JP2007085969A - バイオセンサー - Google Patents

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Abstract

【課題】 生理活性物質を結合するための官能基を不活性エステルの形で保存し、アミド結合を形成する直前に、簡便な操作で活性化エステルへと変換させる技術を提供すること。
【解決手段】 化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板からなるバイオセンサー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、バイオセンサー及びそれを用いた生体分子間の相互作用を分析する方法に関する。特に本発明は、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに用いるためのバイオセンサー及びそれを用いた生体分子間の相互作用を分析する方法に関する。
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化を反射光波長のピークシフト又は一定波長における反射光量の変化を測定して求めることにより、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
上記した技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許文献1を参照)。また、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜からなる測定チップが報告されている(特許文献2を参照)。
カルボン酸を有するバイオセンサー表面にアミノ基を有する生理活性物質を結合させる場合、水媒体中において、水溶性カルボジイミドである1-(3-Dimethylaminopropyl)-3 ethylcarbodiimide(EDC)とN-Hydroxysuccinimide(NHS)を用いてバイオセンサー表面のカルボン酸を活性化させた後、生理活性物質のアミノ基と反応させることで、カルボン酸アミドを形成することが一般的に行われている。表面プラズモン共鳴分析(SPR)や水晶発振子マイクロバランス(QCM)がごときバイオセンサー表面を作成する場合にも、EDCとNHSの組み合わせにより、水中でアミド結合を形成することが報告されている(特許文献3及び4)。
しかしながら、水中でEDCとNHSを混合した場合、「得られた活性エステルの安定性が充分ではなく、時間とともに加水分解してしまう」という問題があった。
特許第2815120号 特開平9−264843号 特開平11−281569号公報 特開2000−39401号公報
本発明は上記した従来技術の問題を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、生理活性物質を結合するための官能基を不活性エステルの形で保存し、アミド結合を形成する直前に、簡便な操作で活性化エステルへと変換させる技術を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板を用意し、アミノ基を有する化合物と反応させて結合させる直前に、上記フェニルエステル基を化学反応により活性化することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板からなるバイオセンサーが提供される。
好ましくは、化学反応により電子吸引性が増加する置換基はジアルキルアミノ基である。
好ましくは、基板は、金、銀、銅、白金、及びアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなる金属表面あるいは金属膜である。
好ましくは、本発明のバイオセンサーは、非電気化学的検出に使用され、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析に使用される。
本発明の別の側面によれば、基板上に存在する化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基を化学反応により活性化した後に、活性化されたフェニルエステル基をアミノ基を有する化合物と反応させることを含む、アミノ基を有する化合物を基板に固定する方法が提供される。
好ましくは、化学反応により電子吸引性が増加する置換基はジアルキルアミノ基である。
好ましくは、化学反応はアルキル化反応、錯体化反応、又はジアゾ化反応である。
好ましくは、アミノ基を有する化合物は生理活性物質である。
本発明のさらに別の側面によれば、アミノ基を有する化合物が上記した本発明の方法により固定化されている、上記した本発明のバイオセンサーが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、アミノ基を有する化合物が結合している請求項1から5の何れかに記載のバイオセンサーと被験物質とを接触させる工程を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法が提供される。
好ましくは、アミノ基を有する化合物と相互作用する物質を非電気化学的方法により検出または測定することができ、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析により検出または測定することができる。
本発明のバイオセンサーにおいては、生理活性物質を結合するための官能基を不活性エステルの形で保存し、アミド結合を形成する直前に、簡便な操作で活性化エステルへと変換させることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のバイオセンサーは、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板からなることを特徴とする。
アミド形成に用いられる活性エステル形成化合物は大きな電子吸引性を有しており、電子吸引性基で活性化されたカルボニル炭素をアミン成分が求核攻撃をすることでアミド結合が形成されることが一般的に知られている。それゆえ、保存安定性とアミド結合活性を両立させるためには、電子吸引性の低いエステルの状態で保存し、アミド結合を形成する直前に外部刺激により電子吸引性の高い化合物へと変換することで、保存安定性とアミド結合活性の両立が可能となると期待される。このような考えに基づき鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
置換フェニルエステルの置換基の電子吸引性および電子供与性は、Hammettの置換基定数σで定量的に評価することが可能である。σ値とは、ベンゼン環のメタおよびパラ置換基の効果を定量化するためにHammettらにより定義された値であり、正のσ値は電子吸引性を、負のσ値は電子供与性を示し、その絶対値が大きいほど、電子吸引性あるいは電子供与性が大きいことを意味している。Hammettのσ値の物理的意味や算出法に関しては、稲本直樹著「ハメット測」丸善(1983年)、奥山格・山高博著「有機反応論」朝倉書店(2005年)、C.Hansch, A.Leo, R.W.Taft, Chem.Rev., 91,165-195(1991)等に、詳細に説明されている。
外部刺激により電子吸引性が増加することは、下記式1における置換基Xのσ値をσ(X)、置換基Yのσ値をσ(Y)とした場合、σ(Y)-σ(X)>0であることを意味しており、この差が大きいほど電子吸引性の増加の程度が大きい。保存安定性と反応性の両立の観点からは、外部刺激に基づく電子吸引性の差が大きいことが望まれるため、好ましくは σ(Y)−σ(X)>0.5であり、より好ましくはσ(Y)−σ(X)>0.8であり、さらに好ましくはσ(Y)−σ(X)>1.0である。
ペプチド合成用に用いられるp-ニトロフェノールはσ=0.78であることから、σ値が0.70程度以上であれば、活性エステル形成に有効であると推定される。それゆえ本発明においてσ(Y)>0.70であることが好ましく、σ(Y)>0.80であることがより好ましく、σ(Y)>0.85であることがさらに好ましい。
これらの2つの条件を満足する置換基XとYとして具体的に、表1に示す組み合わせが挙げられる。σm(X),σp(X)はそれぞれ、メタ位およびパラ位にXが置換した場合のσ値を、σm(Y),σp(Y)はそれぞれ、メタ位およびパラ位にYが置換した場合のσ値を示す。これらの値は、Taftらにより報告された前記文献より引用した。
Figure 2007085969
Figure 2007085969
反応前後の電子吸引性の差、および原料の入手性の観点から、m-ジメチルアミノフェニルエステルのアルキル化反応が最も好ましい。
Figure 2007085969
アルキル化剤としては公知の化合物、すなわち、ジアルキルスルフェート、アルキルスルホン酸、ベンジルハロゲン化物、アルキルハロゲン化物、塩素含有ラクタム、複素環式硫酸塩、ラクトン、炭酸エステル、等を用いることが出来る。具体的には、ジアルキルスルフェートとしてジメチルスルフェート、ジエチルスルフェート、メチルスルフェート、アルキルスルホン酸としてメチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ベンジルハロゲン化物として塩化ベンジル、臭化ベンジル、沃化ベンジル、アルキルハロゲン化物として塩化メチル、臭化エチル、塩化エチル、塩化オクチル、塩化ステアリル、塩素含有ラクタムとしてN−クロルメチルピロリドン、N−クロルエチルカプロラクタム、複素環式硫酸塩として1,2−オキサチエタン−2,2−ジオン、ラクトンとしてβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、炭酸エステルとしてジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を、アルキル化剤として用いることができる。安全性と反応性の両立の観点から、アルキル化剤として炭酸エステルが好ましく、ジメチルカーボネートがより好ましい。
錯体化剤としては、公知のルイス酸を用いることが出来る。ルイス酸とは「少なくとも一つの電子対を受け取ることができる空の軌道を持った物質、即ち電子対受容体」を意味する。ルイス酸の定義については、例えばジェリー・マーチ著、アドヴァンスト・オーガニック・ケミストリー(リアクションズ、メカニズム、アンド・ストラクチャー)(Advanced Organic Chemistry(reactions, mechanisms, and structure))、第3版、ウィリー・インターサイエン社、227〜234頁に記載されている。本発明で使用することができる上記ルイス酸は、一般に、半金属化合物又は金属化合物、又はこれらの錯体からなるルイス酸である。好ましいルイス酸としては、例えばフッ化ホウ素およびそのエーテル錯体(BF 3 ・Et 2 O、BF 3 ・Me 2 O、BF 3 ・THF等)、塩化チタン、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化スズ、塩化亜鉛、臭化亜鉛、沃化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、テトラフルオロホウ酸亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、シアン化ニッケル、ニッケルアセチルアセトネート、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一スズ、臭化第一スズ、硫酸第一スズ、酒石酸第一スズ、希土類金属元素、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムのクロリド、ブロミド、スルフェート、ニトレート、カルボキシレート或はトリフルオロメタンスルホネート、塩化コバルト、塩化第一鉄並びに塩化イットリウム等が挙げられる。幾種類かのルイス酸の混合物を使用することも可能である。また、必要な場合、ルイス酸を、塩化アルカリ金属、例えば特に塩化リチウム或は塩化ナトリウムを加えることによって水溶液中に安定にさせることも可能である。塩化リチウム或は塩化ナトリウム/ルイス酸モル比は極めて広い範囲であり、例えば0〜100の範囲であり、特定の比をルイス酸の水中安定性に応じて調節することが可能である。これらの中で、特に、フッ化ホウ素およびそのエーテル錯体(BF 3 ・Et 2 O、BF 3 ・Me 2 O、BF 3 ・THF等)が好ましい。
ジアゾ化剤としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソアミル、亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル、亜硝酸プロピルなどの亜硝酸化合物、またはニトロシル硫酸などを使用することができる。好ましくは亜硝酸ナトリウムである。
本発明においてアルキル化反応の溶媒は、水であっても有機溶媒であってもよく、これらの混合溶媒であっても良い。バイオセンサー用途を考えた場合、水単独あるいは、水と混和し得る有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。水と混和し得る有機溶媒としては具体的に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル等を好ましく用いることが可能である。
本発明で言うバイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
本発明のバイオセンサーの基板は、金属表面又は金属膜であることが好ましい。金属表面あるいは金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に1nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であるのが好ましい。
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
本発明において好ましくは、基板は、疎水性高分子化合物又は水溶性高分子化合物でコーティングした金属表面又は金属膜であるか、あるいは自己組織化膜を有する金属表面又は金属膜である。以下、疎水性高分子化合物、水溶性高分子化合物及び自己組織化膜について説明する。
本発明で用いることができる疎水性高分子化合物は、一般的には吸水性を有しないか吸水性が低い高分子化合物であり、水への溶解度(25℃)は好ましくは10%以下であり、より好ましくは1%以下であり、最も好ましくは0.1%以下である。
疎水性高分子としては、具体的には、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、スチレン/無水マレイン酸共重合体・ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン6、ナイロン66、酢酸セルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)などを挙げることができる。これら疎水性高分子表面に、荷電を与える官能基を導入した場合も、生理活性物質を2次元表面にその物質がもつ荷電により種別することが可能となる。
疎水性高分子化合物の基板へのコーティングは常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。
疎水性高分子化合物のコーティング厚さは特に限定されないが、好ましくは0.1nm以上500nm以下であり、特に好ましくは1nm以上300nm以下である。
本発明で用いる水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリヒドロキシ高分子化合物を挙げることができ、例えば多糖類(例えばアガロース、デキストラン、カラギーナン、アルギン酸、デンプン、セルロース)、または合成高分子化合物(例えばポリビニルアルコール)などを挙げることができる。本発明においては、多糖類が好ましく用いられ、デキストランが最も好ましい。
本発明においては、好ましくは、平均分子量1万以上200万以下のポリヒドロキシ高分子化合物が用いられる。好ましくは2万以上200万以下、さらに好ましくは3万以上100万以下、最も好ましくは20万以上80万以下のポリヒドロキシ高分子化合物を用いることができる。
ポリヒドロキシ高分子化合物は、例えば塩基性条件下でブロモ酢酸と反応させることでカルボキシ化できる。反応条件の制御により、ポリヒドロキシ化合物が初期状態で含有するヒドロキシ基の一定の割合をカルボキシ化できる。本発明においては例えば、1〜90%のヒドロキシ基をカルボキシ化することができる。なお、任意のポリヒドロキシ高分子化合物で表面被覆された表面について、例えば、以下の方法でカルボキシ化率を算出することができる。膜表面をジ−tert−ブチルカルボジイミド/ピリジン触媒を用いてトリフルオロエタノールで50℃、16時間、気相修飾し、ESCA(electron spectroscopy for chemical analysis)でトリフルオロエタノール由来のフッ素量を測定し、膜表面の酸素量との比率(以下、F/O値と呼ぶ)を算出する。全てのヒドロキシ基がカルボキシ化された場合の理論的なF/O値をカルボキシ化率100%とし、任意の条件でカルボキシ化した時のF/O値を測定することで、その時のカルボキシ化率を算出することができる。
ポリヒドロキシ高分子化合物は有機分子X1−R1−Y1を介して金属膜に付着させることができる。有機分子X1−R1−Y1について詳細に説明する。
1は金属膜に対する結合性を有する基である。具体的には、非対称又は対称スルフィド(−SSR1111、−SSR1Y1)、スルフィド(−SR1111、−SR1Y1)、ジセレニド(−SeSeR1111、−SeSeR1Y1)、セレニド(SeR1111、−SeR1Y1)、チオール(−SH)、ニトリル(−CN)、イソニトリル、ニトロ(−NO2)、セレノール(−SeH)、3価リン化合物、イソチオシアネート、キサンテート、チオカルバメート、ホスフィン、チオ酸またはジチオ酸(−COSH、−CSSH)が好ましく用いられる。
1(とR11)は場合によりヘテロ原子により中断されており、好ましくは適当に密な詰め込みのため直鎖(枝分かれしていない)であり、場合により二重及び/又は三重結合を含む炭化水素鎖である。鎖の長さは10原子を越えることが好ましい。炭素鎖は場合により過弗素化されることができる。
1とY11はポリヒドロキシ高分子化合物を結合させるための基である。Y1とY11は好ましくは同一であり、ポリヒドロキシ高分子化合物に直接又は活性化後結合できるような性質を持つ。具体的にはヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、アルデヒド、ヒドラジド、カルボニル、エポキシ、又はビニル基などを用いることができる。
有機分子X1−R1−Y1の具体例としては、10-カルボキシ-1-デカンチオール、4,4'-ジチオジブチリックアシッド、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオール、11-アミノ-1-ウンデカンチオールなどが挙げられる。
自己組織化膜(自己組織化単分子膜)について説明する。チオールやジスルフィド類などの硫黄化合物は金等の貴金属基板上に自発的に吸着し単分子サイズの超薄膜を与える。またその集合体は基板の結晶格子や吸着分子の分子構造に依存した配列を示すことから自己組織化膜と呼ばれている。自己組織化単分子膜としては、金表面のアルカンチオール類、ガラス表面のアルキルシラン類、シリコン表面のアルコール類等が挙げられる。アルカンチオール類の具体例としては、7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール、10-カルボキシ-1-デカンチオール、4,4'-ジチオジブチリックアシッド、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオール、11-アミノ-1-ウンデカンチオールなどを使用することができる。
疎水性高分子化合物又は水溶性高分子化合物でコーティングした基板あるいは自己組織化膜を有する基板から成るバイオセンサーにおいて、基板の最表面に生理活性物質を固定化することができる官能基として−COOH基を有することが好ましい。−COOH基を有する疎水性有機層は、特開2004-286539号公報、特願2004−238396等に記載の製造法により得ることが可能である。−COOH基を有する親水性有機層は、特許2815120号公報に記載の製造法により得ることが可能である。
上記のような−COOH基を有する基板に、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェノール化合物を反応させることにより、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板を作成することができる。
次いで、上記のようにして得られた基板の表面において、化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基を、化学反応により活性化した後に、活性化されたフェニルエステル基をアミノ基を有する化合物と反応させることによって、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化することができる。
本発明のバイオセンサー用表面上に固定される生理活性物質としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
免疫蛋白質としては、測定対象物を抗原とする抗体やハプテンなどを例示することができる。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体、あるいは病原性大腸菌の中でO抗原26、86、55、111 、157 などに対する抗体等を使用することができる。
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
生理活性物質が抗体や酵素などの蛋白質又は核酸である場合、その固定化は、生理活性物質のアミノ基、チオール基等を利用し、金属表面の官能基に共有結合させることで行うことができる。
上記のようにして生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
即ち、本発明によれば、生理活性物質が固定化された本発明のバイオセンサーを用いて、これに被験物質を接触させることにより、該バイオセンサーに固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法が提供される。
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
本発明では、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定することが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術などが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰角(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(本出願人による特願2000−398309号参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001−330560号公報に記載されている。
本発明のセンサーチップを表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:
本実施例は、m-N,N-ジメチルアミノフェニルエステルと比較して、そのアルキル化体(4級化体)が生理活性物質の結合能に優れることを示すものである。蛍光色素Cy5がラベル化されたタンパク質(CA:カルボニックアンヒドラーゼ)を用いて、実験を行った。
(センサーチップ作成)
以下の方法で、本発明のセンサーチップを作成した。
(1)プラスチックプリズム上への金製膜
ゼオネックス(日本ゼオン社製)を射出成型して得られたプラスチックプリズムの上面に以下の方法で金薄膜を製膜した。
(1−1)金製膜
スパッタ装置の基板ホルダにプリズムを取付け、真空(ベースプレッシャー1×10-3Pa以下)に引いてからArガスを導入し(1Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、基板ホルダにRFパワー(0.5kW)を約9分間印加してプリズム表面をプラズマ処理する。次に、Arガスを止めて真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(10〜40rpm)させながら、8inchのCrターゲットにDCパワー(0.2kW)を約30秒間印加して2nmのCr薄膜を成膜する。次に。Arガスを止めて再び真空に引き、Arガスを再び導入し、(0.5Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、8inchのAuターゲットにDCパワー(1kW)を約50秒間印加して50nm程度のAu薄膜を成膜する。得られた試料をチップAと呼ぶ。
(2)ポリマー塗布
チップAの金薄膜上に以下の方法でポリマー薄膜を製膜した。
(2−1)ポリマー溶液Aの調製
ポリマー(F-1) 1.5gを脱水MiBK(メチルイソブチルケトン)100mLに溶解し、孔径0.45μmのミクロフィルターで濾過する。脱水MiBKの含水率は20ppmであった。
Figure 2007085969
(2−2)スピンコート
チップAをスピンコーター(SC-408S試料密閉型スピンコータ−、有限会社押鐘製)にセットする。チップAはスピンコーターの中心から135mmの位置に固定する。ポリマー溶液A 200μLをチップAの金膜全面を覆うようにキャストする。次に、チップAを完全に覆うように風よけカバーをセットする。その後、200rpmで60秒間スピンする。回転が停止した後、5分間そのまま静置する。
(2−3)真空乾燥
ポリマーをスピンコートしたチップAを16時間真空乾燥する。得られた試料をチップBと呼ぶ。
(3)ポリマー表面の加水分解
以下の方法で、チップBのポリマー薄膜表面を加水分解して、最表面にCOOH基を発生させた。
(3−1)加水分解
1N NaOH溶液にチップBを浸漬し、60℃の恒温槽で16時間保管する。
(3−2)洗浄
60℃の恒温槽から取り出した後、15分間自然冷却し、その後、超純水で洗浄する。得られた試料をチップCと呼ぶ。
(4)5アミノ吉草酸結合
以下の方法で、チップCの表面に存在するCOOH基に5アミノ吉草酸反応を共有結合させた。
(4−1)活性化液、5アミノ吉草酸溶液の調製
0.1M NHS溶液: 1.16gのNHS(N-hydroxysulfosuccinimide)を超純水で溶解し100mLにする。
0.4M EDC溶液: 7.7gのEDC(1-Ethyl-3-[3-Dimethylaminopropyl]carbodiimide Hydrochloride)を超純水で溶解し100mLにする。
1M 5アミノ吉草酸溶液: 11.7gの5アミノ吉草酸を超純水80mLで溶解し、1N NaOHを用いてpH8.5に調整する。さらに超純水を加え100mLにする。
(4−2)活性化
エアガンでチップCの水切りを行う。チップCを湿箱(濡れ布を敷いたタイトボックス、密封した状態で湿度90%RH以上に保つ)にセットし、0.1M NHS溶液100μLと0.4M EDC溶液100μLの混合液200μLをキャストする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は26である。湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。
(4−3)洗浄
湿箱から取り出した試料からPETフイルムを取り外し、純水で洗浄する。得られた試料をチップDと呼ぶ。
(4−4)5アミノ吉草酸反応
5アミノ吉草酸反応は活性化反応終了後1時間以内に開始する。先ずエアガンでチップDの水切りを行う。チップDを湿箱にセットし、1M 5アミノ吉草酸溶液200μLをキャストする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は24である。湿箱を密閉して、25℃で90分静置する。
(4−5)洗浄
湿箱から取り出した試料からPETフイルムを取り外し、純水で洗浄する。得られた試料をチップEと呼ぶ。
(5−1)反応液の調製
0.1M NHS溶液: 1.16gのNHSを超純水で溶解し100mLにする。
0.1M m-DMAP溶液: 1.37gのm-DMAP(m-N,N-ジメチルアミノフェノール)を超純水で溶解し100mLにする。
0.4M EDC溶液: 7.7gのEDCを超純水で溶解し100mLにする。
(5−2)NHSエステル形成
エアガンでチップEの水切りを行い、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーの台座に固定する。次に、シリンジに0.1M NHS溶液2mLと0.4M EDC溶液2mLの混合液を投入する。チップEに18mm間隔で15μLづつ8点、前記混合液をスポッティングする。液滴の直径は約3.5mmとなる。スポッティングを行ったチップEを湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。得られた試料をチップFと呼ぶ。
(5−3)m-DMAPエステル形成
エアガンでチップEの水切りを行い、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーの台座に固定する。次に、シリンジに0.1M m-DMAP溶液2mLと0.4M EDC溶液2mLの混合液を投入する。チップEに18mm間隔で15μLづつ8点、前記混合液をスポッティングする。液滴の直径は約3.5mmとなる。スポッティングを行ったチップEを湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。得られた試料をチップGと呼ぶ。
(5−4)m-DMAPエステルのメチル化
上記操作に従い、m-DMAPエステルを形成する。チップ表面を超純水で洗浄後、チップEに18mm間隔で8μLづつ8点、1.0ccのジメチル硫酸と4.0ccの超純水と5.0ccのエタノールの混合溶液をスポッティングする。液滴の直径は約3.5mmとなる。スポッティングを行ったチップEを湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。得られた試料をチップHと呼ぶ。
(蛍光タンパクの固定)
(6−1)Cy5化CAの合成
Cy5 Mono-reactive Dye Pack(アマシャム社)を購入し、その標準プロトコルに従い、CA(カルボニックアンヒドラーゼ:Sigma社)とCy5 NHSエステルを反応/精製することで、Cy5化CAを得た。1分子のCAに対し、4.7分子のCy5が導入されたことを確認した。
(6−2)Cy5化CA溶液の調液
Cy5化CAを50μg/mlになるよう、所定の緩衝液を用いて調液した。pH4.0は酢酸緩衝液、pH7.4はHBS-N緩衝液、pH8.5はホウ酸緩衝液、pH9.4炭酸緩衝液を用いて調液した。
(6−2)Cy5化CA溶液の固定
チップF,G,Hのエステル化されている部分に対し、所定のpHのCy5化CAをスポッティングする。液滴の直径は約3.5mmとなる。スポッティングを行ったチップEを湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。
(蛍光強度測定)
フルオロイメージアナライザー(FLA8000、富士写真フイルム社製)を用いて、上記センサーチップ表面の蛍光強度の相対値を比較した(励起波長635nm、測定波長675nm)。センサーチップ表面のエステルがCy5化CAと反応した場合にのみ、センサーチップ表面の蛍光が観察されるため、本手法はエステルの活性化能を評価する有効な手法となる。得られた結果を表2に示す。
Figure 2007085969
測定したいずれのpH領域においても、4級化による蛍光強度の増加、すなわちCy5化CA結合量の増加が確認された。特にpH7.4以上においては、4級化されていない部分にはCy5化CAがほとんど結合しないのに対し、4級化された部分にはCy5化CAが結合し、その程度はNHSエステルと同程度であることが確認された。以上の結果から、m-N,N-ジメチルアミノフェニルエステルと比較して、その4級化体が生理活性物質の結合能に優れることが証明された。



Claims (13)

  1. 化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基で修飾された基板からなるバイオセンサー。
  2. 化学反応により電子吸引性が増加する置換基がジアルキルアミノ基である、請求項1に記載のバイオセンサー。
  3. 基板が、金、銀、銅、白金、及びアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなる金属表面あるいは金属膜である、請求項1又は2に記載のバイオセンサー。
  4. 非電気化学的検出に使用される、請求項1から3の何れかに記載のバイオセンサー。
  5. 表面プラズモン共鳴分析に使用される、請求項1から4の何れかに記載のバイオセンサー。
  6. 基板上に存在する化学反応により電子吸引性が増加する置換基を有するフェニルエステル基を化学反応により活性化した後に、活性化されたフェニルエステル基をアミノ基を有する化合物と反応させることを含む、アミノ基を有する化合物を基板に固定する方法。
  7. 化学反応により電子吸引性が増加する置換基がジアルキルアミノ基である、請求項6に記載の方法。
  8. 化学反応がアルキル化反応、錯体化反応、又はジアゾ化反応である、請求項6又は7に記載の方法。
  9. アミノ基を有する化合物が生理活性物質である、請求項6から8の何れかに記載の方法。
  10. アミノ基を有する化合物が請求項6から8の何れかに記載の方法により固定化されている、請求項1から5の何れかに記載のバイオセンサー。
  11. アミノ基を有する化合物が結合している請求項1から5の何れかに記載のバイオセンサーと被験物質とを接触させる工程を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法。
  12. アミノ基を有する化合物と相互作用する物質を非電気化学的方法により検出または測定する、請求項11に記載の方法。
  13. アミノ基を有する化合物と相互作用する物質を表面プラズモン共鳴分析により検出または測定する、請求項11又は12に記載の方法。



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