JP2007052315A - 光学素子の製造方法、投射型表示装置 - Google Patents

光学素子の製造方法、投射型表示装置 Download PDF

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Abstract


【課題】 ワイヤーグリッドを備えた光学素子において、グリッドを好適に保護するとともに、その表面を平坦化させて、その用途を拡大するのに適した、当該光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の光学素子の製造方法は、透光性の誘電体材料からなる基板11A上に金属層12を形成する金属層形成工程と、形成した金属層12上に、縞状の平面パターンを有し、且つシリル化剤を含む化学増幅型のレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとしたエッチングにより、前記金属層12を縞状の平面パターンに加工する加工工程と、前記エッチング後、前記金属層12上に残存する残渣レジストを溶解させ、当該金属層12の全面に濡れ広がる溶解レジストとする溶解工程と、酸素によるドライエッチングにより、前記溶解レジストをシリル化させ、保護膜14を形成する保護膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】 図2

Description

本発明は、光学素子の製造方法、及び投射型表示装置に関する。
プロジェクタ等の投射型表示装置における光変調装置として、液晶装置が用いられている。このような液晶装置としては、対向配置された一対の基板間に液晶層が挟持された構成のものが知られており、この一対の基板の内側には、液晶層に電圧を印加するための電極が形成されている。また、この電極の内側には、電圧無印加時において液晶分子の配列を制御する配向膜が形成され、配向膜としてはポリイミド膜の表面にラビング処理を施したものが公知である。
一方、一対の基板の外側(液晶層に対向する面とは異なる面側)には偏光板が配設されており、液晶層に対して所定の偏光が入射される構成となっている。偏光板としては、有機化合物の樹脂フィルムを一方向に延伸することによってヨウ素や二色性染料を一定方向に配向させて製造される偏光フィルムの他、ガラス基板上に金属からなる微細パターンを形成してなるワイヤーグリッド型の偏光素子(光学素子)が、例えば特許文献1〜3に開示されている。
特開2003−519818号公報 特開2004−77831号公報 特開2004−70131号公報
このようなワイヤーグリッド型の偏光板をプロジェクタの光変調装置を構成する液晶装置に応用する場合、液晶装置の内部、つまり電極の内側に当該偏光板を配設することできる。しかしながら、電極の内側にワイヤーグリッド型の偏光板を配設した場合、グリッド間に液晶が充填された構造となる。ワイヤーグリッド偏光板の光学特性(TM偏光の透過率、TE偏光の消光率)はグリッド間の材質にも影響を受け、一般に屈折率が1であることが望ましい。すなわち、空気(若しくは真空)が最良の材質であり、グリッド間に1以上の屈折率を持つ材質が存在すると、その光学特性は低下する。これに対して、特許文献1には、グリッド上にもう一枚透明基板(カバーガラス)を設置する構成が開示されている。このような技術により、グリッド間を空気とすることが可能となる。しかしながら、カバーガラスの設置は、グリッドの高さにバラツキがあるため必ずしも十分な保護効果が得られるものではなく、またガラスの厚みの点から現実性に乏しい。
一方、ワイヤーグリッド型の偏光板を液晶装置の外側に配設することもできる。この場合、出射側の偏光板においては、反射光の処理をどのようにするかが問題となる。光吸収タイプの偏光板とは異なって、ワイヤーグリッド偏光板では非透過光は反射することとなり、そのまま用いた場合、黒表示の際に反射光が液晶装置に戻ってしまうこととなる。これに対し、プリズムを用いて液晶装置への戻り光をなくす手法が考えられる。本手法では、2個のプリズム間にワイヤーグリッドを挟んで作製するため、接着剤が介在する。しかも、この接着剤はグリッド間に充填されるため、上記した様に光学特性が低下する。
上記に加え、ワイヤーグリッド型の偏光板のみの特性を向上させるためには、グリッド表面での反射率を低下させる必要がある。具体的にはグリッド表面に誘電体多層膜からなる反射防止膜を形成する方法があるが、そのためには、グリッド間をなんらかの物質で充填させ、表面を平滑にしておく必要がある。特許文献2によれば、ガラス基板に凹凸を形成し、そこへ金属を埋め込み、余った金属は研磨等で取り除く手法が示されている。また特許文献3には、メタルと誘電体を2方向から同時に斜方成膜することで、ワイヤーグリッド型の偏光板を作製する手法が提案されている。両手法とも、グリッド表面は平滑化され、その後の工程において反射防止膜を形成することで、透過率の向上を示している。しかし、上述した様に、グリッド間に屈折率の高い物質を充填することは、偏光特性自体を低下させるため、これらの手法は好ましいものではない。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、ワイヤーグリッドを備えた光学素子において、グリッドを好適に保護するとともに、その表面を平坦化させて、その用途を拡大するのに適した、当該光学素子の製造方法を提供することを目的としている。また、本発明は該方法により製造された光学素子を備える投射型表示装置を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の光学素子の製造方法は、透光性の誘電体材料からなる基板上に金属層を形成する金属層形成工程と、形成した金属層上に、縞状の平面パターンを有し、且つシリル化剤を含む化学増幅型のレジストを形成するレジスト形成工程と、前記レジストをマスクとしたエッチングにより、前記金属層を縞状の平面パターンに加工する加工工程と、前記エッチング後、前記金属層上に残存する残渣レジストを溶解させ、当該金属層の全面に濡れ広がる溶解レジストとする溶解工程と、酸素によるドライエッチングにより、前記溶解レジストをシリル化させ、保護膜を形成する保護膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
このような製造方法によると、縞状の金属層間を空気とした状態で、保護機能に優れた保護膜を当該金属層上に備えた光学素子を簡便に製造することができる。つまり、従来のような保護部材を後付けするような場合に比して、本発明では気密性が高い保護膜を形成することができるのである。
具体的には、従来、縞状パターンを構成する各金属層の高さが不均一の場合、これに平らな保護部材を後付けしたとしても、金蔵層の高さが低い部分では当該金属層と保護部材の間に隙間ができてしまうのに対して、本発明では金属層上に濡れ広がった溶解レジストをシリル化させて保護膜としているため、縞状パターンを構成する各金属層の高さによらず、各金属層のそれぞれに密着した形の保護膜を形成することができるため、非常に気密性が高いものとなる。
また、保護膜を形成したことにより、当該光学素子の表面は平坦なものとなる。その結果、例えば当該光学素子の表面に反射防止膜等の機能膜を形成するのに適した構成となり、光学素子の特性、信頼性を向上させることが可能となり得る。
なお、本発明の製造方法では、誘電体からなる基板上に、導電体としての金属層を縞状に形成されてなるもので、この縞のピッチを可視光の波長以下に設定すれば金属ワイヤーグリッド型の偏光素子を提供することができる。また、この場合、基板と金属層との誘電率の相違により、当該光学素子を例えば液晶プロジェクタ等の投射型表示装置の偏光素子として用いた場合には、透過率やコントラスト等が高く好適なものとなる。
また、本発明の製造方法において、シリル化剤はレジストのOH基と反応して、レジスト表面にSi原子を導入する。シリル化剤としては、トリメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、1,1,3,3-トリメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンのいずれかを用いることができる。
本発明の製造方法の前記レジスト形成工程において、前記金属層上にベタ状のレジストを形成する工程と、形成したレジストに対して縞状の照射パターンとなるレーザー光を照射する工程と、照射後のレジストに対してエッチングを行う工程と、を含むものとすることができる。このようなレーザー光照射、及びエッチングにより、微細な縞状パターンのレジストを簡便に形成することが可能となる。なお、縞状の照射パターンを実現するためには、干渉露光法を用いた多光束干渉光を照射することができる。例えば、2光束干渉による照射の場合、その光束間の角度を制御することにより、周期の間隔を制御することができる。
また、前記加工工程において、前記レジストよりも前記金属層を選択的にエッチングする条件で当該エッチングを行うものとすることができる。このようなエッチング加工により、非マスク部の金属層を確実にエッチング除去できる一方、該金属層上に形成されたレジストを好適に残存させることができるようになり、ひいては後の保護膜形成を確実に行うことができるようになる。
また、前記溶解工程において、当該基板を回転させながら、前記残渣レジストをリンスするものとすることができる。このようなスピンリンスにより残渣レジストを好適に溶解させ、さらに該溶解レジストを金属層上に好適に濡れ広がらせることができるようになる。その結果、後の保護膜形成を確実に行うことができるようになる。
あるいは前記溶解工程において、当該基板を回転させながら、前記残渣レジストをHOアッシングした後、Oアッシングを行うものとすることができる。このような基板回転を伴ってのアッシングにより、残渣レジストを好適に溶解させ、さらに該溶解レジストを金属層上に好適に濡れ広がらせることができるようになる。その結果、後の保護膜形成を確実に行うことができるようになる。
また、前記保護膜形成工程後、該形成した保護膜上に反射防止膜を形成する工程を含むものとすることができる。このように、縞状パターンからなる金属層上に保護膜を形成した後に、該保護膜上に反射防止膜を形成すれば、当該光学素子からの光の反射を好適に防ぐことができるようになる。また、このような反射防止膜は保護膜上に形成するものとしているため、金属層上に形成する場合に比して容易に形成することができるものとなっている。
なお、本発明において、金属層を構成する材料としては、例えば銀、金、銅、パラジウム、白金、アルミニウム、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、若しくはその合金のいずれかを用いることができる。
次に、上記課題を解決するために、本発明の投射型表示装置は、光源装置と、該光源装置から射出された光を変調する光変調装置と、該光変調装置により変調された光を投射する投射装置とを備える投射型表示装置であって、前記光変調装置の光入射側と光射出側とに偏光素子が配設されてなり、該偏光素子が上述した方法により製造された光学素子により構成されてなることを特徴とする。
このような投射型表示装置は信頼性が非常に高いものとなる。つまり、上述した方法により製造された光学素子は耐光性や耐熱性に優れるとともに、透過率及びコントラスト等の光学特性が優れ、しかも製造効率が良いため、当該投射型表示装置を安価に提供することができるようになる。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
[プロジェクタ]
図1は、本発明の投射型表示装置の一実施形態として、プロジェクタの要部を示す概略構成図である。本実施形態のプロジェクタは、光変調装置として液晶装置を用いた液晶プロジェクタである。
図1において、810は光源、813、814はダイクロイックミラー、815、816、817は反射ミラー、818は入射レンズ、819はリレーレンズ、820は出射レンズ、822、823、824は液晶装置からなる光変調装置、825はクロスダイクロイックプリズム、826は投射レンズ、831、832、833は入射側の偏光板(光学素子)、834、835、836は出射側の偏光板(光学素子)である。
光源810は、メタルハライド等のランプ811とランプの光を反射するリフレクタ812とからなる。なお、光源810としては、メタルハライド以外にも超高圧水銀ランプ、フラッシュ水銀ランプ、高圧水銀ランプ、Deep UVランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ等を用いることも可能である。
ダイクロイックミラー813は、光源810からの白色光に含まれる赤色光を透過させるとともに、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー817で反射されて、偏光板831を介して赤色光用液晶光変調装置822に入射される。また、ダイクロイックミラー813で反射された緑色光は、ダイクロイックミラー814によって反射され、偏光板832を介して緑色光用液晶光変調装置823に入射される。さらに、ダイクロイックミラー813で反射された青色光は、ダイクロイックミラー814を透過する。青色光に対しては、長い光路による光損失を防ぐため、入射レンズ818、リレーレンズ819および出射レンズ820を含むリレーレンズ系からなる導光手段821が設けられている。この導光手段821を介して、青色光が偏光板833を介して青色光用液晶光変調装置824に入射される。
各光変調装置822〜824により変調された3つの色光は、各色偏光板834〜836を介してクロスダイクロイックプリズム825に入射する。このクロスダイクロイックプリズム825は4つの直角プリズムを貼り合わせたものであり、その界面には赤光を反射する誘電体多層膜と青光を反射する誘電体多層膜とがX字状に形成されている。これらの誘電体多層膜により3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
ここで、本実施形態のプロジェクタにおいては、偏光板831〜836として、無機材料からなるものを採用している。メタルハライドランプ811からなる光源810は高エネルギーの発光が行われるものであるため、有機材料では当該高エネルギーの光により分解ないし変形が生じる惧れがある。そこで、耐光性及び耐熱性の高い無機材料(金属材料を含む)で偏光板831〜836を構成している。
図2は偏光板831〜836(以下、これらを総称して偏光板1とも言う)の概略構成を示す斜視図、図3は偏光板1の平面模式図、図4は偏光板1の断面模式図、図5は偏光板1を光が透過する際の作用を示す説明図である。
偏光板1は、本発明の光学素子に係るもので、光源810から射出された各色光を偏光選択して直線偏光のみを透過させるものである。具体的には図2に示すように、ガラス基板等の誘電材料からなる透光性の基材11A上に、ストライプ状に配置された複数の非有機材料(無機材料及び/又は金属材料)からなる格子(金属層)12を備えて構成されている。また、格子12上には各格子12を覆う保護膜14が形成されており、当該保護膜14上は平坦面とされている。
図3に示すように、格子12のピッチPは入射光の波長よりも小さい値であり、例えば140nm以下に設定されている。また、格子12の幅は、例えば70nm以下に設定されており、製造上の都合もあるが、入射光の波長の1/10程度にするとより好ましい。なお、格子12の隙間に形成される線状の溝パターン13は空間とされている。
また、格子12の高さは100nm〜200nm程度となっている。また、格子12を構成する金属材料としては、アルミニウムのほか、銀、金、銅、パラジウム、白金、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、又はこれらの合金などを用いることができる。
さらに、保護膜14は基材11A上に形成された各格子12にそれぞれ密着して形成されており、該格子12と保護膜14との間には隙間が形成されていない。つまり、保護膜14の外側面は平坦に構成されてなる一方、保護膜14の内側面(格子側面)は、各格子12の高さに応じて凸凹に構成されている。なお、保護膜14は、SiOを主体としたガラス質セラミックスからなるものである。また、保護膜14の外面側に例えば誘電体多層膜からなる反射防止膜を形成することができる。
このような偏光板1は、図5に示すように、格子12の屈折率nと、格子12間に介在する空間11Bの屈折率nとが異なるため、偏光板1に入射した光の偏光方向により、偏光選択が行なわれる。具体的には、格子12の延在方向と垂直な方向に偏光軸を有する直線偏光Xを透過させ、格子12の延在方向と平行な方向に偏光軸を有する直線偏光Yを反射する。したがって、本実施形態の偏光板1は、光反射型偏光子と同じ作用、すなわち光軸(透過軸)と平行な偏光を透過させ、垂直な偏光に対しては反射させる作用を有している。
なお、図13は、保護膜14を備えないワイヤーグリッド型の偏光板であって、大気中に格子が露出している比較例1の偏光板について、透過率及びコントラストの値を示すグラフである。図中「TTM」は格子の長手方向に対し垂直な方向に振動する偏光成分の透過率を示している。また、図中「CR」はTM偏光の透過率をTE偏光(格子の長手方向に振動する偏光成分)の透過率で割った値である。偏光板としては両者の値が大きい程良好な性能を有していることとなる。図から明らかなように、可視域において、良好な特性を有していることが分かる。
一方、図14は、偏光板を液晶装置内に組み込んだ場合を想定し、屈折率1.6の液晶で格子を囲んだ比較例2の偏光板について、透過率及びコントラストの値を示すグラフである。図から明らかなように、可視域全域においてTM偏光の透過率は減少しており、特に青領域(440nm付近)の落ち込みが激しい。高い屈折率を持つ物質で格子間を充填することによる不具合が表されている。
これに対し図15は、厚さ100nmの保護膜14を付与した本実施形態の偏光板1について透過率及びコントラストの値を示すグラフである。図14に比べ透過率、コントラストの落ち込みは見られず、特性の改善が見られる。
以上のような透過率及びコントラスト等の特性に優れた偏光板1を透過して生成された直線偏光は、光変調手段としての液晶装置822〜824に入射する。液晶装置822〜824は、例えば図6に示したような構成を備えている。図6は、液晶装置822〜824の断面模式図である。
液晶装置822〜824は、ガラスやプラスチック等の透明基板で構成される2枚の基板(素子基板10,対向基板20)を含んで構成され、該一対の基板10,20間に液晶層50が挟持されている。素子基板10の液晶層50側にはITO等で構成された透明電極9がマトリクス状に形成されており、透明電極9のさらに液晶層50側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜11が基板全面に形成されている。
一方、対向基板20の液晶層50側には、基板全面にベタ状の透明電極23が形成されており、透明電極23のさらに液晶層50側には、液晶分子の配向規制を行う配向膜21が基板全面にベタ状に形成されている。
図6の構成においては、一対の基板10,20が、シール材(図示略)を介して貼り合わせられ、その内部に液晶が封入されている。この場合、液晶層50の液晶モードとしてTN(Twisted Nematic)モードが採用されているが、その他にもSTN(Super Twisted Nematic)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード等を採用することができる。
素子基板10は、ガラスや石英等の透光性の基板であって、画素電極9に対する電圧印加をスイッチング駆動するTFT素子(図示略)を備えている。画素電極9はITO(インジウム錫酸化物)等の透光性且つ導電性の材料にて構成されており、膜厚が50nm〜100nm程度(例えば85nm)とされている。また、配向膜11はSiO2の斜方蒸着材料から構成されており、液晶分子の配向を規制している。なお、配向膜11の膜厚は10nm〜100nm(例えば25nm)とされている。
一方、対向基板20は、素子基板10と同様、ガラスや石英等の透光性の基板から構成されており、その液晶層側にITO(インジウム錫酸化物)等の透光性且つ導電性の材料にて構成された共通電極23が、膜厚50nm〜150nm程度(例えば140nm)に形成されている。また、共通電極23のさらに液晶層側には、SiO2の斜方蒸着材料から構成される配向膜21が形成されており、その膜厚は10nm〜100nm(例えば25nm)とされている。
このような液晶装置822〜824では、図1に示した偏光板831,832,833を介して入射する直線偏光の位相制御が行われる。つまり、電極9,23に対する印加電圧により液晶層50の駆動制御を行い、当該入射光の位相を制御するものとしている。位相制御された光は、光射出側に配設された偏光板834,835,836に入射して変調される。
液晶装置822〜824及び偏光板831〜836で変調された各色光は、上述した通り、クロスダイクロイックプリズム825に入射して形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ826によってスクリーン827上に投写され、画像が拡大されて表示される。
本実施の形態では、偏光板1(831〜836)に関して有機材料を用いないものとしている。つまり、メタルハライドランプから供給される高エネルギー光により劣化する惧れのある有機材料を排除して、無機材料及び/又は金属材料から偏光板1(831〜836)を構成している。また、当該偏光板1(831〜836)は、以下に示すような方法により製造しているため、製造コストも安価で、非常に信頼性の高いものとなっている。
[偏光板の製造方法]
以下、図2〜図4に示した偏光板(光学素子)1の製造方法の一例について、図7〜図12を参照して説明する。図7〜図11は工程説明図であって、図12は製造工程中に生じるシリル化反応について模式的に示す説明図である。
まず、図7に示すように、透光性の誘電体材料であるSiOからなる基板11Aに対して、アルミニウムからなる金属ベタ膜12aを形成する。ここでは、蒸着法或いはスパッタ法等の成膜手段を用いることができる。なお、金属ベタ膜12aを構成する金属としては、アルミニウム以外にも、例えば金、銅、パラジウム、白金、ロジウム、シリコン、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、クロム、チタン、ルテニウム、ニオブ、ネオジウム、イッテルビウム、イットリウム、モリブデン、インジウム、ビスマス、若しくはその合金のいずれかを用いることができる。
次に、金属ベタ膜12a上にシリル化剤(シリコン化合物)を含むポジ型の化学増幅型レジスト(東京応化社製TDUR−338EM)をスピンコートにより塗布し、これをベークして、レジストベタ膜を形成する。その後、レジストベタ膜に対して、選択的にレーザー照射を行う。ここでは、図8に示すように、形成されるレジスト14aが縞状となるように選択照射するものとしている。具体的には、干渉露光法(ここでは二光束干渉露光)を用いてピッチが可視光の波長以下(例えば140nm)の微細な縞状パターンとなるように露光を行っている。このような露光を行った後、ベーク(PEB)を行い、さらにエッチングによりレジストベタ膜の露光部分を取り除いて、図8に示したパターンを有するレジスト14aを形成する。
ここで、シリル化剤とは、図12に示すように、レジスト14aのOH基と反応して、レジスト14a表面にSi原子を導入する材料のことである。例えば、ポジ型の化学増幅レジストを用いた場合、これを選択的に露光した際、未露光部ではポリマー中のOH基がシリル化されるが、露光部では発生した酸によりポリマーが架橋するためシリル化されにくい。よって、このような露光部と未露光部のシリル化コントラストの差により、ドライ現像でパターンが形成されることになる。これに対してネガ型レジストの場合は、未露光部のOH基が酸脱離基によりブロックされているために、シリル化されず露光部がドライ現像される。このようなシリル化剤としては、例えばトリメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジエチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、1,1,3,3-トリメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等を用いることができる。
続いて、形成したレジスト14aをマスクとして、金属ベタ膜12aをエッチングして、図9に示すような格子12を形成する。ここで、エッチングは金属ベタ膜12a上に形成したレジスト14aが残存する条件で行うものとしている。つまり、図9に示すように格子12上にレジストの残渣(残渣レジスト)14bが形成されるように、レジスト材料、エッチング液を選択して当該エッチングを行うものとしている。
次に、残渣レジスト14bを溶解させて、図10に示すように、各格子12上に溶解したレジスト(溶解レジスト)14cが濡れ広がるようにする。ここでは、スピン式のリンサーで、基板全体を回転させながら、アッシングを行うものとしている。具体的には、基板全体を1000rpm〜3000rpmの速度で回転させつつ、流量300sccm、圧力60Pa、処理時間10秒〜60秒でHOアッシングした後、同じく基板全体を1000rpm〜3000rpmの速度で回転させつつ、流量1500sccm、圧力130Pa、処理時間10秒〜60秒でOアッシングすることで、図10に示したように、各格子12上の全体に跨って濡れ広がる溶解レジスト14cを形成することができる。
最後に、酸素によるドライエッチングにより、格子12上に濡れ広がって形成された溶解レジスト14cをシリル化させ(図12参照)、図11に示すような保護膜14とする。また、必要に応じて、保護膜14上に誘電体多層膜を形成して反射防止膜を形成するものとしても良い。なお、シリル化により形成された保護膜14は、酸化珪素を主体とするガラス質セラミックスから構成されている。
以上のような偏光板の製造方法によると、有機材料を用いない偏光板1を簡便に製造することができ、該製造される偏光板1は耐光性及び耐熱性に非常に優れたものとなる。また、誘電体からなる基板11A上に、導電体としての格子12を縞状に形成することができ、この縞のピッチを140nm(可視光の波長以下)に設定しているため、金属ワイヤーグリッド型の偏光板1として機能することとなる。
また、縞状の格子12間の隙間を空気とした状態で、保護機能に優れた保護膜14を当該格子12上に備えた偏光板1を簡便に製造することができる。つまり、保護部材を後付けするような場合に比して、気密性が高い保護膜14を形成することができるのである。具体的には、縞状パターンを構成する各格子12の高さが不均一の場合、これに平らな保護部材を後付けしたとしても、高さの低い部分では格子12と保護部材の間に隙間ができてしまうのに対して、本実施形態では格子12上に濡れ広がった溶解レジスト14cをシリル化させて保護膜14としているため、縞状パターンを構成する各格子12の高さによらず、各格子12に密着した形の保護膜14を形成することができるため、非常に気密性が高いものとなる。
また、保護膜14を形成したことにより、製造される偏光板1の表面は平坦なものとなる。その結果、例えば当該偏光板1の表面に反射防止膜等の機能膜を形成するのに適した構成となり、当該偏光板1の特性、信頼性を向上させることが可能となり得る。このような機能膜としては、反射防止膜のほか、液晶の配向膜等を形成することも可能である。
なお、本実施の形態では、微細構造を有する光学素子を偏光素子(偏光板)として用いる例を示したが、その他にも回折素子やPBS(Polarized Beam Splitter)、位相差板として用いることも可能である。また、本実施の形態では、プロジェクタとして投射型のものを例示したが、直視型のプロジェクタに対しても、上記偏光板1を用いることが可能である。
本実施形態のプロジェクタの概略構成を示す模式図。 偏光板の一実施形態を模式的に示す斜視図。 偏光板の一実施形態を模式的に示す平面図。 偏光板の一実施形態を模式的に示す断面図。 偏光板の作用を示す説明図。 光変調装置として用いた液晶装置の一実施形態を模式的に示す断面図。 偏光板の製造方法における一工程を示す説明図。 図7に続く一工程を示す説明図。 図8に続く一工程を示す説明図。 図9に続く一工程を示す説明図。 図10に続く一工程を示す説明図。 シリル化反応について模式的に示す説明図。 比較例1の偏光板について、透過率及びコントラストの値を示すグラフ。 比較例2の偏光板について、透過率及びコントラストの値を示すグラフ。 実施形態の偏光板について、透過率及びコントラストの値を示すグラフ。
符号の説明
1,831〜836…偏光板、11A…基板、12…格子(金属層)、13…溝パターン、14…保護膜

Claims (9)

  1. 透光性の誘電体材料からなる基板上に金属層を形成する金属層形成工程と、
    形成した金属層上に、縞状の平面パターンを有し、且つシリル化剤を含む化学増幅型のレジストを形成するレジスト形成工程と、
    前記レジストをマスクとしたエッチングにより、前記金属層を縞状の平面パターンに加工する加工工程と、
    前記エッチング後、前記金属層上に残存する残渣レジストを溶解させ、当該金属層の全面に濡れ広がる溶解レジストとする溶解工程と、
    酸素によるドライエッチングにより、前記溶解レジストをシリル化させ、保護膜を形成する保護膜形成工程と、を含むことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記レジスト形成工程において、前記レジストを可視光の波長以下のピッチで縞状に形成することを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 前記レジスト形成工程において、前記金属層上にベタ状のレジストを形成する工程と、形成したレジストに対して縞状の照射パターンとなるレーザー光を照射する工程と、照射後のレジストに対してエッチングを行う工程と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子の製造方法。
  4. 前記レジスト形成工程において、前記シリル化剤として、トリメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジメチルアミン、トリメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、1,1,3,3-トリメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンのいずれかを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  5. 前記加工工程において、前記レジストよりも前記金属層を選択的にエッチングする条件で当該エッチングを行うことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  6. 前記溶解工程において、当該基板を回転させながら、前記残渣レジストをリンスすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  7. 前記溶解工程において、当該基板を回転させながら、前記残渣レジストをHOアッシングした後、Oアッシングを行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  8. 前記保護膜形成工程後、該形成した保護膜上に反射防止膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の光学素子の製造方法。
  9. 光源装置と、該光源装置から射出された光を変調する光変調装置と、該光変調装置により変調された光を投射する投射装置とを備える投射型表示装置であって、
    前記光変調装置の光入射側と光射出側とに偏光素子が配設されてなり、該偏光素子が請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法により製造された光学素子により構成されてなることを特徴とする投射型表示装置。
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