JP2007065644A - ディスプレイ用基板及びディスプレイ並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性が高く、線膨張係数が低く、ガスバリア性が高く、柔軟性も備えたディスプレイ用基板を提供する。
【解決手段】粘土薄膜層1と無機薄膜層2とをそれぞれ1層以上有する層構造体をディスプレイ用基板とする。粘土薄膜層1は、粘土を主要成分とし、粘土粒子が高度に配向して積層した構造を有する。無機薄膜層2は、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする。無機薄膜層2は粘土薄膜層1に隣接して積層してもよいし、緩衝層3のような他層を介して積層してもよい。さらに、機械的強度を高める補強層4や表面の凸凹を平滑化する平滑化層5を積層してもよい。
【選択図】図1

Description

この発明はディスプレイ用基板及びディスプレイ並びにそれらの製造方法に関する。
近年、液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイ(以下、FPDと略す)の製造技術が飛躍的に進歩し、従来のブラウン管ではとうてい到達し得ない薄型のディスプレイが現実のものとなった。それらのディスプレイには、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す)ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、無機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の異なる発光原理を用いたものがあり、また、電子ペーパーのような反射型のディスプレイも登場して、現在でも盛んに性能向上とコストダウンに向けた研究開発が進められている。
現在のFPDは上記のように複数の種類が存在しているが、前記した現在のFPDはほぼ全てガラス基板上にデバイスが形成されており、ガラス基板以外の基板を用いた実用的なFPDは存在しない。その理由としては、ガラス基板が高耐熱性であり、高温形成が必要なディスプレイの駆動回路や部材を形成するのに適していること、線膨張係数が小さく、それら駆動回路や部材に与える応力を抑制でき、配線の破断や部品の特性変動が少ないこと、可視光域で透明なため光を取り出すのが容易であること、さらにガスバリア性が高く、外部からの酸素や水蒸気の進入を阻止することができ、必要によっては高真空を保持できる点等が挙げられる。従って、上記のような特徴を兼ね備えたガラス基板は非常に理想的な材料である。
しかし、ガラス基板には欠点もある。ガラス基板は柔軟性がなく、割れやすい。また重量が重く、基板の変形や取り扱いの困難さが問題となっている。特に、コストダウンを目的としたディスプレイパネル製造時の基板サイズの拡大に伴い、基板の重量によるたわみ、および、割れの発生が問題になっている。また、持ち運んで使うモバイル用途として考えた場合、ガラス基板では曲げて持ち運ぶ等の用途を想定したフレキシブルディスプレイには使えない。さらに、重量低減は携帯性を重視するモバイル用途に対しては重要な課題である。またガラス基板は衝撃に対して割れやすく、落下させた場合にデバイスが損傷しやすいという欠点も持ち、モバイル用途にはあまり適していない。
そのようなガラスの欠点を克服し、ガラスと同等の耐熱性、線膨張係数、透明性、ガスバリア性等を有するディスプレイ用基板材料の開発が進められている。例えば、高いガスバリア性と透明性および柔軟性を有する基板としては、極薄のガラス基板に有機無機ハイブリッド材料をコーティングしたもの、樹脂基板の上に窒化シリコンと窒化炭素との多層構造を形成した基板(例えば、特許文献1参照)、さらには、樹脂基板の上に有機層と無機薄膜層とを多層積層したもの(例えば、非特許文献1参照)も開発されている。
特開2003−282237号公報 筒井哲夫、城戸淳二、「有機ELハンドブック」、リアライズ理工センター、p.185(2004)
しかしながら、基板に柔軟性を付与するために樹脂材料を用いた基板の場合、一般に樹脂材料の耐熱性が低く、駆動回路やガスバリア層等の形成に必要な高温プロセスに基板が耐えられないという大きな問題を有している。低温で駆動回路やガスバリア層を形成する試みも行われているが、性能が不足したり、非常に長い形成時間を要したりと、実用的なプロセスの開発までには至っていない。
また、樹脂材料は一般に線膨張係数が大きく、熱履歴を経ることによる駆動回路やガスバリア層へ与える応力が大きいため、回路の断線やガスバリア層の欠陥等を引き起こしやすい。樹脂材料ではなく、ガラス基板を極薄にして柔軟性を付与させる検討も行われているが、極薄のガラスを作るのにはコストがかかり、割れやすいため取り扱いも簡単ではなく、安価に量産することは難しいと考えられている。
本発明の課題は、耐熱性が高く、線膨張係数が低く、ガスバリア性が高いというガラス基板が有する優れた特徴を有するディスプレイ用基板を提供することである。
本発明者らは上述した課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、例えば厚さが1nm程度のサイズのシート状の粘土粒子を配向した状態で積層させることによって、緻密でピンホールがなく耐熱性の高い粘土薄膜層を形成し、その粘土薄膜層に、緻密性の高い無機化合物を主要成分とする無機薄膜層を積層して得られる層構造体が、ディスプレイ用基板として好適であることを見出して、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明のディスプレイ用基板は、粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層と、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有する層構造体を備えたことを特徴とする。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体が、前記粘土薄膜層の上下両側に前記無機薄膜層が隣接して又は他層を介して配されたものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体に、機械的強度を付与する補強層が積層されているものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体に、平滑性を向上させる平滑化層が積層されているものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体に、クラック発生を抑制する緩衝層が積層されているものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板としては、前記粘土薄膜層が自立膜として利用可能な機械的強度を有するものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記粘土が天然粘土であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記粘土が合成粘土であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記粘土が、雲母、バーミキュライト、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記無機化合物が、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記無機薄膜層が、ケイ酸アルカリ、金属アルコキシド、ポリシラザン、パーヒドロポリシラザン、及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む溶液から形成されたものであるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記補強層が、セルロースを含有する不織布とセルロース以外の樹脂との複合体からなる有機材料層であり、前記複合体中の前記不織布の含有率が0.1重量%以上99重量%以下、前記樹脂の含有率が1重量%以上99.9重量%以下であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記不織布の空孔率は20%を超え99%以下であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記不織布は、下記式(1)で定義される平均透過率Tr(av)が0.70以上であるものが挙げられる。
Tr(av)=Tr(1)/Tr(2)‥‥(1)
式中、Tr(1)は、トルエンが入っている試験管の内面に不織布を密着させ、この試験管の不織布の位置に、試験管の長さ方向に対して垂直に、波長が850nmの光を照射し、この光を直線に沿って移動しながら40μm毎に透過率を測定し、合計30000μmを移動して得られた全750の透過率の平均値であり、Tr(2)は、トルエンが入っていて不織布が入っていない試験管に対して、同じ方法で光を照射して得られた全750の透過率の平均値である。
本発明のディスプレイ用基板として、前記不織布を構成するセルロースの最大繊維径が1500nm以下であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記不織布を構成するセルロースはバクテリアセルロースであるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記不織布を構成するセルロースはコットンより得られたセルロースであるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、全光線透過率が50%以上であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体の、厚さが1mmの場合の温度23℃における酸素ガス透過量が、24時間当たり0.1g/m以下であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、前記層構造体の、厚さが1mmの場合の湿度90%、温度40℃における水蒸気透過量が、24時間当たり0.5g/m以下であるものが挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板として、40℃から160℃の範囲における線膨張係数が1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下であるものが挙げられる。
本発明はまた、本発明のディスプレイ用基板を備えることを特徴とするディスプレイを提供する。
前記ディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパーが挙げられる。
本発明はまた、本発明のディスプレイ用基板を製造する方法であって、基材上に前記粘土薄膜層を形成する工程と、前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成する工程と、を有することを特徴とするディスプレイ用基板の製造方法を提供する。
本発明のディスプレイ用基板の製造方法としては、気相中における成膜プロセスである抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、又はスパッタリング法で、前記無機薄膜層を形成する方法が挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板の製造方法としては、溶液からの成膜プロセスで形成された塗布膜を150℃以上1000℃以下の温度で焼成する方法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする方法が挙げられる。
本発明のディスプレイ用基板の製造方法としては、前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成した後に、前記補強層を固定する方法が挙げられる。
本発明はまた、本発明のディスプレイを製造する方法であって、ディスプレイ構成部品を100℃以上の温度で前記層構造体上に形成した後に、前記補強層、前記緩衝層、および前記平滑化層の少なくともいずれかを固定することを特徴とするディスプレイの製造方法を提供する。
本発明のディスプレイ用基板は、耐熱性が高く、線膨張係数が低く、ガスバリア性が高いものである。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のディスプレイ用基板の例を示す断面図である。
このディスプレイ用基板は、粘土薄膜層1の上下両側に無機薄膜層2が配された層構造体を備え、この層構造体の両無機薄膜層2に緩衝層3が積層され、一方の緩衝層3に平滑化層5が積層され、他方の緩衝層3に補強層4が積層されている。
粘土薄膜層1は、粘土を主要成分とし、粘土粒子が配向して積層した構造を有する。粘土薄膜層1は自立膜として利用可能な機械的強度を有することが好ましい。また、無機薄膜層2は、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする。
このような層構造体は、基材上に粘土薄膜層を形成する工程と、無機薄膜層を粘土薄膜層上に形成する工程と、を有する方法で得ることができる。
まず、耐熱性に優れ、粘土粒子が緻密に配向した粘土薄膜層を、基材上に形成する。粘土粒子は、酸素やケイ素を中心として構成される厚さが約0.22nmの四面体層や八面体層が1〜3層積層された、数十nm〜5μm程度の長軸方向の大きさを有するアスペクト比の大きなシート状の層状無機化合物である。
このような粘土粒子からなる粘土としては、天然粘土、合成粘土のいずれも用いることができる。中でも、雲母、バーミキュライト、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイト等を好適に用いることができる。中でもモンモリトナイトは柔軟性に優れるため好ましく、透明性の点からは合成されたヘクトライトやサポナイトが好ましい。
粘土薄膜層を形成する際には、例えば天然スメクタイト若しくは合成スメクタイト又はそれらの混合物を用い、この粘土を水又は水を含む溶液に加え、十分に攪拌することで、小さな粘土粒子が均一に分散した粘土分散液を調整する。このとき、粘土分散液の濃度が高すぎる場合には粘土が細かく分散しないため、粘土薄膜層の均一性が低下するおそれがある。粘土分散液の好ましい濃度は粘土の種類に依存するが、概ね1〜3質量%である。
次に、この粘土分散液を静置し、粘土粒子を沈降させつつ粘土分散液の液体成分をゆっくり蒸発させ、粘土粒子が堆積した粘土薄膜層を形成する。粘土薄膜層の膜厚は、自立膜として取り扱うのであれば5μm以上が好ましく、粘土薄膜の耐クラック性及びコストの観点から500μm以下が好ましい。より好ましい範囲は、20μm以上200μm以下である。なお、自立膜として取り扱わない場合には5μmより薄い膜でもよいが、ピンホール等が発生しないようにするためには、膜厚は1μm以上あることが望ましい。
このとき、粘土薄膜層を堆積させる基材は特に限定されるものではないが、剥離後に自立膜として使う場合、粘土薄膜層を加熱等により基材から剥離できるものであることが必要である。そのような基材としては、表面にシリコーン樹脂等を塗布する等で易剥離処理を実施した金属や樹脂基板等を挙げることができる。特に、表面平滑性の良いプラスチック基板やガラス基板等の上で形成することがディスプレイ基板として用いるのに必要な平滑性を出しやすいため望ましい。
このようにして粘土薄膜層を形成することで、1mm以下の厚さでも自立して扱える強度を有する粘土薄膜層を得ることもできる。薄膜において自立して扱える強度は、その膜厚に大きく依存するが、例えば10μm以上の膜厚を有する薄膜については、引っ張り強度が20MPa以上であれば、自立膜として扱うことは一般に可能である。
粘土薄膜層が自立して使える強度を有する場合、後述する無機薄膜層を形成する工程において、粘土膜のみからなる膜に直接無機薄膜層を形成できる。また、何らかの支持体に仮接着等せずに直接粘土膜を取り扱ってプロセスを実施できるため、仮接着に用いる接着剤の耐熱性等の束縛を受けず、プロセスの幅を広げることができる。さらに支持体を剥離する等のプロセス上の工程が不要になり、コストダウンの点からも効果的である。
しかしながら、粘土薄膜層が剥離後自立膜として使える強度を有しない場合には、粘土薄膜層を基材から剥離した状態で無機薄膜層を積層することが困難なため、粘土薄膜層が基材に貼り付いた状態のまま後述する無機薄膜層を形成する工程へ進む。このとき、無機薄膜層形成には基材ごと高温で加熱することとなるため、その場合には、無機薄膜層形成時の高温に耐える基材を使う必要がある。そのような基材としては、例えばガラス基板やシリコン基板等が挙げられる。
粘土薄膜層が自立膜として使える強度を有しない場合には、無機薄膜層形成後、粘土薄膜層と無機薄膜層からなる積層体を基材から剥離する際に、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂フィルム等を貼り付けて膜を強度的に補強した後、基板から剥離して自立強度を持った膜として用いることができる。なお、PETフィルムのような樹脂フィルムは耐熱性に乏しいが、本発明における無機薄膜層のような高温形成が必要な工程の後に貼りつけて用いることで、耐熱性の問題を回避することができる。
本発明における粘土薄膜層においては、粘土薄膜層の強度や柔軟性を向上させる目的で、粘土以外の成分、例えば樹脂のような有機物を混合することも可能である。粘土を水に分散させた溶液から粘土薄膜層を作製する場合は、水に可溶な有機物、例えば水溶性の分子やポリマーを該溶液に添加することにより、粘土以外の成分を含む粘土薄膜層を作製することが可能である。ただし、粘土以外の成分の割合が多くなると、特に有機物の成分の割合が多くなると、耐熱性等の物性が低下する傾向があるため、粘土以外の成分の割合は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、もっとも好ましくは20%以下である。
なお、本発明における粘土薄膜層が、粘土粒子が配向して積層した構造を有するものであることを確認する手段としては、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察、もしくはX線回折スペクトルにおける底面反射ピークの存在等、およびそれらの複合的解析によって確認することができる。
一般にディスプレイ用基板には、酸素および水蒸気に対する高いガスバリア性が要求される。特に有機ELディスプレイが要求するガスバリア性能は極めて高く、ガラス基板以外の実用的な基板で要求水準を満たす部材は未だ存在していない。粘土薄膜層は一般に酸素に対しては極めて高いガスバリア性を有し、有機ELディスプレイの要求水準を満たすことも可能である。しかしながら、粘土薄膜層の水蒸気に対するガスバリア性は低く、粘土の材質に依存するものの、ディスプレイ用基板としてより優れた水蒸気バリア性を求められる場合も多い。
従って、粘土を主とする膜をディスプレイ用基板として用いるためには水蒸気に対するガスバリア性能を向上させることが好ましく、そのための手法として無機化合物を主要成分とする緻密な無機薄膜層を粘土薄膜層の上に形成し積層化した層構造体とすることで、水蒸気の遮断性能を向上させる方法が望ましい。無機薄膜層としては、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とするものが、緻密な膜を作製しやすいこと、水蒸気に対するガスバリア性が特に高いこと、蒸着法や溶液からの塗布・焼結方法等の多様な形成方法があること等から好ましい。粘土薄膜層と、このような無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有することにより、基板の水蒸気に対するガスバリア性を向上させることができる。無機薄膜層は粘土薄膜層上に隣接して形成してもよく、他層を介して形成してもよい。
水蒸気バリア性能を付与するための無機薄膜層の形成方法としては、気相中における形成方法もしくは溶液から形成する方法等があるが、いかなる手法を用いた場合でも、成膜温度が高い方が膜の緻密性が向上し、ガスバリア性を向上できるのが一般的である。しかしながら、従来、ディスプレイ等にフレキシブル基板として用いられてきた樹脂基板は一般に耐熱温度が低く、成膜温度を上げることができなかったため、もしくは線膨張係数が大きく寸法安定性が良くなかったため、ガスバリア性能や光透過性の高い十分な品質の無機薄膜をそれら樹脂基板上に作ることは難しかった。本発明においては粘土薄膜層の高い耐熱性と寸法安定性を利用し、緻密で高品質な無機薄膜層を高温下において粘土薄膜層上に形成することが可能である。
具体的には、スメクタイト系の粘土鉱物を主とする材料から形成される粘土薄膜層の場合は、粘土鉱物の結晶水の脱水が起こる600〜700℃程度までは問題なく成膜温度を上げることが可能である。透明性は失われるものの、合成サポナイト等は1000℃でも粘土薄膜層としての形状を保持し、また、水酸基をフッ素で置換した合成雲母等であれば1100℃弱までは構造変化を起こさないため、1000℃程度まで成膜温度を上げることも可能である。
なお、得られる基板に柔軟性を付与するのであれば、粘土の種類に依存するものの、一般に成膜温度は500℃以下であることが好ましい。なお、本発明のディスプレイ用基板の柔軟性としては、曲率半径で少なくとも50mm、好ましくは10mmに基板を曲げた際に、基板が割れたり目視で確認できるクラックが入らないことが好ましい。
また、粘土薄膜層の線膨張係数は一般に約15×10−6/℃以下と小さく、熱による伸び縮みが少なく寸法安定性に優れている。したがって、一般的な樹脂基板の耐熱温度である150℃程度より高い温度で形成することにより、従来の樹脂基板(例えば汎用の樹脂フィルム)の上に無機薄膜層が形成されたものよりも、緻密でガスバリア性に優れた無機薄膜層を得ることができる。
無機薄膜層の主成分となる無機化合物は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
高温成膜に適する無機薄膜層の形成方法は、気相中における成膜プロセスであり、例えば、抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、スパッタ法等があげられる。特に、CVD法は緻密な膜を形成する方法として好ましい。また、プラズマCVD法は緻密な膜を形成するのに特に好ましく、大気下CVD法は真空プロセスが不要であり成膜速度も速いので、低コストで量産に適した方法である。また、触媒を用いて反応ガスを分解するCat−CVD法も成膜レートが早く好適である。プラズマCVD法を用いる際には、基板温度を低温(60〜200℃以下)に保って成膜する特殊な手法ではなく、基板温度が200℃以上になる高温タイプを用いることができる。
このような方法で作ることできる無機薄膜層としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化アルミ、窒化アルミ、及びそれらの混合物等の薄膜層があげられる。より具体的には、例えばプラズマCVD法によりケイ素化合物の無機薄膜層を形成する場合は、ケイ素源として、シラン、ジシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)等を用い、酸素又は窒素を併用して導入して用いてもよい。酸素炭素源としてはCO、CO等を、酸素窒素源としてはNO、NO、NO等を用いることができる。またTEOSを用いることで、表面の凸凹に対するカバレージ性を向上させることもできる。
本発明においては、気相中における成膜プロセスではなく、常圧下における溶液からの成膜プロセスである塗布膜を焼結する方法によって、溶液から無機薄膜層を形成することも可能である。この場合にも高い温度で焼成して薄膜を形成できるので、膜質を向上させることが可能である。このような方法としては、一般式MO・nSiO(Mはアルカリ金属、nはモル比で1〜20程度の範囲)で表されるケイ酸アルカリの水溶性分散液や、金属アルコキシドやアルコキシシランを用いたゾル−ゲル法があげられる。
さらには、加熱によって酸化ケイ素や窒化ケイ素に転化するポリシラザン、特に有機官能基や有機触媒を含まないパーヒドロポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)を含む溶液を塗布し焼成して、酸化ケイ素や窒化ケイ素からなる無機薄膜層を得てもよい。有機官能基や有機触媒を含まないパーヒドロポリシラザンは緻密な無機薄膜層を得ることができ、無機薄膜層の形成材料として理想的であるが、一般に無機触媒を含むもので250℃以上、触媒を含まないものであれば400℃以上の高温で焼成する必要がある。
本発明における粘土薄膜層は500℃程度まで加熱しても柔軟性を有しており、また柔軟性は一般に失われるものの前述したフッ素化合成雲母等であれば1000℃程度まで加熱することも可能であり、且つ、無機材料ゆえ一般的な樹脂材料と比較して線膨張係数も小さいので、前述のような高温での焼成に適している。
これら溶液からの無機薄膜形成における焼成温度としては、一般に焼成温度が高いほど緻密でガスバリア性に優れた無機薄膜層が得られるが、粘土薄膜層の柔軟性、粘土薄膜層と無機薄膜層との熱膨張係数の差による応力、クラックの観点から、焼成温度としては600℃以下が好ましく、粘土の種類や組成に依存するものの柔軟性の保持の観点からは500℃以下がより好ましく、さらに粘土薄膜層に有機物等を添加した場合には有機物の分解を避けるため300℃以下が特に好ましい。
ゾル−ゲル法によって無機薄膜層を作製する場合は、一般式M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C等のアルキル基)で表せるアルコキシドを単独又は複数種を組み合わせて塗布溶液とし、水やアルコール、および塩酸等の酸で加水分解した後に塗布して焼成することで薄膜を得る。特に、例えばケイ素源としてTEOSを、アルミニウム源としてトリイソプロポキシアルミニウムを用いた場合は、溶液が安定で扱いやすい。
溶液から無機薄膜層を形成する際には、必要に応じて、イソシアネート化合物、ポリ(メタ)アクリル酸、帯電防止剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができる。
ケイ酸アルカリから形成された無機薄膜層は、経時変化により白濁化する場合がある。この現象を抑制するための手段として、金属粉末や多価金属水酸化物、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機化合物を添加する方法が知られており、透明性が必要な場合にはこれらを必要に応じて添加してもよい。
溶液の塗布方法には、ディッピング法、スピンコート法、ロールコーティング法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。膜厚は溶液の種類や塗布条件によって異なるものの、10nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。乾燥後の厚さが10nm以上であれば、下層表面の凸凹の影響等を受けてピンホール等が発生することを抑制して、十分な膜質が得られる。また、乾燥後の厚さは、クラック発生を抑制するという観点から20μm以下が好ましい。乾燥後の厚さは、より好ましくは20nm〜5μm、さらに好ましくは100nm〜2μmである。
無機薄膜層の密着性を向上させる目的で、又は、無機薄膜層の材料を溶かした溶液と下層との親和性を向上させる目的で、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、有機チタネート等を溶液に配合するか、又は、前もって下層に塗布しておくことが好ましい。あるいは、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等を下層に実施することが好ましい。特に、シランカップリング剤を直接又はあらかじめ水溶液中で加水分解させシラノール化させてから塗布する方法が望ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えばテトラエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤又はその加水分解物があげられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の無機薄膜層は1層である必要性はなく、同一もしくは異なる種類の無機薄膜層を2層以上、同一もしくは異なった方法で積層してもよい。例えば、ゾル−ゲル法やポリシラザン塗布焼成法により溶液から作製した酸化シリコン膜の上に、プラズマCVDで作製した窒化シリコン膜を積層してもよい。上記のような方法で、粘土薄膜層の上に溶液プロセスによって無機薄膜層を形成し粘土薄膜層の表面の凸凹を平滑化した後に、気相蒸着によってより緻密な無機薄膜層をさらに積層して形成する方法を用いると、無機薄膜層の膜質をより向上させることが可能である。なお、無機薄膜層を2層以上積層する場合には、それらを隣接して積層してもよいし、所望により他層を間に介在させてもよい。
このようにして得られた粘土薄膜層と無機薄膜層の層構造体は、緻密でガスバリア性能に優れた無機薄膜層によって、高いガスバリア性能を有する。また、装置コストが高くスループットの低い低温真空蒸着法を用いずとも、粘土薄膜層の高い耐熱性を生かして、ガスバリア性の高い緻密な無機薄膜層を高温条件下で積層することができ、またポリシラザンのような液体を塗布して焼成する方法でも緻密な無機薄膜層を得られることが特徴である。得られた無機薄膜層は、特に、粘土薄膜層のみでは劣る水蒸気に対するガスバリア性能を向上させる効果が大きい。
特に、粘土薄膜層が吸湿性を有しする場合は、粘土薄膜層の上下両側に無機薄膜層が隣接して又は他層を介して配されている構造が好ましい。このような構造は、外部からの水蒸気の大部分が、第1の無機薄膜層において遮蔽され粘土薄膜層まで到達せず、仮に少量の水蒸気が第1の無機薄膜層を通過して粘土薄膜層まで到達したとしても粘土薄膜層において吸着されるため、第2の無機薄膜層まで到達できる水分子は極微量であり結果、極めて高い水蒸気バリア性能を有する。
吸湿性を有する粘土薄膜層としては、水に分散する天然もしくは合成された粘土からなる層を有しているものであれば、このような構造とすることにより、水蒸気に対する高いガスバリア性を発現することができる。このような構造は、有機ELディスプレイのような高い水蒸気に対するバリア性を要求するディスプレイ用基板用途ばかりでなく、幅広い他の用途、例えば食品や医薬品等の包装用途等に対しても有効と考えられる。なお、有機ELディスプレイ以外の用途であれば、水蒸気遮断の役割を有する無機薄膜層は本発明のような緻密な無機薄膜である必要は必ずしもなく、もう少しガスバリア性の低い、例えばポリ塩化ビニリデンのような樹脂材料であっても問題ない場合もある。
ディスプレイ用基板には、少なくとも光を取り出す方向に用いる場合、可視光域における高い透明性が要求される。本発明において、前記のような材料系からなる無機薄膜層の透明性は一般に高く、可視光域全体に渡って80%以上の透過率を示すものを容易に得ることができる。
対して、粘土薄膜層は一般に天然の材料を用いると着色を生じ透明性が得られないが、合成粘土を用いて不純物の量を低減すること等により、透明な粘土薄膜層を得ることができる。しかしながら合成粘土を用いても、粘土薄膜層の表面の凸凹が大きい場合には、光が散乱して透過率が低下したり、ヘイズ(曇度)が大きくなることが多い。このような場合は、表面に平滑化層をコーティングして表面の凸凹を低減することによりヘイズを抑制でき、光の透過率を向上させることが可能となる。また、ディスプレイの駆動回路を基板上に形成する際に必要な高い平滑性を付与することもできる。
このような平滑化層としては、無機薄膜層、特に塗布で形成した無機薄膜層そのものを用いてもよいし、表面凸凹の状態によっては、水やアルコール等の溶媒に酸化シリコン等の無機超微粒子を分散させたものを塗布することにより、平滑化層を形成してもよい。あるいは、前記無機超微粒子を無機薄膜層の材料を溶かした溶液に混合分散して塗布することにより、平滑化層を形成してもよい。塗布面としては、粘土薄膜層の片面のみが凸凹であるならばその面だけでもよいし、両面とも凸凹が大きければ両面に塗布してもよい。なお、平滑化層は粘土薄膜層とできるだけ層方向の屈折率が近い、好ましくはその差が0.5以内、より好ましくは0.1以内の材料を用いると界面での反射を押さえ、表面の凸凹による光学的な影響を押さえることができ望ましい。
光を取り出す方向に用いるディスプレイ用基板の光の透過特性としては、可視光域において吸収が少なく、もしくはあったとしても吸収の波長依存性が少ないことが理想である。全光線透過率は50%以上であることが好ましく、80%以上あることがより好ましい。視感度の高い波長500nmの光においては、透過率が50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、もっとも好ましくは90%以上ある。そのようなディスプレイ用基板であれば、例えば有機ELディスプレイにおいて光を取り出す方向に基板を実装することができ、通常のボトムエミッション型ディスプレイにも好適である。また、背面にバックライト等の光源を有し、その透過光を利用する液晶ディスプレイにも用いることができる。
なお、本発明におけるディスプレイ用基板を構成する前記層構造体には、有機材料等を構成成分として含む薄膜層を緩衝層として積層してもよい。そのような材料からなる緩衝層の役割は、基板を折り曲げた際の、粘土薄膜層、無機薄膜層、及び平滑化層の物理的な破損に対する耐性を向上させることである。そのような緩衝層は、粘土薄膜層、無機薄膜層、及び平滑化層のうち少なくとも1つ以上の層と接している箇所に1層以上付与すれば良く、特に応力等で亀裂の入りやすい無機薄膜層の片面もしくは両面に積層することは望ましい。これにより、曲げた際に無機薄膜層に亀裂等の欠陥が生じることを防ぐことができ、また、表面に傷がついてガスバリア性能や透明性が低下したりすることを抑制することもできる。
このような材料としては、有機材料なら例えばポリイミド系の樹脂が好適であり、10μm以下、好ましくは1μmの薄い層とすることにより、応力の緩和、着色による透明性の低下を抑えることが可能である。ただし、あまり緩衝層を薄くしすぎると、膜表面の凸凹を被覆する性能が低下して緩衝層の形成が不完全となりやすく、緩衝層にピンホールが発生するおそれがあるため、緩衝層の厚さは10nm以上であることが望ましい。
さらに、緩衝層として透明なポリイミド樹脂を用いてもよく、この場合には緩衝層が薄くなくても着色の問題は発生しないので好適である。それ以外にも、任意の材料を緩衝層として用いることができるが、緩衝層を形成した後に無機薄膜層の形成等の高温プロセスを適用する際には、緩衝層の耐熱温度や線膨張係数等に配慮し、緩衝層の分解や反りの発生等に注意する必要がある。
本発明における層構造体を有するディスプレイ用基板の線膨張係数はほぼ無機材料から形成されているため低く、ガラス基板の線膨張係数(4〜12×10−6/℃)と近いため、従来のガラス基板と同等のプロセスおよび配線サイズでディスプレイを形成でき、配線等の破断が起こる可能性が低く、理想的である。
ディスプレイ用基板を実際にディスプレイ製造工程に適用しディスプレイを製造する場合、ディスプレイ用基板にはディスプレイの製造工程に耐えるだけの強度が要求される。また、ディスプレイとして使用する際の取り扱いで壊れないよう、基板としてある程度以上の強度が必要になる。
従って、本発明におけるディスプレイ用基板の強度が不足している場合には、補強層を付与し、基板の物理的な強度を高めることが好ましい。
そのような補強層としては前述した工程および使用に耐えるだけの強度を有していれば特に制限はないが、具体的には、例えばPET、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ナイロン、ポリサルフォン、エポキシ等の樹脂フィルムを用いることができ、光を通過させる箇所に用いる場合にはそれらが透明であることが望ましい。
また、ガラスファイバーのような無機繊維、セルロースや布地のような有機繊維、紙、それらと熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂との複合材でもよい。もしくは透明性が不要であれば、アルミニウム、銅、及びステンレスの金属箔なども安価で好適である。補強層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選定すればよい。しかるに樹脂フィルムは耐熱性が低いため、無機薄膜層等の形成で高温焼成工程を経た後に固定することが望ましく、これによって補強層の耐熱温度を不問にすることができる。補強層の付与は、無機薄膜層を粘土薄膜層上に形成した後に、行うことが好ましい。方法としては、ディスプレイ用基板に接着剤をコートし、補強層をラミネート等の方法で貼りつける方法、もしくは補強層と粘着層とを積層したフィルムをラミネートする方法等が考えられるが、これに限定されるものではない。
表面が平滑なPETやPCのフィルムを用いた場合、補強層が前記平滑化層の役割を兼ねることも可能であり、耐熱温度が許せば、この上にディスプレイ用デバイスを形成することも可能である。また、耐摩耗性に優れた処理を行ったフィルムを補強層に用いた場合、補強層が表面ハードコートの役割を兼ねることも可能である。同様に、反射防止処理を行ったフィルムを補強層に用いた場合、補強層が反射防止層の役割を兼ねることも可能である。
しかしながら、前記した補強層の例としてあげたPETやPEN,およびPC等は汎用の樹脂であり、それらの線膨張係数は一般に数10×10−6/℃と、本発明におけるディスプレイ用基板の線膨張係数の数倍にもなる。それらを補強層として用いた場合、線膨張係数の違いから、剥離や応力による反りの問題等が発生し、ディスプレイ用基板としては問題になる場合がある。従って、補強層として積層する材質としては、柔軟性と強度、さらに用途によっては透明性を有しつつ、かつ線膨張係数が低いものが理想である。
そのような材料として、セルロースを含有する不織布とセルロース以外の樹脂とからなり、セルロース成分が0.10重量%以上99重量%以下であり、セルロース以外の樹脂成分が1重量%以上99.9重量%以下である複合体からなる有機材料フィルムは、セルロースの線膨張係数線が極めて低いという特徴を生かし、有機材料からなるフィルムでありながら線膨張係数を5〜30×10−6/℃程度に押さえることができるため、特に理想的である。
ただし、該有機材料層を設ける場合には、セルロースの分解開始温度が約240℃であるため、240℃以下で使用するのが好ましい。この有機材料層は、セルロースを含有する不織布の空孔がセルロース以外の樹脂で充填されており、特に、セルロースとセルロース以外の樹脂の屈折率差が0.1以下、さらに好ましくは、屈折率差が0.05以下とすることでほぼ透明なものを得ることができるため、ディスプレイ用基板として好ましい。
セルロースを含有する不織布としては、静置培養法で得られるバクテリアセルロースから成るゲル状膜をドラムドライヤーによる定長乾燥や有機溶媒置換・乾燥法を用いて得る静置培養膜か、あるいは、静置培養または攪拌培養にて得られるバクテリアセルロースを精製後、高度に離解、分散させて分散液を調製し、該分散液から抄紙法あるいは塗布法のいずれかの方法で成膜し、乾燥して得られる樹脂含浸性に優れた不織布(紙)か、あるいは、木材(針葉樹および広葉樹)由来の精製パルプ、コットンリンターやコットンリント等からの非木材系の精製パルプ等の天然セルロースをミクロフィブリルのレベルにまで高度に微細化して得られる分散液を調製し、これを抄紙法あるいは塗布法のいずれかの方法で成膜し、乾燥させて得る不織布のいずれかが好ましい。
ここで抄紙法にて成膜した際の乾燥方法も、ドラムドライヤーによる定長乾燥や有機溶媒置換に置換後乾燥させる方法を用いると、空孔率範囲が40%以上95%以下と、比較的空孔率が高く、通気性に優れた不織布を得ることができる。
セルロース以外の繊維として熱可塑性樹脂繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維やシリカ等の無機物をセルロースと共に分散液中に混入して製造した不織布も用いることができる。特に低線膨張率や力学強度の観点からは、より高結晶性のものが好ましく、その点でセルロース繊維としては天然セルロース由来の繊維を用いる方が好ましい。セルロース以外の繊維を使用する場合にも結晶性の高い繊維を使用するのが耐熱性の観点からも好ましい。
セルロース以外の樹脂とは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、および前記熱硬化性樹脂又は前記光硬化性樹脂が硬化してなる樹脂硬化物より選択される少なくとも1種以上の樹脂である。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではないが、具体的に一例を示すと、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等がある。
熱硬化性樹脂としては、特に制限されるものではないが、具体的に一例を示すと、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等、その他工業的に供されている樹脂及びこれら樹脂2以上を混合して得られる樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂、アリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂等は透明性を有するため、好適に使用できる。
光硬化性樹脂としては、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えてもよい。また本発明において熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂と併用して用いる硬化剤、硬化触媒は、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂の硬化に用いられるものであれば特に限定されない。硬化剤の具体例としては多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂が挙げられ、硬化触媒の具体例としてはイミダゾール等があげられ、これらは単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
なお、前述した熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、および前記樹脂硬化物をセルロースを含有する不織布との複合体として用いず、1種類以上をそのままもしくは混合して補強層に用いることも可能である。この場合、不織布との複合体と比較して線膨張係数が大きくなるため、熱工程を経た後に固定するか、もしくは熱がかからない用途に対して用いることが望ましくコストを低減できる効果があるので、不織布との複合体と使い分けることが理想的である。
該有機材料層におけるセルロース成分は、線膨張率の観点から0.1重量%以上、透明性の観点から99重量%以下であることが好ましい。セルロース以外の樹脂成分は、1重量%以上であると複合体の透明性を高くするため適当であり、99.9重量%以下であることは、セルロースの物性を発現するために好ましい。より好ましい成分比は、セルロース成分/セルロース以外の樹脂成分が、1重量%以上90重量%以下/10重量%以上99重量%以下、もっとも好ましくは5重量%以上60重量%以下/40重量%以上95重量%以下である。
次に、本発明の複合体の原材料であるセルロースを含有する不織布の空孔率は、セルロース以外の樹脂の、セルロースを含有する不織布中への含浸性、得られた複合体の透明性、成形加工性の観点から20%以上であることが好ましい。また、複合体の線膨張率、強度、耐熱性の観点から99%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、空孔率が35%以上95%以下であり、とりわけ好ましくは、空孔率が50%以上95%以下である。空孔率が50%以上である場合、セルロースを含有する不織布成分へのセルロース以外の樹脂成分の含浸速度が速いためロールの巻き取り速度を速くすることができ生産性が向上する。また、含浸不足による気泡が複合体中に残らず、透明性に優れ、また吸水性の低い複合体を連続的に得ることができる。
また、空孔率が95%以下である場合、強度が高くなるため、製造工程において破断しにくいため、強度および耐熱性が高く、線膨張率の低い複合体を連続的に得ることもできる。つまり、空孔率が50%以上95%以下のセルロースを含有する不織布を用いると、透明性、吸水性、耐熱性、強度、線膨張率のバランスに優れた複合体を工業生産性の観点から現実的(例えば連続生産)に得ることができる。
ここで、(a)セルロースを含有する不織布の空孔率とは、該不織布10cm角の膜厚d(μm)とその重さW(g)から、以下の式を用いて空孔率Pr(%)を算出したものである。
Pr=(d−W×67.14)×100/d
本発明におけるセルロースを含有する不織布の膜厚は、該不織布を10cm角の正方形に切り取り、点接触型膜厚計(Mitutoyo(株)製、Code;547 401)を用いて、不織布の種々な位置について5点の測定を行い、その平均値を膜厚d(μm)とした。
該有機材料層はセルロース不織布骨格中に樹脂を含浸させた構造体であって、元来セルロース不織布が極めて低い熱膨張性(低線膨張率,5〜30×10−6/℃程度)を有していて、さらに該不織布に対し、屈折率の近い樹脂を複合化させることにより、ディスプレイ用基板の構成材として必要な高度な透明性も発現し得ることを利用する技術である。
特に本願発明においては、基板の補強層として多層化させるためには基板全体の加熱による各層のずれを発生させないためにも各層が低線膨張率を有していることが望ましく、該複合体の使用により、高強度であり、かつ透明性に優れた本願発明のディスプレイ用基板を提供することができる。
当然のことながら、該複合体の低線膨張率はセルロース不織布骨格が存在することに起因しているので、望ましくは、セルロースを含有する不織布として、空孔率が20%を超え99%以下の範囲にあるセルロースを含有する不織布を用いることにより、極めて低い線膨張率を有し、透明性にも優れた補強層としての機能が発現される。例えば、数μm〜20μm程度の繊維径をもつ汎用のセルロース不織布(紙)でも樹脂の屈折率をセルロースの屈折率と完全に一致させれば透明性の高い複合体を得ることができ、これを本願発明の補強層として使用することができる。
より好ましくは、本発明で使用するセルロースを含有する不織布は、トルエン中に浸液した状態で不織布に対して850nmの光を垂直に走査して得られる下記式(1)で定義される平均透過率Tr(av)が0.70以上、さらに好ましくは、0.75、特に好ましくは0.80以上である。この範囲内であれば、透明性が高く均一性に優れた有機材料層を提供することができる。即ち、複合体の透明性、均一性、線膨張率の観点から、Tr(av)が0.70以上であるセルロースを含有する不織布を使用するのが好ましい。
これは以下の原理により説明される。20℃での屈折率が1.496のトルエンに対し、若干の屈折率差のあるセルロースを含有する不織布を浸液させた際、不織布を構成する繊維が可視波長400nm程度より十分に小さくない繊維径の繊維を多数含む場合には、その界面での散乱が不織布膜の光透過の阻害因子として働くので、上記条件下での平均透過率の値は、不織布の構成繊維の微細性あるいは不織布のネットワーク構造の微細性を反映した物性値となる。本発明は、セルロースを含有する不織布中の空間を樹脂で埋めて複合化するものであるので、上記条件で得られる平均透過率Tr(av)は、得られる複合体の透明性にも当然相関する。
ここで、本発明では、Tr(av)の測定において、Turbiscan MA-2000 (英弘精機社)を使用する。本装置は、元々、溶液や分散液の経時安定性を評価するために開発された装置であるが、本発明で対象とされるような不織布をトルエン中に浸液させて後述する測定を実施した際に、不織布を構成する繊維径の情報や不織布中でのネットワーク構造の微細性の情報に極めて敏感であり、サンプル間の差別性を明確にする目的で極めて有効であることが発明者らによって見いだされた。
不織布のTr(av)の測定は、上記装置を用いて以下のように行う。まず、対象とする不織布サンプルを10mm×50mmの長方形に切り取り、トルエンを満たしたサンプル管中に浸液させ、不織布内部の気泡を除く目的で、真空脱泡処理を施す。
次に、図2に示すように、同装置に付属しているガラス製の試験管61内にトルエン62を高さ5cmとなるように注入し、この試験管61の底蓋63に接する程度の位置に、トルエンを含浸させた不織布サンプル64を、長方形の長辺方向が試験管61の長さ方向となるように試験管61の内壁に密着させて設置して、上蓋65をする。この際に、レーザー光が試験管61の長さ方向に対して垂直に、不織布サンプル64のほぼ中央付近に当たるようにする。図2(a)はこの測定方法を示す正面図であり、(b)は試験管の横断面図である。
次に、同装置の常法的な使用法に従い、850nmのレーザー光を試験管の長さ方向に走査させる。同装置は、常法にて40μm毎に計60mmの範囲で試験管長さ方向の透過率Trを検出するが、このプロファイルを確認し、不織布が当たっていると考えられる部分の中央30mm分を切り取り(対象とし)、合計750点の透過率Trの平均値、Tr(1)を算出する。次に、上記測定と同じ試験管にトルエンのみ高さ5cm分注入した状態(不織布は設置しない)で同様の測定を行い、やはり合計750点の透過率Trの平均値、Tr(2)を算出する。こうして得られたTr(1)とTr(2)を用い、式(1)によって不織布のトルエン含浸下での透過率、Tr(av)を求める。
Tr(av)=Tr(1)/Tr(2)‥‥(1)
本発明で用いるセルロースを含有する不織布は、該複合体の線膨張率をさらに低減させ、複合体としての透明性を広い温度範囲で発現させる観点からは、セルロースが最大繊維径として1500nm以下の微小な繊維径をもつ繊維であることが好ましい。
セルロース繊維の最大繊維太さが1500nm以下であることは、以下のようにしてSEM画像によって確認する。すなわち、本発明の複合体製造の材料となるセルロースを含有する不織布の表面に関して無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行う。得られたすべてのSEM画像中に繊維太さが1500nmを超える繊維が1本も確認できない場合、最大繊維太さが1500nm以下であると定義する。
ただし、画像において、数本の微細繊維が多束化して1500nm以上の繊維太さとなっていることが明確に確認できる場合には、1500nm以上の繊維太さの繊維とは見なさないものとする。セルロースの繊維径は小さいほど好ましい。これは、繊維径が可視波長域よりも小さくなれば、微細なセルロース繊維が形成するネットワークと樹脂との界面による散乱効果が低減し、いわゆるナノ効果によって透明性が向上するためと考えられる。
しかしながら、経験的には、例えば後述する、最大繊維径が400nm以下であり、平均繊維径では100nm以下であるバクテリアセルロースを使用する場合でも骨格のセルロースと樹脂との屈折率差が大きいと透明性は低減する。なお、本発明では最大繊維径は、SEMによる観察画像により認められる最大の繊維径を意味し、平均繊維径は同じくSEMによる観察画像において算出される少なくとも30本以上の繊維に対する数平均の繊維径を意味する。
具体的には、セルロースの繊維径方向の屈折率の文献値、1.54(“Polymer Handbook 3rd Edition”, Ed. by J.Brandrup and E.H.Immergut, John Wiley & Sons, New York (1989)V/126.)に対し樹脂の屈折率は1.54±0.10、さらに好ましくは1.54±0.05の範囲にあると広範な温度範囲で透明性を維持する。
また、ディスプレイ用基板に問われる耐熱性の観点からも、該セルロースとして用いるにはできる限り結晶化度の高いセルロース材料を選択することが好ましい。このような観点と上述した繊維径の微小性の観点とからバクテリアセルロースを用いて作製した不織布は本発明の補強層用のセルロース不織布として極めて好適に機能する。
さらに、上述した条件を満たす材料として、例えば、コットンリンターのようなコットンに由来する精製セルロース原料を微細化させて作製した不織布も挙げることができる。この場合、微細化には高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、グラインダーのような高度なフィブリル化を達成し得る装置を用い、目的とする繊維径となるまで微細化処理を続ける。この他、再生系セルロースに対して高結晶性であることが知られる木材パルプや天然系の非木材パルプ(マニラ麻,バガス,ケナフ,竹,わら等)からの精製セルロースを微細化して得る不織布を用いても高性能の補強層を提供することができる。
補強層を固定することにより、本発明におけるディスプレイ用基板としての機能を高めることができる。なお、主として樹脂からなる補強層を固定する際には、無機薄膜層を積層する際のような高温プロセスが完了した後に積層することで、樹脂の耐熱性の問題を回避することができる。セルロース成分を主とするような補強層は線膨張係数が小さいため、補強層として付与した場合に高温化で高い寸法安定性を保ち、配線の破断や基板の反り等の問題は起き難い効果を有する。
このようにして形成された粘土薄膜層と無機薄膜層の層構造体を有するディスプレイ用基板は、緻密でガスバリア性能に優れた無機薄膜層によって高いガスバリア性能を有し、酸素や水蒸気がディスプレイ内部へ侵入することを阻止する。よって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、無機エレクトロルミネッセントディスプレイ、および電子ペーパー等、幅広いディスプレイに適用することができる。特に、柔軟性を生かして、フレキシブル液晶ディスプレイやフレキシブル有機ELディスプレイ、および電子ペーパーのようなモバイル用途を目的としたディスプレイに好適である。
そのようなディスプレイ用途に必要な基板のガスバリア性能としては、酸素および水分によってデバイスを構成する部材の劣化を防ぐために、既存のSiOを樹脂フィルムにスパッタ等によって付着させたハイバリア膜等と同等以上の、前記層構造体の厚さが1mmの場合における酸素の23℃におけるガス透過量は24時間当たり0.1g/m以下であることが好ましく、また、前記層構造体の厚さが1mmの場合における40℃湿度90%における水蒸気の透過量は24時間当たり0.5g/m以下であることが望ましい。
特に駆動回路に有機半導体を用いている場合、もしくは有機ELディスプレイの場合には有機電子材料が酸素及び水分に対して極めて敏感であることから、上記の要求水準は最低レベル必要であり、特に有機ELディスプレイに関してはより高い酸素および水分に対するガスバリア性を付与することが必要になる。
本発明におけるディスプレイ用基板のガスバリア性能は、前記層構造体が有する無機薄膜層の種類と作製プロセス、及びそれらを保護する緩衝層の有無等によって大きく幅を有するが、特に有機ELディスプレイに好適なディスプレイ用基板として用いるには、前記層構造体の厚さが1mmの場合における酸素の24℃におけるガス透過量は24時間当たり0.001g/m以下であることが好ましく、0.0001g/m以下であることがより好ましく、0.00001g/m以下であることがさらに好ましく、0.000001g/m以下であることが特に好ましい。また、前記層構造体の厚さが1mmの場合における24℃湿度90%における水蒸気の透過量は24時間当たり0.01g/m以下であることが好ましく、0.001g/m以下であることがより好ましく、0.0001g/m以下であることがさらに好ましく、0.000001g/m以下であることが特に好ましい。
ディスプレイは、発光もしくは反射デバイス、それを駆動する回路や部材等、数多くの部品から構成されている。それらのなかには、形成時に高い温度を要求するものも少なくない。例えば、液晶ディスプレイやアクティブマトリックス型有機ELディスプレイ、もしくは電子ペーパー等で使われているシリコン系半導体からなる薄膜トランジスタ(TFT)回路は、一般に少なくとも200℃以上の形成温度を要求し、それより低温では特性が劣化するなどの問題を生じる。広く用いられている透明電極も、なるべく高温のほうがより抵抗の低いものを作ることができる。従って、ディスプレイの製造工程で用いられる基板の耐熱温度は高いことが理想であり、本発明におけるディスプレイ用基板は従来のプラスチック基板と比較し極めて高い耐熱温度を有するので好適である。
さらに、既存のガラス基板上に作る方法と同様の作製工程およびプロセス温度、および回路パターンを採用する場合には、配線の破断や寸法安定性の点から、40℃から160℃の範囲における線膨張係数を1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下にすることが好ましく、より好ましくは1×10−6/℃以上20×10−6/℃以下にすることが望ましい。本発明においては、前記のような線膨張係数の小さな有機材料からなる補強層を固定するか、線膨張係数の大きな樹脂等からなる層を付与しない、もしくはそういった樹脂層等はディスプレイに必要なデバイス等を高温で形成した後に固定することで、上記線膨張係数の要求を満足することができる。なかでも、前記したセルロース等の繊維を含有する線膨張係数の小さな有機材料からなる補強層を固定する方法が特に好ましい。
ディスプレイ用基板がほぼ無機材料からのみでなる場合は問題ないが、必要に応じて固定することが望ましい補強層、緩衝層、もしくは平滑化層等が耐熱性に乏しい有機材料等からなる場合、それらをディスプレイ用基板に付与した後にディスプレイの製造工程に投入することは、前記したTFT等の部品の形成温度に前記各層が耐えられないため困難な場合がある。そのような場合には、ディスプレイの製造工程において、前記各層が耐えられない高温プロセスを経た後、前記各層を固定することで、駆動回路や各種ディスプレイ構成部材の高温形成要求を満たすことができる。形成温度としては、少なくとも150℃、場合によっては100℃を超える場合には前記各層の耐熱性に問題が生じる場合があるため、そのような場合にはディスプレイ製造工程において少なくとも150℃、好ましくは100℃を超えるプロセスが終了後、前記各層を固定することが一般的には望ましい。
そのためには、粘土薄膜層が自立して扱える強度を有していることが一般には必要であり、自立強度を有する粘土薄膜層と無機薄膜層との層構造体に高温プロセスが必要なディスプレイ構成部材を形成した後、必要に応じて補強層、緩衝層、もしくは平滑化層等を固定することで、補強層、緩衝層、もしくは平滑化層等の耐熱性の問題を回避することが可能になる。
本発明におけるディスプレイ用基板を用いたディスプレイの製造方法の例を示す。
まず、本発明における基板の種類であるが、大きく分けて可視光域の光に対して透明であるか否かで、適用できるディスプレイが異なる。透過型の液晶ディスプレイおよびボトムエミッション型の有機ELディスプレイの場合、基板を光が透過する必要があるため、可視光域の光に対して透明な基板である必要がある。対して、反射型液晶ディスプレイ、トップエミッション型の有機ELディスプレイ、および電子ペーパーにおいては基板を光が透過する必要がないため、透明な基板でなくとも良い。
液晶ディスプレイでも有機ELディスプレイでも電子ペーパーにおいても、初期工程でディスプレイの画素を制御する駆動回路を基板上に形成する。駆動回路としては、TFTを用いたアクティブマトリクス回路、もしくは走査型のパッシブマトリクス回路のどちらでも良い。アクティブマトリクス回路のほうが、応答性や、特に有機ELディスプレイにおいては寿命の点で性能的に優れているが、回路コストはパッシブマトリクス回路のほうが安価であり、また、単純なエリア表示型の回路でも良く、駆動回路は表示の内容や用途に応じて適宜選択して用いることができる。
TFT回路はアモルファスシリコンを用いて形成しても良いが、本発明の特徴である基板の高耐熱性を利用して、アニール処理をして移動度を向上させたアモルファスシリコンを用いても良い。もしくは高キャリア移動度の低温ポリシリコンを基板に形成して用いることにより、ドライバーIC等も基板上に形成可能であるため部品点数および回路における接点部位も減らすことができ、接点部位の破断が起きにくい高信頼性のディスプレイを作ることができる。また、移動度を高めたTFT回路は、キャリア再結合型の自発光素子故に比較的高い移動度を要求する有機ELディスプレイ用の駆動回路に好適である。これら駆動回路の形成方法としては、既存のガラス基板上へ形成する手法がそのまま適用できるが、前述したように高温プロセスが望ましい工程が多数あるため、耐熱性に乏しい有機材料等からなる層を基板に固定する際にはこれらの工程の後に行うようにする。
シリコンのような無機半導体ではなく、ポリチオフェンやペンタセンのような有機半導体を用いてTFTを作製し、アクティブマトリクス回路を形成しても良い。この場合には基板の高耐熱性は不要であるが、有機半導体が酸素及び水分によって劣化することを防ぐためにガスバリア性を高くしておくことが好ましく、本発明におけるディスプレイ用基板はこの点からも好適である。
有機半導体を用いた駆動回路の形成方法としては、フォトリソグラフィー法によって形成しても良いし、インクジェット法のような印刷法によって形成しても良いし、両方の手法を併用して形成しても良い。印刷法によってTFT回路を形成する際の材料としては、半導体部分には有機半導体、絶縁層部分には低温硬化型ポリシラザンのような塗布型酸化ケイ素形成材料やポリビニルフェノールのような樹脂材料、配線材料としては金属や酸化金属の微粒子もしくは導電性高分子のような導電性物質を含む導電性インクを用いることができる。
上記駆動回路の上に、液晶ディスプレイなら対抗電極と配向膜に挟まれた液晶層およびカラーフィルター等を、有機ELディスプレイなら対抗電極に挟まれ発光およびキャリア移動に関与する有機層を、電子ペーパーなら対抗電極に挟まれ、例えば黒白等の帯電粒子が入ったボール状もしくはセル状等の表示部を形成する。透過型の液晶ディスプレイにおいては、基板側にバックライトを必要に応じて設ける。
液晶部位の配向および電圧の印加方法を含めた駆動方式にはTN、VA、IPS、OCBといった各種の方式があるが、本発明ではどの方式を用いても良く、またこれらに限定されるものではない。有機ELディスプレイにおける有機層の形成方法には蒸着法と溶媒に可溶な材料を用いた塗布法の大きく分けて2種類があるが、どちらの方法で形成しても良く、機能の異なる複数の有機層を積層した構造にして高性能化しても良い。
電子ペーパーの表示用部材としては、白と黒の帯電粒子をボール状のカプセルに入れたものやセル内にいれたもの、コレステリック液晶を用いたもの、油滴のサイズを変化させるものなどがあるが、本発明ではどの方式を用いても良く、またこれらに限定されるものではない。
透過型の液晶ディスプレイでは、対抗電極は両方とも透明である必要がある。ボトムエミッション型の有機ELディスプレイの場合、対抗電極のうち駆動回路側の電極は透明である必要がある。反射型液晶ディスプレイ、トップエミッション型の有機ELディスプレイ、および電子ペーパーの場合、対抗電極のうち駆動回路と反対側の電極が透明である必要がある。透明電極としては、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等が用いられるが、それらに限定されるものではない。
さらに、画面表面部に透明な保護層を設け、全体を封止する。保護層としては、高強度、柔軟性、耐久性、ガスバリア性、および耐摩耗性を有する材料が望ましく、特に有機ELディスプレイでは高いガスバリア性が必要である。それら保護層としては、透明な樹脂フィルムに無機材料もしくは無機材料と有機材料との積層構造からなるガスバリア層等を付与したものでもよいが、本発明における透明なディスプレイ用基板を保護層もしくは保護層の一部として用いることで、高いガスバリア性を有する保護層でディスプレイを封止することができるため、このような用途に本発明を用いるのも好適である。保護層に反射防止層を積層することで、画面に光が写りこんで視認性が悪化するのを防ぐことも出来る。
最後に、基板上に形成された表示部と、映像信号をもとにそれを駆動するドライバーIC等の周辺回路および電源等とを接続し、外枠等に実装し組み立てることでディスプレイが完成する。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
粘土として、天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)を使用した。
粘土1gと超純水49gとをプラスチック製のディスポ容器に入れ、自転−公転型攪拌脱泡装置AR−100(株式会社シンキー製)、すなわち軸の周りを公転しながら自転する容器を備えた撹拌装置を用いて、15分間攪拌し、粘土を分散させた。
この粘土分散液を一昼夜放置した後、剥離性付与剤としてシリコーン樹脂を表面に塗布した厚さ50μmのPETフィルム(大成ラミネーター株式会社製)を敷いたディスポーザブルのトレイ上に広げ、50℃の温度条件下で約1日かけてゆっくりと乾燥した。生成した粘土薄膜層をPETフィルムから剥離し、平均厚さ約60μmの粘土薄膜層を得た。得られた粘土薄膜層にはピンホール等の欠陥は目視では認められず、柔軟性を有していた。
次に、得られた粘土薄膜層を、はさみを用いて直径13cmの円形に切断した。そして、1気圧、温度24℃、湿度45%に保持されたクリーンルーム中で、スピンコーター(ミカサ株式会社製の1H−360S)を用いて、切断した粘土薄膜層にポリシラザンNL120A−20(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を塗布した。塗布方法としては、5インチシリコンウェハ用チャックで固定した円形の粘土薄膜層の中央にポリシラザンNL120A−20を数ミリリットル滴下し、直ちに300rpmで5秒間回転させて塗布した後、1000rpmで20秒回転させ余分なポリシラザンを振り切り、所定の液量のポリシラザンを粘土薄膜層に塗布する方法を用いた。
ポリシラザンの塗布された粘土薄膜層を、150℃のホットプレートの上に乗せ約10分加熱し、溶媒を蒸発させポリシラザン塗布面を乾燥させた後、該粘土薄膜層の裏面にも同様の方法で同じポリシラザンを塗布し、同様に150℃のホットプレートにて乾燥させた。
このポリシラザンを両面に塗布し乾燥させた粘土薄膜層を、オーブンを用いて焼成した。焼成条件は、大気下、250℃、1時間である。このような焼成によりポリシラザンをSiOに転化させ、無機薄膜層を形成させた。
さらに、スピンコートにおける回転速度を1000rpmから2000rpmへ変更した以外は全く同条件にて、上記のポリシラザン塗布工程及び焼成工程を再度実施し、膜厚約0.75μmの2層からなるSiOを粘土薄膜層の両面に有する(粘土薄膜層が2つの無機薄膜層で挟まれた)層構造体を得た。
この層構造体の水蒸気バリア性を測定するため、最小検出透湿度5×10−7g/m・day以下の検出精度を有する、株式会社クリエテック製のガス透過度測定装置「WOPET−003」を用い、水蒸気の透過量を測定した。測定ガス流入側の水蒸気圧力を800Pa、温度を40℃とした状態で16時間測定を継続実施したが、水蒸気の透過は全く検出されず、極めて高い水蒸気バリア性を有していることが分かった。
また、この層構造体の酸素ガスバリア性を測定するため、最小検出ガス透過度0.02cc/m・day・atmの検出精度を有する、株式会社MOCON製の酸素ガス透過度測定装置「OX−TRAN2/20」を用い、酸素の透過率を測定した。測定ガス流入側の酸素濃度を100%、温度を23℃、湿度を0%とした状態で221時間測定を継続実施したが、酸素ガスの透過は全く検出されなかった。
また、最小検出ガス透過度0.0005cc/m・day・atmの検出精度を有する前記装置「WOPET−003」を用い、酸素の透過量を測定した。測定ガス流入側の水蒸気圧力を200Pa、温度を40℃とした状態で4時間測定を継続実施したが、酸素の透過は全く検出されなかった。上記の結果より、極めて高い酸素ガスバリア性を有していることが分かった。
また、この層構造体の柔軟性を確認するため、半径10mmの円筒状に湾曲させたが、目視で確認できるクラックなどは発生しなかった。
さらにこの層構造体の線膨張係数を測定するため、セイコーインスツル株式会社製の熱機械分析装置「TMA/SS120」を用いて、40℃から300℃の範囲における線膨張係数を測定した。測定試料のサイズは幅3mm、測定長さは10mmとした。測定時は引張プローブを使用し、加重は5gで一定とした。昇温レートは1分当たり5℃とした。その結果、40℃から160℃の範囲における線膨張係数は8×10−6/℃で、どの温度領域でもほぼ一定であった。また、40℃から300℃の範囲における線膨張変化を最小二乗法フィッティングすることによって得られた線膨張係数は5×10−6/℃で極めて小さく、ディスプレイ用基板として用いるのに好適なものであった。
[実施例2]
食材として利用されている水含有BCゲルであるナタデココ(フジッコ社製,固形分率:0.5重量%)のサイコロ片を用い、これを十分に水洗(水流下での水への完全置換)したものを圧搾し、固形分12重量%としたBC/水分散体を調製し、該分散体に水を加え、セルロース濃度が1.0重量%となるように水で希釈し、家庭用ミキサーで10分間予備分散した後に、高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS3015H)を用いて、操作圧力80MPa下で4回の分散処理を実施した。次に、このセルロース濃度1.0重量%の分散液をさらに水でセルロース濃度0.20重量%となるように希釈し、再度家庭用ミキサーで5分間分散処理を行い、得られた分散液を、本発明の有機材料層の一部として使用する不織布の抄紙用分散液として使用した。
この抄紙用分散液を用い、バッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製自動角型シートマシーン)を用いて抄紙を行った。ただし、抄紙機の角型金属製ワイヤー(25cm×25cm)上にサイズを合わせたPET製の織物(繊維太さ:約40μm,460メッシュ)を、濾布として設置して抄紙用分散液938gを用いてサクション(減圧装置)使用下で抄紙を実施した。
濾布上に形成された湿紙上をさらに同じ濾布で覆い、この全体を金属製ローラーにて脱水し、セルロース濃度が12〜13重量%となるように調節した。得られた湿紙を、両面の濾布を剥がさないまま、iso-ブタノール中に浸漬し時々全体を軽くすすぎながら約20分間置換処理を行った後に、両面を濾布で挟んだ湿紙を金属板上に乗せ、その上に錘を乗せて定長で乾燥されるようにして、乾燥オーブン内にセットして、100℃で50分間乾燥させた。乾燥後、不織布を濾布から剥がすことにより、白色のセルロース不織布(膜厚:68μm,空孔率:69%)を得た。該セルロース不織布のSEM画像中では100nm以下の繊維径の極めて細い繊維のみが確認された。該セルロース不織布のトルエン含浸下での透過率分布の測定により、Tr(av)の値は、0.91であった。
次に熱硬化性樹脂先駆体のエポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ(株)製AER 250)100重量部を120℃で融解させ、硬化剤(m−キシリレンジアミン)18重量部との混合液を、上記で作製したセルロース不織布に含浸(含浸時間:5分以内)させ、プレス機内にて温度100℃、圧力9.81MPa下にて熱硬化(硬化時間:2時間)させることによって、セルロース不織布と硬化エポキシ樹脂との透明な複合体を得た。厚さは約70μmであった。
このセルロース不織布と硬化エポキシ樹脂との透明な複合体の線膨張係数を測定するため、実施例1と同様、セイコーインスツル株式会社製の熱機械分析装置「TMA/SS120」を用いて、40℃から160℃の範囲における線膨張係数を測定した。測定試料のサイズは幅3mm、測定長さは10mmとした。測定時は引張プローブを使用し、加重は10gで一定とした。昇温レートは1分当たり5℃とした。その結果、40℃から120℃の範囲における線膨張係数は17×10−6であり、120℃から160℃の範囲における線膨張係数は4×10−6であった。また、40℃から160℃の範囲における線膨張変化を最小二乗法フィッティングすることによって得られた線膨張係数は13×10−6/℃であった。
実施例1で作成したSiO膜を粘土薄膜層の両面に有する層構造体と、前記のセルロース不織布と硬化エポキシ樹脂の複合体を本発明における有機材料層(補強層)として、接着剤(フォーフロント社製のFRONT 107)を用いて気泡が入らないように注意深く貼り合せ、補強層を有するディスプレイ用基板を作製した。
該基板の線膨張係数を測定するため、前述と同様に、セイコーインスツル株式会社製の熱機械分析装置「TMA/SS120」を用いて、40℃から160℃の範囲における線膨張係数を測定した。測定試料のサイズは幅3mm、測定長さは10mmとした。測定時は引張プローブを使用し、加重は10gで一定とした。昇温レートは1分当たり5℃とした。
その結果、40℃から120℃の範囲における線膨張係数は20×10−6/℃であり、120℃から160℃の範囲における線膨張係数は4×10−6/℃であった。また、40℃から160℃の範囲における線膨張変化を最小二乗法フィッティングすることによって得られた線膨張係数は15×10−6/℃であり、ディスプレイ用基板として好適な低い線膨張係数を有することが分かった。
40℃から120℃の範囲における線膨張係数がセルロース不織布と硬化エポキシ樹脂との透明な複合体のみのそれより若干大きいのは、前記粘土膜との接着に用いた接着剤が樹脂からなり、その線膨張係数が前記複合体や前記粘土膜のそれより大きいためであると考えられる。
本発明のディスプレイ用基板を示す図である。 セルロースを含有する不織布のトルエン含浸下での平均透過率Tr(av)の測定方法を説明する図であり、(a)は正面図、(b)は試験管の横断面図である。
符号の説明
1 粘土薄膜層
2 無機薄膜層
3 緩衝層
4 補強層
5 平滑化層
61 試験管
62 トルエン
63 底蓋
64 不織布サンプル
65 上蓋

Claims (30)

  1. 粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層と、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有する層構造体を備えたことを特徴とするディスプレイ用基板。
  2. 前記層構造体は、前記粘土薄膜層の上下両側に前記無機薄膜層が隣接して又は他層を介して配されたものであることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用基板。
  3. 前記層構造体に、機械的強度を付与する補強層が積層されていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスプレイ用基板。
  4. 前記層構造体に、平滑性を向上させる平滑化層が積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  5. 前記層構造体に、クラック発生を抑制する緩衝層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  6. 前記粘土薄膜層が自立膜として利用可能な機械的強度を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  7. 前記粘土が天然粘土であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  8. 前記粘土が合成粘土であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  9. 前記粘土が、雲母、バーミキュライト、カオリナイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  10. 前記無機化合物が、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  11. 前記無機薄膜層が、ケイ酸アルカリ、金属アルコキシド、ポリシラザン、パーヒドロポリシラザン、及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む溶液から形成されたものであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  12. 前記補強層が、セルロースを含有する不織布とセルロース以外の樹脂との複合体からなる有機材料層であり、前記複合体中の前記不織布の含有率が0.1重量%以上99重量%以下、前記樹脂の含有率が1重量%以上99.9重量%以下であることを特徴とする請求項3〜11のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  13. 前記不織布の空孔率は20%を超え99%以下であることを特徴とする請求項12に記載のディスプレイ用基板。
  14. 前記不織布は、下記式(1)で定義される平均透過率Tr(av)が0.70以上であることを特徴とする請求項12または13に記載のディスプレイ用基板。
    Tr(av)=Tr(1)/Tr(2)‥‥(1)
    式中、Tr(1)は、トルエンが入っている試験管の内面に不織布を密着させ、この試験管の不織布の位置に、試験管の長さ方向に対して垂直に、波長が850nmの光を照射し、この光を直線に沿って移動しながら40μm毎に透過率を測定し、合計30000μmを移動して得られた全750の透過率の平均値であり、Tr(2)は、トルエンが入っていて不織布が入っていない試験管に対して、同じ方法で光を照射して得られた全750の透過率の平均値である。
  15. 前記不織布を構成するセルロースは、最大繊維径が1500nm以下であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  16. 前記不織布を構成するセルロースはバクテリアセルロースであることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  17. 前記不織布を構成するセルロースはコットンより得られたセルロースであることを特徴とする請求項12〜16のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  18. 全光線透過率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  19. 前記層構造体は、厚さが1mmの場合の温度23℃における酸素ガス透過量が、24時間当たり0.1g/m以下であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  20. 前記層構造体は、厚さが1mmの場合の湿度90%、温度40℃における水蒸気透過量が、24時間当たり0.5g/m以下であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  21. 40℃から160℃の範囲における線膨張係数が1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下であることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板。
  22. 請求項1〜21のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板を備えることを特徴とするディスプレイ。
  23. 前記ディスプレイが液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項22に記載のディスプレイ。
  24. 前記ディスプレイが有機エレクトロルミネッセンスディスプレイであることを特徴とする請求項22に記載のディスプレイ。
  25. 前記ディスプレイが電子ペーパーであることを特徴とする請求項22に記載のディスプレイ。
  26. 請求項1〜21のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板を製造する方法であって、
    基材上に前記粘土薄膜層を形成する工程と、前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成する工程と、を有することを特徴とするディスプレイ用基板の製造方法。
  27. 気相中における成膜プロセスである抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、又はスパッタリング法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする請求項26に記載のディスプレイ用基板の製造方法。
  28. 溶液からの成膜プロセスで形成された塗布膜を150℃以上1000℃以下の温度で焼成する方法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする請求項26に記載のディスプレイ用基板の製造方法。
  29. 前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成した後に、前記補強層を固定することを特徴とする請求項26〜28のいずれか一項に記載のディスプレイ用基板の製造方法。
  30. 請求項22〜25のいずれか一項に記載のディスプレイを製造する方法であって、
    ディスプレイ構成部品を100℃以上の温度で前記層構造体上に形成した後に、前記補強層、前記緩衝層、および前記平滑化層の少なくともいずれかを固定することを特徴とするディスプレイの製造方法。
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