JP6952609B2 - 発酵乳の製造方法及び発酵乳 - Google Patents

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Description

本発明は,発酵乳の製造方法及び発酵乳に関する。具体的に説明すると,本発明は,ブルガリア菌及びサーモフィルス菌の混合接種によって乳原料を発酵させる発酵乳の製造方法などに関するものである。
以前から,発酵乳原料(ヨーグルトミックス)に,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の2種の乳酸菌をスタータとして接種して発酵させることにより,発酵乳(ヨーグルト)を製造する方法が知られている。
また,ブルガリア菌とサーモフィルス菌は,互いに共生関係にあることが知られている。すなわち,ブルガリア菌とサーモフィルス菌を発酵乳原料に混合接種すると,まずサーモフィルス菌が乳の中の微量なアミノ酸やペプチドを取り込んで増殖し,それと同時にブルガリア菌の増殖促進因子となる蟻酸及び二酸化炭素を生成する。一方で,ブルガリア菌は,サーモフィルス菌によって生成された蟻酸及び二酸化炭素を取り込んで増殖し,それと同時にサーモフィルス菌の増殖促進因子となるアミノ酸やペプチドを生成する。そして,サーモフィルス菌は,ブルガリア菌によって生成されたアミノ酸やペプチドを取り込んでさらに増殖する。このように,ブルガリア菌とサーモフィルス菌は共生作用によって互いの増殖能率を高め合うことができるため,これらの2種の乳酸菌を混合接種することにより風味の良い発酵乳を短時間で製造することが可能となる。
また,以前から,発酵乳原料に乳酸菌の増殖促進物質を別途添加して,発酵時間を短縮させる技術が知られている(特許文献1,2,3)。特許文献1には,乳酸菌の死菌体を有効成分として含有する乳酸菌の増殖促進剤が開示されている。また,特許文献2には,さつまいも焼酎粕を有効成分として含有するビフィズス菌及び乳酸菌の増殖促進剤が開示されている。また,特許文献3には,乳タンパク質濃縮物及び脱乳糖パーミエートを乳酸菌の増殖促進物質として利用することが開示されている。
特開2008−005811号公報 特開2009−125055号公報 特開平11−28056号公報
上記のように,乳酸菌の増殖能率を高めることができる物質としては,従来から多種多様なものが知られており,特許文献1から特許文献3では,各種の増殖促進物質が乳酸菌全般に有効に作用するかのように記載されている。しかし,ある種の増殖促進物質が全ての乳酸菌に対して有効に作用するということはなく,乳酸菌の種などに応じてその有効性は異なる。ところが,いずれの文献にも,ブルガリア菌とサーモフィルス菌を含む発酵乳基材に増殖促進物質を添加した実証例が示されておらず,どのような増殖促進物質がブルガリア菌とサーモフィルス菌の増殖に有効に作用するかは不明であった。また,サーモフィルス菌とブルガリア菌を混合接種した場合に,はじめに増殖曲線の誘導期を脱して対数増殖期に至るのはサーモフィルス菌であるため,増殖促進物質を利用して,特にサーモフィルス菌の増殖を促進することが好ましいといえる。しかし,いずれの文献にも,サーモフィルス菌の増殖に有効に作用する増殖促進物質は開示されていない。
また,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の混合接種により乳原料を発酵させる発酵乳の製造方法において,増殖促進物質を利用してこれら2種の乳酸菌の増殖を同時に促進すると,両者の共生関係のバランスが損なわれる懸念がある。つまり,前述したとおり,通常は,まずサーモフィルス菌が増殖に伴って蟻酸と二酸化炭素を生成し,その後ブルガリア菌がその蟻酸と二酸化炭素を取り込んで増殖するという共生関係が存在する。しかしながら,増殖促進物質を利用してサーモフィルス菌とブルガリア菌の両方の増殖を同時に促進すると,ブルガリア菌はサーモフィルス菌が生成した蟻酸と二酸化炭素を取り込まなくても増殖することが可能となるため,発酵乳基材の中の蟻酸と二酸化炭素の濃度が高まることとなる。蟻酸は苦味や酸味を呈するものであることから,発酵乳基材に残存する蟻酸の濃度が高まると,最終的に得られる発酵乳の風味が損なわれてしまうという懸念があった。従って,従来では,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の混合接種により乳原料を発酵させる発酵乳の製造方法において,発酵に要する時間を短縮させるためには,乳酸菌の増殖促進剤を使用することなく,相性の良いブルガリア菌とサーモフィルス菌の組み合わせを選択する方法がとられてきた。一方,近年において,所定の乳酸菌の機能性を訴求した商品設計を求められる場面もあり,特定のブルガリア菌とサーモフィルス菌を混合接種せざるを得ない場合には,発酵乳の酸度やpHを所定の値まで発酵させる時間を従来よりも長くして管理してきた。これは,特に工業的な大規模生産において,生産効率を大きく低下させることとなり,発酵乳の製造に要する費用(例えば製造間接費)を圧迫することになる。
そこで,本発明は,ブルガリア菌とサーモフィルス菌を混合接種する発酵乳の製造方法において,サーモフィルス菌の増殖を促進して,発酵乳全体の発酵時間を短縮した効率的な発酵乳の製造方法を提供することを解決課題とする。
本発明者らは,上記課題の解決手段について鋭意検討した結果,発酵乳原料にブルガリア菌とサーモフィルス菌を混合接種するとともに,鉄イオン源をさらに添加することにより,サーモフィルス菌の増殖が促進されることを見出し,その結果,発酵乳全体の発酵時間を短縮することに成功した。つまり,鉄イオン源は,サーモフィルス菌の誘導期を短縮する効果があると考えられる。そして,鉄イオン源を利用してサーモフィルス菌の誘導期を短縮することで,それと共生関係にあるブルガリア菌の増殖時間も短縮することが可能となった。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば,従来の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の工程・構成を有する。
なお,本発明者らがサーモフィルス菌の増殖を促進することを見出した鉄イオン源の添加は,従来では,ヒトが栄養素として鉄分を補給する目的のために行うことが常識であった。このため,ヒトが鉄分として栄養素を補給する目的のために鉄イオン源を添加する場合,発酵乳基材を発酵させて発酵乳を得た後に,その発酵乳に対して添加することが一般的であった。これに対して,本発明者らは,このような目的にしか使われない鉄イオン源を敢えて発酵前の発酵乳基材に添加することで,サーモフィルス菌の増殖を促進するという本発明の特有の効果を見出したのである。
本発明の第1の側面は,発酵乳の製造方法に関する。本発明に係る発酵乳の製造方法は,調製工程と発酵工程を含む。調整工程では,発酵乳原料に,ブルガリア菌及びサーモフィルス菌を含む乳酸菌スタータと,鉄イオン源とを添加して,発酵乳基材を得る。つまり,鉄イオン源は,発酵前の発酵乳基材に対して添加される。発酵工程では,調整工程によって得られた発酵乳基材を発酵させて発酵乳を得る。
本発明に係る発酵乳の製造方法において,鉄イオン源の添加量は,発酵乳基材の重量に対して,0.00025重量%以上0.1重量%以下であることが好ましい。
本発明に係る発酵乳の製造方法において,鉄イオン源は,2価の鉄イオン源であることが好ましい。
本発明に係る発酵乳の製造方法において,鉄イオン源は,硫酸第一鉄とクエン酸鉄の両方又はいずれか一方であることが好ましい。
本発明の第2の側面は,発酵乳に関する。本発明に係る発酵乳は,ブルガリア菌,サーモフィルス菌,及び鉄イオン源を含む。
本発明に係る発酵乳において,鉄イオン源は,その発酵乳の重量に対して,0.00025重量%以上0.1重量%以下含有されていることが好ましい。
本発明によれば,発酵乳基材の発酵時間を短縮して,効率的に発酵乳を製造することができる。また,本発明によれば,サーモフィルス菌の増殖を促進することができる。これにより,風味の良い発酵乳を短時間で製造することが可能となる。
図1は,表5−2,表5−3,及び表5−3の測定結果を表した折れ線グラフを示している。
以下,本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
本願明細書において,「寄託番号:FERM・・」とは,独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにおける寄託番号を意味し,「寄託番号:NITE・・」とは,独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターにおける寄託番号を意味する。また,「NCIMB・・」とは,英国微生物株保存機関のグループ内の1つであるNCIMB研究所が保存する菌株であり,一般に購入することができる。また,「IFO・・」とは,独立行政法人製品評価技術基盤機構が保存する菌株であり,一般に購入することができる。
本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
本願明細書において,「発酵乳原料」(例:ヨーグルトミックス)とは,発酵乳の材料であり,乳酸菌スタータを添加する前のものである。発酵乳原料は,生乳や殺菌乳のみからなるものであってもよいし,生乳や殺菌乳に,脱脂粉乳,クリーム,砂糖,水などを混合して調製したものであってもよい。また,「発酵乳基材」(例:ヨーグルトベース)とは,上記の発酵乳原料乳に乳酸菌スタータを添加したものであり,発酵前の状態のものを意味する。また,「発酵乳」(例:ヨーグルト)とは,上記の発酵乳基材を発酵させることにより得られるものであり,発酵工程後の製造結果物を意味する。
本発明は,発酵乳や,その製造方法に関する。発酵乳の例は,ヨーグルトである。ヨーグルトは,プレーンタイプや,ハードタイプやソフトタイプであってもよいし,或いはドリンクタイプであってもよい。また,本発明によって製造された発酵乳を,フローズンヨーグルト,デザート,チーズなどの乳製品を含む食品をはじめとする全ての飲食品の材料として用いることも可能である。本発明において,発酵乳とは,乳等省令で定義される「発酵乳」,「乳製品乳酸菌飲料」,「乳酸菌飲料」などのいずれであってもよい。ただし,本発明における発酵乳とは,これらの例に限定されるものではなく,仮に上記の定義から外れたものであっても発酵乳基材を発酵させたものであれば全て含まれる。
本発明に係る発酵乳の製造方法は,発酵乳基材を得るための調整工程と,得られた発酵乳基材を発酵させて発酵乳を得るための発酵工程と,を含む。
まず,調製工程は,発酵乳の材料となる発酵乳原料(ヨーグルトミックス)に,乳酸菌スタータと鉄イオン源を添加して,発酵乳基材(ヨーグルトベース)を調整する工程である。
発酵乳原料としては,公知のものを用いることができる。例えば,発酵乳原料は,生乳のみからなるもの(生乳100%)であってもよい。また,発酵乳原料は,生乳に,脱脂粉乳,クリーム,砂糖,水などを混合して調製したものであってもよい。また,発酵乳原料には,その他に,殺菌乳(UHT乳,HTST乳など),全脂乳,脱脂乳,全脂濃縮乳,脱脂濃縮乳,全脂粉乳,バターミルク,有塩バター,無塩バター,ホエー,ホエー粉,ホエータンパク質濃縮物(WPC),ホエータンパク質単離物(WPI),α−La(アルファ−ラクトアルブミン),β−Lg(ベータ−ラクトグロブリン),乳糖などを添加してもよい。また,発酵乳原料には,予め温めたゼラチン,寒天,増粘剤,ゲル化剤,安定剤,乳化剤,ショ糖,甘味料,香料,ビタミン,ミネラルなどを適宜添加してもよい。調製工程では,発酵乳原料を均質化する均質化工程により,発酵乳原料に含まれる脂肪球などを微硫化(粉砕)することとしてもよい。この均質化工程により,発酵乳の製造過程や製造後において,脂肪分が分離することや浮上することを抑制や防止できる。
乳酸菌スタータは,上記の発酵乳原料に対して接種される。本発明において,乳酸菌スタータには,少なくとも,ブルガリア菌とサーモフィルス菌が含まれる。「ブルガリア菌」とは,ラクトバチルス・ブルガリカス(L. bulgaricus)であり,「サーモフィルス菌」とは,ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)である。また,本発明では,ブルガリア菌とサーモフィルス菌の他に,公知の乳酸菌を添加してもよい。その他の乳酸菌としては,例えば,ガセリ菌(ラクトバチルス・ガッセリ(L. gasseri)),ラクティス菌(ラクトコッカス・ラクティス(L. lactis)),クレモリス菌(ラクトコッカス・クレモリス(L. cremoris)),ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium))などが挙げられる。ただし,乳酸菌スタータは,ブルガリア菌とサーモフィルス菌のみからなるものであることが好ましい。乳酸菌スタータの添加量は,公知の発酵乳の製造方法において採用されている数量であればよく,例えば,0.1〜5重量%であることが好ましく,0.5〜4重量%であることがより好ましく,1〜3重量%であることがさらに好ましい。
また,乳酸菌スタータに含まれるブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数(生菌数)は,公知の発酵乳の製造方法において採用されている数値であればよい。例えば,乳酸菌スタータに含まれるブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数の比率は,1:4〜1:5が一般的である。なお,乳酸菌スタータに含まれるサーモフィルス菌の菌数を1(基準)としたときのブルガリア菌の菌数の比率(ブルガリア菌の菌数/サーモフィルス菌の菌数)は,0.01〜0.8であればよく,0.05〜0.7であることが好ましく,0.1〜0.5であることがより好ましく,0.2〜0.4であることがさらに好ましい。また,乳酸菌スタータに含まれるブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数(生菌数)は,予め,サーモフィルス菌の菌数よりもブルガリア菌の菌数を多く含ませることもできる。例えば,乳酸菌スタータに含まれるサーモフィルス菌の菌数に対するブルガリア菌の菌数の比率は,1.0〜5.0,又は1.5〜4.0などであってもよい。なお,乳酸菌の菌数は,公知の方法に従って測定すればよい。
発酵乳原料には,ブルガリア菌とサーモフィルス菌を含む乳酸菌スタータに加えて,鉄イオン源が添加される。鉄イオン源とは,溶液にしたときに鉄イオンを供給する物質,あるは鉄イオンとなる物質をいい,例えば鉄塩が挙げられる。鉄イオン源としては,例えば,硫酸第一鉄,硫酸第二鉄,クエン酸鉄,クエン酸第一鉄ナトリウム,クエン酸鉄アンモニウム,硝酸第一鉄,硝酸第二鉄,塩化第二鉄,グルコン酸第一鉄,乳酸鉄,グルコン酸第一鉄,ピロリン酸第一鉄,ピロリン酸第二鉄,ヘム鉄,フェリチン,及びラクトフェリンを挙げることができ,これらのうちの1種又は2種以上を混合して発酵乳原料に添加することができる。鉄イオン源は,溶液中で2価の鉄イオンを解離させる化合物(2価の鉄イオン源)であることが好ましいが,3価の鉄イオンを解離させる化合物(3価の鉄イオン源)であってもよい。2価の鉄イオン源としては,硫酸第一鉄,クエン酸鉄,硝酸第一鉄を挙げることができる。また,3価の鉄イオン源としては,塩化第二鉄,硝酸第二鉄,硫酸第二鉄を挙げることができる。
本発明において,鉄イオン源としては,2価の鉄イオン源である,硫酸第一鉄又はクエン酸鉄を用いることが好ましい。硫酸第一鉄とクエン酸鉄は,他のラクトフェリン等と比べて,導入コストが低く,また利便性(ハンドリングや調製の手間など)において優れている。また,ラクトフェリンは,タンパク質であり,加熱による殺菌処理ができないのに対し,硫酸第一鉄とクエン酸鉄は,ヨーグルトミックス等に添加してこのヨーグルトミックスと共に加熱による殺菌処理を行うことができるため,この点においても優れているといえる。従って,本発明では,硫酸第一鉄のクエン酸鉄の両方又はいずれか一方を,発酵乳原料に添加する鉄イオン源として用いることが好ましい。
なお,鉄イオン源の添加は,従来では,ヒトが栄養素として鉄分を補給する目的のために行うことが常識であった。すなわち,本発明者らは,このような目的にしか使われない鉄イオン源を,発酵前の発酵乳基材に敢えて添加することで,サーモフィルス菌の増殖を促進するという本発明特有の効果を見出した。つまり,本発明の特有の効果は,従来の技術常識からは想到し得ないものであった。
鉄イオン源の添加量は,発酵乳の風味に影響を及ぼさない程度に微量であることが好ましい。具体的には,鉄イオン源の添加量は,発酵乳基材(発酵乳原料に乳酸菌スタータと鉄イオン源を添加したもの)の重量に対して,0.00025〜0.1重量%であることが好ましい。鉄イオン源の添加量の下限は,0.00025重量%,0.001重量%,0.0025重量%,0.0050重量%,0.0075重量%,又は0.01重量%とすればよい。このように極微量な鉄イオン源の添加量であっても,サーモフィルス菌の誘導期を短縮して,サーモフィルス菌の増殖を促進することが可能である。このため,鉄イオン源を添加した場合であっても,最終的に得られる発酵乳の良好な風味を維持することができる。また,鉄イオン源の添加量の上限は,0.1重量%である。鉄イオン源の添加量が0.1重量%を超えると,発酵乳の風味が損なわれる恐れがある。このため,鉄イオン源の添加量は,0.1重量%以下とすることが好ましく,特に0.05重量%以下とすることが好ましい。
なお,本発明における鉄イオン源の好ましい添加量は,従来の鉄イオン源の使用目的であるヒトが栄養素として鉄分を補給する目的にはあまりにも少ない添加量であり,このような少ない鉄イオン源の添加量を設定すること自体,従来の技術常識では全く考えられなかった。
上記のように,発酵乳原料に,ブルガリア菌とサーモフィルス菌を含む乳酸菌スタータと鉄イオン源を添加して,発酵乳基材を調整する。その後,発酵乳基材を発酵させて,ヨーグルトなどの発酵乳を得る。このように,発酵工程は,鉄イオン源の添加後に行われる。なお,乳酸菌スタータと鉄イオン源の添加の順番は特に制限はなく,例えば,乳酸菌スタータと鉄イオン源を同時に添加することもでき,鉄イオン源を添加してから乳酸菌スタータを添加することもでき,乳酸菌スタータを添加してから鉄イオン源を添加することもできる。
発酵工程では,発酵乳基材を所定温度(例えば,30℃〜50℃)に保持しながら発酵させて,発酵乳を得る。ここで,発酵乳基材の発酵には,公知の方法を用いることができる。例えば,発酵室などによって,発酵乳基材を発酵させればよく,ジャケット付のタンクによって,発酵乳基材を発酵させればよい。そして,発酵工程では,例えば,ヨーグルトがプレーンタイプやハードタイプの場合には,後発酵処理を適用すればよく,ヨーグルトがソフトタイプやドリンクタイプの場合には,前発酵処理を適用すればよい。また,発酵工程では,発酵乳基材を発酵させる条件を,乳酸菌の種類や数量,発酵乳の風味や食感などを考慮して,発酵の温度や発酵の時間などを適宜調整すればよい。具体的に,発酵工程では,乳酸菌スタータが添加された発酵乳基材を30℃以上,1時間以上で保持することが好ましい。さらに,発酵工程では,発酵乳基材が30℃〜50℃で保持されていることが好ましく,33℃〜47℃で保持されていることがより好ましく,35℃〜45℃で保持されていることがさらに好ましく,37℃〜45℃で保持されていることが特に好ましい。また,発酵工程では,例えば,発酵乳の酸度が0.8%以上にするにあたり,発酵乳基材が1時間〜30時間で保持されていることが好ましく,2時間〜24時間で保持されていることがより好ましく,2.5時間〜12時間で保持されていることがさらに好ましく,2.7〜10時間で保持されていることがさらに好ましく,2.8〜8時間で保持されていることがさらに好ましく,2.9〜6時間で保持されていることがさらに好ましく,3〜5時間で保持されていることが特に好ましい。
発酵工程では,発酵乳基材を発酵させる条件を,発酵乳基材や乳酸菌の種類や数量,発酵乳の風味や食感などを考慮して,酸度(乳酸酸度)を適宜調節してもよい。具体的に,発酵工程では,発酵乳基材のタンパク質含量が3重量%である場合には,発酵乳基材の酸度が0.6%以上,0.7%以上,0.75%以上,又は0.8%以上となるまで発酵させる(保持する)ことが好ましい。さらに,発酵工程では,発酵乳基材のタンパク質含量が3重量%である場合には,発酵乳基材の酸度が0.6〜2.0%,0.7〜2.0%,0.75〜2.0%,又は0.8%〜2.0%となるまで発酵させることが好ましい。発酵乳基材の酸度を調整する場合には,所定の酸度に達した段階で,原料乳の発酵を終了させればよい。なお,本発明において,発酵乳基材の酸度は,乳等省令の「乳等の成分規格の試験法」に従って測定される。具体的には,試料の10gに,炭酸ガスを含まないイオン交換水を10mlで添加してから,指示薬として,フェノールフタレイン溶液を0.5mlで添加する。そして,水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)を添加しながら,微紅色が消失しないところを限度として滴定し,その水酸化ナトリウム溶液の滴定量から試料の100g当たりの乳酸の含量を求めて,酸度(乳酸酸度)とする。なお,フェノールフタレイン溶液は,フェノールフタレインの1gをエタノール溶液(50%)に溶かして100mlにフィルアップして調製される。
本発明において,発酵乳基材の脂肪含量,タンパク質含量,炭水化物含量など,いわゆる組成は任意である。発酵乳基材の脂肪含量は,発酵乳の風味(濃厚感)や物性(食感)に寄与するものであり,商品設計に応じて任意に調整でき,例えば0〜10重量%,0〜8重量%,0〜6重量%,0〜5重量%,0〜4重量%である。また,発酵乳基材のタンパク質含量は,発酵乳の風味(濃厚感)や物性(食感)に寄与するものであり,商品設計に応じて任意に調整でき,例えば0.5〜10重量%,1〜8重量%,1.5〜6重量%,2〜4重量%,2.5〜3.5重量%である。さらに,発酵乳基材の炭水化物含量は,発酵乳の風味(濃厚感や甘味度)や物性(食感)に寄与するものであり,商品設計に応じて任意に調整でき,例えば0.5〜15重量%,1〜14重量%,1.5〜13重量%,2〜12重量%,3〜10重量%である。
以下,実施例を用いて,本発明を具体的に説明する。ただし,本発明は,以下の実施例に限定されることなく,公知の手法に基づく様々な改良を加えることができるものである。
実施例1では,ヨーグルトミックス(発酵乳原料)に鉄イオン源を添加することによる発酵時間の短縮効果と,鉄イオン源がブルガリア菌とサーモフィルス菌に与える影響を検証した。硫酸第一鉄(鉄イオン源)を配合して製造したヨーグルト(発酵乳)の発酵時間を表1−1に示す。また,本実施例で使用したヨーグルトベース(発酵乳基材)の組成を表1−2に示す。
Figure 0006952609
Figure 0006952609
実施例1の実験では,表1−1に示されるように,サーモフィルス菌とブルガリア菌を混合接種するにあたり,サーモフィルス菌をOLS3059(寄託番号:FERM BP−10740)に固定し,それに組み合わせるブルガリア菌をP1505301,P1505302,P1505303,OLL1073−R(寄託番号:FERM BP−10741),又はP1505304とした。なお,P1505301からP1505304は別種のブルガリア菌である。各組み合わせのサーモフィルス菌とブルガリア菌を含む乳酸菌スタータを,硫酸第一鉄を含有するヨーグルトミックスと,硫酸第一鉄を含有するヨーグルトミックスとに接種してヨーグルトベースを調整し,これを発酵させた。表1−2に示されるとおり,すべてのヨーグルトベースの組成は,UHT法で殺菌した殺菌乳75.6重量%,脱脂粉乳2.6重量%,砂糖4.5重量%,乳酸菌スタータ3重量%,原料水14.3重量%とし,このヨーグルトベースのタンパク質含量は3.0重量%であった。また,すべての組み合わせにおいて,硫酸第一鉄の添加量は,ヨーグルトベースの重量に対して,0.01重量%とした。各ヨーグルトベースを,発酵時のpHが4.3〜4.5に低下したところで発酵を終了させた。ただし,同種の乳酸菌スタータ用いられ,硫酸第一鉄の添加の有無のみが異なり,比較対象となる2種の発酵乳については,発酵終了時pHは同じ値となるように調整した。その結果,硫酸第一鉄を配合することによって,発酵乳の発酵時間が11分〜1時間13分早まることが確認できた。なお,発酵乳基材へブルガリア菌とサーモフィルス菌を添加した直後のブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌数は,硫酸第一鉄を添加の有無に関わらず同一であった。
また,各ヨーグルトベースについて,発酵開始1.5時間後のブルガリア菌とサーモフィルス菌の菌濃度を調べたところ,硫酸第一鉄の添加の有無によって,ブルガリア菌の菌濃度は影響を受けていないが,サーモフィルス菌は硫酸第一鉄が添加されたことによって,菌濃度が1.3〜2.1倍に上昇していることが確認できた。このため,硫酸第一鉄(鉄イオン源)は,ブルガリア菌の増殖には殆ど影響を与えないものの,サーモフィルス菌については増殖促進作用を発揮するといえる。また,このことから,硫酸第一鉄を添加することによる発酵時間の時間の短縮は,硫酸第一鉄の添加によるサーモフィルス菌の増殖促進作用によってもたらされたものであると推測できる。ただし,発酵終了時の菌数を比較すると,ブルガリア菌及びサーモフィルス菌共に,硫酸第一鉄の添加の有無によって大きな差は生じておらず,硫酸第一鉄は発酵乳調製後の菌数を変動させないことも確認できた。
また,上記の実験により製造されたヨーグルトを,5℃で2週間保存し,保存後の酸度と保存前の酸度の差を調べたが,硫酸第一鉄の有無による酸度の差は見受けられなかった。よって,第一硫酸鉄が保存中の酸生成に影響されず,保存中のヨーグルトの風味を劣化させないことも確認できた。
以上の結果から,ヨーグルトベースに硫酸第一鉄を配合することによって,発酵終了時の菌数や保存中の酸生成などの品質に影響を与えることなく,ヨーグルトの発酵時間を短縮できた。また,硫酸第一鉄の添加によりサーモフィルス菌の増殖が促進され,組み合わせるブルガリア菌の種類に関係なく,ヨーグルトの発酵時間を短縮できるものと考えられる。
実施例2では,実施例1で実証された硫酸第一鉄の効果が,どのような種類のサーモフィルス菌を接種した場合でも発揮されるのかについて検証を行った。硫酸第一鉄(鉄イオン源)を配合して製造したヨーグルト(発酵乳)の発酵時間を表2−1に示す。
Figure 0006952609
既に説明したとおり,実施例1では,サーモフィルス菌をOLS3059(寄託番号:FERM BP−10740)に固定し,それに組み合わせるブルガリア菌に5株を用いて検討した。これに対して,実施例2では,ブルガリア菌をOLL1067(寄託番号NITE BP−732)に固定し,それに組み合わせるサーモフィルス菌として,一般的に入手可能な基準株であるNCIMB8501T,一般的に入手可能な基準株であるIFO13957,OLS3059(寄託番号:FERM BP−10740),OLS3290(寄託番号:FERM P−19638),OLS3294(寄託番号:NITE P−77)を使用した。ブルガリア菌OLL1067を各サーモフィルス菌と組み合わせた乳酸スタータのそれぞれについて,硫酸第一鉄(鉄イオン源)の発酵速度に対する影響を調べた(表2−1)。なお,硫酸第一鉄の添加量は,ヨーグルトベースの重量に対して,0.01重量%とした。また,ヨーグルトベースの組成は,表1−2に示したとおりとした。その結果,何れの組み合わせおいても,発酵時間が20分前後短縮されることが確認された。また,各サーモフィルス菌の発酵終了時の菌濃度には,硫酸第一鉄を添加したものとそうでないものとで違いは見られなかった。このことから,サーモフィルス菌であればどのような菌株であっても,発酵終了時のブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数に影響を及ぼすことなく,硫酸第一鉄による発酵促進効果が発揮されることが確認できた。なお,発酵終了時のpH4.5は酸度0.73%に相当する。
実施例3では,硫酸第一鉄の添加量が発酵乳の発酵時間に与える影響を検証した。硫酸第一鉄の添加量を変化させた場合の発酵乳の発酵時間を,表3−1に示す。
Figure 0006952609
既に説明したとおり,実施例1及び実施例2では,硫酸第一鉄の添加量を0.01重量%とし,この添加量において発酵時間の短縮効果が見られた。このため,実施例3では,硫酸第一鉄の添加量を更に低くし,0.0075重量%,0.0050重量%,0.0025重量%,及び0.0010重量%においても発酵時間が短縮されるかを検証した(表3−1)。この結果から,0.0010重量%〜0.0075重量%の硫酸第一鉄の添加量においても,硫酸第一鉄の添加量が0.01重量%の場合と同様に,発酵終了時のブルガリア菌の菌数とサーモフィルス菌の菌数に影響を及ぼすことなく,発酵促進効果が得られることが確認された。また,上述の硫酸第一鉄の添加量の範囲では,発酵後の発酵乳における菌濃度に変化が見られないことも確認できた。なお,発酵終了時のpH4.5は酸度0.73%に相当する。
実施例4では,実施例3よりもさらに低い添加量の硫酸第一鉄が発酵乳の発酵時間に与える影響を検証した。また,あわせて,硫酸第一鉄以外の鉄イオン源として,クエン酸鉄の発酵促進効果についても検証した。硫酸第一鉄の添加量を低減させた場合に発酵乳の発酵時間に与える影響と,クエン酸鉄の発酵促進効果を,表4−1に示す。
Figure 0006952609
実施例3では硫酸第一鉄の添加量を最少で0.001重量%としたが,この添加量においても発酵時間の短縮効果が見られた。このため,実施例4では,硫酸第一鉄の添加量を更に低くし,0.00025重量%,0.00010重量%においても発酵時間が短縮されるかを検証した(表4−1)。さらに,硫酸第一鉄以外の鉄を含む食品添加物(鉄イオン源)の発酵促進効果を調べるために,クエン酸鉄の効果も調べた。この結果から,硫酸第一鉄の添加量を0.00010重量%とした場合には,発酵開始1.5時間後のpHが5.80と他の硫酸第一鉄の添加量と比較すると高くなり,サーモフィルス菌の菌数もやや低くなることが明らかとなり,発酵促進効果が弱まる傾向が確認された。つまり,硫酸第一鉄の添加量が0.00010重量%未満である場合,発酵条件などにより,十分な発酵促進効果が得られない可能性も考えられた。これに対して,硫酸第一鉄の添加量は0.00025重量%以上とすれば,十分に発酵促進効果が得られると判断できる。また,硫酸第一鉄以外の鉄イオン源としてクエン酸鉄を使用したが,クエン酸鉄であっても,硫酸第一鉄の添加量が0.001重量%の場合と同様に,発酵乳の発酵促進効果を得られることが確認できた。
実施例5では,硫酸第一鉄(鉄イオン源)の添加がブルガリア菌の増殖とサーモフィルス菌の増殖に与える影響を検証した。具体的に,本実施例では,硫酸第一鉄入りの培地(実施例)と硫酸第一鉄無しの培地(比較例)の両方について,ブルガリア菌が産生するD−乳酸菌の濃度とサーモフィルス菌が産生するL−乳酸菌の濃度を1時間毎に計測した。
硫酸第一鉄入りの培地の組成は,培地100重量%(600g)に対して,10重量%(60g)の脱脂粉乳(SMP)と,0.01重量%(0.06g)の硫酸第一鉄と,残りの89.99重量%(539.94g)の純水とした。硫酸第一鉄無しの培地の組成は,硫酸第一鉄を除くとほぼ同様であり,培地100重量%(600g)に対して,10重量%(60g)の脱脂粉乳(SMP)と90重量%(540g)の純水とした。
硫酸第一鉄入りの培地は,脱脂粉乳に純水と硫酸第一鉄を加えた後,95度で5分間加熱殺菌し,滅菌済みフラスコに90gずつ分注し,冷蔵庫で保存して冷却した後に,再度培地を43度まで昇温してから,乳酸スタータを添加した。乳酸菌スタータの組成は,培地100重量%(90g)に対して,0.20重量%(0.18g)のブルガリア菌と,1.80重量(1.62g)のサーモフィルス菌とした。硫酸第一鉄無しの培地についても,硫酸第一鉄を加える以外の手順を同様にして,乳酸菌スタータを添加した。ここで,乳酸菌スタータは,ブルガリア菌をP1505303の一種に固定し,それに組み合わせるサーモフィルス菌をOLS3289(一般的に入手可能な基準株であるNCIMB8501T),OLS3059(寄託番号:FERM BP−10740),又はOLS3290(寄託番号:FERM P−19638)の3種とした。
各種の培地について,1時間毎に,酸度(%),L−乳酸とD−乳酸の濃度の合計値(mM),L−乳酸の濃度(mM),及びD−乳酸の濃度(mM)を測定した。培地の酸度は,乳等省令の「乳等の成分規格の試験法」に従って測定した。L−乳酸は,サーモフィルス菌によって産生されるため,L−乳酸の濃度の増加率を確認することによってサーモフィルス菌の増殖率を推測できる。D−乳酸は,ブルガリア菌によって産生されるため,D−乳酸の濃度の増加率を確認することでブルガリア菌の増殖率を推測できる。
培地に含まれるL−乳酸とD−乳酸の分離及び濃度測定は,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により以下の手順及び条件に従って行った。
(1)HPLC用分析サンプルの調製
試料(培地)と超純水を1:1で混合した後,カレッツ試薬を加え12000rpmで10分の遠心分離によりタンパク質を除去した。なお,遠心分離は4℃以下で行った。得られた上清を0.22μmフィルターで濾過して供与試料とした。D−乳酸およびL−乳酸の標品には乳酸ナトリウム(SIGMA−ALDOLICH製)を用いた。
(2)D−乳酸とL−乳酸測定時のHPLCの分析条件
D−乳酸及びL−乳酸の濃度測定時のHPLCの分析条件を以下に示す。なお,D−乳酸及びL−乳酸は下記カラムの特性により分離検出される。
・カラム :SUMICHIRAL OA−5000(住化分析センター社製)
・カラムサイズ:4.6mmI.D.×150mm
・移動相 :2mM 硫酸銅(II)・五水和物/ 5%イソプロパノール水溶液
・流速 :1.0mL/min
・温度 :40℃
・検出波長 :UV254nm
以下の表5−1は,各種培地の酸度の1時間毎の変化を示している。表5−2は,各種培地におけるL−乳酸とD−乳酸の濃度の合計値の1時間毎の変化を示している。表5−3は,各種培地におけるL−乳酸の濃度の1時間毎の変化を示している。表5−4は,各種培地におけるD−乳酸の濃度の1時間毎の変化を示している。また,図1は,表5−2,表5−3,及び表5−3の測定結果を表した折れ線グラフを示している。なお,以下の表及び図1において,硫酸第一鉄入りの培地は「+Fe」で示し,硫酸第一鉄無しの培地は「cont」で示している。
Figure 0006952609
Figure 0006952609
Figure 0006952609
Figure 0006952609
図1(b)から判るように,硫酸第一鉄を添加した培地(+Fe)では,これを添加しない培地(cont)と比較して,L−乳酸の濃度の増加率が高いことから,硫酸第一鉄にはサーモフィルス菌の発酵を促進する効果があることが確認できた。また,図1(a)及び(b)に示されるように,乳酸総量(D−乳酸+L−乳酸)に対するL−乳酸の割合が増加したことは,サーモフィルス菌の発酵が促進されたことを示している。これにより,硫酸第一鉄(鉄イオン源)の添加によりサーモフィルス菌の発酵が促進され,サーモフィルス菌の発酵促進が培地(発酵乳基材)全体の発酵を促進していることが確認できた。
また,図1(c)から判るように,D−乳酸の濃度については,硫酸第一鉄を添加した培地とこれを添加しない培地とで殆ど変化が見られなかった。これにより,硫酸第一鉄の添加によって,ブルガリア菌は,サーモフィルス菌ほど増殖が促進されないことわかった。このため,硫酸第一鉄(鉄イオン源)を培地(発酵乳基材)に添加することで,ブルガリア菌の増殖に殆ど影響を与えることなく,サーモフィルス菌の増殖を促進できることが確認された。サーモフィルス菌とブルガリア菌の両方の増殖を同時に促進すると,ブルガリア菌はサーモフィルス菌が生成した蟻酸と二酸化炭素を取り込まなくても増殖することが可能となるため,発酵乳基材の中の蟻酸と二酸化炭素の濃度が高まるおそれがある。特に蟻酸は苦味や酸味を呈するものであることから,発酵乳基材に残存する蟻酸の濃度が高まると,最終的に得られる発酵乳の風味が損なわれてしまうという懸念がある。これに対して,鉄イオン源の添加により,ブルガリア菌の増殖に殆ど影響を与えることなく,サーモフィルス菌の増殖を促進することで,ブルガリア菌は通常通り発酵乳基材の中の蟻酸と二酸化炭素を取り込んで増殖するため,ブルガリア菌の増殖に伴って発酵乳基材の中の蟻酸と二酸化炭素が低下し,発酵乳基材の良好に維持することができる。
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,本発明の実施例について説明した。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて,当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
本発明は,ヨーグルトなどの発酵乳の製造方法などに関する。従って,本発明は,ヨーグルトなどの発酵乳の製造業において好適に利用しうる。

Claims (3)

  1. 発酵乳原料に,ブルガリア菌及びサーモフィルス菌を含む乳酸菌スタータと,鉄イオン源とを添加して,発酵乳基材を得る調製工程と,
    前記発酵乳基材を発酵させて発酵乳を得る発酵工程と,を含む
    発酵乳の製造方法であって,
    前記鉄イオン源は,硫酸第一鉄とクエン酸鉄の両方又はいずれか一方であり,
    前記鉄イオン源の添加量は,前記発酵乳基材の重量に対して,0.00025重量%以上0.001重量%以下である
    発酵乳の製造方法。
  2. 前記鉄イオン源により前記サーモフィルス菌の増殖を促進する
    請求項1に記載の発酵乳の製造方法。
  3. ブルガリア菌,サーモフィルス菌,及び鉄イオン源を含む発酵乳であって,
    前記鉄イオン源は,硫酸第一鉄とクエン酸鉄の両方又はいずれか一方であり,
    前記鉄イオン源は,前記発酵乳の重量に対して,0.00025重量%以上0.001重量%以下含有されている
    発酵乳。
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