JP2004352693A - 抗パルボウイルス感染症組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、ペットにおけるパルボウイルス感染症の発症を有効に予防し、ならびにパルボウイルス感染症に特有の下痢、嘔吐及び体重減少といった症状を効果的に改善する、パルボウイルス感染症の予防及び治療に有効な抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードを提供することである。
【解決手段】パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、中和抗体価が256倍以上である該卵又は卵処理物。
【選択図】 なし
【解決手段】パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、中和抗体価が256倍以上である該卵又は卵処理物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵及び卵処理物、これらを含む抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフード、ならびに抗パルボウイルス抗体を投与することによりパルボウイルス感染症を治療又は予防する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下痢症は、ヒト、家畜及びペットにおけるありふれた疾病のひとつであるが、幼弱な個体、特に哺乳期においては脱水症や他の合併症を引き起こし、重篤な事態に至ることが多い。下痢症の原因としては、ウイルスや細菌による感染性のものと環境、ストレス、食餌などによる非感染性のものに分かれるが、とくに感染性下痢症は他の個体へ伝播し、集団全体に多大な被害をもたらすことが多い。
【0003】
感染性下痢症の主要な病原体として、ウイルスと細菌が挙げられる。これらの病原体が食物又は飲料とともに経口的に腸管に侵入し、腸粘膜に定着して増殖することにより発症する。また、2種以上の病原体が複合感染し、症状をより重篤化することもまれではない。このようなウイルス性感染症として問題となっているものにパルボウイルス感染症がある。
【0004】
パルボウイルス感染症は、体温の急激な上昇や、下痢、嘔吐、食欲廃絶など重篤な症状を呈する。白血球数(WBC)も急激に減少する。例えば、イヌパルボウイルスは、非常に抵抗性の強いウイルスであり、通常の環境中で数ヶ月から数年間生存するため、自然発症例も少なくない。特に集団として飼育される場合は猛威を振るうことがあり、ブリーダーやペットショップでの本感染症による死亡が大きな問題となっている。
【0005】
パルボウイルス感染症に対するワクチンも開発されているが、このような抗パルボウイルス感染症ワクチンは、以前よりその防御効果に問題があった。腸管感染症を防御するにはIgA抗体をいかに産生させるかが重要であるが、現在使用されている不活化ワクチンでは、筋肉内注射するとIgG抗体は産生されるが、腸管内におけるIgA抗体の産生量が少ないため、なかなか所望の効果が得られない。
【0006】
これに対し、生ワクチンを経口投与した場合は、IgA抗体の産生量が多く防御効果も認められるため、主にウイルス性下痢症に対し生ワクチンが用いられているが、その効果は十分とはいえない。また、ワクチンの投与が開始できる時点までの幼少期での感染による発症をワクチンでは阻止できないため、幼少期の発症に対する対策には役にたたない。
【0007】
ワクチンとは異なり、経口投与に適した抗体として、鶏卵抗体が知られている。鶏卵抗体を用いた医薬組成物としては、ブタの大腸菌症の原因となる腸管毒素原性大腸菌の987P、K88及びK99抗原、及びウシの大腸菌症の原因となる腸管毒素原性大腸菌のK99抗原のいずれか1種以上の抗原で鶏を免疫し、この免疫鶏が産生した卵の少なくとも卵黄を含む部分から抗体を回収することにより得られる、前記抗原に特異的なポリクロナール抗体を含有する大腸菌症の経口予防剤及び治療剤が知られている(特許文献1参照)。また、予め食中毒菌を接種した鶏が免疫獲得後に産生した卵の全卵、卵黄又は抗体含有画分を含み、該食中毒菌に特異的な抗体を含有する、食中毒菌抑制材料なども知られている。
【0008】
また、豚流行性下痢ウイルス感染症のための医薬組成物として、豚流行性下痢ウイルスで免疫した牛から採取される乳又はその乳成分ならびに該ウイルスで免疫した鶏から採取した鶏卵卵黄又は鶏卵抗体を含む医薬組成物が知られている(特許文献2参照)。また、イヌパルボウイルス感染症のための医薬組成物として、イヌパルボウイルスで免疫した鶏の卵黄より得られた抗体を含有する抗パルボウイルス感染症組成物が知られている(特許文献3参照)。
【0009】
しかし、パルボウイルスに対して高い中和抗体価を有するもの、パルボウイルス感染症に対して高い予防及び治療効果を有するものについては、知られていなかった。
【0010】
【特許文献1】
特許第2034005号
【特許文献2】
特開平10−265393
【特許文献3】
特開平8−259462
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ペットにおけるパルボウイルス感染症の発症を有効に予防し、ならびにパルボウイルス感染症に特有の下痢、嘔吐及び体重減少といった症状を効果的に改善する、パルボウイルス感染症の予防及び治療に有効な抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で鳥類を免疫して得られる卵又はその処理物であって、高い中和抗体価を有するものによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。パルボウイルスを抗原として鳥類を免疫して得られた卵又はその処理物に含まれる抗パルボウイルス抗体は、病原体に付着して病原体を中和することによりその病原性を消失せしめると考えられる。あるいは、病原体の細胞付着因子に付着して病原体が腸管細胞に付着するのを阻止することによりその病原性を消失せしめると考えられる。
【0013】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、中和抗体価が256倍以上である該卵又は卵処理物。
(2)中和抗体価が25600倍以上である請求項1に記載の卵又は卵処理物。
(3)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、3ヶ月齢のビーグル犬に1日に全卵粉末として2.0gを16日間にわたり投与し、3日目に2×106 TCID50のパルボウイルスY−1株を感染させた場合に該ビーグル犬が下痢症を発症しない、該卵又は卵処理物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の卵又は卵処理物を含む抗パルボウイルス感染症組成物。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の卵又は卵処理物を含むペットフード。
(6)パルボウイルス感染症を治療又は予防するための(5)に記載のペットフード。
(7)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵から得られる抗パルボウイルス抗体を非ヒト動物に投与することにより、パルボウイルス感染症を治療又は予防する方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫する鳥類としては、特に限定されないが、鶏、鶉等が挙げられる。抗体の量産性という観点から、鶏、特に、産卵種を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明において、鳥類の免疫に使用できるパルボウイルス株としては、CPK−2、Cp83016及びKawazoe等が挙げられ、特に、CPK−2を使用するのが好ましい。これらのパルボウイルス株は、農林水産省動物医薬品検査所で入手することができる。上記のようなパルボウイルス株で鳥類を免疫することにより、パルボウイルスに対する中和抗体価の高い卵及び卵処理物を得ることができる。
【0016】
本発明において、パルボウイルスに由来する抗原とは、パルボウイルスの構成要素の一部からなるペプチドなどを意味し、例えば、パルボウイルスのキャプシド、ヌクレオキャプシド、キャプソメアが含まれ、それらの一部からなるものも包含される。本発明においては、このようなパルボウイルスに由来する抗原を使用するのが好ましい。
【0017】
パルボウイルス及びこれに由来する抗原はウイルス溶解物等に含まれ、これを精製したもの及び未精製のものの双方を使用できるが、精製したものを使用するのが好ましい。抗原の精製には、硫安沈殿法、カラムクロマトグラフィー、電気泳動法などの通常の方法を単独又は2つ以上組み合わせて利用できる。また、カラムクロマトグラフィーは1種類のカラムを用いてもよく、2種類以上のカラムを組み合わせてもよい。通常のカラムクロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー等が用いられる。
【0018】
鳥類をパルボウイルス等で免疫する際には、必要に応じてフロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)等のアジュバントを用いることもできる。免疫は、主として静脈内、皮下、筋内、腹腔内に注入することにより行われるが、経口投与、点鼻、点眼等によっても行うことができる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、1〜10回の免疫を行う。通常、初回免疫から数週間で投与抗原に対して特異的に反応する抗体が卵、特に卵黄中に得られる。接種する抗原量はタンパク質量で、0.01〜10mgが好適に用いられる。
【0019】
卵中の抗体価は、酵素免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、凝集抗体法又は中和反応等を用いて測定することができ、免疫後に2週程度の間隔で抗体価を測定することにより抗体価の推移を追跡できる。通常、約4ヶ月間にわたって高抗体価を得ることができる。なお、免疫後、抗体価の減少が見られた場合、適当な間隔で適宜追加免疫することにより抗体価を高く維持することができる。
【0020】
本発明において、卵処理物は、抗原として鳥類の免疫に使用したパルボウイルスに対する抗体を含むものであれば特に制限されず、例えば、免疫した卵の全卵、卵黄及び卵白、これらの卵液及び溶液、ならびに卵液をプロパノールやクロロホルムを用いて抽出した抽出物等が含まれる。含まれる抗体の量の観点から、卵黄成分を含むことが好ましい。スプレードライ法や凍結乾燥法などにより粉末化したものも含まれる。また、卵黄からヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸、プロパノール、エタノール及びヘキサン等の有機溶剤などを用いる方法により卵黄脂質成分を除去した後粉末化したものも含まれる。本発明においては、特に、全卵を噴霧乾燥したものを全卵粉末と称する。このような粉末をペースト状又は液体状にしたものも含まれる。さらに、本発明において卵の処理物には、硫酸アンモニウム塩析、硫酸ナトリウム塩析、低温エタノール沈殿法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法により卵から精製された抗体自体をも包含される。本発明において、抗原で免疫した鳥類が産生する卵から得られる抗体を鶏卵抗体という。処理物の保存性を高めるためには、殺菌した全卵液卵又は卵黄液卵をスプレードライ又は凍結乾燥して粉末化するのが好ましい。
【0021】
本発明の卵及び卵処理物は、中和抗体価が256倍以上、好ましくは25600倍以上、より好ましくは51200倍以上、さらに好ましくは1,638,400〜13,107,200倍であることを特徴とする。上記中和抗体価は、以下のような中和試験に基づいて測定される。
【0022】
卵又は卵処理物を8倍に希釈し、クロロホルム抽出した上清を中和抗体価測定用サンプルとする。なお、判定時の最高希釈倍数にはこの8倍も考慮する。本サンプルを、希釈液にて適当な倍数まで2倍階段希釈する。その各希釈液に、感染価を200 TCID50/mLに調整したウイルス抗原を等量加え、良く混和する。この混合液を37℃に1時間置いた後、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり4穴ずつ加える。混合液を加えた穴に、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養する。7日後に、各穴の細胞変性効果(CPE)の有無を確認し、CPEの抑制が2穴以上認められた最高希釈倍数の逆数を、中和抗体価とする。
【0023】
本発明におけるパルボウイルスの感染価は、50%細胞感染量(TCID50)として示した。この算出は、以下の方法による。パルボウイルスを10倍階段希釈し、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり5穴ずつ加える。そこへ、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養する。7日後に、各穴のCPEの有無を確認し、その希釈倍数からTCID50算出する。
【0024】
また、本発明のパルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生する卵及び卵処理物は、抗パルボウイルス感染症に対して優れた予防及び治療効果を有し、3ヶ月齢のビーグル犬に、1頭あたり全卵粉末として1日2.0g、好ましくは1.5g、より好ましくは1.0gで16日間投与し、投与3日目にパルボウイルスY−1株を1頭あたり106 TCID50で感染させた場合に、該ビーグル犬が下痢症を発症しないという特徴を有する。
【0025】
また、上記における抗パルボウイルス抗体の投与量は、3ヶ月齢における標準的な体重のビーグル犬、すなわち体重2.5〜3.5kg程度のビーグル犬に投与する場合の投与量である。
【0026】
本発明において下痢症とは、当技術分野において通常用いられる意味を有し、すなわち、液状又は半固体の便が腸から異常に反復排泄されるような症状を意味する。また、パルボウイルスY−1株は、農林水産省動物医薬品検査所から入手できる。
【0027】
3ヶ月齢のビーグル犬(体重2.5〜3.5kg)に本発明の卵又は卵処理物を全卵粉末として生理食塩水に溶解し、1日3回(全卵粉末2.0g/日、好ましくは1.5g/日、より好ましくは1.0g/日)、毎日強制経口投与する。被検物質の投与3日目の初回投与後1時間目に106 TCID50/mlのウイルス液を1頭あたり2mlずつ強制経口投与する。その日から14日間抗体を投与し、下痢症の発症を観察する。なお、対照群として抗体を投与しない群を設け、下痢症が発症することを確認する。
【0028】
本発明はまた、本発明の卵又は卵処理物を含む抗パルボウイルス感染症組成物に関する。抗パルボウイルス感染症組成物とは、パルボウイルス感染症に罹患した動物における下痢、嘔吐等の症状を改善及び治療する効果を有する組成物、ならびにパルボウイルスに感染していない動物のパルボウイルスへの感染を予防する効果を有する組成物の双方を意味する。本発明の抗パルボウイルス感染症組成物は、本発明の卵又は卵処理物を、全卵粉末の質量として、通常、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜10質量%の割合となるように含む。本発明の卵又は卵処理物は、抗パルボウイルス抗体を含み、高い抗パルボウイルス感染症能を有するので、配合量が比較的少ない場合であっても効果的に作用し、製造コスト、卵アレルギーのリスク軽減、カロリーの観点から有利である。
【0029】
また、本発明の抗パルボウイルス感染症組成物を製造する場合、通常の製剤化法により、そのまま又は慣用の添加剤と共に、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤などの経口用製剤とすることができる。添加剤には、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用する。
【0030】
胃での消化分解を防ぎ、小腸部位で長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エタノール、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール (BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。さらに、必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0031】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物の投与量は、投与する動物、動物の症状、年齢等の条件によって異なるが、通常、動物の体重1kgあたり、1日に、全卵粉末の質量として0.005〜70g、好ましくは0.005〜7gとなるように投与する。
【0032】
本発明の卵又は卵処理物、ならびにこれらを含む抗パルボウイルス感染症組成物を与える対象となる動物は、パルボウイルスによって感染症を生じうる動物であれば特に制限されず、例えば、哺乳動物、鳥類等が挙げられる。本発明においては、イヌ、ネコ、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、ならびに、鶏、鶉等の鳥類に対し好適に使用される。
【0033】
さらに本発明は、本発明の卵又は卵処理物を含むペットフードに関する。本発明の卵又は卵処理物を含むペットフードをペットに与えることにより、パルボウイルス感染症の治療及び予防を効果的に行うことができる。すなわち、本発明はまた、パルボウイルス感染症を予防及び治療するためのペットフードに関する。本発明のペットフードは、本発明の卵又は卵処理物を、全卵粉末の質量として、通常、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜10質量%の割合で含む。
【0034】
本発明の卵又は卵処理物以外のペットフード原材料としては、畜肉類、魚介類、野菜類、穀類、澱粉、油脂類、魚粉、食物繊維、乳製品、ビタミン、ミネラル、水分等の各種成分を調整したもので、形態が生、半生、乾燥等のものであるが、そのほとんどは上記各原料を混合、撹拌して成型することにより製造するのが一般的な製法である。いずれの場合でも、本発明のペットフードは、原料を混合する段階で本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合したり、最終段階で添加して撹拌することにより製造できる。ペットフードの製造工程において、高温での加熱処理が含まれる場合は、抗パルボウイルス抗体の失活を防ぐため、加熱処理の後に本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合するのが好ましい。
【0035】
本発明のペットフードには、ペット用クッキー類、ビスケット類、スナック類、ガム類、ニュートリエント類等も包含され、これらもまた原料を混合する段階で、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合することにより製造することができる。
【0036】
本発明のペットフードの投与量は、投与する動物、動物の症状、年齢等の各種条件によって異なるが、通常、動物の体重1kgあたり、1日に、全卵粉末の質量として、0.005〜70g、好ましくは0.005〜7gとなるように投与する。
【0037】
これまで、抗体を含むペットフードは知られておらず、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を含むペットフードは、安全性、嗜好性、投与の簡便性という点において有利である。
【0038】
本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を含むペットフードを与える対象となる動物は、パルボウイルスによって感染症を生じうる動物であれば特に制限されず、例えば、哺乳動物、鳥類等が挙げられる。イヌ、ネコ、アライグマ、パンダ、ミンク、フェレット、イタチ、オオカミ、コヨーテ、キツネに対し好適に使用される。特に、イヌ及びネコ用のペットフードにおいては、安全性、嗜好性、投与の簡便性という点において有利である。
【0039】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードにおいて、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体とともに生菌剤を同時に配合することもできる。生菌剤を配合することにより、下痢の症状ならびにこれに伴う嘔吐及び体重減少等の症状が効果的に軽減する。
【0040】
生菌剤とは、生きた細菌、酵母及び真菌を意味し、当技術分野における通常の方法で製造できる。本発明において好ましく使用される生菌剤としての細菌には、特に限定されないが、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属に属する細菌などの乳酸菌、クロストリジウム属、ビフィドバクテリウム属に属する細菌などの有用腸内細菌、その他、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、バチルス属に属する細菌などが含まれる。生菌剤としての酵母には、カンジダ属、ピチア属に属する酵母が含まれる。生菌剤としての真菌には、特に限定されないが、例えば、アスペルギルス属、サッカロミセス属に属する真菌が含まれる。本発明においては、特に、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属、バチルス属、エンテロコッカス属に属する細菌、カンジダ属に属する酵母、アスペルギルス属、サッカロミセス属に属する真菌を用いるのが好ましい。これらの生菌剤は、単独で用いてもよく、又は複数種を混合して用いてもよい。特に、生菌剤として有用腸内細菌、具体的には、ビフィドバクテリウム属の細菌を使用するのが好ましい。
【0041】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードにおいて、生菌剤の混合比は、特に制限されないが、通常、全卵粉末1gに対して生菌剤10〜1011個の割合、好ましくは、全卵粉末1gに対して、生菌剤104〜109個の割合で用いられる。
【0042】
【実施例】
[実施例1]
イヌパルボウイルスCPK−2株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵の抗パルボウイルス抗体の中和反応によって測定した抗体価は、1,638,400倍であった。この抗体価は4ヶ月間持続した。この卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。
【0043】
上記全卵粉末を8倍に希釈し、クロロホルム抽出した上清を中和抗体価測定用サンプルとした。尚、判定時の最高希釈倍数にはこの8倍も考慮した。本サンプルを、希釈液にて適当な倍数まで2倍階段希釈した。その各希釈液に、感染価を200 TCID50/mLに調整したウイルス抗原を等量加え、良く混和した。この混合液を37℃に1時間置いた後、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり4穴ずつ加えた。混合液を加えた穴に、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した。7日後に、各穴の細胞変性効果(CPE)の有無を確認し、CPEの抑制が2穴以上認められた最高希釈倍数の逆数を、中和抗体価とした。その結果、全卵粉末の中和抗体価は1,638,400倍であった。
【0044】
[実施例2]
イヌパルボウイルスCp83016株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。
実施例1と同様に中和抗体価を測定したところ、この全卵粉末の中和抗体価は51200倍であった。
【0045】
[実施例3]
ビーグル犬への感染試験
イヌパルボウイルスCPK−2株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵の卵黄液中の抗パルボウイルス抗体の中和反応によって測定した中和抗体価は1,638,400倍であった。この抗体価は4ヶ月間持続した。この卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。この粉末の中和抗体価は1,638,400倍であった。
【0046】
この抗イヌパルボウイルス抗体を用いて、イヌパルボウイルス実験感染(J. Virology, 68:4506−4513,1994)に対する効果を検討した。3ヶ月齢のビーグル犬(体重3.0kg)に全卵粉末0.67gを6mlの生理食塩水に溶解し、1日3回(2.0g/日)、毎日強制経口投与した。被検物質の投与3日目の初回投与後1時間目に106 TCID50/mlのウイルス液を1頭あたり2mlずつ強制経口投与した。その日から14日間抗体を投与し、下痢症の発症を観察した。なお、対照群として抗体を投与しない群を設けた。結果を以下の表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
検査として、毎日の臨床観察、ウイルス排泄期間及び増体重の測定を実施した。下痢症発症の予防、下痢及び嘔吐の軽減、ウイルス排泄の軽減及び増体重において改善効果が認められた。抗体は、腸管粘膜を保護してパルボウイルスが粘膜に付着するのを防御すると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の卵及び卵処理物は、パルボウイルス病原体に対して特異的に作用するので、動物のパルボウイルス感染症に対して、ワクチンよりも極めて優れた予防効果を発揮するとともに、パルボウイルス感染症に特有の下痢、嘔吐及び体重減少等の症状を軽減することができる。さらに、本発明の卵及び卵処理物は、パルボウイルスに対して非常に高い中和抗体価を有するとともに、パルボウイルス感染症よる下痢症の発症を非常に効果的に予防することができることから、これまでにない極めて優れた抗パルボウイルス感染症能を有する予防薬、治療薬及びペットフードとして使用できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵及び卵処理物、これらを含む抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフード、ならびに抗パルボウイルス抗体を投与することによりパルボウイルス感染症を治療又は予防する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下痢症は、ヒト、家畜及びペットにおけるありふれた疾病のひとつであるが、幼弱な個体、特に哺乳期においては脱水症や他の合併症を引き起こし、重篤な事態に至ることが多い。下痢症の原因としては、ウイルスや細菌による感染性のものと環境、ストレス、食餌などによる非感染性のものに分かれるが、とくに感染性下痢症は他の個体へ伝播し、集団全体に多大な被害をもたらすことが多い。
【0003】
感染性下痢症の主要な病原体として、ウイルスと細菌が挙げられる。これらの病原体が食物又は飲料とともに経口的に腸管に侵入し、腸粘膜に定着して増殖することにより発症する。また、2種以上の病原体が複合感染し、症状をより重篤化することもまれではない。このようなウイルス性感染症として問題となっているものにパルボウイルス感染症がある。
【0004】
パルボウイルス感染症は、体温の急激な上昇や、下痢、嘔吐、食欲廃絶など重篤な症状を呈する。白血球数(WBC)も急激に減少する。例えば、イヌパルボウイルスは、非常に抵抗性の強いウイルスであり、通常の環境中で数ヶ月から数年間生存するため、自然発症例も少なくない。特に集団として飼育される場合は猛威を振るうことがあり、ブリーダーやペットショップでの本感染症による死亡が大きな問題となっている。
【0005】
パルボウイルス感染症に対するワクチンも開発されているが、このような抗パルボウイルス感染症ワクチンは、以前よりその防御効果に問題があった。腸管感染症を防御するにはIgA抗体をいかに産生させるかが重要であるが、現在使用されている不活化ワクチンでは、筋肉内注射するとIgG抗体は産生されるが、腸管内におけるIgA抗体の産生量が少ないため、なかなか所望の効果が得られない。
【0006】
これに対し、生ワクチンを経口投与した場合は、IgA抗体の産生量が多く防御効果も認められるため、主にウイルス性下痢症に対し生ワクチンが用いられているが、その効果は十分とはいえない。また、ワクチンの投与が開始できる時点までの幼少期での感染による発症をワクチンでは阻止できないため、幼少期の発症に対する対策には役にたたない。
【0007】
ワクチンとは異なり、経口投与に適した抗体として、鶏卵抗体が知られている。鶏卵抗体を用いた医薬組成物としては、ブタの大腸菌症の原因となる腸管毒素原性大腸菌の987P、K88及びK99抗原、及びウシの大腸菌症の原因となる腸管毒素原性大腸菌のK99抗原のいずれか1種以上の抗原で鶏を免疫し、この免疫鶏が産生した卵の少なくとも卵黄を含む部分から抗体を回収することにより得られる、前記抗原に特異的なポリクロナール抗体を含有する大腸菌症の経口予防剤及び治療剤が知られている(特許文献1参照)。また、予め食中毒菌を接種した鶏が免疫獲得後に産生した卵の全卵、卵黄又は抗体含有画分を含み、該食中毒菌に特異的な抗体を含有する、食中毒菌抑制材料なども知られている。
【0008】
また、豚流行性下痢ウイルス感染症のための医薬組成物として、豚流行性下痢ウイルスで免疫した牛から採取される乳又はその乳成分ならびに該ウイルスで免疫した鶏から採取した鶏卵卵黄又は鶏卵抗体を含む医薬組成物が知られている(特許文献2参照)。また、イヌパルボウイルス感染症のための医薬組成物として、イヌパルボウイルスで免疫した鶏の卵黄より得られた抗体を含有する抗パルボウイルス感染症組成物が知られている(特許文献3参照)。
【0009】
しかし、パルボウイルスに対して高い中和抗体価を有するもの、パルボウイルス感染症に対して高い予防及び治療効果を有するものについては、知られていなかった。
【0010】
【特許文献1】
特許第2034005号
【特許文献2】
特開平10−265393
【特許文献3】
特開平8−259462
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ペットにおけるパルボウイルス感染症の発症を有効に予防し、ならびにパルボウイルス感染症に特有の下痢、嘔吐及び体重減少といった症状を効果的に改善する、パルボウイルス感染症の予防及び治療に有効な抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で鳥類を免疫して得られる卵又はその処理物であって、高い中和抗体価を有するものによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。パルボウイルスを抗原として鳥類を免疫して得られた卵又はその処理物に含まれる抗パルボウイルス抗体は、病原体に付着して病原体を中和することによりその病原性を消失せしめると考えられる。あるいは、病原体の細胞付着因子に付着して病原体が腸管細胞に付着するのを阻止することによりその病原性を消失せしめると考えられる。
【0013】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、中和抗体価が256倍以上である該卵又は卵処理物。
(2)中和抗体価が25600倍以上である請求項1に記載の卵又は卵処理物。
(3)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、3ヶ月齢のビーグル犬に1日に全卵粉末として2.0gを16日間にわたり投与し、3日目に2×106 TCID50のパルボウイルスY−1株を感染させた場合に該ビーグル犬が下痢症を発症しない、該卵又は卵処理物。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の卵又は卵処理物を含む抗パルボウイルス感染症組成物。
(5)(1)〜(3)のいずれかに記載の卵又は卵処理物を含むペットフード。
(6)パルボウイルス感染症を治療又は予防するための(5)に記載のペットフード。
(7)パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵から得られる抗パルボウイルス抗体を非ヒト動物に投与することにより、パルボウイルス感染症を治療又は予防する方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫する鳥類としては、特に限定されないが、鶏、鶉等が挙げられる。抗体の量産性という観点から、鶏、特に、産卵種を用いるのが好ましい。
【0015】
本発明において、鳥類の免疫に使用できるパルボウイルス株としては、CPK−2、Cp83016及びKawazoe等が挙げられ、特に、CPK−2を使用するのが好ましい。これらのパルボウイルス株は、農林水産省動物医薬品検査所で入手することができる。上記のようなパルボウイルス株で鳥類を免疫することにより、パルボウイルスに対する中和抗体価の高い卵及び卵処理物を得ることができる。
【0016】
本発明において、パルボウイルスに由来する抗原とは、パルボウイルスの構成要素の一部からなるペプチドなどを意味し、例えば、パルボウイルスのキャプシド、ヌクレオキャプシド、キャプソメアが含まれ、それらの一部からなるものも包含される。本発明においては、このようなパルボウイルスに由来する抗原を使用するのが好ましい。
【0017】
パルボウイルス及びこれに由来する抗原はウイルス溶解物等に含まれ、これを精製したもの及び未精製のものの双方を使用できるが、精製したものを使用するのが好ましい。抗原の精製には、硫安沈殿法、カラムクロマトグラフィー、電気泳動法などの通常の方法を単独又は2つ以上組み合わせて利用できる。また、カラムクロマトグラフィーは1種類のカラムを用いてもよく、2種類以上のカラムを組み合わせてもよい。通常のカラムクロマトグラフィーには、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティカラムクロマトグラフィー等が用いられる。
【0018】
鳥類をパルボウイルス等で免疫する際には、必要に応じてフロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)等のアジュバントを用いることもできる。免疫は、主として静脈内、皮下、筋内、腹腔内に注入することにより行われるが、経口投与、点鼻、点眼等によっても行うことができる。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、1〜10回の免疫を行う。通常、初回免疫から数週間で投与抗原に対して特異的に反応する抗体が卵、特に卵黄中に得られる。接種する抗原量はタンパク質量で、0.01〜10mgが好適に用いられる。
【0019】
卵中の抗体価は、酵素免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、凝集抗体法又は中和反応等を用いて測定することができ、免疫後に2週程度の間隔で抗体価を測定することにより抗体価の推移を追跡できる。通常、約4ヶ月間にわたって高抗体価を得ることができる。なお、免疫後、抗体価の減少が見られた場合、適当な間隔で適宜追加免疫することにより抗体価を高く維持することができる。
【0020】
本発明において、卵処理物は、抗原として鳥類の免疫に使用したパルボウイルスに対する抗体を含むものであれば特に制限されず、例えば、免疫した卵の全卵、卵黄及び卵白、これらの卵液及び溶液、ならびに卵液をプロパノールやクロロホルムを用いて抽出した抽出物等が含まれる。含まれる抗体の量の観点から、卵黄成分を含むことが好ましい。スプレードライ法や凍結乾燥法などにより粉末化したものも含まれる。また、卵黄からヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリエチレングリコール、デキストラン硫酸、プロパノール、エタノール及びヘキサン等の有機溶剤などを用いる方法により卵黄脂質成分を除去した後粉末化したものも含まれる。本発明においては、特に、全卵を噴霧乾燥したものを全卵粉末と称する。このような粉末をペースト状又は液体状にしたものも含まれる。さらに、本発明において卵の処理物には、硫酸アンモニウム塩析、硫酸ナトリウム塩析、低温エタノール沈殿法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法により卵から精製された抗体自体をも包含される。本発明において、抗原で免疫した鳥類が産生する卵から得られる抗体を鶏卵抗体という。処理物の保存性を高めるためには、殺菌した全卵液卵又は卵黄液卵をスプレードライ又は凍結乾燥して粉末化するのが好ましい。
【0021】
本発明の卵及び卵処理物は、中和抗体価が256倍以上、好ましくは25600倍以上、より好ましくは51200倍以上、さらに好ましくは1,638,400〜13,107,200倍であることを特徴とする。上記中和抗体価は、以下のような中和試験に基づいて測定される。
【0022】
卵又は卵処理物を8倍に希釈し、クロロホルム抽出した上清を中和抗体価測定用サンプルとする。なお、判定時の最高希釈倍数にはこの8倍も考慮する。本サンプルを、希釈液にて適当な倍数まで2倍階段希釈する。その各希釈液に、感染価を200 TCID50/mLに調整したウイルス抗原を等量加え、良く混和する。この混合液を37℃に1時間置いた後、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり4穴ずつ加える。混合液を加えた穴に、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養する。7日後に、各穴の細胞変性効果(CPE)の有無を確認し、CPEの抑制が2穴以上認められた最高希釈倍数の逆数を、中和抗体価とする。
【0023】
本発明におけるパルボウイルスの感染価は、50%細胞感染量(TCID50)として示した。この算出は、以下の方法による。パルボウイルスを10倍階段希釈し、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり5穴ずつ加える。そこへ、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養する。7日後に、各穴のCPEの有無を確認し、その希釈倍数からTCID50算出する。
【0024】
また、本発明のパルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生する卵及び卵処理物は、抗パルボウイルス感染症に対して優れた予防及び治療効果を有し、3ヶ月齢のビーグル犬に、1頭あたり全卵粉末として1日2.0g、好ましくは1.5g、より好ましくは1.0gで16日間投与し、投与3日目にパルボウイルスY−1株を1頭あたり106 TCID50で感染させた場合に、該ビーグル犬が下痢症を発症しないという特徴を有する。
【0025】
また、上記における抗パルボウイルス抗体の投与量は、3ヶ月齢における標準的な体重のビーグル犬、すなわち体重2.5〜3.5kg程度のビーグル犬に投与する場合の投与量である。
【0026】
本発明において下痢症とは、当技術分野において通常用いられる意味を有し、すなわち、液状又は半固体の便が腸から異常に反復排泄されるような症状を意味する。また、パルボウイルスY−1株は、農林水産省動物医薬品検査所から入手できる。
【0027】
3ヶ月齢のビーグル犬(体重2.5〜3.5kg)に本発明の卵又は卵処理物を全卵粉末として生理食塩水に溶解し、1日3回(全卵粉末2.0g/日、好ましくは1.5g/日、より好ましくは1.0g/日)、毎日強制経口投与する。被検物質の投与3日目の初回投与後1時間目に106 TCID50/mlのウイルス液を1頭あたり2mlずつ強制経口投与する。その日から14日間抗体を投与し、下痢症の発症を観察する。なお、対照群として抗体を投与しない群を設け、下痢症が発症することを確認する。
【0028】
本発明はまた、本発明の卵又は卵処理物を含む抗パルボウイルス感染症組成物に関する。抗パルボウイルス感染症組成物とは、パルボウイルス感染症に罹患した動物における下痢、嘔吐等の症状を改善及び治療する効果を有する組成物、ならびにパルボウイルスに感染していない動物のパルボウイルスへの感染を予防する効果を有する組成物の双方を意味する。本発明の抗パルボウイルス感染症組成物は、本発明の卵又は卵処理物を、全卵粉末の質量として、通常、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜10質量%の割合となるように含む。本発明の卵又は卵処理物は、抗パルボウイルス抗体を含み、高い抗パルボウイルス感染症能を有するので、配合量が比較的少ない場合であっても効果的に作用し、製造コスト、卵アレルギーのリスク軽減、カロリーの観点から有利である。
【0029】
また、本発明の抗パルボウイルス感染症組成物を製造する場合、通常の製剤化法により、そのまま又は慣用の添加剤と共に、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤などの経口用製剤とすることができる。添加剤には、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤などがあり、必要に応じて使用する。
【0030】
胃での消化分解を防ぎ、小腸部位で長時間作用できるように徐放化するためには、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。賦形剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、軽質無水ケイ酸、ゼラチン、結晶セルロース、ソルビトール、タルク、デキストリン、デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム等が使用できる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、エタノール、エチルセルロース、カゼインナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、寒天、精製水、ゼラチン、デンプン、トラガント、乳糖、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類等が挙げられる。抗酸化剤としては、トコフェロール、没食子酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール (BHA)、アスコルビン酸等が挙げられる。さらに、必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト等)、胃粘膜保護剤(合成ケイ酸アルミニウム、スクラルファート、銅クロロフィリンナトリウム等)を加えてもよい。
【0031】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物の投与量は、投与する動物、動物の症状、年齢等の条件によって異なるが、通常、動物の体重1kgあたり、1日に、全卵粉末の質量として0.005〜70g、好ましくは0.005〜7gとなるように投与する。
【0032】
本発明の卵又は卵処理物、ならびにこれらを含む抗パルボウイルス感染症組成物を与える対象となる動物は、パルボウイルスによって感染症を生じうる動物であれば特に制限されず、例えば、哺乳動物、鳥類等が挙げられる。本発明においては、イヌ、ネコ、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物、ならびに、鶏、鶉等の鳥類に対し好適に使用される。
【0033】
さらに本発明は、本発明の卵又は卵処理物を含むペットフードに関する。本発明の卵又は卵処理物を含むペットフードをペットに与えることにより、パルボウイルス感染症の治療及び予防を効果的に行うことができる。すなわち、本発明はまた、パルボウイルス感染症を予防及び治療するためのペットフードに関する。本発明のペットフードは、本発明の卵又は卵処理物を、全卵粉末の質量として、通常、0.001〜100質量%、好ましくは0.01〜10質量%の割合で含む。
【0034】
本発明の卵又は卵処理物以外のペットフード原材料としては、畜肉類、魚介類、野菜類、穀類、澱粉、油脂類、魚粉、食物繊維、乳製品、ビタミン、ミネラル、水分等の各種成分を調整したもので、形態が生、半生、乾燥等のものであるが、そのほとんどは上記各原料を混合、撹拌して成型することにより製造するのが一般的な製法である。いずれの場合でも、本発明のペットフードは、原料を混合する段階で本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合したり、最終段階で添加して撹拌することにより製造できる。ペットフードの製造工程において、高温での加熱処理が含まれる場合は、抗パルボウイルス抗体の失活を防ぐため、加熱処理の後に本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合するのが好ましい。
【0035】
本発明のペットフードには、ペット用クッキー類、ビスケット類、スナック類、ガム類、ニュートリエント類等も包含され、これらもまた原料を混合する段階で、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を配合することにより製造することができる。
【0036】
本発明のペットフードの投与量は、投与する動物、動物の症状、年齢等の各種条件によって異なるが、通常、動物の体重1kgあたり、1日に、全卵粉末の質量として、0.005〜70g、好ましくは0.005〜7gとなるように投与する。
【0037】
これまで、抗体を含むペットフードは知られておらず、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を含むペットフードは、安全性、嗜好性、投与の簡便性という点において有利である。
【0038】
本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体を含むペットフードを与える対象となる動物は、パルボウイルスによって感染症を生じうる動物であれば特に制限されず、例えば、哺乳動物、鳥類等が挙げられる。イヌ、ネコ、アライグマ、パンダ、ミンク、フェレット、イタチ、オオカミ、コヨーテ、キツネに対し好適に使用される。特に、イヌ及びネコ用のペットフードにおいては、安全性、嗜好性、投与の簡便性という点において有利である。
【0039】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードにおいて、本発明の卵、卵処理物又は抗パルボウイルス抗体とともに生菌剤を同時に配合することもできる。生菌剤を配合することにより、下痢の症状ならびにこれに伴う嘔吐及び体重減少等の症状が効果的に軽減する。
【0040】
生菌剤とは、生きた細菌、酵母及び真菌を意味し、当技術分野における通常の方法で製造できる。本発明において好ましく使用される生菌剤としての細菌には、特に限定されないが、例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属に属する細菌などの乳酸菌、クロストリジウム属、ビフィドバクテリウム属に属する細菌などの有用腸内細菌、その他、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、バチルス属に属する細菌などが含まれる。生菌剤としての酵母には、カンジダ属、ピチア属に属する酵母が含まれる。生菌剤としての真菌には、特に限定されないが、例えば、アスペルギルス属、サッカロミセス属に属する真菌が含まれる。本発明においては、特に、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、クロストリジウム属、バチルス属、エンテロコッカス属に属する細菌、カンジダ属に属する酵母、アスペルギルス属、サッカロミセス属に属する真菌を用いるのが好ましい。これらの生菌剤は、単独で用いてもよく、又は複数種を混合して用いてもよい。特に、生菌剤として有用腸内細菌、具体的には、ビフィドバクテリウム属の細菌を使用するのが好ましい。
【0041】
本発明の抗パルボウイルス感染症組成物及びペットフードにおいて、生菌剤の混合比は、特に制限されないが、通常、全卵粉末1gに対して生菌剤10〜1011個の割合、好ましくは、全卵粉末1gに対して、生菌剤104〜109個の割合で用いられる。
【0042】
【実施例】
[実施例1]
イヌパルボウイルスCPK−2株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵の抗パルボウイルス抗体の中和反応によって測定した抗体価は、1,638,400倍であった。この抗体価は4ヶ月間持続した。この卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。
【0043】
上記全卵粉末を8倍に希釈し、クロロホルム抽出した上清を中和抗体価測定用サンプルとした。尚、判定時の最高希釈倍数にはこの8倍も考慮した。本サンプルを、希釈液にて適当な倍数まで2倍階段希釈した。その各希釈液に、感染価を200 TCID50/mLに調整したウイルス抗原を等量加え、良く混和した。この混合液を37℃に1時間置いた後、細胞培養用96穴プレートに、1希釈液あたり4穴ずつ加えた。混合液を加えた穴に、FL74細胞の浮遊液を等量加え、37℃のCO2インキュベーターにて培養した。7日後に、各穴の細胞変性効果(CPE)の有無を確認し、CPEの抑制が2穴以上認められた最高希釈倍数の逆数を、中和抗体価とした。その結果、全卵粉末の中和抗体価は1,638,400倍であった。
【0044】
[実施例2]
イヌパルボウイルスCp83016株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。
実施例1と同様に中和抗体価を測定したところ、この全卵粉末の中和抗体価は51200倍であった。
【0045】
[実施例3]
ビーグル犬への感染試験
イヌパルボウイルスCPK−2株をネコ腎細胞(CRFK)で培養し、超遠心によりウイルス粒子を集めた。このウイルス109TCID50を含有する溶液とフロイントアジュバントとを乳化し、12週齢の雌鶏の左右の胸筋に1mlずつ注射することにより1回目の免疫を行った。同様にして、6週間後に2回目の免疫を行った。2回目の免疫から2週間後、この鶏が産んだ卵の卵黄液中の抗パルボウイルス抗体の中和反応によって測定した中和抗体価は1,638,400倍であった。この抗体価は4ヶ月間持続した。この卵を集め、噴霧乾燥により全卵粉末を作成した。この粉末の中和抗体価は1,638,400倍であった。
【0046】
この抗イヌパルボウイルス抗体を用いて、イヌパルボウイルス実験感染(J. Virology, 68:4506−4513,1994)に対する効果を検討した。3ヶ月齢のビーグル犬(体重3.0kg)に全卵粉末0.67gを6mlの生理食塩水に溶解し、1日3回(2.0g/日)、毎日強制経口投与した。被検物質の投与3日目の初回投与後1時間目に106 TCID50/mlのウイルス液を1頭あたり2mlずつ強制経口投与した。その日から14日間抗体を投与し、下痢症の発症を観察した。なお、対照群として抗体を投与しない群を設けた。結果を以下の表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
検査として、毎日の臨床観察、ウイルス排泄期間及び増体重の測定を実施した。下痢症発症の予防、下痢及び嘔吐の軽減、ウイルス排泄の軽減及び増体重において改善効果が認められた。抗体は、腸管粘膜を保護してパルボウイルスが粘膜に付着するのを防御すると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
本発明の卵及び卵処理物は、パルボウイルス病原体に対して特異的に作用するので、動物のパルボウイルス感染症に対して、ワクチンよりも極めて優れた予防効果を発揮するとともに、パルボウイルス感染症に特有の下痢、嘔吐及び体重減少等の症状を軽減することができる。さらに、本発明の卵及び卵処理物は、パルボウイルスに対して非常に高い中和抗体価を有するとともに、パルボウイルス感染症よる下痢症の発症を非常に効果的に予防することができることから、これまでにない極めて優れた抗パルボウイルス感染症能を有する予防薬、治療薬及びペットフードとして使用できる。
Claims (7)
- パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、中和抗体価が256倍以上である該卵又は卵処理物。
- 中和抗体価が25600倍以上である請求項1に記載の卵又は卵処理物。
- パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵又は卵処理物であって、3ヶ月齢のビーグル犬に1日に全卵粉末として2.0gを16日間にわたり投与し、3日目に2×106 TCID50のパルボウイルスY−1株を感染させた場合に該ビーグル犬が下痢症を発症しない、該卵又は卵処理物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の卵又は卵処理物を含む抗パルボウイルス感染症組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の卵又は卵処理物を含むペットフード。
- パルボウイルス感染症を治療又は予防するための請求項5に記載のペットフード。
- パルボウイルス又はパルボウイルスに由来する抗原で免疫した鳥類が産生した卵から得られる抗パルボウイルス抗体を非ヒト動物に投与することにより、パルボウイルス感染症を治療又は予防する方法。
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