JP2007067392A - 電子素子用部材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】導電性の高い配線を有し、フレキシブルでありながら、難燃性、耐熱性を備えた電子素子用部材を提供する。
【解決手段】柔軟性を有する基板と、前記基板上に形成され、電気回路としての役割を担う配線3と、を有する電子素子用部材であって、前記基板は粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層1と、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主成分とする無機薄膜層2とを有することを特徴とする電子素子用部材。
【選択図】図1

Description

本発明は、粘土薄膜層を有する基板に電気回路としての役割を担う配線を備えた、電子素子用部材に関する。
携帯電話やコンピューターといった電化製品を構成する電子回路は、電気回路配線が形成された基板上に、ICやLSIなどの集積回路、抵抗やコンデンサーなどの電子部品を、ハンダ付け、圧着接合、もしくは銀ペーストのような導電性ペースト等によって配線と接合して基板上に実装することで組み立てられている。それら電子部品が実装される基板は、一般的には柔軟性のないリジットな基板であるが、近年は部品実装の高密度化、携帯電話に代表される回転及び変形を要求する電化製品の増大、及び電子ペーパーのようなフレキシブルを特徴とするデバイス等、基板に対するフレキシブル化への要請が高まっており、フレキシブル基板への需要及び要求も増大している。
高密度実装のため柔軟性が要求される小型電子機器や、コネクタ間を配線するフィルム状配線材等のフレキシブル基板には、現状、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォンといった汎用の樹脂、特殊なガラスエポキシ基板、もしくは高耐熱性のポリイミド樹脂等、柔軟性のある材料が用いられている。
それらフレキシブル基板は柔軟性を確保するため樹脂材料からなる、もしくは少なくとも樹脂材料を主要な成分として含有しており、あまり高い耐熱性及び難燃性は有していない。従って、フレキシブル基板に配線を形成する際には、一般的には高温のプロセスを必要としない、銅箔等の抵抗率の低い金属箔を粘着層を介して貼りつける、もしくはメッキ法や真空蒸着法等により金属膜を基板上に体積させる方法により基板全面に金属層を形成した後、配線に不要な金属部分をエッチングするサブトラクテイブ法が用いられる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法は配線として不要な箇所を取り除く方法であるため材料に無駄が多く、エッチング工程が必要なためコストの高いマスクの形成工程を必要とし、また廃液の処理に多大なコストを必要とし環境への負荷も大きいという問題を有している。
上記のサブトラクテイブ法の問題を改善するため、金属や酸化金属の微粒子、有機金属化合物、もしくは導電性高分子等からなる塗布及び印刷可能な導電性インク、例えば導電性ペーストなどを用いて、印刷法のような塗布法により電気回路配線を形成する手法が、特に印刷手法と相性の良いフィルム状のフレキシブル基板用途、及び大面積に渡って配線を形成しなければならないフラットパネルディスプレイの駆動回路用途等に、検討もしくは採用されている。
この方法は、配線が必要な箇所に必要な分量だけ導電性インクを塗布もしくは印刷すれば良く、材料の使用効率がよいばかりでなく、一般に高コストなフォトリソグラフィー工程を必要とするマスク作製工程が不要で、かつ廃液も出ないため、コスト及び環境負荷の観点から有利な方法である。特に、RFIDに代表される無線タグの分野においては、タグが使い捨てで使われる用途において特にコストを抑えることが必須であり、アンテナを含む電気回路配線を印刷法で安価に形成する技術の開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、前述した導電性ペーストのような導電性インクを用い回路配線を形成する手法において、十分に高い導電率の配線を得るためには、塗布後、一般に300℃以上の高温で焼成する必要があり、耐熱性が高く、難燃性の材料、例えばガラス基板やシリコン基板等を基板に用いる必要がある。
前記のような樹脂材料を用いたフレキシブル基板の場合、一般に樹脂材料の耐熱性が低いため、低抵抗の配線を得るための高温焼成が困難であり、導電性インクの焼成を樹脂基板が耐えられる比較的低い温度で行わなければならない。しかしながら、そのような低温では導電性インクの焼結が十分進まず、金属箔や真空蒸着で得られる配線と比較して一般的に導電性能が劣るという問題がある。ポリイミド樹脂は比較的高耐熱であるが、それでも約400℃が上限であり、また高価であるという問題がある。そのため、無線タグのようなコストが最重視される用途に使うのは困難である。
また、樹脂基板は一般に線膨張係数が大きく、熱履歴を経ることによる応力で配線が破断しやすい等の欠点を有するため、仮に高耐熱であっても微細配線を高温焼成で樹脂基板上に形成することは困難である。さらに、樹脂は一般に燃えやすいので、電子部品の発熱やショート等には対策が必要となる場合がある。従って、無線タグのような安価かつ高い導電性を必要とする用途、もしくは高い難燃性を有する用途に対して満足するフレキシブル基板及び電気回路配線の形成方法は現時点では未だ確立していない。
特開2003−124724号公報 「実装技術ガイドブック2005(電子材料2005年7月号別冊)」、アイパルス株式会社、p30(2005)
本発明は、導電性の高い配線を有し、フレキシブルでありながら、難燃性、耐熱性を備えた電子素子用部材を提供することを目的とする。
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、粘土を用い、それを例えば厚みが1nm程度のサイズのシート状の粘土粒子を配向して積層させることによって、緻密でピンホールがなく耐熱性の高い粘土薄膜層を形成し、その粘土薄膜層を基板の主要構成要素とし、その基板に電気回路配線を形成することで、本発明をなすに至った。
すなわち、本願発明は、以下の通りである。
(1)柔軟性を有する基板と、前記基板上に形成され、電気回路としての役割を担う配線と、を有する電子素子用部材であって、前記基板は粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層を有することを特徴とする電子素子用部材。
(2)前記基板は粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層と、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有する層構造体を有することを特徴とする上記(1)記載の電子素子用部材。
(3)前記配線が導電性インクからなることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電子素子用部材。
(4)前記基板に、機械的強度を付与する補強層が付与されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(5)前記基板と前記配線との間に、基板の平滑性を向上させる平滑化層が付与されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(6)前記粘土が天然粘土であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(7)前記粘土が合成粘土であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(8)前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(9)前記無機化合物が、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする上記(2)〜(8)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(10)前記無機薄膜層が、ケイ酸アルカリ、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む溶液から形成されたものであることを特徴とする上記(2)〜(9)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(11)前記基板の40℃から300℃の範囲における線膨張係数が1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下であるであることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(12)前記基板の酸素指数が50以上であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
(13)上記(2)〜(12)のいずれか一項に記載の電子素子用部材を製造する方法であって、前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に隣接して又は他層を介して形成する工程を有することを特徴とする電子素子用部材の製造方法。
(14)気相中における成膜プロセスである抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、又はスパッタ法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする上記(13)に記載の電子素子用部材の製造方法。
(15)溶液からの成膜プロセスで形成された塗布膜を600℃以下の温度で焼結する方法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする上記(13)に記載の電子素子用部材の製造方法。
(16)前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成した後に、前記補強層、もしくは前記平滑化層のいずれか1つ以上を付与する工程を有することを特徴とする上記(13)〜(15)のいずれか一項に記載の電子素子用部材の製造方法。
(17)上記(3)〜(12)のいずれか一項に記載の電子素子用部材を製造する方法であって、導電性インクを塗布又は印刷後、600℃以下で焼結する方法で、前記配線を形成することを特徴とする電子素子用部材の製造方法。
本発明の電子素子用部材は、フレキシブルでありながら、難燃性、耐熱性を備え、導電性能の高い配線を有する。このため、無線タグ用アンテナのような安価で高導電率の配線を要する電子素子用部材を提供することができる。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明では、粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有し、柔軟性を有する粘土薄膜層を形成し、それを基板の成分とすることで電子素子用部材を形成する。粘土粒子は、酸素やケイ素を中心として構成される厚さが約0.22nmの四面体層や八面体層が1〜3層積層された、数十nm〜5μm程度の長軸方向の大きさを有するアスペクト比の大きなシート状の層状無機化合物である。
このような粘土粒子からなる粘土としては、天然粘土、合成粘土のいずれも用いることができる。例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイト等を好適に用いることができる。中でもモンモリトナイトは柔軟性に優れるため、好ましい。
粘土薄膜層を形成する際には、例えば天然スメクタイト若しくは合成スメクタイト又はそれらの混合物を用い、この粘土を水又は水を含む溶液に加え、十分に攪拌することで、小さな粘土粒子が均一に分散した粘土分散液を調整する。このとき、粘土分散液の濃度が高すぎる場合には粘土が細かく分散しないため、粘土薄膜層の均一性が低下するおそれがある。粘土分散液の好ましい濃度は粘土の種類に依存するが、概ね1〜3質量%である。
次に、この粘土分散液を基材上に展開、静置し、粘土粒子を沈降させつつ粘土分散液の液体成分をゆっくり蒸発させ、粘土粒子が堆積した粘土薄膜層を形成する。粘土薄膜層の膜厚は、取り扱い性の観点から5μm以上が好ましく、粘土薄膜の耐クラック性及びコストの観点から500μm以下が好ましい。より好ましい範囲は、20μm以上200μm以下である。
このとき、粘土薄膜層を堆積させる基材は、粘土薄膜層を加熱等により基材から剥離できれば、特に限定されるものではない。ただし、回路基板として用いるのに必要な平滑性を出しやすくするため、表面平滑性の良いプラスチック基板やガラス基板等が好ましい。
このようにして粘土薄膜層を形成することで、1mm以下の厚さでも自立して扱える強度を有する粘土薄膜層を得ることもできる。薄膜において自立して扱える強度は、その膜厚に大きく依存するが、例えば10μm以上の膜厚を有する薄膜については、引っ張り強度が20MPa以上であれば、自立膜として扱うことは一般に可能である。
粘土薄膜層が自立して使える強度を有する場合、後述する無機薄膜層を形成する工程において、粘土膜のみからなる膜に直接無機薄膜層を形成できるため、好ましい。また、何らかの支持体に仮接着等せずに直接粘土膜を取り扱ってプロセスを実施できるため、仮接着に用いる接着剤の耐熱性等の束縛を受けず、プロセスの幅を広げることができる。さらに支持体を剥離する等のプロセス上の工程が不要になり、コストダウンの点からも効果的である。
しかしながら、粘土薄膜層が剥離後自立膜として使える強度を有しない場合には、粘土薄膜層を基材から剥離した状態で無機薄膜層を積層することが困難なため、粘土薄膜層が基材に貼り付いた状態のまま後述する無機薄膜層を形成する工程へ進む。このとき、無機薄膜層形成には基材ごと高温で加熱することとなるため、その場合には、無機薄膜層形成時の高温に耐える基材を使う必要がある。そのような基材としては、例えばガラス基板やシリコン基板等が挙げられる。
粘土薄膜層が自立膜として使える強度を有しない場合には、無機薄膜層形成後、粘土薄膜層と無機薄膜層からなる積層体を基材から剥離する際に、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂フィルム等を貼り付けて膜を強度的に補強した後、基板から剥離して自立強度を持った膜として用いることができる。なお、PETフィルムのような樹脂フィルムは耐熱性に乏しいが、本発明における無機薄膜層のような高温形成が必要な工程の後に貼りつけて用いることで、耐熱性の問題を回避することができる。
本発明における粘土薄膜層においては、粘土薄膜層の強度や柔軟性を向上させる目的で、粘土以外の成分、例えば樹脂のような有機物を混合することも可能である。粘土を水に分散させた溶液から粘土薄膜層を作製する場合は、水に可溶な有機物、例えば水溶性の分子やポリマーを該溶液に添加することにより、粘土以外の成分を含む粘土薄膜層を作製することが可能である。ただし、粘土以外の成分の割合が多くなると、特に有機物の成分の割合が多くなると、耐熱性等の物性が低下する傾向があるため、粘土以外の成分の割合は50%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、もっとも好ましくは20%以下である。
また、粘土として、交換性の無機陽イオンを有機カチオンによって交換した疎水性の有機化粘土を用いる方法は、交換性の無機陽イオンが除去され水分を含みにくいため、上記イオンのマイグレーションによる影響及び吸湿による影響を低減するのに効果的である。
なお、本発明における粘土薄膜層が、粘土粒子が配向して積層した構造を有するものであることを確認する手段としては、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察、もしくはX線回折スペクトルにおける底面反射ピークの存在等、及びそれらの複合的解析によって確認することができる。
本発明の電子素子用部材に用いられる基板の柔軟性とは、曲率半径で少なくとも50mmに基板を曲げた際に、基板が割れたり目視で確認できるクラックが入らないことを意味する。柔軟性としては、好ましくは曲率半径で10mm、より好ましくは曲率半径で5mm、もっとも好ましくは曲率半径で2mmに基板を曲げた際に、基板が割れたり目視で確認できるクラックが入らないことが好ましい。
一般に電子素子用部材としての基板には、配線の腐食や電子部品の誤作動を防止するために、酸素及び水蒸気等に対するガスバリア性が多かれ少なかれ要求される。特にペンタセン類やチオフェンポリマー類等の有機半導体を用いる回路を基板に実装する場合においては、酸素及び水蒸気を高度に遮蔽することが求められる。粘土薄膜層は一般に酸素に対しては高いガスバリア性を有するものの水蒸気に対するガスバリア性は低く、粘土の材質に依存するものの、電子素子用部材の基板としてより優れた水蒸気バリア性を求められる場合も多い。
従って、粘土薄膜層を電子素子用部材の基板として用いるためには、主として水蒸気に対するガスバリア性能を向上させることが好ましく、そのための手法として無機化合物を主要成分とする緻密な無機薄膜層を粘土薄膜層の上に形成し、積層化することで、水蒸気の遮断性能を向上させる方法が望ましい。無機薄膜層としては、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とするものが、緻密な膜を作製しやすいこと、水蒸気に対するガスバリア性が特に高いこと、蒸着法や溶液からの塗布・焼結方法等の多様な形成方法があること等から好ましい。粘土薄膜層と、このような無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有することにより、基板の水蒸気に対するガスバリア性を向上させることができる。無機薄膜層は粘土薄膜層上に隣接して形成してもよく、他層を介して形成してもよい。
水蒸気バリア性能を付与するための無機薄膜層の形成方法としては、気相中における形成方法もしくは溶液から形成する方法等があるが、いかなる手法を用いた場合でも、成膜温度が高い方が膜の緻密性が向上し、ガスバリア性を向上できるのが一般的である。無機薄膜層は、ガスバリア性に加え、ナトリウムに代表される基板に残留するアルカリ塩の溶出を防ぐという観点からも、緻密性に優れる方が好ましい。
従来、電子素子用部材の基板の材料として用いられている一般的な樹脂材料は、耐熱温度が低く、無機薄膜形成時の成膜温度を上げることができなかったため、もしくは線膨張係数が大きく、寸法安定性に乏しかったため、緻密な無機薄膜層を付与することが難しかった。粘土薄膜層の高い耐熱性を利用することにより、緻密で高品質な無機薄膜層を高温下において粘土薄膜層上に形成し、高い緻密性とガスバリア性を有するガスバリア層を形成することができ、その上に必要な電子回路を形成することが可能である。
具体的には、スメクタイト系の粘土鉱物を主とする材料から形成される粘土薄膜層の場合は、粘土鉱物の結晶水の脱水が起こる600〜700℃程度までは問題なく成膜温度を上げることが可能である。透明性は失われるものの、合成サポナイト等は1000℃でも粘土薄膜層としての形状を保持し、また、水酸基をフッ素で置換した合成雲母等であれば1100℃弱までは構造変化を起こさないため、1000℃程度まで成膜温度を上げることも可能である。無機薄膜層を形成する温度は、得られる基板の柔軟性の観点から、500℃以下であることが好ましい。
粘土薄膜層の耐熱性と寸法安定性を生かし、一般的な樹脂基板の耐熱温度である150℃程度より高い温度で無機薄膜層を形成することにより、従来の樹脂基板(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような汎用の樹脂フィルム)の上に形成された無機薄膜層よりも、緻密でガスバリア性に優れた無機薄膜層を得ることができる。それを電気回路の配線を備える基板のような電子素子用部材として利用することで、酸素や水蒸気、さらには残留陽イオンから電気回路を長期間に渡って保護することができる。
無機薄膜層の主成分となる無機化合物は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
高温成膜に適する無機薄膜層の形成方法は、気相中における成膜プロセスであり、例えば、抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、スパッタ法等があげられる。特に、CVD法は緻密な膜を形成する方法として好ましい。また、プラズマCVD法は緻密な膜を形成するのに特に好ましく、大気下CVD法は真空プロセスが不要であり成膜速度も速いので、低コストで量産に適した方法である。また、触媒を用いて反応ガスを分解するCat−CVD法も成膜レートが早く好適である。プラズマCVD法を用いる際には、基板温度を低温(60〜200℃未満)に保って成膜する特殊な手法ではなく、基板温度が200℃以上になる高温タイプを用いることができる。
このような方法で作ることできる無機薄膜層としては、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化炭化ケイ素、酸化アルミ、窒化アルミ、及びそれらの混合物等の薄膜層があげられる。より具体的には、例えばプラズマCVD法によりケイ素化合物の無機薄膜層を形成する場合は、ケイ素源として、シラン、ジシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)等を用い、酸素又は窒素を併用して導入して用いてもよい。酸素炭素源としてはCO 、CO等を、酸素窒素源としてはNO、NO 、NO等を用いることができる。またTEOSを用いることで、表面の凸凹に対するカバレージ性を向上させることもできる。
本発明においては、気相中における成膜プロセスではなく、常圧下における溶液からの成膜プロセスである塗布膜を焼結する方法によって、溶液から無機薄膜層を形成することも可能である。この場合にも高い温度で焼成して薄膜を形成できるので、膜質を向上させることが可能である。このような方法としては、一般式MO・nSiO(Mはアルカリ金属、nはモル比で1〜20程度の範囲)で表されるケイ酸アルカリの水溶性分散液や、金属アルコキシドやアルコキシシランを用いたゾル−ゲル法があげられる。
さらには、加熱によって酸化ケイ素や窒化ケイ素に転化するポリシラザン、特に有機官能基や有機触媒を含まないペルヒドロポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)を含む溶液を塗布し焼成して、酸化ケイ素や窒化ケイ素からなる無機薄膜層を得てもよい。有機官能基や有機触媒を含まないペルヒドロポリシラザンは緻密な無機薄膜層を得ることができ、無機薄膜層の形成材料として理想的であるが、一般に無機触媒を含むもので250℃以上、触媒を含まないものであれば400℃以上の高温で焼成する必要がある。
本発明における粘土薄膜層は500℃程度まで加熱しても柔軟性に優れ、且つ、無機材料ゆえ一般的な樹脂材料と比較して線膨張係数も小さいので、前述のような高温での焼成に適している。
これら溶液からの無機薄膜形成における焼成温度としては、一般に焼成温度が高いほど緻密でガスバリア性に優れた無機薄膜層が得られるが、粘土薄膜層の柔軟性、粘土薄膜層と無機薄膜層との熱膨張係数の差による応力、クラックの観点から、焼成温度としては600℃以下が好ましく、粘土の種類や組成に依存するものの柔軟性の保持の観点からは500℃以下がより好ましく、さらに粘土薄膜層に有機物等を添加した場合には有機物の分解を避けるため300℃以下が特に好ましい。
ゾル−ゲル法によって無機薄膜層を作製する場合は、一般式M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH ,C 等のアルキル基)で表せるアルコキシドを単独又は複数種を組み合わせて塗布溶液とし、水やアルコール、及び塩酸等の酸で加水分解した後に塗布して焼成することで薄膜を得る。特に、例えばケイ素源としてTEOSを、アルミニウム源としてトリイソプロポキシアルミニウムを用いた場合は、溶液が安定で扱いやすい。
溶液から無機薄膜層を形成する際には、必要に応じて、イソシアネート化合物、ポリ(メタ)アクリル酸、帯電防止剤、分散剤、安定化剤、粘土調整剤、着色剤などの公知の添加剤を加えることができる。
ケイ酸アルカリから形成された無機薄膜層は、経時変化により白濁化する場合がある。この現象を抑制するための手段として、金属粉末や多価金属水酸化物、リン酸塩、ホウ酸塩などの無機化合物を添加する方法が知られており、透明性が必要な場合にはこれらを必要に応じて添加してもよい。
溶液の塗布方法には、ディッピング法、スピンコート法、ロールコーティング法、スプレー法などの従来公知の手段を用いることができる。膜厚は溶液の種類や塗布条件によって異なるものの、10nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。乾燥後の厚さが10nm以上であれば、下層表面の凸凹の影響等を受けてピンホール等が発生することを抑制して、十分な膜質が得られる。また、乾燥後の厚さは、クラック発生を抑制するという観点から20μm以下が好ましい。乾燥後の厚さは、より好ましくは20nm〜5μm、さらに好ましくは100nm〜2μmである。
無機薄膜層の密着性を向上させる目的で、又は、無機薄膜層の材料を溶かした溶液と下層との親和性を向上させる目的で、シランカップリング剤、コロイダルシリカ、有機チタネート等を溶液に配合するか、又は、前もって下層に塗布しておくことが好ましい。あるいは、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等を下層に実施することが好ましい。特に、シランカップリング剤を直接又はあらかじめ水溶液中で加水分解させシラノール化させてから塗布する方法が望ましい。このようなシランカップリング剤としては、例えばテトラエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤又はその加水分解物があげられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の無機薄膜層は1層である必要性はなく、同一又は異なる種類の無機薄膜層を2層以上、同一又は異なった方法で積層してもよい。例えば、ゾル−ゲル法やポリシラザン塗布焼成法により溶液から作製した酸化シリコン膜の上に、プラズマCVDで作製した窒化シリコン膜を積層してもよい。上記のような方法で、粘土薄膜層の上に溶液プロセスによって無機薄膜層を形成し、粘土薄膜層の表面の凸凹を平滑化した後に、気相蒸着によってより緻密な無機薄膜層をさらに積層して形成する方法を用いると、無機薄膜層の膜質をより向上させることが可能である。なお、無機薄膜層を2層以上積層する場合には、それらを隣接して積層してもよいし、所望により他層を間に介在させてもよい。
本発明では、基板に粘土薄膜層を用いることにより、装置コストが高くスループットの低い低温真空蒸着法を用いずとも、粘土薄膜層の高い耐熱性を生かして、ガスバリア性の高い緻密な無機薄膜層を高温条件下で付与することができ、またポリシラザンのような液体を塗布して焼成する方法でも緻密な無機薄膜層を得られることが特徴である。得られた無機薄膜層は、特に、粘土薄膜層のみでは劣る水蒸気に対するガスバリア性能を向上させる効果が大きい。
このようにして得られた粘土薄膜層と無機薄膜層の層構造体を有する基板は、緻密でガスバリア性能に優れた無機薄膜層によって、高いガスバリア性能を有し、酸素や水蒸気の電子回路内への侵入を阻止する。本発明によって得られる基板のガスバリア性能は、基板を構成する層構造体中の無機薄膜層の種類と作製プロセス、及びそれらを保護する緩衝層の有無等によって大きく幅を有する。
なお、本発明における基板には、有機材料等を主要成分とする薄膜層を緩衝層として積層してもよい。このような緩衝層を形成する箇所としては、無機薄膜層の上でもよいし、粘土薄膜層と無機薄膜層との間でもよく、さらには粘土薄膜層の上に形成してもよい。これにより、表面に傷がついてガスバリア性能が低下したり、曲げた際に無機薄膜層に亀裂等の欠陥が生じるのを防ぐことができる。
このような材料として、有機材料なら例えばポリイミド系の樹脂が好適であり、10μm以下、好ましくは1μmの薄い層とすることにより、応力を緩和することが可能である。ただし、あまり緩衝層を薄くしすぎると、膜表面の凸凹を被覆する性能が低下して緩衝層の形成が不完全となりやすく、緩衝層にピンホールが発生するおそれがあるため、緩衝層の厚さは10nm以上であることが望ましい。
本発明における電子素子用部材を用いて実際に製品を製造する場合、電子素子用部材の
基板には製造工程に耐えるだけの強度が要求される。また、電子素子もしくは製品として使用する際の取り扱いで壊れないよう、ある程度以上の強度が必要になる。従って、基板の強度が製造工程に対して不足している場合には、補強層を付与することが好ましい。
補強層としては、前述した工程に耐えるだけの強度を有していれば特に制限はないが、例えばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルブチラート、ポリアリレート、イソプレン、ブタジエン、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリル酸アルキルエステル類、シアン化ビニル類、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、エポキシ系樹脂、アリル樹脂、テフロン(登録商標)等のフッ素系樹脂等の汎用な樹脂フィルムを用いることができる。また、ガラスファイバーのような無機繊維、セルロースや布地のような有機繊維、紙、それらと熱効果性樹脂あるいは熱可塑性樹脂との複合材でもよく、もしくはアルミニウム、銅、及びステンレスの金属箔なども安価で好適である。
補強層の厚みとしては特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選定すればよい。補強層の付与は、無機薄膜層を粘土薄膜層上に形成した後に、行うことが好ましい。方法としては、基板に接着剤をコートし、補強層をラミネート等の方法で貼りつける方法、もしくは補強層と粘着層とを積層したフィルムをラミネートする方法等が考えられるが、これに限定されるものではない。耐摩耗性に優れた処理を行ったフィルムを補強層に用いた場合、補強層が傷付きを防止する表面ハードコートの役割を兼ねることも可能である。
本発明における電子素子用部材の基板に樹脂材料からなる補強層等を付与する場合、一般に樹脂材料は耐熱性が低いため、無機薄膜層の形成や配線を焼結する際の温度に耐えることが困難である場合がある。その場合には、無機薄膜層や配線を形成する高温焼成工程の後、それら補強層等を付与することが望ましく、これによって樹脂材料の耐熱温度を不問にすることができる。
基板表面の凸凹が大きい場合、その凸凹の上に配線を形成すると、凸凹の影響を受けて配線が断線したり、部分的に電気抵抗が大きくなってしまう場合がある。そのため、本発明における基板と配線との間には、基板の平滑性を向上させる平滑化層を付与することが好ましい。このような平滑化層としては、前記の無機薄膜層、特に塗布で形成した無機薄膜層そのものを用いてもよいし、表面凸凹の状態によっては、水やアルコール等の溶媒に酸化シリコン等の無機超微粒子を分散させたものを塗布することにより、平滑化層を形成してもよい。あるいは、前記無機超微粒子を無機薄膜層の材料を溶かした溶液に混合分散して塗布することにより、平滑化層を形成してもよい。もしくは、ポリイミド等の有機材料等を構成成分として含む溶液を塗布して乾燥させ、平滑化層を形成してもよい。平滑化層の付与は、無機薄膜層を粘土薄膜層上に形成した後に、行うことが好ましい。
電子素子用部材の基板に要求される特性として、配線間の絶縁性を保持することは必須項目である。粘土薄膜層は絶縁性であるが、親水性のものは一般に水分を含みやすく、また、内部にイオン性物質を保持しているため、使用環境によっては水分を含んで絶縁性が低下したり、高電界によりイオンがマイグレーションして絶縁破壊及びデバイスの劣化を促進する可能性がある。このような現象を防ぐために、前記粘土薄膜層と前記配線との間に絶縁性に優れる酸化ケイ素からなる層を挿入し、基板の絶縁性を向上させ、またイオンのマイグレーションによる配線への拡散を停止させることは有効である。
そのような酸化ケイ素層の形成方法としては、前述した無機薄膜層の形成方法と同様、TEOS等を用いたプラズマCVD法等によって形成しても良い。また、種々のポリシラザン、特にペルヒドロポリシラザンをキシレンやジブチルエーテル、もしくはシクロヘキセン等に溶かして塗布し、大気中又は水蒸気含有雰囲気中で塗布膜を焼成することで緻密な酸化ケイ素膜を作製する方法は、真空プロセスを用いないため低コスト化が可能であり、またガスバリアの役割をする無機薄膜層としての機能を兼ねることができ、さらに配線を形成する基板表面の平坦化作用もあるため理想的である。
本発明における基板はほぼ無機材料から形成されているため線膨張係数が小さく、配線等の破断が起こりにくい。また、難燃性であり、難燃性を示す指数である酸素指数を容易に50以上、材料と構造によっては90以上にすることができる。
既存のガラス基板上に作る方法と同様の作製工程及び回路パターンを採用する上では、配線の破断や寸法安定性の点から、基板の線膨張係数は、40℃から300℃の範囲において1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下にすることが好ましく、より好ましくは1×10−6/℃以上20×10−6/℃以下、もっとも好ましくは4×10−6/℃以上15×10−6/℃以下である。本発明においては、線膨張係数の大きな樹脂等からなる層を付与しない、もしくはデバイス形成後に樹脂層等を付与することで、上記線膨張係数要求を満足することができる。
本発明の電子素子用部材は、上述の基板上に電気回路としての役割を担う配線層を形成して得ることができる。電気回路配線の形成方法としては公知の様々な方法を用いることができる。本発明における基板は耐熱性に優れるため、導電性ペーストのような導電性インクを焼結させて配線を形成する印刷法のような塗布法等の高温を要する方法に好適に用いることができる。
塗布法ではなく、公知のメッキ法や蒸着法を用いる場合も、本発明における基板を好適に用いることができる。メッキ法や蒸着法の場合、配線を高温で焼成する必要がないので、本発明における基板の耐熱性や寸法安定性は必要ないが、本発明における基板は難燃性であるため、燃えやすい樹脂材料からなる回路基板と異なり、電気回路のショートや電子部品の発熱による発火といった可能性を抑制することができる。しかし、コストの点からは導電性ペーストのような導電性インクを用いて、印刷法、例えばインクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、ディスペンサー等を用いることが望ましい。基板全面にベタ膜を形成する必要がある場合には、スピンコート法やディップコート法などの塗布法を用いることができる。
本発明における基板は耐熱性に優れるため、導電性ペーストのような導電性インクを焼結させて配線を形成する用途に適している。導電性インクを焼結する場合、その導電性が重要である。本発明においては粘土薄膜層の高い耐熱性を利用して、樹脂材料を用いた基板を用いる場合と比較し、より高温で導電性ペーストを焼成できるため、より電気回路配線の抵抗を下げることが可能である。
本発明における基板を用いれば、焼成温度は、400℃以上に上げることができる。粘土薄膜層の柔軟性、基板と配線の熱膨張係数の差による応力、配線の破断の観点から、焼成温度としては600℃以下が好ましく、粘土の種類や組成に依存するものの柔軟性の保持の観点からは500℃以下がより好ましい。なお、ある温度以上で焼成した場合、その温度より焼成温度を上げても導電性にほとんど差が生じない特性の導電性インクを用いた場合には、そのある温度以上に温度を上げて焼成する必要は一般にはない。
本発明における導電性インクとは、電気を通電させる役割を有する導電性材料を含み、必要に応じてバインダ樹脂、溶剤、及び各種添加剤のうち少なくとも1つ以上を混合した物をいう。
導電性材料としては、例えば金属粉もしくは金属のナノ粒子等を挙げることができる。この金属の種類も特に限定されるものではなく、金、銀、銅、アルミ、白金、パラジウム、ニッケル、亜鉛、コバルト、クロム、モリブデン、鉄、タングステン、スズ、インジウム等の導電性のある任意の金属を用いることができる。
また、それら金属粉もしくは金属ナノ粒子の酸化物でも良く、熱等のエネルギーを与えることで反応させた際、還元作用によって酸素が脱離して金属粒子が発生し、より配線を低抵抗化させることが可能である。還元速度を上げる、もしくはより配線を低抵抗化させるために、導電性インクに適当な還元剤を含有させても良い。さらに、前記した金属元素を含む有機金属化合物を加えても同様に配線の低抵抗化が可能である。それら金属の酸化物微粒子もしくは有機金属化合物としては、公知の様々な物を用いることができるが、特に銀、銅、及びアルミの酸化物を含む粒子は材料が安価であり、また導電性がよいので理想的である。
もしくは、導電性材料として金属系の材料を用いるのではなく、ポリチオフェン/ポリスチレンスルホン酸混合系材料(PEDOT/PSS)等の導電性高分子を用いても良い。PEDOT/PSSの推奨焼成温度は約200℃であり、金属系材料ほど高い焼成温度は必要としないため、補強層に用いる樹脂材料が高耐熱性であれば補強層を付与後、インクを焼成することも可能である。
上記金属粉もしくは金属ナノ粒子、金属酸化物、有機金属化合物、もしくは導電性高分子は、少なくともいずれか1つ以上が導電性インクに含まれていれば良く、混合物でも良い。
前述した導電性材料を湿式法により塗布もしくは印刷できるようにするため、バインダ樹脂もしくは溶媒を加え、インクとしての特性を調整し、導電性インクとする。基材への密着性を高める、粘度、及び膜厚等を調整する目的などのために、バインダ樹脂には公知の様々なものを用いることができ、例えばポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、各種の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び光硬化性樹脂を、一種もしくは二種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
同様に、乾燥速度、粘度、導電性材料の分散状態、及び表面張力等を調整する目的で、溶媒には公知の様々なものを用いることができ、例えばトルエン、キシレン、テトラリン、スチレン等の芳香族炭化水素、クロルベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等の塩化芳香族炭化水素、ノルマルヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素、ジクロルメタン、ジクロルエタン、クロロホルム、テトラクロルエチレン等の塩化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、クレゾール等の有機溶媒、もしくは水でも良いが、これらに限定されるものではなく、一種もしくは二種類以上を組み合わせて用いることも可能である。
また、インク内の導電性材料を分散させたり、インクの基板とのぬれ性を改善したり、インクの焼結を進める等の役割を有する各種公知の添加剤を、必要に応じて導電性インクに加えて用いても良い。塗布方法として、乾式法、例えば静電印刷、静電転写、吹きつけ法等を用いる際には、バインダ樹脂、溶剤、及び各種添加剤は導電性インクの構成要素として必須ではない。
本発明における電子素子用部材は、無線タグのような低コスト及び高導電性が要求される分野だけでなく、幅広い分野に適用することができる。特に、柔軟性を生かして、形状を気にすることなくあらゆる面に貼りつけて使うRFIDタグや、ガスバリア性を必要とし、丸めて持ち運ぶことを想定した電子ペーパーや液晶ディスプレイ、さらにフレキシブル有機ELディスプレイの基板等に好適である。ただし、電子ペーパーのようなディスプレイに適用するためには、酸素及び水分によってデバイスを構成する部材の劣化を防ぐために、基板は既存のSiOを樹脂フィルムにスパッタ等によって付着させたハイバリア膜と同等以上のガスバリア性を有することが好ましい。
一般に、ガスバリア性としては、基板の厚さが1mmの場合における酸素の23℃におけるガス透過量は、24時間当たり0.5g/m 以下であることが好ましく、0.1g/m 以下であることがより好ましい。また、ガスバリア層の厚さが1mmの場合における40℃湿度90%における水蒸気の透過量は、24時間当たり1g/m 以下であることが好ましく、0.1g/m 以下であることがより好ましい。特に駆動回路に有機半導体を用いている場合には有機半導体が酸素及ぶ水分に対して敏感であることから、上記の要求水準は最低レベル必要であり、より高いガスバリア性が望ましい。
本発明を用いたデバイスの作成方法としては、例えば、まずポリシラザンを有機溶媒に溶かした溶液を粘土薄膜の上に2〜3層塗布し、400〜500℃で処理することで、ガスバリア性と表面平滑性を付与する。その基板をXYステージ上に乗せ、例えば銀粉と酸化銀を含む導電性ペーストをディスペンサーにより突出しながらステージをあらかじめプログラムしておいた配線パターンに従ってXY方向に移動させることで、導電性ペーストによる配線パターンを直描する。その後、配線の描かれた基板を250〜500℃で焼成し、十分低抵抗な配線もしくはアンテナ等の配線状部品を得る。
その後に、例えばLSIのチップをエポキシ等の接着剤で基板に貼りつけ、バンプ接続、ワイヤ・ボンディング接続、もしくは銀や銅などの金属微粒子を含む導電性ペーストによって配線と電気的に結線し、所望のデバイスを得る。又は、ポリチオフェンのような可溶型有機半導体を溶剤に溶かしたインク、無機半導体材料である酸化亜鉛や酸化チタンの微粒子等を溶媒に分散したインク、塗布型SiOやポリビニルフェノール等の絶縁層形成用の材料を溶剤に溶かしたインク等の、半導体デバイス作製に必要な溶液を、インクジェット装置のような描画装置で上記配線基板に直描し、前記配線と結線することで、印刷法によって半導体を含む電子回路を形成しても良い。この方法では印刷法により電子回路も形成できるため、従来のシリコンプロセスによって作製されたLSI等を用いる既存の方法に比べ、安価に回路を作製できる点で有望である。
本発明は、低コストで、柔軟性、低線膨張率、難燃性、高耐熱性を兼ね備えた粘土薄膜を用いた基板に電気回路配線を形成したものである。そのため導電性インクを塗布もしくは印刷した後、高温で焼成することにより、導電性能の高い配線を形成することができる。無線タグ用アンテナのような安価で高導電率の配線を要する、もしくは難燃性が要求される高信頼性の電子素子用部材として有用である。
本発明の電子素子用部材を示す図である。
符号の説明
1 粘土薄膜層
2 無機薄膜層
3 電気回路配線

Claims (17)

  1. 柔軟性を有する基板と、前記基板上に形成され、電気回路としての役割を担う配線と、を有する電子素子用部材であって、前記基板は粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層を有することを特徴とする電子素子用部材。
  2. 前記基板は粘土を主要成分とし且つ粘土粒子が配向して積層した構造を有する粘土薄膜層と、シリコン及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機化合物を主要成分とする無機薄膜層と、をそれぞれ1層以上有する層構造体を有することを特徴とする請求項1記載の電子素子用部材。
  3. 前記配線が導電性インクからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子素子用部材。
  4. 前記基板に、機械的強度を付与する補強層が付与されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  5. 前記基板と前記配線との間に、基板の平滑性を向上させる平滑化層が付与されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  6. 前記粘土が天然粘土であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  7. 前記粘土が合成粘土であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  8. 前記粘土が、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、及びノントロナイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  9. 前記無機化合物が、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、シリコン炭化物、シリコン酸化炭化物、アルミ酸化物、及びアルミ窒化物のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  10. 前記無機薄膜層が、ケイ酸アルカリ、金属アルコキシド、ポリシラザン、及びアルコキシシランのうちの少なくとも1種を含む溶液から形成されたものであることを特徴とする請求項2〜請求項9のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  11. 前記基板の40℃から300℃の範囲における線膨張係数が1×10−6/℃以上50×10−6/℃以下であるであることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  12. 前記基板の酸素指数が50以上であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の電子素子用部材。
  13. 請求項2〜12のいずれか一項に記載の電子素子用部材を製造する方法であって、前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に隣接して又は他層を介して形成する工程を有することを特徴とする電子素子用部材の製造方法。
  14. 気相中における成膜プロセスである抵抗加熱蒸着、電子線加熱蒸着、熱CVD法、高温プラズマCVD法、大気下CVD法、又はスパッタ法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする請求項13に記載の電子素子用部材の製造方法。
  15. 溶液からの成膜プロセスで形成された塗布膜を600℃以下の温度で焼結する方法で、前記無機薄膜層を形成することを特徴とする請求項13に記載の電子素子用部材の製造方法。
  16. 前記無機薄膜層を前記粘土薄膜層上に形成した後に、前記補強層、もしくは前記平滑化層のいずれか1つ以上を付与する工程を有することを特徴とする請求項13〜請求項15のいずれか一項に記載の電子素子用部材の製造方法。
  17. 請求項3〜請求項12のいずれか一項に記載の電子素子用部材を製造する方法であって、導電性インクを塗布又は印刷後、600℃以下で焼結する方法で、前記配線を形成することを特徴とする電子素子用部材の製造方法。
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