JP2007069250A - 熱間圧延鋼板の冷却方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 圧延機後面の鋼板幅方向のマスキング装置を備えた冷却装置により、熱間圧延後の鋼板を冷却する方法において、冷却装置への装入前の鋼板幅方向の端部と中央部の温度に基づいて、当該鋼板に対して予め設定した幅方向のマスキングパターンを施して鋼板を冷却した場合の鋼板幅方向の端部と中央部の冷却後の温度を計算し、冷却後の鋼板幅方向の端部と中央部との温度差が所定の範囲内となるように予め設定した幅方向のマスキングパターンを変更して冷却する。
【選択図】 図1
Description
しかしながら、鋼板の幅方向の端部や長手方向の端部は、形状的に放熱面が多いことや冷却板上水などの影響を受け、端部以外の部分に比べて冷却されやすいため、熱間圧延後の鋼板を幅方向や長手方向にわたって冷却水量を均一にして冷却すると、鋼板の幅方向及び長手方向に不均一な温度分布が生じる。
このような状態で冷却した後の鋼板では残留応力が発生し、その後、鋼板に切断、曲げなどの加工を施した際に予期しない変形が生じるといった問題がある。
鋼板の幅方向端部の過冷を防止し、温度分布を均一にするために、冷却装置に冷却水を遮蔽するマスキング板を設け、幅方向端部の冷却をマスキングする方法が採用されている。
本発明は、このような現状に鑑み、鋼板の冷却プロセスや冷却設備の変更や鋼板サイズの変動にも的確に対応して、適切なマスキングパターンを設定できる熱間圧延鋼板の冷却方法を提供することを課題とする。
本第1発明は、圧延機後面の鋼板幅方向のマスキング装置を備えた冷却装置により、熱間圧延後の鋼板を冷却する方法において、冷却装置への装入前の鋼板幅方向の端部と中央部の温度に基づいて、当該鋼板に対して予め設定した幅方向のマスキングパターンを施して鋼板を冷却した場合の鋼板幅方向の端部と中央部の冷却後の温度を計算し、冷却後の鋼板幅方向の端部と中央部との温度差が所定の範囲内となるように、予め設定した幅方向のマスキングパターンを変更して冷却することを特徴とする。
本第2発明は、本第1発明に記載の冷却方法において、前記冷却後の鋼板の温度を、幅方向のマスキングパターンのマスキング量と当該水冷ゾーンの水量密度とに応じてそれぞれ設定された補正係数により補正した熱伝達係数を用いて計算することを特徴とする。
本第3発明は、本第2発明に記載の冷却方法において、前記補正係数は、鋼板の上面と下面とでそれぞれ設定されることを特徴とする。
本第5発明は、本第4発明に記載の冷却方法において、前記冷却後の鋼板の温度を、当該冷却ゾーンの水量密度に応じて設定された補正係数により補正した熱伝達係数を用いて計算することを特徴とする。
本第6発明は、本第5発明に記載の冷却方法において、前記補正係数は、鋼板の上面と下面とでそれぞれ設定されることを特徴とする。
本発明において、マスキングパターンとは、冷却装置において鋼板幅方向に冷却水を遮蔽するマスク板の移動位置、鋼板長手方向(搬送方向)に冷却水の供給を遮断するタイミング及び、それを行う冷却ゾーンの選択などを含むものである。
本第2、第3の発明によれば、より的確に鋼板温度を推定することができ、より適切なマスキングパターンを設定できるので幅方向の温度差の小さい冷却が可能となる。
本第5、第6の発明によれば、より的確に鋼板温度を推定することができ、より適切なマスキングパターンを設定できるので長手方向の端部と中央部との温度差の小さい冷却が可能となる。
本発明においては、図1に示すように圧延機12の後面にはオンライン冷却するための冷却装置1が設けられ、この冷却装置1には、鋼板面に冷却水を噴射するためのノズル4とこれに冷却水を供給する冷却水ヘッダー5とから構成された冷却ユニット3が鋼板11の上面、下面に対向して設けられており、複数の冷却ユニットにより冷却ゾーン2が構成されている。冷却装置の鋼板進行方向と直交する方向、すなわち鋼板の幅方向の両側には、冷却ノズルと鋼板との間に、鋼板の幅方向端部の冷却水を遮蔽するマスク板(遮蔽板)6を鋼板幅方向に進退可能に備えたマスキング装置が設けられており、マスク板の鋼板幅方向の進退により冷却時のマスキングがなされる。このマスク板は、制御装置(図示せず)によりその進退量を制御可能となっている(以後、これをエッジマスキングとも記す)。
これらは、単独或いは双方を組み合わせて設定しうることは言うまでもない。
後述するように、本発明においては、マスキングパターンをした場合の端部と中央部の温度差を許容範囲となるよう、マスキングパターンを修正するが、この温度差の比較は、上述の各セグメントについて計算した温度の各部の平均値によって行うものとする。
先ず、i)冷却対象とする鋼板の冷却装置装入前、すなわち冷却開始前の、鋼板幅方向端部及び中央部温度を計算する。この温度は、圧延終了後、搬送テーブルを経て冷却装置に入るまでの空冷を考慮する。なお、圧延終了温度は、実測値或いは予測値のいずれでもよい。
この予め設定するエッジマスキングパターンは、最前段から最後段の全冷却ゾーンにおいてマスキング量を鋼板のサイズごとに経験則により設定されているパターンでもよい。
なお、本発明においては、このマスキングパターンを設定する場合は、マスキング効果に対する冷却ゾーンの水量密度の影響を考慮して、上下のマスキング量の関係が鋼板幅方向中心部と端部との温度差が小さくなるように、例えば、当該冷却ゾーンが上下にマスキング有りとし、当該次の冷却ゾーンが上下にマスキングなしの場合、当該冷却ゾーンを上面をマスキングあり、下面をマスキングなしと、当該次の冷却ゾーンを上面をマスキングなし、下面をマスキングありと設定するのが好ましい。
本発明では、この温度計算において、マスキングを施した部分の熱伝達係数は、エッジマスキング量に応じて定められた補正係数および水量密度に応じて定められた補正係数により補正した熱伝達係数αEMを使用する。
言い換えれば、αEM=α×マスキング量による補正係数kM×水量密度による補正係数KWとなる。
図3において(a)は上面におけるマスキング量(mm)と補正係数kMとの関係、(b)は下面におけるマスキング量(開度mm)と補正係数kMとの関係、(c)は上面の水量密度と補正係数KWとの関係、(d)は下面の水量密度と補正係数KWとの関係、をそれぞれ示している。
許容範囲内であればこの設定したエッジマスキングパターンで冷却を行う。
なお、鋼板の端部と中央部との温度差の許容範囲は、鋼板の変形および材質への影響などを考慮して決めることができる。鋼板の材質、形状にもよるが、通常20℃以下とすることが好ましい。
次に、鋼板の長手方向(搬送方向)端部、すなわちフロント(前端)及びテール(尾端)に対するフロント・テールマスキングパターンの設定について説明する。
この予め設定するフロント・テールマスキングパターンは、マスキング量、すなわち、鋼板長手方向(搬送方向)の端部(先端及び尾端)の非冷却オフセット部の長さを、0から最大Dまでとするように、マスキング量の刻み長さをdとしてマスキング量を段階的に増減させて設定する。この刻み長さd、マスキング最大長さDは、鋼板の形状、要求される形状などを勘案して決めればよいが、例えば、dをロールピッチ、Dを被冷却鋼板長さの10%程度とすることも好ましい。
すなわち、各冷却ゾーンの水量密度は、鋼板の圧延後の温度、形状および所要材質などに基づいて冷却条件として設定されているが、この設定された冷却水量密度Qが所定の値を超えている場合は、その冷却ゾーン(N番目のゾーンとする)以降の冷却ゾーン、すなわちN+1、N+2、N+3、N+4,N+5・・・N+n番目までの各冷却ゾーンのマスキング量を、上記刻み長さdにそれぞれ定めたマスキング量調整係数kLMを乗じた長さ、マスキング量として設定する。
この補正係数kFTは、上面では板上水の影響があるため、下面に比べてマスキングの効果が小さいことを考慮するためのものであり、下面の水量密度を基準として設定する。
下面の冷却水量を基準として、マスキング部の熱伝達係数を補正する補正係数が設定されており、これによって、フロント・テールマスキングにおける板上水の影響を考慮できる。この例では、上面の補正係数は、下部の1/2としている。
なお、鋼板の端部と中央部との温度差の許容範囲は、鋼板の変形および材質への影響などを考慮して決めることができる。鋼板の材質、形状にもよるが、通常の20℃以下とすることが好ましい。
鋼板の端部と中央部(定常部)との温度差が許容範囲内であるかどうかを判断し、この温度差が許容範囲内であれば上記予め設定した上記フロント・テールマスキングパターンにより冷却を行なう。
なお、本発明における上記の温度計算は、公知の方法(例えば差分計算など)を利用して行うことができる。
本発明においてマスキング量はmmで例示したが、これを鋼板の幅あるいは長さに対する比率として設定し、適切なマスキングパターンとしうることは言うまでもない。
図1に示すような冷却装置を有する圧延・冷却設備において、熱間圧延後の鋼板を冷却した。このとき冷却対象鋼板は、鋼板の板厚が27.4mm、圧延仕上げ温度が720〜740℃、冷却条件は、冷却開始温度が700〜760℃、冷却停止温度が380〜480℃とし、冷却設備の水量密度は1.3m3/m2・minとした。
従来の方法として、鋼板形状、圧延仕上げ温度、冷却条件などに応じて、従来から設定されているマスキングパターンのテーブルから、上記のような鋼板、圧延条件および冷却条件に基づいて、適用すべきエッジマスキングパターン、およびフロントテールマスキングパターンを選定し、このパターンによって冷却した。
一方、本発明の方法に従って、上記のエッジマスキングパターンで冷却した場合の鋼板端部と中央部の温度差が所定の範囲、本実施例では37℃以下、となるように上記のエッジマスキングパターンを変更する一方、上記のフロントテールマスキングパターンで冷却した場合の鋼板先端部と中央部の温度差が所定の範囲、本実施例では25℃以下、となるように上記のフロントテールマスキングパターンを変更し、これらの変更したマスキングパターンを設定して冷却した。
なお、本発明の方法における温度差の計算は、エッジマスキングパターンでは上面と下面のそれぞれにおいて、水量密度、マスキングパターン量に関して設定された補正係数で補正した熱伝達係数を、フロントテールマスキングパターンでは上面と下面とでそれぞれにおいて水量密度に関して設定された補正係数で補正した熱伝達係数を用いた。
本発明の方法及び従来の方法による冷却の結果として、冷却後の鋼板の温度差(温度差の平均及び偏差)、及び板内偏差を表3に示す。
2 冷却ゾーン
3 冷却ユニット
4 ノズル
5 冷却水ヘッダー
6 マスク板(遮蔽板)
7 開閉弁
8 給水管
9 搬送ロール
10 水切りロール
11 鋼板
12 熱間圧延機
21 マスキング装置
22 冷却装置
23 マスキング板
25 鋼板
Claims (6)
- 圧延機後面の鋼板幅方向のマスキング装置を備えた冷却装置により、熱間圧延後の鋼板を冷却する方法において、冷却装置への装入前の鋼板幅方向の端部と中央部の温度に基づいて、当該鋼板に対して予め設定した幅方向のマスキングパターンを施して鋼板を冷却した場合の鋼板幅方向の端部と中央部の冷却後の温度を計算し、冷却後の鋼板幅方向の端部と中央部との温度差が所定の範囲内となるように、予め設定した幅方向のマスキングパターンを変更して冷却することを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却方法。
- 前記冷却後の鋼板の温度を、幅方向のマスキングパターンのマスキング量と当該水冷ゾーンの水量密度とに応じてそれぞれ設定された補正係数により補正した熱伝達係数を用いて計算することを特徴とする請求項1記載の熱間圧延鋼板の冷却方法。
- 前記補正係数は、鋼板の上面と下面とでそれぞれ設定されることを特徴とする請求項2に記載の熱間圧延鋼板の冷却方法。
- 圧延機後面の鋼板長手方向のマスキング装置を備えた冷却装置により、熱間圧延後の鋼板を冷却する方法において、冷却装置への装入前の鋼板長手方向の端部と中央部の温度に基づいて、当該鋼板に対して予め設定した長手方向端部に対するマスキングパターンを施して鋼板を冷却した場合の鋼板長手方向の端部と中央部の冷却後の温度を計算し、冷却後の鋼板長手方向の端部と中央部との温度差が所定の範囲内となるように、予め設定した長手方向のマスキングパターンを変更して冷却することを特徴とする熱間圧延鋼板の冷却方法。
- 前記冷却後の鋼板の温度を、当該冷却ゾーンの水量密度に応じて設定された補正係数により補正した熱伝達係数を用いて計算することを特徴とする請求項4に記載の熱間圧延鋼板の冷却方法。
- 前記補正係数は、鋼板の上面と下面とでそれぞれ設定されることを特徴とする請求項5に記載の熱間圧延鋼板の冷却方法。
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