとして、高い活性や機能を維持し、品質としても優れているので、該スターターを用いる本発明ヨーグルトの製造方法により、きめが細かく、風味がよく、高粘度で、流動性が良いヨーグルトを製造することができ、短い発酵時間で生産効率よく、品質の優れたヨーグルトを製造することができる。
本発明は、脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収し、ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造することからなる。本発明において、スターター製造に用いられる脱タンパクホエーの調製に用いられるホエーとしては、チーズ製造時に副生するチーズホエー等が挙げられる。該ホエーから調製される脱タンパクホエーとしては、ホエーに乳酸等を加え、pHを調整して、ホエータンパク質を凝集させて取り除くことにより製造される。本発明においては、培地として、牛乳等からできるだけタンパク質を除去したもの(脱タンパクホエー)を用いることを特徴としている。
例えば、本発明において用いる脱タンパクホエーを調製するには、チーズ工程から、副産物として得られるホエー(牛乳等にレンネットというプロテアーゼを作用させカゼイン画分を凝集、除去したもの)に、乳酸を加え、PH4.5〜5.5とし、ホエータンパク質画分も凝集させ、冷却後、濾過または遠心分離で上清を得る(以下「脱タンパクホエー」)ことにより調製される。この脱タンパクホエーは、その後、この脱タンパクホエーを培地にして乳酸菌による乳酸発酵を行い、該培地のPHが低下しても、増殖した乳酸菌菌体以外の沈殿は発生しない。また、このため、該脱タンパクホエーは、タンパク成分のような沈殿物を含まないことによって、該脱タンパクホエーを培地にして、乳酸菌を培養し、遠心分離で沈殿を回収することにより、その分離・濃縮が可能であり、高濃度の乳酸菌を含んだスターター(高濃度スターター)を容易に製造することができる。
本発明において、ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造するには、上記脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することにより行われる。該培養・発酵に用いられるヨーグルトスターター用乳酸菌としては、通常、ヨーグルトの製造に用いられている乳酸菌が挙げられ、特に、限定されないが、本発明の目的において、ヨーグルトスターター用乳酸菌が、Lactobacillus paracasei KW3110、Lactobacillus acidophilus、或いはLactobacillus bulgaricusからなる単菌、又はStreptococcus thermophilus+Lactobacillus bulgaricusからなる複合菌のいずれか1種類から選ばれる乳酸菌であることが、特に好ましい。
本発明においては、該ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを用いて、脱タンパクホエーを培地として、培養・発酵して、ヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造するが、その場合、脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収して、第1次高濃度乳酸菌スターターを製造し、次に、新たな脱タンパクホエーを培地にして、第1次高濃度乳酸菌スターターを加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することにより第2次高濃度乳酸菌スターターを調製し、該第2次高濃度乳酸菌スターターを濃縮することにより、より高濃度の乳酸菌を含有し、しかも、スターターに残存するタンパク質等の割合を少なくしたヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを製造することができる。このことは、本発明においては、スターター原料として、タンパク質等を除去したホエーを使用するが、該脱タンパクホエーには、なお、数%のタンパク質が残存するので、上記のように、第1次高濃度乳酸菌スターター及び第2次高濃度乳酸菌スターターを製造して、乳酸菌の菌数の増大と残存タンパク質に対する薄め効果を狙うことにある。
本発明の方法により、ヨーグルトを製造するには、ヨーグルト製造原料に、スターターとして、本発明の高濃度乳酸菌スターターを添加し、培養・発酵することにより行われる。本発明の方法により、高濃度の乳酸菌をヨーグルト製造原料に添加することが可能であり、ヨーグルト製造原料への乳酸菌スターターの添加量は、乳酸菌の菌数で表示すれば、2×107〜109個/ml原料の範囲が好ましく、更には、2×108〜109個/ml原料の範囲が特に好ましい。また、添加するスターターの容量で表示すれば、ヨーグルト製造原料に対して、0.1〜10重量%の添加量であることが好ましい。
本発明の好ましいヨーグルトの製造例の一つを示せば、ヨーグルト製造原料に、該原料に対して、本発明のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを0.1〜10重量%添加した後、25〜50℃で培養・発酵させ、PH4.0〜5.0にて、発酵を終了させることによって、発酵を促進して、短縮した時間でヨーグルトの製造を行うことができる。本発明のヨーグルトの製造方法を採ることによって、発酵時間が、例えば、従来の約三分の一の約7時間程度に短縮され、生産効率を大幅に向上した製造方法によって、ヨーグルトを製造することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[脱タンパクホエー及び乳酸菌スターターの調製]
(脱タンパクホエーの調製)
まず、水910gにホエーパウダー90gをPH6.4で混合した。この水溶液に、50%発酵乳酸1.9gをPH5.4で添加した。その後、攪拌しつつ湯浴にて90℃達温後、40℃位まで水浴冷却した。更に、2500G、5分間20℃で遠心分離を行い、沈殿が生じるが、その上清を121℃で20分間、オートクレーブした。これを脱タンパクホエーとした。処理のフローを、表1に示す。
(脱タンパクホエーの調製)
まず、水910gにホエーパウダー90gをPH6.4で混合した。この水溶液に、50%発酵乳酸1.9gをPH5.4で添加した。その後、攪拌しつつ湯浴にて90℃達温後、40℃位まで水浴冷却した。更に、2500G、5分間20℃で遠心分離を行い、沈殿が生じるが、その上清を121℃で20分間、オートクレーブした。これを脱タンパクホエーとした。処理のフローを、表1に示す。
(1次脱タンパクホエースターターの調製)
脱タンパクホエー37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに、小岩井KW乳酸菌ヨーグルト2gを添加して、混合し、37℃で24時間培養した。これを1次脱タンパクホエースターターとした。処理のフローを、表2に示す。
脱タンパクホエー37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに、小岩井KW乳酸菌ヨーグルト2gを添加して、混合し、37℃で24時間培養した。これを1次脱タンパクホエースターターとした。処理のフローを、表2に示す。
(2次脱タンパクホエースターターの調製)
脱タンパクホエー37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに、1次脱タンパクホエースターター2gを添加して、混合し、37℃で24時間培養した。これを2次脱タンパクホエースターターとした。処理のフローを、表3に示す。
脱タンパクホエー37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに、1次脱タンパクホエースターター2gを添加して、混合し、37℃で24時間培養した。これを2次脱タンパクホエースターターとした。処理のフローを、表3に示す。
(菌体濃縮)
前記2次脱タンパクホエースターター40gを1500G,5分間,20℃で遠心分離し、その沈殿を回収し、これを2次脱タンパクホエースターター菌体濃縮物とした。処理のフローを、表4に示す。
前記2次脱タンパクホエースターター40gを1500G,5分間,20℃で遠心分離し、その沈殿を回収し、これを2次脱タンパクホエースターター菌体濃縮物とした。処理のフローを、表4に示す。
[最終培養例]
(最終培養:実施例)
滅菌牛乳(121℃、20分)37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに2次脱タンパクホエースターター菌体濃縮物(全量)を添加し、混合し、37℃で、pH4.5になるまで、培養を行った。処理のフローを、表5に示す。
(最終培養:実施例)
滅菌牛乳(121℃、20分)37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これに2次脱タンパクホエースターター菌体濃縮物(全量)を添加し、混合し、37℃で、pH4.5になるまで、培養を行った。処理のフローを、表5に示す。
(最終培養:比較例)
滅菌牛乳(121℃、20分)37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これにタンパクホエースターター菌体濃縮物2gを添加し、混合し、37℃で、PH4.5になるまで、培養を行った。処理のフローを、表6に示す。
滅菌牛乳(121℃、20分)37.2gに、10%発酵促進剤(乳ペプチドFE135(商品名)けん濁液:121℃、20分間オートクレイブ)0.8gを加え、これにタンパクホエースターター菌体濃縮物2gを添加し、混合し、37℃で、PH4.5になるまで、培養を行った。処理のフローを、表6に示す。
(実施例及び比較例)
1次脱タンパクホエースターターの調製において、KW乳酸菌による小岩井KW乳酸菌ヨーグルト2gを添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の方法により、各々最終培養を行なった。結果を、図1に示す。本試験では、菌数も経時的にチェックした。本実施例のものは、培養後約11時間で、ヨーグルトの最終発酵pHであるpH4.5に達したが、比較例のものは20時間で、pH4.5に到達した。
1次脱タンパクホエースターターの調製において、KW乳酸菌による小岩井KW乳酸菌ヨーグルト2gを添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の方法により、各々最終培養を行なった。結果を、図1に示す。本試験では、菌数も経時的にチェックした。本実施例のものは、培養後約11時間で、ヨーグルトの最終発酵pHであるpH4.5に達したが、比較例のものは20時間で、pH4.5に到達した。
(実施例A,B及び比較例A,B)
1次脱タンパクホエースターターの調製において、L.acidophilusによるスターター2g(実施例A)を添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。また同様に、L.bulgaricusによるスターター2g(実施例B)を添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。それぞれの結果を、図2に示す。本実施例のものは、いずれのものも比較例のものに比べて、顕著な発酵促進効果が認められた。
1次脱タンパクホエースターターの調製において、L.acidophilusによるスターター2g(実施例A)を添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。また同様に、L.bulgaricusによるスターター2g(実施例B)を添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。それぞれの結果を、図2に示す。本実施例のものは、いずれのものも比較例のものに比べて、顕著な発酵促進効果が認められた。
(実施例及び比較例)
1次脱タンパクホエースターターの調製において、S.thermophilus +L.bulgaricusによるスターター2gを添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。結果を、図3に示す。図に示されるように、S.thermophilus 及びL.bulgaricusの複合菌を用いた場合も、本実施例のものは、比較例のものに比べて、顕著な発酵促進効果が認められた。
1次脱タンパクホエースターターの調製において、S.thermophilus +L.bulgaricusによるスターター2gを添加して、実施例1の方法に従い、スターターの調製及び培養を行い、実施例2の実施例及び比較例の各々最終培養を行なった。結果を、図3に示す。図に示されるように、S.thermophilus 及びL.bulgaricusの複合菌を用いた場合も、本実施例のものは、比較例のものに比べて、顕著な発酵促進効果が認められた。
Claims (11)
- 脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することからなるヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法。
- 脱タンパクホエーが、ホエーに乳酸を加え、pH4.5〜5.5とし、ホエータンパク質を凝集させて取り除くことにより製造したものであることを特徴とする請求項1記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法。
- ホエーが、チーズ製造時に副生するチーズホエーであることを特徴とする請求項1又は2記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法。
- ヨーグルトスターター用乳酸菌が、Lactobacillus paracasei KW3110、Lactobacillus acidophilus、或いはLactobacillus bulgaricusからなる単菌、又はStreptococcus thermophilus+Lactobacillus bulgaricusからなる複合菌のいずれか1種類から選ばれる乳酸菌であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法。
- 脱タンパクホエーを培地にしてヨーグルトスターター用乳酸菌を加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収して、第1次高濃度乳酸菌スターターを製造し、次に、新たな脱タンパクホエーを培地にして、第1次高濃度乳酸菌スターターを加えて培養・発酵し、該乳酸菌による乳酸発酵後の沈殿物を回収することにより第2次高濃度乳酸菌スターターを調製し、該第2次高濃度乳酸菌スターターを濃縮することからなるヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか記載の乳酸菌スターターの製造方法によって製造されたヨーグルト用高濃度乳酸菌スターター。
- ヨーグルト製造原料に、スターターとして請求項6記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを添加し、培養・発酵することを特徴とする発酵を促進したヨーグルトの製造方法。
- ヨーグルト製造原料への高濃度乳酸菌スターターの添加量が、2×107〜109個/ml原料であることを特徴とする請求項7記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法。
- ヨーグルト製造原料への高濃度乳酸菌スターターの添加量が、2×108〜109個/ml原料であることを特徴とする請求項8記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法。
- ヨーグルト製造原料に、該原料に対して、請求項6記載のヨーグルト用高濃度乳酸菌スターターを0.1〜10重量%添加した後、25〜50℃で培養・発酵させ、PH4.0〜5.0にて、発酵を終了させることを特徴とする発酵を促進したヨーグルトの製造方法。
- 請求項7〜10のいずれか記載の発酵を促進したヨーグルトの製造方法によって製造されたヨーグルト。
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---|---|---|---|---|
KR101423477B1 (ko) | 2014-05-08 | 2014-07-28 | 주식회사 유담 | 코팅 떡다이스를 함유하는 요구르트의 제조방법 및 상기 방법으로 제조된 요구르트 |
WO2017150669A1 (ja) | 2016-03-02 | 2017-09-08 | 学校法人早稲田大学 | イオンセンサ、イオン濃度測定方法、および電子部品 |
JP2018007639A (ja) * | 2016-07-15 | 2018-01-18 | 株式会社明治 | 微生物培養液の濃縮方法及び微生物濃縮物 |
US10845323B2 (en) | 2016-03-02 | 2020-11-24 | Waseda University | Ion sensor, ion concentration measurement method, and electronic component |
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2005
- 2005-09-29 JP JP2005285035A patent/JP2007089511A/ja active Pending
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