JP2007084037A - サスペンション装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】荷重減少時に車輪と車体の離間距離が必要以上に大きくならないサスペンション装置を得る。
【解決手段】サスペンション装置314に、シリンダハウジング50の内部がピストン34によって区画されて形成された2つの空気室44,46を有する弾性伸縮装置30を設ける。車輪14と車体24とが離間する際には、ピストン34が図において下方に移動させられ、第1空気室44による車輪14と車体24とを離間させる弾性力が減少するとともに、第2空気室46による車輪14と車体24とを接近させる弾性力が増大する。その結果、弾性伸縮装置30が発生する車体24を支持する弾性力は、第2空気室46がない場合よりも小さくなり、車輪と車体の離間距離が必要以上に大きくならないのである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ガスを圧縮して弾性力を発生させるガススプリング機構を備えたサスペンション装置に関する。
従来、弾性力を発生させるガスとして空気を用いたエアスプリング機構を備え、空気の弾性力によって車輪と車体とを弾性的に連結するエアサスペンション装置が使用されている。下記特許文献1には、車輪と車体との接近に応じて容積が減少して車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させるための空気室、つまり、離間力発生型の空気室を有するエアスプリング機構を備えたエアサスペンション装置が記載されている。
特開平5−270229号公報
上記特許文献1のエアサスペンション装置は、上記離間力発生型の空気室しか備えておらず、車輪と車体とが接近した際の弾性力が比較的増加しやすいのに対して、車輪と車体とが離間した際の弾性力が比較的減少しにくいという特性を有している。そのため、旋回等によって車体がロールした状態において、旋回外輪側の車体は下降しにくいのに対して、旋回内輪側の車体は上昇しやすく、車体の重心が上昇し易いという問題がある。そのような問題は、従来のエアサスペンション装置の旋回性能等を向上させる上で障害となり得る問題の一例であり、エアサスペンション装置には種々の観点からの改良の余地がある。すなわち、従来のエアサスペンション装置に改良を施すことによって車両の旋回性能を向上させる等、実用性を向上させることが可能である。本発明は、そういった実情を鑑みてなされたものであり、より実用的なサスペンション装置を得ることを課題としてなされたものである。
上記課題を解決するために、本発明のサスペンション装置は、(a)車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる第1ガス室と、(b)車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力を発生させる第2ガス室とを含んで構成されたガススプリング機構を備えたことを特徴とする。
本発明のサスペンション装置は、車輪と車体とを離間させる弾性力である「離間力」を発生させるための離間力発生型ガス室である第1ガス室だけでなく、車輪と車体とを接近させる向きの弾性力である「接近力」を発生させるための第2ガス室も備えており、第2ガス室によって接近力を発生させ、第1ガス室が発生させる離間力の影響を減少させることができる。そのため、例えば、旋回時等に荷重が減少する旋回内輪が車体に対して必要以上に離間することを抑制することができる。すなわち、本発明により、例えば、旋回性能が向上する等、より実用的なサスペンション装置が得られるのである。なお、本発明のサスペンション装置の各種態様およびそれらの作用および効果については、以下の、〔発明の態様〕の項において詳しく説明する。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から一部の構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(8)項と(11)項とを合わせたものが請求項6に、(13)項が請求項7に、(14)項が請求項8に、(21)項が請求項9に、(22)項が請求項10に、(12)項と(24)項とを合わせたものが請求項11に、(27)項が請求項12に、(28)項が請求項13に、(29)項が請求項14に、(42)項が請求項15に、(43)項が請求項16に、それぞれ相当する。
(1)ガスを圧縮して弾性力を発生させることによって車輪と車体とを弾性的に連結するガススプリング機構を備えたサスペンション装置であって、
前記ガススプリング機構が、
車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる第1ガス室と、
車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力を発生させる第2ガス室とを含んで構成されることを特徴とするサスペンション装置。
本項に記載のガススプリング機構では、第1ガス室が、例えば、従来のエアスプリングの空気室と同様な働きをする。つまり、第1ガス室は、車輪と車体との接近に応じて第1ガス室内に収容されたガスを圧縮し、そのガスによって車輪と車体とを離間させる弾性力である「離間力」を発生させるための「離間力発生型ガス室」とされているのである。そして、本項のガススプリング機構は、第1ガス室の離間力によって、車体の重量を支えつつ、路面の隆起を乗り越える際等に車輪と車体との接近を弾性的に許容して車両の乗り心地を良好に保つようにされている。しかしながら、第1ガス室の離間力の影響により、例えば、旋回時等に旋回内輪と車体とが必要以上に離間し易いという問題がある。
本項に記載のガススプリング機構は、離間力発生型ガス室である第1ガス室に加え、車輪と車体との離間に応じて自身が収容するガスを圧縮して車輪と車体とを接近させる向きの弾性力である「接近力」を発生させるための「接近力発生型ガス室」である第2ガス室を備えており、その接近力によって第1ガス室が発生させる離間力の影響を減少させることができる。そのため、例えば、旋回時等に荷重が減少する旋回内輪と車体とが必要以上に離間することを抑制することができる。すなわち、本項に記載のサスペンション装置は、車輪と車体とが必要以上に離間することを抑制することができる。そして、本項に記載のサスペンション装置は、例えば、旋回性能が向上する等、より実用的なサスペンション装置にされている。
本項の第1ガス室と第2ガス室と(以後、第1ガス室と第2ガス室とを、単に「2つのガス室」と称する場合がある)は、例えば、別個の容器の内部に形成することができ、あるいは、1つの容器内部を移動可能な区画壁(例えば、ピストン)によって区画して形成することもできる。本項に記載のガスとして、例えば、空気,窒素等の種々の気体を使用することができる。本項の第2ガス室は、例えば、車輪と車体とが接近・離間可能な全ての範囲において、互いに連動し、車輪と車体との接近・離間(以後、「ストローク」と称する場合がある)に応じて容積が変化させられるようにすることができ、あるいは、例えば、車輪と車体とが設定距離以上離間した状態においてのみ、互いに連動し、ストロークに応じて容積が変化させられるようにすることもできる。なお、本項に記載のサスペンション装置は、例えば、ガススプリング機構に加えて、他の弾性力発生機構(例えば、コイルスプリング等),ショックアブソーバ等の減衰力発生機構等を備えるものとすることができる。
(2)前記ガススプリング機構が、
車輪と車体との一方に連結されたシリンダハウジングと、
そのシリンダハウジングの内部に移動可能に嵌合させられたピストンと、
一端部が前記ピストンに取り付けられるとともに、他端部が前記シリンダハウジング外部に延び出して前記車輪と車体との他方に連結されたピストンロッドと
を含んで構成され、
前記シリンダハウジングの内部が前記ピストンによって区画されて前記第1ガス室および前記第2ガス室が形成されたものである(1)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、シリンダハウジング内部がピストンによって区画されて2つのガス室が形成されたものである。また、ガススプリング機構が、シリンダハウジングの内部においてピストンを挟む位置にそれぞれ形成された第1ガス室および第2ガス室を有するものと捉えることもできる。本項のピストンはストロークに応じてシリンダハウジング内を移動するため、2つのガス室の容積は、ストロークに応じて一方が増加するとともに他方が減少することとなる。すなわち、本項のガススプリング機構は、2つのガス室が、例えば、車輪と車体とが接近・離間可能な全ての範囲において、互いに連動し、ストロークに応じて容積が変化するようにすることができる。
本項のピストンは、例えば、シール部材(例えば、Oリング,ピストンリング等)を含んで構成することができる。なお、シール部材は、停止時,摺動時に空気の連通を遮断できるものであれば、断面形状や材質は特に制限されない。例えば、Oリング,リップを有するリップシール,断面形状が1以上の凹凸を有する異形にされたもの等を採用することが可能である。また、材質は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),シリコン樹脂,ゴム,カーボン等を採用することが可能である。
(3)前記ピストンが、
前記シリンダハウジングの内部に移動可能に嵌められたピストン部と、そのピストン部に設けられて前記第1ガス室と前記第2ガス室とを連通させる筒部とを有する第1ピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端部が取り付けられるとともに、前記筒部の内周部にその筒部と相対移動可能に嵌められた第2ピストンと、
前記筒部と前記第2ピストンとの設定相対位置を超える相対移動を禁止する相対移動禁止部と
を含んで構成された(2)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、相対移動禁止部によって第1ピストンと第2ピストンとの相対移動が禁止されてそれらが一体的に移動する際のばね特性と、第1ピストンが停止して第2ピストンが移動する際のばね特性とを異ならせることができる。具体的には、例えば、基準離間距離(例えば、停車時の離間距離)から車輪と車体とが接近する際には第1ピストンと第2ピストンとが一体的に移動するようにしてピストンの有効面積を大きくする一方、車輪と車体とが離間する際には停止した第1ピストンの筒部の内周部を径の小さな第2ピストンが移動するようにしてピストンの有効面積を小さくすることにより、1つのピストンを有する態様と比較して、車輪と車体との離間距離が基準離間距離よりも大きい状態(後述するリバウンド側のストローク)において弾性力の変化を小さくすることができる。
ピストン部は、例えば、環状のものや、貫通穴を有するものとすることができる。その貫通穴と、筒部内の空間とを介して第1ガス室と第2ガス室とが連通させられるのである。筒部は、例えば、ピストン部のいずれか一方の端面に設けることや、ピストン部を貫通した状態で設けること等ができる。相対移動禁止部は、例えば、筒部の内周部に突出して第2ピストンの少なくとも一部分に当接するような部分とすることができる。
(4)前記ガススプリング機構が、
前記シリンダハウジングの内部において設定位置から設定された向きへの前記第1ピストンの移動を禁止する第1ピストン移動禁止部を備えた(3)項に記載のサスペンション装置。
例えば、第1ピストンの筒部がシリンダハウジングの底部に当接すること等によって第1ピストンの移動を禁止することもできるが、本項に記載の態様では、シリンダハウジングの底部あるいは筒部の変形,破損等を抑制するために、例えば、ピストン部と係合する第1ピストン移動禁止部を設けることが望ましい。
(5)前記シリンダハウジングが、
前記ピストンロッドが貫通した状態で外部との圧力差を保ちつつ車輪と車体との接近に伴い前記ピストンロッドを摺動させるロッドシール部を有する(2)項ないし(4)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
ロッドシール部は、例えば、ピストンロッドを貫通させる穴を有するものとすることができる。また、その貫通する穴が設けられた部分の内周部に、例えば、シール溝とシール部材とを全周にわたって設けることができる。なお、シール部材は、停止時,摺動時に空気の連通を遮断できるものであれば、断面形状や材質は特に制限されない。例えば、Oリング,リップを有するリップシール,断面形状が1以上の凹凸を有する異形にされたもの等を採用することが可能である。また、材質は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),シリコン樹脂,ゴム,カーボン等を採用することが可能である。
(6)当該サスペンション装置が、
車輪と車体との接近に応じて変形させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させるばね部材を備えた(1)項ないし(5)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、ガススプリングに加えて、ばね部材によっても車体を支える弾性力を発生させる態様である。ばね部材は、例えば、コイルスプリング,板ばね,トーションスプリング等とすることができる。本項のサスペンション装置によれば、ガススプリングのばね特性とばね部材のばね特性とを合わせたばね特性が得られる。また、ばね部材の弾性力によって、ガススプリング機構に発生させる離間力を減少させることができ、ガス室内のガス圧を比較的低くすることができる。なお、例えば、空車時(乗車人数0)の車高(あるいはそれと近い車高)において、ばね部材の弾性力によって車重を支え、ガススプリング機構の弾性力が発生しないようにすれば、長期的に駐車してガススプリング機構のガスが漏れたとしても車高が下がらず、より実用的なサスペンション装置とすることができる。
(7)前記ガススプリング機構が、
前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々に、ガスの供給・排出を行うための給排気口を備えた(1)項ないし(6)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載のガススプリング機構は、第1ガス室および第2ガス室の各々に給排気口を備えており、外部からガスを供給,外部にガスを排出することができるため、それら2つのガス室のガスの充填量を個別に調節することが可能となる。その給排気口は、例えば、単にガス室の内外を連通させる貫通穴によって形成することや、ガスの配管等を接続するための接続具(例えば、コネクタ等)を配設して形成すること等ができる。
給排気口を介して、2つのガス室のうちの少なくとも一方のガスの充填量を調節することにより、例えば、ガススプリング機構のばね特性のうちの「ばねの硬さ」(いわゆる、ばね定数に相当する特性であり、例えば、設定されたストローク範囲における弾性力の変化量や、設定されたストローク量におけるばね定数等とされる)や,車輪と車体との基準となる離間距離(例えば、停車時の離間距離であり、単に「車高」と称する場合もある)等を任意に変更することができる。なお、従来のエアサスペンション装置では(副エアチャンバータイプを含む)、ばねの硬さを2段階程度に変更することしかできなかった。それに対して、本項に記載の態様によれば、例えば、ガスの充填量を多段階,あるいは無段階で調節する場合には、ばねの硬さおよび車高を、多段階,あるいは無段階で調節することができる。
また、従来のエアサスペンション装置は、離間力発生ガス室しか有していないため、車高調整した際には、ばねの硬さが必然的に変わってしまう。それに対して、本項に記載の態様によれば、2つのガス室の各々のガスの充填量を適切に調節することにより、例えば、ばねの硬さと車高との両方を任意に変更することもできる。具体的には、例えば、車高を上げつつばねの硬さをいわゆる「ハード」なものにしたり、「ソフト」なものにしたりすることができ、また、車高を下げつつばねの硬さを上記と同様に任意に変更することができる。また、例えば、車高を変えずにばねの硬さを変更したり、ばねの硬さの変化を抑制しながら車高を変更したりすることもできる。なお、ばねの硬さと車高との両方を任意に変更する場合は、例えば、2つのガス室が、車輪と車体とが接近・離間可能な全ての範囲において、互いに連動し、ストロークに応じて容積が変化するようにされていることが望ましい。
(8)当該サスペンション装置が、
前記第1ガス室と前記第2ガス室とに、個別にガスの供給・排出が可能なガス給排気装置を備えた(1)項ないし(7)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、第1ガス室および第2ガス室の各々のガス充填量を個別に調節するためのガス給排気装置を備えたものである。なお、車両に複数のサスペンション装置が配設されている場合に、それら複数のサスペンション装置に対して、ガス給排気装置の少なくとも一部(例えば、コンプレッサー等)を共用させることが可能である。
(9)前記ガス給排気装置が、
前記第1ガス室と前記第2ガス室とに、同時にガスの供給・排出を行うように構成された(8)項に記載のサスペンション装置。
2つのガス室のガス充填量を同時に調節することによって、例えば、迅速な車高調整,ばね特性の変更が可能となる。
(10)前記ガス給排気装置が、
前記第1ガス室と前記第2ガス室との一方にガスを供給すると同時に、それらの他方からガスを排出させるように構成された(8)項または(9)項に記載のサスペンション装置。
例えば、車高を上げる場合に、第1ガス室のガスの充填量を増加させると同時に第2ガス室のガス充填量を減少させれば、特に迅速に車高調整を行うことができる。また、例えば、車高を下げる場合には、上記の逆を行えば、同様に特に迅速に車高調整を行うことができる。
(11)当該サスペンション装置が、
前記ガス給排気装置を制御することによって、車輪と車体との基準となる離間距離と前記ガススプリング機構のばね特性とを任意に変更可能とするガススプリング制御装置を備えた(8)項ないし(10)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、ガス給排気装置を制御するガススプリング制御装置を備えた態様である。その制御装置によってガス給排気装置を制御することにより、基準離間距離(いわゆる「車高」)と、ばね特性(例えば、「ばねの硬さ」)とを任意に変更することができる。その基準離間距離とばね特性とを任意に変更することについては、前述の「第1ガス室および第2ガス室の各々に、ガスの供給・排出を行うための給排気口を備えた」態様についての説明において述べた内容と同様なことが可能である。なお、複数のサスペンション装置に、1のガススプリング制御装置を共有させることもできる。
(12)前記ばね特性が、設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に対する前記ガススプリング機構が発生する弾性力の変化の度合いで規定されるものである(11)項に記載のサスペンション装置。
ガススプリング機構が発生する弾性力の大きさと離間距離との関係は、例えば、非線形となり、ばね特性(例えば、「ばねの硬さ」)を規定することが比較的困難である。それに対して、本項に記載の態様は、設定された範囲の弾性力の変化の度合い、例えば、設定された範囲の弾性力の変化量、言い換えれば、「設定された範囲のばねレート」でばね特性を規定する態様であり、比較的容易にガススプリング機構のばね特性を規定することができる。設定された範囲は、例えば、停車時の車輪と車体との離間距離(基準となる離間距離)から設定量変位した2点間の範囲とすることができる。具体的には、例えば、停車時の車輪と車体との離間距離(基準となる離間距離)となる状態(ストローク量が0)と、離間距離が設定量になる状態との2点間の範囲とすることができる。
(13)前記ガススプリング制御装置が、
前記基準となる離間距離の目標値と前記ばね特性の目標値とに基づいて、前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々について、ガスの充填量を推定することが可能な物理量である充填量推定物理量の目標値を決定する目標充填量推定物理量決定部を備えた(11)項または(12)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の充填量推定物理量は、例えば、ガス室の圧力,圧力と容積との積を示す値,圧力と容積との積を温度で除したものを示す値等とすることができる。充填量推定物理量の目標値を決定することにより、測定によって得られた充填量推定物理量が目標値に近づくように、ガス室にガスを供給,あるいはガスを排出させて、基準となる離間距離およびばね特性を目標値に近づけることができる。
(14)前記ガススプリング制御装置が、前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々の前記充填量推定物理量が、それら各々の前記充填量推定物理量の目標値に近づくように前記ガス給排気装置を制御する充填量推定物理量依拠制御部を備えた(13)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、例えば、ガス室内のガスの圧力等の測定値に基づいて充填量推定物理量を取得し、その取得された充填量推定物理量が目標値に近づくようにガスの充填量を調節する態様である。
(15)前記目標充填量推定物理量決定部が、前記充填量推定物理量の目標値として前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々の圧力と容積との積を示す物理量の目標値を取得するものである(13)項または(14)項に記載のサスペンション装置。
2つのガス室の各々の圧力,容積は互いに密接に関連しており、例えば、一方のガス室の圧力の変化により、双方のガス室の容積および他方のガス室の圧力が変化する。そういった場合であっても、ガス室内のガスの充填量推定物理量を圧力と容積との積とすることにより、ガスの充填量の過不足をより正確に判別することができ、ガススプリング機構の制御が容易になる。
(21)当該サスペンション装置が、
4つの車輪の各々に対応する前記ガススプリング機構を4つ備えた車両に設けられ、それら4つの前記ガススプリング機構のうちの1つの前記ガススプリング機構である特定ガススプリング機構を備えるものであり、
前記ガススプリング制御装置が、
前記特定ガススプリング機構とそれの対角に位置する前記ガススプリング機構との少なくとも一方の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を減少させ、前記特定ガススプリング機構に隣り合う2つの前記ガススプリング機構の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させる支持荷重目標値変更部を備えるとともに、
前記目標充填量推定物理量決定部により、支持荷重の目標値に基づいて前記特定ガススプリング機構の前記第1ガス室と前記第2ガス室との充填量推定物理量を決定するように構成された(13)項ないし(15)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
第1ガス室と第2ガス室との充填量推定物理量の目標値を目標充填量推定物理量決定部によって決定する際に、ガススプリング機構の支持荷重を設定することができる。そこで、本項に記載の態様は、支持荷重の目標値を変更することにより、ガススプリング機構が車体を支持する際の負担を変化させるものである。そして、例えば、空気圧が低下した車輪等に対応するガススプリング機構、ガス漏れが生じる等の異常が発生したガススプリング機構等の支持荷重を減少させることができる。
4つのガススプリング機構のうちのいずれかのものの支持荷重を減少させるためには、支持荷重を減少させようとするガススプリング機構とそれの対角に位置するガススプリング機構の支持荷重の目標値を減少させ、支持荷重を減少させようとするガススプリング機構に隣り合う2つのガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させることが望ましい。すなわち、本項に記載の態様において、特定ガススプリング機構とそれの対角に位置するガススプリング機構との少なくとも一方の支持荷重を減少させようとする場合には、特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を減少させることができる。また、特定ガススプリング機構に隣り合う2つのガススプリング機構の少なくとも一方の支持荷重を減少させようとする場合には、特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させることができる。なお、特定ガススプリング機構は、4つのガススプリング機構のうちの任意の1つのものとすることができる。
以上のように、支持荷重目標値が変更されると、例えば、目標充填量推定物理量決定部により、支持荷重目標値,車高目標値,および,ばねレート目標値に基づいて第1ガス室および第2ガス室の前記充填量推定物理量の目標値を決定することができる。そして、例えば、前記充填量推定物理量依拠制御部によりガス給排気装置を制御することによりガスの充填量を変更して特定ガススプリング機構の支持荷重を変更することができる。なお、特定ガススプリング機構以外のガススプリング機構も、本項の特定ガススプリング機構と同様に支持荷重の目標値が決定され、ガスの充填量が変更されることが望ましい。
また、本項のガススプリング機構は、車高やばねレートを目標値と等しくすることができるため、例えば、空気圧が低下した車輪と車体との離間距離を増加させて空気圧の低下による車体の姿勢変化を抑制しつつ、その車輪の荷重を減少させることができる。なお、支持荷重目標値の増減量は、例えば、支持荷重目標値の増加量と減少量とを等しくする等、4つのガススプリング機構全体で0になるようにされることが望ましい。また、ロール方向、ピッチ方向のモーメントが釣り合うようにされることが望ましい。なお、本項に記載の態様が、車輪と車体との接近に応じて変形させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる「ばね部材」を備えている場合には、ばね部材の設定範囲のばねレートを考慮して支持荷重目標値,ばね特性目標値等を決定することができる。また、後述する態様についても同様である。
(22)前記特定ガススプリング機構のばね特性が、設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に対する前記ガススプリング機構が発生する弾性力の変化の度合いで規定されるものであり、
前記ガススプリング制御装置が、前記ガススプリング機構のばね特性の目標値として、前記弾性力の変化の度合いの目標値であるばね特性目標値を決定するばね特性目標値決定部を備え、
そのばね特性目標値決定部が、前記特定ガススプリング機構とそれの対角に位置するものとの少なくとも一方の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の前記弾性力の変化の度合いが低下しないように前記ばね特性目標値を決定する支持荷重低減時決定部を備えた(21)項に記載のサスペンション装置。
特定のエアスプリングの支持荷重を変化させることは、従来の離間力発生ガス室だけ有するエアスプリングでも可能である。例えば、特定のエアスプリングに隣り合う2つのエアスプリング(左右に隣り合うものと前後に隣り合うもの)のエア充填量を増加させることによって、特定のエアスプリングの支持荷重を減少させることができる。しかしながら、支持荷重の制御とともに、特定のエアスプリングやその他のエアスプリングの弾性力の変化の度合いを制御することは困難である。
それに対して、本項に記載の態様によれば、充填量推定物理量の目標値を決定する際に、弾性力の変化の度合いを適切にすべく、ばね特性目標値を決定することができる。例えば、ガスの充填量を変更した後に弾性力の変化の度合いが変化しないようにすることができる。そのため、例えば、支持荷重変更時にいずれかのエアスプリングの弾性力の変化の度合いが低下して車体が姿勢変化し易くなることを抑制すること等が可能である。また、車輪が有するタイヤのガス圧力(例えば、空気圧)が低下した場合には、そのタイヤのばね定数が小さくなる。そこで、本項に記載の態様によれば、ガス圧力が低下した車輪に対応するガススプリング機構のばねレートを大きくすることにより、タイヤのばね定数の低下の影響を低減することができる。
(23)前記支持荷重目標値変更部が、
前記特定ガススプリング機構に対応する車輪とそれの対角に位置する前記ガススプリング機構に対応する車輪との少なくとも一方が、車体を支持する能力が低下した状態である支持能力低下状態である場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を減少させ、
前記特定ガススプリング機構に隣り合う2つの前記ガススプリング機構の各々に対応する車輪の少なくとも一方が、支持能力低下状態である場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させるように構成された(21)項または(22)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、車輪が支持能力低下状態である場合、例えば、タイヤの空気圧の低下(パンクを含む等によって対応輪の車体を支持する能力が低下した場合に、その車輪に対応するガススプリング機構の支持荷重を減少させるものである。そして、特定ガススプリング機構に対応する車輪等が支持能力低下状態である場合には、特定ガススプリング機構の支持荷重を低減することができる。一方、特定ガススプリング機構に隣り合う2つのガススプリング機構の各々に対応する車輪の少なくとも一方が、支持能力低下状態である場合には、特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させることによって、2つのガススプリング機構の支持荷重を減少させることができる。
(24)前記ガススプリング制御装置が、前記ガススプリング機構のばね特性の目標値として、前記弾性力の変化の度合いの目標値であるばね特性目標値を決定するばね特性目標値決定部を備えた(12)項ないし(23)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、設定された範囲の弾性力の変化の度合い、言い換えれば、「設定範囲のばねレート(以後、単に「ばねレート」と略記する場合がある)」でばね特性を規定する態様である。本項に記載の態様によれば、例えば、ばね特性目標値、言い換えれば、ばねレート目標値を状況に応じて適切に決定し、ガス給排気装置を制御することによって、ガススプリング機構のばねレートを適切な大きさにすることができる。ばねレート目標値は、例えば、後述するように、車速、支持荷重、固有振動数等に基づいて決定することができる。また、後述する態様でも同様であるが、ばねレート目標値の決定は、例えば、設定された条件が満たされた場合に行うことや、設定された時間毎に行うこと等ができる。そして、ばねレート目標値が決定されれば、ガススプリング制御装置によってガス給排気装置を制御して、ガススプリング機構のばねレートを変更することができる。
なお、本項に記載の態様が、車輪と車体との接近に応じて変形させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる「ばね部材」を備えている場合には、ばね部材の設定範囲のばねレートを考慮してガススプリング機構のばね特性目標値を決定することができる。また、後述する態様についても同様である。
(25)前記ばね特性目標値決定部が、
前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を、車速に基づいて決定する車速依拠決定部を備えた(24)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、例えば、ばね特性目標値を運転者が設定した車速に応じた大きさにすることや、車速の増加に応じてばねの硬さを硬くすること、つまり、ばねレートを段階的、あるいは無段階的に大きくすることができる。また、例えば、車速の増加に応じてばね上の固有振動数を増加させることもできる。
(26)前記ばね特性目標値決定部が、
前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を、そのガススプリング機構が支持する荷重の目標値である支持荷重目標値に基づいて決定する支持荷重依拠決定部を備えた(24)項または(25)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、例えば、支持荷重目標値の増加に応じて、ばねレート目標値を大きくすること等ができる。また、例えば、後述のように、乗車人数が増減してもばね上固有振動数が変化しないようにすることもできる。支持荷重目標値は、例えば、運転者が設定した値とすることや、後述するように、ガススプリング機構のガス室の圧力に基づいて取得された支持荷重とすることや、複数の車輪の支持荷重を増減させる際に設定される値とすること等ができる。本項に記載の態様は、例えば、支持荷重目標値決定部を備えるものとすることができる。なお、本項のサスペンション装置が、ばね部材を備えている場合には、ばね部材の支持荷重とガススプリング機構の支持荷重とを合わせたものが、サスペンション装置の支持荷重となる。そして、支持荷重目標値を決定する際に、ばね部材の支持荷重を考慮することができる。
(27)前記ばね特性目標値決定部が、
前記ガススプリング機構が支持する車体の部分のばね上固有振動数が目標値になるように、前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を決定する固有振動数依拠決定部を備えた(24)項ないし(26)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、例えば、ばね上固有振動数の目標値を、運転者が設定した値、車速に応じた値等とすることができる。そのため、例えば、乗員数の増減等により支持荷重が変化した場合でも、ばね上固有振動数を一定の値にすることができる。
(28)前記ガススプリング機構が、
車両の互いに隣り合う前輪と後輪との一方と、車体とを弾性的に連結するものであり、
前記ばね特性目標値決定部が、
前輪側のばね上固有振動の周期と後輪側のばね上固有振動の周期との差を、走行時の車両が前後輪の軸間距離だけ移動する際の時間と等しくさせるべく、前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を決定する固有振動周期差依拠決定部を備えた(24)項ないし(27)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、例えば、路面の凹凸を通過する際の乗り心地を向上させることができる。具体的に説明する。路面の凹凸を前輪が通過してから後輪が通過するまでには、若干のタイムラグが生じる。その一方で、例えば、路面の凹凸を通過した際の車体の前輪側の部分の上下振動と、後輪側の部分の上下振動とが、1周期後に一致すれば余分なピッチング動が発生しにくく、乗り心地を向上させることができる。車体の前輪側の部分の上下振動の周期、つまり、前輪側のばね上固有振動の周期は、車体の前輪側の部分のばね上固有振動数の逆数となる。同様に、後輪側のばね上固有振動の周期は、車体の後輪側の部分のばね上固有振動数の逆数となる。そして、上記タイムラグの分だけ後輪側の固有振動の周期が短くなるように、ばねレート目標値を決定することにより、前後の上下振動を1周期後に一致させ、乗り心地を向上させることができる。なお、上記タイムラグは、車速によって異なる大きさとなるが、例えば、運転者が設定した車速において、あるいは走行中に取得された車速において、上記前後の周期差がタイムラグと一致するようにばねレート目標値を決定することができる。
(29)前記ばね特性目標値決定部が、
車輪内のガス圧力を推定することが可能な車輪圧力推定情報に基づいて、車輪内のガス圧力が低下した場合に、前記弾性力の変化の度合いが大きくなるように前記ばね特性目標値を決定する車輪ガス圧力依拠決定部を備えた(24)項ないし(28)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
車輪が有するタイヤのガス圧力(例えば、空気圧)が低下した場合には、そのタイヤのばね定数が小さくなる。そこで、本項に記載の態様によれば、ガススプリング機構のばねレートを大きくすることにより、タイヤのばね定数の低下の影響を低減することができる。
(30)前記ガススプリング制御装置が、
前記第1ガス室の圧力と前記第2ガス室の圧力とを推定することが可能なガス室圧力情報に基づいて、車体から前記ガススプリング機構に加わる荷重を取得する支持荷重取得部を備えた(11)項ないし(29)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、例えば、圧力センサによって検出された第1ガス室の圧力と第2ガス室の圧力とをガス室圧力情報として取得することができる。それら第1ガス室の圧力と第2ガス室の圧力とを、例えば、それぞれピストンの第1ガス室側の面積、第2ガス室側の面積に乗じた値の差を演算することにより、ガススプリング機構が支持する支持荷重を取得することができる。その取得された支持荷重を、例えば、上記支持荷重目標値とすることができる。なお、車体を支持する「ばね部材」を備えている場合には、ガススプリング機構の支持荷重とばね部材の支持荷重とを合わせたものが、サスペンション装置が車体の部分を支持する荷重となる。
(31)前記ガススプリング制御装置が、
車体と車輪との基準となる離間距離の目標値を決定する離間距離目標値決定部を備えた(11)項ないし(30)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、例えば、基準となる離間距離(車高)の目標値を、ばねレート目標値変更前と同じ値にすることができる。その場合には、車高を変えずにばねレートを変更することができる。また、例えば、車速の増加に応じて車高を低下させる等、ばねレートを変えずに車高のみを変更することや、車高をばねレートとともに変更することもできる。
(41)当該サスペンション装置が、
前記第1ガス室と前記第2ガス室との一方から他方へ、ガスを移動させるガス移動装置を備えた(1)項ないし(31)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
車高調整(車輪と車体との基準となる離間距離の調整)をする際に、例えば、大気を吸入して第1,第2ガス室のガス充填量を増加させ、第1,第2ガス室のガスを大気に排出してガスの充填量を減少させることもできる。しかしながら、迅速に大気ガスを吸入してガス室に供給するためには、ガス給排気装置の能力(例えば、ポンプ,コンプレッサ等の能力)を大きくすることが望ましく、ガス給排気装置のサイズやコストが増加することとなる。また、ガス給排気装置がドライヤ等の水分除去器を備えている場合には、ドライヤが吸着した水分を除去しながら第1,第2ガス室のガスを大気に放出する場合があり、ドライヤの抵抗によって迅速にガス充填量を減少させることができない場合がある。
それに対して、本項に記載のガス移動装置によれば、第1ガス室と第2ガス室との間でガスを移動させることができ、素速い車高調整が可能となる。具体的には、例えば、乗員の乗降時に素速く車高を低下させて乗降を容易にし、その後素速く車高を上昇させて走行を開始することができる。また、例えば、車両の入庫・出庫時等に比較的大きな段差を乗り越える必要がある場合には、車体が段差に接触することなく乗り越えることができるように素速く車高を上昇させ、段差を乗り越えた後には素速く車高を元に戻すこと等が可能となる。なお、第1ガス室と第2ガス室との間でガスを移動させることにより、ドライヤ等によって水分を除去する必要が無くなる場合には、ドライヤの負担を低減することができる。本項に記載の態様は、ガス移動装置を制御することによって、車輪と車体との基準となる離間距離を任意に変更可能とするガス移動制御装置を備えるものとすることができる。
(42)当該サスペンション装置が、
ガスを吸引する吸入部とガスを吐出する吐出部とを有して、前記吸入部から吸入したガスを前記吐出部から吐出するポンプと、
前記吸入部と前記吐出部との一方を前記第1ガス室と前記第2ガス室との一方に連通させるとともに、前記吸入部と前記吐出部との他方を前記第1ガス室と前記第2ガス室との他方に連通させるガス移動状態と、前記吸入部と前記吐出部との各々と、前記第1ガス室と前記第2ガス室との各々との連通が遮断された状態であるガス移動禁止状態とを切り換える連通切換器と
を含んで構成されるガス移動装置を備えた(1)項ないし(41)項のいずれかに記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様は、上記(41)項に記載のガス移動装置の具体的構成を明らかにしたものである。したがって、上記(41)項に記載のガス移動装置と同様の作用効果を奏する。
(43)前記ガス移動装置が、
前記ポンプの前記吸入部と前記連通切換器とを接続する吸入側ガス通路と大気とを連通させる大気連通路に配設されて大気から吸入されるガスの水分を除去する水分除去器と、
前記大気連通路に配設されて前記吸入側ガス通路と大気との連通の有無を切り換える大気連通切換器と
を含んで構成された大気ガス吸入排出装置を備えた(42)項に記載のサスペンション装置。
本項に記載の態様によれば、ガスの移動、大気ガスの吸入、大気へのガスの放出を行うことができる。そして、第1,第2ガス室間でガスを移動させる場合には、ガスを水分除去器に通す必要が無いため、素速くガスを移動させることができる。また、大気からガスを吸入する場合には、水分除去器によって大気ガス中の水分を除去することができる。さらに、第1,第2空気室のガスを大気に排気する際に、水分除去器に蓄積された水分を大気に放出することもできる。本項に記載のガス移動装置は、ガス給排気装置と同様に機能させることができる。すなわち、本項に記載のガス移動装置は、(8)項ないし(10)項のいずれかに記載のガス給排気装置と同様に機能させることができる。また、(11)項ないし(31)項のいずれかに記載のガススプリング制御装置によって、本項に記載のガス移動装置を制御し、ガス吸排気装置と同様に機能させることができる。
(44)車両に設けられた4つの車輪の各々と対応するサスペンション装置を4つ備えたサスペンションシステムであって、
それら4つのサスペンション装置の各々が、
車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる第1ガス室と、
車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力を発生させる第2ガス室とを含んで構成されるとともに、
前記第1ガス室および前記第2ガス室内に充填されたガスを圧縮して弾性力を発生させることにより、自身が対応する車輪と車体とを弾性的に連結するガススプリング機構を備えたことを特徴とするサスペンションシステム。
本項に記載のサスペンションシステムは、上記(1)項に記載のサスペンション装置を4つ備えた態様である。本項に記載のサスペンション装置には、上記(2)項〜(43)項のいずれかに記載の態様の特徴を採用することができる。
以下、請求可能発明のいくつかの実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、決して下記の実施例に限定されるものではなく、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
1. 第1実施例.
1.1. サスペンションシステムの概要.
図1に、請求可能発明の一実施例であるサスペンション装置を備えたサスペンションシステム10を概念的に示す。本サスペンションシステム10は、車輪14毎に設けられたサスペンション装置20を備えている。そのサスペンション装置20は、車輪14を車体24に対して接近・離間可能に保持する車輪保持装置26と、車体24と車輪保持装置26との間に設けられて弾性力,減衰力を発生しつつ伸縮する弾性伸縮装置30とを備えている。また、サスペンション装置20は、本実施例において、2つの空気室(ガス室の一種である)を備えたエアサスペンション装置とされており、さらに、本サスペンションシステム10は、複数のサスペンション装置20に空気を供給し、あるいは空気の排出を行うエア給排気装置31を備えている。
1.2. 弾性伸縮装置.
図2に、弾性伸縮装置30の断面を示す。弾性伸縮装置30は、概して円筒形をなして車体24に連結されたシリンダハウジング32と、そのシリンダハウジング32内を区画して2つの空気室を形成するピストン34と、シリンダハウジング32を貫通した状態で設けられた減衰機構たるショックアブソーバ36とを備えている。ショックアブソーバ36は、オイルが充填されたオイルシリンダ40と、そのオイルシリンダ40内から延び出したロッド42とを含んで構成されている。オイルシリンダ40内に位置するロッド42の下端部にはオリフィス付のピストン(図示省略)が取り付けられており、ショックアブソーバ36は、オイルシリンダ40とロッド42との相対移動速度、つまり、ショックアブソーバ36の伸縮速度に応じて減衰力を発生させる。ロッド42の上端部は車体24に設けられたマウントインシュレータ38に固定され、オイルシリンダ40の下端部が車輪保持装置26を介して車輪14に連結されている。すなわち、ショックアブソーバ36は、車輪14と車体24との接近・離間に応じて伸縮させられるのである。
ピストン34は、ロッド42を貫通させた状態でオイルシリンダ40の上端部に取り付けられており、ショックアブソーバ36の伸縮に応じて、オイルシリンダ40と一体的にシリンダハウジング32内を移動するようにされている。すなわち、本実施例において、オイルシリンダ40がピストンロッドとして機能させられているのである。そして、シリンダハウジング32内部の、ピストン34のオイルシリンダ40と反対側(図において上方)の空間に第1空気室44が、オイルシリンダ40側の空間に第2空気室46が形成されている。オイルシリンダ40は、例えば、車輪14と車体24とが接近した場合にシリンダハウジング32に対して上昇させられる。その際には、ピストン34がシリンダハウジング32に対して図において上方(車体24側)へ移動させられ、第1空気室44の容積が減少させられると同時に、第2空気室46の容積が増加させられるのである。すなわち、本実施例において、「車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる第1ガス室」が、第1空気室44を含んで構成され、「車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力を発生させる第2ガス室」が、第2空気室46を含んで構成されているのである。
シリンダハウジング32は、概して円筒形をなす円筒部材50と、その円筒部材50の一方の開口端部を塞ぐ蓋部材52とが組み付けられて形成されている。その円筒部材50は、筒状の筒部54と、穴あき円板状の底部56とを有している。その底部56には、シリンダハウジング32内部の気密性を保ちながら軸方向に移動するオイルシリンダ40(上述のように、ピストンロッドとして機能する)を貫通させるロッドシール部60が設けられている。ロッドシール部60には、適度なクリアランスを保ってオイルシリンダ40を貫通させるロッド貫通穴62が設けられている。また、ロッドシール部60のロッド貫通穴62が設けられた部分の内周部には、シール部材を配設するためのシール溝64が全周にわたって形成されている。そのシール溝64には、環状のシール部材66が配設され、シリンダハウジング32内部と外部との空気の連通が遮断されている。なお、シール溝64およびシール部材66はそれぞれ1つずつでもよいが、本実施例において、シール溝64が軸方向に複数設けられ、それぞれにシール部材66が配設されている。なお、本実施例において、シール部材66には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のOリングが用いられている。
蓋部材52は、円板状の円板部70と、その円板部70の外周部に設けられて円筒部材50の上部に外側から嵌合する環状壁部72とを有している。なお、環状壁部72と嵌合する円筒部材50の上端の外周部には、シール溝74が全周にわたって形成されるとともに、そのシール溝74に環状のシール部材76が配設されており、円筒部材50と蓋部材52とが気密に組み付けられている。
また、円板部70の中央には、ロッド42の先端部80を貫通させる貫通穴82が設けられている。ロッド42の主軸部84は、先端部80よりも径が大きくされており、貫通穴82を貫通できないようにされている。ロッド42は、先端部80が円板部70とマウントインシュレータ38に配設された軸受とを貫通した状態で、それら円板部70と軸受とがナットおよび主軸部84によって上下から挟まれるように締結されている。すなわち、円板部70は、軸受とロッド42の主軸部84とに挟まれて、軸回りの回転が許容された状態で車体24に固定されているのである。
さらにまた、円板部70の中央には環状の主軸保持部85が設けられており、その主軸保持部85にロッド42の主軸部84の端部が挿入されている。その主軸保持部85に挿入された主軸部84の端部の外周部には、シール溝86が全周にわたって形成されるとともに、そのシール溝86に環状のシール部材88が配設されており、空気室44内が気密に保たれている。主軸保持部85の外周には、環状のバンプラバー90が配設されている。そのバンプラバー90は、車輪14と車体24とが大きく接近した際にピストン34とシリンダハウジング32の底面とに挟まれて、それらが直接衝突することを防止する。
ピストン34は、高さ方向に偏平な円柱形状をなし、ピストン本体100と環状のシール部材102とを含んで構成されている。そのピストン本体100の外径は、シリンダハウジング32の内周面と適度なクリアランスを保つようにされている。また、ピストン本体100の外周部には、シール部材を配設するためのシール溝104が全周にわたって形成されている。そのシール溝104にシール部材102が配設されて、ピストン34を挟んで形成された2つの空気室の間の空気の連通が遮断されている。なお、シール部材102の材質等は上述のシール部材66と同様である。また、シール溝104およびシール部材102はそれぞれ1つずつでもよいが、本実施例において、シール溝104が軸方向に複数設けられ、それぞれにシール部材102が配設されている。
また、ピストン34には、オイルシリンダ40を取り付けるための取付部110が設けられている。本実施例において、取付部110はピストン34の中央部に設けられた雌ねじ穴112を含んで構成されており、その雌ねじ穴112にオイルシリンダ40の上端部に設けられた雄ねじ114が螺合させられて、ピストン34にオイルシリンダ40が強固に取り付けられている。その取付部110の下面とオイルシリンダ40の上面との間には、環状のシール部材116が挟まれている。ピストン34の下面には、環状のバンプラバー120が配設されている。そのバンプラバー120は、車輪14と車体24とが大きく離間した際にピストン34とシリンダハウジング32の底面とに挟まれて、それらが直接衝突することを防止する。
シリンダハウジング32の両端部の各々には、空気の供給・排出を行うための給排気口130,132が設けられている。それら給排気口130,132は、本実施例において、それぞれ蓋部材の円板部70、円筒部材50の底部56の各々に設けられた貫通穴と、その貫通穴に配設されて上下の空気室44,46の各々とエア通路とを接続するためのコネクタ134,136によって形成されている。
1.3. エア給排気装置.
エア給排気装置31は、自身が備えるモータの駆動力によって圧縮エアを吐出するコンプレッサ150,圧縮エアの水分を除去するドライヤ152,および、圧縮エアを各サスペンション装置20の上下の空気室44,46の各々に供給するためのエア供給通路154を備えている。また、エア給排気装置31は、上下の空気室44,46の各々の空気を大気に排出するためのエア排出通路156,そのエア排出通路156とドライヤ152とを接続する逆止弁157,および,ドライヤ152を介してエア排出通路156と外気との連通・遮断を切り換える大気開放バルブ158を備えている。
また、エア給排気装置31は、各サスペンション装置20の上下の空気室44,46の給排気口130,132に接続されたエア通路164a,bの各々に対して設けられた三方切換バルブ160a,bを備えている。その三方切換バルブ160a,bは、非通電状態において、エア通路164a,bと、エア供給通路154およびエア排出通路156との間の連通を遮断する常閉型の電磁弁とされている。そして、三方切換バルブ160a,bは、2つのソレノイドのいずれに通電するかによって、エア通路164a,bを、エア供給通路154とエア排出通路156とのいずれと連通させるかを切り換えることができる。具体的には、図1において、三方切換バルブ160を図面下方向に移動させることによって、エア通路164をエア供給通路154と連通させることができ、空気室44等に空気を供給することができる。逆に、三方切換バルブ160を図面上方向に移動させることによって、それぞれエア通路164をエア排出通路156と連通させることができ、空気室44等の空気を排出させることができる。なお、空気室44等の空気を排出する際には、大気開放バルブ158も開状態にされ、エア排出通路156が逆止弁157,ドライヤ152,および,大気開放バルブ158を介して外気と連通させられる。なお、本実施例において、コンプレッサ150から吐出された圧縮エアの水分がドライヤ152に吸着されるのであるが、空気室44等の空気をドライヤ152を介して排出することにより、ドライヤ152を再生すること(水分吸着能力を回復させること)ができる。
また、エア給排気装置31は高圧タンク174を備えており、その高圧タンク174に圧縮エアを蓄えることができる。その高圧タンク174は、三方切換型のタンクバルブ176を介してコンプレッサ150およびエア供給通路154と接続されている。そのタンクバルブ176は、非通電状態において、ドライヤ152とエア供給通路154とを連通させており、その状態において、コンプレッサ150に圧縮エアを吐出させることによって、ドライヤ152を介してエア供給通路154に圧縮エアを供給することができる。また、タンクバルブ176の2つのソレノイドのいずれかに通電することによって、高圧タンク174と、ドライヤ152とエア供給通路154とのいずれかとを連通させることができる。そして、ドライヤ152と高圧タンク174とが連通させられた状態において、コンプレッサ150から吐出される圧縮エアが高圧タンク174に収容される一方、高圧タンク174とエア供給通路154とが連通させられた状態において、高圧タンク174に収容された圧縮エアがエア供給通路154に供給される。なお、タンクバルブ176の作動によって高圧タンク174とエア供給通路154とが連通させられた状態において、三方切換バルブ160a,bを作動させて空気室44と空気室46との少なくとも一方に高圧タンク174内の圧縮エアを供給することができる。また、空気室44と空気室46とのいずれか一方だけに高圧タンク174内の圧縮エアが供給される場合には、空気室44と空気室46との他方(圧縮エアが供給されていない方の空気室)に対応する三方切換バルブ160a,bのいずれかを作動させて空気室44と空気室46との他方をエア排出通路156と連通させることにより、空気室44と空気室46との一方に圧縮エアを供給すると同時に、空気室44と空気室46との他方の空気を逆止弁157,ドライヤ152を介して排出することができる。
エア給排気装置31には、圧力センサ180a,b、182が設けられている。圧力センサ180a,bの各々によって、エア通路164a,bを介して上下の空気室44,46の圧力を取得することができる。また、圧力センサ182によって高圧タンク174内の圧力を取得することができる。
1.4. ストロークセンサ.
各サスペンション装置20には、車輪14と車体24との離間距離を検出するためのストロークセンサ190が設けられている。そのストロークセンサ190は、回転アーム192を備え、その回転アーム192の回転位置に応じて出力される抵抗値が変化する抵抗式のセンサである。4つのストロークセンサ190は、それぞれが各車輪14FR,FL,RR,RLに対応して配設されており、それらの各々の本体部が車体に固定されるとともに、回転アーム192が車輪保持装置26に連結されている。その回転アーム192は、各車輪14の車体に対する接近離間に応じて回動する車輪保持装置26の部分によって回転させられることにより、各車輪14と車体24との離間距離に応じた抵抗値を出力する。それらストロークセンサ190の出力値に基づいて、停車時における各車輪14に対応する車体の部分の車高(つまり、基準離間距離)を取得することができる。
1.5. サスペンション装置の基準離間距離(車高)とばね特性.
本実施例のサスペンション装置20は、第1空気室44と第2空気室46とによって、車輪14と車体24とを離間させる向きの弾性力である「離間力」と車輪14と車体24とを接近させる向きの弾性力である「接近力」とを発生させ、それら離間力と接近力との合力をばね荷重として車体に作用させて、その車体を支持するものである。そのばね荷重は、車輪14と車体24との接近・離間に応じて上下の空気室44,46の容積が増減することによって変化する。その際には、第1空気室44と第2空気室46との一方の容積が増加するのに連動して他方の容積が減少するようにされている。このようなサスペンション装置20において、エア給排気装置31によって上下の空気室44,46の空気充填量を変更することにより、車高やばね特性を変更することができる。
本実施例において、車高は、停車時における車輪14と車体24との離間距離、つまり、基準離間距離によって規定されている。具体的には、例えば、基準離間距離が増加すれば車高は高くなり、基準離間距離が減少すれば車高が低くなる。そして、サスペンション装置20(詳しくは、弾性伸縮装置30)が発生させる弾性力であるばね荷重は、離間距離の減少に伴い増加し、離間距離の増加に伴い減少するのであるが、停車時に支持すべき車体から受ける荷重である車体支持荷重と同じ大きさのばね荷重を発生させる離間距離が、基準離間距離となるのである。具体的には、例えば、空気室44,46の空気充填量を変更することにより、離間距離が比較的大きい状態で、サスペンション装置20が車体支持荷重と同じばね荷重を発生させるようにした場合には車高が高くなる。なお、本実施例において、基準離間距離を基準とした車輪14と車体24との接近・離間量がストローク量とされ、車輪14と車体24との離間距離が基準離間距離となる状態ではストローク量が0となる。また、車輪14と車体24との離間距離が基準離間距離よりも小さくなるストロークは、バウンド側のストロークとされ、そのストローク量は正の値とされる。さらに、車輪14と車体24との離間距離が基準離間距離よりも大きくなるストロークは、リバウンド側のストロークとされ、そのストローク量は負の値とされる。
車高を変更するために空気室44,46の空気充填量を変更すると、車高だけでなくサスペンション装置20のばね特性も変化することとなる。また、ばね特性を変更するために空気充填量を変化させると、車高が変化する場合が多い。そのため、空気充填量を変更する際には車高とばね特性との両者を考慮することが望ましい。ここで、ばね特性について説明する前に、以下に、本サスペンション装置20,従来のエアサスペンション装置等のばね荷重特性について言及する。なお、本実施例において、ばね荷重特性は、サスペンション装置20が受ける荷重の大きさと、車輪14と車体24との離間距離(あるいは、ストローク量)との関係で表される。そのばね荷重特性は、本質的には、例えば、弾性体の変形量と弾性力の大きさとの関係を示していると言える。そして、例えば、弾性体の変形量が離間距離に換算され、弾性力の大きさがサスペンション装置20に加えた荷重によって表されていると言える。
まず、従来型のサスペンション装置(以後、「従来型エアサス」と略記する場合がある)のばね荷重特性について説明する。図3に、従来型エアサスのばね荷重特性を実線で、従来のコイルばねを用いたサスペンション装置(以後、「コイル型サス」と略記する場合がある)のばね荷重特性を破線で示す。コイル型サスのばね荷重特性がバウンド側とリバウンド側が対称であるのに対して、従来型エアサスのばね荷重特性は非対称となる。そして、従来型エアサスのばね荷重特性は、同じ離間距離差であっても、バウンド側へストロークした際のばね荷重の変化が、リバウンド側へストロークした際のばね荷重の変化よりも大きくなるという特徴がある。そして、旋回時に車体がロールすることによる旋回外輪側の荷重増加量と旋回内輪側の荷重減少量とが同じであるとすると、旋回外輪側の荷重増加によるバウンド側へのストローク量Bよりも、旋回内輪側の荷重減少によるリバウンド側へのストローク量Rの方が大きくなりやすい。すなわち、旋回外輪側の車体が比較的下降しにくく、旋回内輪側の車体が比較的上昇しやすいため、旋回時に車体の重心が上昇し易い(ジャッキアップし易い)のである。
次に、本実施例のサスペンション装置20のばね荷重特性について説明する。図4に、サスペンション装置20のばね荷重特性を実線で、従来型エアサスのばね荷重特性を二点鎖線で示す。本実施例のサスペンション装置20のばね荷重特性は、従来型エアサスに比べて、リバウンド側にストロークした際にばね荷重が減少し易いことが分かる。それは、従来型エアサスが、車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力である離間力を発生させる離間力発生空気室(前記「第1ガス室」に相当する)しか備えていないのに対して、本実施例のサスペンション装置20は、上記離間力発生空気室(本実施例において、「第1空気室44」)に加えて、車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力である接近力を発生させる接近力発生空気室(前記「第2ガス室」に相当する)を備えているためである。その接近力発生空気室(本実施例において、「第2空気室46」)は、リバウンド側へのストローク量が大きくなるほど大きな接近力を発生させて、離間力発生空気室が発生させる離間力の影響を減少させるようにされている。そのため、本実施例のサスペンション装置20は、例えば、旋回時等に旋回内輪のリバウンド側へのストローク量Rを従来型エアサスと比較して減少させることができ、旋回時の車体重心の上昇を抑制することができるのである。
ここで、本実施例のサスペンション装置20のばね特性について説明する。本サスペンション装置20のばね荷重特性は非線形であるため、その接線の傾きがストローク量,あるいは離間距離によって異なる。そこで、設定されたストローク量における接線の傾き、あるいは設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に応じてサスペンション装置20が発生するばね荷重の変化の度合いを、そのばね特性(例えば、ばねの硬さ)とすることが簡便である。本実施例において、ばね特性は、設定された範囲内のストローク量の変化に対するばね荷重の変化の度合いとされる。具体的には、設定された2点間のばね荷重の変化量、例えば、ストローク量が第1設定値から第2設定値に変化した際のばね荷重の変化量、すなわち、本実施例のばね特性は、設定された範囲内のばねレート(以後、設定された範囲内のばねレートを、単に「ばねレート」と称する場合がある)とされるのである。
本サスペンション装置20は、上下の空気室44,46の空気充填量を変更することにより、車高とばねレートとの両方を調節することができる。例えば、本サスペンション装置20は、車高を変えずにばねレートを変更することや、ばねレートを変化させずに車高を変更することが可能である。図5に、標準のばね荷重特性を実線Aで、標準のばね荷重特性と同じ車高を保ちつつ比較的ばねレートが大きくされたばね荷重特性を破線Bで、標準のばね荷重特性のばねレートの変化を抑制しながら車高を高くしたばね荷重特性を二点鎖線Cで示す。ばねレートが高くされたばね荷重特性では、離間距離の変化に応じたばね荷重の変化量が比較的大きくなる。車高を高くしたばね荷重特性は、他のばね荷重特性と比較して離間距離が大きい状態(つまり、車高が高い状態)で車体を支持するための荷重である車体支持荷重と同じ大きさのばね荷重を発生させることができる。なお、この図において、グラフの横軸は、離間距離であるので、A,B,Cそれぞれのばね荷重が車体支持荷重と同じ大きさになる離間距離が基準離間距離であり、その基準離間距離においてストローク量が0となる。また、Y軸は、離間距離が標準の特性Aの基準離間距離となる位置に表示されている。さらに、この図において、標準の特性Aと車高を高くされた特性Cとは、基準離間距離からバウンド側に設定量ストロークした場合の離間距離までの範囲において、ばねレートが互いに等しくなるようにされている。
車高とばねレートとを適切に変更するためには、上下の空気室44,46の空気充填量を適切に調節することが必要となる。そのため、本実施例において、空気室の空気充填量を推測することが可能な物理量である空気充填量推定物理量として、空気室44,46の圧力(P)と容積(V)との積の大きさを示す値である「PV値」が採用されている。すなわち、PV値の目標となる目標PV値を求め、さらに、圧力センサ180の検出信号に基づいて取得された圧力測定値Pmと、ストロークセンサ190の検出信号に基づいて取得された離間距離測定値に基づいて取得された容積算出値Vmとの積の大きさを示す算出PV値が、目標PV値に近づくように空気充填量を調節することによって、車高とばねレートとを適切に変更することができるのである。
図6に、弾性伸縮装置30を模式的に示し、目標PV値の取得方法の一例について説明する。離間距離が基準離間距離となる際(停車時)の上下の空気室の各々の圧力をPa,Pb、容積をVa,Vbとする。また、上下の空気室の各々の断面積をSa,Sb、全長をL+D、ピストンの厚さをDとし、第1空気室44の長さをX、第2空気室46の長さをL−Xとする。このようなモデルにおいて、上下室44,46の容積は、
Va=Sa・X ; Vb=Sb(L−X) ・・・〔1−1〕,〔1−2〕
となる。
この図において、二点鎖線で示すピストン34は、元の位置からΔX1移動したことを示している。なお、ピストン34が上方へ移動する際にはΔX1の値が正となり、下方に移動する際にはΔX1の値が負になるものとする。ピストン34がΔX1移動した際の上下の空気室44,46の容積は、
Va1=Sa(X−ΔX1) ; Vb1=Sb(L−X+ΔX1)
となる。その際の圧力は、Pa・Va=Pa1・Va1の関係より、
Pa1=Pa・Va/Va1=Pa・X/(X−ΔX1)
同様にして、
Pb1=Pb・Vb/Vb1=Pb(L−X)/(L−X+ΔX1)
ここで、ピストン34がΔX2移動した際の上下の空気室44,46の圧力も求めると、
Pa2=Pa・X/(X−ΔX2)
Pb2=Pb(L−X)/(L−X+ΔX2)
となる。
ピストン34が、ΔX1からΔX2まで移動した際の圧力の変化dPa,dPbは、
dPa=Pa2−Pa1
=Pa・X(ΔX2−ΔX1)/{(X−ΔX1)(X−ΔX2)}
・・・〔1−3〕
dPb=Pb2−Pb1
=Pb(L−X)(ΔX1−ΔX2)/
{(L−X+ΔX1)(L−X+ΔX2)} ・・・〔1−4〕
なお、式を見やすくするために、式〔1−3〕において、(X−ΔX1)(X−ΔX2)をαとおき、式〔1−4〕において、(L−X+ΔX1)(L−X+ΔX2)をβとおく。
dPa=Pa・X(ΔX2−ΔX1)/α ・・・〔1−5〕
dPb=Pb・(L−X)(ΔX1−ΔX2)/β ・・・〔1−6〕
ここで、ピストン34が実線で示す位置に位置する場合に弾性伸縮装置30が発生させるばね荷重Fhは、
Fh=Sa・Pa−Sb・Pb ・・・〔1−7〕
によって求められる。この式を変形して、
Pb=(Sa・Pa−Fh)/Sb ・・・〔1−8〕
ピストン34が、ΔX1からΔX2まで移動した際のばね荷重の変化量は、
ΔF=Sa・dPa−Sb・dPb
=Sa・Pa・X(ΔX2−ΔX1)/α−
Sb・Pb(L−X)(ΔX1−ΔX2)/β ・・・〔1−9〕
この式〔1−9〕に、式〔1−8〕を代入して整理すると
ΔF=Sa・Pa・X(ΔX2−ΔX1)/α−
{Sb・(Sa・Pa−Fh)/Sb}{(L−X)(ΔX1−ΔX2)/β} =(ΔX2−ΔX1){Sa・Pa・β・X+
α(Sa・Pa−Fh)(L−X)}/(α・β) ・・・〔1−10〕
この式〔1−10〕を変形して、
Pa=α{(β・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)+Fh(L−X)}/
[Sa{β・X+α(L−X)}] ・・・〔1−11〕
式〔1−11〕を式〔1−8〕に代入すれば、
Pb=β{(α・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)−Fh・X}/
[Sb{β・X+α(L−X)}] ・・・〔1−12〕
従って、上下の空気室44,46の各々のPV値は、
Pa・Va=α・X{(β・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)+Fh(L−X)}
/{β・X+α(L−X)} ・・・〔1−13〕
Pb・Vb=β(L−X){(α・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)−Fh・X}
/{β・X+α(L−X)} ・・・〔1−14〕
となる。
式〔1−13〕、式〔1−14〕の右辺において、Xは車高に基づいて決定され、ΔX1,ΔX2はばねレートを定める設定された範囲に基づいて決定され、ΔFはばねレートに基づいて決定される。また、それら以外の値(L,Sa等)は既知である。なお、Fhは車体を支持する荷重となるので、予め設定することができ、あるいは、停車時に取得された上下の空気室44,46の圧力測定値Pma,Pmbを、それぞれ式〔1−7〕のPa,Pbに代入することによってFhを算出することもできる。したがって、車高およびばねレートをどのように変更するかを決定すれば、上下の空気室44,46の各々のPV値の目標値が求められることとなる。
なお、ばねレートを定める範囲は特に制限されないが、停車時の離間距離である基準離間距離(ストローク量が0)を含むように設定することが望ましい。具体的には、例えば、ΔX1とΔX2との一方を正の値にするとともに他方を負の値にすることや、ΔX1とΔX2とのいずれか一方を0にすることが望ましい。ストローク量が0付近の範囲は、比較的使用される頻度が高い範囲であるからである。なお、先に示した図5において、標準の特性Aと車高が高くされた特性Cとは、ΔX1が0、ΔX2が設定値a(a>0)とされた場合の2点間においてばね荷重の変化量ΔFが等しくなるようにされている。
ここで、シール部材102の影響について言及する。前述したように、ピストン34にはシール部材102が配設されている。そのシール部材102は、本実施例において、差圧が比較的大きい状態では、その差圧の緊迫力によって軸方向に圧縮されて外径が増加するように変形しようとするものとされている。そのため、車輪14と車体24との接近・離間量、つまり、図7に示すようにストローク量が比較的大きい状態においてシール部材102とシリンダハウジング32の内周面との摩擦抵抗が比較的大きくなる。そのような摩擦抵抗によって、車輪14と車体24との過剰な接近・離間を抑制する効果、あるいは比較的大きな振動を減衰させるといった効果が得られる。なお、このようなシール部材102の特性は、リバウンド時の離間力の影響を減少させるために必須の要素ではない。
1.6. 制御装置.
本サスペンションシステム10は、図8に示すように、エア給排気装置31の作動を制御する制御装置である電子制御ユニット200(以下、単に「ECU200」という場合がある)を備えている。そのECU200は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されており、ECU200には、上記圧力センサ180a,b(図1では、それぞれ「Pa」,「Pb」と表示されている)、圧力センサ182、ストロークセンサ190、運転者が車高を選択するための車高調整スイッチ210、運転者がばね荷重特性を選択するためのばねレート選択スイッチ212、および、車高・ばねレート調整を開始するためのスイッチである調整開始スイッチ214が接続されている。また、ECU200には、駆動回路220,222が接続され、ECU200は、駆動回路220,222を介して、それぞれ各種の制御バルブ(三方切換バルブ160等)や、コンプレッサ150を作動させるものとされている。
図8は、ECU200の各種の機能部を示した機能ブロック図とされている。なお、ECU200の構成部分がこの図に示すように明確に分かれているわけではないが、ECU200の機能を理解し易くするためにこのような図とした。本実施例において、ECU200は、ROM,RAM等の記憶装置を含んで構成された「記憶部230」を備えており、その記憶部230には、後に説明する車高−ばねレート調整プログラム等のプログラム、車高−ばねレート調整に関する各種のマップ等のデータ等が記憶されている。そして、ECU200は、それら各種のプログラムをコンピュータによって実行することにより、以下に述べる各種の機能部が有する機能を発揮する構造とされている。すなわち、本実施例において、ECU200が各種プログラムや,そのサブルーチン等を実行することによって行われる処理が、それらプログラム等に対応する各種機能部によって行われる処理なのである。
ECU200は、各サスペンション装置20の上下の空気室44,46の各々の空気充填量を適切にすることにより車高とばねレートとを調節する「車高・ばねレート調節部250(充填量推定物理量依拠制御部の一種である)」を備えている。その車高・ばねレート調節部250は、前述の目標PV値を取得する「目標PV値取得部252(目標充填量推定物理量決定部の一種である)」と、圧力センサ180a,bの検出値とストロークセンサ190の検出値とに基づいて測定PV値を取得する「測定PV値取得部254」とを備えている。また、ECU200は、三方切換バルブ160等の各種のバルブを制御する「バルブ制御部260」と、圧力センサ182の検出値に基づいて前述したようにコンプレッサ150の作動を制御する「コンプレッサ制御部262」とを備えている。なお、コンプレッサ制御部262は、タンクバルブ176が非通電状態にされた状態でエア供給通路154を介して空気室44等に圧縮エアを供給する場合や、タンクバルブ176の作動により高圧タンク174とドライヤ152とが連通させられた状態で高圧タンク174に圧縮エアを供給する場合等にコンプレッサ150のモータを作動させる。なお、コンプレッサ150の作動によって、圧力センサ182の検出値に基づいて取得される高圧タンク174内の圧力が設定範囲内になるように調節される。
1.7. 車高・ばねレート調整.
車高、ばねレートの変更は、停車時等に車高選択スイッチ210とばねレート選択スイッチ212との操作によって車高とばねレートとが選択された後、調整開始スイッチ214が操作(ON)されると開始される。図9に車高−ばねレート調整プログラムのフローチャートを示し、車高−ばねレート調整について説明する。本プログラムは、1のサスペンション装置20の車高・ばねレート調整を行うものであり、本プログラムと同じ複数のプログラムが時分割で実行されて、複数のサスペンション装置20の車高・ばねレート調整が行われるようにされている。以下に、1つのサスペンション装置20の車高・ばねレート調整について、代表的に説明する。
ステップ11(以後、ステップ11を「S11」と略記し、他のステップについても同様とする)において、選択された車高とばねレートとが取得される。なお、本実施例において、車高とばねレートとの各々のレベルは、それぞれ多段階(例えば、10段階)で設定されており、それらのうちの任意の1つのレベルが選択される。S12において、目標PV値決定部252によって、車高とばねレートとを選択されたレベルに相当する状態にするための、上下の空気室44,46の各々の目標PV値a,bが取得される。目標PV値は、車高とばねレートとに応じて上下の空気室44,46の各々に対応する前述の式〔1−13〕,式〔1−14〕に基づいて得られた値が、上方空気室44用の目標PV値aマップ,下方空気室46用の目標PV値bマップとして、記憶部230に記録されている。そして、選択された車高とばねレートとに対応する上下の空気室44,46の各々の目標PV値a,目標PV値bが読み出される。なお、以後、単に目標PV値と称する場合は、目標PV値aと目標PV値bとの両方を含むものとする。
S13の判定において、三方切換バルブ160a,bの両方が閉状態である場合に、S14において、測定PV値取得部254によって測定PV値a,bが取得される。なお、三方切換バルブ160a,bの少なくとも一方が閉状態でない場合は、空気室44,46に空気が供給されているか、空気が排気されている状態であるため測定PV値を取得しないようにされているのである。測定PV値は、圧力センサ180a,bの各々の検出値に基づいて取得された上下の空気室44,46の各々の圧力と、ストロークセンサ190の検出値に基づいて取得された上下の空気室44,46の各々の容積とを乗ずることによって取得される。
S15において、上下の空気室44,46の各々の目標PV値と測定PV値との差の絶対値が、両者ともそれぞれ設定値E1,E2未満である場合は、空気充填量を調節する必要がないため本プログラムの処理が終了する。上記絶対値の各々が、設定値E1,E2よりも大きい場合には、S16において、空気室44,46の各々の空気充填量を変更する旨の指令がバルブ制御部260に送信される。具体的には、例えば、測定PV値が目標PV値よりも小さい場合は、バルブ制御部260によってタンクバルブ176と三方切換バルブ160a,bとがそれぞれ設定時間作動させられて、エア供給通路154に高圧タンク174の圧縮エアが供給されるとともに、上下の空気室44,46の各々がエア供給通路154と連通させられ、上下の空気室44,46の各々に圧縮エアが供給される。その際には、三方切換バルブ160a,bの各々が個別に開閉させられ、上下の空気室44,46の各々の空気充填量が個別に調節されるようにされている。なお、上下の空気室44,46の一方に空気を供給し、他方から空気を排出するような場合には、上下の空気室44,46の各々の空気充填量を同時に調節することができ、特に迅速に車高調整、あるいは車高およびばねレートの調整を行うことができる。
S16の空気充填量の調節が終了すると、S13の判定がYESとなり、S14において再度測定PV値が取得される。そして、S15において、測定PV値a,bの各々と目標PV値a,bの各々との差が、それぞれ設定値E1,E2未満になるまでS16の空気充填量の変更処理が繰り返される。以上に述べた処理と同様の処理が各サスペンション装置20毎に行われており、全てのサスペンション装置20の車高・ばねレート調整がなされる。
なお、本実施例において、目標PV値が、式〔1−13〕,式〔1−14〕によって得られた値に基づいて決定されていたが、予め各車高毎に圧力とばねレートとの関係を試験によって測定し、その測定結果に基づいて決定することもできる。例えば、車高を10段階のレベルから選択できるようにされている場合には、その10段階の各レベル毎に圧力とばねレートとの関係を予め測定し、マップとして記憶部230に記憶させておくのである。そして、選択された車高に基づいて取得された空気室44,46の各々の容積と、選択されたばねレートに応じてマップから読み出された圧力とを乗じて目標PV値を取得することができるのである。このような測定結果に基づく目標PV値の取得は、他の実施例についても同様に行うことができる。
本実施例において、ガスを圧縮して弾性力を発生させることによって車輪と車体とを弾性的に連結する「ガススプリング機構」が、シリンダハウジング32,ピストン34,およびオイルシリンダ40を含んで構成されている。また、本実施例において、第1ガス室と第2ガス室とに、個別にガスの供給・排出を行う「ガス給排気装置」が、エア給排気装置31を含んで構成されている。なお、本実施例は、エア給排気装置31が複数のサスペンション装置20に共有されている態様とされている。さらに、本実施例において、ガス給排気装置を制御することによって、車輪と車体との基準となる離間距離とガススプリング機構のばね特性とを任意に変更可能とする「ガススプリング制御装置」が、ECU200を含んで構成されている。なお、本実施例は、ECU200が複数のサスペンション装置20に共有されている態様とされている。
2. 第2実施例.
上記実施例において、車体を支えるばね荷重が第1空気室44によって発生させられていたが、弾性伸縮装置30がコイルスプリングを備えて、第1空気室44に加えてコイルスプリングによっても車体を支えるばね荷重を発生させるようにすることもできる。図10に、コイルスプリング300を備えた弾性伸縮装置310を示す。本弾性伸縮装置310は、上記実施例の弾性伸縮装置30と共通の構成が多いため、共通の構成については弾性伸縮装置30と同じ番号を付し、異なる部分を中心に説明する。また、本実施例のサスペンションシステム312,およびサスペンション装置314は、弾性伸縮装置310を除いて、それぞれ第1実施例のサスペンションシステム10,およびサスペンション装置20と同様である。
2.1. 弾性伸縮装置の構成.
本弾性伸縮装置310は、車輪14と車体24との接近・離間、つまり、ストロークに応じてコイルスプリング300を伸縮させるように保持する保持機構320を備えている。保持機構320は、コイルスプリング300の上端部を保持する上部保持部材322と、下端部を保持する下部保持部材324とを備えており、それら上部保持部材322と下部保持部材324とによってコイルスプリング300を狭持している。上部保持部材322がシリンダハウジング32に移動不能に固定されるとともに、下部保持部材324がオイルシリンダ40に移動不能に固定されており、それらはストロークに応じて互いに接近・離間するようにされている。
具体的には、上部保持部材322は、シリンダハウジング32の上端部外周を取り巻く環状壁部330と、その環状壁部330の端部(図において上方の端部)から外周に広がる鍔部332と、その鍔部332の下部保持部材324側の面と環状壁部330の外周面とにわたって設けられた環状のゴムシート334とを有している。そして、上部保持部材322は、環状壁部330においてシリンダハウジング32の上端部外周(本実施例において、蓋部材52の外周)に固定されるとともに、鍔部332においてゴムシート334を介してコイルスプリング300の上端部の上方への移動を禁止している。下部保持部材324は、概して筒状をなしており、その一端部(図において下端部)は、開口径が小さくされるとともに、オイルシリンダ40の外周を取り巻く環状壁部340が形成され、その環状壁部340においてオイルシリンダ40に固定されている。また、下部保持部材324は、その他端部(図において上端部)から外周に広がる鍔部342と、その鍔部342の上部保持部材322側の面に設けられた環状のゴムシート344とを有している。そして、下部保持部材324は、鍔部342においてゴムシート344を介してコイルスプリング300の下端部の下方への移動を禁止している。
2.2. 基準離間距離(車高)とばね特性.
図11に、本弾性伸縮装置310において、上下の空気室44,46の弾性力によるばね荷重特性を実線で、コイルスプリング300の弾性力によるばね荷重特性を破線で示す。それらのばね荷重をあわせたものが、本サスペンション装置314のばね荷重特性となる。そのため、本サスペンション装置314は、第1実施例のサスペンション装置20と比較して空気室44等内の圧力を低くすることができる。なお、空気室44等内の圧力を比較的高くしても特に問題はない。また、本サスペンション装置314は、車高が標準的な車高である標準車高とされている場合に、ストローク量が0の状態で、空気室44等によるばね荷重が発生せず、車体24をコイルスプリング300の弾性力によるばね荷重で支えるものとされている。そのため、車両が長期間放置されて空気室44等内の空気が漏れたとしても車高が標準車高より低くならないというメリットがある。
本サスペンション装置314においても、第1実施例のサスペンション装置20と同様に、車高とばねレートとを任意に変更することができる。その場合には、前記〔1−8〕式を、
Fh=Sa・Pa−Sb・Pb−K・X+C ・・・〔2−1〕
とすればよい。なお、Kはコイルスプリング300のばね定数、Cは定数である。なお、本実施例のように、標準車高において、ストローク量が0の状態で、車体24をコイルスプリング300の弾性力によるばね荷重で支える場合には、
Fh=−K・X0+C ・・・〔2−2〕
の関係が成り立つ。なお、X0は、標準車高となる状態におけるXの値である。
一般的には、式〔1−13〕、式〔1−14〕が、
Pa・Va=α・X{(β・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)+(Fh+K・X−C)(L−X)}/{β・X+α(L−X)} ・・・〔2−3〕
Pb・Vb=β(L−X){(α・ΔF)/(ΔX2−ΔX1)−X(Fh+K・X−C)}/{β・X+α(L−X)} ・・・〔2−4〕
となる。
なお、本サスペンション装置314において、ばね荷重特性が異なるコイルスプリング300を使用することによって、例えば、上記標準車高を比較的高い車高としておき、走行時に空気室44,46の各々の空気充填量を調節して車高を低くすることや、逆に、上記標準車高を比較的低い車高としておき、走行時に車高を高くすることができる。前者の例では、例えば、乗車定員数いっぱいに乗車した場合等に、その重量で車高が下がった状態で通常走行に適した車高になるように設定することができ、乗車人数が少ない場合には空気室44,46の各々の空気充填量を調節して車高を低くすることができる。また、後者の例では、例えば、空車時,あるいは1名乗車時に通常走行に適した車高になるように設定することができ、乗車人数が多い場合に空気室44,46の各々の空気充填量を調節して下がりすぎた車高を上昇させることができる。上記以外の本実施例のサスペンションシステム312の構成、作動、車高・ばねレート調整等については第1実施例と同様であるため説明を省略する。
3. 第3実施例.
本実施例の弾性伸縮装置は、上記2つの実施例と同様に上下の空気室を備えているが、大小2つのピストンを含んで構成されており、離間距離によって作動するピストンの面積が異なるようにされた態様である。
3.1. 弾性伸縮装置の構成.
図12に、本実施例の弾性伸縮装置400を備えたサスペンション装置410を示す。本サスペンション装置410は、第1実施例のサスペンション装置20と同様の構成部品が多いため、同じ構成部品については同じ番号を付し、異なる部分を中心に説明する。本サスペンション装置410は、車体24に連結されたシリンダハウジング420を備えている。そのシリンダハウジング420は、大径シリンダ部422と小径シリンダ部424とを有する円筒部材426と、その円筒部材426の大径シリンダ部422の開口端を塞ぐ第1蓋部材430と、小径シリンダ部424の開口端の口径を狭める第2蓋部材432とが組み付けられて形成されている。円筒部材426は、大径シリンダ部422と小径シリンダ部424とを連続させる段差部433を有している。なお、第1蓋部材430の構成は、第1実施例の蓋部材52と同様である。
第2蓋部材432は、小径シリンダ部424の端部に外側から嵌合する環状壁部434と、その環状壁部434の端部から内周側に延びる穴あき円板状の底部436とを有している。その底部436の中央には、第1実施例と同様に、シリンダハウジング420内部の気密性を保ちながら軸方向に移動するオイルシリンダ40(前述のように、ピストンロッドとして機能する)を貫通させるロッドシール部60が設けられている。なお、環状壁部434と嵌合する小径シリンダ部424の端部の外周部には、シール溝440が全周にわたって形成されるとともに、そのシール溝440に環状のシール部材442が配設されており、円筒部材426と第2蓋部材432とが気密に組み付けられている。以上のように、シリンダハウジング420内部は気密に保たれている。なお、シール部材442の材質等は、第1実施例のシール部材66と同様である。
本サスペンション装置410は、大径シリンダ部422の内周部に嵌められた第1ピストン450と、ピストンロッドとして機能するオイルシリンダ40のロッド42が延び出している側の端部に取り付けられた第2ピストン452とを備えている。第1ピストン450は、大径シリンダ部422内部を区画する環状のピストン部454と、そのピストン部454に設けられてピストン部454の一方の端面の側の空間(第1ガス室に相当する)とその反対側の空間(第2ガス室に相当する)とを連通させる筒部456とを含んで構成されている。その筒部456の内部には第2ピストン452が移動可能に嵌められており、その第2ピストン452によって筒部456の内部が区画されるようにされている。すなわち、本サスペンション装置410において、第1ピストン450および第2ピストン452の第1蓋部材430側の空間に第1空気室458(第1ガス室の一種である)が形成され、第2蓋部材432側の空間に第2空気室459(第2ガス室の一種である)が形成されているのである。
筒部456の図において上方(大径シリンダ部422側)の端部には、第1ピストン450に対する第2ピストン452の上方への相対移動を禁止する第1相対移動禁止部460が設けられている。その第1相対移動禁止部460は、筒部456の上方端部の内周部に設けられた環状の部分とされている。そして、第1相対移動禁止部460が、第2ピストン452の上面に当接することによって相対移動を禁止するようにされている。すなわち、この図において第2ピストン452が基準位置に位置させられているが、その第2ピストン452が上記基準位置よりも上方に移動させられる際には、第1相対移動禁止部460によって第1ピストン450と第2ピストン452との相対移動が禁止され、第1ピストン450が第2ピストン452に押されて大径シリンダ部422内を上方(第1蓋部材430側)に移動させられるのである。
なお、上記基準位置は、第1ピストン450が第2蓋部材432に最も接近した状態、つまり、ピストン部454がシリンダハウジング420の段差部433に当接した状態(第1ピストンが設定位置に位置した状態である)において、第2ピストン452が第1相対移動禁止部460に当接する位置である。ちなみに、ピストン部454の下方端面には、環状のゴム部材461が設けられており、ピストン部454はゴム部材461を介して段差部433に当接する。また、本実施例における「第2ピストン452が上記基準位置よりも上方に移動させられること」が、前記「筒部と第2ピストンとの設定相対位置を超える相対移動」の一例である。さらに、前記「相対移動禁止部」が、第1相対移動禁止部460を含んで構成されている。なお、本実施例において、「シリンダハウジングの内部において設定位置から設定された移動方向への第1ピストンの移動を禁止する第1ピストン移動禁止部」が、段差部433を含んで構成されている。その段差部433は、本実施例において、第1ピストン450の設定位置から下方(第2蓋部材432側)への移動を禁止している。
また、筒部456の図において下方(第2蓋部材432側)の端部には、第1ピストン450に対する第2ピストン452の下方への相対移動を禁止する第2相対移動禁止部462(相対移動禁止部の一種である)が設けられている。その第2相対移動禁止部462は、筒部456の下方端部に螺合させられた環状の部材とされており、第2ピストン452の第2蓋部材432側の面に当接することによって相対移動を禁止するようにされている。本実施例において、その第2相対移動禁止部462によって、第2ピストン452が筒部456の下方から抜けないようにされている。なお、第1相対移動禁止部460および第2相対移動禁止部462の各々の第2ピストン452側の面には、第2ピストン452との当接による衝撃を緩衝する環状のゴム部材464,466が配設されている。
第1ピストン450のピストン部454および第2ピストン452の各々の外周部には、シール部材を配設するためのシール溝480,482が全周にわたって形成されている。それらシール溝480,482には、それぞれ環状のシール部材484,486が配設され、ピストン部454および第2ピストン452の各々が気密にシリンダハウジング420内部を区画するようにされている。なお、シール溝480,482およびシール部材484,486はそれぞれ1つずつでもよいが、本実施例において、シール溝480,482が軸方向に複数設けられ、それぞれにシール部材484,486が配設されている。なお、本実施例において、シール部材484,486には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のOリングが用いられている。
シリンダハウジング420の下方側面には、空気の供給・排出を行うための給排気口490が設けられている。その給排気口490は、本実施例において、円筒部材426の小径シリンダ部424の側面に設けられた貫通穴に第2空気室459とエア通路164bとを接続するためのコネクタ492が配設されて、形成されている。
3.2. 基準離間距離(車高)とばね特性、およびそれらの調整.
図13に、本サスペンション装置410のばね荷重特性を実線で、第1実施例のサスペンション装置20のばね荷重特性を破線で、従来のエアサスペンション装置のばね荷重特性を二点鎖線で模式的に示す。なお、本サスペンション装置410の第2ピストン452の外径を大きくした場合のばね荷重特性を点線で模式的に示した。この図から、本サスペンション装置410のばね荷重特性は、第1実施例のサスペンション装置20のばね荷重特性と比較して、リバウンド時のばね荷重の減少が緩やかであることが分かる。それは、第2ピストン452の外径が第1ピストン450の外径よりも小さいため、第2ピストン452が基準位置よりも第2蓋部材432側に移動する際には、上下の空気室458,459の容積変化率が小さくなることが一因である。従って、第2ピストン452の外径を大きくすると、点線で示したように、リバウンド時のばね荷重の減少が第1実施例のサスペンション装置20のそれに近くなる。このように、本サスペンション装置410は、第2ピストン452の外径を変更することにより、リバウンド時のばね荷重の減少度合いを変化させることができる。
本サスペンション装置410においても、第1実施例のサスペンション装置20と同様に、車高とばねレートとを任意に変更することができる。その場合には、車高およびばねレートを設定する範囲(前述のΔX1,ΔX2に相当する)によって場合分けを行うことで目標PV値を算出することができるが、非常に煩雑となる。そのため、本実施例において、予め試験を行うことによって各車高毎に空気室458,459の圧力とばねレートとの関係を測定しておき、その圧力と車高とに基づいて取得される容積との積から目標PV値が取得される。
車高・ばねレート調整処理における目標PV値の取得について具体的に説明する。運転者によって選択可能な各車高レベルにおいて、選択可能な各ばねレートにするための空気室458,459の圧力が、ECU200の記憶部230に各車高毎の圧力マップとして記憶されている。また、ECU200の記憶部230には、各車高レベルと空気室458,459の容積との関係が容積マップとして記憶されている。目標PV値決定部252は、図9のS12の目標PV値a,b取得処理において、容積マップから選択された車高レベルに対応する容積を読み出すとともに、圧力マップから選択された車高レベルに応じたマップから選択されたばねレートに対応する圧力を読出し、それら容積と圧力とを乗じることによって目標PV値を取得するのである。
3.3. その他の事項.
なお、本サスペンション装置410において、上下の空気室458,459の空気充填量の設定によっては第2ピストン452が基準位置よりも下方に移動して、第2ピストン452が下方の移動端位置から上昇する場合に、上下の空気室458,459の圧力差等によって第1ピストン450が上昇する場合がある。しかしながら、その様な状態でも離間力は比較的小さいと考えられ、従来型のサスペンション装置と比較して、リバウンド時の離間力が小さくされていると考えられる。
なお、本サスペンション装置410のシリンダハウジング420を、上記2つの実施例のシリンダハウジング32と同様な形状とすることもできる。本実施例において、「ガスを圧縮して弾性力を発生させることによって車輪と車体とを弾性的に連結するガススプリング機構」が、シリンダハウジング420,第1ピストン450,第2ピストン452,および,オイルシリンダ40を含んで構成されている。なお、本サスペンション装置410を備えたサスペンションシステムは、上記以外の構成、作動、車高・ばねレート調整等については、第1実施例のものと同様であるため説明を省略する。
4. 第4実施例.
上記第3実施例のサスペンション装置410を、第2実施例のようにコイルスプリング300を備えたサスペンション装置500とすることができる(図14)。サスペンション装置500の弾性伸縮装置510は、第3実施例の弾性伸縮装置400に、コイルスプリング300と、そのコイルスプリング300を保持する保持機構512を付加したものである。保持機構512の構成は、第2実施例の保持機構320と同様であるため、同じ構成部品には同じ番号を付し、異なる部分を中心に説明する。保持機構512の下部保持部材514は、コネクタ492と干渉しないように、軸方向に長い長穴516が設けられている。
本サスペンション装置500のばね荷重特性は、図15に示すように、破線で示すコイルスプリング300によるばね荷重特性と、実線で示す上下の空気室458,459によるばね荷重特性とを合わせたものとなる。本サスペンション装置500によっても、第3実施例と同様に、車高とばねレートとを任意に調整することができる。なお、本サスペンション装置500を備えたサスペンションシステムは、上記以外の構成、作動、効果、車高・ばねレート調整等については、第3実施例のものと同様であるため説明を省略する。
5. 第5実施例.
上記全ての実施例において、エア給排気装置31は第1空気室44と第2空気室46との間で圧縮エアを圧力の低い方から高い方へ移動させることはできなかった。図16に、上下の空気室44,46間でエアを移動させるエア移動装置と、上記実施例と同様の弾性伸縮装置30とを備えたサスペンションシステム600を概念的に示す。なお、本サスペンションシステム600の構成は、第1,第2実施例と同様な部分が多いため、同様の構成については同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
5.1. エア移動装置.
エア移動装置610は、自身が備えるモータの駆動力によってポンプを作動させて圧縮エアを吐出するコンプレッサ612と、そのコンプレッサ612と上下の空気室44等との連通の有無を切り換える連通切換器614とを備えている。その連通切換器614は2つのエア通路616,618を介して4つの弾性伸縮装置30の各々の上下の空気室44等と接続されている。また、コンプレッサ612は、エアを吸入する吸入部620とエアを吐出する吐出部622とを有しており、それら吸入部620と吐出部622とは、それぞれ吸入側エア通路624と吐出側エア通路626とによって連通切換器614に接続されている。
その連通切換器614は、切換バルブ630と三方切換バルブ632とを備えている。切換バルブ630は常閉型の電磁弁とされ、非通電状態において吸入側エア通路624および吐出側エア通路626と、エア通路616,618との連通を遮断するようにされている。また、通電によって切換バルブ630が作動させられた場合には、吸入側エア通路624とエア通路618とが接続され、吐出側エア通路626とエア通路616とが接続される。三方切換バルブ632は常開型の電磁弁とされ、非通電状態において吸入側エア通路624および吐出側エア通路626と、エア通路616等との連通を許容する状態にする。また、三方切換バルブ632は、2つのソレノイドのいずれに通電されるかによって、吸入側エア通路624と吐出側エア通路626とのいずれか一方を、エア通路616等と連通可能にするようにされている。
以上に述べた構成により、連通切換器614は、2つの切換バルブ630,632の作動によって、吸入側エア通路624および吐出側エア通路626の各々と、エア通路616,618との連通の有無を任意に切り換えることができるのである。
また、エア移動装置610は、吸入側エア通路624と大気との連通の有無を切り換える大気連通切換バルブ646と、大気から吸入されるエアの水分を除去する水分除去器たるドライヤ650とを備えている。大気連通切換バルブ646は、常開型の電磁弁とされ、通電状態においてドライヤ650と大気との連通、吸入側エア通路624とドライヤ650との連通を遮断するようにされている。つまり、本エア移動装置610において、ドライヤ650は、吸入側エア通路624と大気とを接続する大気連通路654に設けられ、ドライヤ650を介して、大気エアを吸入し、上下の空気室44等のエアを大気に排出することができるようにされているのである。なお、本実施例において、大気から吸入されたエアの水分がドライヤ650に吸着されるのであるが、空気室44等の空気をドライヤ650を介して排出することにより、ドライヤ650を再生すること(吸着された水分を大気に放出することにより、水分吸着能力を回復させること)ができる。
さらに、エア移動装置610は、上下の空気室44等の給排気口130,132とエア通路616,618との連通の有無を切り換える連通切換器660を備えている。その連通切換器660は、連通切換器614と同様の三方切換バルブ632と、その三方切換バルブ632とは異なる三方切換バルブ662とを備えており、それらの作動によって、給排気口130,132の各々と、エア通路616,618との連通の有無を任意に切り換えることができる。三方切換バルブ662は、2つのソレノイドのいずれに通電されるかによって、上下の空気室44,46の各々に、2つのエア通路616,618のいずれを接続するかを切り換えることができる。例えば、通電によって三方切換バルブ662が図において下方に作動させられた場合には、ストレート接続となり、上方の空気室44とエア通路616とが接続され、下方の空気室46とエア通路618とが接続される。三方切換バルブ662が図において上方に作動させられた場合には、上記とは逆の接続のクロス接続となる。
5.2. 制御装置.
本サスペンションシステム600は、図17に示すように、エア移動装置610の作動を制御する制御装置である電子制御ユニット670(以下、単に「ECU670」という場合がある)を備えている。そのECU670は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体として構成されており、ECU670には、上記圧力センサ180a,b(図16では、それぞれ「Pa」,「Pb」と表示されている)、ストロークセンサ190、各車輪14の回転速度を検出する車輪速センサ672(図において、「V」と表示されている)、急速車高調整を行うためのスイッチである急速車高調整スイッチ674が接続されている。また、ECU670には、駆動回路676,678が接続され、ECU670は、駆動回路676等を介して、それぞれ各種の制御バルブ(三方切換バルブ160等)や、コンプレッサ612を作動させるものとされている。
図17は、図8と同様に、ECU670の各種の機能部を示した機能ブロック図とされている。この図において、図8と同様の構成については説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。本実施例において、記憶部230には、後に説明する急速車高調整プログラム等のプログラム、急速車高調整に関する各種のデータ等が記憶されている。ECU670は、各サスペンション装置20の上下の空気室44,46間でエアを移動させて迅速に車高調整を行う「急速車高調整部680」を備えている。その急速車高調整部680は、車高の目標値を決定する「車高目標値決定部682」と、車高の測定値を取得する「車高測定値取得部684」とを備えている。なお、バルブ制御部260は、駆動回路676に指令を送信し、切換バルブ630等を作動させる。また、コンプレッサ制御部262は、駆動回路678に指令を送信し、コンプレッサ612を作動させて、エア通路616等に圧縮エアを供給する。
5.3. エアの移動による迅速な車高調整.
上下の空気室44等のエアの移動による急速車高調整は、例えば、乗員の乗降前後,段差乗り越え前後等に行われる。本ステアリングシステム600は、上述のように急速車高調整スイッチ674を備えており、その急速車高調整スイッチ674を操作することにより、車高を高(H),中(M),低(L)のいずれかから選択できるようにされている。車高Hでは、比較的高めに設定された車高まで上昇するようにされており、段差を乗り越える場合等に好適である。車高Lでは、比較的低めに設定された車高まで下降するようにされており、乗員が乗降する場合等に好適である。車高Mでは、通常走行用に設定された車高に調整され、上昇または下降させた車高を、元の通常走行時の車高に戻すようにされている。
そして、運転者によって急速車高調整スイッチ674が操作されると急速車高調整が開始するようにされている。例えば、車高Mが選択されている状態から、スイッチが操作されて車高Hが選択されると急速車高調整が開始される。なお、車速が設定速度を超えている場合には、急速車高調整スイッチ674が操作されても急速車高調整が行われないようにされている。また、車両の動力起動後に、上下の空気室44等の空気充填量は、車高Mになるように予め調節されているものとする。
急速車高調整は、ECU670のコンピュータによって急速車高調整プログラムが実行されて、急速車高調整部680の機能が発揮されることによってなされる。図18に、急速車高調整プログラムのフローチャートを示し、急速車高調整部680によって行われる急速車高調整について説明する。本プログラムは、1のサスペンション装置314について急速車高調整を行うものであり、本プログラムと同じ複数のプログラムが時分割で実行されて、複数のサスペンション装置314の急速車高調整が行われるようにされている。以下に、1つのサスペンション装置314の急速車高調整について、代表的に説明する。
ステップ21(以後、ステップ21を「S21」と略記し、他のステップについても同様とする)において、車高目標値決定部682により、選択された車高の目標値が取得される。なお、上述のように、車高は、3段階(H,M,L)で設定されており、車高H,M,Lの各々についての車高目標値は、予めECU670のROMに記憶されており、急速車高調整スイッチ674の操作に応じて適切な値が読み出される。なお、本実施例において、車高目標値として、ストロークセンサ190の検出値に基づいて取得される車輪14車体との離間距離の目標値が用いられる。
S22において、三方切換バルブ662が閉状態である場合、つまり、連通切換器660が閉状態にされて上下の空気室44等のエアの供給・排出が行われていない場合に判定がYESとなる。その場合には、S23において、車高測定値取得部684により、ストロークセンサ190の検出値に基づいて車高測定値(車輪14と車体との離間距離の測定値)が取得される。その車高測定値は、現時点から設定時間前までの車高の平均的な値とされる。S24の判定において、車高測定値と車高目標値との差が少ない場合、つまり、設定値E3未満である場合には、車高が目標値に達していると判断されて、本プログラムの処理が終了する。一方、車高測定値と車高目標値との差が設定値E3以上である場合には、S25の処理が実行される。
S25において、上下の空気室44,46間のエアの移動が設定された時間行われる。例えば、急速車高調整スイッチ674が、車高Mから車高Hに操作された場合には、車高が上昇させられる。その際には、下方の第2空気室46からエアが排出され、そのエアが上方の第1空気室44に供給される。具体的には、バルブ制御部260の指令により、駆動回路676から連通切換器660の三方切換バルブ662の図において上側のソレノイドに電力が供給されて、三方切換バルブ662が図において下方に作動させられる。また、連通切換器614の切換バルブ630も作動させられて、エア通路616等を介して、上方の第1空気室44と吐出側エア通路626とが連通させられ、また、下方の第2空気室46と吸入側エア通路624とが連通させられる。さらに、コンプレッサ制御部262の指令により、駆動回路678からコンプレッサ612に駆動電力が設定された時間供給されてコンプレッサ612が作動し、下方の第2空気室46のエアが上方の第1空気室44に移動させられる。また、設定時間経過後には、切換バルブ630等への電力の供給が停止され、それらは閉状態にされる。
急速車高調整スイッチ674が、車高Mから車高Lに操作された場合には、車高が下降させられる。その際には、上方の第1空気室44からエアが排出され、そのエアが下方の第2空気室46に供給される。その場合には、バルブ制御部260の指令により、連通切換器660の三方切換バルブ662が図において上方に作動させられる。その他については、上述の車高の上昇時と同様である。すなわち、上述とは逆に、エア通路616等を介して、上方の第1空気室44と吸入側エア通路624とが連通させられ、また、下方の第2空気室46と吐出側エア通路626とが連通させられるのである。さらに、急速車高調整スイッチ674が、車高Hから車高Mに操作された場合には、車高Mに応じた車高目標値まで車高を下降させる処理が行われる。また、車高Lから車高Mに操作された場合には、車高Mに応じた車高目標値まで車高を上昇させる処理が行われる。
エアの移動が設定時間行われた後、車高測定値が取得され(S22,S23)、車高目標値に達するまで(S24)繰り返しエアの移動が行われ(S25)、車高目標値に達している場合には急速車高調整が終了する。
なお、急速車高調整は、4つの弾性伸縮装置310のストロークが平均的に変化するように、1つの弾性伸縮装置310についての車高調整が終了する前に、別の弾性伸縮装置310について車高調整が行われるようにされている。そして、4つの弾性伸縮装置310について、比較的近いタイミングで車高調整が終了するようにされる。
本実施例において、第1ガス室と第2ガス室との一方から他方へ、ガスを移動させる「ガス移動装置」が、エア移動装置610を含んで構成されている。また、本エア移動装置610は、大気から吸入されるガスの水分を除去する水分除去器と、大気連通路654に配設されて吸入側エア通路626と大気との連通の有無を切り換える大気連通切換器(大気連通切換バルブ646)とを含んで構成された「大気ガス吸入排出装置」を備えた態様とされている。さらにまた、本エア移動装置610は、複数の弾性伸縮装置310の各々の上下の空気室44等に個別にエアを供給・排出することが可能にされた態様である。なお、ガス移動状態とガス移動禁止状態を切り換える「連通切換器」が、連通切換器614と連通切換器660との少なくとも一方を含んで構成されている。
本実施例において、エアの移動によって車高調整が行われるようにされていたが、エアの移動の前や後に、大気エアの吸入・大気へのエアの放出を行うこともできる。その場合には、より大幅に車高を変化させることができる。例えば、大気エアを吸入して上下いずれかの空気室44等に供給する場合には、大気連通バルブ646が開状態にされ、コンプレッサ612が作動させられる。さらに、連通切換器614の切換バルブ630が開状態にされ、三方切換バルブ632が図において下方に作動させられて、吐出側エア通路624とエア通路616とが連通させられる。また、いずれかの弾性伸縮装置310に対応する連通切換器660の三方切換バルブ632が図において下方に作動させられるとともに、三方切換バルブ662が上下いずれかに作動させられて、上下の空気室44等のいずれかとエア通路616とが連通させられる。以上の説明から分かるように、連通切換器614の切換バルブ630,632と、連通切換器660の切換バルブ632,662との作動により、任意の空気室44等に大気を供給し、任意の空気室44等から空気を大気に排出することができる。
また、本実施例において、1つのプログラムによって、1つの弾性伸縮装置310について急速車高調整が行われるようにされていたが、複数の弾性伸縮装置310について急速車高調整が行われるようにすることもできる。例えば、1つのプログラムによって、前方あるいは後方の2つの弾性伸縮装置310について、同時に急速車高調整を行うことができる。さらにまた、本実施例において、1つの弾性伸縮装置310の上下の空気室44,46間においてエアの移動が行われたが、複数の弾性伸縮装置310間でエアの移動を行うことによって車高調整を行うこともできる。
なお、本実施例において、サスペンション装置314はコイルスプリング300を備えるものとされていたが、図19に示すように、コイルスプリング300を備えていないサスペンション装置20を備えたサスペンションシステム690によっても上下の空気室44,46間のエアの移動による急速車高調整を行うことができる。
6. 第6実施例.
本実施例のサスペンションシステムは、ばね上(車体)の固有振動数が目標値となるように弾性伸縮装置310のばねレート目標値(ばね特性の目標値)を決定する態様である。本サスペンションシステムの構成は上記第5実施例と同様であるため、図16に相当する図面は省略する。本サスペンションシステムには、前記ECU670に代えて、ECU710が設けられている。そのECU710は、前記ECU200,ECU670と同様の構成を備えており、ECU200等と同様の構成については同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
6.1. 電子制御装置.
図20に、図8,図17と同様な、ECU710の各種の機能部を示した機能ブロック図を示す。ECU710には、それぞれ車体に配設された横加速度センサ712,およびステアリングホイールの操作角を検出する操作角センサ716等のセンサが接続されている。また、固有振動数が適切となる目標車速を運転者が選択するための目標車速選択スイッチ718が接続されている。そのECU710は、各サスペンション装置314が車体を支持する際の荷重を取得する「支持荷重取得部720」と、弾性伸縮装置310のばねレート目標値(ばね特性目標値の一種である)を決定する「ばねレート目標値決定部722」とを備えている。そのばねレート目標値決定部722は、前輪側のばね上固有振動の周期と後輪側のばね上固有振動の周期との差が適正になるように弾性伸縮装置310のばねレート目標値を決定する「固有振動周期差依拠決定部724」を備えている。
6.2. ばねレートについて.
本実施例のサスペンション装置314はコイルスプリング300を備えており、車輪14と車体との間には、コイルスプリング300の弾性力と弾性伸縮装置310の弾性力とが作用する。それらコイルスプリング300のばね特性および弾性伸縮装置310のばね特性は、本実施例において、設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に対する弾性伸縮装置310が発生する弾性力の変化の度合い、すなわち、「設定された範囲のばねレート(以後、単に「ばねレート」と略記する場合がある)」で規定される。そして、コイルスプリング300のばねレートである「コイルばねレート」と、弾性伸縮装置310のばねレートである「エアばねレート」とを合わせたものが、サスペンション装置314のばねレートである「全体ばねレート」とされる。
6.3. 支持荷重の取得.
まず、支持荷重取得部720による支持荷重の取得について説明する。本サスペンション装置314は、コイルスプリング300と弾性伸縮装置310とによって車体を支持しており、コイルスプリング300の支持荷重である「コイル支持荷重」と、弾性伸縮装置310の支持荷重である「エア支持荷重」とを合わせたものが、サスペンション装置314の支持荷重である「全体支持荷重」とされる。
コイルスプリング300と弾性伸縮装置310との各々の弾性力は、車輪14と車体との離間距離に応じて変化するが、停車時における車輪14と車体との離間距離である基準離間距離における弾性力を支持荷重として取得されることが望ましい。そこで、本実施例において、各サスペンション装置314毎に、圧力センサ180a,bおよびストロークセンサ190の検出値に基づいて、現時点から設定された時間前までの間の離間距離の平均的な値および上下の空気室44,46の各々の圧力の平均的な値が取得される。離間距離の平均的な値は、通常、基準離間距離と近い値となり、また、圧力の平均的な値は、離間距離が基準離間距離となった状態における圧力の値と近い値となるからである。
その離間距離の平均的な値に基づいて「コイル支持荷重」が取得される。ECU710の記憶部230には、コイル支持荷重と離間距離との関係が、コイル支持荷重マップとして記憶されている。そのコイル支持荷重マップから、離間距離の平均的な値に応じた支持荷重を読み出すことにより、コイル支持荷重が取得される。なお、基準離間距離を予め設定しておき、その設定された基準離間距離に応じた支持荷重をコイル支持荷重マップから読み出すことにより、コイル支持荷重を取得することもできる。「エア支持荷重」は、上方の空気室44の圧力の平均的な値をそれの断面積Saに乗じた値から、下方の空気室46の圧力の平均的な値をそれの断面積Sbに乗じた値を引くことによって取得される(式〔1−7〕参照)。そして、コイル支持荷重とエア支持荷重とを合わせた値が「全体支持荷重」とされる。また、全てのサスペンション装置314の各々について、全体支持荷重等が取得される。なお、本実施例において、取得された全体支持荷重が、全体支持荷重目標値(以後、「支持荷重目標値」と略記する場合がある)として、後述の処理に用いられる。
なお、各サスペンション装置314の支持荷重は、通常、概ね平坦な路面に車両が停車している際、例えば、運転者が乗車して車両を発進させるまでの間や信号待ちの間に取得される。また、走行中に支持荷重を取得することもできる。その場合には、例えば、比較的凹凸の少ない平らな路面を概ね一定の速度で直進走行しているといった状態において支持荷重を取得することもできる。具体的には、ストロークセンサ190,車輪速センサ680,横加速度センサ712,および操作角センサ716等の検出結果に基づいて、ストローク量,車速の変化,ステアリングホイールの操作角,車体の横加速度等が設定値以下となる場合に、上記一定速度で直進走行している状態であると判定することができる。なお、本実施例において、車輪14と車体との離間距離と、上下の空気室44等の圧力とに基づいて各サスペンション装置314についての全体支持荷重等が取得されたが、予め支持荷重を設定しておくこともできる。例えば、標準的な乗車人数を想定して設定された各サスペンション装置314の全体支持荷重を記憶部230に記憶させておき、必要な際に設定値を読み出すことができる。
6.4. ばねレート目標値の決定.
次に、ばねレート目標値決定部722によるばねレート目標値の決定について説明する。図21に模式的に示す車両は、前後輪14F,Rの軸間距離がW(m)であり、車速V(m/s)で走行している。その車両は、前方にある路面の凹凸(図では凸部とされている)を通過するが、前輪14Fが通過してから後輪14Rが通過するまでに若干のタイムラグTw(sec)(Tw=W/V)が生じる。図22に示すように、タイムラグTwと、前後のばね上固有振動の周期の差(Tf−Tr)とを等しくすれば、車体のピッチングを抑制して乗り心地を向上させることができる。
本実施例において、ばねレート目標値決定部722は固有振動周期差依拠決定部724を備えており、図21,22に示すように、前後のばね上固有振動の周期の差(Tf−Tr)が、走行時の車両が前後輪の軸間距離Wだけ移動する際の時間Twと等しくなるようにばねレート目標値が決定される。図23に、前後のばね上固有振動の周期の差に依拠してばねレート目標値を決定し、ばね上の固有振動を適正化する固有振動適正化プログラムのフローチャートを示す。本プログラムは、複数のサスペンション装置314についてばね上固有振動の適正化を行うものである。この固有振動適正化プログラムが、ECU710のコンピュータによって実行され、ECU710が固有振動周期差依拠決定部724の機能を発揮することで、ばねレート目標値の決定がなされる。
上記目標車速選択スイッチ718は、マニュアルで固有振動を適正化しようとする車速である目標車速を多段階で選択することと、オートモードを選択することとが可能にされている。マニュアルで目標車速が選択されている場合には、固有振動適正化プログラムが、車両の動力起動後で、支持荷重が取得された後に実行され、目標車速に応じてばね上固有振動が適正化される。また、例えば、上記目標車速選択スイッチ718が操作され、固有振動を適正化する目標車速が変更された場合にも実行される。一方、オートモードが選択されている場合には、車両の動力起動後で、支持荷重が取得された後に設定時間毎に繰り返し実行され、走行速度に応じてばね上の固有振動が適正化される。
なお、ばね上の固有振動数fと固有振動の周期Tとの間には次式の関係があり、一方を決定すると必然的に他方も定まる。すなわち、固有振動の周期Tを目標車速に適切な値にすることで、固有振動数fも適切な値になり、いずれか一方が適切にされればばね上の固有振動が適正化されるのである。
式〔6−1〕 固有振動数f×固有振動の周期T=1
S31において、目標車速選択スイッチ718が、マニュアルで目標車速が選択されている場合には、その選択された車速が目標車速V0とされる。一方、オートモードが選択されている場合には、車輪速センサ672の検出値に基づいて、現時点から設定時間前までの平均的な車速が目標車速V0とされる。なお、平均的な車速を取得するための時間は比較的長く設定されており(例えば、数十秒〜数百秒)、目標車速V0の変動が、実際の車速の変動に比して十分緩やかになるようにされている。
S32において、目標車速V0に適切な前後のばね上固有振動の周期が取得される。ECU710の記憶部230には、図24に模式的に示すように、目標車速V0に適切な前後のばね上固有振動の周期の値Tf,Trが固有振動周期マップとして記憶されている。この図から分かるように、本実施例において、ばね上固有振動の周期が車速の増加に応じて減少するように設定されている。逆にいえば、車速の増加に応じてばね上固有振動数が増加するようにされている。すなわち、低速走行時には、ばね上固有振動数が小さくされて比較的乗り心地が良くなるとともに、高速走行時には、ばね上固有振動数が大きくされて比較的車体の姿勢安定性が良くなるようにされているのである。以上の説明から分かるように、本実施例において、固有振動周期差依拠決定部724が、ばね特性目標値を車速に基づいて決定する車速依拠決定部の一態様とされている。
さらに、図24の固有振動周期マップにおいて、前輪側のばね上固有振動の周期Tfと、後輪側のばね上固有振動の周期Trとの差は、走行時の車両が前後輪の軸間距離Wだけ移動する際の時間Twと等しくなるようにされている。そのため、車速の増加に伴い時間Twが小さくなるのに合わせて、TfとTrとの差が小さくなるようにされている。なお、車速が設定速度V1以下の状態において、Tfが一定の値にされ、設定速度V2以下の状態においてTrが一定の値にされる(なお、0≦V1≦V2とする)。破線で示すように、目標車速V0が0に近づくと、Twが急激に増大するためである。
前後のばね上固有振動の周期Tf,Trが取得されると、S33において各サスペンション装置314毎の「全体ばねレート目標値Ks」および「エアばねレート目標値Ka」が演算される。なお、固有振動の周期Tと全体ばねレート目標値Ksとの間には次の関係が成り立つ。
式〔6−2〕 T=2π√(Ma/Ks)
なお、「Ma」は、サスペンション装置314が支持する車体の部分の重量であり、「全体支持荷重」に相当する。この式を変形すると、前後のサスペンション装置314について次式が得られる。
式〔6−3〕 Ksf=4π2・Maf/Tf2
式〔6−4〕 Ksr=4π2・Mar/Tr2
なお、Ksfは、前輪側のサスペンション装置314の全体ばねレートであり、Ksrは、後輪側のサスペンション装置314の全体ばねレートである。また、Mafは、前輪側の各サスペンション装置314が支持する車体の部分の重量であり、Marは、後輪側の各サスペンション装置314が支持する車体の部分の重量である。本実施例において、Maf,Marの値は、それぞれ前後のサスペンション装置314の全体支持荷重目標値としての、上記取得された全体支持荷重の値とされる。なお、Maf,Marの値が、左右で異なっていてもよい。
さらに、「エアばねレート目標値Ka」が、「全体ばねレート目標値Ks」から「コイルばねレートKm」を引くことによって演算される。なお、Kaf,Karは、それぞれ前後の弾性伸縮装置310のエアばねレート目標値Kaである。
式〔6−5〕 Kaf=Ksf−Kmf
式〔6−6〕 Kar=Ksr−Kmr
また、Kmf,Kmrは、それぞれ前後のサスペンション装置314のコイルばねレート(第2実施例において、コイルスプリングのばね定数K)の値であり、その値は記憶部230に予め記憶されている。
6.5. 車高・ばねレート調整’.
S34において、以上の処理によって決定されたエアばねレート目標値Kaf、Karに基づき、車高・ばねレート調節部250によって「車高・ばねレート調整処理’」が行われる。そのS34の処理は、図25に示すように、第1実施例の車高・ばねレート調整(図9)と同様の処理である。なお、図25において、図9に記載されたステップの番号の後に「’(ダッシュ)」を付して示した。この車高・ばねレート調整処理’は、各サスペンション装置314毎に行われる。また、車高・ばねレート調整処理’において、前輪に対応する弾性伸縮装置310の目標PV値は、エアばねレート目標値Kafに基づいて取得され、後輪に対応する弾性伸縮装置310の目標PV値は、エアばねレート目標値Karに基づいて取得される。
本実施例のS11’において、第1実施例と異なり、図9のS11の「選択された車高」は、ECU710の記憶部230に記憶された「車高目標値(基準離間距離の目標値)」が読み出されて取得される。また、S11の「選択されたばねレート」は、S33において決定された「エアばねレート目標値Ka(Kaf、Kar)」とされる。さらに、S12’において、第2実施例の式〔2−3〕,式〔2−4〕によって、目標PV値が取得されるのであるが、その際のΔFとエアばねレート目標値Kaとの関係は次式のようになる。
式〔6−7〕 Ka=ΔF/(ΔX2−ΔX1)
ΔX1,ΔX2の値は、予め設定され(例えば、ΔX1=30mm、ΔX2=−30mm)、記憶部230に記憶されている。この式を変形すると次式が得られる。
式〔6−8〕 ΔF=Ka・(ΔX2−ΔX1)
この式から、弾性伸縮装置310の「ΔF」が、エアばねレート目標値Kaに基づいて決定される。
また、式〔2−3〕等におけるばね荷重「Fh」は、上述の支持荷重取得部720によって取得された各サスペンション装置314の「全体支持荷重(支持荷重目標値)」とされる。さらにまた、本実施例において、記憶部230には、車高目標値に相当する、式〔2−3〕等における「X」の値と、その「X」に対応する上下の空気室44等の容積「Va,Vb」の値とが記憶されている。さらにまた、コイルスプリング300のばね定数「K」は、コイルばねレートKmf,Kmrとされる。さらにまた、式〔2−3〕等における定数「C」は、式〔2−2〕によって求められる。その際には、Fhが「全体支持荷重」とされ、X0は予め設定された値にされる。したがって、第1,第2実施例と同様に、車高・ばねレート調整処理’により、目標PV値を取得することができる。
目標PV値の取得後、S13’の判定がYESの場合にS14’において測定PV値が取得される。なお、本実施例では、S13’において、三方切換バルブ662が閉状態であり、かつ、各種のセンサ672,712等の検出値に基づいて取得された「各種の測定値」、具体的には、車体の横加速度,前後加速度(車速の変化の度合い),ストローク量,ステアリングホイールの操作角,操作速度が、それぞれに設定された値より小さい場合に、判定がYESとされる。すなわち、車両走行中においても測定PV値が取得されるのであるが、悪路(例えば、比較的凹凸の多い路面)走行や、比較的急激な旋回,あるいは加減速が行われている場合には、測定PV値が取得されないようにされているのである。なお、測定PV値は、設定された時間内に取得されたPV値の平均的な値とされる。
その後、測定PV値と目標PV値との差が設定値を超えていた場合(S15’)に、S16’において、上下の空気室44等の空気充填量が変更される。そして、車高とばね上の固有振動の周期とが、適正にされる。なお、本実施例において、S16’の処理が、上述と同様に、悪路走行や、比較的急激な旋回,あるいは加減速が行われていない状態において、空気充填量が変更される。すなわち、各種の測定値(横加速度,前後加速度,ストローク量,操作角,操作速度)が、それぞれの設定値よりも小さい状態において空気充填量が変更される。また、上下の空気室44等の空気充填量の変更においては、必要に応じて、コンプレッサ612、連通切換器614,660の切換バルブ630等、大気連通切換バルブ646等が作動させられる(上記第5実施例参照)。以上に述べた処理によって、ばね上固有振動が適切なものとされる。
本実施例において、記憶部230には、予め設定された車高目標値(基準離間距離目標値)に相当する「X」と、上下の空気室44等の容積「Va,Vb」とが記憶されており、記憶部230の「X」および「Va,Vb」を記憶する部分を含んで「離間距離目標値決定部」が構成されている。その離間距離目標値決定部は、例えば、車両に設けられた車高選択スイッチ210によって選択された車高に基づいて、離間距離の目標値を決定する態様とすることができる。また、離間距離目標値決定部を、車速,支持荷重,路面状態等の走行状態に基づいて離間距離の目標値を決定する態様とすることもできる。
本実施例において、固有振動周期差依拠決定部724は、ECU710の、固有振動適正化プログラムのS32,S33の処理を行う部分を含んで構成されている。また、本実施例において、固有振動周期差依拠決定部724は、ばね上固有振動の周期を車速に応じて減少させており、車速依拠決定部の一態様とされている。また、固有振動周期差依拠決定部724は、ばね上固有振動の周期を適切なものにすることにより、ばね上固有振動数を適切なものにしており、「固有振動数依拠決定部」の一態様とされている。さらにまた、固有振動周期差依拠決定部724は、ばね上固有振動の周期を適切なものにするために、取得された全体支持荷重を支持荷重目標値とし、支持荷重の目標値に基づいてばねレート目標値を決定するようにされており、「支持荷重依拠決定部」の一態様とされている。
本実施例のサスペンション装置314はコイルスプリング300を備えていたが、コイルスプリング300を備えていないサスペンション装置20とすることもできる(図2,図19参照)。その場合には、ばねレート目標値の決定において、「全体ばねレート目標値Ks」と「エアばねレート目標値Ka」とが等しくなり、「コイルばねレートKm」が0となる。また、「全体支持荷重」と「エア支持荷重」とが等しくなる。さらにまた、目標PV値の取得において、第1実施例の式〔1−13〕、式〔1−14〕等を用いることができる。
7. 第7実施例.
本実施例のサスペンションシステムは、4つの車輪14のうちのいずれかのものの空気圧が低下した場合、つまり、車輪14が有するタイヤの空気圧が低下した場合(パンクした状態も含む)に、タイヤの空気圧が低下した車輪14である空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の支持荷重を低減することにより、空気圧低下輪の空気圧の減少を抑制するようにされている。また、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314のばねレート目標値が大きくされる。
図26に、上記第2実施例と同様の弾性伸縮装置310とを備えたサスペンションシステム800を概念的に示す。なお、本サスペンションシステム800の構成は、第1実施例,第5実施例と同様な部分が多いため、同様の構成については同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
本サスペンションシステム800は、車輪14の空気圧を取得する空気圧取得装置810を備えている。その空気圧取得装置810は、各車輪14ごとに設けられてそれぞれ空気圧を検出する空気圧センサ812と、それら空気圧センサ812の信号を受信する空気圧情報受信機814とを備えている。空気圧センサ812は、車輪14のホイールを貫通してタイヤ内部の圧縮空気と接触した状態で配設されており、タイヤの空気圧を検出することができる。また、空気圧センサ812は、電源としての電池を有しており、バッテリから電力を供給しなくとも作動することができる。さらにまた、空気圧センサ812は、空気圧情報作成部と送受信アンテナとを有しており、検出した各車輪14の空気圧の情報である空気圧情報(車輪圧力推定情報の一種である)を空気圧情報送信部によって作成するとともに、その空気圧情報を電波信号に変換して送受信アンテナから送信することができる。空気圧情報受信機814は、送受信アンテナ、空気圧情報取得部を有しており、空気圧センサ812から送信された電波信号を受信して、車輪14の空気圧情報を取得することができる。
7.1. 電子制御装置.
本サスペンションシステムには、前記ECU670に代えて、ECU820が設けられている。そのECU820は、前記ECU200,670,710と同様の構成を備えており、ECU200等と同様の構成については同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。図27に、図8,図17等と同様な、ECU820の各種の機能部を示した機能ブロック図を示す。ECU820には、空気圧情報受信機814が接続されており、ECU820は空気圧情報受信機814から空気圧情報を取得することによって各車輪14の空気圧を取得することができる。また、車体に配設された横加速度センサ712,およびステアリングホイールの操作角を検出する操作角センサ716等のセンサが接続されている。
ECU820は、各サスペンション装置314が車体を支持する際の荷重の目標値を決定する「支持荷重目標値決定部830」と、弾性伸縮装置310のばねレート目標値を決定する「ばねレート目標値決定部832」とを備えている。支持荷重目標値決定部830は、支持荷重を取得する「支持荷重取得部834」と、車輪の空気圧に基づいて支持荷重目標値を変更する「支持荷重目標値変更部836」とを備えている。ばねレート目標値決定部832は、車輪の空気圧に基づいてばねレート目標値を決定する「車輪空気圧依拠決定部838」を備えている。また、ECU820は、各サスペンション装置314の車高目標値を決定する「車高目標値決定部840」を備えている。その車高目標値決定部840は、車軸−路面間距離、つまり、車輪14のタイヤが接地して変形した際の半径に依拠して車高目標値を決定する「車軸−路面間距離依拠決定部842」を有している。
7.2. 車輪の空気圧低下時の処理.
車輪の空気圧が低下した際の処理である空気圧低下時処理プログラムのフローチャートを図28に示し、そのフローチャートに沿って空気圧低下時の処理を詳細に説明する。この空気圧低下時処理プログラムは、4つの車輪14のうち、いずれかの空気圧が低下した場合に、4つのサスペンション装置314の空気室44等の空気充填量を変更するものである。また、本プログラムは、設定時間毎に繰り返し実行されており、各車輪14の空気圧が正常であるか否かが常時監視される。ECU820は、空気圧情報受信機814が受信した空気圧情報に基づいて、常時、各車輪14の空気圧を取得している。なお、空気圧情報には車輪14の位置を識別するための情報が含まれており、前後左右のいずれの車輪14の空気圧情報であるかを認識することができる。また、記憶部230には、空気圧の下限値が記憶されており、いずれかの車輪14の空気圧が下限値を下回った場合に、その車輪14が空気圧低下輪であると判定される(S41)。なお、全ての車輪14の空気圧が正常である場合にはS41の判定により、S42以下の処理がスキップされ、本プログラムの一回の実行が終了する。
いずれかの車輪14が空気圧低下輪であると判定された場合には、支持荷重目標値,ばねレート目標値,および,車高目標値の各目標値が、変更,決定される(S42〜S44)。まず、支持荷重目標値の変更(S42)について説明する。正常時、つまり、全ての車輪14の空気圧が低下していない場合には、支持荷重目標値は、支持荷重取得部834により、上記第6実施例と同様な処理が行われて取得された全体支持荷重の値とされる。
一方、空気圧低下輪が存在する場合には、空気圧の低下量に応じて各サスペンション装置314の支持荷重目標値が変更される。ECU820の記憶部230には、図29に示すように、空気圧低下輪の空気圧と支持荷重目標値との関係が空気圧−支持荷重マップ(以後、単に「支持荷重マップ」と略記する場合がある)として記憶されている。その支持荷重マップにおいて、空気圧低下輪と、それの対角に位置する車輪14である対角輪との各々に対応するサスペンション装置314の「全体支持荷重(第6実施例参照)」の目標値である「全体支持荷重目標値(以後、「支持荷重目標値」と略記する場合がある)」が、空気圧低下輪の空気圧の低下に応じて減少するようにされている。一方、空気圧低下輪に隣り合う2つの車輪の各々に対応するサスペンション装置314の支持荷重目標値が、空気圧低下輪の空気圧の低下に応じて増加するようにされている。具体的には、例えば、空気圧低下輪が右側前輪(FR)であった場合には、車両の右側前方(FR)および左側後方(RL)に位置するサスペンション装置314の支持荷重目標値が減少し、車両の左側前方(FL)と右側後方(RR)とに位置するサスペンション装置314の支持荷重目標値が増加するようにされているのである。
なお、本実施例の支持荷重マップは、支持荷重目標値の増加量と減少量とが等しくされている。また、図のW0は、支持荷重取得部834によって取得された全体支持荷重に基づいて決定された正常時の支持荷重目標値の大きさを示している。なお、図のW0の値が、各サスペンション装置314毎に異なっていてもよい。
次に、ばねレート目標値の決定(S43)について説明する。正常時の各サスペンション装置314についての「全体ばねレート目標値Ks」の設定値であるKs0(前輪側:Ks0f、後輪側:Ks0r)は、それぞれECU820の記憶部230に記憶されている。したがって、空気圧が低下していない車輪14である空気圧正常輪に対応するサスペンション装置314の全体ばねレート目標値Ksは、正常時(空気圧が低下していない状態)の目標値であるKs0にされる。なお、Ks0の値が、各サスペンション装置314毎に異なっていてもよい。
一方、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の「全体ばねレート目標値Ks」の値であるKsp(前輪側:Kspf、後輪側:Kspr)と空気圧との関係が、図30に示す空気圧−ばねレートマップとしてECU820の記憶部230に記憶されている。その図から分かるように、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の全体ばねレート目標値Ksが、空気圧の低下に応じて増加するようにされている。空気圧低下輪は、空気圧の低下によってタイヤの剛性が低下するが、サスペンション装置314の全体ばねレートを増大させることによって、タイヤの剛性低下の影響を減少させることができる。なお、空気圧−ばねレートマップは、各サスペンション装置314毎に異なっていてもよい。
空気圧正常輪および空気圧低下輪の各々についての「全体ばねレート目標値Ks」が取得されると、第6実施例と同様に、それら全体ばねレート目標値Ks(Ks0,Ksp)から「コイルばねレートKm」を引くことによって「エアばねレート目標値Ka」が取得される。なお、エアばねレート目標値Kaは、前方のサスペンション装置314についてはエアばねレート目標値Kafが取得され、後方のサスペンション装置314についてはエアばねレート目標値Karが取得される。
式〔6−5〕 Kaf=Ksf−Kmf
式〔6−6〕 Kar=Ksr−Kmr
なお、上式において、空気圧正常輪については、Ksf=Ks0f、Ksr=Ks0rとされ、空気圧低下輪については、Ksf=Kspf、Ksr=Ksprとされる。また、前後のサスペンション装置314の「コイルばねレートKmf,Kmr」は記憶部230に記憶されている。
さらに、車高目標値の決定(S44)について説明する。本実施例において、後述の式中の「X」が車高目標値に相当する。そして、空気圧正常時における各サスペンション装置314毎の車高目標値Xnは、ECU820の記憶部230に記憶されている。一方、空気圧低下輪の車高目標値Xpは、以下の処理によって決定される。まず、ECU820により、各車輪速センサ672の検出結果に基づいて、空気圧低下輪の車軸−路面間距離、つまり、接地して変形した状態のタイヤ半径が取得される。空気圧正常時の車軸−路面間距離は既知であり、複数の空気圧正常輪の回転速度に基づいて車速が取得され、その車速と、空気圧正常輪と空気圧低下輪との回転速度比から空気圧低下輪の車軸−路面間距離が取得される。その回転速度比と車軸−路面間距離との関係が、ECU820の記憶部230に、車軸−路面間距離マップとして記憶されており、その車軸−路面間距離マップに基づいて車軸−路面間距離が取得される。そして、空気圧低下輪の車軸−路面間距離は、空気圧正常輪よりも小さくなっているため、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の車高目標値Xpは、正常時の車高目標値Xnを増加させるようにが決定される。なお、車軸−路面間距離マップは、各サスペンション装置314毎に異なっていてもよい。
ここで、支持荷重が0の場合のタイヤ外径を「R0」、空気圧正常輪の車軸−路面間距離を「R1」、空気圧低下輪の車軸−路面間距離を「R2」とすると、空気圧正常輪の変形度合いは「R0−R1」、空気圧低下輪の変形度合いは「R0−R2」となる。空気圧低下による車軸−路面間距離の減少量は「R1−R2」であるが、支持荷重の減少を考慮することが望ましい。つまり、上記S42において、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の支持荷重目標値が減少させられているため、空気充填量の変更後に空気圧低下による車軸−路面間距離の減少量は「R1−R2」よりも若干小さくなる。
そこで、タイヤの変形度合いは概ね支持荷重と比例すると仮定し、支持荷重の減少割合をδ(δ=支持荷重減少量/減少前の支持荷重目標値)とすれば、支持荷重減少後の空気圧低下輪の変形度合いは(R0−R2)・(1−δ)となる。したがって、空気圧低下による車軸−路面間距離の減少量ΔRは、空気圧低下輪の変形度合い「(R0−R2)・(1−δ)」から空気圧正常輪の変形度合い「R0−R1」を引くことによって求められる。
〔式7−1〕 ΔR=(R0−R2)・(1−δ)−(R0−R1)
=(R1−R2)−δ(R0−R2)
以上の結果から、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の車高目標値Xpが、正常時の車高目標値XnよりもΔR増加するようにされる。一方、空気圧正常輪に対応するサスペンション装置314の車高目標値Xnは変更されない。なお、〔式7−1〕を用いずに車軸−路面間距離の減少量ΔRを取得することもできる。例えば、減少量ΔRと、車輪14の空気圧および支持荷重の減少割合との関係を予め調べてマップを作成し、記憶部230に記憶させておくこともできる。
各サスペンション装置314について支持荷重目標値,ばねレート目標値および車高目標値が変更されると、S45において、各サスペンション装置314毎に、上記3つの目標値の各々の変更前後の値の差が、それぞれに設定されたしきい値を超えたか否かが判定される。そして、目標値の変更前後の値の差がしきい値を超えるものがない場合には、つまり、各目標値が変更前とあまり変わらない場合には、車高・ばねレート調整処理を行う必要性は小さいため、S46以下の処理がスキップされる。一方、S45において、各サスペンション装置314毎についての上記3つの目標値のうち、1以上の目標値の変更前後の値の差がしきい値を超えた場合には、各サスペンション装置314の「車高・ばねレート調整処理”」が行われる(S46)。
7.3. 車高・ばねレート調整処理”.
車高・ばねレート調整処理”(S46)は、第1,第2,第6実施例と同様の処理(S11〜S16、S11’〜S16’)が各サスペンション装置314毎に行われて、各弾性伸縮装置310の上下の空気室44等の空気充填量が変更される。なお、図31において、図9,図25に記載されたステップの番号の後に「”(ツーダッシュ)」を付して示した。S11”において、エアばねレート目標値Kaf、Karが、S43の処理において決定された値にされる。また、車高目標値Xは、S44の処理において決定されたように、正常輪については車高目標値Xn、空気圧低下輪については車高目標値Xp(=Xn+ΔR)とされる。本実施例において、サスペンション装置314がコイルスプリング300を備えているため、S12”の目標PV値a,bを取得する際に、第2実施例の〔式2−3〕,〔式2−4〕が用いられる。その際には、Fhが支持荷重目標値とされる。また、ΔFが、エアばねレート目標値Kaf、Karに基づいて、式〔6−8〕によって求められる。
さらに、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の「X」は車高目標値の決定の際に決定されている。一方、正常時の「X」の値は、記憶部230に記憶されている。さらにまた、「X」の値と上下の空気室44等の容積「Va,Vb」の値との関係が容積値マップとして記憶されており、「X」の値に対応する「Va,Vb」の値が読み出される。さらにまた、コイルスプリング300のばね定数「K」は、コイルばねレートKmf,Kmrとされる。さらにまた、式〔2−3〕等における定数「C」は、式〔2−2〕によって求められる。その際には、Fhが、変更後の「全体支持荷重目標値」とされ、X0は予め設定された値にされる。以上のように各種の値が定まり、第1,第2,第6実施例と同様に、車高・ばねレート調整処理”により、目標PV値を取得することができる。
目標PV値の取得後、S13”の判定を経て測定PV値が取得される(S14”)。なお、本実施例では、S13”において、三方切換バルブ662が閉状態であり、かつ、各種のセンサ672,712等の検出値に基づいて取得された「各種の測定値」、具体的には、車体の横加速度,前後加速度(車速の変化の度合い),ストローク量,ステアリングホイールの操作角,操作速度が、それぞれに設定された値を超えない場合に、判定がYESとされる。すなわち、車両走行中においても測定PV値が取得されるのであるが、例えば、悪路(例えば、比較的凹凸の多い路面)走行、比較的急激な旋回,あるいは加減速が行われている場合には、測定PV値が取得されないようにされているのである。なお、測定PV値は、設定された時間間隔のPV値の平均的な値とされる。
その後、測定PV値と目標PV値との差が設定値を超えていた場合(S15”)に、S16”において、上下の空気室44等の空気充填量が変更される。そして、各サスペンション装置314の支持荷重が変更されるとともに、車高とばねレートとが適正にされる。なお、本実施例において、S16”の処理が、上述と同様に、悪路走行や、比較的急激な旋回,あるいは加減速が行われていない状態において、空気充填量が変更される。すなわち、各種の測定値(横加速度,前後加速度,ストローク量,操作角,操作速度)が、それぞれの設定値よりも小さい状態において空気充填量が変更される。また、上下の空気室44等の空気充填量の変更においては、必要に応じて、コンプレッサ612、連通切換器614,660の切換バルブ630等、大気連通切換バルブ646等が作動させられる(上記第5実施例参照)。以上に述べた処理によって、空気圧低下輪が受ける荷重を減少させることができる。
空気充填量が変更されると、S47において、各目標値が記憶部230に記憶されて本プログラムの一回の実行が終了する。その記憶された目標値は、その後再び本プログラムが実行された際に、S45の判定処理で用いられる。
本実施例において、「離間距離目標値決定部」が、車高目標値決定部840を含んで構成されている。また、「車輪ガス圧依拠決定部」が、車輪空気圧依拠決定部838を含んで構成されている。なお、本実施例において、車輪空気圧依拠決定部838は、空気圧低下輪に対応するサスペンション装置314の支持荷重目標値が減少させられる際にばねレート目標値を決定しており、「支持荷重低減時決定部」としても機能している。
本実施例において、サスペンション装置314はコイルスプリング300を備えていたが、上記第5,第6実施例と同様に、コイルスプリングを備えていないサスペンション装置20によっても空気圧低下輪の支持荷重を減少させることができる(図2,図19参照)。その場合には、ばねレート目標値の決定において、「全体ばねレート目標値Ks」と「エアばねレート目標値Ka」とが等しくなり、「コイルばねレートKm」が0となる。また、「全体支持荷重」と「エア支持荷重」とが等しくなる。また、目標PV値の取得において、第1実施例の式〔1−13〕、式〔1−14〕等を用いることができる。
なお、上記全ての実施例において、「ガス充填量推定物理量」として、空気室44等の圧力と容積の積を示す値である「PV値」が用いられていた。そのPV値を、「PVγ値」とすることもできる。なお、Vの指数は、γ=Cp/Cv(Cp:定圧比熱、Cv:定容比熱)である。なお、PVγ値も圧力と容積の積を示す値の一種である。
請求可能発明の第1実施例であるサスペンション装置を備えたサスペンションシステム模式的に示す図である。 上記サスペンション装置の弾性伸縮装置の断面を示す図である。 従来のエアサスペンション装置のばね荷重特性を示す図である。 本実施例のサスペンション装置(弾性伸縮装置)のばね荷重特性を示す図である。 車高あるいはばねレートを変更した際の上記サスペンション装置のばね荷重特性を示す図である。 上記弾性伸縮装置を模式的に示すモデル図である。 上記弾性伸縮装置のピストンのシール部材による摩擦抵抗の大きさを模式的に示す図である。 上記エア給排気装置を制御する電子制御ユニットの機能を模式的に示す図である。 上記電子制御ユニットによって実行される車高−ばねレート調整プログラムのフローチャートを示す図である。 上記とは別の実施例のサスペンション装置(コイルスプリング付)の弾性伸縮装置の断面を示す図である。 上記サスペンション装置(弾性伸縮装置)のばね荷重特性を示す図である。 上記とはさらに別の実施例のサスペンション装置(ピストン径変化型)の弾性伸縮装置の断面を示す図である。 上記サスペンション装置(弾性伸縮装置)のばね荷重特性を示す図である。 上記とはさらに別の実施例のサスペンション装置(ピストン径変化型+コイルスプリング付)の弾性伸縮装置の断面を示す図である。 上記サスペンション装置(弾性伸縮装置)のばね荷重特性を示す図である。 上記とはさらに別のサスペンションシステム(エア移動型)を模式的に示す図である。 上記サスペンションシステムのエア移動装置を制御する電子制御ユニットの機能を模式的に示す図である。 上記電子制御ユニットによって実行される急速車高調整プログラムのフローチャートを示す図である。 上記サスペンションシステム(エア移動型)の変形例を模式的に示す図である。 上記とはさらに別のサスペンションシステム(固有振動適正化型)の電子制御ユニットの機能を模式的に示す図である。 走行する車両と、路面の凹凸を模式的に示す図である。 車両が路面の凹凸を通過した際の、ばね上の振動を模式的に示す図である。 ばね上固有振動適正化プログラムのフローチャートを示す図である。 ばね上固有振動周期マップを模式的に示す図である。 上記電子制御ユニットによって実行される車高−ばねレート調整処理’のフローチャートを示す図である。 上記とはさらに別のサスペンションシステム(空気圧低下時対処型)を模式的に示す図である。 上記サスペンションシステムの電子制御ユニットの機能を模式的に示す図である。 空気圧低下次時処理プログラムのフローチャートを示す図である。 空気圧−支持荷重マップを模式的に示す図である。 空気圧−ばねレートマップを模式的に示す図である。 上記電子制御ユニットによって実行される車高−ばねレート調整処理”のフローチャートを示す図である。
符号の説明
<第1実施例> 10:車両用サスペンションシステム 14:車輪 20:サスペンション装置 24:車体 30:弾性伸縮装置 31:エア給排気装置 32:シリンダハウジング 34:ピストン 36:ショックアブソーバ 40:オイルシリンダ 44:第1空気室 46:第2空気室 60:ロッドシール部 130,132:給排気口 160:三方切換バルブ 180a,b:圧力センサ 200:電子制御ユニット[ECU] 250:車高・ばねレート調節部 252:目標PV値取得部(目標充填量推定物理量決定部) 254:測定PV値取得部 <第2実施例> 300:コイルスプリング 310:弾性伸縮装置 312:サスペンションシステム 314:サスペンション装置 320:保持機構 <第3実施例> 400:弾性伸縮装置 410:サスペンション装置 420:シリンダハウジング 422:大径シリンダ部 424:小径シリンダ部 433:段差部
434:環状壁部 450:第1ピストン 452:第2ピストン 454:ピストン部 456:筒部 458:第1空気室 459:第2空気室 460:第1相対移動禁止部 462:第2相対移動禁止部 490:給排気口 <第4実施例> 500:サスペンション装置 510:弾性伸縮装置 <第5実施例> (急速車高調整型) 600:サスペンションシステム 610:エア移動装置 612:コンプレッサ 614:連通切換器 616,618:エア通路 620:吸入部 622:吐出部 624:吸入側エア通路 626:吐出側エア通路 630,632:三方切換バルブ 646:大気連通切換バルブ 650:ドライヤ(水分除去器) 654:大気連通路 660:連通切換器 670:電子制御ユニット[ECU] 690:サスペンションシステム[コイルスプリング無し] <第6実施例> (固有振動適正化型) 710:電子制御ユニット[ECU] 712:横加速度センサ 716:操作角センサ 718:車速選択スイッチ 720:支持荷重取得部 722:ばねレート目標値決定部 724:固有振動周期依拠決定部 <第7実施例> (空気圧低下時対処型) 800:サスペンションシステム 810:空気圧取得装置 812:空気圧センサ 814:空気圧情報受信機 820:電子制御ユニット[ECU] 830:支持荷重目標値決定部 832:ばねレート目標値決定部 834:支持荷重取得部 836:支持荷重目標値変更部 838:車輪空気圧依拠決定部 840:車高目標値決定部 842:車軸−路面間距離依拠決定部

Claims (16)

  1. ガスを圧縮して弾性力を発生させることによって車輪と車体とを弾性的に連結するガススプリング機構を備えたサスペンション装置であって、
    前記ガススプリング機構が、
    車輪と車体との接近に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させる第1ガス室と、
    車輪と車体との離間に応じて容積が減少させられて車輪と車体とを接近させる向きの弾性力を発生させる第2ガス室とを含んで構成されることを特徴とするサスペンション装置。
  2. 前記ガススプリング機構が、
    車輪と車体との一方に連結されたシリンダハウジングと、
    そのシリンダハウジングの内部に移動可能に嵌合させられたピストンと、
    一端部が前記ピストンに取り付けられるとともに、他端部が前記シリンダハウジング外部に延び出して前記車輪と車体との他方に連結されたピストンロッドと
    を含んで構成され、
    前記シリンダハウジングの内部が前記ピストンによって区画されて前記第1ガス室および前記第2ガス室が形成されたものである請求項1に記載のサスペンション装置。
  3. 前記ピストンが、
    前記シリンダハウジングの内部に移動可能に嵌められたピストン部と、そのピストン部に設けられて前記第1ガス室と前記第2ガス室とを連通させる筒部とを有する第1ピストンと、
    前記ピストンロッドの前記一端部が取り付けられるとともに、前記筒部の内周部にその筒部と相対移動可能に嵌められた第2ピストンと、
    前記筒部と前記第2ピストンとの設定相対位置を超える相対移動を禁止する相対移動禁止部と
    を含んで構成された請求項2に記載のサスペンション装置。
  4. 当該サスペンション装置が、
    車輪と車体との接近に応じて変形させられて車輪と車体とを離間させる向きの弾性力を発生させるばね部材を備えた請求項1ないし3のいずれかに記載のサスペンション装置。
  5. 前記ガススプリング機構が、
    前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々に、ガスの供給・排出を行うための給排気口を備えた請求項1ないし4のいずれかに記載のサスペンション装置。
  6. 当該サスペンション装置が、
    前記第1ガス室と前記第2ガス室とに、個別にガスの供給・排出が可能なガス給排気装置と、
    そのガス給排気装置を制御することによって、車輪と車体との基準となる離間距離と前記ガススプリング機構のばね特性とを任意に変更可能とするガススプリング制御装置と
    を備えた請求項1ないし5のいずれかに記載のサスペンション装置。
  7. 前記ガススプリング制御装置が、
    前記基準となる離間距離の目標値と前記ばね特性の目標値とに基づいて、前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々について、ガスの充填量を推定することが可能な物理量である充填量推定物理量の目標値を決定する目標充填量推定物理量決定部を備えた請求項6に記載のサスペンション装置。
  8. 前記ガススプリング制御装置が、前記第1ガス室および前記第2ガス室の各々の前記充填量推定物理量が、それら各々の前記充填量推定物理量の目標値に近づくように前記ガス給排気装置を制御する充填量推定物理量依拠制御部を備えた請求項7に記載のサスペンション装置。
  9. 当該サスペンション装置が、
    4つの車輪の各々に対応する前記ガススプリング機構を4つ備えた車両に設けられ、それら4つの前記ガススプリング機構のうちの1つの前記ガススプリング機構である特定ガススプリング機構を備えるものであり、
    前記ガススプリング制御装置が、
    前記特定ガススプリング機構とそれの対角に位置する前記ガススプリング機構との少なくとも一方の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を減少させ、前記特定ガススプリング機構に隣り合う2つの前記ガススプリング機構の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の支持荷重の目標値を増大させる支持荷重目標値変更部を備えるとともに、
    前記目標充填量推定物理量決定部により、支持荷重の目標値に基づいて前記特定ガススプリング機構の前記第1ガス室と前記第2ガス室との充填量推定物理量を決定するように構成された請求項7または8に記載のサスペンション装置。
  10. 前記特定ガススプリング機構のばね特性が、設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に対する前記ガススプリング機構が発生する弾性力の変化の度合いで規定されるものであり、
    前記ガススプリング制御装置が、前記ガススプリング機構のばね特性の目標値として、前記弾性力の変化の度合いの目標値であるばね特性目標値を決定するばね特性目標値決定部を備え、
    そのばね特性目標値決定部が、前記特定ガススプリング機構とそれの対角に位置するものとの少なくとも一方の支持荷重を減少させる場合に、前記特定ガススプリング機構の前記弾性力の変化の度合いが低下しないように前記ばね特性目標値を決定する支持荷重低減時決定部を備えた請求項9に記載のサスペンション装置。
  11. 前記ガススプリング機構のばね特性が、設定された範囲における車輪と車体との離間距離の変化に対する前記ガススプリング機構が発生する弾性力の変化の度合いで規定されるものであり、
    前記ガススプリング制御装置が、前記ガススプリング機構のばね特性の目標値として、前記弾性力の変化の度合いの目標値であるばね特性目標値を決定するばね特性目標値決定部を備えた請求項6ないし10のいずれかに記載のサスペンション装置。
  12. 前記ばね特性目標値決定部が、
    前記ガススプリング機構が支持する車体の部分のばね上固有振動数が目標値になるように、前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を決定する固有振動数依拠決定部を備えた請求項11に記載のサスペンション装置。
  13. 前記ガススプリング機構が、
    車両の互いに隣り合う前輪と後輪との一方と、車体とを弾性的に連結するものであり、
    前記ばね特性目標値決定部が、
    前輪側のばね上固有振動の周期と後輪側のばね上固有振動の周期との差を、走行時の車両が前後輪の軸間距離だけ移動する際の時間と等しくさせるべく、前記ガススプリング機構の前記ばね特性目標値を決定する固有振動周期差依拠決定部を備えた請求項11または12に記載のサスペンション装置。
  14. 前記ばね特性目標値決定部が、
    車輪内のガス圧力を推定することが可能な車輪圧力推定情報に基づいて、車輪内のガス圧力が低下した場合に、前記弾性力の変化の度合いが大きくなるように前記ばね特性目標値を決定する車輪ガス圧力依拠決定部を備えた請求項11ないし13のいずれかに記載のサスペンション装置。
  15. 当該サスペンション装置が、
    ガスを吸引する吸入部とガスを吐出する吐出部とを有して、前記吸入部から吸入したガスを前記吐出部から吐出するポンプと、
    前記吸入部と前記吐出部との一方を前記第1ガス室と前記第2ガス室との一方に連通させるとともに、前記吸入部と前記吐出部との他方を前記第1ガス室と前記第2ガス室との他方に連通させるガス移動状態と、前記吸入部と前記吐出部との各々と、前記第1ガス室と前記第2ガス室との各々との連通が遮断された状態であるガス移動禁止状態とを切り換える連通切換器と
    を含んで構成されるガス移動装置を備えた請求項1ないし14のいずれかに記載のサスペンション装置。
  16. 前記ガス移動装置が、
    前記ポンプの前記吸入部と前記連通切換器とを接続する吸入側ガス通路と大気とを連通させる大気連通路に配設されて大気から吸入されるガスの水分を除去する水分除去器と、
    前記大気連通路に配設されて前記吸入側ガス通路と大気との連通の有無を切り換える大気連通切換器と
    を含んで構成された大気ガス吸入排出装置を備えた請求項15に記載のサスペンション装置。

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