JP2007084629A - 光学材料用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エピスルフィド化合物の高屈折率、高アッベ数、高耐熱性を維持しつつ、入手が容易なチオール化合物とイソシアネート化合物の添加により高強度の光学材料を提供すること。
【解決手段】特定のエピスルフィド化合物と特定のイソシアネート化合物と特定のチオール化合物とオニウム塩の重合触媒からなる光学材料用組成物。
【選択図】
なし

Description

本発明は、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でも、眼鏡用プラスチックレンズを製造する方法に関するものである。
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また染色が容易であることから、各種光学材料、特に眼鏡レンズに近年多用されている。光学材料、中でも眼鏡レンズに特に要求される性能は、低比重、高透明性および低黄色度、光学性能として高屈折率と高アッベ数であり、高耐熱性、高強度などである。高屈折率はレンズの薄肉化を可能とし、高アッベ数はレンズの色収差を低減する。高強度は二次加工を容易にするとともに、安全性等の観点からも重要である。光学性能の高屈折率および高アッベ数、高耐熱性を同時に実現する手法として、エピスルフィド化合物の使用があげられるが、該化合物からなる光学材料については、高強度化が課題となっていた。
このため、エピスルフィド化合物に加えてチオール化合物とイソシアネート化合物の添加することにより、引張強度、曲げ強度、耐衝撃性などの各種強度の向上に関する検討が行われている(特許文献1〜6参照)。しかしながら、これらの発明の多くでは、高屈折率と高アッベ数が損なわれてたり(特許文献1、3、4及び6参照)、耐熱性の低下がみられた(特許文献2及び3参照)。また、実施の主体が一般的に入手が困難な(高価格な)チオール化合物もしくはイソシアネート化合物を使用している場合(特許文献1、2、3及び5参照)も多かった。
特開平11−100428号公報 特開平11−352302号公報 特開2000−256435号公報 特開2001−131257号公報 特開2001−330701号公報 特許第3541707号公報
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、すなわち、エピスルフィド化合物の高屈折率、高アッベ数、高耐熱性を維持しつつ、入手が容易な(低価格な)チオール化合物とイソシアネート化合物の添加により高強度の光学材料を提供するものである。
本発明者らは、これらの問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記(1)式で表される(a)化合物と
Figure 2007084629
(mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
下記(2)式で表される(b)化合物と
Figure 2007084629
(R、R、R、Rは水素またはメチル基を表す)
スルフィド結合を1分子中に1個以上有しかつチオール基を1分子中に2個以上有する(c)化合物とオニウム塩である(d)化合物からなる特定の組み合わせの光学材料用組成物により、エピスルフィド化合物の有する高屈折率、高アッベ数、高耐熱性をできるだけ維持しつつ、チオール化合物とイソシアネート化合物の添加による強度向上を達成し、本発明に至った。
本発明の組成物により、エピスルフィド化合物の有する高屈折率、高アッベ数、高耐熱性を維持しつつ、入手が容易な(低価格な)チオール化合物とイソシアネート化合物の添加により高強度の光学材料を提供することが可能となった。
エピスルフィド化合物としては、高屈折率と高アッベ数を同時に発現するために脂肪族のエピスルフィド化合物が選択され、なかでも高耐熱性を発現するために2個以上のエピスルフィド基を有する化合物が選択された。さらに検討の結果、下記(1)式で表される特定の(a)化合物において本発明の効果が非常に顕著に表れた。
Figure 2007084629
(mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
(a)化合物の具体例としては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、ビス(β−エピチオプロピルチオエチル)スルフィド、などにエピスルフィド類があげられる。(a)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。中でも好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドおよび/またはビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドであり、最も好ましい具体例は、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィドである。
イソシアネート化合物としては、高屈折率を維持するために芳香族のイソシアネート化合物が選択され、なかでも高耐熱性を発現するために2個以上のイソシアネート基を有する化合物が選択された。さらに検討の結果、下記(2)式で表される特定の(b)化合物において本発明の効果が非常に顕著に表れた。
Figure 2007084629
(R、R、R、Rは水素またはメチル基を表す)
本発明で使用する(b)および(c)化合物については、工業的に入手が容易な(低価格な)化合物であることが好ましい。具体的には、工業的に製造可能な化審法の届出済みの化合物であることが好ましい。さらには、工業的に低価格で流通している化合物、例えば「14504の化学商品」(化学工業日報社発行、2004年)などに記載の化合物がより好ましい。
(b)化合物の具体例としては、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、などのポリイソシアネート類が挙げられる。(b)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで好ましい具体例は、より工業的に入手が容易な(低価格な)m−キシリレンジイソシアネートおよび/またはm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートであり、最も好ましい具体例は、高耐熱性を発現するm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
チオール化合物としては、高屈折率を維持するためにスルフィド結合を1分子中に1個以上有するチオール化合物が好ましく、なかでも高耐熱性を発現するためチオール基を1分子中に2個以上有する化合物が特に好ましい。スルフィド結合を1分子中に1個以上有しかつチオール基を1分子中に2個以上有する特定の(c)化合物において本発明の効果が非常に顕著に表れた。
(c)化合物の具体例としては、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、2−(2−メルカプトエチルチオ)−1,3−ジメルカプトプロパン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、2,4−ビス(メルカプトメチル)−1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ビス(メルカプトメチル)−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、1,2,7−トリメルカプト−4,6−ジチアヘプタン、1,2,9−トリメルカプト−4,6,8−トリチアノナン、1,2,8,9−テトラメルカプト−4,6−ジチアノナン、1,2,10,11−テトラメルカプト−4,6,8−トリチアウンデカン、1,2,12,13−テトラメルカプト−4,6,8,10−テトラチアトリデカン、テトラキス(4−メルカプト−2−チアブチル)メタン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、1,5−ジメルカプト−3−メルカプトメチルチオ−2,4−ジチアペンタン、3,7−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,9−ジメルカプト−2,4,6,8−テトラチアノナン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1−チアン、2,5−ビス(2−メルカプトエチル)−1−チアン、ビス(4−メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4−メルカプトメチルフェニル)スルフィド、3,4−チオフェンジチオール、などのポリチオール類およびこれらの2量体〜20量体といったオリゴマーなどのチオール類をあげることができる。(c)化合物は単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで好ましい具体例は、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドおよび/または2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンであり、最も好ましい具体例は、より工業的に入手が容易な(低価格な)ビス(2−メルカプトエチル)スルフィドである。
本発明の光学材料用組成物において、(a)化合物に対する(b)化合物と(c)化合物の総量は、これら化合物の種類によって得られる硬化物の光学特性、強度、耐熱性によって変化するため一概には決められないが、通常は(a)化合物50〜90重量部に対して(b)化合物と(c)化合物の総量が50〜10重量部、好ましくは(a)化合物60〜85重量部に対して(b)化合物と(c)化合物の総量が40〜15重量部、さらに好ましくは(a)化合物65〜80重量部に対して(b)化合物と(c)化合物の総量が35〜20重量部である。(a)化合物の配合量が50重量部を下回ると耐熱性が低下する場合があり、90重量部を上回ると、強度向上効果が得られない場合がある。
さらに、(b)化合物のNCO基と(c)化合物のSH基の割合に関しては、好ましくはSH基/NCO基=1.0〜2.5であり、より好ましくはSH基/NCO基=1.25〜2.25であり、さらに好ましくはSH基/NCO基=1.5〜2.0である。同割合が1.0を下回ると硬化物が黄色くなる場合があり、2.5を上回ると耐熱性が低下する場合がある。
本発明で使用する重合触媒は、主に熱硬化型触媒を用いるが、光硬化型触媒や他の活性エネルギー線触媒を用いても構わない。重合触媒としては、エピスルフィド化合物の重合とイソシアネート化合物とチオール化合物の重付加の両方に効果を有するイオン系の触媒が選択され、なかでも組成物調合時の粘度の安定性が高く(粘度上昇が穏やか)、ハンドリングが良好なこと、および高耐熱性を発現することから、オニウム塩である(d)化合物において本発明の効果が非常に顕著に表れた。本発明においては、特許文献1記載の重合触媒を用いない場合や特許文献2に記載の重合触媒が錫化合物では重合が不十分で未硬化もしくは低耐熱性となり、特許文献3に記載の重合触媒がアミンと酸と錫化合物では粘度の上昇が著しくハンドリングが悪いうえに低耐熱性となる。
(d)化合物としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第3級スルホニウム塩、第2級ヨードニウム塩が好ましく、中でも組成物との相溶性の良好な4級アンモニウム塩および4級ホスホニウム塩がより好ましく、さらに好ましくは4級ホスホニウム塩である。
より好ましい(d)化合物の具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、1−n−ドデシルピリジニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の第4級ホスホニウム塩が挙げられる。これらの中で、さらに好ましい具体例は、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドおよび/またはテトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドであり、最も好ましい具体例は、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイドである。
(d)化合物の添加量は、組成物の成分、混合比および重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001重量部〜10重量部、好ましくは、0.001重量部〜5重量部、より好ましくは、0.01重量部〜1重量部、最も好ましくは、0.01重量部〜0.5重量部使用する。(d)化合物の量が10重量部より多いと硬化物の屈折率、耐熱性が低下し、着色する場合がある。また、0.0001重量部より少ないと十分に硬化せず耐熱性が不十分となる場合がある。
本発明の光学材料用組成物において、(a)化合物以外のエピスルフィド化合物、(b)化合物以外のイソ(チオ)シアネート化合物、(c)化合物以外のチオール化合物、(d)化合物以外の重合触媒を添加し組成物とすることは、それぞれ硬化物の諸物性を調整するために有効な手段である。これら化合物の添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001〜100重量部である。
光学材料用組成物を重合硬化する際に、ポットライフの延長や重合発熱の分散化などを目的として、必要に応じて重合調整剤を添加することができる。重合調整剤は、長期周期律表における第13〜16族のハロゲン化物を挙げることができる。これらのうち好ましいものはケイ素、ゲルマニウム、スズ、アンチモンのハロゲン化物であり、より好ましいはアルキル基を有するゲルマニウム、スズ、アンチモンの塩化物である。さらに好ましいものの具体例はジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、ジオクチルスズジクロライド、オクチルスズトリクロライド、ジブチルジクロロゲルマニウム、ブチルトリクロロゲルマニウム、ジフェニルジクロロゲルマニウム、フェニルトリクロロゲルマニウム、トリフェニルアンチモンジクロライドであり、最も好ましいものの具体例はジブチルスズジクロライドである。重合調整剤は単独でも2種類以上を混合して使用してもかまわない。
重合調整剤の添加量は、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して、0.001〜5.0重量部であり、好ましくは0.002〜5重量部であり、より好ましくは0.005〜3重量部である。
硫黄原子を含む無機化合物を添加し組成物とすることも、硬化物の光学特性を調整するために有効な手段である。硫黄原子を含む無機化合物の具体例としては、硫黄、硫化水素、二硫化炭素、セレノ硫化炭素、硫化アンモニウム、二酸化硫黄、三酸化硫黄等の硫黄酸化物、チオ炭酸塩、硫酸およびその塩、硫化水素塩、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、過硫酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、二塩化硫黄、塩化チオニル、チオホスゲン等のハロゲン化物、硫化ホウ素、硫化窒素、硫化珪素、硫化リン、硫化砒素、硫化セレン、金属硫化物、金属水硫化物などがあげられる。これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。これらのなかで、好ましい具体例は硫黄、二硫化炭素もしくは硫化セレンであり、最も好ましいのは硫黄である。添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.01〜50重量部である。
さらには、エポキシ化合物を添加し組成物とすることも、硬化物の均一性を高めるために有効な手段である。エポキシ化合物の具体例としては、フェノールやビスフェノールAなどの芳香族ヒドロキシ化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物、アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物、カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物、アミンとエピハロヒドリンの縮合により製造されるアミン系エポキシ化合物、不飽和化合物の酸化エポキシ化により製造されるエポキシ化合物、アルコール、フェノール化合物とジイソシアネートおよびグリシドールなどから製造されるウレタン系エポキシ化合物、およびエピスルフィド化合物のチイラン環の一部または全部がエポキシ環に置換した化合物等をあげることができる。これらのなかで、好ましくはフェノール系エポキシ化合物であり、最も好ましいのはビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部である。
本発明の組成物を重合した硬化物の染色性を向上せしめるために、染色性向上成分として、カルボン酸、メルカプトカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アミド、1,3−ジケトン、1,3−ジカルボン酸、3−ケトカルボン酸およびそのエステル類、メルカプトアルコール類、不飽和基を有する化合物と併用して使用することも可能である。これら化合物の添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部である。
本発明の硬化物は(a)化合物中と反応可能な官能基を2個以上有する化合物や(a)化合物中と反応可能な官能基を1個と他の単独重合可能な官能基を1個以上有する化合物などの重合性化合物と硬化重合して製造することもできる。これら化合物としては、公知のチイラン環を有する化合物、多価カルボン酸無水物、不飽和基を有する化合物、などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
さらに、不飽和基を有する化合物を使用する際には、重合促進剤として、ラジカル重合開始剤を使用する事は好ましい方法である。ラジカル重合開始剤とは、加熱あるいは紫外線や電子線によってラジカルを生成するものであれば良く、公知のパーオキサイド類やアゾ系化合物類などの熱重合触媒、ベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどの公知の光重合触媒が挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。ラジカル重合開始剤の配合量は、組成物の成分や重合硬化方法によって変化するので一概には決められないが、通常は(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。
さらには、本発明に関わる組成物にはこれらばかりでなく、(a)化合物のオリゴマー類、合成時に用いた溶媒や酸類、未反応原料、副生成物も問題にならない範囲で含まれて良い。
また、本発明の組成物を重合硬化して光学材料を得るに際して、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、顔料等の添加剤を加えて、得られる材料の実用性をより向上せしめることはもちろん可能である。また、本発明の組成物は重合中に型から剥がれやすい場合は、公知の外部および/または内部密着性改善剤を使用または添加して、得られる硬化物と型の密着性を制御向上せしめることも可能である。密着性改善剤とは、公知のシランカップリング剤やチタネート化合物類などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。
添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部である。逆に、本発明の組成物は重合後に型から剥がれにくい場合は、公知の外部および/または内部離型剤を使用または添加して、得られる硬化物の型からの離型性を向上せしめることも可能である。
離型剤とは、フッ素系ノニオン界面活性剤、シリコン系ノニオン界面活性剤、アルキル第4級アンモニウム塩、燐酸エステル、酸性燐酸エステル、オキシアルキレン型酸性燐酸エステル、酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、オキシアルキレン型酸性燐酸エステルのアルカリ金属塩、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、パラフィン、ワックス、高級脂肪族アミド、高級脂肪族アルコール、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物などがあげられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して用いてもかまわない。添加量は通常、(a)化合物、(b)化合物および(c)化合物の合計100重量部に対して0.0001〜5重量部である。
本発明の組成物を重合硬化して光学材料を製造する方法は、さらに詳しく述べるならば以下の通りである。前述した各組成成分、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合触媒、ラジカル重合開始剤、密着性改善剤、離型剤などの添加剤を、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても、各原料を段階的に添加混合しても、数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合しても良い。各原料および副原料はいかなる順序で混合してもかまわない。
混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であれば良く、それぞれ一部または全部を重合触媒の存在下または非存在下、撹拌下または非撹拌下で−100〜160℃で、0.1〜480時間かけて予備的に反応せしめた後、光学材料用組成物を調製する事も可能である。また、あらかじめ脱気処理を行うことにより、これにより光学材料の高度な透明性が達成される場合がある。脱気処理は、0.001〜50torrの減圧下、1分間〜24時間、0℃〜100℃で、組成成分の一部もしくは全部と反応可能な化合物、重合触媒、添加剤の混合前、混合時あるいは混合後に、減圧下で行う。好ましくは、混合時あるいは混合後に、減圧下で行う。さらには、これらの光学材料用組成物および/または混合前の各原料を0.05〜10μm程度の孔径を有するフィルターで不純物等を濾過し精製することは本発明の光学材料の品質をさらに高める上からも好ましい。
このようにして得られた光学材料用組成物は、ガラスや金属製の型に注入し、加熱や紫外線などの活性エネルギー線の照射によって重合硬化反応を進めた後、型から外し製造される。好ましくは、加熱によって重合硬化する。この場合、硬化時間は0.1〜200時間、通常1〜100時間であり、硬化温度は−10〜160℃、通常−10〜140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間のホールド、0.1℃〜100℃/hの昇温、0.1℃〜100℃/hの降温およびこれらの組み合わせで行うことができる。また、重合終了後、硬化物を50〜150℃の温度で10分〜5時間程度アニール処理を行う事は、本発明の光学材料の歪を除くために好ましい処理である。さらに必要に応じて染色、ハードコート、耐衝撃性コート、反射防止、防曇性付与等表面処理を行うことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた硬化物の屈折率およびアッベ数、耐熱性および強度の評価は以下の方法で行った。
屈折率およびアッベ数(nd,νd):アッベ屈折率計を用い、25℃で測定した。
耐熱性:サンプルを厚さ3mmに切り出し、1mmφのピンに10gの加重を与え、30℃から10℃/分で昇温してTMA測定を行い、軟化点を測定した。
強度:厚さ2.5mmの平板に縁から3mmの位置に、ドリルを使用してφ2.0mmの穴を開けた。このサンプルの穴にφ2.0mmの超硬丸棒を挿し、サンプルの反対側を万力で固定し、オートグラフを用いて引っ張り、破壊強度を測定した。
実施例1
(a)化合物としてビス(β−エピチオプロピル)スルフィド80重量部に(b)化合物としてm−テトラメチルキシリレンジイソシアネート9.5重量部、(c)化合物としてビス(2−メルカプトエチル)スルフィド10.5重量部、(d)化合物としてテトラブチルホスホニウムブロマイド0.1重量部を混合して均一溶液とした。得られた光学材料組成物を脱気処理し、0.5μmのPTFE製のメンブランフィルターでろ過した。次いで、この組成物をモールドに注入し、オーブンを用いて30℃で10時間、30℃から100℃まで10時間かけて昇温させ、最後に100℃で1時間重合硬化させた。硬化物は、室温まで放冷しモールドから離型した後、110℃で1時間アニールした。得られた硬化物は、優れた光学特性、物理物性を有するのみならず表面状態および色調は良好であり、耐熱性、光学歪、透明性も良好であった。硬化物の諸物性を表1に示した。
実施例2〜5
実施例1と同様の操作を表1に示す組成で行った。得られた硬化物は、優れた光学特性、物理物性を有するのみならず表面状態および色調は良好であり、耐熱性、光学歪、透明性も良好であった。硬化物の諸物性を表1に示した。
比較例1
実施例1と同様の操作を表1に示す(b)化合物を用いない組成で行った。得られた硬化物は、対応する実施例に比して、耐熱性、強度が低下した。硬化物の諸物性を表2に示した。
比較例2
実施例1と同様の操作を表1に示す(b)化合物以外のイソシアネート化合物を使用した組成で行った。得られた硬化物は、対応する実施例に比して、屈折率および強度が低下した。硬化物の諸物性を表2に示した。
比較例3
実施例1と同様の操作を表1に示す(c)化合物を用いない組成で行った。組成物は、硬化物は軟質で、物性測定ができなかった。
比較例4
実施例1と同様の操作を表1に示す(c)化合物以外のチオール化合物を使用した組成で行った。得られた硬化物は、対応する実施例に比して、屈折率および強度が低下した。硬化物の諸物性を表2に示した。
比較例5
実施例1と同様の操作を表1に示す(d)化合物を用いない組成で行った。組成物は、重合せず、液状のままであった。
比較例6
実施例1と同様の操作を表1に示す(d)化合物以外の重合触媒(特許文献2で使用の触媒)を使用した組成で行った。組成物は、重合せず、液状のままであった。
Figure 2007084629
Figure 2007084629
a-1:ビス(β-エピチオプロピル)スルフィド
b-1:m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート
b-2:m−キシリレンジイソシアネート
c-1:ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド
c-2:2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン
d-1:テトラブチルホスホニウムブロマイド
b’:イソホロンジイソシアネート
c’: ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
d’:ジブチル錫ジクロライド

Claims (9)

  1. 下記(1)式で表される(a)化合物と
    Figure 2007084629


    (mは0〜4の整数、nは0〜2の整数を表す)
    下記(2)式で表される(b)化合物と
    Figure 2007084629

    (R、R、R及びRは、それぞれ水素またはメチル基を表す)
    スルフィド結合を1分子中に1個以上有しかつチオール基を1分子中に2個以上有する(c)化合物と、オニウム塩である(d)化合物からなる光学材料用組成物。
  2. (a)化合物60〜85重量部に対し、(b)化合物と(c)化合物の総計が40〜15重量部、(d)化合物0.001〜5重量部を使用する請求項1記載の光学材料用組成物。
  3. (a)化合物がビス(β−エピチオプロピル)スルフィドおよび/またはビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィドである請求項1または2記載の光学材料用組成物。
  4. (b)化合物がm−キシリレンジイソシアネートおよび/またはm−テトラメチルキシリレンジイソシアネートである請求項1〜3何れか1項に記載の光学材料用組成物。
  5. (c)化合物がビス(2−メルカプトエチル)スルフィドおよび/または2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンである請求項1〜4何れか1項に記載の光学材料用組成物。
  6. 請求項1〜5記載の組成物を重合硬化して得られる硬化物の製造方法。
  7. 請求項1〜6記載の組成物を重合硬化して得られる硬化物。
  8. 請求項7記載の硬化物からなる光学材料。
  9. 請求項8記載の光学材料からなる光学レンズ。



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