JP2007076049A - インクジェット記録ヘッド及びそれを用いたインクジェット記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 撥液性、耐磨耗性に優れた印字品質の高いインクジェット記録ヘッド及び、そのようなインクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録用の液体を吐出する吐出口を有し、少なくとも該吐出口周辺部に撥インク処理がなされたインクジェット記録ヘッドにおいて、該記録ヘッドの撥インク処理部がフッ素を含有する組成物の硬化物で形成されており、フッ素を含有する組成物が、フッ素を含有する分子とフッ素を含有しない分子の両方を含み、該硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
【選択図】図1

Description

本発明は、インクジェット記録ヘッド及び、それを用いたインクジェット記録装置に関し、特にヘッドのインク吐出部周辺が撥インク処理され、撥水性及び耐摩耗性に優れ、得られる画像の印字品質に優れた記録ヘッドに関する。
記録ヘッドの吐出口から、インク(記録液)を吐出することにより記録を行うインクジェット記録装置が、静粛さと高速記録などの点で優れた記録装置として知られている。記録ヘッドによって得られる画像の印字品質は、記録紙上のインク滴からなるドットの位置精度に大きく依存する。このドット位置精度は、記録ヘッドの吐出口から吐出されるインク滴の飛翔方向によって左右される。飛翔方向を一定に保つには、インク滴吐出時における吐出口周縁部を均一で安定した状態にすること、具体的には、吐出口周縁部を含む記録ヘッド表面に撥水(以下、本明細書においては、「撥水」「撥液」と言う場合も特に断らない限り「撥インク」を表す。)処理を施すことが有用である。ここで撥水処理剤は、十分な撥水性と、インクに対する安定性(インクは溶解安定性のために塩基性に調整されることが多い)とを兼ね備えていることが求められる。さらに、撥水処理が施された吐出口周縁部にインクや紙などの異物が付着した場合には、ブレード等のクリーニング部材で掻き取り操作を行う。すなわち、撥水処理剤は擦り操作などの摩擦に対する耐久性をも求められる。
撥水処理方法として、フルオロアルキルアルコキシシラン等で記録ヘッド吐出口周縁部を処理して撥水性にする技術(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
また、他の撥水処理方法として、フッ素化合物を重合硬化皮膜中に固定化すべく、反応性基を有するフッ素化合物とエポキシ樹脂を併用することで、クリーニング操作後でも高い撥水性を得る技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
さらにフッ素含有の樹脂と、ブロックイソシアネートを含んでなる処理剤で処理する技術(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
さらにまた、分子中にペルフルオロアルキル基とエポキシ基とを備えたポリマーの硬化膜を形成し、撥水性と密着性とを両立させる技術(例えば、特許文献4参照)が開示されている。
特開昭56−895669号公報 特開平7−148930号公報 特許第3382416号公報 特開2000−26575号公報
しかしながら、特許文献1の技術では、撥水処理を完全にするには、高温150℃以上で長時間加熱するか、高pHの溶液の中で加熱するなど、吐出口を形成する材料を破壊する恐れのある処理が必要であり、しかも未だ拭き取り操作などの摩擦に対する耐久性が不十分である。
また、特許文献2の技術は、フッ素化合物とエポキシ樹脂とをあくまで均一に混合し撥水性を発現させようとするものであり、結果として強度の面では不十分なものとならざる
を得ない。
さらに、特許文献3の技術では、高い擦過耐性が報告されているものの、ブロックイソシアネートの反応性が乏しいために、高温(160℃)で長時間の加熱処理が必要であることから、前記と同様にヘッドの構成材料を破壊する等の問題点を有し、架橋密度を上げることが困難であり、優れた性能の皮膜を再現よく製造するのが困難であった。
さらにまた、特許文献4の技術では、比較的高い撥水性が報告されているが、ここで示されたポリマーはペルフルオロアルキル基を側鎖に導入したポリエーテル樹脂であり、フッ素を含有しない主鎖や連結基の成分が相対的に高い割合を占めることになるため、結果として十分な撥液性を発現できない。
またさらに、プリント時の紙詰まりによりヘッドの撥水処理剤が傷つけられることがあり、大きな問題となっている。紙詰まりによるヘッドへのダメージは、上記のブレード等によるクリーニングに較べ非常に大きく、例えば(上記特許文献2の如き手法により)硬化剤を配合して改善を図るにしても、既知の配合比(硬化剤の含率は高々40質量%)にて得られる硬化膜では、このような問題を回避するのはほぼ不可能である。
要するに、従来提案されている技術では、未だ要求されているほどに耐摩擦性と撥水性(撥インク性)とを両立させたインクジェット記録ヘッドは提案されていないのが現状である。すなわち、撥水性に優れ、しかも極めて高い耐摩擦性を示す、印字品質の高いインクジェット記録ヘッドの開発が要望されている。
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち本発明は、吐出口面に、簡単に、120℃以下の温度で形成可能な、フッ素を含有する組成物の硬化物を含み、撥液性、耐磨耗性に優れた印字品質の高いインクジェット記録ヘッド及び、そのようなインクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、フッ素を含有する組成物の硬化物表面のフッ素含率を硬化物全体のフッ素含率よりも高くすること、すなわちフッ素を含有する分子の表面偏析を利用することで、硬化物に含まれるフッ素の量が相対的に少なくても十分な撥水性が発現することを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記内容により、前記目的を達成したものである。
(1) 記録用の液体を吐出する吐出口を有し、少なくとも該吐出口周辺部に撥インク処理がなされたインクジェット記録ヘッドにおいて、
該記録ヘッドの撥インク処理部がフッ素を含有する組成物の硬化物で形成されており、
フッ素を含有する組成物が、フッ素を含有する分子とフッ素を含有しない分子の両方を含み、
該硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
(2) フッ素を含有する分子が、重合性基を有する含フッ素化合物であり、
フッ素を含有しない分子が、硬化剤である
上記(1)に記載のインクジェット記録ヘッド。
(3) 重合性基を有する含フッ素化合物と硬化剤とが、互いに反応し得る官能基を有する上記(2)に記載のインクジェット記録ヘッド。
(4) 含フッ素化合物がポリマーである上記(2)又は(3)に記載のインクジェット
記録ヘッド。
(5) ポリマーが、その重合単位として、主鎖及び側鎖にペルフルオロアルキル基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(1)で表される上記(4)に記載のインクジェット記録ヘッド。
一般式(1):
Figure 2007076049
(式中、Rf 11はフッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基又は−ORf 12基を表わす。ここでRf 12基は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表わす。)
(6) ポリマーが、その重合単位として、側鎖にペルフルオロアルキル基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(2)で表される上記(4)又は(5)に記載のインクジェット記録ヘッド。
一般式(2):
Figure 2007076049
(式中、Rf 21は炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表し、L21は炭素数1〜20の連結基を表し、R21は水素原子またはメチル基を表し、mは0又は1である。)
(7) ポリマーが、その重合単位として、重合性基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(3)で表される上記(4)〜(6)のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
一般式(3):
Figure 2007076049
(式中、L31は炭素数1〜20の連結基を表し、X31はカチオン重合性基又はラジカル重合性基を含む有機基を表し、R31は水素原子またはメチル基を表し、nは0又は1である。)
(8) フッ素を含有しない硬化剤の占める質量分率がフッ素を含有する組成物中40%以上である上記(1)〜(7)のいずれかに記載のインクジェト記録ヘッド。
(9) インクジェット記録ヘッドの撥インク処理部が、フッ素を含有する組成物を塗設、乾燥、硬化させることにより形成されている上記(1)〜(8)のいずれかに記載のインクジェト記録ヘッド。
(10) インクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、
該インクジェット記録ヘッドが上記(1)〜(9)のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、撥水性、耐磨耗性に優れ、印字品質の高いものである。特に、フッ素を含有する組成物中の含フッ素化合物として本発明において好適な含フッ素ポリマーを用いた場合には、耐摩耗性、撥液性が長期に亘って保持される。
また、本発明で用いられるフッ素を含有する組成物は、インクジェット記録ヘッドの吐出口面に、簡単に、120℃以下の温度で樹脂膜を形成することができる。
本明細書において、特に断りのない限り、化学式中の( )[ ]は繰り返し単位を表し、( )[ ]の添え字はモル組成比を表す。
<インクジェット記録ヘッド>
以下、本発明のインクジェット記録ヘッドについて説明する。
〔フッ素を含有する組成物〕
まず、本発明のインクジェット記録ヘッドに用いられるフッ素を含有する組成物について説明する。フッ素を含有する組成物は、フッ素を含有する分子とフッ素を含有しない分子の両方を含むことが好ましい。以下、フッ素を含有する組成物を単に組成物ということもある。
前述のとおり、本発明は、フッ素を含有する組成物の硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高いことを特徴とし、これにより硬化物に含まれるフッ素の量が相対的に少なくても十分な撥水性が発現される。「フッ素を含有する組成物の硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高い」とは、すなわちフッ素を含有する分子が表面偏析していることを表す。
[フッ素を含有する分子]
本発明に用いられるフッ素を含有する分子は、高い表面偏析能を有することが好ましく、表面偏析能を高めるためには分子中にペルフルオロアルキル基を有することが好ましい。また、本発明で用いるフッ素を含有する分子は低分子でも高分子でも良が、組成物を塗布乾燥後も皮膜中に残存できることからある程度の分子量を有することが好ましい。
[重合性基を有する含フッ素化合物]
本発明に用いられるフッ素を含有する分子はさらに、架橋反応に関与し得る官能基を含有する含フッ素化合物であることが好ましい。このような官能基としては、活性水素原子を有する基(例えば、水酸基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(例えば、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等)、酸無水物、ラジカル種による付加又は重合が可能な不飽和二重結合を有する基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、求核剤によって置換され得る基(例えば、活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)などが挙げられる。これらのうち、好ましくは水酸基、カチオン重合性基、ラジカル重合性基又は加水分解性シリル基であるが、より好ましくはカチオン重合性基又はラジカル重合性基である。以下ではこれらを総称して重合性基と呼称することがある。
カチオン重合性基とは、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下、活性エネルギー線を照射したときに、重合反応及び/又は架橋反応を生ずる反応性基であり、カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニル基(ビニルエーテル類やスチレン誘導体など)などが挙げられ、これらのうち環状エーテルが好ましく、重合反応性が高いことから、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。
ラジカル重合性基は、紫外線、熱又は電子線等のエネルギー付与や活性ラジカルの付加によって固体化する、重合性の二重結合を有する反応性基である。ラジカル重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基(ビニルエステル類やビニルエーテル、スチレン誘導体など)、内部二重結合性基(マレイン酸など)が挙げられ、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、重合反応性が高いことから、アクリロイル基、メタクリロイル基が更に好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
以上のような観点から、本発明の含フッ素化合物としては、ペルフルオロアルキル基と重合性基を共に備えた化合物が好ましい。このような化合物としては、3−ペルフルオロ
ブチル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン、3−ペルフルオロデシル−1,2−エポキシプロパン、3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−1,2−エポキシプロパン、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−1,2−エポキシプロパン、3−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)−1,2−エポキシプロパン、3−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,5H−オクタフルオロペンチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチロキシ)−1,2−エポキシプロパン、3−(1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニロキシ)−1,2−エポキシプロパン等のエポキシ類、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアクリレート、2−(ペルフルオロブチル)エチルアクリレート、3−(ペルフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(ペルフルオロプロピル)エチルアクリレート、3−(ペルフルオロオクチル)エチルアクリレート、3−ペルフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(ペルフルオロデシル)エチルアクリレート、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エチルアクリレート、3−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)エチルアクリレート、3−(ペルフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)エチルアクリレート、3−(ペルフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピルアクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチルアクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチルアクリレート及びこれらのアクリレート類に対応するメタクリレート類等を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
[含フッ素ポリマー]
また強度、製膜性の観点から、本発明においては、含フッ素化合物としてポリマーを用いることが好ましい。本発明に用いるポリマーとして好ましい形態は、主鎖及び側鎖にペルフルオロアルキル基を備えた高分子である。
なお、ここで主鎖にペルフルオロアルキル基を有する構造とは、高分子の主鎖を形成する1つの炭素原子に結合している全ての水素原子がフッ素に置換された構造であり、側鎖にペルフルオロアルキル基を有する構造とは、高分子の主鎖を形成する炭素原子に、直接又は適当な連結基を介してペルフルオロアルキル基が結合した構造である。
(主鎖及び側鎖にペルフルオロアルキル基を備えた重合単位)
フッ素は、表面偏析ばかりでなく撥インク特性に必須の成分である。撥液性を高めるためには、側鎖だけでなく主鎖にもペルフルオロアルキル基を含有することが重要であり、強度と撥液性を両立するためには、効率的に(すなわち、付随するフッ素を含有しない部分をなるべく含まずに)ペルフルオロアルキル基を導入することが重要である。このような観点から、下記一般式(1)で表されるような重合単位が好適に用いることができる。
一般式(1):
Figure 2007076049
式中、Rf 11はフッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基又は−ORf 12基を表し、Rf 12基は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表わす。これらのうち、Rf 11として好ましくは、フッ素原子、−CF3、−CF2CF3、−OCF2CF2CF3
あり、入手性、取り扱い性、重合性の観点から、−CF3及び−OCF2CF2CF3が特に好ましい。
一般式(1)で表される重合単位は、単一種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
一般式(1)で表される重合単位の具体例を以下に例示する。
Figure 2007076049
(側鎖にペルフルオロアルキル基を備えた重合単位)
また、側鎖にペルフルオロアルキル基を有するものも、好ましく用いることができる。この場合の重合単位の好ましい形態として、下記一般式(2)で表される構造を挙げることができる。
一般式(2):
Figure 2007076049
式中、Rf 21は炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表し、好ましくは炭素数4〜20の直鎖ペルフルオロアルキル基であり、特に好ましくは炭素数6〜20の直鎖ペルフルオロアルキル基である。
21は水素原子またはメチル基を表す。
21は炭素数1〜20の連結基を表す。L21の好ましい例として、下記一般式(2a)及び一般式(2b)で表される構造が挙げられる。
一般式(2a):
Figure 2007076049
32は炭素数1〜20の連結基を表し、好ましくは1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、直鎖構造でも分岐構造を含んでもよく、環構造を含んでいてもよく、酸素、窒素、硫黄から選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
一般式(2b):
Figure 2007076049
33はL32と同様の内容を表す。mは0又は1である。
一般式(2)で表される重合単位は単一種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
一般式(2)で表される重合単位の具体例を以下に例示する。
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
本発明に用いられる含フッ素ポリマーにおけるフッ素含率は、20〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜65質量%の場合であり、特に好ましくは35〜60質量%の場合である。フッ素含率を上述の範囲とすることにより十分な撥水性と架橋性を両立させることができる。
(重合性基を有する重合単位)
本発明に用いられる含フッ素ポリマーは、さらに重合性基を備えた構造であることが好ましい。重合性基を含有する重合単位の好ましい形態としては、下記一般式(3)で表される重合単位が挙げられる。
一般式(3):
Figure 2007076049
式中、L31で表される連結基は前記L21と同じものを表し、L31の好ましい形態は、前記L21の好ましい形態と同様である。X31は重合性基を含む有機基を表し、1価であっても2価以上であってもよい。重合性基としては、前記[重合性基を有する含フッ素化合物]に記載の重合性基が挙げられる。中でもカチオン重合性基及びラジカル重合性基(以下、ラジカル反応性基とも言う。)を挙げることができる。
カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタニル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニル基(ビニルエーテル類やスチレン誘導体など)などが挙げられ、これらのうち環状エーテルが好ましく、重合反応性が高いことから、エポキシ基、オキセタニル基が特に好ましい。
ラジカル重合性基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基(ビニルエステル類やビニルエーテル、スチレン誘導体など)、内部二重結合性基(マレイン酸など)が挙げられ、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が好ましく、重合反応性が高いことから、アクリロイル基、メタクリロイル基が更に好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
31は水素原子またはメチル基を表す。
nは0又は1である。
なお、ラジカル反応性基を含フッ素ポリマーに導入するには、ラジカル反応性基を含有する含フッ素モノマーとポリシロキサン構造含有モノマーとを共重合する方法;ラジカル反応性基を有しない含フッ素ビニルモノマーを共重合させた後、得られた含フッ素ポリマーに、高分子反応によりラジカル反応性基を導入する方法;等の方法によって行うことができるが、後者の方法を用いることが好ましい。
高分子反応による前記ラジカル反応性基の導入方法としては、下記(1)〜(6)の手法が好ましい。なお、下記(1)〜(6)の手法においては、ラジカル反応性基として(メタ)アクリロイル基を用いた場合について例示するが、下記(1)〜(6)の手法は(メタ)アクリロイル基に限定されない。
(1)水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル
酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、
(2)前記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(3)前記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(4)エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、
(5)カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、
(6)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法。
これらの中でも、特に水酸基を含有するポリマーに対して(1)、(3)又は(6)の手法によって(メタ)アクリロイル基(ラジカル反応性基)を導入することが好ましい。
一般式(3)で示される、重合性基を含有する重合単位の具体例を下記に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
Figure 2007076049
十分に皮膜の結合性を高めるためには、架橋反応に寄与する重合性基を含有する重合単位の組成比を高める必要がある。ペルフルオロアルキル基を有する重合単位(以下、フッ素基を含有する重合単位と言うことがある。)の種類によっても異なるが、一般に重合性基を含有する重合単位は含フッ素ポリマー中の10〜70モル%を占めることが好ましく、10〜60モル%を占めることがより好ましく、20〜50モル%を占めることが特に好ましい。
(その他の重合単位)
前記含フッ素ポリマーは、これらの重合単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、防塵・防汚性等種々の観点から適宜、その他の重合単位(他のセグメントを構成する重合単位や、セグメントの連結部位となる重合単位)を含んでもよい。
その他の重合単位を構成するモノマーは特に限定はなく前記ペルフルオロアルキル基を含有する重合単位及び、前記重合性基を含有する重合単位を構成するモノマーと共重合し
うるものであれば、如何なるものも使用でき、官能基を含まなくても含んでいてもよいが、撥水性を妨げない点からは、一般に親水性の官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基など)を有さないものが好ましい。ただしこれら親水性の官能基を、硬化剤と反応させるような形態で用いる場合には、むしろ、このような親水性の官能基を有する重合単位を好ましく用いることができる。
上記その他の重合単位を構成するモノマーの例のうち、官能基のないものとして、オレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ポリジメチルシロキサンをエステル部位に有するアクリレートなど)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アリル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N‐ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができ、オレフィン類、アクリル酸エステル類(エステル基が炭素数4以上のアクリレート、ポリジメチルシロキサンをエステル部位に有するアクリレートなど)、メタクリル酸エステル類(エステル基が炭素数4以上のメタクリレート、ポリジメチルシロキサンをエステル部位に有するメタクリレート等)、スチレン誘導体、ビニルエーテル類が特に好ましい。
官能基を含むものとして、水酸基含有ビニルモノマー(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、N−ヒドロキシアクリルアミド、p−ヒドロキシメチルスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、シランカップリング基含有ビニルモノマー(3−トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレート等)、アミノ基含有ビニルモノマー(3−ジメチルアミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルアクリルアミド等)、カルボキシル基含有ビニルモノマー(アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)等を挙げることができる。
上記その他の重合単位を構成するモノマーは、その目的に応じて、複数を組み合わせてもよい。またその他の重合単位を用いる場合には、その他の重合単位の合計として、含フッ素ポリマー中の65モル%以下の範囲で導入されていることが好ましく、40モル%以下の範囲であることがより好ましく、30モル%以下の範囲であることが特に好ましい。
上記の含フッ素ポリマーの数平均分子量は、1500〜500,000であるのが好ましく、重合度は10〜1,000であるのが好ましい。より好ましくは、平均分子量は、1500〜200,000であり、重合度は10〜500である。とりわけ、平均分子量は、1500〜100,000であることが好ましく、重合度は10〜200であることが好ましい。含フッ素ポリマーがその他の重合単位を含む場合も同じである。
本発明の含フッ素ポリマーの具体例を下記に示す。なお、各重合単位の添付数字はモル分率を表す。
Figure 2007076049
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本発明に用いられる含フッ素ポリマーの合成は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により行うことができる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行うことができる。
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いられる溶媒は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等の種々の有機溶媒の単独、又は2種以上の混合物でもよいし、水との混合溶媒としてもよい。
重合温度は、生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり、0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行うことが好ましい。
反応圧力は適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kg/cm2、特に、1〜30kg/cm2程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られたポリマーは再沈殿などの精製を行ってもよい。
[フッ素を含有しない分子]
本発明に用いられるフッ素を含有しない分子としては、硬化剤が好ましい。
[硬化剤]
硬化剤は撥インク処理部の強度を担うものであるから、硬化反応後に十分な強度を発現することが必要である。こうした観点から二官能以上の化合物であることが好ましく、また、分子中に占める架橋基の割合が高い(硬化剤の質量に対して含有される架橋基のモル数が高い)ことが好ましい。
硬化剤が有する好ましい架橋性基としては、前記含フッ素化合物、特に含フッ素ポリマーの含有する架橋反応に関与し得る基に準じ(すなわち、ラジカル重合性基、カチオン重合性基を含有することが好ましい)、とりわけ併用する含フッ素ポリマーと反応し得る官能基を含有することが特に好ましい。
本発明において好ましく用いることのできるラジカル重合性の硬化剤の例としては、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート等}、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等)、ビニルスルホン(例えばジビニルスルホン)、並びにアクリルアミド及びメタクリルアミド{例えばメチレンビス(メタ)アクリルアミド}が含まれる。
本発明において好ましく用いることのできるカチオン重合性の硬化剤の例としては、例えば前記含フッ素化合物のエチレン性不飽和基を、開環重合性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)に置き換えた化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、また市販のものでは、「デナコールEX314,同411,同421,同521,同611,同612」等{以上ナガセ化成工業(株)製}、「セロキサイドGT301,同401」等{以上ダイセル工業(株)製}等を挙げることができる。
組成物中に占める硬化剤の割合は、硬化剤の種類や併用する含フッ素化合物の形態によっても異なるが、40質量%〜98質量%の範囲であることが好ましく、60質量%〜95質量%の範囲であることがより好ましく、70質量%〜90質量%の範囲であることが特に好ましい。この範囲で調整された組成物を硬化して成る撥液材料は高い耐擦傷性を示すが、これは前述したような含フッ素化合物が自発的に表面に偏析するため、皮膜内部での硬化剤濃度がより高まり硬化剤同士が強固なマトリクスを形成するためと推測される。
[フッ素を含有する組成物]
本発明のインクジェット記録ヘッドに用いられるフッ素を含有する組成物は、好ましくは前記フッ素を含有する分子と前記フッ素を含有しない分子の両方を含む。該組成物はより好ましくは、重合性基を有する含フッ素化合物、特に含フッ素ポリマーと、上記硬化剤とを含有する重合性樹脂組成物であって、さらに好ましくは、フッ素基と重合性基とを含有する前記含フッ素ポリマー、硬化剤、及び該ポリマーを溶解又は乳化、分散させる溶媒を含有する組成物であり、更に必要に応じて、適宜選択したその他の成分を含有してなる。
(溶媒)
重合性樹脂組成物に含まれる溶媒としては、含フッ素ポリマーと硬化剤とが沈殿を生じ
ることなく、均一に溶解又は分散されるものであれば特に制限はなく、2種類以上の溶媒を併用することもできる。
本発明における溶媒としては、安全性の高いものを用いることが好ましい。安全性が高い溶媒とは、管理濃度(作業環境評価基準で示される指標)が高い溶媒であり、管理濃度100ppm以上のものが好ましく、200ppm以上のものが更に好ましい。更に、適度な時間で重合性樹脂組成物の皮膜を形成させるためには、室温から120℃の加熱により、揮発するものが好ましい。好ましい例としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
(その他の成分)
本発明に用いられる重合性樹脂組成物は、通常、液の形態をとり、前記含フッ素化合物、好ましくは含フッ素ポリマーに加えて、必要に応じて、各種添加剤及び重合開始剤を、適当な溶媒に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
以下、用いられるその他の成分について説明する。
1)重合開始剤
カチオン重合性反応性基からなる硬化系では、酸又は光酸発生化合物が硬化促進剤として用いられる。すなわち、光カチオン重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、又はマイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の化合物及びそれらの混合物等が挙げられる。
本発明において、特に好適に用いられる酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等のオニウム塩が挙げられ、中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、例えば、特開平9−268205号公報の段落番号[0035]に記載のアミル化されたスルホニウム塩、特開2000−71366号公報の段落番号[0010]〜[0011]に記載のジアリールヨードニウム塩又はトリアリールスルホニウム塩、特開2001−288205号公報の段落番号[0017]に記載のチオ安息香酸S−フェニルエステルのスルホニウム塩、特開2001−133696号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載のオニウム塩、特開2002−29162号公報の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
酸発生剤の他の例としては、特開2002−29162号公報の段落番号〔0059〕〜〔0062〕に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、光分解してスルホン酸を発生する化合物(イミノスルホネート等)等の化合物が挙げられる。
ラジカル重合性反応基からなる硬化系においては、重合開始剤は、熱の作用によりラジカルを発生するもの、又は光の作用によりラジカルを発生するものであり、いずれの形態も可能である。
光の作用によりラジカルを発生するもの、すなわち光重合開始剤としては、光により発生したラジカルや他の活性種が、前記含フッ素ポリマー中の重合性二重結合と反応するものであれば特に制限はないが、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキシド誘導体、金属錯体、p−ジアルキルアミノ安息香酸、アゾ化合物、ペルオキシド化合物等が一般的に知られ、アセトフェノン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、チオキサントン誘導体、アシルフォスフィンオキシド誘導体が好ましく、アセトフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、ベンジルジアルキルケタール誘導体、アシルフォスフィンオキシド誘導体が特に好ましい。
具体的には、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、p,p’−ジクロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,2−ジメチルプロピオイルジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−2−エチルヘキサノイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,3,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,3,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメトキシベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルナフチルホスホネート、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フィニル]チタニウム、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ベンゾインペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等が挙げられる。
さらに光重合開始剤の例としては、加藤清視著「紫外線硬化システム」{(株)総合技術センター発行:平成元年}の第65〜148頁に記載されている光重合開始剤などを挙げることができる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、増感剤と併用してもよい。
増感剤は、単独では光照射によって活性化しないが、光重合開始剤と一緒に使用した場合に光重合開始剤単独で用いた場合よりも効果があるもので、一般にアミン類が用いられる。アミン類の添加により硬化速度が速くなるのは、第一に水素引き抜き作用により光重合開始剤に水素を供給するためであり、第二に生成ラジカルが大気中の酸素分子と結合して反応性が悪くなるのに対して、アミンが組成中に溶け込んでいる酸素を捕獲する作用があるためである。
増感剤としては、アミン化合物(脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、トリエタノールアミントリアクリレートなど)、尿素化合物(アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素など)、イオウ化合物(ナトリウムジエ
チルジチオホスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩など)、ニトリル系化合物(N,N−ジエチル−p−アミノベンゾニトリルなど)、リン化合物(トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスファイドなど)、窒素化合物(ミヒラーケトン、N−ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ−1,3−オキサジン化合物、ホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドとジアミンの縮合物など)、塩素化合物(四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなど)等が挙げられる。
増感剤は必ず用いる必要がある成分ではないが、用いる場合の使用量は、通常、全固形分中10質量%以下であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましい。光開始剤と増感剤の選定や組み合わせ、及び配合比に関しては使用する含フッ素ポリマー、使用装置によって適宜選定すればよい。
重合開始剤の添加量としては、炭素−炭素二重結合の重合を開始できる量であればよいが、一般的には重合性樹脂組成物全固形分に対して0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%であり、特に好ましくは2〜5質量%の場合である。
2)添加剤
基材との界面密着性等の観点から、反応性基(エポキシ基、オキセタン基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルエーテル基、イソシアネート基など)を2つ以上有する化合物、多官能(メタ)アクリレート化合物、反応性シランカップリング剤、アミノプラスト、多塩基酸もしくはその無水物等の硬化剤、又はシリカ等の無機微粒子、導電性微粒子{ITO、ATO、Sb23、SbO2、In23、SnO2、導電性ZnO、AZO(Alをドープした酸化亜鉛)、五酸化アンチモン亜鉛等の導電性金属酸化物微粒子、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム等の導電性窒化物、金、銀、銅等の金属粒子}などを添加することもできる。これらを添加する場合には、重合性樹脂組成物中の全固形分に対して30質量%以下の範囲であることが好ましく、20質量%以下の範囲であることがより好ましく、10質量%以下の範囲であることが特に好ましい。
添加剤として、カチオン重合性基以外の反応性基を含有する化合物を用いる場合や前記含フッ素ポリマーにカチオン重合性以外の反応性基を含む場合には、カチオン重合開始剤だけではなく、ラジカル重合開始剤や架橋反応の促進剤を併用することが好ましい。
また、防汚性、耐水性等の特性をさらに強化させる目的で、公知のシリコーン系又はフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には重合性樹脂組成物全固形分の20質量%以下の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10質量%以下の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは5質量%以下の場合である。
〔撥インク処理部の形成〕
本発明のインクジェット記録ヘッドは、記録用の液体を吐出する吐出口を有するインクジェット記録ヘッドであって、少なくとも吐出口周辺部に撥インク処理されて形成された記録ヘッドの撥インク処理部を有し、該撥インク処理部がフッ素を含有する組成物の硬化物、好ましくは前記重合性樹脂組成物の架橋体で形成されており、この硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高いことを特徴とする。該含フッ素ポリマーはフッ素基を含有する重合単位と重合性基、特にラジカル重合性基またはカチオン重合性基を含有する重合単位とを含むポリマーであることことがさらに好ましい。
すなわち、本発明におけるインクジェット記録ヘッドの撥インク処理部は、好ましくは上記の重合性樹脂組成物を架橋させてなる架橋体を含んでなるものである。ここで、重合
性樹脂組成物を架橋させてなる架橋体とは、重合性樹脂組成物を塗工した後、乾燥させて溶媒を蒸発させて形成した樹脂膜に、活性エネルギー線や熱等を加えて、重合性樹脂組成物中の重合性ポリマーを重合させることにより架橋構造を形成させてなる架橋体を意味する。
上記撥インク処理部は、後記する基体に直接、又は他の層を介して上記重合性樹脂組成物の塗布液を塗布して構築することが好ましい。該塗布液は、上記フッ素を含有する組成物、好ましくは前記重合性樹脂組成物を含むマトリックスバインダー用液、硬化剤、必要に応じて用いる添加剤を、塗布用分散媒に、それぞれ所定の濃度に混合・希釈して調製される。
上記の重合性樹脂組成物を用いて樹脂膜を形成するには、ノズルプレート表面にディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法等の公知の薄膜形成方法で塗布し、乾燥、光及び/又は熱照射することにより作製することができる。好ましくは、光照射による硬化が、迅速硬化から有利である。更には、光硬化処理の後半で加熱処理することも好ましい。
活性エネルギー線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを使用することができる。これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。
紫外線や可視光線を照射する光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ケミカルランプなどが使用できる。
通常、カチオン重合反応は水分により阻害されるため、反応雰囲気の湿度を下げた条件で硬化反応を行うことが好ましい。また硬化過程の後半で加熱することが、十分に硬化反応を進行させる面から好ましい。この場合には、30〜150℃程度の温度範囲が好ましく、より好ましくは30〜120℃であり、更に好ましくは50〜120℃である。加熱時間は30秒〜100時間の範囲が好ましく、より好ましくは1分〜10時間であり、特に好ましくは1分〜3時間である。
上記塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲で、できるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には、絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜25μmであるフィルターを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は15kgf/cm2以下、より好ましくは10kgf/cm2以下、更には2kgf/cm2以下で濾過することが好ましい。
濾過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。また濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
本発明の發インク処理部(樹脂膜)の厚みは、特に限定されないが、0.01〜100μmが好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましく、0.5〜5μmが特に好ましい。
[インクジェット記録ヘッドの撥インク処理部]
本発明のインクジェット記録ヘッドは、従来公知の微小液滴を噴射する液体吐出ヘッドであれば何れでもよい。例えば、Pond Stephen F.,“Inkjet T
echnology and Product Development Strategies”,(TorreyPines,2000年刊)、甘利武司監修「インクジェットプリンター技術と材料」{(株)シーエムシー、1998年刊}、「インクジェット記録とプリンター記録方式とプリントヘッドの開発」{(株)シーエムシー、2000年刊}等に記載の、各種記録方式のヘッドが挙げられる。
具体的には、帯電制御型、加圧振動型等のコンティニアス方式、電気−機械変換方式(ピエゾ型等)、電気−熱変換方式(バブルジェット型)、静電吸引方式、超音波方式等のオンデマンド方式が挙げられる。
上記撥インク処理部が形成される周辺部は、上記のような各種記録ヘッドの、少なくともインク滴吐出口周縁とすることが好ましい。例えば、インクを吐出する吐出口とこの吐出口に連通するインク路とを有するインクジェット記録ヘッドと、該インク路にインクを供給するためのインク供給部材とを有する記録ヘッドユニットと、該インク供給部材によって該インク路に供給されるインクを貯留するためのインクタンク部とを備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、例えば、吐出部(ノズル)形成部材のノズル孔先端の周縁部を撥インク処理部とするのが好ましい。然し、記録方式やヘッドの構造等により、これに限定されるものではない。
[撥インク処理部の形成方法]
撥インク処理の実施は、ノズルプレートにノズルを穿孔する前及び後の何れの時点で行ってもよい。ノズルプレートに穿孔されるノズル径は、インク滴吐出口の大きさが、直径15〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜60μmである。これらのノズルの穿孔方法としては、例えばプレス加工、電鋳加工、エキシマレーザー加工、フォトファブリケーション方法等が挙げられる。
またノズル穿孔後に撥インク処理を行う場合には、ノズル孔内部をレジストで塞ぎ、処理した後レジストを取り除く方法、ノズルに気体流を流しながら処理する方法等が好ましく行われる。さらに撥インク処理用の重合性樹脂組成物がインク滴吐出口からノズル孔内部へ入り込む位置及び入り込む量を精密に制御する方法として、マスキング方法も好ましい。さらにまた撥インク処理後にノズルプレートをヘッド部に接着する場合は、該プレートの裏面を撥インク処理しないことが好ましい。
本発明に供されるノズルプレートは、従来公知の基体が用いられる。例えば、金属、セラミックス、シリコーン、ガラス、プラスチック等で形成される。例えば、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、金等の金属単体、ニッケル−リン合金、スズ−銅−リン合金(リン青銅)、銅−亜鉛合金、ステンレス鋼40等の合金、及び熱硬化、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性のある有機樹脂材料{例えば、熱硬化性ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ABS樹脂(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリスルフィド等}各種の感光性樹脂で形成された材料等が挙げられる。
またこれらの材料を積層に貼り合わせて用いることもできる。例えば、有機樹脂材料と、金属やセラミックス等の高剛性の無機材料とを接合することで、ノズルプレート全体の剛性を高めることができる。すなわち、有機樹脂材料のヤング率は100〜300kg/mm2程度であり、金属の8000〜15000kg/mm2、セラミックスの10000〜20000kg/mm2に比較すると遥かに小さいため、有機樹脂材料だけではインクジェットの駆動圧力に対して追随して変形して、圧力損失を生じてインク滴速度Vjが低下するすることがあるが、樹脂材料の下に高剛性材料を薄膜接着剤(接着層)で張り合わせることで全体剛性を向上させることができる。
プレートの厚みは、加工強度、加工に要するエネルギー負荷、ヘッドとしての軽量性等から30〜50μm程度が好ましい。
本発明の撥インク処理部の樹脂膜が形成される基体の面は、凹凸を形成していることが好ましい。このことにより、撥インク処理部の樹脂膜とのアンカー効果で該樹脂膜との密着性が保持され、該樹脂膜の強度が向上する。
撥インク処理部の樹脂膜が形成される基体の面の表面形状は、JIS B−0601−1994に基づく表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以下、十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.1以上、最大高さ(Ry)0.5μm以下、且つ表面凹凸平均間隔(Sm)が0.005〜1μmとなる範囲であることが好ましい。より好ましくは、Raが0.01〜0.3μm以下、十点平均粗さ(Rz)との比(Ra/Rz)が0.15以上、最大高さ(Ry)μm以下、且つ表面凹凸平均間隔(Sm)が0.001〜0.5μmである。
この範囲において、撥インク処理部の樹脂膜の均一な塗布性と密着性を良好に保持することができるので好ましい。
さらに、基体に直接撥インク処理部の樹脂膜を形成する代わりに、後記する中間層を介する場合にも、撥インク処理部の樹脂膜が形成される中間層の表面に凹凸形状を付与した後に、本発明における重合性樹脂組成物を塗設することが好ましい。好ましい表面凹凸状態は、上記したと同様の範囲である。
[中間層]
撥インク処理部には、上記のノズルプレート(基体)と撥インク処理により形成された樹脂膜との間に、少なくとも1層の中間層を設けてもよい。該中間層は、密着性、ハードコート性、プライマー性、導電性等の機能を持たせることが好ましい。
中間層としては、基体及び樹脂膜に対して密着性を持つものであることが好ましく、無機層、有機層、無機−有機ハイブリッド層の何れでもよく、密着性の観点から、基体と撥インク処理部の組み合わせで適宜に選択される。中間層は、ハードコート性(鉛筆硬度が2以上、好ましくは3以上となる層)を併せ持つことが好ましい。更に、導電性が付与されることも好ましい。
中間層が有機層又は無機−有機ハイブリッド層からなる場合、中間層は、光及び/又は熱による硬化性化合物の架橋反応、又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート等の多官能モノマーや多官能オリゴマー、又は加水分解性官能基含有の有機金属化合物などを含む塗布組成物を、透明支持体上に塗布し、架橋反応又は重合反応させることにより形成することができる。
硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、加水分解性官能基含有の有機金属化合物としては、有機アルコキシシリル化合物が好ましい。更に前記の撥インク処理部の重合性樹脂組成物の微粒子を適宜併用することで、ハードコート性が向上する。更に、前記の導電性微粒子を含有することで導電性が付与できる。
中間層が、本発明の撥インク処理部の直下の層の場合には、該層の表面は、凹凸を形成していることが好ましい。このことにより、撥インク処理部の樹脂膜とのアンカー効果で該樹脂膜との密着性が保持され、該樹脂膜の強度が向上する。
中間層の好ましい表面形状は、前記した撥インク処理部の樹脂膜が形成される基体の面の表面形状の値と同様の範囲である。
[凹凸形状付与の方法]
上記のような微細な凹凸形状を、撥インク処理部の樹脂膜が形成される基体又は中間層の面に形成する方法は、従来公知の基体表面の形状を改質する方法、中間層自身が形成されたときに該中間層の表面状態が微細な凹凸状となるようにする方法、又はこれらを組み合わせる方法を用いることができる。
基体表面の形状改質方法としては、例えばドライエッチング方法が挙げられるが、基体が有機層の場合には、更にエンボス版又は貼型用シートから凹凸をフィルム表面に転写するエンボス加工方法等が挙げられる。
ドライエッチング方法としては、例えば、水町浩、鳥羽山満監修「表面処理技術ハンドブック−接着・塗装から電子材料まで−」第2編第3節{(株)エヌ・ティー・エス、2000年刊行}、田附重夫等編「高分子のビーム加工−光・プラズマ・放射線の利用−」{(株)シーエムシー、1986年刊行}、上條栄治監修「プラズマ・イオンビーム応用とナノテクノロジー」第1章〜第4章{(株)シーエムシー、2002年刊行}等に記載のグロー放電エッチング、フレームプラズマエッチング、コロナ放電エッチング、電子線エネルギー照射エッチング等が挙げられる。
またエンボス加工方法としては、平板版プレス、連続ベルト版プレス、ロール版プレスのいずれも採用できる。この内、帯状物の連続加工として連続ベルト版プレスとロール版プレスが、さらにプレス圧やプレス温度の自由度の観点でロール版プレスが最も好ましい。
表面凹凸となる中間層としては、例えば、加水分解性基含有の有機金属化合物の加水分解から得られるゾル−ゲル反応物を塗布し、加熱又はプラズマ照射して得られる金属酸化物膜、光及び/又は熱硬化性化合物と微粒子を含む組成物を塗設・硬化して得られる硬化膜等が挙げられる。
[撥インク処理部の特性]
(表面の形状)
撥インク処理部の表面、すなわちノズル孔の吐出口がある面の形状は、JIS B−0601−1994に基づいて、表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が1μm以下、最大高さ(Ry)が3μm以下、且つ表面凹凸平均間隔(Sm)が15μm以下となる範囲であることが好ましい。更には、(Ra)が0.01〜0.5μm、最大高さ(Ry)2μm以下、且つ表面凹凸平均間隔(Sm)が0.02〜10μm以下となる範囲であることが好ましい。
このような表面状態とすることで、ゴムや布等からなるワイパーを用いてノズル開口面を拭くワイピングに対して、撥インク処理部の撥インク性が充分に保持される。
(帯電防止性)
撥インク処理部の表面に帯電圧を与えてその減衰を測定したとき、帯電量が初期の1/2となるのに要する時間(以下、帯電圧半減期と記す)が60秒以下であることが好ましい。特に帯電圧半減期が30秒以下である場合は、帯電防止効果が高く望ましい。帯電圧半減期が60秒以内であれば、該撥インク処理部を設けた後の帯電防止性の効果に優れており、またワイピング操作等での塵埃の付着防止効果も減少することがないので好ましい。
次ぎに、帯電圧半減期を測定する具体的な方法を以下に記す。
先ず物品の表面の帯電圧を静電位計でモニターしながら、直流コロナ放電によって表面を帯電させる。放電と共に帯電圧が上昇しある電位で飽和するのでこの電位を飽和電圧とし、放電を止め、その瞬間から帯電圧が飽和電圧の1/2となるまでの時間を測定する。
<インクジェット記録装置>
前記の、本発明に用いられる重合性樹脂組成物は、微小液滴を噴射するインクジェット記録ヘッドの撥インク処理部の形成に供することができる。このような撥インク処理部を有するインクジェット記録ヘッドは、インクジェット記録方式のいずれの記録ヘッドにも用いることができる。具体的には、前記した記録ヘッドの項に記載の刊行物等に記載の内容が挙げられる。
更には、本発明に用いられる重合性樹脂組成物は、インクジェット記録装置以外の小さいノズルを通して微小液滴を射出する適宜の装置であって、ノズルプレート上に撥液特性を必要とする適宜の機器に適用し得る。これらの液滴としては塗料(ワニス)、溶媒、医薬流体等が挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において「%」は、特に断りがない限り、「質量%」を表す。
〔重合性樹脂組成物〕
[含フッ素ポリマーの合成]
合成例1:含フッ素ポリマー(P−13)の合成
1)重合単位(F−29)に対応するモノマー{以下(Fm−29)ともいう}の合成
2−ペルフルオロヘキシルエタノール170g及び硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム22gを混合したところに、水酸化ナトリウム75gを水112mLに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を加え、室温で30分間撹拌した。さらにクロロエチルビニルエーテル200gを加え、60℃で8時間加熱撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出して硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下、溶媒を留去した。更に減圧蒸留により精製して標記含フッ素ビニルエーテル(Fm−29)195gを得た(沸点76〜79℃、500Pa)。
2)重合単位(C−2)に対応するモノマー{以下(Cm−2)ともいう}の合成
ヒドロキシエチルビニルエーテル500g及び硫酸水素テトラ−n−ブチルアンモニウム50gを混合したところに、水酸化ナトリウム340gを水380mLに溶解した水酸化ナトリウム水溶液を30分間で加え、さらに1時間室温で撹拌した。次ぎにクロロメチルオキシラン78.8gを加え、60℃で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出して硫酸マグネシウムにて乾燥後、減圧下溶媒を留去した。更に減圧蒸留により精製して標記ビニルエーテル(Cm−2)530gを得た(沸点65℃、532Pa)。
3)含フッ素ポリマー(P−13)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル50g、上記モノマー(Cm−2)10.8g(0.075モル)、上記モノマー(Fm−29)21.7g(0.05モル)及び過酸化ジラウロイル0.25gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン{重合単位(F−1)に対応するモノマー:以下(Fm−1)ともいう}18.75g(0.125モル)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は8.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が4.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去して沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解して、ヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後、含フッ素ポリマー(P−13)41gを得た。得られたポリマーの数平均分子量は3.3万であった。
合成例2:含フッ素ポリマー(P−84)の合成
内容量100mLのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル40mL、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)11.8g(0.134モル)、合成例1において合成したモノマー(Fm−29)14.49g(0.0334モル)及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(Fm−1)25g(0.167モル)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は8.9kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が4.9kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去して沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー43gを得た。
次に、このポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解し、氷冷下、アクリル酸クロリド9.2g(0.102モル)を滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることにより含フッ素ポリマー(P−84)を17g得た。得られたポリマーの数平均分子量は2.1万であった。
本発明における他のポリマーについても上記と同様の手法で合成することができる。
[重合性樹脂組成物の調製]
下記表1に示す各成分を混合し、メチルエチルケトンに溶解した後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、重合性樹脂組成物を調製した。
Figure 2007076049
なお上表1において、各略号は以下のものを示す。
P−3〜P−95:前記化24〜化37中における含フッ素ポリマーを表す。
UVI:下記化38に示す化合物。
Figure 2007076049
IRG907:「イルガキュア907」(商品名)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製}:光重合開始剤。
CEL2021:「セロキサイド2021」(商品名)ダイセル化学工業(株)製:二官能脂環式エポキシモノマー。
EX252:「デナコールEX−252」(商品名)ナガセケムテック(株)製:ビス−A骨格二官能エポキシモノマー。
EX314:「デナコールEX−314」(商品名)ナガセケムテック(株)製:三官能エポキシモノマー。
OXT−221:「アロンオキセタンOXT−221」(商品名)東亞合成(株)製:
二官能オキセタンモノマー。
Ep154:「エピコート154」(商品名)ジャパンエポキシレジン(株)製:フェノールノボラック型エポキシ樹脂。
DPHA:“DPHA”(商品名)日本化薬(株)製:ペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物。
AU−2010:「ハイコープAU−2010」(商品名)(株)トクシキ製:6官能ウレタンアクリレート。
M−8030:「アロニックスM−8030」(商品名)東亞合成(株)製:ポリエステルアクリレート。
FHEpP:3−ペルフルオロヘキシル−1,2−エポキシプロパン。
FOEpP:3−ペルフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン。
TF2028:「メガファックTF−2028−IM」(商品名)大日本インキ化学工業(株)製:含フッ素アクリレートモノマー。
FOMA:2−(ペルフルオロオクチル)エチルメタクリレート。
FOA:2−(ペルフルオロオクチル)エチルアクリレート。
D110N:「タケネートD110N」(商品名)武田薬品工業(株)製:多官能イソシアネート化合物。
a−1:下記化39に示す化合物。
Figure 2007076049
実施例及び比較例
図1に示すように、得られた重合性樹脂組成物を、ノズル孔が配置されたノズルプレート表面上に塗工して、下記のように硬化処理を行い、撥インク処理されて撥インク部の形成されたインクジェット記録ヘッドを得た。
更に詳しくは、得られたヘッドにおけるノズルプレート1は、ノズル孔2の周辺部(周縁)に撥水性樹脂膜が形成されて、撥インク部3が形成されている。撥インク部3は、本発明品においては、予めノズルプレート1のノズル孔2部分をプレートの裏面側からポジレジストで保護し、ノズルプレート1の表面に、前記重合性樹脂組成物を、乾燥後の膜厚が1μmになるよう塗布し、90℃で15分予乾燥させた後、窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%以下)で、「メタルハライドランプ」により紫外線を500mJ/cm2照射し、120℃にて3時間加熱処理を行って樹脂膜を形成した後、レジストを除去して得た。本実施例は、予めノズル孔を作成した後に撥水性樹脂膜を設置したが、ノズル孔のないノズルプレートに撥水性樹脂膜を設置した後に、ノズル孔を設けてもよい。
製作したノズルプレートを用いた本発明品のインクジェット記録ヘッドは、全ノズルからインク滴が安定して吐出することを確認した。更に、以下のような耐久試験を行った。その結果を表2に示す。
(1)密着性
密着性の評価として、ノズルプレートの表面をウレタンゴムで200回ドライワイピングし、キズ、ハガレの観察を実施した。キズ、ハガレがないものをA、少しキズがあるがハガレがないものをB、ハガレがあるものをCとした。
(2)撥液性
純水に対する接触角を評価した。
(3)耐傷性
ノズル孔が未配置のノズルプレート上に、上記と同様の手法で重合性樹脂組成物を塗工
・硬化させ、これを耐傷性試験用試料とした。耐傷性の評価は、ダイヤモンド針による引っかき試験で行うこととし、測定装置としては動・静摩擦試験機“TL201”{(株)トリニティラボ製}を用い、針はダイヤモンドR0.25mmを用い、2mm/秒の速度で10mm引っ掻く試験を5回ずつ行うこととした。荷重は10gf〜150gfの範囲とし、10gfより10gfごとに荷重を増しながら試験を行い、5回の試験のうち3回以上ノズルプレートに達する傷がついたときの荷重を記録し、これを耐傷性の指標とした。なお、>150gfと表記したものは150gfの荷重を加え試験を行っても5回の試験のうち3回以上で目立つ傷がつかなかったことを表す。
(4)表面フッ素含率
ノズル孔が未配置のノズルプレート上に、上記と同様の手法で重合性樹脂組成物を塗工・硬化させ、これを試料としX線光電子分光(ESCA)測定を行った。Cに対応するピーク(結合エネルギー:283eV〜299eV)に対するFに対応するピーク(結合エネルギー:686eV〜696eV)の面積比を算出しこの値をF/C値とし、表面フッ素含率の指標とした。
これらの試験結果を表2に示す。
Figure 2007076049
表2に示す結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録ヘッドは120℃程度の穏やかな熱処理で、吐出適性と密着性に優れた撥水性樹脂膜を形成でき、高強度な硬化剤を高い配合比で含んでなるものであるため、強度が高く傷がつきにくい。しかも、いずれも純水に対する接触角が100°以上と高い撥液性を発現するが、この性能は含フッ素化合物単独の性能(比較例)に比べても全く遜色ない。一方、硬化剤を含まず、含フッ素ポリマー単独で撥インク処理してなる比較例のインクジェット記録ヘッドでは、高い撥液性は発現するものの耐傷性に劣ることが分かる。
図1は、実施例で作成した本発明のインクジェット記録ヘッドの要部を示す拡大断面図である。
符号の説明
1:ノズルプレート
2:ノズル孔
3:撥インク部

Claims (10)

  1. 記録用の液体を吐出する吐出口を有し、少なくとも該吐出口周辺部に撥インク処理がなされたインクジェット記録ヘッドにおいて、
    該記録ヘッドの撥インク処理部がフッ素を含有する組成物の硬化物で形成されており、
    フッ素を含有する組成物が、フッ素を含有する分子とフッ素を含有しない分子の両方を含み、
    該硬化物表面のフッ素含率が硬化物全体のフッ素含率よりも高いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. フッ素を含有する分子が、重合性基を有する含フッ素化合物であり、
    フッ素を含有しない分子が、硬化剤である
    請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 重合性基を有する含フッ素化合物と硬化剤とが、互いに反応し得る官能基を有する請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 含フッ素化合物がポリマーである請求項2又は3に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. ポリマーが、その重合単位として、主鎖及び側鎖にペルフルオロアルキル基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(1)で表される請求項4に記載のインクジェット記録ヘッド。
    一般式(1):
    Figure 2007076049
    (式中、Rf 11はフッ素原子、炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基又は−ORf 12基を表わす。ここでRf 12基は、炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表わす。)
  6. ポリマーが、その重合単位として、側鎖にペルフルオロアルキル基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(2)で表される請求項4又は5に記載のインクジェット記録ヘッド。
    一般式(2):
    Figure 2007076049
    (式中、Rf 21は炭素数1〜20のペルフルオロアルキル基を表し、L21は炭素数1〜20の連結基を表し、R21は水素原子またはメチル基を表し、mは0又は1である。)
  7. ポリマーが、その重合単位として、重合性基を有する重合単位を含有し、該重合単位が下記の一般式(3)で表される請求項4〜6のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
    一般式(3):
    Figure 2007076049
    (式中、L31は炭素数1〜20の連結基を表し、X31はカチオン重合性基又はラジカル重合性基を含む有機基を表し、R31は水素原子またはメチル基を表し、nは0又は1である。)
  8. フッ素を含有しない硬化剤の占める質量分率がフッ素を含有する組成物中40%以上である請求項1〜7のいずれかに記載のインクジェト記録ヘッド。
  9. インクジェット記録ヘッドの撥インク処理部が、フッ素を含有する組成物を塗設、乾燥、硬化させることにより形成されている請求項1〜8のいずれかに記載のインクジェト記録ヘッド。
  10. インクジェット記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、
    該インクジェット記録ヘッドが請求項1〜9のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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