JP2006266831A - 固定化方法、バイオセンサー、バイオセンサーの製造方法及び試験方法 - Google Patents

固定化方法、バイオセンサー、バイオセンサーの製造方法及び試験方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 種々のタンパク質等の生理活性物質を、特定方向に配向させることができると共に、安定して強固に基板表面に固定化する。また、生理活性物質を安定して強固に固定させたバイオセンサーを得る。
【解決手段】 生理活性物質を基板表面に固定する固定化方法であって、生理活性物質と金属配位子と金属イオンとからなる置換不活性錯体を形成することを含む。このとき、置換不活性錯体が、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを用いて形成されたものであってもよく、置換活性錯体を形成可能な金属イオンの不活性化処理を含む工程によって形成されたものであってもよい。置換不活性錯体を形成する金属イオンは、好ましくは遷移金属のイオン、更に好ましくは周期律表における6族、7族、8族、9族、10族金属のいずれかの金属イオンである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、固定化方法、バイオセンサー、バイオセンサーの製造方法及び試験方法に関し、特に、生理活性物質を基板表面に固定する固定化方法、バイオセンサー、バイオセンサーの製造方法及び試験方法に関する。
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。これらの技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に、タンパク質等の生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
生理活性物質を測定チップに固定化するためのいくつかの手法が知られている。生理活性物質としてタンパク質を例にとった場合、測定チップとタンパク質を共有結合により固定化するための手法として、タンパク質のアミノ基と測定チップ上のカルボキシル基とを結合させる方法(アミンカップリング法)が知られている。しかしながら、この方法では、固定化によってタンパク質表面の任意のアミノ基が修飾されることになるため、固定化されるタンパク質の配向が一定にならない場合や、修飾されるアミノ基の位置によってタンパク質と基質との結合が阻害されてタンパク質の活性が低下する場合がある。さらに、この方法では、チップ上にタンパク質を濃縮する必要があり、固定化の際にタンパク質を、固定化されるタンパク質のpIよりも低いpH、かつ低いイオン強度の緩衝液に溶解する必要がある。それゆえ、このような条件下で変性するタンパク質は、活性を維持したまま固定化することが不可能となるなどの欠点を有している。
一方、遺伝子改変により人工的に合成されたタンパク質のN末端あるいはC末端に導入されたTagと呼ばれる部分を用いて、中性条件下で測定チップ上にタンパク質を固定化する手法が開発されている。その代表例として、His-tagを用いた固定化技術が挙げられる。この技術は、遺伝子組換えによって発現させたHis-tagタンパク質を利用したアフィニティーカラムによる精製用に開発されたものであるが、タンパク質を一定の配向性を持たせた状態で固体表面に固定化させる目的にも用いられている。
特に、NTA (Nitrilotriacetic acid) とNi (II) イオンとによるNTA-Ni (II) 錯体を用いたHis-tagタンパク質の固定化では、錯体中の2つの配位座に配位した水分子がHis-tagタンパク質のオリゴヒスチジン残基の2つのイミダゾール基の窒素原子と置換することによって、His-tagタンパク質が特異的かつ一定方向に固体表面に結合する。このNTA-Ni (II) 錯体を用いるHis-tagタンパク質の固定化では、酸性条件下でプレコンセントレーションを行う必要がないため、生理的条件の緩衝液(PBSなど)を用いてHis-tagタンパク質の固定化が可能となり、アミンカップリングの有する欠点を解消することができる。
しかし、His-tagタンパク質とNTA-Ni (II) 錯体との組み合わせは、アフィニティーカラムによる精製を目的として開発されているため、その結合は充分に強固ではなく、解離平衡が存在する。それゆえ、測定チップ上にNTA-Ni (II) 錯体を介して固定化されたHis-tagタンパク質は、徐々に測定チップから解離してしまうという欠点を有し、バイオセンサー用途での使用には不十分であった。
これらの問題を解決するために、特許文献1では、NTA-Ni (II) 錯体による固定化法とアミンカップリング法を併用することで、His-tagタンパク質を強度に固定化する手法が開示されている。
しかし本手法を用いた場合にも、固定化されるタンパク質の配向が必ずしも一定にはならない。また、アミンカップリングをそのまま組み合わせて用いているので、タンパク質の活性部位近傍のアミノ基修飾によるタンパク質の活性低下等のアミンカップリング法特有の問題から完全に排除することができない。
特開2004−170195号公報
上述したように、共有結合によるタンパク質の固定化では、タンパク質を特定の配向で必ずしも固定化することができず、また、タンパク質が変性する場合があり、固定化できるタンパク質に一定の制限がある。一方、NTA-Ni (II) 錯体を用いたHis-tagタンパク質の固定化の場合には、タンパク質と固体表面との結合は充分に強固ではないために、基板からタンパク質が徐々に解離してしまうという問題があった。
本発明は、種々のタンパク質等の生理活性物質を特定方向に配向させることができると共に、安定して強固に基板表面に固定化することができる生理活性物質の固定化方法並びに、生理活性物質が特定方向に配向すると共に安定して強固に固定されたバイオセンサー及びその製造方法、並びにこれを用いた試験方法を提供することを目的とする。
本発明の固定化方法は、生理活性物質を基板表面に固定する固定化方法であって、前記生理活性物質と前記基板表面に連結された金属配位子と金属イオンとからなる置換不活性錯体を形成することを含むことをを特徴としている。
ここで、前記置換不活性錯体が、該置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを用いて形成されたものであってもよく、また、前記置換不活性錯体が、置換活性錯体を形成可能な金属イオンの不活性化処理を含む工程により形成されたものであってもよい。
前記不活性化処理を行う場合には、この不活性化処理を、基板に連結した金属配位子に前記金属イオンを配位させた後に行うことが好ましい。
またここで、前記置換不活性錯体を形成する金属イオンは、遷移金属のイオンであることが好ましく、周期律表における6族、7族、8族、9族、10族金属のいずれかであることが特に好ましい。
本発明のバイオセンサーは、上記固定化方法で、生理活性物質が基板表面に固定されたものである。
本発明のバイオセンサーの製造方法は、生理活性物質が基板表面に固定されたバイオセンサーの製造方法であって、前記基板表面に連結された金属配位子に、置換活性錯体を形成可能な金属イオンを配位させて置換活性錯体を形成すること、前記置換活性錯体を形成可能な金属イオンを不活性化処理して、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを得ること、前記金属配位子と前記置換不活性錯体を形成可能な金属イオンと生理活性物質とからなる置換不活性錯体を得ること、を含むことを特徴としている。
本発明の試験方法は、上記バイオセンサーに基板表面に固定化された生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定することを特徴とするものである。
本発明では、生理活性物質と金属配位子と金属イオンとからなる置換不活性錯体が形成されるので、生理活性物質は、置換不活性錯体中の金属イオンに強固に配位すると共に、この金属イオンに同様に強固に配位している金属配位子によって基板表面に連結される。この結果、pHを変更したりアミンカップリングなどの特別な処理を行うことなく、生理活性物質を特定方向に配向することができると共に、この金属イオンの作用によって生理活性物質の解離を抑えることができるので、生理活性物質を基板表面に安定して強固に固定することができる。
本発明によれば、種々のタンパク質等の生理活性物質を特定方向に配向させることができると共に、安定して強固に基板表面に固定化することができる生理活性物質の固定化方法並びに、生理活性物質が特定方向に配向すると共に安定して強固に固定されたバイオセンサー及びその製造方法、並びにこれを用いた試験方法を提供することができる。
本発明の固定化方法は、生理活性物質と、基板表面に連結された金属配位子と金属イオンとからなる置換不活性錯体を形成することを含む。
これにより、この置換不活性錯体中の金属イオンに金属配位子及び生理活性物質の双方が強固に配位するので、生理活性物質を、特定方向に配向させることができると共に安定して強固に基板表面に固定することができる。
以下に、本発明の固定化方法を説明する。
本発明では、置換不活性錯体を形成することによって生理活性物質が基板表面に固定される。
Taubeは、金属錯体の配位子置換速度に関して二つに大別し、反応溶液の混合に要する時間(室温の約0.1mol/Lの溶液で約1分)の間に反応が完結してしまうような錯体を置換活性な錯体と呼び、反応速度が測定できない位に遅いか、通常の方法で測定できる程度の錯体を置換不活性な錯体と呼ぶことを提案した(上野景平編集「キレート化学(3)」、南江堂、昭和52年、p.223より引用)。本発明における「置換不活性錯体」及び「置換活性錯体」とは、このTaubeの提案による「置換不活性な錯体」及び「置換活性錯体」と同義として定義される。本発明によれば、固体表面の金属配位子及び金属イオンと、金属配位能を有する生理活性物質とにより置換不活性な錯体が形成されているため、金属イオンに配位した生理活性物質の解離が効果的に抑制される。
本発明における置換不活性錯体中の金属イオンとしては、配位子の種類に応じて適宜選択されるが、安定性の観点から遷移金属のイオンであることが好ましく、周期律表における6族、7族、8族、9族、10族金属のいずれかであることが特に好ましい。このような金属イオンとしては、クロム(III)、モリブデン(III)、タングステン(III)、鉄(II)、ルテニウム(II)、コバルト(III)、ロジウム(III)、イリジウム(III)、白金(IV)などを挙げることができ、これらが好ましく用いられる。特に好ましくは安定性の観点からコバルト(III)を挙げることができる。
本発明における金属配位子としては、基板表面に連結可能であると共に金属配位能を有するものであればよく、金属イオンと錯体を形成した後に、金属配位能を有する生理活性物質との間で置換不活性錯体を形成することができる多座配位子であることが好ましい。このような金属配位子としては、イミノジ酢酸及びニトリロトリ酢酸(NTA)等を挙げることができる。これらの金属配位子は、基板表面の反応性基を介した方法によって基板表面に容易に連結される。このような方法としては、公知のものを挙げることができ、例えば、疎水性ポリマーを介してバインディングマトリックスを金属表面に結合する方法(特開2004−271514号公報を参照))、X−R−Y(Xは金属に結合し、Yはバインディングマトリックスと結合する)の密に詰め込まれた単層を介してバインディングマトリックスを金属表面に結合する方法(特許第2815120号を参照)、などを適用することができる。好ましくは、末端に反応性基を有するアルカンチオール(あるいはその酸化体であるジスルフィド)を用いて金属表面に密な層を形成させた後、アルカンチオール末端の反応性基と金属配位子とを反応させる結合法である。
このような置換不活性錯体は、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを金属配位子に配位させることによって直接形成したものであってもよいが、置換活性錯体を形成可能な金属イオンを不活性化処理することにより形成されたものであってもよい。このような不活性化処理は、生理活性物質を金属イオンに配位させて基板表面に固定した後に置換不活性錯体が形成されるように行われればよく、基板に連結された金属配位子に金属イオンを配位させるまでの時間を短縮する観点から、置換活性錯体を形成可能な金属イオンと金属配位子とで置換活性な錯体を先に形成し、金属配位能を有する生理活性物質を固定する前もしくは後に不活性化処理を行って、置換不活性な錯体を形成させることが好ましい。
不活性化処理は、金属錯体中の金属イオンへの生理活性物質の配位時間を短縮するには、生理活性物質を固定した後に行うことが好ましい。
また、本発明においては、生理活性物質の種類及び後述する不活性化処理との反応性の観点から、不活性化処理は、生理活性物質を固定する前に置換不活性錯体を形成するように、即ち、基板に連結された金属配位子に金属イオンを配位させてから金属イオンの不活性化を行い、ゆっくりと錯生成させて解離しない固定化を先に行う方法が好ましく用いられる。これにより、置換不活性な状態にするまでに生理活性物質が解離することがなく、また例えば、酸化により、システイン残基のチオール基による−S−S−結合の形成や、逆に還元による−S−S−結合の切断といった生理活性物質の活性が損なわれる事態を確実に回避して、生理活性物質の安定性を確保することができる。
置換活性錯体を形成可能な金属イオンの不活性化処理は、金属イオンの価数を変更して安定化することによって容易に行うことができる。このような価数の変更としては、金属イオンの種類に応じた酸化処理又は還元処理を挙げることができる。このような酸化及び還元処理の手法には、公知なものが使用でき、空気酸化のように気相からの酸化、還元剤や酸化剤を用いた溶液中での酸化還元反応、電極反応による電気化学的な酸化還元、光化学的酸化還元などが挙げられる。これらは、種々の条件に応じて当業者が適宜選択することができる。
本発明における生理活性物質は、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。これらの生理活性物質は、金属イオンへの配位結合により基板上に固定されるものであり、金属配位能を有するものであればよい。このような金属配位能は、強い配位力を持つ配位子を共有結合することによって容易に付与することができる。このような生理活性物質に共有結合している配位子としては、このような用途に用いられる既知の化合物を挙げることができる。例えば、アミノ酸自動合成装置を用いた導入、あるいは遺伝子操作による導入が容易であることから、生理活性物質に結合している配位子としてはオリゴヒスチジン基が好ましい。
本発明の固定化方法は、生理活性物質が基板表面に固定されたバイオセンサーに好ましく適用することができる。
本発明にかかるバイオセンサーとしては、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定するものであることが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術などが挙げられる。
本発明で言うバイオセンサーとは最も広義に解釈され、生理活性物質間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
本発明のバイオセンサーでは、金属表面又は金属膜を基板として用いることができる。金属表面あるいは金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、0.1nm以上500nm以下であるのが好ましく、特に1nm以上200nm以下であるのが好ましい。500nmを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、0.1nm以上10nm以下であるのが好ましい。
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
金属膜は、好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
本発明において、上記金属配位子は、金属層に、直接又は中間層を介して結合している。中間層としては、疎水性高分子化合物又は自己組織化膜から成る層などを使用することができる。以下、疎水性高分子化合物、及び自己組織化膜について説明する。
本発明で用いる疎水性高分子化合物は、吸水性を有しない高分子化合物であり、水への溶解度(25℃)が10%以下、より好ましくは1%以下、最も好ましくは0.1%以下である。
疎水性高分子化合物を形成する疎水性単量体としては、ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、オレフィン類、スチレン類、クロトン酸エステル類、イタコン酸ジエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、アリル化合物類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類等から任意に選ぶことができる。疎水性高分子化合物としては、1種類のモノマーから成るホモポリマーでも、2種類以上のモノマーから成るコポリマーでもよい。
本発明で好ましく用いられる疎水性高分子化合物としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。
疎水性高分子化合物の基板へのコーティングは常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。
疎水性高分子化合物のコーティング厚さは特に限定されないが、好ましくは0.1nm以上500nm以下であり、特に好ましくは1nm以上300nm以下である。
次に、自己組織化膜について説明する。
チオールやジスルフィド類などの硫黄化合物は金等の貴金属基板上に自発的に吸着し単分子サイズの超薄膜を与える。またその集合体は基板の結晶格子や吸着分子の分子構造に依存した配列を示すことから自己組織化膜と呼ばれている。本発明では、例えば、自己組織化化合物として、7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール、10−カルボキシ−1−デカンチオール、4,4’−ジチオジブチリックアシッド、11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオール、11−アミノ−1−ウンデカンチオールなどを使用することができる。
本発明のバイオセンサーにおいては、基板の最表面に、配位子を有する生理活性物質を固定化することができる。ここで言う「基板の最表面」とは、「基板から最も遠い側」という意味であり、さらに具体的には、「基板上にコーティングした化合物中の基板から最も遠い側」という意味である。
上記のようにして得られたセンサー用基板は、X−R−Y(Xは金属に結合し、Yはバインディングマトリックスと結合する)の官能基であるYを介して、上記金属配位子と金属イオンからなる金属錯体を共有結合させることによって、金属表面又は金属膜に配位子を有する生理活性物質を固定化することができる。
上記のようにして配位子を有する生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、検出対象、例えばタンパク質と相互作用する物質の検出及び/又は測定を目的とした試験方法に使用することができる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(特開2002−207006号参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001−330560号公報に記載されている。
本発明のバイオセンサーを表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
また、本発明のバイオセンサーは、本発明に係る固定化方法を用いて生理活性物質が表面に固定化されたバイオセンサーとして製造することができる。即ち、金属配位子と金属イオンと生理活性物質とからなる置換不活性錯体を形成することを含む方法によって、生理活性物質を基板表面に固定された本発明のバイオセンサーを得ることができる。また、金属配位子に、置換活性錯体を形成可能な金属イオンを配位させて置換活性錯体を形成すること、置換活性錯体を形成可能な金属イオンを不活性化処理して、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを得ること、金属配位子と置換活性錯体を形成可能な金属イオンと生理活性物質とからなる置換不活性錯体をえること、を含む方法によって、本発明のバイオセンサーを得ることもできる。
これにより、安定して強固に表面に生理活性物質が固定されたバイオセンサーを得ることができ、安定して固定化された生理活性物質をリガンドとして用いて、このリガンドと相互作用する各種のアナライトの解析を精度よく行うことができる。
本製造方法においても、前述したように、置換活性錯体を形成可能な金属イオンの不活性化処理は、生理活性物質を配位させる前及び後のいずれで行ってもよい。
生理活性物質を配位させる前に不活性化処理を行う場合には、生理活性物質は、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンに配位して、生理活性物質を含む置換不活性錯体が形成される。
一方、生理活性物質を配位させた後で不活性化処理を行う場合には、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを得る工程と、置換不活性錯体を得る工程とが同時に行われる。このとき、生理活性物質は、置換活性錯体を形成可能な金属イオンに配位して、生理活性物質を含む置換活性錯体が形成された後、不活性化処理によって、生理活性物質を含む置換不活性錯体が形成される。
また、本発明のバイオセンサーは、本バイオセンサーに安定的に固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出又は測定する試験方法に好ましく用いることができる。本バイオセンサーの表面には、安定して強固に生理活性物質が固定化されているので、この生理活性物質と相互作用する物質の検出又は測定を精度よく行うことができる。このような試験方法としては、上述したように非電気化学的方法、特に、表面プラズモン共鳴分析によって行われることが好ましい。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
[実施例1]
以下の方法で、本発明のセンサチップを作成した。
(1)プラスチックプリズム上への金製膜
ゼオネックス(日本ゼオン社製)を射出成型して得られたスティック状のプラスチックプリズムの上面に以下の方法で金薄膜を製膜した。
なお、このスティック状のプラスチックプリズムは、図1に示されるような測定ユニット10を構成する誘電体ブロック50の一部に相当する。即ち、測定ユニット10は、光ビームに対して透明であり、平滑な上面50aに薄膜層としての金属膜55が形成された誘電体ブロック50と、この誘電体ブロック50の金属膜55上に密接される流路部材51と、誘電体ブロック50と係合して、流路部材51を誘電体ブロック50の上面50a上に保持する保持部材52とから構成されている。ここで、流路部材51は、入口61から出口65に至る流路60が、流路部材51の長手方向にそって複数形成されている。流路60には、入口61と出口65との間に、測定部63が配置されている。保持部材52の上面には、蒸発防止部材54が、両面テープ(接着部材)53により貼付されている。
この測定ユニット10は、主としてSPR装置での測定に用いられる。適用可能なSPR装置では、SPRリーダー部とデータ処理部とを備えており、SPRリーダー部において測定ユニット10の測定部63に対して図示しない光学系による光ビームの入射させ、反射した光ビームの各成分を、データ処理部において解析することによって、測定部63における生理活性物質と金属錯体との相互作用を測定・分析可能になっている。
(1−1)金製膜
スパッタ装置の基板ホルダにプリズムを取付け、真空(ベースプレッシャー1×10-3Pa以下)に引いてからArガスを導入し(1Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、基板ホルダにRFパワー(0.5kW)を約9分間印加してプリズム表面をプラズマ処理(基板エッチング)する。次に、Arガスを止めて真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(10〜40rpm)させながら、8inchのCrターゲットにDCパワー(0.2kW)を約30秒間印加して2nmのCr薄膜を成膜する。次に。Arガスを止めて再び真空に引き、Arガスを再び導入し、(0.5Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、8inchのAuターゲットにDCパワー(1kW)を約50秒間印加して50nm程度のAu薄膜を成膜する。得られた試料をチップAと呼ぶ。
(2)ポリマー塗布
チップAの金薄膜上に以下の方法でポリマー薄膜を製膜した。
(2−1)ポリマー溶液Aの調製
下記ポリマー(F−1)1.5gを脱水メチルイソブチルケトン(MiBK)100mLに溶解し、孔径0.45μmのミクロフィルターで濾過する。脱水MiBKの含水率は20ppm。
(2−2)スピンコート
チップAをスピンコーター(SC−408S試料密閉型スピンコータ−、有限会社押鐘製)にセットする。チップAはスピンコーターの中心から135mmの位置に固定する(図2参照)。200μLのポリマー溶液AをチップAの金膜全面を覆うようにキャストする。次に、チップAを完全に覆うように風よけカバーをセットする。その後、200rpmで60秒間スピンする。回転が停止した後、5分間そのまま静置する。
(2−3)真空乾燥
ポリマーをスピンコートしたチップAを16時間真空乾燥する。得られた試料をチップBと呼ぶ。
Figure 2006266831
(3)ポリマー表面の加水分解
以下の方法で、チップBのポリマー薄膜表面を加水分解して、最表面にCOOH基を発生させた。
(3−1)加水分解
1NのNaOH溶液にチップBを浸漬し、60℃の恒温槽で16時間保管する。
(3−2)洗浄
60℃の恒温槽から取り出した後、15分間自然冷却し、その後、超純水で洗浄する。得られた試料をチップCと呼ぶ。
(4)5アミノ吉草酸結合
以下の方法で、チップCの表面に存在するCOOH基に5アミノ吉草酸を共有結合させた。
(4−1)活性化液、5アミノ吉草酸溶液の調製
0.1MのNHS溶液:
1.16gのNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を超純水で溶解し100mLにする。
0.4MのEDC溶液:
7.7gのEDC(N−エチル−N’−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)を超純水で溶解し100mLにする。
1Mの5アミノ吉草酸溶液:
11.7gの5アミノ吉草酸を超純水80mLで溶解し、1NのNaOHを用いてpH8.5に調整する。さらに超純水を加え100mLにする。
(4−2)活性化
エアガンでチップCの水切りを行う。チップCを湿箱(濡れ布を敷いたタイトボックス、密封した状態で湿度90%RH以上に保つ)にセットし、0.1MのNHS溶液100μLと0.4MのEDC溶液100μLの混合液200μLをキャストする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は26である。湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。
(4−3)洗浄
湿箱から取り出した試料からPETフイルムを取り外し、純水で洗浄する。得られた試料をチップDと呼ぶ。
(4−4)5アミノ吉草酸反応
5アミノ吉草酸反応は活性化反応終了後1時間以内に開始する。先ずエアガンでチップDの水切りを行う。チップDを湿箱にセットし、1Mの5アミノ吉草酸溶液200μLをキャストする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は24である。湿箱を密閉して、25℃で90分静置する。
(4−5)洗浄
湿箱から取り出した試料からPETフイルムを取り外し、純水で洗浄する。得られた試料をチップEと呼ぶ。
(5)リガンド非結合部のパターン形成
以下の方法で、チップEの表面に、リガンドが結合できない部分のパターンを形成した。具体的には、チップEの特定の場所において、5アミノ吉草酸のCOOH基にPEG5000を共有結合させた。PEG5000の末端はメトキシ基なので、リガンドと共有結合を形成することができない。この部分は、アナライトの結合測定時にリファレンス部として計測される。
(5−1)反応液の調製
20%PEG5000溶液:
4.5gのPEG5000を超純水18.5mLと1NのNaOH4mLとで溶解する。
0.2MのNHS溶液:
2.32gのNHSを超純水で溶解し100mLにする。
0.4MのEDC溶液:
7.7gのEDCを超純水で溶解し100mLにする。
(5−2)パターン化反応
エアガンでチップEの水切りを行い、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーの台座に固定する。次に、シリンジに20%PEG5000溶液1mLと0.2MのNHS溶液1mLと0.4MのEDC溶液2mLの混合液を投入する。チップEに18mm間隔で15μLづつ6点、前記混合液をスポッティングする。液滴の直径は約4mmとなる。スポッティングを行ったチップEを湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。
(5−3)洗浄
湿箱から取り出した試料を1Nクエン酸水溶液で洗浄し、さらに純水で洗浄する。得られた試料をチップFと呼ぶ。
(6)NTA結合
以下の方法で、チップFの表面に存在するCOOH基にNTAを共有結合させた。NTAはパターン化した表面には結合しない。
(6−1)活性化液、NTA溶液の調製
0.1MのSulfo−NHS溶液:
2.04gのSulfo−NHSを超純水で溶解し100mLにする。
0.4MのEDC溶液:
7.7gのEDCを超純水で溶解し100mLにする。
1MのNTA溶液:
3.24gのAB−NTA(同仁化学社製)を超純水を加え10mLにする。
(6−2)活性化
エアガンでチップFの水切りを行う。チップFを湿箱にセットし、0.1MのSulfo−NHS溶液100μLと0.4MのEDC溶液100μLの混合液200μLをキャストする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は26である。湿箱を密閉して、25℃で60分静置する。
(6−3)洗浄
湿箱から取り出した試料からPETフイルムを取り外し、純水で洗浄する。得られた試料をチップHと呼ぶ。
(6−4)NTA反応
NTA反応は活性化反応終了後1時間以内に開始する。先ずエアガンでチップIの水切りを行い、武蔵エンジニアリング社製ディスペンサーの台座に固定する。次に、シリンジに1MのNTA溶液5mLを投入する。チップIに18mm間隔で8μLずつ6点、1MのNTA溶液をスポッティングする。その上に120mm×8.5mmに切った厚さ175μmのPETフイルムをのせて液を拡げつつ表面をカバーする。この反応時の液の空気と接しない部分の表面積と空気と接する部分の表面積の比は90である。この試料を湿箱にセットし、湿箱を密閉して、25℃で16時間静置する。
(6−5)洗浄
湿箱から取り出した試料を純水で洗浄する。得られた試料をチップIと呼ぶ。
(6−6)保管
エアガンでチップIの水切りを行い保管する。
[実施例2]
実施例1で作成したチップIに、流路部材(図1参照、流路部材51)を付けて以下の方法でタンパク固定能を評価した。固定量はSPR装置のリーダー部分を用いて測定した。
(1)リガンド溶液の調製:
GFP(Green Fluorescent Protein)(アップステート社製)20μlをHBS−Pバッファー980μlに溶解。
(2)Co活性化液1:
10mM塩化コバルト(II)(CoCl2)水溶液
(3)前処理
(a)テストサンプル1(本発明)
流路60をCo活性化液1で満たし、30分間静置した。その後、空気を120分バブリングしたHBS−Pバッファーで流路を5回置換し、バッファーを入れたまま16時間放置した。
(b)テストサンプル2.(比較例)
流路60をCo活性化液1で満たし、30分間静置した。その後、減圧脱気を30分実施したHBS−Pバッファーで流路60を置換し、液面に空気が触れないように密栓をして16時間放置した。
(4)生理活性物質の固定化
テストサンプル1、2共に、下記の操作を行った。測定は、リガンド固定化部(Act)、リガンド非固定部(Ref)に対して同時に行い、液の屈折率差の影響を除くため、この差(Act−Ref)の数値を測定値とした。
HBS−Pバッファー(組成:0.01mol/l(pH7.4)のHEPES、0.15mol/lのNaCl、0.005重量%のSurfactant P20)100μlを流路に1秒間で注入し、60秒間静置し、その状態で測定を開始する。測定開始後10秒後の信号値を0とする。測定を続けながら、そのあと、リガンド溶液100μlを流路に1秒間で注入し、60分放置する。続けて、HBS−Pバッファー100μlを流路に1秒間で注入することを2回連続で行い、10秒後の信号値1を測定する。そのまま、10分放置して、10分後の信号値2を測定する。そのときの信号値1、信号値2をリガンド固定量、(信号値1−信号値2)を固定化の安定化の目安とした。(信号値1−信号値2)の値が小さいほど固定化された生理活性物質は安定である。結果を表1に示す。
Figure 2006266831
表1に示されるように、不活性化処理を行ったテストサンプル1は、生理活性物質を安定に固定化することが可能となった。
[実施例3]
実施例1のチップIの代わりに、下記方法で作成したチップを使用して、実施例2と同様な実験を行った。
(1)プラスチックプリズム上への金製膜
ゼオネックス(日本ゼオン社製)を射出成型して得られた実施例1と同様のプラスチックプリズムの上面に以下の方法で金薄膜を製膜した。
(2)金製膜
スパッタ装置の基板ホルダにプリズムを取付け、真空(ベースプレッシャー1×10-3Pa以下)に引いてからArガスを導入し(1Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、基板ホルダにRFパワー(0.5kW)を約9分間印加してプリズム表面をプラズマ処理(基板エッチング)する。次に、Arガスを止めて真空に引き、Arガスを再び導入し(0.5Pa)、基板ホルダを回転(10〜40rpm)させながら、8inchのCrターゲットにDCパワー(0.2kW)を約30秒間印加して2nmのCr薄膜を成膜する。次に。Arガスを止めて再び真空に引き、Arガスを再び導入し、(0.5Pa)、基板ホルダを回転(20rpm)させながら、8inchのAuターゲットにDCパワー(1kW)を約50秒間印加して50nm程度のAu薄膜を成膜する。得られた試料をチップJと呼ぶ。
(3)自己組織化膜製膜
・調液
SAM−OH液
11−ヒドロキシ−11−ウンデカンチオール(同仁化学社製)0.0102gと、超純水2mLと、エタノール8mLとを十分に混合する。
SAM-COOH液
11−ヒドロキシ−1−ウンデカンチオール(同仁化学社製)0.00918gと、16−カルボキシ−1−ヘキサデカチオール(アルドリッチ製)0.00144gと、超純水2mLと、エタノール8mLとを十分に混合する。
洗浄液
超純水2mLと、エタノール8mLを十分に混合する。
・操作
チップAに、図3に示す形状の隔壁80をセットし、Ref穴82にSAM−OH液をAct穴84にSAM−COOH液を各々150μlずつ入れる。蒸発を防止して、40℃の振とうインキュベータで120分インキュベートする。その後、サンプルを取り出し、25℃で16時間放置する。放置後、洗浄液で15回置換洗浄を行う。得られた試料をチップKと呼ぶ。表面を乾燥させないように注意し、隔壁を付けたまま次の操作に進む。
(4)NTA結合
以下の方法で、チップKのAct表面に存在するCOOH基にNTAを共有結合させた。
(5)活性化液、NTA溶液の調製
0.1MのSulfo−NHS溶液:
2.04gのSulfo−NHSを超純水で溶解し100mLにする。
0.4MのEDC溶液:
7.7gのEDCを超純水で溶解し100mLにする。
1MのNTA溶液:
3.24gのAB−NTA(同仁化学社製)を超純水を加え10mLにする。
(6)活性化
隔壁80を付けたままチップKのAct穴84の洗浄液を除去し、0.1MのSulfo−NHS溶液100μLと0.4MのEDC溶液100μLの混合液100μLを加える。蒸発を防止して、25℃で60分静置する。放置後、洗浄液で5回置換洗浄を行う。
(7)NTA反応
NTA反応は活性化反応終了後1時間以内に開始する。隔壁を付けたままチップKのAct穴84の活性化液を除去し、1MのNTA溶液100μLを加える。蒸発を防止して、25℃で16時間静置する。放置後、洗浄液で15回置換洗浄を行う。Act穴84、Ref穴82の洗浄液を抜き、隔壁を取り外して、保管する。得られたチップをチップMとする。
(8)測定
実施例2と同様な実験を同じ手順でチップKを用いてテストサンプル3(本発明)テストサンプル4(比較例)を作成し、固定実験を行った。結果を表2に示す。
Figure 2006266831
表2に示されるように、本実施例においても実施例2と同様に、不活性化処理を行ったテストサンプル3は、生理活性物質を安定に固定化することが可能となった。
また、このような金属イオンの不活性化処理による安定して強固な固定は、SAM膜上でも、同様に生理活性物質を安定に固定化することが可能となった。
このように、本発明によれば、金属配位子と金属イオンと生理活性物質とからなる置換不活性錯体が形成されて、生理活性物質を安定して強固に基板表面に固定することができる。
本発明の実施例にかかるプラスチックプリズムの分解斜視図である。 本発明の実施例にかかるチップをスピンコーター上に固定する際に位置を示す概略平面図である。 本発明の実施例にかかる隔壁の平面図である。
符号の説明
10 測定ユニット
50 誘電体ブロック
51 流路部材
55 金属膜
60 流路
63 測定部
80 隔壁
82 Ref穴
84 Act穴

Claims (17)

  1. 生理活性物質を基板表面に固定する固定化方法であって、
    前記生理活性物質と前記基板表面に連結された金属配位子と金属イオンとからなる置換不活性錯体を形成すること
    を含む固定化方法。
  2. 前記置換不活性錯体が、該置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを用いて形成されたものである請求項1記載の固定化方法。
  3. 前記置換不活性錯体が、置換活性錯体を形成可能な金属イオンの不活性化処理を含む工程により形成されたものである請求項1記載の固定化方法。
  4. 前記不活性化処理が、前記金属配位子に前記金属イオンを配位させた後に行われることを特徴とする請求項3に記載の固定化方法。
  5. 前記不活性化処理が、酸化処理であることを特徴とする請求項3又は4に記載の固定化方法。
  6. 前記不活性化処理が還元処理であることを特徴とする請求項3又は4に記載の固定化方法。
  7. 前記置換不活性錯体を形成する金属イオンが、遷移金属のイオンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の固定化方法。
  8. 前記置換不活性錯体を形成する金属イオンが、周期律表における6族、7族、8族、9族、10族金属のいずれかであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の固定化方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法で、生理活性物質が基板表面に固定されたバイオセンサー。
  10. 金属表面あるいは金属膜を用いた請求項9に記載のバイオセンサー。
  11. 前記金属表面あるいは金属膜が、金、銀、銅、白金、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの自由電子金属からなることを特徴とする請求項9に記載のバイオセンサー。
  12. 非電気化学的検出に使用される請求項9〜11のいずれか1項に記載のバイオセンサー。
  13. 表面プラズモン共鳴分析に使用される請求項12に記載のバイオセンサー。
  14. 生理活性物質が基板表面に固定されたバイオセンサーの製造方法であって、
    前記基板表面に連結された金属配位子に、置換活性錯体を形成可能な金属イオンを配位させて置換活性錯体を形成すること、
    前記置換活性錯体を形成可能な金属イオンを不活性化処理して、置換不活性錯体を形成可能な金属イオンを得ること、
    前記金属配位子と前記置換不活性錯体を形成可能な金属イオンと生理活性物質とからなる置換不活性錯体を得ること、
    を含むことを特徴とするバイオセンサーの製造方法。
  15. 請求項9〜13のいずれか1項に記載のバイオセンサーの基板表面に固定された生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する試験方法。
  16. 非電気化学的方法により検出または測定する請求項15に記載の試験方法。
  17. 表面プラズモン共鳴分析により検出または測定する請求項16に記載の試験方法。
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