JP6520939B2 - 複合体 - Google Patents
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Description
本発明者らは、特許文献1の記載を参照して、所定の処理が施されて表面にマイクロクラックが形成されたガラス基板上に樹脂層を形成して、その複合体の特性を評価したところ、ガラス基板に対して引張応力がかかると、割れやすい場合があることを見出した。
すなわち、本発明の第1の形態は、表面にマイクロクラックが存在するガラス基板と、前記ガラス基板上に配置された樹脂層とを備える複合体であって、前記マイクロクラック内部の少なくとも一部に前記樹脂層の樹脂が入り込み、前記マイクロクラックの深さdに対する、前記ガラス基板表面からの前記樹脂の入り込み深さdfの比(df/d)と、前記樹脂層の破断伸度TE(%)と、前記樹脂層の降伏応力σS(MPa)との積(比(df/d)×破断伸度TE×降伏応力σS)が400MPa・%以上であり、かつ前記樹脂層の引張弾性率Eresinが1.0GPa以上である、複合体である。
第1の形態において、ガラス基板の平均厚みが10〜200μmであることが好ましい。
第1の形態において、樹脂層の平均厚みが10〜100μmであることが好ましい。
第1の形態において、樹脂層がポリイミドを含むことが好ましい。
本発明の第2の形態は、第1の形態である複合体と、前記複合体のガラス基板上に形成される素子とを含む、電子デバイスである。
本発明の複合体の特徴点の一つとしては、樹脂層の特性(破断伸度、降伏応力、引張弾性率)を制御すると共に、樹脂層中の樹脂がガラス基板のマイクロクラック内の所定深さまで入り込むことが挙げられる。ガラス基板が割れやすい原因としては、ガラス表面に存在するマイクロクラックの存在が考えられ、ガラスに応力が加わると、このマイクロクラックが大きく発達して割れることが予想される。そこで、上記のようにマイクロクラック内部に所定の特性を示す樹脂が入り込むことにより、所望の効果が得られている。
複合体2は、ガラス基板4と、ガラス基板4上に配置された樹脂層6とを有する。ガラス基板4の樹脂層6側の表面にはマイクロクラック8があり、マイクロクラック8内部の少なくとも一部に樹脂層6中の樹脂が入り込んでいる。
複合体2は、画像表示パネル、太陽電池、薄膜2次電池などの電子デバイスの基板として用いられるものであってよく、各種の素子が形成されるものであってよい。複合体2は、巻芯に巻き取るものであってよく、ロールツーロール法による電子デバイスの製造に用いられるものであってよい。
なお、図1において、ガラス基板4の片側のみに樹脂層6を有するが、ガラス基板4を挟んだ両側にそれぞれ樹脂層6を有してもよい。ガラス基板4を挟んで配置される2つの樹脂層6は、同じ厚みを有しても異なる厚みを有してもよく、同じ物性(引張弾性率、熱膨張係数など)を有しても異なる物性を有してもよい。
ガラス基板4のガラスは、多種多様であってよく、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどが挙げられる。
ガラス基板4の平均厚みは、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。また、ガラス基板4の平均厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上である。
なお、上記平均厚みは、任意の10点以上のガラス基板4の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
マイクロクラック8の深さdの大きさは特に制限されないが、電子顕微鏡などで検出可能な範囲として、0.1μm以上の場合が多く、1.0μm以上の場合がより多い。また、上限は特に制限されないが、30μm以下の場合が多く、15μm以下の場合がより多い。
マイクロクラック8の幅Wの大きさは特に制限されないが、電子顕微鏡などで検出可能な範囲として、1nm以上の場合が多く、10nm以上の場合がより多い。また、上限は特に制限されないが、100μm以下の場合が多く、10μm以下の場合がより多い。
上記マイクロクラック8の深さdおよび幅Wの測定方法としては、複合体2を切断し、その断面を電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。
樹脂層6は、上記ガラス基板4上に配置される層であり、ガラス基板4の割れやすさを補強する補強層の役割を果たす。
樹脂層6は、上述したガラス基板4との間で、以下の式(1)の関係を満たす。
式(1): (比(df/d))×(樹脂層の破断伸度TE)×(樹脂層の降伏応力σS)≧400MPa・%
以下では、まず、これらの式中の各項目について詳述する。
上記比(df/d)は平均値であり、10個以上のマイクロクラックを観察し、それぞれのマイクロクラックにおける深さdと入り込み深さdfとを測定し、各マイクロクラックでの比(df/d)を計算し、計算された各マイクロクラックの比(df/d)を算術平均して得られる値である。
また、色素の分散性が悪い樹脂液の場合は、粘度を合わせた水溶性樹脂を観察用樹脂として用いることができる。実際に樹脂層を形成するために使用される樹脂層形成用組成物の粘度と、上記観察用樹脂と色素とを含む評価用組成物との粘度を合わせることにより、評価用組成物が深さdのマイクロクラック内部に侵入する程度が樹脂層形成用組成物を使用した場合と同程度となる。ここで、水溶性樹脂とはポリビニルアルコール(PVA)やヒドロキシセルロース(HEC)などを指す。また、深さdに関しても、マイクロクラック内表面に色素を吸着させて、破壊試験後の破壊起点を蛍光顕微鏡で観察することにより、求めることもできる。
破断伸度TE(%)の測定方法は、ASTM D882−12に従う。
降伏応力σSの測定方法は、JIS−C−2151:2006に従う。
上述したように、ガラス基板4が割れる原因としては、主に、ガラス基板4表面に存在するマイクロクラック8に応力が集中することにより、ガラス基板4が割れやすくなる。本発明者らは、所定の破断伸度TEおよび降伏応力σSを示す樹脂層6を形成しうる樹脂が、マイクロクラック8内部の所定の深さまで入り込むことにより、つまり、式(1)の関係を満たすことにより、図1中の白抜き矢印で示すような、マイクロクラック8の割れをさらに発達させる方向への応力を抑制できることを見出している。
より具体的には、上述のように、ガラス基板が割れる原因としては、マイクロクラックに応力が集中するためであるが、マイクロクラックに樹脂が入り込む(埋め込まれる)場合、マイクロクラックにかかるエネルギーが入り込んでいる深さに応じて樹脂に分配される。その際、樹脂によってなされる仕事量は以下の式(X)によって表される。
上記変数の内、d(マイクロクラックの深さ)はある工程を通ったガラスの最低強度に対応する最も深いマイクロクラックに該当し、同じロットのガラス基板であれば大きな変化はないため、略定数と見なすことができる。そうすると、仕事量W’の大きさを決めているのは、α、σ、および、εに該当する。本発明者らは、この3つのパラメータの積が所定値であれば、ガラス基板の割れが生じにくいことを見出した。
特に、樹脂層6の破断伸度TEが大きいほど、マイクロクラック内部の樹脂が破断に至るまでの許容応力の範囲が広い。また、樹脂層6の降伏応力σSが大きいほど、マイクロクラック内部の樹脂が降伏に至るまでの許容応力の範囲が広い。
引張弾性率Eresinの測定方法は、JIS−C−2151(2006年)に従う。
なお、上記平均厚みは、任意の10点以上の樹脂層6の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
フィラーとしては、繊維状、または、板状、鱗片状、粒状、不定形状、破砕品など非繊維状の充填剤が挙げられ、具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、カーボンナノチューブなどが挙げられる。金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。ガラス繊維または炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、樹脂層6は、樹脂を含浸した織布、不織布などで構成されてもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド(PI)、エポキシ(EP)等が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリル(PMMA)、ウレタン(PU)等が用いられる。
尚、樹脂層6は、光硬化性樹脂で形成されてもよく、共重合体、または混合物であってもよい。ロールツーロール法による電子デバイスの製造工程は加熱処理を伴う工程を含むことがあり、樹脂の耐熱温度(連続使用可能温度)は好ましくは100℃以上である。耐熱温度が100℃以上の樹脂としては、例えばポリイミド(PI)、エポキシ(EP)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル(PMMA)、ウレタン(PU)などが挙げられる。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、樹脂層6中の樹脂としてはポリイミド、エポキシが好ましく、ポリイミドがより好ましい。
なお、テトラカルボン酸類の残基(X)とはテトラカルボン酸類からカルボキシ基を除いたテトラカルボン酸残基を意図し、ジアミン類の残基(A)とはジアミン類からアミノ基を除いたジアミン残基を意図する。
また、Aはジアミン類からアミノ基を除いたジアミン残基を表し、以下の式(A1)〜(A8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなることが好ましい。なかでも、本発明の効果がより優れる点で、Aの総数の50モル%以上(好ましくは、80〜100モル%)が以下の式(A1)〜(A8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなることがより好ましい。Aの総数の実質的に全数(100モル%)が、以下の式(A1)〜(A8)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基からなることがさらに好ましい。
また、本発明の効果がより優れる点で、Aとしては、式(A1)で表される基および式(A6)で表される基が好ましく、式(A1)で表される基がより好ましい。
樹脂層6の製造方法は特に制限されず使用される材料に応じて適宜最適な条件が選択されるが、本発明の効果がより優れる点で、ガラス基板4上に液状の樹脂組成物を塗布し固化させて樹脂層6を形成する方法が挙げられる。
以下、ポリイミド樹脂層の製造方法の好適形態について詳述する。該製造方法は、以下の工程(1)および工程(2)を有することが好ましい。
工程(1):熱硬化により、上記式(I)で表されるポリイミド樹脂となる硬化性樹脂をガラス基板4上に塗布して、塗膜を得る工程
工程(2):塗膜に加熱処理を施し、ポリイミド樹脂層を形成する工程
以下、それぞれの工程の手順について詳述する。
工程(1)は、熱硬化により上記式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂となる硬化性樹脂をガラス基板4上に塗布して、塗膜を得る工程である。
なお、硬化性樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン類とを反応させて得られるポリアミック酸を含み、テトラカルボン酸二無水物の少なくとも一部が下記式(Y1)〜(Y4)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物からなり、ジアミン類の少なくとも一部が下記式(B1)〜(B8)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種のジアミン類からなることが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン類との混合比率は特に制限されないが、ジアミン類1モルに対して、テトラカルボン酸二無水物を好ましくは0.66〜1.5モル、より好ましくは0.9〜1.1モル、さらに好ましくは0.97〜1.03モル反応させることが挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン類との反応の際には、必要に応じて、有機溶媒を使用してもよい。使用される有機溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾ−ル、フェノ−ル、p−クロルフェノール、2−クロル−4−ヒドロキシトルエン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが使用可能であり、2種以上を併用してもよい。
また、上記反応の際には、必要に応じて、上記式(B1)〜(B8)で表される化合物からなる群から選択されるジアミン類以外の他のジアミン類を合わせて使用してもよい。
ポリアミック酸が末端にアミノ基を有する場合は、テトラカルボン酸二無水物を添加してよく、ポリアミック酸の1モルに対して、カルボキシル基が0.9〜1.1モルとなるように添加してよい。ポリアミック酸が末端にカルボキシル基を有する場合は、ジアミン類を添加してよく、ポリアミック酸の1モルに対し、アミノ基が0.9〜1.1モルとなるように添加してよい。なお、ポリアミック酸が末端にカルボキシル基を有する場合、酸末端は水または任意のアルコールを加えて末端の酸無水物基を開環させたものを用いてもよい。
後から添加するテトラカルボン酸二無水物は、式(Y1)〜(Y4)で表される化合物であることがより好ましい。後から添加するジアミン類は芳香環を有するジアミン類が好ましく、式(B1)〜(B8)で表される化合物であることがより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物類またはジアミン類を後から添加する場合、式(2−1)または式(2−2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸の重合度(n)は1〜20が好ましい。重合度(n)がこの範囲であると、硬化性樹脂の溶液中のポリアミック酸濃度が30質量%以上としても硬化性樹脂の溶液を低粘度にできる。
例えば、溶媒を用いてもよい。より具体的には、硬化性樹脂を溶媒に溶解させ、硬化性樹脂の溶液(硬化性樹脂溶液)として用いてもよい。溶媒としては、特にポリアミック酸の溶解性の点から、有機溶媒が好ましい。使用される有機溶媒としては、上述した反応の際に使用される有機溶媒が挙げられる。
なお、硬化性樹脂溶液中に有機溶媒が含まれる場合、塗膜の厚みの調整、塗布性が良好にできる量であれば、有機溶媒の含有量は特に制限されないが、一般的に硬化性樹脂溶液全質量に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。
また、必要に応じて、ポリアミック酸の脱水閉環を促進するための脱水剤または脱水閉環触媒を合わせて使用してもよい。例えば、脱水剤としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。また、脱水閉環触媒としては、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。
上記処理により得られる塗膜の厚みは特に制限されず、上述した所望の厚みのポリイミド樹脂層が得られるように適宜調整される。
工程(2)は、塗膜に加熱処理を施し、ポリイミド樹脂層を形成する工程である。本工程を実施することにより、例えば、硬化性樹脂に含まれるポリアミック酸の閉環反応が進行し、所望の樹脂層が形成される。
加熱処理の方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、塗膜付き支持基材を加熱オーブン中に静置して加熱する方法)が適宜使用される。
加熱温度は特に制限されないが、300〜500℃であることが好ましく、残留溶媒率が低くなると共に、イミド化率がより上昇し、本発明の効果がより優れる点で、350〜450℃がより好ましい。上記加熱温度では主にポリアミック酸の閉環反応が進行するため、以後、上記温度をイミド化温度とも称する。なお、後述するように、本発明の効果がより優れる点で、イミド化温度まで徐々に加熱温度を昇温していくことが好ましい。
加熱時間は特に制限されず、使用される硬化性樹脂の構造により適宜最適な時間が選択されるが、残留溶媒率が低くなると共に、イミド化率がより上昇し、本発明の効果がより優れる点で、室温からイミド化温度への昇温時間が30〜180分が好ましく、60〜120分がより好ましい。また、後述する乾燥加熱処理を実施する場合は、乾燥加熱処理の際の温度からイミド化温度への昇温時間が上記範囲であればよい。なお、昇温する際の昇温速度は特に制限されず、略一定速度(一定昇温速度)で昇温することが好ましく、加熱開始温度(乾燥加熱処理を実施した場合は乾燥温度)と所定のイミド化温度との差を、所定の昇温時間で除した値であることが好ましい。具体的には、加熱開始温度が120℃で、イミド化温度が350℃で、昇温時間が120分の場合、昇温速度としては(350−120)/120≒1.9℃/分程度が好ましい。
また、イミド化温度での保持時間は30〜120分が好ましい。
加熱の雰囲気は特に制限されず、例えば、大気中下、真空下または不活性ガス下にて実施される。
なお、加熱処理は、異なる温度で段階的に実施してもよい。
なお、上記加熱温度での処理の前に、必要に応じて、塗膜中の揮発成分(溶媒)を除去するための乾燥加熱処理を実施してもよい。乾燥加熱処理の温度条件は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、40〜200℃での加熱処理が好ましい。また、乾燥時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、15〜120分が好ましく、30〜60分がより好ましい。なお、乾燥加熱処理は、異なる温度で段階的に実施してもよい。
よって、本工程(2)の好適形態の一つとしては、上記温度での乾燥加熱処理を実施した後、上記350〜450℃での加熱処理をさらに実施する形態が挙げられる。
ポリイミド樹脂のイミド化率は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、99.0%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましい。
イミド化率の測定方法は、硬化性樹脂を窒素雰囲気下で350℃の2時間加熱した場合を100%のイミド化率として、硬化性樹脂のIRによるスペクトルにおいて加熱処理前後で不変のピーク強度(例えば、ベンゼン環由来のピーク:約1500cm−1)に対する、イミドカルボニル基由来のピーク:約1780cm−1のピーク強度の強度比により求める。
上述した複合体は、ガラス基板4と樹脂層6とを備える。
複合体の光線透過率は特に制限されないが、背面基板に光を透過させる必要が無いトップエミッションのOLED用途に適応する場合、90%以下でもよく、80%以下でも支障はない。
電子デバイスとしては、画像表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池、撮像素子(CCD、CMOSなど)、圧力センサ、加速度センサ、生体センサなどが挙げられる。画像表示パネルとしては、液晶パネル(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELパネル(OLED)、電子ペーパなどが挙げられる。電子デバイスは、上記構成の複合体、および複合体上に形成される素子を有する。
以下の例では、ガラス基板として、ガラス基板X(平均厚み100μm、幅方向厚み偏差1μm以下、無アルカリガラス、熱膨張係数4×10−6/℃、引張弾性率77GPa)を使用した。ガラス基板Xの表面上にはマイクロクラックが多数存在していた。マイクロクラックの幅Wは10〜100nm程度であり、深さdは10μm以下であった。
なお、ガラス基板Xは、フロート法で作製した。具体的には、溶融スズ上で溶融ガラスを流動させて帯板状に成形し、成形したガラスを徐冷した後、徐冷したガラスを所望のサイズに切断した。徐冷工程および切断工程において、ガラスを圧縮空気の空気圧で支持し、ガラスが固体物と触れないようにした。切断工程では、非接触切断法であるレーザ切断法を用いた。
パラフェニレンジアミン(10.8g、0.1mol)を1−メチル−2−ピロリドン(226.0g)に溶解させ、室温下で攪拌した。これにBPDA(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)(29.4g、0.1mol)を1分間で加え、室温下2時間攪拌し、上記式(2−1)および/または式(2−2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を含む固形分濃度20質量%のポリアミック酸溶液(P1)を得た。この溶液の粘度を測定したところ、20℃で3000センチポイズであった。
粘度は、(株)トキメック社製、DVL−BII型デジタル粘度計(B型粘度計)を用い、20℃における回転粘度を測定したものである。
なお、ポリアミック酸中に含まれる式(2−1)および/または式(2−2)で表される繰り返し単位中のXは式(X1)で表される基、Aは式(A1)で表される基であった。
初めに、ガラス基板Xを純水洗浄した後、さらにUV洗浄して清浄化した。
次に、ポリアミック酸溶液(P1)をスピンコーター(回転数:2000rpm、15秒)にてガラス基板Xの第1主面上に塗布して、ポリアミック酸を含む塗膜をガラス基板X上に設けた(塗膜量100g/m2)。
なお、上記ポリアミック酸は、上記式(Y1)で表される化合物と、式(B1)で表される化合物とを反応させて得られる樹脂である。
次に、大気中、60℃で30分加熱し、その後120℃で30分加熱し、さらに350℃まで2時間かけて昇温し、350℃で1時間保持して、塗膜を加熱して、樹脂層(平均厚み:25μm)を形成した。形成された樹脂層中には、以下の式で表される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂(式(I)中のXが式(X1)で表される基、Aが式(A1)で表される基からなる)が含まれていた。なお、イミド化率は、99.7%であった。
塗膜の加熱条件を、60℃で30分加熱し、その後120℃で30分加熱し、さらに直接350℃のオーブンに入れ1時間加熱した以外は、例1と同様の方法で、ガラス複合体を得た。
例1と同じ方法で樹脂層(ポリイミド膜)を成膜した後、ポリイミド膜を一旦剥離し、別のガラス基板Xと重ね合わせ、三共製「HAL−TEC」を用い、押し込み量を1mmとして大気下にてロール積層した。
(「df/d」)
マイクロクラックの深さdは、ガラス基板Xに対して後述する破壊試験を実施した後、破壊起点を光学顕微鏡による直接観察することにより得た。
また、樹脂の入り込み深さdfの測定では、まず、ガラス基板Xの表面に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBM903)を0.1質量%溶解させたイソプロピルアルコール溶液をスピンコート(2000rpm)により塗布した。次に、80℃にて10分間乾燥後、フルオレセインイソチオシアネート(濃度:0.01(mmol/l))と水溶性樹脂(ポリビニルアルコール)とを含む水溶液をスピンコーター(回転数:2000rpm、15秒)にてガラス基板Xの第1主面上に塗布した。塗布処理後、ガラス基板Xを純水で3回リンスし、乾燥させた後、後述する破壊試験を実施した後、蛍光顕微鏡(Olympus)を用いて破壊起点を観察し、入り込み深さdfを観察した。なお、上記水溶液中でのポリビニルアルコールの濃度は、水溶液の粘度が上記ポリアミック酸溶液(P1)の粘度と同程度となるように調整した。
また、上記では入り込み深さdfを蛍光顕微鏡にて測定する方法を示したが、得られた複合体に対して後述する破壊試験を実施した後、破壊起点を光学顕微鏡による直接観察したところ、上記蛍光顕微鏡より得られた入り込み深さdfと同程度の値が観測された。
なお、顕微鏡での測定が困難な場合は、破壊力学の基礎式d=(K/2σ)2(『セラミックスの破壊学』P68)より、破壊応力・応力拡大係数から理論値も求め、その値を使用した。(樹脂層の破断伸度TE)
樹脂層(ポリイミド樹脂層)の破断伸度TEは、ASTM D882−12に従って、測定した。
(樹脂層の降伏応力σSおよび引張弾性率Eresin)
樹脂層(ポリイミド樹脂層)の降伏応力σSおよび引張弾性率Eresinは、JIS−C−2151:2006に従って、測定した。
なお、樹脂層(ポリイミド樹脂層)の破断伸度TE、樹脂層の降伏応力σS、および、樹脂層の引張弾性率Eresinについては、得られた複合体から樹脂層を引きはがして上記測定を実施した。樹脂層の引きはがしができない場合は、フッ酸にてガラス基板を溶かして、測定用の樹脂層を得た。
例1〜3で用意した樹脂層が存在する場合のガラス基板の平均破壊強度を、図8の曲げ試験装置により測定した。
以下では、まず、図8を参照して、樹脂層が存在しない場合のガラス基板の平均破壊強度の測定方法について説明する。
曲げ試験装置10は、図8に示すように、第1の支持盤としての上側支持盤14、第2の支持盤としての下側支持盤16を備え、上側支持盤14と下側支持盤16との間で試験シート18を湾曲させる。
試験シート18は、平均破壊強度を知りたいガラス基板と同時期に作製されたガラス基板を加工して作製される。同時期に作製されたガラス基板(例えば同一ロットのガラス基板)は、表面に同程度の傷を有しているとみなすことができる。尚、試験シート18は、平均破壊強度を知りたいガラス基板そのものから切り出されてもよい。
上側支持盤14は、試験シート18を支持する。上側支持盤14の支持面14aは、下向きの平坦な面である。上側支持盤14の支持面14aには、例えばテープなどで試験シート18の一方の短辺部が固定される。
下側支持盤16は、上側支持盤14と同様に、試験シート18を支持する。下側支持盤16の支持面16aは、上向きの平坦な面である。下側支持盤16の支持面16aには、矩形状の試験シート18の他方の短辺部が載せられ、静止摩擦力で固定される。下側支持盤16の支持面16aには、試験シート18の位置ずれを防止するため、試験シート18の他方の短辺部と当接するストッパ17が設けられる。
この曲げ試験装置10では、先ず、作業者は、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間の間隔Dを調整し、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させる試験シート18に所定の引張応力を発生させる。
σ=A×E×t/(D−t)・・・(2)
上記式(2)中、Aは本試験に固有の定数(1.198)、Eは試験シート18の引張弾性率、tは試験シート18の厚みである。式(2)から明らかなように、間隔D(D>2×t)が狭くなるほど、引張応力σが大きくなる。
そうして、作業者は、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させる試験シート18にクラックが形成されるか否か調べる。クラックが形成されるか否かは、クラックが形成されるときに生じるAE(Acoustic Emission)波の有無を検出するAEセンサで確認する。
試験シート18にクラックが生じない場合、作業者は、互いに平行な上側支持盤14の支持面14aと下側支持盤16の支持面16aとの間の間隔Dを狭める。これにより、上側支持盤14と下側支持盤16との間で湾曲させる試験シート18に前回よりも高い引張応力が発生する。
5枚の試験シート18の破壊強度の平均値が、5枚の試験シート18の平均破壊強度として用いられる。
σ=A×E×t/(D’−t)・・・(3)
上記式(3)中、Aは本試験に固有の定数(1.198)、Eはガラス基板の引張弾性率、tはガラス基板の厚み、D’は「D’=D−2×u」の式から算出される値である。uは樹脂層の厚みを表す。樹脂層の存在によって、ガラス基板の上端と下端の間隔が間隔Dよりも2×uだけ短くなる。尚、樹脂層の存在によるガラス基板の中立面の変位量は、ガラス基板の厚みtの5%以下であり、引張応力σの計算結果にほとんど影響を与えないので、無視する。中立面とは、引張応力も圧縮応力も生じない面であって、樹脂層が存在しない場合、ガラス基板の板厚方向中心面である。中立面の変位量は、材料力学の一般的な式を用いて算出できる。ガラス基板が割れたときの引張応力σbが破壊強度として用いられる。
一方、本発明の要件を満たさない例2および3では、所望の効果は得られなかった。
4 ガラス基板
6 樹脂層
8 マイクロクラック
8a 線状のマイクロクラック
8b 点状のマイクロクラック
10 曲げ試験装置
14 上側支持盤
16 下側支持盤
17 ストッパ
18 試験シート
70 有機ELパネル(OLED)
71 有機EL素子
72 画素電極
74 有機層
76 対向電極
78 封止板
80 液晶パネル
82 TFT基板
83 TFT素子
84 CF基板
85 カラーフィルター素子
86 液晶層
90 太陽電池
91 太陽電池素子
92 透明電極
94 シリコン層
96 反射電極
98 封止板
100 薄膜2次電池
101 薄膜2次電池素子
102 透明電極
104 電解質層
106 集電層
108 封止層
109 封止板
110 電子ペーパ
111 電子ペーパ素子
112 TFT層
114 電気工学媒体を含む層
116 透明電極
118 前面板
Claims (5)
- 表面にマイクロクラックが存在するガラス基板と、前記ガラス基板上に配置された樹脂層とを備える複合体であって、
前記マイクロクラック内部の少なくとも一部に前記樹脂層の樹脂が入り込み、
前記マイクロクラックの深さdに対する、前記ガラス基板表面からの前記樹脂の入り込み深さdfの比(df/d)と、前記樹脂層の破断伸度TE(%)と、前記樹脂層の降伏応力σS(MPa)との積(比(df/d)×破断伸度TE×降伏応力σS)が400MPa・%以上であり、かつ
前記樹脂層の引張弾性率Eresinが1.0GPa以上である、複合体。 - 前記ガラス基板の平均厚みが、10〜200μmである、請求項1に記載の複合体。
- 前記樹脂層の平均厚みが、10〜100μmである、請求項1または2に記載の複合体。
- 前記樹脂層が、ポリイミドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体と、前記複合体のガラス基板上に形成される素子とを含む、電子デバイス。
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