以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は電気部品内蔵回路板Aの製造工程の一例を示すものであり、この工程においては、まず、転写用基材13の片面(転写面14)に導体回路3を設ける。導体回路3を転写用基材13に形成する方法としては、例えば、転写用基材13に銅箔等の金属箔を貼着し、これをエッチング処理する方法を挙げることができるが、電解銅めっき等によるパターンめっきを用いる方法であれば、微細な導体回路3を容易に形成することができ、最終的に得られる電気部品内蔵回路板Aの高周波損失を低減し、高周波信頼性を向上することができるものである。導体回路3の厚みは5〜35μmであることが好ましい。
ここで、めっき処理による導体回路3の形成は、例えば、めっきレジストの形成、めっき処理、めっきレジストの剥離という工程を経て行うことができる。めっきレジストの形成は、感光性のドライフィルムやレジストインク等を用いた一般的な手法により行うことができる。また、めっき処理は、銅、ニッケル、金等からなるめっき被膜を一般的な手法で形成することにより行うことができる。このように、導体回路3をめっき処理により形成する場合には、後述する導体回路3の転写時において樹脂層1と導体回路3との密着性を向上するために、高周波特性を損なわない程度にめっき被膜に表面処理を行うことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。
次に、図1(a)に示すように、電気部品4を導体回路3と電気的に接続して転写用基材13の転写面14に配設する。電気部品4としては、チップ状抵抗体、チップ状コンデンサ、チップ状インダクタ等のような受動部品(LCR)を実装することができるものであり、この場合、チップ状部品は半田17にて導体回路3に接続して実装することができる。また、電気部品4としては、シリコンベアチップ等の半導体ベアチップのような能動部品(IC)を実装することもできる。この場合、図1においては図示省略しているが、後述する図4に示すものと同様にして、半導体ベアチップを半田ボール18等により導体回路3に接続し、アンダーフィル19を充填硬化して実装することができる。アンダーフィル19としては、一般的なエポキシ樹脂組成物等からなるものを用いることができる。なお、電気部品4は、導電性ペースト52を用いて実装することもできるが、上記のように半田17による接続の方が実装信頼性が高い。
上記LCRは、印刷により又はシート状物で提供されていてもよい。例えば、抵抗素子(印刷抵抗)を印刷成形する場合には、熱硬化性樹脂中に金属粉を混入するなどしたペースト状の抵抗材料を印刷した後、これを加熱することにより、高容量の素子を形成することができる。また、コンデンサ素子を形成する場合には、熱硬化性樹脂中に高誘電率フィラーとしてチタン酸バリウム等を混入するなどしたペースト状の誘電材料を印刷した後、これを加熱することにより、高容量の素子を形成することができる。特に、ペーストの樹脂分を焼成して揮散させることによりセラミック状にして、より高い誘電素子を形成することができる。
また、図1(a)に示すように、中空部46を有する雌形コネクタ形成用部品15を導体回路3と電気的に接続して転写用基材13の転写面14に配設する。ここで、雌形コネクタ形成用部品15は、例えば、エンジニアリングプラスチック等の絶縁性樹脂を成形することにより直方体状又は円筒状の筐体48として形成することができる。この筐体48の内部には、大容量の信号のやりとりに必要とされるだけの複数の接続端子5が設けられている。各接続端子5は、上記筐体48の外面に設けた複数のリード20とそれぞれ電気的に接続されており、筐体48内の一部には、上記と同種又は異種の絶縁性樹脂49を充填することにより、接続端子5間の絶縁を確保すると共に各接続端子5を固定している。また、筐体48内の残部には中空部46が形成されており、筐体48内の一部を充填している絶縁性樹脂49の表面から各接続端子5が中空部46内に突出している。中空部46を形成している筐体48の一部には開口部50を設け、この開口部50には取り外し可能なキャップ47を設けておくことが好ましい。
そして、雌形コネクタ形成用部品15の内部に設けた接続端子5と導体回路3とを電気的に接続する。具体的には、図1(a)に示すように、筐体48の外面に設けたリード20と導体回路3とを半田17にて接合することにより、リード20を介して接続端子5と導体回路3とが電気的に接続されている。ここで、既述のキャップ47を設けて中空部46が形成されている雌形コネクタ形成用部品15を用いる場合においては、半田17による接続を行う前に、雌形コネクタ形成用部品15からキャップ47を取り外しておくことが好ましい。このようにしておけば、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46内の空気を開口部50を通じて雌形コネクタ形成用部品15の外部へ自由に流通させることができるものである。キャップ47を設けていない場合には、半田17の熱で雌形コネクタ形成用部品15の中空部46内の空気が膨張することにより、雌形コネクタ形成用部品15が破損するおそれがある。しかし、取り外し可能なキャップ47を設けている場合には、このようなおそれは皆無である。なお、図1に示すものにおいては、接続端子5の突出方向は転写面14と略平行にしてあり、また、接続端子5の先端は電気部品4と対向しないようにしてある。
転写用基材13と導体回路3との間の密着強度(剥離強度)は0.098〜1.96mN/cm(10〜200gf/cm)であることが好ましく、0.294〜0.882mN/cm(30〜90gf/cm)であることがより好ましい。このような範囲であると、転写用基材13と導体回路3との間の密着性及び剥離性をバランス良く得ることができるものである。しかし、上記の密着強度が小さすぎると、導体回路3と転写用基材13との間の密着性が不十分となるおそれがあり、逆に上記の密着強度が大きすぎると、導体回路3を転写用基材13から樹脂層1に転写する際に、導体回路3と転写用基材13とを完全に剥離することができなくなるおそれがある。
転写用基材13としては、金属基材を用いるのが好ましい。特に、ステンレス基材を用いるのが好ましい。ステンレスは、銅等の金属からなる導体回路3や樹脂層1との密着性が低いことから、導体回路3の転写時において樹脂層1及び導体回路3からの剥離性を高く得ることができ、導体回路3を樹脂層1に容易に転写することができるものである。ステンレス基材としては、SUS304、SUS301を用いることができる。このうちSUS301はめっき密着性に優れているため、特にSUS301を用いるのが好ましい。
ステンレス基材を用いる場合、その厚みは50〜200μmであることが好ましく、特に100μm程度であると取扱性が良好である。すなわち、厚み50〜200μm、特に厚み100μmのステンレス基材を用いる場合、転写用基材13は高い靱性を有すると共に適度な撓みやすさを有するので、後述するように導体回路3の転写時において転写用基材13を撓ませることにより、樹脂層1を湾曲させることなく、樹脂層1から転写用基材13を容易に剥離することができるものである。また、電気部品4を多数実装する場合でも取扱性が良好である。例えば、電気部品4を導体回路3に多数実装する場合においてリフロー炉への搬入及び取り出し等の作業を容易に行うことができる。また、導体回路3の形成時や電気部品4の実装時に転写面14が汚れた場合でも、導体回路3の形成後や電気部品4の実装後に、脱脂等により容易に洗浄することができ、樹脂層1に汚れが転写されないようにすることができ、信頼性の低下を防止することができるものである。
また、ステンレス基材を用いる場合、硝酸とフッ酸との混酸や、塩化第二鉄溶液等のエッチング液により、ソフトエッチング処理等の化学研磨による粗化処理を転写面14に行い、転写用基材13と導体回路3との間の密着強度を調整しておくのが好ましい。具体的には、上記のような処理により、転写用基材13の表面粗度Raを2μm以下に設定しておくのが好ましく、0.1〜0.5μmに設定しておくのがより好ましい。このようにしておけば、めっき処理等による転写用基材13への導体回路3の形成時において転写用基材13と導体回路3との密着性をある程度確保することができ、半田リフロー加熱時等に転写用基材13から導体回路3が不用意に剥離しないようにすることができると共に、導体回路3の転写時において転写用基材13を樹脂層1から剥離する際に導体回路3を確実に樹脂層1に残存させることができるものである。
次に、図1(b)に示すように、あらかじめ導体回路3のみを設けておいた転写用基材13と、雌形コネクタ形成用部品15を配設した既述の転写用基材13との2枚の転写用基材13の間にBステージ(半硬化状態)の樹脂層1を配置すると共に、各転写用基材13の転写面14を樹脂層1の表面に対向させて、樹脂層1の両側に転写用基材13を積層する。このとき、既述のキャップ47を設けた雌形コネクタ形成用部品15を用いている場合には、積層する前に、雌形コネクタ形成用部品15にキャップ47を取り付けて開口部50に蓋をしておくことが好ましい。このようにしておけば、成形過程において溶融軟化した樹脂層1の樹脂が開口部50を通じて雌形コネクタ形成用部品15の中空部46内に流れ込むのを防止することができるからである。なお、一方の転写用基材13だけでなく、両方の転写用基材13に電気部品4を配設しておいてもよい。
ここで、樹脂層1を形成している樹脂組成物は、樹脂成分と無機フィラーとを含有するものであり、樹脂成分としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることができ、必要に応じて硬化剤、硬化促進剤、表面処理剤等を配合することができる。熱硬化性樹脂を用いる場合には、粘度調整のために溶剤を配合することもできる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、公知のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂等を用いることができ、このうち1種のみを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、添加型の難燃剤を加えると難燃性を得ることができるが、熱硬化性樹脂の一部又は全部が臭素化されたものやリン変性されたものを用いると、耐熱性や機械的強度を十分に維持しつつ難燃性の向上を図ることができる。
硬化剤や硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、使用する熱硬化性樹脂に応じて公知のものから適宜に選択して用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂やジシアンジアミド等の硬化剤を配合することができ、また、硬化促進剤としては2−エチル−4−メチルイミダゾールやトリフェニルホスフィン等の硬化促進剤を配合することができる。
表面処理剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤や、リン酸エステル系分散剤、エーテルアミン系分散剤等の分散剤等を用いることができる。これにより、樹脂組成物における無機フィラーの分散性を向上させることができる。
溶剤としては、メチルエチルケトンやアセトンのような低沸点のものを用いるのが好ましい。このような低沸点溶剤を用いると、乾燥後の樹脂層1の表面の形状が良好となるからである。逆に、高沸点溶剤を用いると、乾燥時に溶剤が十分に揮発せず残留する可能性が高く、硬化後の樹脂層1(絶縁基板2)の電気絶縁性や機械的強度の低下の原因となるおそれがある。
無機フィラーは樹脂組成物に高充填することにより、この樹脂組成物で形成される樹脂層1の熱膨張率を低減し、導体回路3や電気部品4の熱膨張率との整合を取ることができる。無機フィラーの配合量は樹脂組成物全量(ただし、溶剤を除く)に対して80〜95質量%であることが好ましい。このとき、硬化後の樹脂層1の熱膨張率が20ppm/℃以下となり、上記の整合性を一層高く得ることができ、熱による負荷を受けた際に、樹脂層1と導体回路3との剥離や、電気部品4の破損、断線等の不良の発生を防止することができるものである。
無機フィラーとしては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、シリカ(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、ホウ酸アルミニウム(9Al2O3・2B2O3)等を用いることができ、このうち1種のみを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、成形時の樹脂層1の流動性を調整したり、硬化後の樹脂層1の割れを防止したりするために、樹脂組成物にはフェノキシ樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することもできる。
そして、樹脂組成物は、混練機を用いて上記の各成分を混練してスラリー化し、最適な粘度に調整することによって得ることができる。次に、このようにして得られた樹脂組成物をキャリア基材(例えば、PETフィルムや圧延銅箔等)の表面に塗布し、これを加熱乾燥することにより、Bステージのシート状の樹脂層1を得ることができる。このときの加熱乾燥条件は、樹脂組成物の組成にもよるが、130〜170℃で2〜10分間加熱することが好ましい。また、樹脂層1の厚みは50〜300μmであることが好ましい。なお、上記のようにして得られるBステージの樹脂層1は、キャリア基材から剥離することにより、樹脂シート21として用いることができる。
また、樹脂シート21としては、不織布にスラリー状の樹脂組成物を含浸させた後、これを乾燥させることにより得られるものを用いることもできる。不織布としては、ガラス不織布、有機繊維不織布等を用いることができる。よって、FR−4(ガラスエポキシ銅張積層板)等の金属張積層板を製造するために用いられるプリプレグも、樹脂シート21に含まれ、本発明の樹脂層1を形成することができる。
図1(b)に示すものにおいては、1枚の樹脂シート21からなる樹脂層1と転写用基材13を積層しているが、転写面14からの電気部品4の突出寸法に応じて、2枚以上の樹脂シート21からなる樹脂層1と転写用基材13を積層してもよい。そして、このように積層した状態で加熱加圧成形を行うことにより一体化する。
上記の成形過程においては、まず樹脂シート21が溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート21を積層している場合には、これらの樹脂シート21が一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、転写用基材13に形成された導体回路3及び電気部品4が、樹脂シート21で形成される樹脂層1に埋設される。このとき電気部品4と転写用基材13との間の隙間にアンダーフィル19を充填していない場合には、溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、上記の隙間にも樹脂が十分に充填されるような条件で成形を行うものである。また、成形時の圧力は、溶融軟化時の樹脂シート21の流動性に応じて設定する必要がある。例えば、この溶融軟化時の流動性が高い場合には、真空ラミネータにより容易に成形可能であり、また溶融軟化時の流動性が低い場合には、2.94MPa(30kgf/cm2)程度まで加圧して成形することができる。また、電気部品4を樹脂層1に埋設させるためには、樹脂シート21が溶融軟化した時点から徐々に昇圧することが好ましい。また、この加熱加圧成形は、減圧下又は真空下において行うことが好ましい。この場合、樹脂層1の内部にボイドが混入しにくくなり、信頼性が向上するからである。
また、上記の成形過程における加熱温度は、樹脂層1を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、100〜180℃であることが好ましい。より詳しくは、溶融軟化時の成形温度は100〜130℃、上記埋設後の成形硬化温度は160〜180℃であることが好ましい。そして、この加熱でBステージの樹脂層1が硬化してCステージの樹脂層1となり、これにより絶縁基板2が形成される。
次に、図1(c)に示すように、導体回路3、電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を樹脂層1に埋入させた後、図1(d)に示すように、樹脂層1から転写用基材13のみを剥離することにより、導体回路3、電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を樹脂層1に残存させる。転写用基材13の剥離は、転写用基材13を撓ませながら樹脂層1の端部から引き剥がすことにより行うことができる。この剥離後の転写用基材13は、酸洗浄等による洗浄を行えば、再度、電気部品内蔵回路板Aの製造に利用することができる。
また、必要に応じて、レーザ光を照射したり、ドリル加工したりすることにより、樹脂層1及びその両側の導体回路3を貫通する貫通孔51を形成すると共に、この貫通孔51の内部に導電性ペースト52を充填することにより、樹脂層1の両側の導体回路3同士を導通してもよい。そして、図1(d)に示すように、樹脂層1の表面において導体回路3を露出させて形成し、樹脂層1に電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を埋設させた後、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46を通るように樹脂層1を厚み方向に切断する。この切断は、ダイヤモンドカッターやルーター等を用いて行うことができる。図1(d)において切断箇所を1点鎖線で示す。このように切断することにより、樹脂層1の側面において雌形コネクタ形成用部品15の凹部6を開口させることができ、図1(e)に示すような電気部品内蔵回路板Aを製造することができる。このようにして得られる電気部品内蔵回路板Aは、次のような特徴を有している。すなわち、樹脂層1の表面において導体回路3が露出して形成されており、しかも樹脂層1の外面と導体回路3の露出面とが面一となって、電気部品内蔵回路板Aの表面(側面を除く)が凹凸なく平坦に形成されている。また、樹脂層1には、導体回路3と電気的に接続された電気部品4が埋設されている。さらに、樹脂層1の側面において雌形コネクタ8の凹部6が開口している。
ここで、図1(e)に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、導体回路3が絶縁基板2の表面において露出しているので、図1(f)に示すように、導体回路3が露出している側の面に既述の樹脂シート21を貼着することにより、回路保護用絶縁層10を形成してもよい。そうすると、この回路保護用絶縁層10により、導体回路3を保護することができるものである。なお、回路保護用絶縁層10は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成してもよい。また、回路保護用絶縁層10の表面には、品名、型式、製造番号等を表示することができる。
また、図1(g)も電気部品内蔵回路板Aの他例を示すものである。この電気部品内蔵回路板Aにおいては、絶縁基板2の表面に銅箔等の金属箔を貼着したり銅めっき等によるめっき処理を行ったりすることにより、電磁遮蔽用金属層11を形成している。このようにすると、この電磁遮蔽用金属層11により、電磁シールド効果を得ることができ、電磁障害を防止することができるものである。なお、この図1(g)に示すものにおいては、電磁遮蔽用金属層11は、絶縁基板2の両面に形成した回路保護用絶縁層10を介して、形成している。また、電磁遮蔽用金属層11は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。
以上のように、図1に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、単一の樹脂層1で絶縁基板2が形成され、1つの樹脂層1の両面に導体回路3が形成され、導体回路3と電気的に接続された電気部品4が1つの樹脂層1に埋設されている。このように、電気部品4を絶縁基板2内に内蔵させることにより、電気部品4の搭載量を増大させつつ小型化を図ることができるものである。また、電気部品4の実装可能位置が拡大することから、配線設計の自由度も増大する。さらに、図1に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、絶縁基板2の側面に凹部6が形成され、導体回路3と電気的に接続された接続端子5が凹部6の内面7に設けられて雌形コネクタ8が形成されている。そのため、従来よりも接続端子5の数を増加させても、これらの接続端子5はすべて凹部6の内面7に設けることができ、嵩張らず、出っ張りの原因ともならずに、大容量の情報の出し入れを外部との間で行うことができるものである。よって、携帯に便利なICカード等を製造するのが容易であり、さらなる小型化が可能となるものである。なお、外部との間において情報を出し入れするにあたっては、情報の供給元・保存元となる外部機器に設けた雄形コネクタ(図示省略)を電気部品内蔵回路板Aの雌形コネクタ8に接続することによって行うことができる。なお、本発明において樹脂層1の片面又は両面とは、外部から視認できる面を意味するほか、外部から視認できない面、つまり異なる樹脂層1間の界面をも意味する。以下においても同様である。
また、既述の電気部品内蔵回路板Aの製造方法によれば、Bステージの樹脂層1が溶融軟化し、この樹脂層1を構成する樹脂組成物が流動して隙間を埋めていくことから、電気部品4の周囲に空隙が発生しないようにすることができる。よって、電気部品4の周囲に空気が残存しなくなるので、電気部品内蔵回路板Aが熱による負荷を受けた場合であっても、空気の熱膨張による絶縁基板2の割れや電気部品4の破損、断線等の不良の発生を抑制することができる。しかも、煩雑な工程を経ることなく、電気部品4の実装量や実装位置にかかわらず、樹脂層1を溶融軟化させることにより、絶縁基板2内部の任意の箇所に電気部品4を配置することができるものである。
また、図1(e)〜(g)に示すものにおいては、電気部品内蔵回路板Aの両面に絶縁層及び導体層を交互に積層していく余地があるので、公知のビルドアップ法を行うことにより、多層化を図ることができるものである。すなわち、上記のようにして得られる電気部品内蔵回路板Aは、コア材23として用いることができる。図2はこの多層化の工程の一例を示すものであり、この工程においては、図1(e)に示す電気部品内蔵回路板Aを用い、まず、図2(a)に示すように、コア材23の両面に金属箔付き樹脂シート24の樹脂層1側の面を対向させて、コア材23と金属箔付き樹脂シート24を積層する。そして、このように積層した状態で加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この成形過程においては、Bステージの樹脂層1が溶融した後硬化することにより、コア材23と金属箔付き樹脂シート24との界面が接合されて両者が一体化される。なお、上記の加熱加圧成形は既述の場合と同様の条件で行うことができる。
ここで、金属箔付き樹脂シート24は、Bステージの樹脂層1を金属箔25の片面に設けて形成されるものであり、上記金属箔25としては、例えば、銅箔等を用いることができる。金属箔25の厚みは10〜150μmであることが好ましい。金属箔25の樹脂層1が形成される面は、樹脂層1との密着性を向上するために粗面としておくことが好ましい。例えば、金属箔25として電解銅箔を用いる場合には、電解銅箔にもともと形成されている粗面に樹脂層1を形成することができる。また、金属箔25に表面処理を行うこともできる。この表面処理としては、例えば、黒化処理、アルマイト処理等による粗面化処理を挙げることができる。一方、金属箔付き樹脂シート24を構成する樹脂層1は、既述の樹脂組成物を用いて形成することができる。そして、樹脂組成物を金属箔25の片面(粗面)に塗布し、これを乾燥させてBステージの樹脂層1を形成することにより、金属箔付き樹脂シート24を得ることができる。
コア材23と金属箔付き樹脂シート24とを一体化した後は、図2(b)に示すように、外層の金属箔25にレーザ光を照射したり、ドリル加工したりすることにより、この金属箔25とその下層の樹脂層1のみを貫通する非貫通孔26を形成する。この非貫通孔26は、コア材23である電気部品内蔵回路板Aに形成された導体回路3に対して所定の位置に形成する。また、非貫通孔26の底面においては導体回路3の表面が露出している。
次に、一般的なデスミア処理により非貫通孔26を洗浄して樹脂残渣を除去した後、非貫通孔26の内面にホールめっき27を形成する。非貫通孔26の内面にホールめっき27を形成する。ホールめっき27としては、銅めっき等を形成することができる。具体的には、無電解銅めっきを施した後、必要に応じて電解銅めっきを施すことにより、ホールめっき27を形成することができる。なお、ホールめっき27が形成された非貫通孔26の内部には、導電性ペースト52を充填してもよい。
次に、外層の金属箔25にエッチング処理を行うことにより、導体回路3を形成する。このとき、ホールめっき27が形成された非貫通孔26は、異なる層に形成された導体回路3同士を導通するビアホール28として形成される。樹脂層1の形成と導体回路3の形成とを交互に繰り返して行うことにより、さらに多層化することもできる。なお、ホールめっき27が形成された非貫通孔26の内部には導電性ペースト52を充填したり、あるいは、めっきの厚付けにより非貫通孔26の内部をホールめっき27自体で充填したりしてもよい。
そして、図2(b)に示すように、樹脂層1の表面において導体回路3を露出させて形成し、樹脂層1に電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を埋設させた後、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46を通るように樹脂層1を厚み方向に切断する。この切断は、ダイヤモンドカッターやルーター等を用いて行うことができる。図2(b)において切断箇所を1点鎖線で示す。このように切断することにより、樹脂層1の側面において雌形コネクタ形成用部品15の凹部6を開口させることができ、図2(c)に示すような多層化された電気部品内蔵回路板Aを製造することができる。なお、ビルドアップ法による多層化は、既述のように金属箔付き樹脂シート24を用いる方法に限定されるものではなく、例えば、導体回路3が形成された絶縁基板2の表面に直接樹脂組成物を塗布することにより樹脂層1を形成したり、めっき処理により導体回路3を形成したりしてもよい。また、樹脂層1にビアホール28を形成するにあたっては、非貫通孔26の形成を行った後、ホールめっき27を形成せずに導電性ペースト52を充填・硬化するようにしてもよい。
ここで、図2(c)に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、導体回路3が絶縁基板2の表面において露出しているので、図1(f)の場合と同様に、導体回路3が露出している面に既述の樹脂シート21を貼着することにより、回路保護用絶縁層10(図示省略)を形成してもよい。そうすると、この回路保護用絶縁層10により、導体回路3を保護することができるものである。このとき、回路保護用絶縁層10を構成する樹脂の一部が、ホールめっき27が形成された非貫通孔26の内部に充填される。なお、回路保護用絶縁層10は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。また、回路保護用絶縁層10の表面には、品名、型式、製造番号等を表示することができる。
また、図1(g)の場合と同様に、電気部品内蔵回路板Aの絶縁基板2の両面に銅箔等の金属箔を貼着したり銅めっき等によるめっき処理を行ったりすることにより、電磁遮蔽用金属層11(図示省略)を形成してもよい。このようにすると、この電磁遮蔽用金属層11により、電磁シールド効果を得ることができ、電磁障害を防止することができるものである。なお、電磁遮蔽用金属層11は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。
以上のように、図2に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、複数の樹脂層1を積層して絶縁基板2が形成され、3つの樹脂層1(図2(c)によれば、電気部品4が埋設されている1つの樹脂層1と金属箔付き樹脂シート24に由来する2つの樹脂層1を意味する)に導体回路3が形成され、導体回路3と電気的に接続された電気部品4が1つの樹脂層1に埋設されている。このように、電気部品4を絶縁基板2内に内蔵させることにより、電気部品4の搭載量を増大させつつ小型化を図ることができるものである。また、電気部品4の実装可能位置が拡大することから、配線設計の自由度も増大する。さらに、図2に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、絶縁基板2の側面に凹部6が形成され、導体回路3と電気的に接続された接続端子5が凹部6の内面7に設けられて雌形コネクタ8が形成されている。そのため、従来よりも接続端子5の数を増加させても、これらの接続端子5はすべて凹部6の内面7に設けることができ、嵩張らず、出っ張りの原因ともならずに、大容量の情報の出し入れを外部との間で行うことができるものである。よって、携帯に便利なICカード等を製造するのが容易であり、さらなる小型化が可能となるものである。なお、外部との間において情報を出し入れするにあたっては、情報の供給元・保存元となる外部機器に設けた雄形コネクタ(図示省略)を電気部品内蔵回路板Aの雌形コネクタ8に接続することによって行うことができる。
また、既述の電気部品内蔵回路板Aの製造方法によれば、Bステージの樹脂層1が溶融軟化し、この樹脂層1を構成する樹脂組成物が流動して隙間を埋めていくことから、電気部品4の周囲に空隙が発生しないようにすることができる。よって、電気部品4の周囲に空気が残存しなくなるので、電気部品内蔵回路板Aが熱による負荷を受けた場合であっても、空気の熱膨張による絶縁基板2の割れや電気部品4の破損、断線等の不良の発生を抑制することができる。しかも、煩雑な工程を経ることなく、電気部品4の実装量や実装位置にかかわらず、樹脂層1を溶融軟化させることにより、絶縁基板2内部の任意の箇所に電気部品4を配置することができるものである。
また、図3も電気部品内蔵回路板Aの他例を示すものである。この電気部品内蔵回路板Aにおいては、最外層の表面に電気部品4を搭載することにより、さらなる高集積化を図っている。具体的には、図2(b)に示す絶縁基板2を用い、これを既述のビルドアップ法によりさらに多層化した後、最外層の導体回路3に電気部品4を実装する。その後、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46を通るように樹脂層1を厚み方向に切断する。この切断は、ダイヤモンドカッターやルーター等を用いて行うことができる。図3(a)において切断箇所を1点鎖線で示す。このように切断することにより、樹脂層1の側面において雌形コネクタ形成用部品15の凹部6を開口させることができ、図3(b)に示すような電気部品内蔵回路板Aを製造することができる。ただし、電気部品内蔵回路板Aの最外層に搭載する電気部品4の大きさ・個数は、本発明の目的を損なわない範囲内において設定するものである。
図4は電気部品内蔵回路板Aの製造工程の他例を示すものであり、この工程においては、まず、転写用基材13の片面(転写面14)に導体回路3を設ける。導体回路3を転写用基材13に形成する方法としては、既述の方法を挙げることができる。
次に、図4(a)に示すように、転写用基材13の転写面14に電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を配設すると共に、さらに電気部品4と同程度の大きさを有するシリコン放熱樹脂シート12を公知の接着剤により仮接着して設ける。電気部品4としては、既述のものを用いることができ、これを既述の方法で実装することにより、導体回路3と電気的に接続することができる。また、雌形コネクタ形成用部品15としては、既述のものを用いることができ、これを既述の方法により、導体回路3と電気的に接続することができる。ここで、図4(a)に示すように、半田17による接続を行う前に、図1(a)の場合と同様の理由により、雌形コネクタ形成用部品15からキャップ47を取り外しておくのが好ましい。また、シリコン放熱樹脂シート12としては、シリコーン製で熱伝導性及び柔軟性に優れているものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。
転写用基材13の具体例、転写用基材13と導体回路3との間の密着強度(剥離強度)、転写用基材13の表面粗度Ra等についても、既述のとおりである。
また、図4に示す工程においては、FR−4(ガラスエポキシ銅張積層板)等の金属張積層板を用いる。そして、サブトラクティブ法等を行うことにより、金属張積層板に導体回路3及びスルーホールめっき42を形成することにより、プリント配線板29を製造し、さらにこのプリント配線板29の導体回路3に電気部品4を実装する。電気部品4としては、既述のものを用いることができ、これを既述の方法で実装することにより、導体回路3と電気的に接続することができる。
次に、図4(a)に示すように、上記のプリント配線板29と転写用基材13との間にBステージ(半硬化状態)の樹脂層1を配置すると共に、プリント配線板29の電気部品4を実装した側の面と転写用基材13の転写面14とをそれぞれ樹脂層1の表面に対向させて、樹脂層1の一方の側にプリント配線板29を積層すると共に、樹脂層1の他方の側に転写用基材13を積層する。このとき、図1(b)の場合と同様の理由により、雌形コネクタ形成用部品15にキャップ47を取り付けて開口部50に蓋をしておくことが好ましい。さらに、プリント配線板29に実装された電気部品4のうち特に放熱性の向上が要求される電気部品4(例えば、IC等の能動部品)と、転写用基材13に設けたシリコン放熱樹脂シート12とを樹脂層1を介して対向させておく。ここで、Bステージの樹脂層1としては、既述の樹脂組成物からなる樹脂シート21を用いることができる。なお、プリント配線板29に実装されたすべての電気部品4にシリコン放熱樹脂シート12を対向させることができるように、あらかじめ転写用基材13に複数のシリコン放熱樹脂シート12を設けておいてもよい。
図4(a)に示すものにおいては、1枚の樹脂シート21からなる樹脂層1とプリント配線板29及び転写用基材13を積層しているが、転写面14からの電気部品4の突出寸法に応じて、2枚以上の樹脂シート21からなる樹脂層1とプリント配線板29及び転写用基材13を積層してもよい。そして、このように積層した状態で加熱加圧成形を行うことにより一体化する。この一体化は、図4(b)に示すように、対向するシリコン放熱樹脂シート12と電気部品4とが少なくとも接触するまで行う。
上記の成形過程においては、まず樹脂シート21が溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート21を積層している場合には、これらの樹脂シート21が一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、転写用基材13に形成された導体回路3及び電気部品4が、樹脂シート21で形成される樹脂層1に埋設される。このとき電気部品4と転写用基材13との間の隙間にアンダーフィル19を充填していない場合には、溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、上記の隙間にも樹脂が十分に充填されるような条件で成形を行うものである。また、成形時の圧力は、溶融軟化時の樹脂シート21の流動性に応じて設定する必要がある。例えば、この溶融軟化時の流動性が高い場合には、真空ラミネータにより容易に成形可能であり、また溶融軟化時の流動性が低い場合には、2.94MPa(30kgf/cm2)程度まで加圧して成形することができる。また、電気部品4を樹脂層1に埋設させるためには、樹脂シート21が溶融軟化した時点から徐々に昇圧することが好ましい。また、この加熱加圧成形は、減圧下又は真空下において行うことが好ましい。この場合、樹脂層1の内部にボイドが混入しにくくなり、信頼性が向上するからである。
また、上記の成形過程における加熱温度は、樹脂層1を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、100〜180℃であることが好ましい。より詳しくは、溶融軟化時の成形温度は100〜130℃、上記埋設後の成形硬化温度は160〜180℃であることが好ましい。そして、この加熱でBステージの樹脂層1が硬化してCステージの樹脂層1となり、これにより絶縁基板2が形成される。
次に、導体回路3、電気部品4、雌形コネクタ形成用部品15及びシリコン放熱樹脂シート12を樹脂層1に埋入させた後、樹脂層1から転写用基材13のみを剥離して、導体回路3、電気部品4、雌形コネクタ形成用部品15及びシリコン放熱樹脂シート12を樹脂層1に残存させる。そして、図4(b)に示すように、樹脂層1の表面において導体回路3を露出させて形成し、樹脂層1に電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を埋設させた後、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46を通るように樹脂層1を厚み方向に切断する。この切断は、ダイヤモンドカッターやルーター等を用いて行うことができる。図4(b)において切断箇所を1点鎖線で示す。このように切断することにより、樹脂層1の側面において雌形コネクタ形成用部品15の凹部6を開口させることができ、図4(c)に示すような電気部品内蔵回路板Aを製造することができる。この電気部品内蔵回路板Aにあっては、シリコン放熱樹脂シート12が電気部品4に接触して配設されていると共に樹脂層1の表面において露出しているので、放熱性を高めることができ、これにより電気部品4の機能低下を防止することができるものである。
ここで、図4(c)に示す電気部品内蔵回路板Aの放熱性をさらに高めるために、図4(d)に示すように、シリコン放熱樹脂シート12に接触させて放熱フィン30を配設するようにしてもよい。ただし、放熱フィン30としては、本発明の目的を損なわない範囲の大きさのものを用いるものである。
また、図4(c)に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、導体回路3が絶縁基板2の表面において露出しているので、図4(d)に示すように、導体回路3が露出している側の面に既述の樹脂シート21を貼着することにより、回路保護用絶縁層10を形成してもよい。そうすると、この回路保護用絶縁層10により、導体回路3を保護することができるものである。なお、回路保護用絶縁層10は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。また、回路保護用絶縁層10の表面には、品名、型式、製造番号等を表示することができる。
また、図示省略しているが、上記の回路保護用絶縁層10を介して、絶縁基板2の片面又は両面に電磁遮蔽用金属層11を形成してもよい。このようにすると、この電磁遮蔽用金属層11により、電磁シールド効果を得ることができ、電磁障害を防止することができるものである。なお、電磁遮蔽用金属層11は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。
また、図4(c)(d)に示すものにおいては、シリコン放熱樹脂シート12や放熱フィン30が配設されていない側の面には絶縁層及び導体層を交互に積層していく余地があるので、公知のビルドアップ法を行うことにより、多層化を図ることができるものである。
以上のように、図4に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、複数の樹脂層1を積層して絶縁基板2が形成され、2つの樹脂層1(図4(d)によれば、電気部品4が埋設されている樹脂層1とプリント配線板29に由来する樹脂層1を意味する)に導体回路3が形成され、導体回路3と電気的に接続された電気部品4が1つの樹脂層1に埋設されている。このように、電気部品4を絶縁基板2内に内蔵させることにより、電気部品4の搭載量を増大させつつ小型化を図ることができるものである。また、電気部品4の実装可能位置が拡大することから、配線設計の自由度も増大する。さらに、図4に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、絶縁基板2の側面に凹部6が形成され、導体回路3と電気的に接続された接続端子5が凹部6の内面7に設けられて雌形コネクタ8が形成されている。そのため、従来よりも接続端子5の数を増加させても、これらの接続端子5はすべて凹部6の内面7に設けることができ、嵩張らず、出っ張りの原因ともならずに、大容量の情報の出し入れを外部との間で行うことができるものである。よって、携帯に便利なICカード等を製造するのが容易であり、さらなる小型化が可能となるものである。なお、外部との間において情報を出し入れするにあたっては、情報の供給元・保存元となる外部機器に設けた雄形コネクタ(図示省略)を電気部品内蔵回路板Aの雌形コネクタ8に接続することによって行うことができる。
図5も電気部品内蔵回路板Aの製造工程を示すものであるが、この工程では転写用基材13を用いない。すなわち、この工程においては、まず、サブトラクティブ法等を行うことにより、FR−4(ガラスエポキシ銅張積層板)等の金属張積層板に導体回路3及びスルーホールめっき42を必要に応じて形成することにより、プリント配線板29を製造する。図5に示すものにおいては、片面に導体回路3を形成した片面プリント配線板(片面板31)と両面に導体回路3を形成した両面プリント配線板(両面板32)の2枚のプリント配線板29を用いている。そして、転写用基材13に電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を配設する場合と同様にして、片面板31に雌形コネクタ形成用部品15及び電気部品4を配設する。ここで、図5に示す雌形コネクタ形成用部品15は、図1〜図4に示すものに比べて厚みが薄い直方体状の筐体48として形成してある。ただし、この筐体48は幅(図5において紙面に垂直方向)を広く形成してあるので、厚みが薄くてもこの筐体48の内部には、大容量の信号のやりとりに必要とされるだけの複数の接続端子5を設けることができるようになっている。また、上記筐体48の一面の全面を片面板31の表面に貼着することにより、雌形コネクタ形成用部品15と片面板31との間に隙間が生じないようにしてある。これにより、最終的に得られる電気部品内蔵回路板A全体の厚みをより薄くすることができるというメリットがある。また、各接続端子5は、上記筐体48の外面(側面)に設けた複数のリード20とそれぞれ電気的に接続されており、筐体48内の一部には、上記と同種又は異種の絶縁性樹脂49を充填することにより、接続端子5間の絶縁を確保すると共に各接続端子5を固定している。図5(a)に示すように、雌形コネクタ形成用部品15の接続端子5と片面板31の導体回路3との電気的な接続は、雌形コネクタ形成用部品15と片面板31との隙間において行わないようにしているので、上記接続の状態を外部から容易に視認することができ、これにより雌形コネクタ形成用部品15の片面板31への実装の良否を容易に確認することができるものである。また、筐体48内の残部には中空部46が形成されており、筐体48内の一部を充填している絶縁性樹脂49の表面から各接続端子5が中空部46内に突出している。中空部46を形成している筐体48の一部には開口部50を設け、この開口部50には取り外し可能なキャップ47を設けておくことが好ましい。
次に、図5(a)に示すように、上記の片面板31と両面板32との間にBステージ(半硬化状態)の樹脂層1を配置すると共に、両面板32において導体回路3を形成した側の面と片面板31において雌形コネクタ形成用部品15及び電気部品4を配設した側の面とをそれぞれ樹脂層1の表面に対向させて、樹脂層1の一方の側に両面板32を積層すると共に、樹脂層1の他方の側に片面板31を積層する。ここで、Bステージの樹脂層1としては、既述の樹脂組成物からなる樹脂シート21を用いることができる。なお、積層する前に、図1(b)の場合と同様の理由により、雌形コネクタ形成用部品15にキャップ47を取り付けて開口部50に蓋をしておくことが好ましい。
図5(a)に示すものにおいては、1枚の樹脂シート21からなる樹脂層1とプリント配線板29を積層しているが、プリント配線板29からの電気部品4の突出寸法に応じて、2枚以上の樹脂シート21からなる樹脂層1とプリント配線板29を積層してもよい。そして、このように積層した状態で加熱加圧成形を行うことにより一体化する。
上記の成形過程においては、まず樹脂シート21が溶融軟化する。このとき複数の樹脂シート21を積層している場合には、これらの樹脂シート21が一体化し、またこの溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、片面板31に形成された導体回路3及び電気部品4が、樹脂シート21で形成される樹脂層1に埋設される。このとき電気部品4と片面板31との間の隙間にアンダーフィル19を充填していない場合には、溶融軟化した樹脂シート21が流動することにより、上記の隙間にも樹脂が十分に充填されるような条件で成形を行うものである。また、成形時の圧力は、溶融軟化時の樹脂シート21の流動性に応じて設定する必要がある。例えば、この溶融軟化時の流動性が高い場合には、真空ラミネータにより容易に成形可能であり、また溶融軟化時の流動性が低い場合には、2.94MPa(30kgf/cm2)程度まで加圧して成形することができる。また、電気部品4を樹脂層1に埋設させるためには、樹脂シート21が溶融軟化した時点から徐々に昇圧することが好ましい。また、この加熱加圧成形は、減圧下又は真空下において行うことが好ましい。この場合、樹脂層1の内部にボイドが混入しにくくなり、信頼性が向上するからである。
また、上記の成形過程における加熱温度は、樹脂層1を構成する樹脂組成物の組成にもよるが、100〜180℃であることが好ましい。より詳しくは、溶融軟化時の成形温度は100〜130℃、上記埋設後の成形硬化温度は160〜180℃であることが好ましい。そして、この加熱でBステージの樹脂層1が硬化してCステージの樹脂層1となり、これにより絶縁基板2が形成される。
次に、図5(b)に示すように導体回路3、電気部品4及び雌形コネクタ形成用部品15を樹脂層1に埋設した後、雌形コネクタ形成用部品15の中空部46を通るように樹脂層1を厚み方向に切断する。この切断は、ダイヤモンドカッターやルーター等を用いて行うことができる。図5(b)において切断箇所を1点鎖線で示す。このように切断することにより、樹脂層1の側面において雌形コネクタ形成用部品15の凹部6を開口させることができ、図5(c)に示すような電気部品内蔵回路板Aを製造することができる。
また、図5(c)に示すものにおいては、導体回路3が絶縁基板2の表面において露出しているので、図5(d)に示すように、導体回路3が露出している側の面に既述の樹脂シート21を貼着することにより、回路保護用絶縁層10を形成してもよい。そうすると、この回路保護用絶縁層10により、導体回路3を保護することができるものである。なお、回路保護用絶縁層10は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。また、回路保護用絶縁層10の表面には、品名、型式、製造番号等を表示することができる。
また、図示省略しているが、上記の回路保護用絶縁層10を介して、絶縁基板2の片面又は両面に電磁遮蔽用金属層11を形成してもよい。このようにすると、この電磁遮蔽用金属層11により、電磁シールド効果を得ることができ、電磁障害を防止することができるものである。なお、電磁遮蔽用金属層11は、もともと導体回路3を形成していないプリント配線板の表面全体に形成してもよい。また、電磁遮蔽用金属層11は、雌形コネクタ8の凹部6を除き、電気部品内蔵回路板Aの表面全体(両面及び側面)に形成することができる。
また、図5(b)に示すものにおいては、両面に絶縁層及び導体層を交互に積層していく余地があるので、公知のビルドアップ法を行うことにより、多層化を図ることができるものである。
以上のように、図5に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、複数の樹脂層1を積層して絶縁基板2が形成され、2つの樹脂層1(図5(d)によれば、電気部品4が埋設されている樹脂層1と両面板32に由来する樹脂層1を意味する)に導体回路3が形成され、導体回路3と電気的に接続された電気部品4が1つの樹脂層1に埋設されている。このように、電気部品4を絶縁基板2内に内蔵させることにより、電気部品4の搭載量を増大させつつ小型化を図ることができるものである。また、電気部品4の実装可能位置が拡大することから、配線設計の自由度も増大する。さらに、図5に示す電気部品内蔵回路板Aにおいては、絶縁基板2の側面に凹部6が形成され、導体回路3と電気的に接続された接続端子5が凹部6の内面7に設けられて雌形コネクタ8が形成されている。そのため、従来よりも接続端子5の数を増加させても、これらの接続端子5はすべて凹部6の内面7に設けることができ、嵩張らず、出っ張りの原因ともならずに、大容量の情報の出し入れを外部との間で行うことができるものである。よって、携帯に便利なICカード等を製造するのが容易であり、さらなる小型化が可能となるものである。なお、外部との間において情報を出し入れするにあたっては、情報の供給元・保存元となる外部機器に設けた雄形コネクタ(図示省略)を電気部品内蔵回路板Aの雌形コネクタ8に接続することによって行うことができる。
図6は電気部品内蔵回路板A同士を接続する一例を示すものである。電気部品内蔵回路板A同士を接続するにあたっては、次のような接続体34を用いて行うことができる。すなわち、この接続体34は、同じ側を向いている複数の雄形コネクタ35を有し、また、いずれの雄形コネクタ35も、雌形コネクタ8の接続端子5と同数の接続端子36を設けて形成されている。さらに、接続体34の各雄形コネクタ35は、雌形コネクタ8の凹部6に嵌合して収納されるように形成されている。そして、例えば、図6(a)に示すように、雌形コネクタ8が側面に形成された3枚の電気部品内蔵回路板Aを接続するにあたっては、まず、図6(b)に示すように、すべての雌形コネクタ8を同じ向きに揃えて電気部品内蔵回路板Aを積み重ねた後、図6(c)に示すように、接続体34の雄形コネクタ35をそれぞれ雌形コネクタ8の凹部6に押し込むことによって行うことができる。そうすると、図6(c)に示すように、接続体34の雄形コネクタ35が雌形コネクタ8の凹部6に嵌合して収納されることにより、電気部品内蔵回路板A同士を隙間なく接続することができ、複数の電気部品内蔵回路板Aをコンパクトなモジュールの集合体として得ることができるものである。複数の電気部品内蔵回路板A間の導通は、上記の接続体34によって取られている。なお、図6に示す電気部品内蔵回路板Aにおいて凹部6以外のものについては図示省略している。
図7は電気部品内蔵回路板Aの他例を示すものである。この電気部品内蔵回路板Aにおいては、信号のやりとりを光通信で行うために、接続端子5を受発光素子9(受光素子及び発光素子)で形成している。その他の構成は既述のものと同様である。そして、図7(a)に示すように、受発光素子9は雌形コネクタ8の凹部6に設けることができるので、従来のようにプリント配線板の最外層にLED等の受発光素子9を搭載する必要がない。また、上記のように受発光素子9を雌形コネクタ8の凹部6に設けるのに伴って、受発光素子9の光を効率よく集光するためのレンズ38等も、例えば透明樹脂で受発光素子9を封止することにより、雌形コネクタ8の凹部6に設けることができるので、従来のようにLEDの光を効率よく集光するために反射鏡やレンズ、蛍光体等もプリント配線板の外層に装着する必要がない。よって、その他の部品が実装される面積を確保することができ、光通信による大容量の信号のやりとりを行うことができるものである。
ここで、外部との間において光通信により情報を出し入れするにあたっては、図7(b)(c)に示すような光ファイバー保持体39を雌形コネクタ8に接続することによって行うことができる。雌形コネクタ8と光ファイバー保持体39との接続は、凹部6の開口縁に内側に向けて設けた突出片40と、光ファイバー保持体39に設けた受け片41とを係合させることにより行うことができる。そして、このように雌形コネクタ8と光ファイバー保持体39とを接続すると、光ファイバー保持体39に設けた複数の光ファイバー43のそれぞれの端部が、凹部6に設けた各受発光素子9に対向する。これにより、情報の供給元・保存元となる外部機器(図示省略)から送信された光信号を光ファイバー43を通して受発光素子9が受信することができ、逆に受発光素子9から送信された光信号を光ファイバー43を通して上記外部機器が受信することができるものである。情報の供給・保存が終了すれば、上記突出片40と受け片41との係合を解除することにより、雌形コネクタ8から光ファイバー保持体39を取り外すことができる。