JP2007084495A - ウイルス感染細胞処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化するための抗ウイルス剤及びウイルス感染細胞処理方法を提供する。
【解決手段】 ウイルスの感染細胞の周囲において、感染したウイルスに特異的な抗体の濃度を維持することにより、抗体がウイルスの周囲に結合してウイルスの細胞への接着を妨害し、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化する抗ウイルス剤及びウイルス感染細胞処理方法に関する。
ウイルスは、DNAまたはRNAを遺伝子としてもち、宿主細胞内に侵入し、宿主細胞内の代謝系を使って増殖する。すべてのウイルス感染で共通な過程は、ウイルスの宿主細胞への吸着、進入、ウイルス構成成分の合成、ウイルス構成成分の集合(ウイルス粒子形成)、ウイルスの細胞外への放出である。従来、抗ウイルス剤は、これらのウイルスの細胞への吸着、侵入、脱殻(特にレトロ・ウイルスでは逆転写、組み込み)、核酸の転写、複製、タンパク質合成と修復、粒子形成、放出といったウイルスの増殖サイクルのいずれかのステップを阻害することを基本としている。
一方、ウイルス感染の予防は、細胞にウイルスが感染する前にウイルスを除去ないしは不活性化することにより、行うことができる。このため、ウイルスを除去する技術が多数開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1には、担体に抗体を担持させた構成の有害物質除去材からなる空気浄化フィルタや、担体に抗体を担持させた構成の有害物質除去材を備えたマスクが公開されている。
特開2004−313755号公報(第7−10頁)
しかし、上記特許文献1においては、ウイルスに感染しないように空気中等のウイルスを除去することについては示されているが、ウイルスに感染した細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することについては示されていない。一方、ウイルスは巧妙に宿主細胞のRNA合成やタンパク合成のしくみを利用して増殖するので、現在知られているRNA合成やタンパク合成の阻害剤を用いてウイルス増殖を阻害すれば、宿主細胞の死をも誘導する。また、細胞内にウイルスをもったまま分裂増殖している細胞を持続感染細胞というが、従来の抗ウイルス剤を用いる場合、持続感染細胞よりウイルスを消失させるには、高価な医薬品を高濃度用いなければならず、また、完全に消失させることは困難であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化するための抗ウイルス剤及びウイルス感染細胞処理方法を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、対象とするウイルスに特異的な抗体を有する抗ウイルス剤であって、前記ウイルスの感染細胞の周囲における前記抗体の濃度を維持する手段を有することを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の抗ウイルス剤において、前記抗ウイルス剤は、前記抗体を含有する、貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布、ゲル状のパッチ、軟膏、ローション、点鼻剤、スプレー、液滴の吸入剤、ドライパウダーの吸入剤、消化され難い構成の内服剤、座剤、浣腸剤、点眼剤、眼軟膏のいずれか1つであることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の抗ウイルス剤において、前記ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、
疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスのいずれか1つであることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の抗ウイルス剤において、前記抗体は鶏卵抗体であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、ウイルスの感染細胞の周囲において、前記ウイルスに特異的な抗体の濃度を維持することにより、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のウイルス感染細胞処理方法において、前記ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ノロウイルス、コイヘルペスウイルス、イリドウイルス、ラブドウイルス群、ホワイトスポットウイルスのいずれか1つであることを要旨とする。
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載のウイルス感染細胞処理方法において、前記抗体は鶏卵抗体であることを要旨とする。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ウイルスの感染細胞の周囲において、感染したウイルスに特異的な抗体の濃度を維持することにより、抗体がウイルスの周囲に結合してウイルスの細胞への接着を妨害し、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することができる。
請求項2に記載の発明によれば、前記抗ウイルス剤を、前記抗体を含有する、貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布、ゲル状のパッチ、軟膏、ローション、点鼻剤、スプレー、液滴の吸入剤、ドライパウダーの吸入剤、消化され難い構成の内服剤、座剤、浣腸剤、点眼剤、眼軟膏のいずれか1つとすることができる。すなわち、前記抗体を含有する貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布の状態の抗ウイルス剤については、これらに抗体を散布した状態や、これらに抗体を担持させた状態とし、これらを患部に接触させておくことで、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。前記抗体を含有するゲル状のパッチ、軟膏、ローションの状態の抗ウイルス剤については、抗体を粘度の高いゲル状の抗ウイルス剤に含有させることで、これらの抗ウイルス剤を塗った部分に抗体が留まり、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。点鼻剤、スプレー、液滴の吸入剤、ドライパウダーの吸入剤については、このような状態で抗体を鼻腔・咽頭粘膜などに予め投与しておくことで、鼻腔や咽頭粘膜などに抗体が留まり、鼻腔や咽頭粘膜などの感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。消化され難い構成の内服剤については、腸の細胞がウイルスに感染している場合に、胃で消化されずに腸の粘膜に抗体が達し、腸の粘膜に抗体を局在させることができ、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。座剤、浣腸剤については、これらを患部に保持することで、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。点眼剤については、高濃度の抗体を含む点眼剤とした抗ウイルス剤を点眼することで、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。眼軟膏については、粘度の高い眼軟膏とした抗ウイルス剤に抗体を含有させることで、これらの抗ウイルス剤を塗った部分に抗体が留まり、感染細胞の周囲において抗体の濃度を維持することが可能となる。
請求項3に記載の発明によれば、前記ウイルスを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフ
ルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスのいずれか1つとすることができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記抗体を鶏卵抗体とすることができる。鶏卵抗体は容易に入手可能であり、抗体を安価に大量に準備することが可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、ウイルスの感染細胞の周囲において、感染したウイルスに特異的な抗体の濃度を維持することにより、抗体がウイルスの周囲に結合してウイルスの細胞への接着を妨害し、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記ウイルスを、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ノロウイルス、コイヘルペスウイルス、イリドウイルス、ラブドウイルス群、ホワイトスポットウイルスのいずれか1つとすることができる。
請求項7に記載の発明によれば、前記抗体を鶏卵抗体とすることができる。鶏卵抗体は容易に入手可能であり、抗体を安価に大量に準備することが可能となる。
本発明によれば、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することができる。
以下、本発明を具体化した実施形態を説明する。本実施形態では、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化するための抗ウイルス剤及びウイルス感染細胞処理方法として説明する。
発明者らは、SARSコロナウイルス(SARS-CoV)のスパイクタンパク質を鶏に免役し、スパイクタンパク質についての抗SARSコロナウイルス鶏卵抗体を作成した。この抗体を、SARSコロナウイルスに持続感染している細胞の培養液中に共存させておくと、感染細胞のウイルスが消失することが実験により確認された(実施例参照)。
本実験では細胞培養液中に100μg/mlという高濃度で抗体を添加している。通常、
抗体は、このような高濃度で用いることはなく、また、従来の抗体ではあまりに高価であるため、このような高濃度で抗体を用いることは考えられなかった。産卵鶏の免疫機構を利用してその鶏卵より得られる特異的鶏卵抗体は、ウサギ、ヤギ等の血液から得られる特異的抗体と比較して、量産が可能であり、生産コストが安い。このため、鶏卵抗体を用いることにより、多量の抗SARSコロナウイルス抗体を比較的安価なコストで得ることができた。このように、発明者らは、多量の抗体を得ることができたため、このような実験を行うことを想起した。
(ウイルスの生活環)
まず、本発明の前提として、ウイルスの生活環について説明する。すなわち、すべてのウイルス感染において共通な過程は、ウイルスの宿主細胞への吸着、進入、ウイルス構成成分の合成、ウイルス構成成分の集合(ウイルス粒子形成)、ウイルスの細胞外への放出である。
ここで、本実験に用いたSARSコロナウイルスを例にして、ウイルス粒子の構造、及
び、生活環について説明する。
SARSコロナウイルスは、一本鎖の正のRNAを遺伝子とするウイルスで、基本構造は遺伝子RNAを安定化し保護するタンパク質(N,ヌクレオキャプシッド))で包まれた殻(コア)、コア構造を保護する脂質膜(エンベロープ、宿主細胞を構成している細胞小胞体(ER,endoplasmic Reticulum)由来と考えられる)、エンベロープに埋め込ま
れた膜タンパク質(S(スパイク(Spike))など)から成り立っている。この膜タンパ
ク質は、ウイルスの細胞への吸着に際しレセプターと結合し、細胞膜とウイルス膜の融合反応を促進し、コアのウイルス遺伝子を細胞へ導入するのに必要である。
コロナウイルスはスパイクタンパク質(Sタンパク質)のレセプターを持つ細胞(感受性のある細胞)に結合する。なお、SARSコロナウイルスでは細菌レセプターの1つがアンジオテンシン2のレセプターであることが証明されている。結合によりスパイクタンパク質の立体構造に変化が起こり、ある種の細胞由来プロテアーゼに感受性となりスパイクタンパク質の特定部位が開裂される。この開裂により細胞膜に親和性を持つ端末が露出することによりウイルス膜と細胞膜が融合可能な距離に引き寄せられ、ウイルス粒子は細胞膜と融合しウイルスコアが細胞内へと進入すると考えられている。
進入したウイルスコアのRNA遺伝子は壊されることなく直ちにRER(粗面小胞体、Rough ER)上でタンパク質合成を開始する(正のmRNAを持つウイルスの特徴で、インフルエンザウイルスなどは負のmRNAを遺伝子として持つので最初にウイルス粒子中の酵素で正のmRNAを作ってから、このステップが始まる。)
最初に作られるタンパク質はウイルスRNA合成に必要ないくつかの酵素やそれらの酵素を活性型に整形するプロテアーゼである。その酵素を用いて正から負のRNAが合成される。負のRNAを鋳型にウイルス構造タンパク質合成に必要な様々な長さのmRMAやウイルス粒子に取り込まれる完全長の正のRNA(ゲノムRNA)が多量に合成される。次いで、ゲノムRNAとNタンパク質の集合体(殻)がRERの膜に組み込まれたウイルス膜タンパク質を認識し、細胞内RERの内側に向かってウイルス修理を出芽形成する。ウイルス粒子を持つRERは細胞内排泄装置であるゴルジ体と融合し、細胞表面に移動、再び細胞膜と融合して内部のウイルス粒子を細胞外へと放出する。
以上のようにウイルスの複製過程の概略はかなり明らかにされているものの、ウイルス増殖の制御法の開発に至る間で詳しくは解明されていない。ウイルスは巧妙に宿主細胞のRNA合成やタンパク質合成の装置を利用し増殖するので、現在知られているRNA合成やタンパク質合成の阻害剤を用いてウイルス増殖を阻害すれば、宿主細胞の死をも誘導する。
(持続感染細胞)
発明者らは、SARSコロナウイルスに感受性を持つ培養細胞におけるウイルス増殖と感染細胞の生存の様子を調べた。一番典型的な急性感染様式を示すのはVero細胞で、ウイルスは感染後1−3日目までに急性感染を起こし急激なウイルス増殖が見られ、4日目に最大の細胞死が観察された。4日目以降は、ウイルス産生は減少した(最高値の1/100)が、細胞は再度増殖を初め、ウイルスを産生しながら継代できる持続感染細胞となった。なお、SARSコロナウイルスの感染で完全に死滅する培養細胞系は見つかっていない。
(持続感染細胞において確認された現象と予想されるメカニズム)
上述のように、発明者らは、抗SARSコロナウイルス鶏卵抗体(抗SARSコロナウイルス・スパイクタンパク質IgY抗体)を、SARSコロナウイルスに持続感染している
細胞の培養液中に共存させておくと、感染細胞のウイルスが消失することを確認した(実施例参照)。持続感染細胞は、細胞内にウイルスをもったまま分裂増殖している細胞であ
るが、この状態でのウイルスのライフサイクルは未知の部分が多い。
培養液中の抗体(抗SARSコロナウイルス・スパイクタンパク質IgY抗体)は、細胞
の外のウイルス粒子に結合し、ウイルスが細胞に感染するのを防いでいるものと考えられる。このことから、培養液中に添加した抗体が、細胞から放出されたウイルス粒子に結合することでウイルスの再感染を防いでいることが考えられる。
(感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化する方法)
このような観点から、発明者らは、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化する方法として、感染細胞の周囲に、感染しているウイルスに特異的な抗体を多量に維持しておくことが効果的であると考えた。なお、感染細胞から放出されたウイルス粒子に抗体が結合することにより、ウイルスが細胞に再感染するのを防ぐため、この方法の適用対象は、持続感染細胞に限られない。
このような観点から、利用可能な抗体、適用例等の検討を行った。これについて、以下に説明する。
(抗体)
抗体としては、対象となるウイルスのウイルス粒子に結合する抗体を用意する。ここで、ウイルス粒子の外面に露出している成分に対する抗体、特に、そのウイルスが細胞に感染する際に、宿主細胞との結合に必要なタンパク質に対する抗体が特に効果的である。例えば、SARSコロナウイルスについて、発明者らは、スパイクタンパク質に対する抗体を用いて実験を行ったが、SARSコロナウイルスにおいて、このスパイクタンパク質は、エンベロープに埋め込まれた膜タンパク質であって、ウイルスの細胞への吸着に際しレセプターと結合し、細胞膜とウイルス膜の融合反応を促進し、コアのウイルス遺伝子を細胞へ導入するのに必要である。
抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液又は融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、ニワトリに抗原を投与して免疫卵を生ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易に且つ大量に抗体が得られ、本発明のように、多量の抗体を用いる場合には、特に適している。なお、鶏卵抗体においては、卵アレルギーについての対処として、アルブミン等のアレルギー成分を除去するための精製を行ってもよい。また、ニワトリ以外の鳥類の免疫卵を用いて抗体を製造する場合も、鶏卵抗体と同様に、容易に且つ大量に抗体を得ることができる。
(適用例)
以下、適用例について説明する。なお、本発明は以下の適用例に限定されるものではない。
<適用例1>
上述の、感染しているウイルスに特異的な抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持しておくことにより感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することは、患部にこのような抗体を十分に高濃度に維持しておくことによりウイルスを除去ないしは不活性化する抗ウイルス剤に適用できる。この場合、抗ウイルス剤が、対象とするウイルスに特異的な抗体を含有し、この抗体を、感染細胞の周囲に、十分に高濃度に維持しておく手段を有することにより、これを実現できる。ここで、「十分に高濃度」とは、ウイルスの再感染を防ぐために必要な濃度であって、具体的には、前記抗体がウイルスの周囲に結合するこ
とによりウイルスの細胞への接着を妨害し細胞外のウイルスが細胞に感染しない程度の高濃度である。
適用方法としては、次のような形態が挙げられる。なお、適用方法は、これに限られるものではない。
皮膚・粘膜のウイルスに対しては、このような抗体(感染しているウイルスに特異的な抗体、以下、単に「抗体」という場合もある)を含有する貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布、ゲル状のパッチ、軟膏、ローションとした抗ウイルス剤を提供することにより、患部に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。具体的には、貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布については、これらに抗体を散布した状態や、これらに抗体を担持させた状態の抗ウイルス剤を提供する。なお、抗体を担体(ここでは、貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布)に担持させる方法としては、例えば、特許文献1に開示されている方法を用いることが可能である。抗体を含有するこれらの貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布を患部に接触させておくことで、患部、すなわち感染細胞の周囲に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。ゲル状のパッチ、軟膏、ローションについては、抗体を粘度の高いゲル状のパッチ、軟膏、ローションなどの状態の抗ウイルス剤に含有させることで、これらの抗ウイルス剤を塗った部分に抗体が留まり、患部、すなわち感染細胞の周囲に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。なお、ウイルスと未反応の抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持する必要があるため、このような抗体を含有する貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布については、適宜、取換える。また、ゲル状のパッチ、軟膏、ローションについては、適宜、これらの抗ウイルス剤を患部に塗るようにする。
呼吸器系のウイルスに対しては、このような抗体を含有する点鼻剤、スプレー、吸入剤(液滴、ドライパウダー)とした抗ウイルス剤を提供することにより、患部に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。具体的には、点鼻剤、スプレー、吸入剤(液滴、ドライパウダー)などとした抗ウイルス剤に含有させた状態で、抗体を鼻腔・咽頭粘膜などに予め投与しておくことで、鼻腔や咽頭粘膜などに抗体が留まり、鼻腔や咽頭粘膜などの細胞の周囲に抗体が十分に高濃度に維持されることとなる。このため、鼻腔や咽頭粘膜などの細胞にウイルスが感染している場合、感染細胞の周囲に高濃度の抗体が維持されることとなる。なお、一度の投与では長期間にわたって抗体を十分に高濃度に維持できない場合は、適宜、このような抗体を含有する抗ウイルス剤を投入する。また、ウイルスと未反応の抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持するためにも、このような抗体を含有する抗ウイルス剤の投与を適宜行う。
消化器系のウイルスに対しては、このような抗体を含有する消化され難い構成の内服剤、座剤、浣腸剤とした抗ウイルス剤を提供することにより、患部に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。具体的には、消化され難い構成の内服剤として、例えば、抗体をカプセルに入れたカプセル剤とした抗ウイルス剤を提供する。これにより、例えば、腸の粘膜の細胞がウイルスに感染している場合に、胃で消化されずに、抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持することが可能となる。すなわち、このような場合、内服剤として投与することが可能となる。また、座剤、浣腸剤として抗体を含有する抗ウイルス剤を提供し、座剤、浣腸剤を患部に保持することで、抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持する。なお、一度の投与では長期間にわたって抗体を十分に高濃度に維持できない場合は、適宜、このような抗体を含有する抗ウイルス剤を投入する。また、ウイルスと未反応の抗体を感染細胞の周囲に高濃度に維持するためにも、このような抗体を含有する抗ウイルス剤の投与を適宜行う。
眼のウイルスに対しては、このような抗体を含有する点眼剤、眼軟膏とした抗ウイルス剤を提供することにより、患部に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。具体的には、点眼剤については、高濃度の抗体を含む点眼剤とした抗ウイルス剤を点眼するこ
とで、患部、すなわち感染細胞の周囲に抗体を十分に高濃度に維持する。また、眼軟膏については、粘度の高い眼軟膏とした抗ウイルス剤に抗体を含有させることで、これらの抗ウイルス剤を塗った部分に抗体が留まり、患部、すなわち感染細胞の周囲に抗体を十分に高濃度に維持することが可能となる。なお、ウイルスと未反応の抗体を感染細胞の周囲に十分に高濃度に維持する必要があるため、このような点眼剤の投与を適宜行い、このような眼軟膏を適宜、患部に塗るようにする。
対象となるウイルスの種類と主な疾患については、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下、対象となるウイルスの種類と主な疾患名とを、「対象となるウイルスの種類<主な疾患名>」のように記載する。
すなわち、対象となるウイルスの種類と主な疾患名として、ヒト免疫不全ウイルス<エ
イズ>、パピローマウイルス<乳頭腫、皮膚良性腫瘍>、伝染性軟属腫ウイルス<みずいぼ>、疣贅(ゆうぜい)ウイルス<いぼ>、ヘルペスウイルス<ヘルペス性湿疹、水ぼうそう、突発性湿疹>、インフルエンザウイルス<インフルエンザ>、パラインフルエンザウイルス<上気道感染症、肺炎>、アデノウイルス<呼吸器感染症、咽頭結膜炎、流行性角膜炎、腸管感染症>、ライノウイルス<かぜ症候群>、コロナウイルス<かぜ症候群、重症急性呼吸器症候群(SARS)>、ノーウォークウイルス<急性胃腸炎>、ロタウイルス<冬季乳児下痢症>、エコーウイルス<消化管感染症>、エンテロウイルス<急性結膜炎>等が挙げられる。なお、対象となるウイルスの種類及び疾患は、これらに限定されるものではない。
<適用例2>
上述の抗体を用いて感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化する方法は、牡蠣、エビ、鯉などの養殖において、感染した個体を、高濃度の抗体を含有する溶液中に浸すことにより、ウイルスが感染した個体について感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することに適用できる。ここで、抗体の濃度は、抗体がウイルスの周囲に結合することによりウイルスの細胞への接着を妨害し細胞外のウイルスが細胞に感染しない程度の高濃度(以下、「十分に高濃度」という場合もある)であることが、ウイルスの再感染を防ぐために必要である。
牡蠣、エビ、鯉などの養殖生物に対して適用する場合、具体的には、以下のように行う。すなわち、養殖生物にウイルスが感染した場合、感染した個体を隔離し、この個体を抗体溶液に浸す。この抗体溶液は、この個体に感染したウイルスに特異的な個体を、抗体がウイルスの周囲に結合することによりウイルスの細胞への接着を妨害し細胞外のウイルスが細胞に感染しない程度の高濃度の抗体を含む溶液であることが必要である。このような抗体溶液に浸しておくことで、感染した個体の細胞から放出されたウイルス粒子は、このウイルス粒子に抗体が結合することにより、細胞に再感染することができなくなる。これにより、ウイルスに感染した個体において感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化し、この個体を、もとの環境(養殖用容器、いけす等)に戻す。
また、他の方法としては、ウイルスに感染した個体を養殖している養殖用の容器やいけす等に、十分に高濃度の抗体を混入し、ウイルスに感染した個体において感染細胞のウイルスが除去ないしは不活性化されるまで、この養殖用の容器やいけす等に十分に高濃度の抗体を維持することにより、ウイルスを除去ないしは不活性化することも可能である。
対象となる養殖生物とウイルスについては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、以下、対象となる養殖生物とウイルスとを、「対象となる養殖生物:ウイルス」のように記載する。
すなわち、対象となる養殖生物及びウイルスとして、牡蠣:ノロウイルス、鯉:コイヘルペスウイルス、マダイ:イリドウイルス、ヒラメ:ラブドウイルス群、エビ:ホワイトスポットウイルスが挙げられる。なお、対象となる対象となる養殖生物及びウイルスは、これらに限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
以下、SARSコロナウイルス(SARS−CoV)スパイクタンパク質特異的ニワトリIgY抗体を用いて、SARSコロナウイルス(SARS−CoV)持続感染Vero細
胞からウイルスを消失させた実験について説明する。
(1)Vero細胞におけるSARSコロナウイルスの持続感染
被検物質の抗SARSコロナウイルス活性は、以下の方法により測定した。SARSコロナウイルスは、FFM-1株(Dr.HW. Doerr,Frankfrut University of Medicine, Germanyより分与)を用いた。培養細胞はVeroを用い、培地はダルベッコの最小必須 (DMEM
) に10%ウシ胎児血清を添加したものを用い、5% CO存在下において37℃で培養した。なお、上記Vero細胞は(株)大日本製薬より購入した。
ウイルス液の調製は、90%単層が形成された培養細胞に、細胞1個当たりのウイルス量が0.1(MOI=0.1, Multiplicity of infection)となる条件で行い(Tuker,P.C.ら, J. Virol. 71: 6106, 1997)、24時間後に培養液を回収し-70℃に保存し適宜使用した。
ウイルス力価の測定は、以下のようなプラーク形成法で行った。回収した培養上清を1% ウシ血清アルブミンを加えたPBA(−)(Mg2+, Ca2+を含まない0.05Mリン酸緩衝液、0.15M NaCl、pH7.0、ウイルス希釈液)で10倍階段希釈し、各0.2mlずつをそれぞれのウエル(6ウエルプレート、90%単層が形成された培養細胞)に接種した。25℃で60分間感染させた後1.0% メチルセルロースを加えたDMEM (5%ウシ胎児血清含有)で4日間培養した。培養後、メチルセルロースを取り除き、細胞を2.5% クリスタルバイオレット(30% エチルアルコール、1% シュウ酸アンモニウム中)で染色し、PBS(−)で3回洗浄/脱色後、プラーク数の平均値(3個のウエル)から1ml中のウイルス量を“PFU (Plaque Forming Unit)/mlとして算出した(Tuker, P.C.ら, J.Virol.71:6106, 1997)。
SARSコロナウイルスはVero細胞において、感染後1−3日目までに急性感染を起こし急激なウイルス増殖が見られ、4日目に最大の細胞死が観察された。4日目以降は、ウイルス産生は減少した(最高値の1/100)が、細胞は再度増殖を始め、ウイルスを産生しながら継代できる持続感染細胞となった(吉仲由之、山本直樹:上田重晴ら編、抗菌・抗カビの最新技術とDDSの実際、NTS社、pp14-25、2005)
(2)組換え型SARSコロナウイルス・スパイクタンパク質(Recombinant SARS-CoV
spike protein)に対するIgY抗体の作成
a)免疫用抗原:免疫用抗原として、Protein Sciences社製「SARS CoV Spike"S"ΔTM」を用いた。
b)産卵鶏への免疫:20週齢前後のローラ種に、免疫用抗原(100μg/ml)1
mlを等量のアジュバント(FCA:Difco社製)と混和させたのち、胸筋内に注射した
。その6週間後に、同量の抗原を追加免役し、その5週間後から採卵した。
c)抗体の調製:免疫卵を割卵して卵黄を取り出した後、卵黄重量に対し10倍量の精製水を加えて脱脂した。上清に40%飽和になるように硫酸アンモニウムを加えて攪拌
し、遠心により回収した沈殿物を生理的食塩水で溶かし、再び30%飽和塩析を行い、沈殿物を得た。この沈殿物を少量の生理的食塩水で溶解し、これに最終濃度が50%になるように−20℃に冷却したエタノールを、攪拌しながら徐々に加えた。遠心後、沈殿物を生理的食塩水で溶かし、精製抗体溶液とした。
d)抗体力価の測定:抗体力価の測定はプラーク減少法による中和反応により測定した。ウイルス希釈液で10倍階段希釈した抗体溶液200μlにあらかじめ力価を測定したウイルス液400PFU/200μlを加え、室温(22℃)1時間、4℃で16時間反応後、上記プラーク法
によりウイルス量を測定した。抗体を含まない対照と比較し、50%プラーク数が減少する
抗体の希釈倍数の逆数を中和抗体価とした。
e)精製抗体の力価:上記中和法で、20,000倍希釈まで陽性、という結果が得られた(図1参照)。
(3)SARSコロナウイルス(SARS-CoV)持続感染Vero細胞の抗SARSコロナウイルス・スパイクタンパク質IgY抗体(抗SARS-CoV spike IgY抗体)による処理
ウイルスのスパイクタンパク質に対して特異的なIgY抗体による処理による、SARS
コロナウイルス持続感染Vero細胞のウイルスの除去ないしは不活性化に関し、抗体存在下に培養を続け(4日毎に新しい抗体を含む培地に交換、10日毎に継代培養)35日ま
で適宜ウイルス力価の測定、細胞内ウイルスタンパク質、ウイルスRNAの検出を行った。
ウイルスの力価の測定は、培養上清を上記プラーク法により行った。細胞内タンパク質の検出では、6ウエルプレートに培養した持続感染Vero細胞(1ウエル当たり2.5mlの培地、106個の細胞)を0.3mlのSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)用のサンプルバッファーに回収し、全タンパク質をSDS−PAGEで分離後、タンパク質をPVDF膜(Polyvinylidene fluolide)に転写後、抗ウサギSARS-ヌクレオキャプシッドタンパク質抗体(IMGENEX社)、抗ウサギSARS-スパイクタンパク質抗体(IMGENEX社)、アクチン、Bcl−2などの標準タンパク質の抗体(サンタクル
ズ社)で免疫ブロットを行い、二次抗体にはアルカリホスファターゼで標識した抗ウサギ−ヤギ抗体(サンタクルズ社)を用い、NBT(ニトロブルーテトラゾリュウム塩、ベーリンガー社)による発色で検出した(Yoshinaka,Y.ら, Biochem. Biophy.Res.Commun.261:139,1999)。画像をCCDカメラで撮影し画像解析ソフト(The Analytical Imaging System AIS. アマシャム/ファルマシア社)によりアクチンバンドの濃度との相対比より抗原
発現の強弱を測定した。ウイルスRNAの検出では、細胞中のウイルスRNAの存在有無を、リバースPCR法により調べた(表1参照)。
(実験結果)
作成したSARSコロナウイルスのスパイクタンパク質に対して特異的な精製IgY抗体
の力価と同抗体処理によるSARSコロナウイルス持続感染Vero細胞のウイルスの除去ないしは不活性化に関する実験結果を図1、表1に示す。
図1は、精製抗SARS-SARS-CoV スパイクタンパク質IgY抗体の力価を示す。精製したSARS-CoV スパイクタンパク質IgY(10mg/ml)の希釈列200μ/lを作成し、400PFU/200μlの
ウイルス液を加え、22℃で1時間、4℃で16時間反応後、反応液200μlにつきプラーク法で活性ウイルスを測定し、50%ウイルスを不活化する抗体の希釈度から中和抗体力価を
求めた。この抗体の力価は20,000とした。
Figure 2007084495
この実験において、SARSコロナウイルス持続感染Vero細胞を、新しい抗体を含む培養液(100μg/ml)による溶液の交換を3日毎に行いながら、表示日数の間、IgY抗体で処理した(*)。ウイルスの力価は、IgYが含まれない培養液に移してから7日
後に測定した(**)。細胞にアソシエイトしたウイルスのヌクレオキャプシッドタンパク質は、イムノブロット法により検出した(***)。ウイルスRNAの検出については、0
日後では、PCRの15反応サイクル後に、ウイルスRNAが検出された(****)。28日後では、PCRの30反応サイクル後に、ウイルスRNAの痕跡が検出された(*****
)。35日後では、PCRの40反応サイクル後では、ウイルスRNAは、検出されなかった(******)。なお、この表1において、NDは、実施していないことを示す。
この表1に示すように、SARSコロナウイルス持続感染Vero細胞においてウイルスが除去ないしは不活性化されたことが、ウイルス力価の測定、細胞中のウイルスのヌクレオキャプシッドタンパク質の検出、ウイルスRNAの検出により、それぞれ示された。
本発明の抗ウイルス剤及びウイルス感染細胞処理方法は、医療分野のほか、養殖など、ウイルスが細胞に感染した場合について、幅広い分野で利用することができる。
精製抗SARS-SARS-CoV スパイクタンパク質IgY抗体の力価を示す図。

Claims (7)

  1. 対象とするウイルスに特異的な抗体を有する抗ウイルス剤であって、前記ウイルスの感染細胞の周囲における前記抗体の濃度を維持する手段を有することを特徴とする抗ウイルス剤。
  2. 前記抗ウイルス剤は、前記抗体を含有する、貼付剤、絆創膏、ガーゼ、不織布、ゲル状のパッチ、軟膏、ローション、点鼻剤、スプレー、液滴の吸入剤、ドライパウダーの吸入剤、消化され難い構成の内服剤、座剤、浣腸剤、点眼剤、眼軟膏のいずれか1つであることを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス剤。
  3. 前記ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルスのいずれか1つであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抗ウイルス剤。
  4. 前記抗体は鶏卵抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の抗ウイルス剤。
  5. ウイルスの感染細胞の周囲において、前記ウイルスに特異的な抗体の濃度を維持することにより、感染細胞のウイルスを除去ないしは不活性化することを特徴とするウイルス感染細胞処理方法。
  6. 前記ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、疣贅ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、ノーウォークウイルス、ロタウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス、ノロウイルス、コイヘルペスウイルス、イリドウイルス、ラブドウイルス群、ホワイトスポットウイルスのいずれか1つであることを特徴とする請求項5に記載のウイルス感染細胞処理方法。
  7. 前記抗体は鶏卵抗体であることを特徴とする請求項5又は6に記載のウイルス感染細胞処理方法。
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