以下、本発明の実施の形態を説明する。
配線板用シート材1は、Bステージ状態の樹脂層4に、転写用基材6に設けられた導体回路5を転写すると共にこの導体回路5に実装された電気部品10を樹脂層4内に埋設することにより作製される。
図12(a)に、転写用基材6の一面に導体回路5を設けた様子を示す。導体回路5を転写用基材6に形成する方法は特に限定されず、転写用基材6に銅箔等の金属箔を貼着した後にエッチング処理を施して導体回路5を形成することもできるが、特に導体回路5の形成を電解銅めっきなどによるパターンめっきにより行うと、微細な導体回路5を容易に形成することができ、また両面が平滑な導体回路5を容易に形成することができて、最終的に得られる配線板の高周波損失を低減し、高周波信頼性を向上することができる。この導体回路5は、厚み5〜35μmに形成することが好ましい。
めっき処理による導体回路5の形成時は、例えば転写用基材6の表面にめっきレジストを形成後、めっき処理を施すことにより転写用基材6に導体回路5を設けた後、めっきレジストを剥離することにより行われる。
めっきレジストの形成は、感光性のドライフィルムやレジストインク等を用いた一般的な手法により行うことができる。まためっき処理による導体回路5の形成は、銅、ニッケル、金等からなるめっき被膜を一般的な手法により形成して行うことができる。
このように導体回路5をめっき処理により形成する場合には、後述する導体回路5の転写時における樹脂層4や絶縁層16と導体回路5との密着性を向上するために、高周波特性を損なわない程度に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。
このように転写用基材6に設けられた導体回路5には、図12(b)に示すように、その所定位置に電気部品10を実装する。この電気部品10としては、チップ状抵抗体、チップ状コンデンサ、チップ状インダクタ等のような受動部品を実装することができるものであり、このときチップ状部品は半田14にて導体回路5に接続して実装することができる。また電気部品10としては、シリコンベアチップ等の半導体ベアチップのような能動部品を実装することもでき、この場合は、半導体ベアチップを半田ボール等により導体回路5に接続し、アンダーフィルを充填硬化して実装することができる。アンダーフィルとしては、一般的に用いられるエポキシ樹脂組成物等からなるものを用いることができる。
尚、電気部品10の実装は半田14によるものには限られず、導電性ペーストを用いて実装することもできるが、半田14による接続の方が実装信頼性が高い。
また、電気部品10を実装するにあたり、導体回路5が形成された転写用基材6上の所定箇所に、電気部品10として抵抗素子及びコンデンサ素子の少なくともいずれかを印刷成形することもできる。例えば抵抗素子(印刷抵抗)を印刷成形する場合には、熱硬化性樹脂中に金属粉を混入するなどしたペースト状の抵抗材料を印刷した後、加熱することにより、高容量の素子を形成することができる。またコンデンサ素子を印刷成形する場合には熱硬化性樹脂中に高誘電率フィラーとして、チタン酸バリウム等を混入するなどしたペースト状の誘電材料を印刷した後、加熱することにより高容量の素子を形成することができる。特に、ペーストの樹脂分を焼成して揮散させることによりセラミック状にして、より高い誘電素子を形成することができる。
このように電気部品10を印刷成形する場合には、非常に薄い素子を形成することが可能になり薄型化を実現できる。また、電気部品10を半田実装することがないので、プリント配線板加工の既存設備での加工が可能となる。
また、印刷成形された電気部品10に対しては、レーザによるトリミング等により容量値や抵抗値の調整が行われるが、この場合、FR−4タイプ等の配線板上に直接印刷成形する場合、熱による基板の破損や、熱収縮、熱劣化等による基板の信頼性低下などの、悪影響が生じるおそれがある。これに対して、電気部品10を転写用基材6上に印刷成形すると、電気部品10を転写用基材6上に実装した状態でレーザ加工を施すことができ、下地の破損や配線板用シート材1本体に対する熱による悪影響等を考慮せずに加工を行うことができるものである。
上記の導体回路5は、転写用基材6と導体回路5との間の密着強度(剥離強度)が好ましくは0.098〜1.96mN/cm(10〜200gf/cm)、更に好ましくは0.294〜0.882mN/cm(30〜90gf/cm)となるように形成するものであり、このようにすると、転写用基材6と導体回路5との間に充分に密着性が得られると共に、樹脂層4や絶縁層16に導体回路5を転写する際における、導体回路5からの転写用基材6の剥離性が高められる。また、半田14を用いた接続を行う場合、転写用基材6の耐熱性が高く、かつ半田14による接続時に加熱を受けた場合に転写用基材6から導体回路5が剥離することが防止されて、半田14による実装が容易に行え、電気部品10と導体回路5との間に高い接続信頼性を得ることができる。この密着強度が小さすぎると、導体回路5と転写用基材6との間の密着性が不充分となり、またこの密着強度が大きすぎると転写用基材6から樹脂層4に導体回路5を転写する際に導体回路5と転写用基材6とを完全に剥離することができなくなるおそれがある。
上記の転写用基材6としては、金属基材を用いることが好ましく、特にステンレス基材を用いると、ステンレスは銅などの金属からなる導体回路5や、樹脂層4との密着性が低いことから、導体回路5の転写時における樹脂層4及び導体回路5からの剥離性が高くなり、導体回路5を樹脂層4に容易に転写することができる。ステンレス基材としては、SUS304、SUS301が好ましいが、特にSUS301がめっき密着性の点から優れている。
ステンレス基材を用いる場合には、厚みは50〜200μmであることが好ましく、特に100μm程度であると取扱性が良好である。すなわち、厚み50〜200μm、特に厚み100μmのステンレス基材を用いている場合には、転写用基材6は高い靱性を有すると共に適度な撓りやすさを有し、後述するように導体回路5の転写にあたって転写用基材6を樹脂層4から剥離させる際に、転写用基材6を撓らせながら、樹脂層4が湾曲することなく、転写用基材6を容易に剥離することができて、取扱性が良好なものである。また、このようにステンレス基材を用いると、転写用基材6の靱性が高くなって、電気部品10を多数実装する場合でも取扱性が良好となり、例えば電気部品10を導体回路5に多数実装する場合のリフロー炉への搬入、取り出し等の作業が容易に行える。また、導体回路5の形成や電気部品10の実装時に表面が汚れた場合でも、導体回路5形成後や、あるいは電気部品10の実装後に、脱脂等により容易に洗浄ができて、樹脂層4に汚れが転写されないようにして信頼性の低下を防ぐことができる。
このようなステンレス基材を用いる場合には、めっき処理などによる転写用基材6への導体回路5の形成時における転写用基材6と導体回路5との密着性をある程度確保して、半田リフロー加熱時等に転写用基材6から導体回路5が不用意に剥離しないようにすると共に、導体回路5の転写時に転写用基材6を樹脂層4から剥離する際には転写用基材6から導体回路5を剥離させて導体回路5を樹脂層4側に確実に残存させるために、転写用基材6に対して、導体回路5が形成される面に、硝酸とフッ酸との混酸や、あるいは塩化第二鉄溶液等のエッチング液によりソフトエッチング処理を施すなどの化学研磨による粗化処理を施して転写用基材6と導体回路5との間の密着強度を調整することが好ましく、このような処理により、好ましくは転写用基材6の表面粗度Raを2μm以下、特に好ましくは表面粗度Raを0.1〜0.5μmに形成するものである。
また、給電用又は接地用の導体回路5を形成する場合には、転写用基材6に対して導体回路5を面状に形成しても良いが、より好ましくは導体回路5を網目状に形成するものであり、このようにすると、ステンレス基材等からなる転写用基材6と銅等からなる導体回路5の熱膨張率が相違していても、熱による負荷を受けた際の熱応力が緩和されて、転写用基材6から導体回路5が不用意に剥離することを防止することができる。
図13は、転写用基材6に、網目状のグランド層5aを設けた様子を示すものであり、図示の例では、導体回路5として、網目状のグランド層5aと、通常の回路5bとが併設されている。
一方、樹脂層4を形成するための樹脂組成物は、樹脂成分と無機フィラーとを含有するものであり、樹脂成分としては熱硬化性樹脂を含有すると共に、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、表面処理剤等が配合される。また粘度調整のために溶剤を配合することもできる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定はしないが、既知のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂等が挙げられるものであり、これらのうち一種又は二種以上を用いることができる。また、難燃性を付与するためには、熱硬化性樹脂とは別に添加型の難燃剤を加えても良いが、特に熱硬化性樹脂の一部又は全部として臭素化されたものや、リン変性されたものを用いると、充分な耐熱性や機械的強度を維持しつつ、難燃性の向上が図れる。
硬化剤や硬化促進剤を配合する場合は、特に制限されるものではなく、使用する熱硬化性樹脂に応じた適宜のものが、適当量配合される。例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を配合する場合には、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂やジシアンジアミド等のような公知のエポキシ樹脂の硬化剤を配合することができ、また硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾールやトリフェニルホスフィン等のような公知の硬化促進剤を配合することができる。
また表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等の適宜のカップリング剤や、りん酸エステル系分散剤、エーテルアミン系分散剤等の適宜の分散剤等を配合することができる。
また溶剤は低沸点のものを使用することが好ましく、この場合、樹脂組成物中に混合する混合溶剤として使用することにより、樹脂組成物から形成される乾燥後の樹脂層4の表面形状が良好となる。このような溶剤としては、特にメチルエチルケトン、アセトン等を使用することが好ましい。高沸点溶剤を用いる場合には、乾燥時に充分揮発せず残留する可能性が高く、樹脂層4を硬化して形成される絶縁層16の電気絶縁性や機械的強度の低下の原因となるおそれがある。
無機フィラーは樹脂組成物中に高充填することにより、樹脂組成物にて形成される樹脂層4、及びこの樹脂層4を硬化成形して得られる絶縁層16の熱膨張率を低減し、配線板の成形時における導体回路5を構成する金属や電気部品10との熱膨張係数の整合性を向上することができる。このとき無機充填剤の配合量は、好ましくは組成物中の溶剤を除く全量に対して80〜95質量%とするものであり、このようにすれば、絶縁層16の熱膨張係数が20ppm/℃以下となって良好な低熱膨張性を有し、導体回路5を構成する金属や電気部品10との熱膨張係数の整合性が一層良好となって、熱による負荷を受けた際に、絶縁層16と導体回路5との剥離や、電気部品10の破損、断線等の不良の発生を防止することができる。
無機フィラーとしては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)等を用いることができ、これらのものを一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの無機フィラーは熱伝導性、誘電率、粒度分布、色調の自由度が高いことから、所望の機能を選択的に発揮させる場合に適宜粒度設計を行って、容易に高充填化を行うことができ、特に無機フィラーとして最大粒径が10μm以下のものを用いると、貫通孔3の形成のためのレーザー加工、ドリル加工時の孔形状や磨耗を良好に保つことができる。また、樹脂シートを50μm以下の薄膜とする場合にも良好な外観を得ることができる。
また、組成物中における無機フィラーの分散性を向上させるために、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等の適宜のカップリング剤や、りん酸エステル系分散剤、エーテルアミン系分散剤等の適宜の分散剤等を添加することが好ましい。
また、流動性を調整したり、樹脂層4やその硬化物である絶縁層16の割れ防止のために、フェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することもできる。
熱硬化性樹脂組成物は、上記のような各成分を混練機を用いてスラリー化し、最適な粘度に調整することによって得ることができる。
樹脂層4を形成するためのキャリア基材7としては、PETフィルム等の合成樹脂フィルムを用いることができ、また金属箔を用いることもできる。金属箔を用いる場合には、キャリア基材7を樹脂層4から剥離する際の剥離性を向上するために、樹脂層4が形成される面を鏡面状に形成することが好ましい。このような金属箔としては、レーザ加工時に貫通孔3を形成可能な材質が選択され、圧延銅箔、電解銅箔、アルミニウム箔、金属合金箔、金属クラッド箔等を用いることが好ましい。
このキャリア基材7の一面に、樹脂層4の形成用の樹脂シート4aを形成する。樹脂シート4aを形成するにあたっては、まず図14(a)に示すように、キャリア基材7の一面に上記の樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥することにより半硬化状態(Bステージ状態)として、キャリア基材7の一面に樹脂シート4aを形成する。このときの加熱乾燥条件は、樹脂組成物の組成にもよるが、130〜170℃で2〜10分間加熱することが好ましい。また、樹脂シート4aの厚みは50〜300μmに形成することが好ましい。
そして図14(b)に示すように、形成された樹脂シート4aから、キャリア基材7を剥離する。
また、樹脂シート4aとしては、不織布にスラリー状の樹脂組成物を含浸乾燥させることにより形成したものを用いることもできる。不織布としては、適宜のガラス不織布、有機繊維不織布等を用いることができる。
上記のような樹脂シート4aと、表面に転写用の導体回路5が形成されると共にこの導体回路5に電気部品10が実装された転写用基材6とを用い、樹脂シート4aから形成される樹脂層4に、導体回路5を転写用基材6から転写することにより、両面に導体回路5が形成されると共にこの導体回路5に実装された電気部品10が樹脂層4に埋設された配線板用シート材1が得られる。
図1に配線板用シート材1の製造工程の一例を示す。ここでは、まず、図1(a)に示すように、導体回路5の形成がなされると共にこの導体回路5に電気部品10が実装された転写用基材6を、導体回路5を形成した面が対向しあうように配置すると共に、その間に樹脂シート4aを配置して、積層する。樹脂シート4aは、電気部品10の導体回路5からの突出寸法に応じて、一枚又は複数枚配される。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。
この成形過程においては、まず樹脂シート4aが溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート4aが積層されている場合には、これらの樹脂シート4aが一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート4aが流動することにより、転写用基材6に形成された導体回路5及び導体回路5に実装された電気部品10が、樹脂シート4aから形成される樹脂層4中に埋設される。このとき電気部品10の下面にアンダーフィルを充填していない場合には溶融軟化した樹脂層4が充分に流動して、電気部品10と転写用基材6の間にも充分に樹脂が充填されるような条件で行うものであり、また成形時の圧力は、溶融軟化時の樹脂層4の流動性に応じて設定する必要があるが、例えばこの溶融軟化時の流動性が高い場合には、真空ラミネータにより容易に成形可能であり、また溶融軟化時の流動性が小さい場合には、2.94MPa(30kgf/cm2)程度まで加圧して成形することができる。また、電気部品10が樹脂層4中に埋設させるためには、樹脂シート4aが溶融軟化した時点から徐々に昇圧することが好ましい。また、この加熱加圧成形は、減圧下又は真空下において行うことが好ましく、この場合は内部にボイドが混入しにくくなり、信頼性が向上する。
次いで、図1(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより配線板用シート材1(配線板用シート材1a)が得られる。この配線板用シート材1aは、樹脂層4の両側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、両面の導体回路5にそれぞれ接続される電気部品10が埋設されている。
転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。この剥離後の転写用基材6は、酸洗浄等による洗浄後に、再び導体回路5を形成して、配線板用シート材1の作製に利用できる。
上記の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件で行うと、両面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に各導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設された配線板(両面板)を得ることができる。このときの加熱温度は、樹脂層4を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、160〜180℃の条件で行うことが好ましい。
また、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1aを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、樹脂層4を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、100〜140℃の温度で2〜10分間程度、加熱することが好ましい。また、配線板用シート材1aを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
図2は、配線板用シート材1の製造工程の他例を示すものであり、樹脂シート4aと、表面に転写用の導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、表面に転写用の導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装されていない転写用基材6とを用いて、樹脂シート4aから形成される樹脂層4に、導体回路5を転写用基材6から転写することにより、両面に導体回路5が形成されると共に片面の導体回路5に実装された電気部品10が樹脂層4に埋設された配線板用シート材1(配線板用シート材1g)を形成している。
ここでは、まず、図2(a)に示すように、導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装されていない転写用基材6とを、導体回路5を形成した面が対向しあうように配置すると共に、その間に樹脂シート4aを配置して、積層する。樹脂シート4aは、電気部品10の寸法に応じて、一枚又は複数枚配される。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は既述の場合と同様の条件で行うことができる。
この成形過程においては、樹脂シート4aが溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート4aが積層されている場合には、これらの樹脂シート4aが一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート4aが流動することにより、転写用基材6に形成された導体回路5及び導体回路5に実装された電気部品10が、樹脂シート4aから形成される樹脂層4中に埋設される。
次いで、図2(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより配線板用シート材1(配線板用シート材1g)が得られる。この配線板用シート材1gは、樹脂層4の両側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されている。転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。
上記の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件で行うと、片面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設された配線板(両面板)を得ることができる。このときの加熱温度は、既述の場合と同様の条件とすることができる。
また、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1gを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1gを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
また、図1(c)、図2(c)に示すように、樹脂層4から転写用基材6を剥離した後に、更に導電性材料2が充填された貫通孔3を形成して、配線板用シート材1(配線板用シート材1b)を得ることもできる。この工程の一例を図3に示す。
ここでは、図1(c)に示すものにおいて、まず図3(a)のように、導体回路5が転写された樹脂層4の一面に、保護フィルム12を積層して配置する。保護フィルム12としては、PETフィルム等の合成樹脂フィルムを用いることができ、また金属箔を用いることもできる。金属箔を用いる場合には、保護フィルム12を樹脂層4から剥離する際の剥離性を向上するために、樹脂層4が形成される面を鏡面状に形成することが好ましい。このような金属箔としては、レーザ加工時に貫通孔3が形成可能な材質が選択され、圧延銅箔、電解銅箔、アルミニウム箔、金属合金箔、金属クラッド箔等を用いることが好ましく、その表面に接着剤が塗布されているものが好ましい。
次いで、図3(b)に示すように、レーザ加工により樹脂層4の所定のビアホールの形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4、保護フィルム12、及び樹脂層4の両面の導体回路5の所定箇所を貫通するように形成される。このときレーザ光を保護フィルム12側から照射することにより、樹脂層4や導体回路5に直接レーザ光が照射されないようにして、レーザ光による保護フィルム12と樹脂層4の層間の剥離を防止することができる。
貫通孔3の形成後は、図3(c)に示すように、保護フィルム12の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。この導電性材料2としては、導電性ペースト8を用いることができ、例えば銀粉や銅粉等の導電性粉体を熱硬化性樹脂組成物中に混合したものが用いられる。導電性ペースト8の充填にあたっては、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このとき保護フィルム12によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護されるものであり、次いで導電性ペースト8の充填後に、図3(d)に示すように外面に導電性ペースト8が付着した保護フィルム12を樹脂層4側から剥離することにより、貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されると共に樹脂層4及び導体回路5の外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。また保護フィルム12の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、保護フィルム12が貼着されていた側の面では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
ここで、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写した後に、導電性材料2が充填された貫通孔3を形成するのは、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写する際には電気部品10が樹脂層4に埋設されるのに伴って樹脂層4が流動し、このとき貫通孔3が形成されている場合には貫通孔3の形状が大きく変形するおそれがあるためであり、このようなビアホール形成用の貫通孔3の変形を防止するために、樹脂層4に電気部品10が埋設された後に貫通孔3を形成するようにしたものである。
このように形成される配線板用シート材1bは、樹脂層4の両側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、また樹脂層4内には、両面の導体回路5にそれぞれ接続される電気部品10が埋設されている。更に樹脂層4と導体回路5を貫通すると共に導電性ペースト8が充填された貫通孔3が形成されている。この配線板用シート材1bの表面は、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、導電性ペースト8が突出していることを除けば凹凸なく平坦に形成される。
このようにして得られる配線板用シート材1bは、単独で配線板の製造に供することができる。この場合は、前述の樹脂層4に対して電気部品10が実装された導体回路5を転写する際の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件、あるいはこの硬化反応が進行しない条件のいずれで行っていても良く、そして得られた配線板用シート材1bに対して更に加熱加圧成形を行うことにより、樹脂層4がBステージ状態のままであればこれを硬化すると共に、導電性ペースト8を硬化して、両面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に各導体回路5に電気的に接続された電気部品10が実装され、更に両面の導体回路5が貫通孔3内の導電性ペースト8が硬化することにより形成されるビアホールにて接続された、配線板(両面板)を得ることができる。この成形過程において、導電性ペースト8の突出部分が加圧により貫通孔3内に押し込まれて密に充填され、これによりビアホールによる接続信頼性が向上する。
また、前述の樹脂層4に対して電気部品10が実装された導体回路5を転写する際の加熱加圧成形を、樹脂層4及び導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件で行っていれば、得られる配線板用シート材1bを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。この場合、上記の導電性ペースト8の突出は、後述するように多層板11におけるビアホール15の導電性の向上に寄与することとなる。また、配線板用シート材1bを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
図4は、配線板用シート材1の製造工程の他例を示すものであり、樹脂シート4aと、表面に転写用の導体回路5が形成された転写用基材6とを用いて、樹脂シート4aから形成される樹脂層4に、導体回路5を転写用基材6から転写することにより、片面に導体回路5が形成されると共にこの導体回路5に実装された電気部品10が樹脂層4に埋設された配線板用シート材1(配線板用シート材1c)を形成している。
ここでは、まず、図4(a)に示すように、導体回路5の形成がなされると共にこの導体回路5に電気部品10が実装された転写用基材6に対して、その導体回路5が形成されている面側に樹脂シート4aを配置して、積層する。樹脂シート4aは、電気部品10の寸法に応じて、一枚又は複数枚配される。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は既述の場合と同様の条件で行うことができる。
この成形過程においては、樹脂シート4aが溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート4aが積層されている場合には、これらの樹脂シート4aが一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート4aが流動することにより、転写用基材6に形成された導体回路5及び導体回路5に実装された電気部品10が、樹脂シート4aから形成される樹脂層4中に埋設される。
次いで、図4(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより配線板用シート材1cが得られる。この配線板用シート材1cは、樹脂層4の片側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されている。転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。
上記の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件で行うと、片面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設された配線板(片面板)を得ることができる。このときの加熱温度は、既述の場合と同様の条件とすることができる。
また、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1を、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1を多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
また、図4(c)に示すような、樹脂層4に電気部品10が実装された導体回路5を転写したものに対して、更に導電性材料2が充填された貫通孔3を形成して、配線板用シート材1(配線板用シート材1d)を得ることもできる。この工程の一例を図5に示す。
ここでは、まず図5(a)のように、導体回路5が転写された樹脂層4の、導体回路5が形成されていない側の一面に、保護フィルム12を積層して配置する。保護フィルム12としては、既述のものと同様のものが用いられる。
次いで、図5(b)に示すように、レーザ加工により樹脂層4の所定のビアホール形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4、保護フィルム12、及び樹脂層4の片面の導体回路5の所定箇所を貫通するように形成される。このときレーザ光を保護フィルム12側から照射することにより、レーザ光により樹脂層4から保護フィルム12が剥離するのを防止することができる。
貫通孔3の形成後は、図5(c)に示すように、保護フィルム12の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。この導電性材料2としては、導電性ペースト8を用いることができ、例えば銀粉や銅粉等の導電性粉体を熱硬化性樹脂組成物中に混合したものが用いられる。導電性ペースト8の充填は、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このときキャリア基材7によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護されるものであり、次いで導電性ペースト8の充填後に、図5(d)に示すように外面に導電性ペースト8が付着した保護フィルム12を樹脂層4側から剥離することにより、貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されると共に樹脂層4及び導体回路5の外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。また保護フィルム12の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、保護フィルム12が貼着されていた側の面(導体回路5が形成されていない側の面)では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
このようにして得られる配線板用シート材1dは、樹脂層4の片側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設され、また樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されており、更に樹脂層4と片面の導体回路5とを貫通すると共に導電性ペースト8が充填された貫通孔3が形成されている。この配線板用シート材1dの表面は、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、導電性ペースト8が突出していることを除けば凹凸なく平坦に形成される。
ここで、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写した後に、導電性材料2が充填された貫通孔3を形成するのは、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写する際には電気部品10が樹脂層4に埋設されるのに伴って樹脂層4が流動し、このとき貫通孔3が形成されている場合には貫通孔3の形状が大きく変形するおそれがあるためであり、このようなビアホール15の形成用の貫通孔3の変形を防止するために、樹脂層4に電気部品10が埋設された後に貫通孔3を形成するようにしたものである。
ここで、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行うと、この配線板用シート材1dを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1dを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
また、図5(d)に示すような、樹脂層4に電気部品10が実装された導体回路5を転写したものに対して、導体回路5が形成されていない面に金属箔9を積層して、配線板用シート材1(配線板用シート材1e)を得ることもできる。この工程の一例を図6に示す。
ここでは、まず図6(a)のように、導体回路5が形成されていない側の樹脂層4の一面に、金属箔9を積層して配置する。金属箔9としては、適宜のものが用いられ、例えば銅箔を用いることができる。その厚みは10〜150μmのものが好ましい。またこの金属箔9の樹脂層4が形成される面は、樹脂層4との密着性を向上するために粗面とすることが好ましい。例えば金属箔9として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層4を形成することができる。また金属箔9に対して表面処理を施すこともでき、この表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、図6(b)に示すように積層一体化する。
この成形過程においては、金属箔9が貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に密に充填され、これにより貫通孔3内の導電性ペースト8の導電性が向上する。
このようにして得られる配線板用シート材1eは、樹脂層4の一面側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設され、他面には金属箔9が積層されており、また樹脂層4内には、片側の導体回路5に接続される電気部品10が埋設されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面は面一となって、配線板用シート材1eの表面は凹凸なく平坦に形成される。更に樹脂層4と導体回路5を貫通すると共に金属箔9に接続され、導電性ペースト8が充填された貫通孔3が形成されている。
上記の金属箔9の積層成形時の加熱加圧成形を、樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行うと、一面に金属箔9が、他面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設され、更に導電性ペースト8が硬化して形成される導電層が充填された貫通孔3からなるビアホールによって導体回路5と金属箔9とが接続された配線板を得ることができる。この成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。またこの配線板の金属箔9にエッチング処理を施すなどして回路形成を施すこともできる。
また、上記の金属箔9の積層成形時の加熱加圧成形を、樹脂層4及び導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1を、後述するように多層板11の作製に利用することができる。この成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1を多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
また、図5(d)に示すような、樹脂層4に電気部品10が実装された導体回路5を転写したものに対して、導体回路5が形成されていない面に更に導体回路5を転写により形成して、配線板用シート材1(配線板用シート材1f)を得ることもできる。この工程の一例を図7に示す。
ここでは、まず図7(a)に示すように、まず樹脂層4の導体回路5が形成されていない側の面に、導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、貫通孔3と導体回路5とを位置合わせした状態で、導体回路5を形成した面が樹脂層4と対向するように積層配置する。導体回路5の形成がなされた転写用基材6は、既述のようにして形成されたものが用いられる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより積層一体化するものであり、このとき貫通孔3の開口位置に導体回路5の所定箇所が配置されるように、導体回路5と貫通孔3とが位置合わせされる。
この成形過程においては、転写用基材6に設けられた導体回路5が貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に密に充填され、これにより貫通孔3内の導電性ペースト8の導電性が向上する。
次いで、図7(b)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより、配線板用シート材1fが得られる。
このようにして得られる配線板用シート材1fは、樹脂層4の両側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、また樹脂層4内には、片側の導体回路5に接続される電気部品10が埋設されている。更に樹脂層4と一面側の導体回路5を貫通すると共に他面側の導体回路5に接続された、導電性ペースト8が充填された貫通孔3が形成されている。この配線板用シート材1fは、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。
上記の導体回路5の転写による成形時の加熱加圧成形を、樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行うと、両面に導体回路5が設けられると共に、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に片側の導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設され、更に導電性ペースト8が硬化して形成される導電層が充填された貫通孔3からなるビアホールによって導体回路5間が接続された配線板を得ることができる。この成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。
また、上記の金属箔9の積層成形時の加熱加圧成形を、樹脂層4及び導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1を、後述するように多層板11の作製に利用することができる。この成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1を多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
図8は、配線板用シート材1の製造工程の他例を示すものであり、樹脂シート4aと、表面に転写用の導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、銅箔等の金属箔9とを用いて、樹脂シート4aから形成される樹脂層4に、導体回路5を転写用基材6から転写することにより、一面に導体回路5が形成されると共にこの一面の導体回路5に実装された電気部品10が樹脂層4に埋設され、且つ他面に金属箔9が一体に積層成形された配線板用シート材1(配線板用シート材1h)を形成している。
金属箔9としては、適宜のものが用いられ、例えば銅箔を用いることができる。その厚みは10〜150μmのものが好ましい。またこの金属箔9の樹脂層4が形成される面は、樹脂層4との密着性を向上するために粗面とすることが好ましい。例えば金属箔9として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層4を形成することができる。また金属箔9に対して表面処理を施すこともでき、この表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。
ここでは、まず、図8(a)に示すように、導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、金属箔9とを、転写用基材6の導体回路5を形成した面と金属箔9(の粗面)が対向しあうように配置すると共に、その間に樹脂シート4aを配置して、積層する。樹脂シート4aは、電気部品10の寸法に応じて、一枚又は複数枚配される。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は既述の場合と同様の条件で行うことができる。
この成形過程においては、樹脂シート4aが溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート4aが積層されている場合には、これらの樹脂シート4aが一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート4aが流動することにより、転写用基材6に形成された導体回路5及び導体回路5に実装された電気部品10が、樹脂シート4aから形成される樹脂層4中に埋設される。
次いで、図8(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより配線板用シート材1hが得られる。この配線板用シート材1hは、樹脂層4の一面の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成され、また他面の表面には全面に金属箔9が一体に形成されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されている。転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。
上記の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件で行うと、一面に導体回路5が設けられると共に他面の全面に金属箔9が形成され、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設された配線板を得ることができる。このときの加熱温度は、既述の場合と同様の条件とすることができる。
また、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1hを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1hを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
図9は、配線板用シート材1の製造工程の他例を示すものであり、樹脂シート4aと、表面に転写用の導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、樹脂付金属箔17とを用いて、樹脂シート4aから形成される樹脂層4に、導体回路5を転写用基材6から転写することにより、一面に導体回路5が形成されると共にこの一面の導体回路5に実装された電気部品10が樹脂層4に埋設され、且つ他面に金属箔9が一体に積層成形された配線板用シート材1(配線板用シート材1i)を形成している。
樹脂付金属箔17を構成する金属箔9としては、適宜のものが用いられ、例えば銅箔を用いることができる。その厚みは10〜150μmのものが好ましい。またこの金属箔9の樹脂層4が形成される面は、樹脂層4との密着性を向上するために粗面とすることが好ましい。例えば金属箔9として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層4を形成することができる。また金属箔9に対して表面処理を施すこともでき、この表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。
また樹脂付金属箔17を構成する樹脂層4bは、既述の樹脂層4を形成するための樹脂組成物と同様の樹脂組成物を用いて形成することができ、例えばこのような樹脂組成物を金属箔9の片面(粗面)に塗布し、乾燥してBステージ化することにより樹脂層4bを形成し、樹脂付金属箔17を得ることができる。
ここでは、まず、図9(a)に示すように、導体回路5が形成されると共に電気部品10が実装された転写用基材6と、樹脂付金属箔17とを、転写用基材6の導体回路5を形成した面と樹脂付金属箔17の樹脂層4bが対向しあうように配置すると共に、その間に一又は複数枚の樹脂シート4aを配置して、積層する。樹脂シート4aは、電気部品10の寸法に応じて、一枚又は複数枚配される。この状態で、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は既述の場合と同様の条件で行うことができる。
この成形過程においては、樹脂シート4a及び樹脂付金属箔17の樹脂層4bが溶融軟化して一体化し、樹脂層4が形成される。このとき複数の樹脂シート4aが積層されている場合には、これらの樹脂シート4aが一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート4aが流動することにより、転写用基材6に形成された導体回路5及び導体回路5に実装された電気部品10が、樹脂シート4aから形成される樹脂層4中に埋設される。
次いで、図9(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより配線板用シート材1iが得られる。この配線板用シート材1iは、樹脂層4の一面の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成され、また他面の表面には全面に金属箔9が一体に形成されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されている。転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。
上記の加熱加圧成形を、樹脂層4の硬化反応が進行する条件で行うと、一面に導体回路5が設けられると共に他面の全面に金属箔9が形成され、樹脂層4が硬化して形成される絶縁層16内に導体回路5に電気的に接続された電気部品10が埋設された配線板を得ることができる。このときの加熱温度は、既述の場合と同様の条件とすることができる。
また、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行えば、得られる配線板用シート材1を、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1を多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
このように形成された配線板用シート材1h,1iでは、電気部品10を埋設した樹脂層4を有する配線板用シート材1同士を積層して多層化する場合、配線板用シート材1h,1iの金属箔9を層間のアース層として形成し、層間に隣接する電気部品10間の相互作用の発生を防止して、電気部品10が所定の規格値の性能を発揮させるようにすることができる。また特に配線板用シート材1iでは、積層成形過程において、積層前の樹脂付金属箔17の樹脂層4bの硬化をある程度進行させておくと、樹脂層4bの流動を抑制し、電気部品10と金属箔9との間の寸法を確保することが容易となり、上記の配線板用シート材1同士の積層成形時には、電気部品10と金属箔9からなるアース層との間の距離を確保することができ、層間に隣接する電気部品10間の相互作用の発生を更に確実に防止することができるものである。樹脂付金属箔17の樹脂層4bの硬化をある程度進行させるためには、例えばこの樹脂層4bを、あらかじめ、160℃で5分間程度予備乾燥させるものである。
また、図8(c)又は図9(c)に示すような配線板用シート材1に対して、更に導電性材料2が充填された貫通孔3を形成して、配線板用シート材1(配線板用シート材1j)を得ることもできる。この工程の一例を図10に示す。
ここでは、まず図10(a)のように、一面に導体回路5が転写されると共に他面に金属箔9が形成された樹脂層4の、導体回路5が転写された一面に、保護フィルム12を積層して配置する。保護フィルム12としては、既述のものと同様のものが用いられる。
次いで、図10(b)に示すように、レーザ加工により樹脂層4の所定のビアホール形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4、保護フィルム12、及び樹脂層4の片面の導体回路5の所定箇所を貫通すると共に、金属箔9は貫通しないように形成される。このときレーザ光を保護フィルム12側から照射することにより、金属箔9を貫通しないようにすると共に、レーザ光により樹脂層4から保護フィルム12が剥離するのを防止することができる。
貫通孔3の形成後は、図10(c)に示すように、保護フィルム12の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。この導電性材料2としては、既述のような導電性ペースト8を用いることができる。導電性ペースト8の充填は、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このとき保護フィルム12によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護されるものであり、次いで導電性ペースト8の充填後に、図10(d)に示すように外面に導電性ペースト8が付着した保護フィルム12を樹脂層4側から剥離することにより、貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されると共に樹脂層4及び導体回路5の外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。また保護フィルム12の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、保護フィルム12が貼着されていた側の面(導体回路5が形成されている側の面)では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
このようにして得られる配線板用シート材1jは、樹脂層4の一面の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成され、また他面の表面には全面に金属箔9が一体に形成されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。また、樹脂層4内には、片面の導体回路5に接続された電気部品10が埋設されている。更に樹脂層4と片面の導体回路5とを貫通すると共に金属箔9を貫通しない貫通孔3が形成され、この貫通孔3には導電性ペースト8が充填されている。この配線板用シート材1jの導体回路5が形成された面は、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、導電性ペースト8が突出していることを除けば凹凸なく平坦に形成される。
ここで、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写した後に、導電性材料2が充填された貫通孔3を形成するのは、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写する際には電気部品10が樹脂層4に埋設されるのに伴って樹脂層4が流動し、このとき貫通孔3が形成されている場合には貫通孔3の形状が大きく変形するおそれがあるためであり、このようなビアホール15の形成用の貫通孔3の変形を防止するために、樹脂層4に電気部品10が埋設された後に貫通孔3を形成するようにしたものである。
ここで、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行うと、この配線板用シート材1jを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1jを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
また、貫通孔3が形成されていない配線板用シート材1に対して、更に導電性材料2が充填されると共にホールめっき18が形成された貫通孔3を設けて、配線板用シート材1(配線板用シート材1k)を得ることもできる。この工程の一例を図11に示す。
図示の例では、図1(c)に示すような配線板用シート材1aに対して導電性材料2が充填されると共にホールめっき18が形成された貫通孔3を設けているものであるが、このような形態に限られず、図2(c)、図4(c)、図8(c)、図9(c)等のように、本発明に係る配線板用シート材1のうち、貫通孔3が形成されていないものに対して、同様の手法により、導電性材料2が充填されると共にホールめっき18が形成された貫通孔3を設けることができる。
ここでは、まず図11(a)のように、樹脂層4の導体回路5が転写された一面又は両面(図示では両面)に、保護フィルム12を積層して配置する。保護フィルム12としては、既述のものと同様のものが用いられる。
次いで、図11(b)に示すように、レーザ加工により樹脂層4の所定のビアホール形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4、保護フィルム12、及び樹脂層4の両面の導体回路5の所定箇所を貫通するように形成される。このときレーザ光を保護フィルム12側から照射することによりレーザ光により樹脂層4から保護フィルム12が剥離するのを防止することができる。
貫通孔3の形成後は、保護フィルム12が貼着した状態で貫通孔3の内面にホールめっき18を形成した後、保護フィルム12の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。この導電性材料2としては、既述のような導電性ペースト8を用いることができる。導電性ペースト8の充填は、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このとき保護フィルム12によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護される。
次いで導電性ペースト8の充填後に、図11(c)に示すように外面に導電性ペースト8が付着した保護フィルム12を樹脂層4側から剥離することにより、貫通孔3内にホールめっき18が形成されると共に導電性ペースト8が充填され、且つ樹脂層4及び導体回路5の外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。また保護フィルム12の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、保護フィルム12が貼着されていた側の面(導体回路5が形成されている側の面)では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
このようにして得られる配線板用シート材1kは、樹脂層4の両面の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成され、片面又は両面の導体回路5に、樹脂層4に埋設された電気部品10が実装されている。また樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。更に樹脂層4と導体回路5とを貫通する貫通孔3が形成され、この貫通孔3にはホールめっき18が形成されると共に導電性ペースト8が充填されている。特に部品を内蔵した樹脂層4は厚みが厚く導電性ペースト8のみでは導通信頼性が不十分となる場合があるが、ホールめっき18を設けることにより厚みの厚い樹脂層4の場合でも優れた導通信頼性が得られる。この配線板用シート材1kの導体回路5が形成された面は、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、導電性ペースト8が突出していることを除けば凹凸なく平坦に形成される。
上記のホールめっき18としては、銅めっき等を形成することができ、また無電解めっき処理及び電解めっき処理を適宜組み合わせて形成することができる。特にホールめっき18を無電解めっき処理のみにて形成すると、ホールめっき18の厚膜化を抑制し、保護フィルム12を樹脂層4側から剥離する際に保護フィルム12に形成されためっき膜と共にホールめっき18が剥ぎ取られることを防止して導通信頼性を向上することができる。このときホールめっき18が無電解めっき処理のみにて薄膜に形成されていても、貫通孔3に導電性ペースト8が充填されていることから、ホールめっき18と導電性ペースト8とによって優れた導通信頼性が確保される。
また、上記のような保護フィルム12の剥離の際のホールめっき18の剥ぎ取りのおそれがない場合には、無電解めっき処理の後、電解めっき処理を施すことによってホールめっき18を形成して、ホールめっき18における導通信頼性を向上することもできる。このように無電解めっき処理及び電解めっき処理によりホールめっき18を厚膜化する場合には、図11に示される実施形態において、上記の導電性ペースト8に代えて、銀粉や銅粉等の導電性粉体が含有されない熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂ペースト20を用いて、ホールめっき18のみにてビアの導通信頼性を確保することができる。
ここで、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写した後に、導電性材料2が充填された貫通孔3を形成するのは、電気部品10が実装された導体回路5を樹脂層4に転写する際には電気部品10が樹脂層4に埋設されるのに伴って樹脂層4が流動し、このとき貫通孔3が形成されている場合には貫通孔3の形状が大きく変形するおそれがあるためであり、このようなビアホール15の形成用の貫通孔3の変形を防止するために、樹脂層4に電気部品10が埋設された後に貫通孔3を形成するようにしたものである。
ここで、上記の加熱加圧成形を、樹脂層4がBステージ状態に維持される条件で行うと、この配線板用シート材1kを、後述するように多層板11の作製に利用することができる。このときの成形条件は、既述の場合と同様の条件とすることができる。また、配線板用シート材1kを多層板成形時のコア材として用いる場合には、樹脂層4がCステージ状態となるように形成した場合でも、多層板11の作製に利用することができる。
上記のような各配線板用シート材1は、樹脂層4に対して導体回路5を転写により形成すると共に、導体回路5に実装されている電気部品10を樹脂層4の溶融軟化に伴う樹脂層4の流動によって樹脂層4内の内部に埋設して配置したものであるから、樹脂層4内に電気部品10を配置すると共に、このとき樹脂層4の流動によって電気部品10の周囲に空隙が発生しないようにして電気部品10を配置することができる。このため、樹脂層4を硬化成形して絶縁層16を形成すると、絶縁層16内に電気部品10が設けられた配線板を得ることができるものであり、配線板における部品実装量を増大させることができると共に配線板からの電気部品10の突出を抑制して小型化を図ることができ、更に電気部品10の実装可能位置が拡大することから、配線設計の自由度も増大する。また電気部品10がその周囲に空隙が存在することなく絶縁層16内に配置されることから、電気部品10の周囲に空気が残存するようなことがなくなり、熱による負荷を受けた場合にも空気の熱膨張による絶縁層16の割れや電気部品10の破損、断線等の不良の発生を抑制することができる。また電気部品10の実装量や実装位置に係わらず、樹脂層4を溶融軟化させることにより流動させて任意の位置に電気部品10を配することができ、煩雑な工程を経ることなく樹脂層4あるいは樹脂層4を硬化させた絶縁層16の内部の任意の箇所に電気部品10を設けることができるものである。
また、配線板を得るにあたっては、上記のような各配線板用シート材1は、樹脂層4をBステージ状態に維持したままで成形し、複数の配線板用シート材1を積層した状態で各樹脂層4を硬化させることにより一括成形して、多層板11を得ることができる。また、樹脂層4をCステージ状態とした配線板用シート材1をコア材とし、これに樹脂層4をBステージ状態に維持した他の配線板用シート材1を積層して、各樹脂層4を硬化させることにより、多層板11を得ることもできる。また樹脂層4をCステージ状態とした配線板用シート材1に対して、樹脂層4をBステージ状態に維持した配線板用シート材1の積層、樹脂層4の硬化並びに必要に応じて導体回路5及びビアの形成を行うことを繰り返すことにより多層化するビルドアップ工法によっても、多層板11を得ることができる。
また、上記のような配線板用シート材1と、樹脂層4を有すると共にこの樹脂層4内に電気部品10が埋設されていないシート材13とを用いて、多層板11を得ることもできる。この場合、一枚又は複数枚の配線板用シート材1と、Bステージ状態の樹脂層4を有する一枚又は複数枚の他のシート材13とを積層して配置し、この状態で各樹脂層4を硬化させることにより一括成形して、多層板11を得ることもできる。また、樹脂層4をCステージ状態とした配線板用シート材1又は他のシート材13をコア材とし、これに樹脂層4をBステージ状態に維持した他の配線板用シート材1や、樹脂層4をBステージ状態に維持した他のシート材13を積層して、各樹脂層4を硬化させることにより、多層板11を得ることもできる。また樹脂層4をCステージ状態とした配線板用シート材1又はシート材13に対して、樹脂層4をBステージ状態に維持した配線板用シート材1又はシート材13の積層、樹脂層4の硬化並びに必要に応じて導体回路5やビアの形成を行うことを繰り返すことにより多層化するビルドアップ工法によっても、多層板11を得ることができる。
シート材13としては、多層板11を製造する際に使用される公知の樹脂付き金属箔、プリプレグ、樹脂シート、アンクラッド板等を使用することができるが、その他に、回路形成された樹脂シートや、ビア形成された樹脂シートを使用することができる。
特に、シート材13として樹脂層4に導体回路5や金属箔9、導電性材料2が充填された貫通孔3等が設けられたものを用いると、シート材13にて絶縁層と導体回路5、ビアホール等の形成が行える。このようなシート材13について説明する。
図15はシート材13の製造に用いられる樹脂層4の成形工程を示すものであり、まず図15(a)に示すように、キャリア基材7の一面に上記の樹脂組成物を塗布し、加熱乾燥することにより半硬化状態(Bステージ状態)として、キャリア基材7の一面に樹脂層4を形成する。
樹脂組成物としては、既述のものと同様のものが用いられる。またキャリア基材7としては、PETフィルム等の合成樹脂フィルムを用いることができ、また金属箔を用いることもできる。金属箔を用いる場合には、キャリア基材7を樹脂層4から剥離する際の剥離性を向上するために、樹脂層4が形成される面を鏡面状に形成することが好ましい。このような金属箔としては、レーザ加工時に貫通孔3を形成可能な材質が選択され、圧延銅箔、電解銅箔、アルミニウム箔、金属合金箔、金属クラッド箔等を用いることが好ましい。
このときの加熱乾燥条件は、樹脂シート4aの形成の場合と同様の条件とすることができる。また、樹脂層4の厚みは50〜300μmに形成することが好ましい。
このように形成された樹脂層4は、キャリア基材7に支持された状態のままで、YAGレーザや炭酸ガスレーザ等のレーザ光の照射によるレーザ加工を施すことにより、図15(b)に示すように所定のビアホール15の形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4とキャリア基材7とを同時に貫通するように形成されるものであり、このときレーザ光をキャリア基材7側から照射すると、樹脂層4とキャリア基材7の層間剥離を防止することができる。
貫通孔3の形成後は、図15(c)に示すようにキャリア基材7の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。この導電性材料2としては、既述のような導電性ペースト8を用いることができる。導電性ペースト8の充填は、キャリア基材7の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このときキャリア基材7によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護されるものであり、次いで導電性ペースト8の充填後に、図15(d)に示すように外面に導電性ペースト8が付着したキャリア基材7を樹脂層4から剥離することにより、樹脂層4は貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されると共に外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。またキャリア基材7の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、キャリア基材7が貼着されていた側の面では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
これにより、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するシート材13(シート材13f)が得られる。
また、樹脂層4としては、不織布にスラリー状の樹脂組成物を含浸乾燥させることにより形成したものを用いることもできる。不織布としては、適宜のガラス不織布、有機繊維不織布等を用いることができる。このように形成される樹脂層4を用いる場合には、図15において、樹脂層4の一面にキャリア基材7に代えて保護フィルム12を貼着し、それ以外は上記と同様にして、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するシート材13(シート材13f)が得られる。
このシート材13fにおける、導電性材料2が充填された貫通孔3は、多層板製造時に樹脂層4の両面の導体回路5を導通するビア(ビアホール)として形成される。ここで、シート材13fの樹脂層4は、Bステージ状態であるため、多層板製造時の積層成形の際に圧縮されやすく、このため導電性材料2(導電性ペースト8)が貫通孔3内にて密充填されると共に両面の導体回路5との電気的接続が十分に確保されることとなり、良好な導通信頼性を維持できる。
上記のようなシート材13は、樹脂層4がBステージ状態に形成されるが、このシート材13を多層板11の製造時のコア材として用いる場合などには、樹脂層4をCステージ状態に形成しても良い。
このシート材13には樹脂層4内に電気部品10が埋設されず、樹脂層4の厚みを薄く形成することができるため、ビアが形成される貫通孔3にはホールめっき18を施さずに、導電性ペースト8のみで層間の導通を確保することができる。ここで、貫通孔3の内面には、導電性材料2(導電性ペースト8)の充填に先だって、ホールめっき18を形成することもできる。
また、特に樹脂層4をCステージ状態に形成する場合においては、更なる導通信頼性を確保するために、図15(b)のように貫通孔3を形成した後に、貫通孔3の内面にホールめっき18を施し、次いで図15(c)に示すように貫通孔3内に導電性材料2(導電性ペースト8)を充填するようにして、図15(d)に示すようなシート材13fを得ることもできる。
また、上記のような、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するシート材13fと、表面に転写用の導体回路5が形成された転写用基材6とを用いて、導体回路5を転写用基材6からシート材13fの樹脂層4に転写することにより、片面に導体回路5が形成されたシート材13(片面回路付きシート材13a)が得られる。
図16に片面回路付きシート材13aの製造工程の一例を示す。ここでは、まず図16(a)(b)に示すように、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4からなるシート材13fの一面に、導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、貫通孔3と導体回路5とを位置合わせした状態で、導体回路5を形成した面が樹脂層4と対向するように積層配置して加熱加圧成形を行うことにより一体化する。このとき貫通孔3の開口位置に導体回路5の所定箇所が配置されるように、導体回路5と貫通孔3とが位置合わせされる。
導体回路5の形成がなされた転写用基材6は、既述のようにして形成されたものが用いられる。このとき転写用基材6としては、配線板用シート材1の製造に用いるものと同様にステンレス材等の金属材にて形成しても良いが、転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することもできる。すなわち、配線板用シート材1の製造時に、特に転写用基材6に転写用の導体回路5を形成すると共に電気部品10を実装する場合には、電気部品10の実装時における半田付け加工等により転写用基材6が高温となり、また電気部品10を樹脂層4に埋設する際には樹脂層4を十分に溶融軟化するために高温をかけなければならない場合があり、このため転写用基材6には高い耐熱性が必要とされるが、シート材13の成形時には転写用基材6には電気部品10は実装されないため、配線板用シート材1の製造時ほどの耐熱性は必要とされず、このため転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することができるものである。この場合、樹脂フィルムとしては、例えば、既知のPETフィルム、フッ素系フィルム等で、加熱やUV光等により導体回路5との剥離ができる接着剤を有する樹脂フィルムを用いることができる。
この加熱加圧成形は、成形後の樹脂層4がBステージ状態に維持される条件又は樹脂層4がCステージ状態に形成される条件で行うものであり、また好ましくは貫通孔3に充填された導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件とする。
この成形過程においては、樹脂層4が溶融軟化することにより流動して、転写用基材6に形成された導体回路5が樹脂層4中に埋設される。また、このとき導体回路5の所定箇所が貫通孔3の形成位置において樹脂層4中に埋設されることにより、貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、貫通孔3の配置位置において導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれ、貫通孔3内に更に密に充填され、これにより導電性ペースト8にて形成される貫通孔3内の導電層の導電性が向上し、多層板11の製造時のビアホールによる導体回路5間の接続信頼性が向上する。
上記の片面回路付きシート材13aの加熱加圧成形は、減圧下又は真空下において行うことが好ましく、この場合は内部にボイドが混入しにくくなり、信頼性が向上する。またこの加熱加圧成形を成形後の樹脂層4及び貫通孔3内の導電性ペースト8がBステージ状態に維持されるように、樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行しない条件で行う場合には、この条件は樹脂層4を構成する樹脂組成物の組成及び導電性ペースト8の組成にもよるが、100〜140℃の温度で10分間程度、加熱することが好ましい。また成形時の圧力は、溶融軟化時の樹脂層4の流動性に応じて設定する必要があるが、例えばこの溶融軟化時の流動性が高い場合には、真空ラミネータにより容易に成形可能であり、また溶融軟化時の流動性が小さい場合には、2.94MPa(30kgf/cm2)程度まで加圧して成形することができる。
次いで、図16(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより片面回路付きシート材13aが得られる。この片面回路付きシート材13aは、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するBステージ状態又はCステージ状態の樹脂層4の片側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面が面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。
転写用基材6の剥離は、転写用基材6を撓らせながら樹脂層4の端部から引き剥がすことにより行うことができる。このとき、厚み50〜200μm、特に厚み100μmのステンレス基材を用いている場合には、転写用基材6は高い靱性を有すると共に適度な撓りやすさを有し、転写用基材6を撓らせながら、樹脂層4が湾曲することなく、転写用基材6を容易に剥離することができて、取扱性が良好なものである。この剥離後の転写用基材6は、脱脂等による洗浄後に、再び導体回路5を形成して、片面回路付きシート材13aの作製に利用できる。
また、上記のような、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4からなるシート材13fと、表面に転写用の導体回路5が形成された転写用基材6とを用いて、導体回路5を転写用基材6から樹脂層4に転写することにより、両面に導体回路5が形成されたシート材13(両面回路付きシート材13b)を得ることもできる。
両面回路付きシート材13bの製造工程の一例を図17に示す。ここでは、まず図17(a)(b)に示すように、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4からなるシート材13fの両面に、上記のような導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、貫通孔3と導体回路5とを位置合わせした状態で、導体回路5を形成した面が樹脂層4と対向するようにそれぞれ積層配置して、上記の片面回路付きシート材13aの製造時と同様の条件にて加熱加圧成形を行うことにより一体化するものであり、このとき貫通孔3の開口位置に導体回路5の所定箇所が配置されるように、導体回路5と貫通孔3とが位置合わせされる。この加熱加圧成形は、成形後の樹脂層4がBステージ状態に維持される条件又は樹脂層4がCステージ状態に形成される条件で行うものであり、また好ましくは貫通孔3内の導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件で行う。
この成形過程においては、樹脂層4が溶融軟化することにより流動して、転写用基材6に形成された導体回路5が樹脂層4中に埋設される。また、このとき導体回路5の所定箇所が貫通孔3の形成位置において樹脂層4中に埋設されることにより、貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、貫通孔3の配置位置において、貫通孔3の両側から導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填され、これにより導電性ペースト8にて形成される貫通孔3内の導電層の導電性が向上し、多層板11の製造時のビアホールによる導体回路5間の接続信頼性が向上する。
次いで、図17(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより、両面回路付きシート材13bが得られる。この両面回路付きシート材13bは、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するBステージ状態又はCステージ状態の樹脂層4の両側の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、表面が凹凸なく平坦に形成される。
図18に示すシート材13(金属箔付きシート材13c)の製造工程では、上記のような、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4からなるシート材13fと、金属箔9とを用いて、樹脂層4の片面に金属箔9が設けられた金属箔付きシート材13cを得るものである。
ここでは、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4からなるシート材13fの片面に金属箔9を、樹脂層4と対向するように積層配置して、上記の場合と同様の条件にて加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は、成形後の樹脂層4がBステージ状態に維持される条件又は樹脂層4がCステージ状態に形成される条件で行うものであり、また好ましくは貫通孔3内の導電性ペースト8もBステージ状態に維持される条件で行う。
金属箔9としては、既述のものと同様のものを用いることができる。またこの金属箔9の樹脂層4が形成される面は、樹脂層4との密着性を向上するために粗面とすることが好ましい。例えば金属箔9として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層4を形成することができる。また金属箔9に対して表面処理を施すこともでき、この表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。
この成形過程においては、金属箔9が貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に密に充填され、これにより導電性ペースト8にて形成される貫通孔3内の導電層の導電性が向上し、多層板11の製造時のビアホール15による導体回路5間の接続信頼性が向上する。
図19にシート材13の製造工程の更に他例を示す。このシート材13(金属箔・回路付きシート材13d)は、金属箔9の一面にBステージ状態又はCステージ状態の樹脂層4を形成し、この樹脂層4に更に導体回路5を転写して形成される。
ここでは、まず金属箔9の表面にBステージ状態の樹脂層4を形成する。この樹脂層4は、既述のものと同様の樹脂組成物を金属箔9に塗布し、加熱乾燥することにより形成される。
金属箔9としては、既述のものと同様のものを用いることができ、また樹脂層4が形成される面は、樹脂層4との密着性を向上するために粗面とすることが好ましい。例えば金属箔9として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層4を形成することができる。また金属箔9に対して表面処理を施すこともでき、この表面処理としては、例えば黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。また、この金属箔9は、厚み10〜150μmのものを使用することが好ましい。また樹脂層4の厚みは50〜300μmとすることが好ましい。
次に、既述のような表面に転写用の導体回路5が形成された転写用基材6を用いて、導体回路5を転写用基材6から樹脂層4に転写する。このとき、図19(a)(b)に示すように、樹脂層4の一面(金属箔9が設けられていない側の面)に、導体回路5が形成された転写用基材6を、導体回路5を形成した面が樹脂層4と対向するようにそれぞれ積層配置して、加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この加熱加圧成形は、成形後の樹脂層4がBステージ状態に維持される条件又は樹脂層4がCステージ状態に形成される条件で行う。
この成形過程においては、樹脂層4が溶融軟化することにより流動して、転写用基材6に形成された導体回路5が樹脂層4中に埋設される。
次いで、図19(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより、金属箔・回路付きシート材13dが得られる。この金属箔・回路付きシート材13dは、Bステージ状態又はCステージ状態の樹脂層4の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、その表面は凹凸なく平坦に形成される。
図20,21に示すシート材13(金属箔・回路付きシート材13e)の製造工程では、まず、上記の場合と同様にして金属箔9の表面に樹脂層4を形成した後、導体回路5を形成する前に、図20(b)に示すように、金属箔9が配置されている面とは反対側の面において、樹脂層4の表面に保護フィルム12を配置する。保護フィルム12としては既述のものと同様のものを用いることができる。
次いで、図20(c)に示すように、レーザ加工により樹脂層4の所定のビアホール15の形成位置に貫通孔3の形成がなされる。この貫通孔3は、樹脂層4と保護フィルム12とを同時に貫通するように形成されるものであり、このときレーザ光を保護フィルム12側から照射することにより、樹脂層4と保護フィルム12の層間剥離を防止することができる。またレーザ光は金属箔9には開口が形成されない条件で照射される。
貫通孔3の形成後は、図20(d)に示すように、保護フィルム12の外面側から貫通孔3内に導電性材料2を充填する。導電性材料2の充填に先だって、貫通孔3の内面にホールめっきを形成しても良い。この導電性材料2としては、上記の場合と同様の導電性ペースト8を用いることができる。導電性ペースト8の充填は、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔3の開口から貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されるようにする。このとき保護フィルム12によって樹脂層4の外面には導電性ペースト8が付着されないように保護される。
次いで、導電性ペースト8の充填後に、図20(e)に示すように、外面に導電性ペースト8が付着した保護フィルム12を樹脂層4から剥離することにより、樹脂層4は貫通孔3内に導電性ペースト8が充填されると共に外面には導電性ペースト8が付着されていない状態となる。また保護フィルム12の貫通孔3に充填されていた導電性ペースト8が残存することから、保護フィルム12が貼着されていた側の面では樹脂層4の貫通孔3から導電性ペースト8が外方に突出するように形成される。
次いで、図21に示すように、既述のような表面に転写用の導体回路5が形成された転写用基材6を用いて、導体回路5を転写用基材6から樹脂層4に転写する。このとき、図21(a)(b)に示すように、導電性材料2が充填された貫通孔3を有する樹脂層4の一面(金属箔9が設けられていない側の面)に、上記のような導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、貫通孔3と導体回路5とを位置合わせした状態で、導体回路5を形成した面が樹脂層4と対向するようにそれぞれ積層配置して、上記の場合と同様の条件にて加熱加圧成形を行うことにより一体化するものであり、このとき貫通孔3の開口位置に導体回路5の所定箇所が配置されるように、導体回路5と貫通孔3とが位置合わせされる。この加熱加圧成形は、成形後の樹脂層4がBステージ状態に維持される条件又は樹脂層4がCステージ状態に形成される条件で行うものであり、また好ましくは貫通孔3内の導電性ペースト8がBステージ状態に維持される条件で行う。
この成形過程においては、樹脂層4が溶融軟化することにより流動して、転写用基材6に形成された導体回路5が樹脂層4中に埋設される。また、このとき導体回路5の所定箇所が貫通孔3の形成位置において樹脂層4中に埋設されることにより、貫通孔3内に充填された導電性ペースト8と電気的に接続される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、貫通孔3の配置位置において導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填され、これにより導電性ペースト8にて形成される貫通孔3内の導電層の導電性が向上し、多層板11の製造時のビアホール15による導体回路5間の接続信頼性が向上する。
次いで、図21(c)に示すように、転写用基材6を樹脂層4から剥離すると共に、導体回路5を樹脂層4に残存させるものであり、これにより、金属箔・回路付きシート材13eが得られる。この金属箔・回路付きシート材13eは、導電性材料2が充填された貫通孔3を有するBステージ状態又はCステージ状態の樹脂層4の表層に、導体回路5が樹脂層4の表面に露出するように埋設されて形成されており、樹脂層4の外面と導体回路5の露出面とが面一となって、その表面が凹凸なく平坦に形成される。
上記のような配線板用シート材1及びシート材13を用いた多層板11の具体的な製造工程を以下に示すが、本発明における多層板11は以下のような工程にて作製されるものに限られず、複数の配線板用シート材1、あるいは少なくとも一枚の配線板用シート材1と上記の他のシート材13を適宜組み合わせて、これらを積層一体化することにより、多様な構成の多層板11を得ることができる。このとき、配線板用シート材1や他のシート材13を、導体回路5又は金属箔9が形成されている面と、金属箔9又は導体回路5が形成されている面、貫通孔3の開口が形成されている面、あるいは金属箔9及び導体回路5が共に形成されていない面とを対向させて、積層することができる。
図22に示す例では、図5に示す工程にて得られる配線板用シート材1dと、図6に示す工程にて得られる配線板用シート材1eと、図18に示す工程にて得られる金属箔付きシート材13cとを一枚ずつ用い、これらを積層一体化するものである。
図示の例では、まず配線板用シート材1eの導体回路5が形成されている面と、配線板用シート材1dの導体回路5が形成されていない面とを対向させると共に、配線板用シート材1dの導体回路5が形成されている面と金属箔付きシート材13cの金属箔9が設けられていない面とを対向させた状態で、これらを積層配置する。このとき各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1d,1e及び金属箔付きシート材13cが一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1e,1d間及び配線板用シート材1dと金属箔付きシート材13cとの間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間、あるいは金属箔9と導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。このときシート材1eの貫通孔3内に充填された導電性ペースト8は既に述べたように予め導体回路5と金属箔9との間を接続しており、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。またシート材1e,1d間の界面においては、上記の一体成形時にシート材1eの導体回路5の所定箇所がシート材1dの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。更に、シート材1dと金属箔付きシート材13cの間の界面においては、上記の一体成形時にシート材1dの導体回路5の所定箇所が金属箔付きシート材13cの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5と金属箔9との間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。
このとき、配線板用シート材1e及び金属箔付きシート材13cでは、既述のように貫通孔3内には予め導電性ペースト8が密に充填されているため、導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。また、配線板用シート材1dにおいては、導電性ペースト8は貫通孔3の開口から突出しており、この導電性ペースト8の突出部分は、上記の一括成形時に加圧により貫通孔3内に押し込まれて密に充填されて、これにより導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は樹脂層4を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、加熱温度160〜185℃、加圧力0.3〜5MPaの条件で60〜90分間成形を行うことが好ましい。このようにして得られる多層板11は、図22(b)に示すように、両側の最外層にそれぞれ金属箔9が設けられると共に内層には二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16のうちの二層の内部には電気部品10が配されている。
また更に外面の金属箔9に対してエッチング処理を施すなどして、両側の外層にそれぞれ導体回路5を形成して、図22(c)に示すように四層の導体回路5を有する多層板11を得ることもできる。
図23に示す例では、図7に示す工程にて得られる配線板用シート材1fと、図16に示す工程にて得られる片面回路付きシート材13aと、図18に示す工程にて得られる金属箔付きシート材13cとを一枚ずつ用い、これらを積層一体化するものである。
図示の例では、まず金属箔付きシート材13cの金属箔9が形成されていない面と、配線板用シート材1fの一面(電気部品10が実装されていない導体回路5が形成されている面)とを対向させると共に、配線板用シート材1fの他面(電気部品10が実装されている導体回路5が形成されている面)と、片面回路付きシート材13aの導体回路5が形成されていない面とを対向させた状態で、これらを積層配置する。このとき各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1f、片面回路付きシート材13a及び金属箔付きシート材13cが一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、金属箔付きシート材13cと配線板用シート材1fとの間及び配線板用シート材1fと片面回路付きシート材13aとの間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間、あるいは金属箔9と導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。このときシート材1fの貫通孔3内に充填された導電性ペースト8は既に述べたように予め導体回路5間を接続しており、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また配線板用シート材1fと金属箔付きシート材13cの間の界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1fの導体回路5の所定箇所が金属箔付きシート材13cの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。更に、配線板用シート材1fと片面回路付きシート材13aの間の界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1fの導体回路5の所定箇所が片面回路付きシート材13aの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5と金属箔9との間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。
またこのとき、配線板用シート材1f、片面回路付きシート材13a及び金属箔付きシート材13cでは、既述のように貫通孔3内には予め導電性ペースト8が密に充填されているため、導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
このようにして得られる多層板11は、図23(b)に示すように、一方の最外層に金属箔9が、他方の最外層に導体回路5がそれぞれ設けられると共に、内層には二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16のうちの一層の内部には電気部品10が配されている。
また更に外面の金属箔9に対してエッチング処理を施すなどして、両側の外層にそれぞれ導体回路5を形成して、図23(c)に示すように四層の導体回路5を有する多層板11を得ることもできる。
図24に示す例では、図5に示す工程にて得られる二枚の配線板用シート材1dと、図7に示す工程にて得られる一枚の配線板用シート材1fとを積層一体化するものである。
図示の例では、まず一方の配線板用シート材1dと、配線板用シート材1fとを、配線板用シート材1dの導体回路5が形成されていない面と、配線板用シート材1fの一面(電気部品10が実装されていない導体回路5が形成されている側の面)とを対向させると共に、配線板用シート材1fと他方の配線板用シート材1dとを、配線板用シート材1fの他面(電気部品10が実装されている導体回路5が形成されている側の面)と、配線板用シート材1dの導体回路5が形成されていない側の面とを対向させた状態で、これらを積層配置する。このとき各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、二枚の配線板用シート材1dと一枚の配線板用シート材1fとが一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、一方の配線板用シート材1dと配線板用シート材1fとの間及び配線板用シート材1fと他方の配線板用シート材1dとの間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。このとき配線板用シート材1fの貫通孔3内に充填された導電性ペースト8は既に述べたように予め導体回路5間を接続しており、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また配線板用シート材1fと各配線板用シート材1dとのそれぞれの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1fの導体回路5の所定箇所が各配線板用シート材1dの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。
またこのとき、配線板用シート材1fでは、既述のように貫通孔3内には予め導電性ペースト8が密に充填されているため、導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。また、配線板用シート材1dにおいては、導電性ペースト8は貫通孔3の開口から突出しており、この導電性ペースト8の突出部分は、上記の一括成形時に加圧により貫通孔3内に押し込まれて密に充填されて、これにより導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
このようにして得られる多層板11は、図24(b)に示すように、両側の最外層にそれぞれ導体回路5が設けられると共に内層にも二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16には全て内部に電気部品10が配されている。
図25に示す例では、図3に示す工程にて得られる配線板用シート材1bと、図5に示す工程にて得られる配線板用シート材1dと、図16に示す工程にて得られる片面回路付きシート材13aとをそれぞれ一枚ずつ用い、これらを積層一体化するものである。
図示の例では、まず配線板用シート材1dと、配線板用シート材1bとを、配線板用シート材1dの導体回路5が形成されていない面と、配線板用シート材1bの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させると共に、配線板用シート材1bと片面回路付きシート材13aとを、配線板用シート材1bの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)が片面回路付きシート材13aの導体回路5が形成されていない側の面とを対向させた状態で、これらを積層配置する。このとき各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1d、配線板用シート材1b及び片面回路付きシート材13aが一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1dと配線板用シート材1bとの間及び配線板用シート材1bと片面回路付きシート材13aとの間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。このとき配線板用シート材1bの貫通孔3内に充填された導電性ペースト8は既に述べたように予め導体回路5間を接続しており、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また配線板用シート材1dと配線板用シート材1bとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1bの導体回路5の所定箇所が配線板用シート材1dの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。更に、配線板用シート材1bと片面回路付きシート材13aとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1bの導体回路5の所定箇所が片面回路付きシート材13aの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。
またこのとき、片面回路付きシート材13aでは、既述のように貫通孔3内には予め導電性ペースト8が密に充填されているため、導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。また、配線板用シート材1b及び配線板用シート材1dにおいては、導電性ペースト8は貫通孔3の開口から突出しており、この導電性ペースト8の突出部分は、上記の一括成形時に加圧により貫通孔3内に押し込まれて密に充填されて、これにより導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
このようにして得られる多層板11は、図25(b)に示すように、両側の最外層にそれぞれ導体回路5が設けられると共に内層にも二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16のうちの二層の内部には電気部品10が配されている。
図26に示す例では、図7に示す工程にて得られる一枚の配線板用シート材1fと、図16に示す工程にて得られる二枚の片面回路付きシート材13aとを積層一体化するものである。
図示の例では、まず一方の片面回路付きシート材13aと配線板用シート材1fとを、片面回路付きシート材13aの導体回路5が形成されていない面と、配線板用シート材1fの一面(電気部品10が実装されていない導体回路5が形成されている側の面)とを対向させると共に、配線板用シート材1fと他方の片面回路付きシート材13aとを、片面回路付きシート材1fの他面(電気部品10が実装されている導体回路5が形成されている面)と片面回路付きシート材13aの導体回路5が形成されていない面とを対向させた状態で、これらを積層配置する。このとき各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、二枚の片面回路付きシート材13aと一枚の配線板用シート材1fとが一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、一方の片面回路付きシート材13aと配線板用シート材1fとの間及び配線板用シート材1fと他方の片面回路付きシート材13aとの間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。このとき配線板用シート材1fの貫通孔3内に充填された導電性ペースト8は既に述べたように予め導体回路5間を接続しており、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また各片面回路付きシート材13aと配線板用シート材1fとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1fの導体回路5の所定箇所が各片面回路付きシート材13aの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることによりこの導電性ペースト8が導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成され、ビアホール15が形成される。
またこのとき、配線板用シート材1f及び各片面回路付きシート材13aでは、既述のように貫通孔3内には予め導電性ペースト8が密に充填されているため、導電性が高く接続信頼性の高いビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
このようにして得られる多層板11は、図26(b)に示すように、両側の最外層にそれぞれ導体回路5が設けられると共に内層にも二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16のうちの一層の内部には電気部品10が配されている。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また、両面に導体回路5が形成された配線板用シート材1と、シート材13と、金属箔9とを用い、配線板用シート材1の両面に少なくとも一枚のシート材13を積層すると共に最外層に金属箔9を配置して積層一体化した後、硬化後の積層体を貫通する貫通孔19を形成すると共に貫通孔19内にホールめっき18を形成し、次いで最外層の金属箔9の表面にエッチング処理を施すことにより導体回路5を形成することにより、多層板11を製造することもできる。その一例を図27に示す。
図27に示す例では、図1に示す工程にて得られる配線板用シート材1aを1枚と、図15に示す工程にて得られるシート材13fを二枚と、金属箔9を二枚用い、これらを積層一体化するものである。
金属箔9としては銅箔等の適宜のものが用いられ、例えば図6に示す配線板用シート材1eを製造する場合と同様のものを用いることができる。
図示の例では、まず配線板用シート材1aの両側に、シート材13fを、配線板用シート材1aの導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、各シート材13fの外側にそれぞれ金属箔9を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と金属箔9の粗面とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1aとシート材13fとの各対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1a、シート材13f及び金属箔9が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1aとシート材13fとの間及びシート材13fと金属箔9との間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。また配線板用シート材1aとシート材13fとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1aの導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと金属箔9との界面においては金属箔9がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5と金属箔9の間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体の所定箇所に、レーザ加工等により、その積層方向に貫通する貫通孔19を形成する。この貫通孔19は、各樹脂層4(絶縁層16)と金属箔9とを貫通するように形成され、また必要に応じて内層の導体回路5(配線板用シート材1aに転写された導体回路5)の所定箇所を貫通するように形成される。
次に、形成された貫通孔19の内面に無電解めっき処理を施すと共に必要に応じて電解めっき処理を施して、銅めっき等のホールめっき18を形成した後、最外層の金属箔9にエッチング処理を施して、最外層に導体回路5を形成する(図27(c))。
このようにして得られる多層板11は、図27(c)に示すように、両側の最外層にそれぞれ金属箔9のエッチング処理による導体回路5が設けられると共に、内層にも転写用基材6による転写により形成された二層の導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また三層の絶縁層16のうちの一層の内部には電気部品10が配されている。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また外層の導体回路5を、樹脂層4の硬化による絶縁層16の形成後における、金属箔9のエッチング処理により形成したことから、この外層の導体回路5のピール強度が向上、ランド強度が増し、この外層の導体回路5に部品を実装する際の保持能力が向上する。
また積層成形後に更に多層板11全体を貫通するスルーホールを形成することができて配線設計の自由度が更に向上しているものである。
このような積層成形後の、多層板11全体を貫通するスルーホールの形成は、本実施形態におけるものには限られず、多層板11を製造する全ての配線板用シート材1及びシート材13の組み合わせにおいて、このようなスルーホールの形成を行うことができるものである。
また、積層一体化後の積層体を貫通する貫通孔19を形成し、貫通孔19内面にホールめっき18を施した後、この貫通孔19内に導電性ペースト8を充填することにより、多層板11全体を貫通するスルーホールを形成することもできる。この場合、例えば両面に導体回路5が形成された配線板用シート材1と、導電性ペースト8が充填された貫通孔3を有するシート材13と、表面に導体回路5が設けられた転写用基材6とを用い、少なくとも一枚のシート材13を、配線板用シート材1の一面又は両面に積層すると共に、更にその外層に、転写用基材6を導体回路5とシート材13とが対向するように積層して積層一体化した後、転写用基材6を剥離し、次いで積層体の両面に保護フィルム12を積層した状態で硬化後の積層体を貫通する貫通孔19を形成し、貫通孔19内にホールめっき18を施すと共に導電性ペースト8を充填させてから保護フィルム12を剥離することにより、多層板11を得ることもできる。その一例を図28に示す。
図28に示す例では、両面に導体回路5が形成された配線板用シート材1(図示の例では図1に示す工程にて得られる配線板用シート材1a)と、図15に示す工程にて得られるシート材13fと、表面に導体回路5が形成された転写用基材6を用い、これらを積層一体化するものである。
導体回路5の形成がなされた転写用基材6は、既述のようにして形成されたものが用いられる。このとき転写用基材6としては、配線板用シート材1の製造に用いるものと同様にステンレス材等の金属材にて形成しても良いが、転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することもできる。すなわち、配線板用シート材1の製造時に、特に転写用基材6に転写用の導体回路5を形成すると共に電気部品10を実装する場合には、電気部品10の実装時における半田付け加工等により転写用基材6が高温となり、また電気部品10を樹脂層4に埋設する際には樹脂層4を十分に溶融軟化するために高温をかけなければならない場合があり、このため転写用基材6には高い耐熱性が必要とされるが、この多層板11の成形時には転写用基材6には電気部品10は実装されないため、配線板用シート材1の製造時ほどの耐熱性は必要とされず、このため転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することができるものである。この場合、樹脂フィルムとしては、例えば既知のPETフィルム、フッ素系フィルム等で、加熱やUV光等により導体回路5との剥離ができる接着剤を有する樹脂フィルムを用いることができる。
図示の例では、まず配線板用シート材1aの片側又は両側(図示では片側)に、シート材13fを、配線板用シート材1aの導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、シート材13fの外側に導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と転写用基材6に設けた導体回路5とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1aとシート材13fとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせすると共に、シート材13fと転写用基材6に設けた導体回路9との対向面においても貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1a、シート材13f及び転写用基材6に設けた導体回路5が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1aとシート材13fとの間及びシート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。このとき、転写用基材6に設けた導体回路5は、シート材13fの樹脂層4が溶融軟化することにより流動してこの樹脂層4中に埋設される。
また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。また配線板用シート材1aとシート材13fとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1aの導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との界面においては導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、貫通孔3の配置位置において導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれ、貫通孔3内に更に密に充填され、これによりビアホール15の導電性が向上する。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体から転写用基材6を剥離した後、両面に保護フィルム12を積層して配置し、その状態で所定箇所に、レーザ加工等により、その積層方向に貫通する貫通孔19を形成する。この貫通孔19は、各樹脂層4(絶縁層16)を貫通するように形成され、また必要に応じて配線板用シート材1aに転写されていた導体回路5や、最外層に新たに転写した導体回路5の所定箇所を貫通するように形成される。
次に、形成された貫通孔19の内面に無電解めっき処理を施すと共に必要に応じて電解めっき処理を施して、銅めっき等のホールめっき18を形成した後、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔19の開口から貫通孔19内に導電性ペースト8が充填されるようにする。
次に、両面の保護フィルム12を剥離した後、必要に応じて加熱を施すことにより貫通孔19内に導電性ペースト8を硬化させて、スルーホールを形成する。
このようにして得られる多層板11は、図28(c)に示すように、両側の最外層にそれぞれ樹脂層4(絶縁層16)に埋設されると共にその表面に露出する導体回路5が設けられると共に、内層にも転写用基材6による転写により形成された導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また一層の絶縁層16の内部には電気部品10が配されている。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また積層成形後に更に多層板11全体を貫通するスルーホールを形成することができて配線設計の自由度が更に向上しているものである。また特にこのスルーホールは、ホールめっき18と導電性ペースト8とによって導電性が確保されていることから、導通信頼性が高いものである。
このような積層成形後の、多層板11全体を貫通するスルーホールの形成は、本実施形態におけるものには限られず、多層板11を製造する全ての配線板用シート材1及びシート材13の組み合わせにおいて、これを積層一体化した積層体の全体を貫通する貫通孔19を形成し、貫通孔19内面にホールめっき18を施した後、この貫通孔19内に導電性ペースト8を充填することで、多層板11全体を貫通するスルーホールの形成を行うことができるものである。このとき多層板11全体を貫通するスルーホールは経路が長くなるが、ホールめっき18と導電性ペースト8の併用により優れた導通信頼性が確保できる。
また、図28に示す実施形態において、導体回路5を設けた転写用基材6を用いないようにすると共にシート材13fの代わりに、図16に示すシート材13aを用いることもできる。また、配線板用シート材1の両面にシート材13を積層する場合には、配線板用シート材1の一面にシート材13fと導体回路5を設けた転写用基材6を積層し、配線板用シート材1の他面に図16に示すシート材13aを積層することもできる。その一例を図29に示す。
図29に示す例では、両面に導体回路5が形成された配線板用シート材1(図示の例では図1に示す工程にて得られる配線板用シート材1a)と、図15に示す工程にて得られるシート材13fと、図16に示す工程にて得られるシート材13aと、表面に導体回路5が形成された転写用基材6を用い、これらを積層一体化するものである。
図示の例では、まず配線板用シート材1aの一面側に、シート材13fを、配線板用シート材1aの導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、シート材13fの外側に導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と転写用基材6に設けた導体回路5とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1aとシート材13fとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせすると共に、シート材13fと転写用基材6に設けた導体回路5との対向面においても貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
また、配線板用シート材1aの他面側に、シート材13aを、配線板用シート材1aの導体回路5が形成された面と、シート材13aの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるようにして、積層配置する。このとき配線板用シート材1aとシート材13aとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせする。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1a、シート材13a、シート材13f及び転写用基材6に設けた導体回路5が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1aとシート材13fとの間の界面、シート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との間の界面、配線板用シート材1aとシート材13aとの界面がそれぞれ接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。このとき、転写用基材6に設けた導体回路5は、シート材13fの樹脂層4が溶融軟化することにより流動してこの樹脂層4中に埋設される。
また導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これにより導体回路5間を導通するビアホール15が形成される。また配線板用シート材1aとシート材13fとの界面、並びに配線板用シート材1aとシート材13aとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1aの導体回路5の所定箇所がシート材13f,13aの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との界面においては導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。また導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、特に配線板用シート材1aとシート材13fとの界面では貫通孔3の配置位置において導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれ、貫通孔3内に更に密に充填され、これによりビアホール15の導電性が向上する。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体から転写用基材6を剥離した後、両面に保護フィルム12を積層して配置し、その状態で所定箇所に、レーザ加工等により、その積層方向に貫通する貫通孔19を形成する、この貫通孔19は、各樹脂層4(絶縁層16)を貫通するように形成され、また必要に応じて配線板用シート材1aやシート材13aに転写されていた導体回路5や、外層に新たに転写した導体回路5の所定箇所を貫通するように形成される。
次に、形成された貫通孔19の内面に無電解めっき処理を施すと共に必要に応じて電解めっき処理を施して、銅めっき等のホールめっき18を形成した後、保護フィルム12の外面に導電性ペースト8を塗布することによって、貫通孔19の開口から貫通孔19内に導電性ペースト8が充填されるようにする。
次に、両面の保護フィルム12を剥離した後、必要に応じて加熱を施すことにより貫通孔19内に導電性ペースト8を硬化させて、スルーホールを形成する。
このようにして得られる多層板11は、図29(c)に示すように、両側の最外層にそれぞれ樹脂層4(絶縁層16)に埋設されると共にその表面に露出する導体回路5が設けられると共に、内層にも転写用基材6による転写により形成された導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また一層の絶縁層16の内部には電気部品10が配されている。
また、図11に示す工程を経て得られた配線板用シート材1と、図15(c)に示すようなシート材13fと、導体回路5が設けられた転写用基材6とを用い、配線板用シート材1の片面又は両面に少なくとも一枚のシート材13fを積層すると共に、更にその外層に転写用基材6をその導体回路5とシート材13fとが対向するように積層して積層一体化した後、転写用基材6を剥離することにより、多層板11を得ることもできる。またこのとき、導体回路5を設けた転写用基材6を用いないようにすると共にシート材13fの代わりに、図16に示すシート材13aを用い、シート材13aと配線板用シート材1と、シート材13aに設けられた導体回路5が外面側に配置されるように積層することもできる。また、配線板用シート材1の両面にシート材13を積層する場合には、配線板用シート材1の一面にシート材13fと導体回路5を設けた転写用基材6を積層し、配線板用シート材1の他面に図16に示すシート材13aを積層することもできる。その一例を図30に示す。
図30に示す例では、図11に示す工程にて得られる配線板用シート材1kと、図15に示す工程にて得られるシート材13fと、図16に示す工程にて得られるシート材13aと、表面に導体回路5が形成された転写用基材6を用い、これらを積層一体化するものである。図示の例では、配線板用シート材1kとしては、両面の導体回路5のうち、片側の導体回路5のみに電気部品10が実装されているものを用いているが、勿論両側の導体回路5にそれぞれ電気部品10が実装されているものを用いても良い。
導体回路5の形成がなされた転写用基材6は、既述のようにして形成されたものが用いられる。このとき転写用基材6としては、配線板用シート材1の製造に用いるものと同様にステンレス材等の金属材にて形成しても良いが、転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することもできる。すなわち、配線板用シート材1の製造時に、特に転写用基材6に転写用の導体回路5を形成すると共に電気部品10を実装する場合には、電気部品10の実装時における半田付け加工等により転写用基材6が高温となり、また電気部品10を樹脂層4に埋設する際には樹脂層4を十分に溶融軟化するために高温をかけなければならない場合があり、このため転写用基材6には高い耐熱性が必要とされるが、この多層板11の成形時には転写用基材6には電気部品10は実装されないため、配線板用シート材1の製造時ほどの耐熱性は必要とされず、このため転写用基材6を樹脂フィルムにて形成することができるものである。この場合、樹脂フィルムとしては、例えば既知のPETフィルム、フッ素系フィルム等で、加熱やUV光等により導体回路5との剥離ができる接着剤を有する樹脂フィルムを用いることができる。
図示の例では、まず配線板用シート材1kの一面側に、シート材13fを、配線板用シート材1kの導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、シート材13fの外側に導体回路5の形成がなされた転写用基材6を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と転写用基材6に設けた導体回路5とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1kとシート材13fとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせすると共に、シート材13fと転写用基材6に設けた導体回路5との対向面においても貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
また、配線板用シート材1kの他面側に、シート材13aを、配線板用シート材1kの導体回路5が形成された面と、シート材13aの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるようにして、積層配置する。このとき配線板用シート材1kとシート材13aとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせする。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1k、シート材13a、シート材13f及び転写用基材6に設けた導体回路5が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1kとシート材13fとの間の界面、シート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との間の界面、配線板用シート材1kとシート材13aとの界面がそれぞれ接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。このとき、転写用基材6に設けた導体回路5は、シート材13fの樹脂層4が溶融軟化することにより流動してこの樹脂層4中に埋設される。
またシート材13f,13aにおける導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これによりビアホール15が形成される。また配線板用シート材1kとシート材13fとの界面、並びに配線板用シート材1kとシート材13aとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1kの導体回路5の所定箇所がシート材13f,13aの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと(転写用基材6に設けた)導体回路5との界面においては導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。またこの導電性ペースト8は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれると共に、特に配線板用シート材1kとシート材13fとの界面では貫通孔3の配置位置において導体回路5の所定箇所が樹脂層4に埋設されることにより更に押し込まれ、貫通孔3内に更に密に充填され、これによりビアホール15の導電性が向上する。
また、配線板用シート材1kにおける、内面にホールめっき18が形成された貫通孔3に充填された導電性ペースト8又は樹脂ペースト20は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填されると共に硬化してビアホール15が形成される。このビアホール15では、樹脂ペースト20が充填されている場合にはホールめっき18にて、また導電性ペースト8が充填されている場合にはホールめっき18と導電性ペースト8の硬化物によって、配線板用シート材1kの両側の導体回路5を導通接続する。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8(及び樹脂ペースト20)の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体から転写用基材6を剥離することにより、多層板11が得られる。
このようにして得られる多層板11は、図30(b)に示すように、両側の最外層にそれぞれ樹脂層4(絶縁層16)に埋設されると共にその表面に露出する導体回路5が設けられると共に、内層にも転写用基材6による転写により形成された導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また一層の絶縁層16の内部には電気部品10が配されている。また特に電気部品10が埋設された絶縁層16においては、ビアホール15の導通がホールめっき18により確保されて、優れた導通安定性を有する。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また、図30に示す実施形態において、特に配線板用シート材1kとして、ホールめっき18を有する貫通孔3に樹脂ペースト20を充填したものを用い、この配線板用シート材1kに積層されるシート材13f,13a等のような導電性ペースト8が充填された貫通孔3を有するシート材13として、その貫通孔3内にホールめっき18を形成せずに、導電性ペースト8のみで導通を確保するものを用いることができる。この場合、得られる多層板11では、樹脂層4(絶縁層16)に電気部品10が埋設される場合においては、電気部品10の厚み分だけ絶縁層16の厚みが厚くなり、ビアホール15の経路が長くなるが、このビアホール15の導通をホールめっき18にて確保することにより、ビアホール15の導通信頼性を確保することができる。このときホールめっき18としては、無電解めっき処理に続いて電解めっき処理を施すことにより厚膜に形成することが好ましい。また電気部品10が埋設されない樹脂層4(絶縁層16)では、絶縁層16を薄膜に形成できてビアホール15の経路を短くすることができ、このため導電性ペースト8のみにてビアホール15の導通信頼性を確保することができるものである。
また、図11に示す工程を経て得られた配線板用シート材1と、図15(c)に示すようなシート材13fと、銅箔等の金属箔9とを用い、配線板用シート材1の片面又は両面に少なくとも一枚のシート材13fを積層すると共に、更にその外層に金属箔9を積層して積層一体化した後、転写用基材6を剥離することにより、多層板11を得ることもできる。またこのとき、金属箔9を用いないようにすると共にシート材13fの代わりに、図18(b)に示すシート材13cを用い、シート材13cと配線板用シート材1とを、シート材13cの金属箔9が外側に配置されるように積層することもできる。また、配線板用シート材1の両面にシート材13を積層する場合には、配線板用シート材1の一面にシート材13fと金属箔9を積層し、配線板用シート材1の他面に図18(b)に示すシート材13cを積層することもできる。その一例を図31に示す。
図31に示す例では、図11に示す工程にて得られる配線板用シート材1kと、図15に示す工程にて得られるシート材13fと、図18に示す工程にて得られるシート材13cと、金属箔9とを用い、これらを積層一体化するものである。
金属箔9としては銅箔等の適宜のものが用いられ、例えば図6に示す配線板用シート材1eを製造する場合と同様のものを用いることができる。
図示の例では、配線板用シート材1kとしては、両面の導体回路5に電気部品10が実装されているものを用いているが、勿論片面の導体回路5にのみ電気部品10が実装されているものを用いても良い。
図示の例では、まず配線板用シート材1kの一面側に、シート材13fを、配線板用シート材1kの導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、シート材13fの外側に金属箔9を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と金属箔9の一面(粗面)とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1kとシート材13fとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
また、配線板用シート材1kの他面側に、シート材13cを、配線板用シート材1kの導体回路5が形成された面と、シート材13cの一面(金属箔9が設けられていない面)とを対向させるようにして、積層配置する。このとき配線板用シート材1kとシート材13cとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせする。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1k、シート材13c、シート材13f及び金属箔9が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1kとシート材13fとの間の界面、シート材13fと金属箔9との間の界面、配線板用シート材1kとシート材13cとの界面がそれぞれ接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。
またシート材13f,13cにおける導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これによりビアホール15が形成される。また配線板用シート材1kとシート材13fとの界面、並びに配線板用シート材1kとシート材13cとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1kの導体回路5の所定箇所がシート材13f,13cの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと金属箔9との界面においては金属箔9がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5と金属箔9の間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。またこの導電性ペースト8は、特にシート材13fに形成されたものは加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填され、これによりビアホール15の導電性が向上する。
また、配線板用シート材1kにおける、内面にホールめっき18が形成された貫通孔3に充填された導電性ペースト8又は樹脂ペースト20は、加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填されると共に硬化してビアホール15が形成される。このビアホール15では、樹脂ペースト20が充填されている場合にはホールめっき18にて、また導電性ペースト8が充填されている場合にはホールめっき18と導電性ペースト8の硬化物によって、配線板用シート材1kの両側の導体回路5を導通接続する。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8(及び樹脂ペースト20)の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体の外層に設けられた金属箔9にエッチング処理を施すことにより、最外層の導体回路5を形成して、多層板11が得られる。
このようにして得られる多層板11は、図31(c)に示すように、両側の最外層にそれぞれ金属箔9のエッチング処理により形成された導体回路5が設けられると共に、内層には転写用基材6による転写により形成された導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また一層の絶縁層16の内部には電気部品10が配されている。また特に電気部品10が埋設された絶縁層16においては、ビアホール15の導通がホールめっき18により確保されて、優れた導通安定性を有する。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また外層の導体回路5を、樹脂層4の硬化による絶縁層16の形成後における、金属箔9のエッチング処理により形成したことから、この外層の導体回路のピール強度が向上、ランド強度が増し、この外層の導体回路5に部品を実装する際の保持能力が向上する。
また、図31に示す実施形態においても、図30に示す場合と同様に、特に配線板用シート材1kとして、ホールめっき18を有する貫通孔3に樹脂ペースト20を充填したものを用い、この配線板用シート材1kに積層されるシート材13f,13c等のような導電性ペースト8が充填された貫通孔3を有するシート材13として、その貫通孔3内にホールめっき18を形成せずに、導電性ペースト8のみで導通を確保するものを用いることができる。この場合、得られる多層板11では、樹脂層4(絶縁層16)に電気部品10が埋設される場合においては、電気部品10の厚み分だけ絶縁層16の厚みが厚くなり、ビアホール15の経路が長くなるが、このビアホール15の導通をホールめっき18にて確保することにより、ビアホール15の導通信頼性を確保することができる。このときホールめっき18としては、無電解めっき処理に続いて電解めっき処理を施すことにより厚膜に形成することが好ましい。また電気部品10が埋設されない樹脂層4(絶縁層16)では、絶縁層16を薄膜に形成できてビアホール15の経路を短くすることができ、このため導電性ペースト8のみにてビアホール15の導通信頼性を確保することができるものである。
また図32に示す実施形態では、図8に示す工程又は図9に示す工程を経て得られた配線板用シート材1h(又は1i)と、図15に示す工程を経て得られたシート材13fと、金属箔9とを用い、配線板用シート材1h(又は1i)の導体回路5が形成された面に、少なくとも一枚のシート材13を積層し、更にその外層に金属箔9を積層して積層一体化した後、積層体を貫通する貫通孔19を形成し、貫通孔19の内面にホールめっき18を施すと共に両外層の金属箔9にエッチング処理を施して導体回路5を形成して、多層板11を得るものである。
金属箔9としては銅箔等の適宜のものが用いられ、例えば図6に示す配線板用シート材1eを製造する場合と同様のものを用いることができる。
図示の例では、まず配線板用シート材1h(又は1i)の、導体回路5が形成された片面側にシート材13fを、配線板用シート材1h(又は1i)の導体回路5が形成された面と、シート材13fの一面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出している面)とを対向させるように配置すると共に、シート材13fの外側に金属箔9を、シート材13fの他面(貫通孔3から導電性ペースト8が突出していない面)と金属箔9の一面(粗面)とが対向するようにして、これらを積層配置する。このとき配線板用シート材1h(又は1i)とシート材13fとの対向面においては、貫通孔3の開口位置に、導体回路5の所定箇所が配置されるように位置合わせされる。
この状態で、加熱加圧成形を行うことにより、配線板用シート材1h(又は1i)、シート材13f及び金属箔9が一括して積層成形される。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、配線板用シート材1h(又は1i)とシート材13fとの間の界面、シート材13fと金属箔9との間の界面がそれぞれ接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。
またシート材13fにおける導電性ペースト8を充填した貫通孔3では、導電性ペースト8が硬化されて導体層が形成され、これによりビアホール15が形成される。また配線板用シート材1h(又は1i)とシート材13fとの界面においては、上記の一体成形時に配線板用シート材1hの導体回路5の所定箇所がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されると共に、シート材13fと金属箔9との界面においては金属箔9がシート材13fの貫通孔3に充填された導電性ペースト8と接続されることにより、導体回路5と金属箔9の間を接続し、この状態で導電性ペースト8が硬化して導体層が形成されて、ビアホール15が形成される。またこの導電性ペースト8は、特にシート材13fに形成されたものは加圧によって貫通孔3から突出した部分が貫通孔3内に押し込まれて貫通孔3内に更に密に充填され、これによりビアホール15の導電性が向上する。
この加熱加圧成形は、Bステージ状態の樹脂層4及び導電性ペースト8(及び樹脂ペースト20)の硬化反応が進行する条件で行われるものであり、その条件は既述の場合と同様とすることができる。
次いで、得られた積層体の所定箇所に、レーザ加工等により、その積層方向に貫通する貫通孔19を形成する。この貫通孔19は、各樹脂層4(絶縁層16)と金属箔9とを貫通するように形成され、また必要に応じて内層の導体回路5(配線板用シート材1h又は1iに転写された導体回路5)の所定箇所を貫通するように形成される。
次に、形成された貫通孔19の内面に無電解めっき処理を施すと共に必要に応じて電解めっき処理を施して、銅めっき等のホールめっき18を形成した後、最外層の金属箔9にエッチング処理を施して、最外層に導体回路5を形成する(図32(c))。
このようにして得られる多層板11は、図32(c)に示すように、両側の最外層にそれぞれ金属箔9のエッチング処理により形成された導体回路5が設けられると共に、内層には転写用基材6による転写により形成された導体回路5が設けられ、また各層間を導通するビアホール15が形成される。また一層の絶縁層16の内部には電気部品10が配されている。
上記のようにして多層板11を作製すると、表面が平坦であり、かつBステージ状態の樹脂層4からなるシート状の部材を積層していることから、成形過程において導体回路5が形成されている箇所における絶縁層16の変形が生じず、絶縁層16における絶縁信頼性が高いものである。しかも複数のシート状の部材を一括して積層成形することから、成形工程の簡略化が可能であって成形に煩雑な手間や時間がかからないようになり、且つ成形時に各層の導体回路5に熱履歴の相違が生じなくなり、熱履歴の相違による導体回路5の収縮率に基づく補正が不要となる。
また、ビアホール15が形成された絶縁層16に対して任意の箇所に導体回路5を形成することができて配線設計の自由度が高く、ビアオンビア構造やパッドオンビア構造を容易に形成することができ、回路の微細化・高密度化が容易なものとなって配線板の小型化、薄型化を達成することができ、また信号経路の短縮化もできるものである。
また外層の導体回路5を、樹脂層4の硬化による絶縁層16の形成後における、金属箔9のエッチング処理により形成したことから、この外層の導体回路5のピール強度が向上、ランド強度が増し、この外層の導体回路5に部品を実装する際の保持能力が向上する。
また積層成形後に更に多層板11全体を貫通するスルーホールを形成することができて配線設計の自由度が更に向上しているものである。
図33に示す実施形態は、ビルドアップ工法によって多層化を行う例を示すものである。ビルドアップ工法により多層化を行う場合は、コア材として、上記のような各種の配線板用シート材1、あるいは配線板用シート材1を用いて作製された多層板11を用いることができる。図33に示す例では、コア材として図11に示す工程にて得られる配線板用シート材1kを用いている。
図示の例では、まず図33(a)に示すように、コア材(配線板用シート材1k)の片側又は両側(図示では両側)に、樹脂層4を有するシート材13として樹脂付金属箔17を、外面側に金属箔9が配置されるように積層し、加熱加圧成形により積層一体化する。
このとき、一体成形前のコア材は、その樹脂層4がBステージ状態であってもよく、またCステージ状態に形成されているものでもよい。また樹脂付金属箔17は、銅箔等の金属箔9の一面にBステージ状態の樹脂層4を形成したものであり、例えば図9に示す配線板用シート材1iの作製に用いたものと同様にして形成されるものを用いることができる。
この成形過程においては、Bステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、コア材である配線板用シート材1kとシート材13(樹脂付金属箔17)との間の界面が接合して積層一体化されると共に、各樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。
次に、最外層の金属箔9にレーザ光を照射するなどして、この金属箔9とその下層の樹脂層4のみを貫通する非貫通孔21を形成する。この非貫通孔21は、コア材である配線板用シート材1(1k)に形成された導体回路5に対して所定の位置に形成し、また非貫通孔21の底面ではこの配線板用シート材1(1k)に形成された導体回路5の表面が露出するように形成する。
次に、非貫通孔21の内面にホールめっき18を形成する。ホールめっき18としては銅めっき等を施すことができ、例えば無電解めっきを施した後、必要に応じて電解めっきを施すことにより形成することができる。
次に、外層の金属箔9にエッチング処理を施すなどして、導体回路5を形成する。このとき、ホールめっき18が形成された非貫通孔21は、導体回路5間を導通するビアホール15として形成される。
これにより、図示の例では、図33(b)に示すように、四層の導体回路5と三層の絶縁層16とを有する多層板11が得られる。このとき、多層板11は、電気部品10が埋設された絶縁層16では、層間の導通は、内面にホールめっき18が形成されると共に導電性ペースト8又は樹脂ペースト20が充填された貫通孔3からなるビアホール15にて確保される。また電気部品10が埋設されていない絶縁層16では、層間の導通は、内面にホールめっき18が形成された非貫通孔21からなるビアホール15にて確保される。
尚、この内面にホールめっき18が形成された非貫通孔21には、更に導電性ペースト8又は樹脂ペースト20を充填させて硬化させても良い。
また、このように形成された多層板11を、更に多層化することもできる。この場合、例えば図33(c)に示すように、多層板11の片側又は両側(図示では両側)に、シート材13として前記と同様の樹脂付金属箔17を、外側に金属箔9が配されるように配置して積層し、加熱加圧成形などにて積層一体化する。
この成形過程においては、樹脂付金属箔17のBステージ状態の樹脂層4が溶融した後硬化することにより、多層板11とシート材13(樹脂付金属箔17)との間の界面が接合して積層一体化されると共に、樹脂層4の硬化物にて絶縁層16が形成される。またこのとき、内層のホールめっき18が形成された非貫通孔21からなるビアホール15に導電性ペースト8や樹脂ペースト20が充填されていない場合、この非貫通孔21内に溶融した樹脂が流入し充填され、穴埋めがなされる。
次いで、前記の場合と同様に、非貫通孔21の形成、ホールめっき18の形成、並びに外層の導体回路5の形成を行って、図33(d)に示すように、更に多層化された多層板11を得ることができる。
また、このような絶縁層16と導体回路5の形成を繰り返し行うことにより、更に多層化された多層板11を得ることもできる。
ビルドアップ工法による多層化は上記のようなものに限られず、絶縁層16の積層形成を、樹脂ペーストの塗布硬化により行ったり、あるいは導体回路5の積層形成をめっき処理により行ったりすることもできる。またコア材に対して積層成形された絶縁層16にビアホール15を形成するにあたっては、上記のように非貫通孔21の形成を行った後、ホールめっき18を形成せずに導電性ペースト8を充填・硬化することによりビアホール15を形成することもできる。また他にビルドアップ工法にて行われている種々の手法を採用することができる。
このようにして得られる多層板11は、高度なLCR機能内蔵の多層の配線板として形成することができるものであり、RFモジュールやブルートゥースモジュール等の小型高周波モジュール等のマイクロエレクトロニクス分野において活用されることが期待できる。