JP2007059307A - ニッケル水素二次電池用負極ペースト、ニッケル水素二次電池用負極ならびにニッケル水素二次電池 - Google Patents

ニッケル水素二次電池用負極ペースト、ニッケル水素二次電池用負極ならびにニッケル水素二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】水素吸蔵合金、導電材、増粘剤、結着剤からなる負極ペーストの物性を最適化することにより、優れた寿命特性と低温放電特性を示すニッケル水素二次電池を提供する。
【解決手段】本発明のニッケル水素二次電池用負極ペーストは、水素吸蔵合金と、導電材と、界面活性作用を有する増粘剤と、結着剤とを含むニッケル水素二次電池用負極ペーストであって、レーザー回折方法による粒度分布測定においてピークを2つ有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明はニッケル水素二次電池に関し、より詳しくは負極の前駆体であるペーストに関する。
ニッケル水素二次電池はその使いやすさの観点から様々なポータブル機器に幅広く用いられている。しかしながら、水素吸蔵合金が水素を吸蔵、放出するという特性を利用しているために、充放電を繰り返して用いるサイクル用途においては水素吸蔵合金が水素との反応により膨張と収縮を繰り返すため割れて微粒子化し、サイクル容量が低下するという課題がみられたため、種々の改良が進められてきている。
例えば、比重が小さい導電材と増粘剤とを予め混練して第1のペーストを作製し、続いて第1のペーストに比重が大きい水素吸蔵合金を加えて混練して第2のペーストを作製し、さらに結着剤を第2のペーストに加える技術が開示されている(特許文献1) 。これにより導電材がニッケル水素二次電池用負極の中に均一に分散され、常温下において十分な放電特性が得られるというものである。
特開2001−319645号公報
しかしながら特許文献1の技術を用いても、寿命特性や低温下での放電特性は必ずしも芳しいものではなかった。本発明は上記課題を解決するためのものであり、負極ペーストの物性を最適化することにより、優れた寿命特性と低温放電特性を示すニッケル水素二次電池を提供するものである。
前記従来の課題を解決するために、本発明のニッケル水素二次電池用負極ペーストは、水素吸蔵合金と、導電材と、界面活性作用を有する増粘剤と、結着剤とを含むニッケル水素二次電池用負極ペーストであって、レーザー回折方法による粒度分布測定においてピークを2つ有することを特徴とする。
界面活性作用を有する増粘剤を適正に分散させた場合、この増粘剤の疎水性部分は導電材と吸着し、かつ親水性部分は分散媒である水と接しているため、導電剤と水素吸蔵合金とは分離し、レーザー回折方法による粒度分布測定において、2つのピークが現れる。ここで粒径が大きい方は水素吸蔵合金のピークであり、小さい方は導電材のピークである。ところが単に特許文献1の技術を用いただけでは、結着剤が水素吸蔵合金と導電材との仲立ちをするため、水素吸蔵合金の表面は導電材が配置され、レーザー回折方法による粒度分布測定ピークには2つには分離しない。このようなペーストを用いて作製したニッケル水素二次電池用負極は水素吸蔵合金の密着性が不十分なため、充放電の繰返しにより水素吸蔵合金が脱落して寿命特性が低下するほか、水素吸蔵合金の反応表面が減少して充放電反応性が悪化し、低温放電特性が低下する。
そこで後に詳述するように各混練工程においてペースト前駆体に与えるシェアを適正化し、理想的な粒度分布を有する負極ペーストを作製することにより、ニッケル水素二次電池の寿命特性や低温放電特性を向上させるのが、本発明の趣旨である。
本発明のペーストを用いたニッケル水素二次電池用負極は、水素吸蔵合金の密着性と反応性とを向上することができるので、寿命特性と低温放電特性とに優れたニッケル水素二次電池用に好適である。
以下に、本発明について詳述する。
請求項1に記載の発明は、水素吸蔵合金と、導電材と、界面活性作用を有する増粘剤と、結着剤とを含むニッケル水素二次電池用負極ペーストであって、レーザー回折方法による粒度分布測定においてピークを2つ有することを特徴とするニッケル水素二次電池用負極ペーストに関する。上述したように本発明は、水素吸蔵合金に由来するピーク(粒径大)と、導電材に由来するピーク(粒径小)の2つにピークが分離するようにペーストが作製できた場合、水素吸蔵合金の表面状態が適正化し、寿命特性と低温放電特性とに優れたニッケル水素二次電池を具現化できることに基づいたものである。ここで2つの粒径ピークを有するペーストは、シェア(剪断力)を大きくして導電材と増粘剤とを混練する第1の工程と、第1の工程の混練物に水素吸蔵合金を添加して混練する第2の工程と、第2の工程の混練物に結着剤を添加して混練する第3の工程とを経ることにより、作製することが可能である。なお第1の工程で大きなシェアを得るためには、回転羽を有する混練機であればその自公転速度を大きくする方法が挙げられるが、どの程度シェアを大きくするかについては、導電材の種類や混練機の仕様に応じて個別に選ぶ必要がある。具体的には、導電材としてハードカーボンを選択し、一般的な高速分散機である特殊機化工業製のT.K.ホモディスパーを用いた場合、1000〜5000rpmの回転数で30〜300分間混練するのが好ましい。またペーストの粒度分布における2つのピークについて、水素吸蔵合金に由来する粒径の大きいピークが15〜60μm(最適範囲は30μm近傍)で、かつ導電材に由来粒径の小さいピークが1〜20μm(最適範囲は3〜10μm)の場合、水素吸蔵合金の隙間を埋めて導電ネットワークを形成しやすくなるので好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内容を前提として、増粘剤がカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。界面活性作用を有する増粘剤としては、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース(MEHEC)、セルロースエーテル、ポリウレタン系増粘剤などを挙げることができるが、中でもCMCおよびMCは、環境安全性の高い材料なので好ましい。なお増粘剤の添加量は、ニッケル水素二次電池用負極の総重量に対して0.1〜3重量%の範囲が好ましい。
なお請求項3に記載の発明は、請求項1〜2のニッケル水素二次電池用負極ペーストを用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池用負極に関し、請求項4に記載の発明は、請求項3記載のニッケル水素二次電池用負極を用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池に関する。
本発明のニッケル水素二次電池の概要について、さらに詳しく説明する。
本発明のニッケル水素二次電池は、水酸化ニッケルを活物質とする正極と、水素吸蔵合金を活物質とする負極と、セパレータおよび水溶液電解液とから構成され、正負極間にセパレータが設けられる。
本発明に係る正極活物質としては、水酸化ニッケルに水酸化亜鉛、水酸化コバルトを混合したものが用いられるが、これらを共沈法によって、均一に分散せしめて得た水酸化ニッケル複合水酸化物の使用が好ましい。
本発明に係る水素吸蔵合金にはAB2型(ラーベス型)やAB5型が挙げられ、その中でもAB5型のMmNi5(MmはミッシュメタルでLa、Ce、Ndなど軽希土類の混合物)が好ましく、さらにはNiの一部をCo、Mn、Alで置換したものがより好ましい。
本発明の負極には、防食剤としてYb、Er、Sm、GdおよびYの単体、酸化物あるいは水酸化物を添加することや、前記水素吸蔵合金にこれらの元素を合金として含有させることもできる。
正極活物質の粉体は平均粒子サイズ15〜60μm以下であることが望ましい。特に、負極活物質である水素吸蔵合金の粉末は、ニッケル水素二次電池の高出力特性を向上する目的で粒子径は40μm以下の小さいものの方がよいが、高いサイクル寿命を得るためには粒子径が20μmを下回らないことが望ましい。
水素吸蔵合金を所定の粒径にするために、各種の粉砕機や分級機が用いられる。例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどが用いられる。粉砕時には水、アルカリ金属水酸化物の水溶液を用いて湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが使用でき、また、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
負極に添加する導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されない。通常、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、金等)粉、金属繊維等の導電性材料を一種またはそれらの混合物として含有させることができる。これらの導電剤の中で、電子伝導性および構成の観点より黒鉛化度の低い非晶質炭素粉末が望ましい。導電剤の添加量は、負極の総重量に対して0.1〜10重量%が望ましい。混合にはV型混合機、S型混合機、分散機、ボールミル、遊星ボールミルなどの粉体混合機を湿式で使用することが可能である。
負極の結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種または2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極または負極の総重量に対して0.1重量%〜3重量%が好ましい。
正極および負極には、活物質粉末や導電性を高めるために、分散媒である水に添加剤を分散させてペースト状とし、そのペーストを集電体である多孔性基板に塗布して担持させたものが適用される。この塗布方法については、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータなどの手段を用いて任意の厚みおよび任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
正極の集電体としては、構成された電池に悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば任意に選択できる。例えばニッケルやニッケルメッキを行った鋼板を好適に用いることができ、発泡体、繊維群の形成体、凹凸加工を施した3次元基材のほかに、パンチング鋼板等の2次元基材が用いられる。厚さの限定は特にないが、5〜700μmのものが用いられる。これらの集電体の中で、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れているニッケルを、集電性に優れた構造である多孔性構造の発泡体としたものを使用することが好ましい。
負極の集電体としては、安価でかつ導電性に優れる鉄または鋼の箔ないし板をパンチン
グ加工し、耐還元性向上のためにニッケルメッキを施した多孔板を使用することが好ましい。鉄板または鋼板のパンチングの孔径は1.5mm以下、開口率40%以上であることが好ましく、これにより少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性が優れたものとなる。焼成炭素繊維、導電性高分子のほかに、接着性、導電性および耐酸化性の向上の目的で集電体ニッケルの表面をニッケル粉末やカーボンや白金等を付着させて処理したものを用いることができる。これらの材料については、表面を酸化処理することも可能である。
セパレータとしては、既知の優れた高率放電特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することができる。セパレータを合成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。セパレータを空孔率は強度、ガス透過性の観点から80体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。セパレータは親水化処理を施すことが好ましい。例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維の表面に親水基のグラフト重合処理、スルフォン化処理、コロナ処理、PVA処理を施したものや、これらの処理をすでに施された繊維を混合したシートを用いてもよい。
電解液には、アルカリ金属の水酸化物を基調とした電解質のほかに、正極の酸素過電圧の向上、負極の耐食性の向上および自己放電抑制を目的としてHo、Er、Tm、Yb、LuおよびY等の希土類元素のほか、カルシウム、硫黄、亜鉛等の化合物を単独またはそれら2種以上を混合して添加することができる。
本発明に係るニッケル水素二次電池は、例えばセパレータと正負極とを積層する前後に電解液を注入し、最終的に外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とがニッケル水素二次電池用セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなるニッケル水素二次電池においては、電解液は前記発電要素の巻回の前後に発電要素に注入されることが望ましい。注入法としては、真空含浸法、加圧含浸法および遠心含浸法が好ましい。
ニッケル水素二次電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等またはこれらの複合体が挙げられる。
ニッケル水素二次電池の構成、形状については特に限定されるものではなく、正極、負極および単層または複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、角型電池、扁平型電池、さらに、ロール状の正極、負極およびセパレータの有する円筒型電池等が一例として挙げられる。
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載により限定されるものではない。
(実施例1)
第1の工程として、導電材であるケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製、商品名:ケッチェンブラックEC)と、増粘剤であるCMC(第一製薬製、商品名:セロゲンEP)と、分散媒である水とを、質量比で0.3:0.15:7.35の割合とし、高速分散機(特殊機化工業製 T.K.ホモディスパー)に投入して3000rpm、90分間の条件で混練した。
第2の工程として、水酸化カリウム水溶液で表面処理した平均粒子径28μmの水素吸蔵合金(一般式Mm1.0Ni3.6Co0.6Al0.3Mn0.3)100gに対して、ケッチェン
ブラック0.3g、CMC0.15gとなるように第1の工程の混練物を加え、万能混合機(ダルトン製)で10rpm、30分間の条件で混練した。
第3の工程として、第2の工程の混練物(水素吸蔵合金100g:ケッチェンブラック0.3g:CMC0.15g)に対して、結着剤であるSBRのエマルジョンを固形分比として0.7g加え、万能混合機(ダルトン製)で10rpm、20分間の条件で混練して、負極ペーストを完成させた。この負極ペーストの粒度分布は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装株式会社製)で測定した結果、10μmと28μmにピークが存在していることを確認した(図1参照)。
このペーストを、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板(孔径1.0mm、開口率42%)にブレードコーターを用いて塗布した後、90℃で乾燥し、所定の厚みにプレスして幅30mm(内、無塗工部1mm)長さ120mmの容量2500mAhの負極を作製した。これを実施例1の負極とする。なおこの負極の表面を走査電子顕微鏡(JSM−5900LV 日本電子製)の反射電子像とエネルギー分散形X線分析装置(JED−2200、日本電子製)で確認した結果、上述した負極ペーストにおける28μmのピークは水素吸蔵合金に由来し、10μmのピークは導電剤に由来することがわかった(図3参照)。
一方、表面処理によりコバルトをコーティングした水酸化ニッケル活物質(田中化学研究所製)を活物質とし、上述したCMCの水溶液を添加して活物質:CMC=99.3:0.7のペーストを作製し、このペーストを500g/m2のニッケル多孔体(発泡ニッケル、住友電工社製)に充填した。その後100℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、表面をPTFEでコーティングし、幅30mm(内、無塗工部1mm)長さ120mmの容量2.1Ahの正極を得た。
上述した正負極を、スルフォン化処理を施した厚み150μmのポリプロピレンの不織布状セパレータを介してロール状に巻回して円筒型の外装材に収納した後、5.0Nの水酸化カリウム水溶液と1.0Nの水酸化ナトリウム水溶液の混合溶液に0.7mol/lの水酸化リチウムを溶解したアルカリ電解液を注入し、開弁圧2.5MPaの逆止弁を具備する円筒型ニッケル水素二次電池(公称容量2.1Ah)を作製した。これを実施例1の電池とする。
(実施例2)
第1の工程における混練条件を3000rpm、150分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例2の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、3μm(導電材由来)と28μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例3)
水素吸蔵合金の平均粒子径を29μmとし、第1の工程における混練条件を3000rpm、100分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例3の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、8μm(導電材由来)と29μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例4)
水素吸蔵合金の平均粒子径を30μmとし、第1の工程における混練条件を3000rpm、150分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例4の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、3μm(導電材由来)と30μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例5)
増粘剤をMC(信越化学製)に変更し、第1の工程における混練条件を3000rpm、120分としたこと以外は、実施例4と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例5の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、5μm(導電材由来)と30μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例6)
水素吸蔵合金の平均粒子径を55μmとし、第1の工程における混練条件を3000rpm、50分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例6の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、20μm(導電材由来)と55μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例7)
第1の工程における混練条件を3000rpm、200分としたこと以外は、実施例6と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例7の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、1μm(導電材由来)と55μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例8)
水素吸蔵合金の平均粒子径を15μmとし、第1の工程における混練条件を3000rpm、150分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例4の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、3μm(導電材由来)と15μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(実施例9)
第1の工程における混練条件を3000rpm、90分としたこと以外は、実施例8と同様に作製したニッケル水素二次電池を、実施例9の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、10μm(導電材由来)と15μm(水素吸蔵合金由来)とに分離していることを確認した。
(比較例1)
第1〜3の工程で用いる材料を第2の工程で一括投入し、混練条件を15rpm、60分間としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、比較例1の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、33μm近傍に1箇所しか存在せず(図2参照)、導電材は粒子形状をとどめることなく水素吸蔵合金の表面に付着していることを確認した(図4参照)。
(比較例2)
SBRを第1の工程で投入し、混練条件を3000rpm、60分間としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、比較例2の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、33μm近傍に1箇所しか存在せず、導電材は粒子形状をとどめることなく水素吸蔵合金の表面に付着していることを確認した。
(比較例3)
水素吸蔵合金の平均粒子径を62μmとし、第1の工程における混練条件を300rpm、15分としたこと以外は、実施例1と同様に作製したニッケル水素二次電池を、比較例3の電池とする。なおこの電池の負極ペーストの粒度分布におけるピークは、62μm近傍に1箇所しか存在せず、導電材は粒子形状をとどめることなく水素吸蔵合金の表面に
付着していることを確認した。
上述した電池を、以下の条件で評価した。結果を(表1)に示す。
(低温放電特性)
各例のニッケル水素二次電池を45℃下で12時間保管した後、20℃下で0.42Aの電流値にて16時間充電し、1時間放置の後、0.84Aの電流値で1Vまで放電した。この操作を3回繰り返し、3回目の放電容量を初期放電容量とした。
その後、20℃下で2.1Aの電流値にて2時間30分充電した後、0℃に5時間放置し、4.2Aの電流値にて0.9Vまで放電した。
さらに、この電池を20℃下で2.1Aの電流値にて2時間30分充電した後、−10℃に5時間放置し、4.2Aの電流値にて0.9Vまで放電した。
この0℃およびー10℃における放電容量を、初期放電容量で除した値(百分率)を、放電容量比率として(表1)に示す。
(寿命特性)
20℃下で2.1Aの電流値にて電圧が最高到達値から5mV低い値となるまで充電をし、30分間休止の後、4.2Aの電流値にて1.0Vまで放電し、30分間休止した。
このサイクルを、放電容量が初期放電容量の80%に到達するまで繰り返した。各電池のサイクル数を(表1)に示す。
Figure 2007059307
負極ペーストの粒度分布におけるピークが1箇所しか存在しなかった比較例1〜3は、低温放電特性、寿命特性ともに低い値となった。図4に示すように、導電材は粒子形状をとどめることなく水素吸蔵合金の表面に付着しているため、反応面積の減少により低温放電特性が低下する一方で、結着剤が水素吸蔵合金の表面に適正配置されないで密着性が低下して短寿命化したと考えられる。
これら比較例に対し、負極ペーストがレーザー回折方法による粒度分布測定においてピ
ークを2つ有する各実施例は、低温放電特性、寿命特性ともに良好な値を示した。これは上述した課題が解決されたためと考えられる。中でも粒径の大きいピーク(水素吸蔵合金に由来)が30μm近傍で、かつ粒径の小さいピーク(導電材に由来)は3〜10μmの範囲にある実施例1および3〜5は、両特性ともに良い値を示す結果となった。
本発明のニッケル水素二次電池は、従来のものと比較して低温放電特性に優れるという観点からは、屋外で用いられる電気自動車や電動工具に対する電源として有用であり、寿命特性が優れるという観点からは、ライフサイクルが求められる据置用電源として有用である。
本発明の実施例1に係るニッケル水素二次電池用負極ペーストの粒度分布図 比較例1に係るニッケル水素二次電池用負極ペーストの粒度分布図 本発明の実施例1に係るニッケル水素二次電池用負極の電子顕微鏡写真 比較例1に係るニッケル水素二次電池用負極の電子顕微鏡写真

Claims (4)

  1. 水素吸蔵合金と、導電材と、界面活性作用を有する増粘剤と、結着剤とを含むニッケル水素二次電池用負極ペーストであって、
    レーザー回折方法による粒度分布測定においてピークを2つ有することを特徴とするニッケル水素二次電池用負極ペースト。
  2. 前記増粘剤はカルボキシメチルセルロース、メチルセルロースの少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項2に記載のニッケル水素二次電池用負極ペースト。
  3. 請求項1〜2のニッケル水素二次電池用負極ペーストを用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池用負極。
  4. 請求項3記載のニッケル水素二次電池用負極を用いたことを特徴とするニッケル水素二次電池。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010053257A3 (en) * 2008-11-04 2011-04-21 Energreen Co., Ltd. Method of fabricating negative electrode for nickel/zinc secondary battery

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WO2010053257A3 (en) * 2008-11-04 2011-04-21 Energreen Co., Ltd. Method of fabricating negative electrode for nickel/zinc secondary battery

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