JPH0665101A - 特異抗体含有鶏卵による鮭鱒類ウイルス病の防除方法 - Google Patents

特異抗体含有鶏卵による鮭鱒類ウイルス病の防除方法

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JPH0665101A
JPH0665101A JP21525692A JP21525692A JPH0665101A JP H0665101 A JPH0665101 A JP H0665101A JP 21525692 A JP21525692 A JP 21525692A JP 21525692 A JP21525692 A JP 21525692A JP H0665101 A JPH0665101 A JP H0665101A
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salmon
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fish
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Mitsuyuki Horiuchi
三津幸 堀内
Tetsuo Yamada
哲雄 山田
Yoshitaka Hayashi
善敬 林
Toshiaki Sugiyama
俊明 杉山
Yuichi Kobayashi
雄一 小林
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NIPPON NOUSAN KOGYO KK
Nihon Nosan Kogyo Co Ltd
Ghen Corp
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NIPPON NOUSAN KOGYO KK
Nihon Nosan Kogyo Co Ltd
Ghen Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 各種鮭鱒類の養殖場もしくは種苗生産施設で
のウイルス病の予防・被害軽減等の防除方法を提供す
る。 【構成】 鮭鱒類病原ウイルスの抗原で免疫した鶏が産
生する卵、すなわち特異抗体含有鶏卵を飼料等に配合し
て給与することにより、鮭鱒類ウイルス病を防除する。 【効果】 特異抗体含有鶏卵で安価かつ容易に鮭鱒類ウ
イルス病を防除できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鮭鱒類ウイルスで免疫し
た産卵鶏が産生する鶏卵中に含有される特異抗体を利用
して、各種鮭鱒類の養殖場もしくは種苗生産施設でのウ
イルス病の予防・被害軽減等の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】我国ではニジマス、ギンザケ、アマゴ等
の鮭鱒類養殖が盛んであり、また、サケ、サクラマス等
は関東以北の各県と国立孵化場で種苗が生産・放流され
漁業資源の涵養も図られている。これらの増養殖事業の
発展に伴って、ウイルス感染症による被害が増加し問題
化している。
【0003】鮭鱒類のウイルス感染症として我国で産業
的に重要な問題となっているのは、伝染性造血器壊死症
(IHN) 、伝染性膵臓壊死症(IPN) およびヘルペスウイル
ス感染症である。なかでも伝染性造血器壊死症(IHN) に
よる被害は甚大で、ほぼ全国的に蔓延しており、また従
来、稚仔魚のみの被害に止まっていたものが最近は成魚
での症例が増加している。
【0004】鮭鱒類ウイルス感染症の撲滅ないし発生予
防上の抜本対策としては感染群の摘発・淘汰ないし隔離
飼育が考えられる。また、多くの鮭鱒類ウイルス感染症
の被害軽減策として、飼育水温を、発症しない水温に人
為的に変化させることは有効と考えられる。
【0005】しかし、いずれも我国の養殖場の現状では
経費および立地上その実施は極めて困難である。伝染性
造血器壊死症(IHN) の対策としては、ヨード剤による発
眼卵消毒、用水への紫外線照射、ビタミンCの大量投
与、水温コントロール下での計画感染等が提唱されてい
るが、養殖場の立地条件や採算面での問題が多く、ヨー
ド剤による発眼卵消毒を除き、殆ど普及していないのが
現状である。
【0006】人および家畜ではワクチンが各種感染症の
防除方法として主要な位置を占めているが、魚類でのそ
の開発は困難を極め、一部の細菌感染症に対するワクチ
ンを除いて大部分の感染症のワクチン開発は未だ目処が
立っていない状況にある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】鮭鱒類ウイルス感染症
の防除法あるいは被害軽減方法として、従来、提唱され
てきた摘発・淘汰、隔離飼育、水温制御、用水への紫外
線照射等の方法は養魚場の立地条件と採算面で実施が困
難で、現実には殆ど採用されていない。また大半のウイ
ルス感染症には抗生物質等の抗菌剤は無力で、有効なワ
クチンも全く開発されていない。
【0008】このような状況からウイルス感染症の発生
は広域化し、その被害も益々甚大となっており、養殖業
者は従来の方法とは異なる確実、容易かつ低コストの防
除方法の確立を切望している。
【0009】
【課題を解決するための手段】ウィルス感染症の防除方
法の一つに、特異抗体の使用が考えられる。魚類、鳥
類、哺乳動物がウイルスに感染すると、いずれもそのウ
イルスに特異的に反応する抗体を自己産生する。この特
異抗体は抗原であるウィルスと反応してこれを中和する
ことにより、ウィルス感染により惹起される症状の緩和
と改善に中心的な役割を果たす。
【0010】また、すでに感染歴のある個体は抗体によ
って再度の感染を許さないが、感染しても未然に発症が
防止される。抗体のこのような感染防御もしくは発症防
止機能は、異種動物の産生した抗体の人為的な投与によ
っても同様に期待しうるが、養殖魚のような群飼育の経
済動物に応用するには、その作製コストは安価で、投与
に手間がかからない方法で充分な効果を発揮するもので
なければならない。
【0011】一般にウイルスに対する特異抗体はウイル
スをウサギ・ヤギ・牛・馬等の動物に接種し、その血清
ないし乳汁から得られる。また、実験室内ではマウスに
ウイルスを接種し、そのリンパ球をもとに細胞融合の手
法によってモノクローナル抗体を作製する方法もある。
いずれの方法でも特異抗体の大量生産は困難かつ高価で
養殖魚のような経済動物に対して応用するには採算面で
の実用性はない。
【0012】本発明は人為的にウイルスを接種した鶏が
産出する鶏卵を活用すれば、特異抗体を安価で大量に作
製することができる点に着目したものである。鶏卵抗体
を利用した養殖魚の感染症予防については特開平1−16
8246号公報に提案されているが、実際に特異抗体を得て
予防効果を確認したのは細菌の一例のみである。感染ル
ート、初期感染部位は病原体の種類によって異なり、ま
た、動物種によってその生体防御機構は異なるので、鶏
卵抗体のような異種抗体の経口投与が特定魚種のある種
の細菌感染症に有効な知見を得ても、他魚種の各種感染
症や同魚種の他の感染症にも効果を発揮することを一律
に予測するのは困難である。例外的に予測が容易なもの
は経腸管的にのみ伝播する感染症で、この場合には経口
投与された異種抗体が病原体の腸管壁への感染を阻止し
うる可能性がある。しかし、養殖魚に被害を及ぼす細菌
感染症およびウイルス感染症のなかで、経腸管的にのみ
伝播するものは極めて少ない。
【0013】鮭鱒類に甚大な被害を及ぼすウイルス感染
症は全身性感染症であり、経口に限らず経鰓、経皮でも
伝播するため、異種抗体を鮭鱒類の血中に移行させ、そ
のレベルをほぼ一定に維持することがウイルス感染症の
防除に必要と考えられる。異種抗体の経口投与では、消
化管での抗体の消化、失活を考えると、必ずしも全身性
感染症の防除に有効であることは予測できなかった。本
発明者らは後述の知見を得て、鮭鱒類のウィルス病の予
防に鶏卵を利用して製造した特異抗体が有効であること
を見出し、本発明を完成したものである。
【0014】すなわち、本発明は、鮭鱒類病原ウイルス
の粒子抗原もしくはそのサブユニット抗原で免疫した鶏
が産生する卵の全卵もしくは卵黄から得た特異抗体を鮭
鱒類に投与することを特徴とする、鮭鱒類ウイルス病の
防除方法を要旨とする。この方法は、鮭鱒類病原ウイル
スが伝染性造血器壊死症ウィルスである場合に特に有効
である。防除方法としては、前記抗体を飼料に添加して
投与する方法、あるいは前記抗体を水中に添加し該水中
に鮭鱒類を浸漬する方法がある。
【0015】また、本発明は、上記防除方法に用いる、
鮭鱒類病原ウイルスの粒子抗原もしくはそのサブユニッ
ト抗原で免疫した鶏が産生する卵の全卵もしくは卵黄か
ら得た特異抗体を含む鮭鱒類ウィルス病の予防剤にも関
する。生後まもない子豚や子牛では摂取した初乳中の抗
体が消化管内で消化されず、腸管上皮細胞のパイノサイ
トーシスにより血中に移行し各種病原体の感染に対して
抵抗性が賦与されるが、このパイノサイトーシスの能力
も生後48時間以内までで消失し、それ以後はIgA を除い
て消化管内に分泌される各種のプロテアーゼにより消化
され失活する。
【0016】多くの魚種の仔魚では一般的に胃の蛋白消
化能力は未熟であり蛋白は腸管後部のパイノサイトーシ
スによってそのまま取り込まれる。成魚では、このパイ
ノサイトーシスによる取り込みの機能も温存されるが、
経口的に摂取された飼料中の蛋白の大部分は胃および腸
管前部で消化される。鮭鱒類は、仔魚後期に相当する発
育期を内部栄養 (卵黄) で経過する魚種であり、浮上後
摂餌を開始する稚魚期には消化系の構造と機能が質的に
は成魚と同レベルに達する。しかし、稚魚では消化管内
のプロテアーゼ活性のレベルは低く、蛋白の消化率も低
い。鮭鱒類のウィルス感染症、特にIHN は、摂餌を開始
する頃以降に被害が出始め、しかもこの時期の鮭鱒類で
は、上記のように消化管内での蛋白の消化率が低いた
め、抗体を経口投与した場合消化されることなく血中に
移行しうる。すなわち、抗体を飼料に添加して給与する
方法によりウィルス感染症を有効に防除しうる。特に、
鮭鱒類において主として稚魚期に多発し、最も甚大な被
害を及ぼしている伝染性造血器壊死症(IHN) に対して有
利である。また、鮭鱒類は終生、腸管後部におけるパイ
ノサイトーシスの能力を温存しているため、成魚に経口
投与してもある程度抗体が血中に移行する。
【0017】さらに、鮭鱒類は水中に添加された蛋白を
鰓や体表から取り込むことが明らかとなっている。鮭鱒
類のこれらの特質は、鶏卵中の抗体をウイルス感染症に
応用する際、家畜等に較べ有利な条件となる。即ち、鶏
卵中の抗体を飼料に添加もしくは配合して給与する方法
でも、水中に同抗体を添加して魚を浸漬する方法でもウ
イルス感染症を防除することが可能である。
【0018】本発明者らは、具体的にはまず経口投与法
と浸漬法による鶏卵抗体のニジマス血中移行を確認し、
ついで鮭鱒類のウイルス感染症として最も重要な伝染性
造形器壊死症(IHN) をモデルとして、同ウイルスに対す
る特異抗体含有鶏卵を試作し、それを用いて様々な検討
を経て、最終的には養魚場での効果実証試験を実施した
結果、顕著な効果を見出した。本発明において鮭鱒類と
は、ニジマス、アマゴ、イワナ、ヤマメ、ギンザケ、サ
ケ、サクラマス、ヒメマス、カラフトマス、マスノス
ケ、その他の鮭鱒類をいうものである。
【0019】本発明に使用する特異抗体含有鶏卵は、鮭
鱒類病原ウイルスを最適な培養細胞で大量に培養し、そ
れを濃縮あるいは精製したものを接種用抗原とするか、
あるいは鮭鱒類病原ウイルスから感染防御に関与する一
部の抗原 (サブユニット) のみを抽出し、必要に応じて
ホルマリン等で不活化したものを接種用抗原とし、この
抗原を、採卵鶏の筋肉、皮下ないし腹腔等に接種するこ
とにより、鶏卵内に抗体を生成させて得られる。抗原の
接種は、初回の接種から一定の間隔を置いてさらに同抗
原を適切な部位に2〜3回追加接種するのが望ましい。
この場合、初回の接種は適当なアジュバントとともに接
種するのが望ましい。
【0020】鮭鱒類病原ウイルス抗原としては、伝染性
造血器壊死症(IHN) 、伝染性膵臓壊死症(IPN) 、ヘルペ
スウイルス感染症、ウイルス性出血性敗血症(VHS) 、そ
の他の鮭鱒類ウイルス感染症などが挙げられ、所望の抗
原を任意に選択し、適宜培養、濃縮、精製等を行い採卵
鶏に接種すればよい。
【0021】特異抗体含有鶏卵は、上記のごとく採卵鶏
に抗原を反復接種し、鶏卵内の抗体生成を確認した後、
例えば最終免疫の約1週間後より得た卵を特異抗体含有
鶏卵として利用できる。その場合、全卵でも卵黄のみで
も利用でき、また、液状ないしその凍結品でも応用でき
るが、卵黄中の抗体を濃縮ないし精製して利用すること
も可能である。
【0022】更に、実際に応用する際には抗体を失活さ
せない各種乾燥法例えば凍結乾燥法、噴霧乾燥法等によ
り粉末形態に加工するのが保管・取扱・輸送・使用等の
面で望ましい。また、この粉末を腸溶性または遅溶性マ
イクロスフィア化して利用すれば、さらに顕著な効果が
期待できるものである。
【0023】特異抗体含有鶏卵を用いて鮭鱒類ウイルス
病を防除するに当たっては、特異抗体含有鶏卵を鮭鱒類
用飼料原料の一つとして使用して鮭鱒類用配合飼料とす
るか、あるいは市販の鮭鱒類用飼料に添加して鮭鱒類に
給与すればよい。養殖場での鮭鱒類ウイルス病の防除方
法としては、この他に、特異抗体含有鶏卵を水中に溶解
せしめ、その中で魚を一定時間浸漬する方法を採ること
もできる。
【0024】特異抗体の投与は、鮭鱒類の稚魚期に相当
する摂餌開始時期から行えば、ウイルス感染症を効果的
に予防できる。また、摂餌開始前の仔魚期に特異抗体に
よる浸漬法を応用すれば、さらに効果は確実となる。経
口投与時の投与量は、作製された特異抗体の抗体価と予
防対象とするウイルス感染症により異なるが、飼料への
添加・混合面および栄養バランス面で魚体重の0.1 〜0.
5 %程度の量が適当である。ニジマスのIHNの予防へ
の応用を例にとると、10%溶液の抗体価が約30,000倍の
特異抗体粉末を使用する場合には、孵化後2〜3週間
(魚体重0.1 〜0.2 g程度) の稚魚への投与量は、1日
量として1尾あたり0.1 〜0.2mg を投与すれば充分であ
る。また、成魚に投与してもよく、ウイルス感染症発症
後に使用して症状を軽減することも可能である。
【0025】下記試験例1および2では、非免疫鶏卵の
卵黄から作製した粉末 (2種) をニジマスの成魚および
稚魚に経口投与して、IgGの血中移行を確認した。ま
た、試験例3では卵黄粉末を水中に添加し該水中にニジ
マスを浸漬して、IgGの血中移行を確認した。
【0026】
【試験例1】非免疫鶏卵 500個を割卵して約10kgの卵黄
液を得た。これに40kgの精製水を加えて攪拌しながら、
卵黄脂質成分を除去するために、30%のオイドラギット
L30D-55(ローム社製、ドイツ) 水溶液に最終濃度が5%
(V/V) になるように加え、室温に約18時間静置した。そ
の後12,000×gで20分間遠心し、水溶性分画を得た。
【0027】これをスプレードライヤー (大川原化学工
機社製、モデルL−12) で粉末化した。運転条件は入口
温度が140 ℃、出口温度が72℃、アトマイザー回転数が
22,000r.p.m.、流速は5リットル/時間であった。粉末
化前の水溶性分画1ml当たりのIgG 量をELISA によって
測定したところ、約1mgであった。最終的に500 個の鶏
卵から約300 gの乾燥粉末が得られ、その粉末1g中の
IgG 量を測定したところ約650mg であった。一方、この
粉末を用いてコアセルベート法によって腸溶性マイクロ
スフィアを作製した。マイクロスフィア化粉末1g中の
IgG 量は約360mg であった。
【0028】上記の方法で得たマイクロスフィア化前粉
末 (1区) およびそのマイクロスフィア化粉末 (2区)
各々0.69gをモイストペレット用マッシュの3.6 gにそ
れぞれ混合し、次いで各々にpH 4.9のクエン酸・リン酸
緩衝液10.71ml を加えて練り上げ、平均体重20gのニジ
マス (成魚) 20尾ずつに、魚体重の1%の量をゾンデで
強制的に経口投与した。
【0029】この条件でIgG の投与量はマイクロスフィ
ア化前粉末投与区では魚体重100 g当たり30mg、マイク
ロスフィア化粉末投与区では同16.6mgとなる。対照区
(3区) の魚20尾には、モイストペレット用のマッシュ
のみで練り餌を作製し同様に投与した。
【0030】採血は3時間後、6時間後、12時間後およ
び24時間後に各々5尾ずつ尾柄切断法で行い、室温で1
時間放置した後、遠心し血清を採取した。血清中のIgG
濃度(μg/ml) 測定はELISA で行った。その結果は表1
の通りであり、マイクロスフィア化前粉末 (1区)およ
びマイクロスフィア化粉末(2区)のいずれにおいても
血中移行が確認されるとともに、マイクロスフィア化し
たほうが血中移行が促進されることが明らかとなった。
【0031】
【表1】
【0032】
【試験例2】試験例1で作製したマイクロスフィア化前
の粉末 (1区) およびそのマイクロスフィア化したもの
(2区) 各々0.37gをモイストペレット用マッシュの1
5.63gに混合し、各々にpH 4.9のクエン酸・リン酸緩衝
液25mlを加えて練り上げ、これを注射筒から押し出す方
法で麺状に成形し、低温で乾燥後、破砕して粒径が約1
mmの試験用飼料を調製した。
【0033】平均体重 0.8gのニジマス (稚魚)20 尾ず
つに、総魚体重の2%量の飼料を1回で給与した。この
条件での投与量は試験例1と同様、マイクロスフィア化
前粉末給与区(1区)では魚体重 100gあたり約30mg、
マイクロスフィア化粉末給与区(2区)では約16.6mgと
なる。対照区 (3区) の稚魚には、モイストペレット用
マッシュのみで試験区と同様に飼料を調製して給与し
た。
【0034】飼料給与の3時間後と6時間後、各々10尾
ずつ尾柄切断法でヘマトクリット用毛細管に採血し、室
温で1時間放置した後遠心し血清を採取した。IgG 濃度
測定は各区のプール血清につきELISA で行った。
【0035】IgG の血中濃度 (μg/ml) の平均値は表2
の通りであり、卵黄由来IgG の血中移行が確認された。
飼料給与3時間後では、IgG 投与量に対する血中濃度
(μg/ml) は成魚の平均値と比較していずれも約3倍と
なり、成魚よりも稚魚のほうが血中移行効率の高いこと
が判明した。また、試験例1の結果と同様、マイクロス
フィア化したほうが血中移行は促進された。
【0036】
【表2】
【0037】
【試験例3】平均体重10gのニジマス20尾を5.3 %NaCl
水溶液中に3分間浸漬したのち、試験例1で作製したマ
イクロスフィア化前の粉末の1%水溶液中に3分間浸漬
し、流水飼育水槽に収容して3、6、12、24時間後に尾
柄切断法で各々5尾ずつ採血し、血清中の鶏IgG 濃度を
ELISA で測定した。その結果は表3の通りであり、鶏Ig
G の血中移行が確認され、浸漬6時間後の平均値が5.11
μg/mlで最高となった。
【0038】
【表3】
【0039】
【実施例1】伝染性造血器壊死症(IHN) ウイルスをFHM
細胞に接種し、15℃で72時間培養したろころ、108.5 TC
ID50/ml のウイルス浮遊液が2リットル得られた。細胞
成分を除去するため4,000 ×gで20分間遠心し、得られ
た上清を限外濾過膜を用いて約1/10に濃縮した。この濃
縮ウイルス液の感染価は109.0 ID50/ml であった。不活
化ウイルスを得るため、ホルマリンを最終濃度が0.2 %
になるように加え、+4℃で48時間静置した。不活化を
確認した後、使用時まで+4℃に保存した。
【0040】この保存ウイルス液に等量のオイルアジュ
バントを加えエマルジョンとし、産卵鶏50羽の胸部筋肉
内に1羽あたり1ml宛接種しその2週間後および4週間
後にブースターとして保存ウイルス液の0.7 mlずつを各
鶏の翼下静脈内に追加接種した。最終免疫の1週間目以
降に産出された鶏卵を1ヶ月にわたって回収した。
【0041】卵黄内に移行した抗体価を測定するため
に、最終免疫1週後の鶏卵5個を割卵し、卵黄重量に対
して等量の PBS- を加えて卵黄成分を溶解した後、卵黄
脂質を除去するため、この溶解物に等量のクロロホルム
を加えて攪拌した。遠心によって水溶性分画を得た後、
中和試験に用いるため0.45μm フィルターで濾過滅菌し
た。これらの試料は56℃で30分間非働化後、2%牛胎児
血清加イーグルMEM 培地を用いて、2倍段階希釈し、各
希釈系列にIHN ウイルス(200TCID50/0.1ml) を加え15℃
で3時間感作した。その後、試料+ウイルス混合液をRT
G-2 細胞を培養した試験管4本に0.2 mlずつ接種し、15
℃で1時間吸着させた。次に、接種液を吸引除去し、各
試験管に0.5 mlずつ2%牛胎児血清加イーグルMEM 培地
を加え、15℃で10日間培養した。中和抗体価は 256〜51
2 倍であった。
【0042】そこで、追加免疫1週後から集卵した免疫
卵500 個から約10kgの卵黄液を得た。これに40kgの精製
水を加えて攪拌しながら、卵黄脂質成分を除去するた
め、30%のオイドラギットL30D-5 (ローム社製、ドイ
ツ) 水溶液を最終濃度が5% (V/V)になるように加え、
室温に約18時間静置した。その後12,000×gで20分間遠
心し、水溶性分画を得た。これを、スプレードライヤー
(大川原化学工機社製、モデルL-12) で乾燥させ、特異
抗体含有粉末を得た。運転条件は、入口温度が140℃、
出口温度が72℃、アトマイザー回転数が22,000r.p.m.、
流速は5リットル/時間であった。最終的に500 個の免
疫卵から約350 gの乾燥物が得られ、その粉末1gを10
mlの PBS- に溶解して中和抗体価を求めたところ、32,7
68倍であった。
【0043】上記のようにして得た特異抗体含有粉末、
および試験例1で作製した特異抗体非含有粉末を各々2
%配合した飼料を作製した。60×30×35cmのガラス製水
槽を4個用意し、ウイルス非汚染養魚場より入手したニ
ジマス発眼卵を100 個ずつ収容し、ウイルス非汚染の冷
却地下水 (水温12〜13℃) で孵化させ、2水槽 (1区と
2区) の仔魚には浮上直後より特異抗体含有粉末配合の
飼料を毎日3回飽食給与し、残りの2水槽 (3区と4
区) の仔魚には特異抗体非含有粉末配合飼料を同様に給
与して、7日間飼育した。各飼料給与の1水槽ずつ (1
区と3区) に保存ウイルスを104.5 TCID50/ml の割合で
添加し、止水・エアレーション下で30分放置しウイルス
と接触させたのち、流水飼育にもどして同様に飼料を継
続給与し、2週間にわたって各水槽の斃死魚尾数を記録
した。残りの2水槽 (2区と4区)は非感染対照とし、
同様に飼育した。
【0044】各水槽の斃死魚については寄生虫・細菌・
ウイルス検査を行い死因を検討した。結果は表4の通り
であり、特異抗体含有粉末配合の稚魚用飼料を給与する
ことによるIHN の防御効果が確認された。なお、ウイル
ス感染区 (1区と3区) の斃死魚の死因はいずれもIHN
によるものであった。非感染区 (2区と4区) の2水槽
でも少数の斃死が認められたが、IHN ウイルスは分離さ
れず斃死原因は不明であった。
【0045】
【表4】
【0046】
【実施例2】IHN が毎年発生している養魚場を選定し、
同一ロットのニジマス稚魚 (平均体重 0.5g) を5000尾
ずつの2群に分け、一方 (1区) には実施例1で作製し
た特異抗体含有粉末2%配合の飼料を給与し、他方 (2
区) には試験例1で作製した特異抗体非含有粉末2%配
合の飼料を給与し、8週間にわたって斃死状況の記録と
死因の検討を行った。その結果は表5の通りで、特異抗
体含有粉末の経口投与による斃死の軽減効果が顕著に認
められた。いずれの魚群でも斃死魚の死因はIHN であっ
た。
【0047】
【表5】
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、鶏卵を
利用して鮭鱒類病原ウイルスの特異抗体を容易にしかも
安価でかつ大量に生産し、これを用いて現在大きな問題
となっている鮭鱒類のウィルス感染症を有効に防除する
ことができる。防除は、飼料に添加して給与する方法あ
るいは水に溶解して魚体を浸漬する方法などにより極め
て容易かつ安価に行うことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 善敬 静岡県磐田市西町364−1 (72)発明者 杉山 俊明 神奈川県秦野市南矢名1130−171 (72)発明者 小林 雄一 岐阜県岐阜市折立296−1株式会社ゲン・ コーポレーション内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鮭鱒類病原ウイルスの粒子抗原もしくは
    そのサブユニット抗原で免疫した鶏が産生する卵の全卵
    もしくは卵黄から得た特異抗体を、鮭鱒類に投与するこ
    とを特徴とする、鮭鱒類ウイルス病の防除方法。
  2. 【請求項2】 鮭鱒類病原ウイルスが伝染性造血器壊死
    症ウィルスである、請求項1記載の防除方法。
  3. 【請求項3】 前記抗体を飼料に添加して投与するか、
    あるいは前記抗体を水中に添加し該水中に鮭鱒類を浸漬
    する、請求項1または2記載の防除方法。
  4. 【請求項4】 鮭鱒類病原ウイルスの粒子抗原もしくは
    そのサブユニット抗原で免疫した鶏が産生する卵の全卵
    もしくは卵黄から得た特異抗体を含む、鮭鱒類ウィルス
    病の予防剤。
JP21525692A 1992-08-12 1992-08-12 特異抗体含有鶏卵による鮭鱒類ウイルス病の防除方法 Withdrawn JPH0665101A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007034741A1 (ja) * 2005-09-22 2007-03-29 Daikin Industries, Ltd. 抗ウイルス剤、及びウイルス感染細胞の処理方法
JP2012158562A (ja) * 2011-02-02 2012-08-23 Kyoorin:Kk 鯉の新型穴あき病の予防方法
CN102716476A (zh) * 2012-05-31 2012-10-10 郑州后羿制药有限公司 一种细胞灭活疫苗和卵黄抗体注射液及其制备方法
CN108409857A (zh) * 2018-01-24 2018-08-17 四川农业大学 虹鳟抗传染性造血器官坏死病卵黄抗体的制备及其应用

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