JP2007051310A - アルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【目的】 口絞り成形後の缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成できるアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供する。
【構成】重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有するアルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であり、DI成形後の印刷焼付け処理後の口絞り成形での不良を低減させることができ、口絞り成形後の缶開口部の形状の歪を少なくして、その後のネジ部分の加工や飲み口部のカール加工を円滑に行うことができ、缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することができる。
【構成】重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有するアルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であり、DI成形後の印刷焼付け処理後の口絞り成形での不良を低減させることができ、口絞り成形後の缶開口部の形状の歪を少なくして、その後のネジ部分の加工や飲み口部のカール加工を円滑に行うことができ、缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することができる。
Description
本発明は缶胴部がDI加工(Draw絞り+Ironingしごき)により形成され、缶開口部を口絞りすることにより飲み口部が形成されるアルミニウムボトル缶胴用のアルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
近年、リシール機能を付加したアルミニウムボトル缶が金属容器であることからリサイクル性で優れ、しかもいわゆるPETボトルに比較しても生産(製缶)スピードや充填スピードが数倍早くかつトータルコストが低いという点で今後重要性の高まる飲料容器として評価されている。
このアルミニウムボトル缶は、蓋となるキャップ体との嵌合のため、ネジ部分を備え、内容物である飲料体を飲む際に消費者が違和感を覚えないようにするため、飲み口部にカール加工が施される。
従来から、このようなアルミニウムボトル缶も含め、缶胴部がDI加工により形成されるアルミニウムDI缶において、DI成形性や缶真円度の改善を目的とした提案が多く行われている。
特許文献1、特許文献2ではDI缶での缶真円度の改善のため、鋳塊に均熱処理及び熱間圧延を行った材料に、5〜20%の低圧延率の冷間圧延とその後の1℃/sec以下の昇温速度の中間焼鈍処理を組合せて施す方法や時効硬化あるいは固溶強化などの材料の強化方法を主に用いることにより,最終冷間圧延の圧延率を50%以下に抑える方法あるいは冷間圧延において、初期圧延方法とは異なる方向への冷間圧延を適宜組合わせる方法により、板材各方向における引張強さの最大値と最小値との差の板材各方向における引張強さの平均値に対する割合が1%以下(2%以下)であり,かつ耳率の絶対値が1%以内(3%以内)として、板面内の引張強度異方性及び、耳率の絶対値の上限を規定して、深絞り成形体の円周方向における残留応力の不均一を低減し、真円度の劣化を防止することを検討している。
しかし特許文献1、特許文献2の缶胴用アルミニウム合金板はいずれも、缶真円度の改善には有効な対策ではあるが、そのアルミニウム合金板の製法は、冷間圧延パス間の中間焼鈍の付与や異方向の冷間圧延の組み合わせが必要であり、工業的には有利ではない。
特許文献3には、飲料缶,復写機用ドラム等のDI成形体の製造方法に関し、素材薄板に深絞り加工を行い、その深絞りカップに加熱熱処理を施した後、しごき加工をすることにより、深絞りカップは回復あるいは再結晶をし、しごき成形最終段階における缶円周方向での残留応力分布を低減し、真円度が向上する製造方法が示されている。
しかしこの特許文献3の缶胴用アルミニウム合金板の製造方法では絞り成形後のカップに加熱処理を付与することによって著しく生産性が害される。
特許文献4には、合金鋳塊に均貿化熱処理を施した後、熱間圧延後直ちに、或いは放冷後加熱冷却速度100℃/min以上、到達温度400−600℃の条件で中間焼鈍を施した後、圧延率70〜90%の最終圧延を施すことにより、強度異方性を1.5kgf/mm2以内に規制し缶真円度を改善した缶胴用アルミニウム合金板が示されている。
しかしこの特許文献4の缶胴用アルミニウム合金板では最終冷間圧延率を小さくし、結晶粒径を小さくするため、冷間圧延パス間に比較的高温の焼鈍処理を付与させることが必要であり、工業的には有利ではない。
特許文献5には、DI加工等の成形性が優れていると共に、塗装時の熱変形を防止し、真円度が高いDI缶としてベーキング温度T(℃)が230乃至270℃の条件で、20分間熱処理したときに、熱処理前後の引張り強さの変化ΔTS(N/mm2)が(1.1×T−230)以下であることが規定されている。しかし、この様に熱処理による引張強度の変化を抑えるだけでは真円度の改善には未だ十分ではない。
また、その他、真円度には直接関係しないが、アルミニウムDI缶用材料に関する技術的課題を各種検討した特許文献6〜特許文献8に記載されたアルミニウム合金材の製造方法が有る。
特許文献6には、粗大結晶粒の発生を防ぐために、アルミニウム合金の鋳塊を均熱処理後熱間粗圧延を行うに当り、熱間粗圧延途中に全圧下量が50%を越えた後での圧延パスと次のパスとの間で、被圧延板を温度300〜450℃にて1分間以上保持することにより固溶元素の析出を促進させ、続いてさらにその後の熱間組圧延を行うことにより固溶元素の固溶量を減少させ、その後の熱間粗圧延終了時には微細な結晶組織を得る。被圧延板の温度を300℃〜450℃にするに当り、放冷・水もしくはクーラントを使用した強制冷却の方法が記載されいる。
しかし、この特許文献6の目的は、熱間粗圧延板中に存在する固溶元素の析出を促進して微細な結晶組織を得て、粗大結晶粒の発生を防ぐことであって特にDI成形性及び缶真円度という特性に絞って検討を行ったものではない。
特許文献7には、耳率及び成形性を良好にする目的で、Mn0.5〜2.0wt%、Mg0.5〜3.0wt%、Cu0.01〜1.2wt%、Si0.1〜2.0wt%、Fe0.1〜1.5wt%を含み残部Alおよび不可避的不純物からなるAl合金鋳塊に、常法の均質化熱処理後、500℃以上の熱間粗圧延板を100℃/sec以上の冷却速度で、400℃以下まで冷却し、熱間仕上圧延加工後、焼鈍処理、冷間圧延加工、中間焼鈍処理、冷間圧延加工を順次施して最終圧延加工の加工率を上げても、深絞り加工における45°方向の耳率の発生を抑制できる成形加工用Al合金板の製造方法としている。
この特許文献7の製造方法では熱間圧延後もしくは冷間圧延パス間の中間焼鈍の付与が必須であって、工業的には有利ではない。
この特許文献7の製造方法では熱間圧延後もしくは冷間圧延パス間の中間焼鈍の付与が必須であって、工業的には有利ではない。
特許文献8には、耳率を良好にするために、熱間圧延板のMn固溶量の一定範囲内で製造するため、鋳塊組織のDASとの関係から定まる均質化処理条件を規定している。この特許文献8に記載された製造方法では良好な真円度を達成するためには、熱間粗圧延及び熱間仕上圧延の条件を詳細に規定しなければならず、工業的には不利である。
ところでアルミニウムボトル缶胴体は、一般的に以下のようなプロセスで製造される。
先ず、アルミニウム合金板を円状に打ち抜き、円筒状に絞り成形する。次に得られた円筒状容器の側壁部をDI成形にて薄肉化し、必要容量となるように缶高さを確保した後、洗浄、乾燥工程を経て、缶の内外面に塗装が施される。その塗装された缶の開口部の径を口絞り成形にて縮小し、ねじ切り及びカール加工が施される。
先ず、アルミニウム合金板を円状に打ち抜き、円筒状に絞り成形する。次に得られた円筒状容器の側壁部をDI成形にて薄肉化し、必要容量となるように缶高さを確保した後、洗浄、乾燥工程を経て、缶の内外面に塗装が施される。その塗装された缶の開口部の径を口絞り成形にて縮小し、ねじ切り及びカール加工が施される。
缶の絞り及びDI成形に供する加工装置は、概ねクランク駆動式のプレス機であるが、その金型である円筒状中子(パンチ)は直線運動体に直結され往復運動する。また、もう一つの金型である外周リング(ドローダイ、アイアニングダイ)は、静止体に固定されており、円筒状中子と外周リングの隙間(クリアランス)にて、材料が塑性変形されることにより、缶容器が形成される。
一般的には、初絞りにてカップ状容器にして、その後、別の装置にて再絞り、3段のしごきを連続的に一度に加工する。初絞りの加工において、円筒状中子と外周リングの隙間を円周方向で均一にさせることは比較的容易であるが、再絞り以降の連続成形にて、円筒状中子と、4つの外周リングを同心にて加工することは、不可能に近い。
円筒状中子と外周リングが偏芯した状態で缶が成形されると、円周方向にて隙間が狭い箇所は、部分的に強加工され、その180°反対側では弱加工される。材料は加工硬化するため、部分的に強加工された箇所はより加工抵抗が高くなり、缶成形中に、円筒状中子は、外周リングに対して芯が合う方向に変位されると推定される。したがって、缶成形直後の缶体は、比較的真円に近い断面形状を有する。
DI成形を施された缶体は洗浄、乾燥や、印刷焼付け処理すなわちベーキングのため、加熱される。上記のような円周方向の部分的な加工履歴の差は、アルミニウム材料中に残留応力として残るが、缶が加熱されることにより残留応力は開放され、缶は変形する。特に開放端である開口部は、楕円状に拡がる傾向にある。
印刷焼付け処理された缶体は、口絞り成形される。口絞り成形は、前述のDI成形と同様に金型による加工であるが、印刷工程にて缶が楕円状に変形してしまうと、缶開口部と金型との位置関係が正常ではなくなり、金型との干渉により缶の高さ方向にて座屈等の不良を生じてしまうし、DI成形と同様に円周方向における部分的な加工履歴の差が助長され、口絞り成形後の缶開口部の形状が歪んでしまう。
このように口絞り成形後の缶開口部の形状が歪んでいる場合には、その後のネジ部分の加工や飲み口部のカール加工を円滑に行うことができず、多くの製品不良を発生するという問題を生じる。
すなわちこのような印刷焼付け処理後に行われる口絞り成形後の缶開口部の形状の歪みは、その後の工程の効率に大きな影響を与えることから、この口絞り成形加工における問題の発生を未然に防ぐためにアルミニウムボトル缶胴では特に印刷焼付け処理工程における缶開口部の変形を少なくすることが重要であって、必須となる。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑み、印刷焼付け処理工程における缶開口部の変形を少なくして、印刷焼付け処理後の口絞り成形での不良を低減させることができ、口絞り成形後の缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することができるアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、アルミニウムボトル缶胴では口絞り成形加工における問題の発生を未然に防ぐために印刷焼付け処理工程における缶開口部の変形を少なくすることが必須であるという視点から、アルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の組織とその製造方法を検討し、第2相粒子及び固溶するMn量と平均結晶粒径を総合的に検討することによってアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の口絞り成形での不良を低減させ、口絞り成形後の缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することできることを見いだし、本発明に想到した。
すなわち、本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板は、重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であることを特徴とする。
さらに本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法は、重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、570〜620℃で4〜48時間の均質化処理後、450〜550℃まで炉冷した後、熱間粗圧延における最終前2パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率を1パス当り25〜60%として、熱間粗圧延終了時に10〜50℃/secの冷却速度にて冷却して温度400〜470℃の熱間粗圧延アルミニウム合金板とし、タンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際に、最高圧延速度を270m/min以上とし、熱間仕上圧延の総圧下率を88〜93%とすると共に、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とし、その後に中間熱処理をすることなく圧延率87%以下の冷間圧延を施して得られ、アルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であることを特徴とする。
[作用]
DI成形後の熱処理工程における缶真円度の変化を少なくするためには材料の耐熱性を高くすることが必要となる。そのためには、Mn等の固溶元素の固溶度をできるだけ高める必要があるが、Mn等の固溶元素の固溶度を高めると、粗大結晶粒が発生してしまうため成形性が低下する。したがってこれを防止して結晶粒を微細化させる必要がある。
DI成形後の熱処理工程における缶真円度の変化を少なくするためには材料の耐熱性を高くすることが必要となる。そのためには、Mn等の固溶元素の固溶度をできるだけ高める必要があるが、Mn等の固溶元素の固溶度を高めると、粗大結晶粒が発生してしまうため成形性が低下する。したがってこれを防止して結晶粒を微細化させる必要がある。
本発明ではアルミニウム合金板中のMn固溶量が0.15〜0.25%とされるためベーキングによる材料の回復を抑制して、缶の開口部の形状変化を小さくすることができる。またそれと同時に熱間圧延の製造条件を適切に設定することによって、熱間圧延中の導入歪量及び導入歪速度を上げることにより材料中に再結晶の核となる歪堆積部を多く分散させて、圧延直後の材料自体の温度により再結晶化を促進させて0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下となる範囲に抑制されると共に、断面における平均結晶粒径が35μm以下となるべく管理され、缶のDI成形および口絞り成形等の成形性が確保される。
また、その様に成形性を確保した上で熱処理工程における缶真円度の変化が少なくなるようにしたので、DI成形後の印刷焼付け処理後の口絞り成形での不良を低減させることができ、口絞り成形後の缶開口部の形状の歪を少なくして、その後のネジ部分の加工や飲み口部のカール加工を円滑に行うことができ、缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することができる。
また、その様に成形性を確保した上で熱処理工程における缶真円度の変化が少なくなるようにしたので、DI成形後の印刷焼付け処理後の口絞り成形での不良を低減させることができ、口絞り成形後の缶開口部の形状の歪を少なくして、その後のネジ部分の加工や飲み口部のカール加工を円滑に行うことができ、缶形状が良好なアルミニウムボトル缶胴を効率よく作成することができる。
本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板によれば缶製造工程の主工程である、絞り、DI成形、洗浄、乾燥、印刷、口絞り成形を施した際に、缶の開口部形状が真円に近くなり、成形時の不具合を低減し、外観良好な缶の製造が可能となる。
1)本発明での合金成分の作用および範囲限定の理由を述べる。
Si:添加量を0.1〜0.3%とする。
SiはAl(Fe,Mn)Si系化合物(α相)を形成するのに必要な元素である。α相はしごき加工時のダイスへの焼き付きを防ぐ働きがあり必要不可欠である。また、Si添加量によりMn固溶量は変化するので、Mn固溶量制御の手段としても有効である。Siが0.1%未満ではダイスへの焼き付け防止に十分なα相の分布を得ることができない。0.3%を超える場合は、Al−Mg−Si系の析出により過剰な強度上昇を招き、成形性を阻害する。
Si:添加量を0.1〜0.3%とする。
SiはAl(Fe,Mn)Si系化合物(α相)を形成するのに必要な元素である。α相はしごき加工時のダイスへの焼き付きを防ぐ働きがあり必要不可欠である。また、Si添加量によりMn固溶量は変化するので、Mn固溶量制御の手段としても有効である。Siが0.1%未満ではダイスへの焼き付け防止に十分なα相の分布を得ることができない。0.3%を超える場合は、Al−Mg−Si系の析出により過剰な強度上昇を招き、成形性を阻害する。
Mn:添加量を0.7〜1.5%とする。
Mnは強度を向上させるとともに、前述のα相の形成に不可欠な元素である。また材料中に一定量固溶させることによりベーキング時の材料軟化を抑制させる。0.7%未満ではその効果が不十分であり、1.5%を超えるとAl−Mn−Fe系の粗大な晶出物が多くなり成形性が低下する。
Mnは強度を向上させるとともに、前述のα相の形成に不可欠な元素である。また材料中に一定量固溶させることによりベーキング時の材料軟化を抑制させる。0.7%未満ではその効果が不十分であり、1.5%を超えるとAl−Mn−Fe系の粗大な晶出物が多くなり成形性が低下する。
Cu:添加量を0.10〜0.25%とする。
Cuは冷間圧延やベーキング時のAl−Mg−Cu系析出による強度上昇、耐熱性の向上に必要である。0.10%未満ではその効果が少なく、0.25%を超えると強度過剰により、成形性が低下する。
Cuは冷間圧延やベーキング時のAl−Mg−Cu系析出による強度上昇、耐熱性の向上に必要である。0.10%未満ではその効果が少なく、0.25%を超えると強度過剰により、成形性が低下する。
Fe:添加量を0.1〜0.3%とする。
FeはSi,Mn同様にα相の形成に必要な元素である。またSi同様、添加量によりMn固溶量を制御することも可能である。0.1%未満では、ダイスへの焼き付き防止効果が不十分であり、0.3%を超えると、粗大晶出物が生成し成形性が低下する。
FeはSi,Mn同様にα相の形成に必要な元素である。またSi同様、添加量によりMn固溶量を制御することも可能である。0.1%未満では、ダイスへの焼き付き防止効果が不十分であり、0.3%を超えると、粗大晶出物が生成し成形性が低下する。
Mg:添加量を0.8〜1.2%とする。
Mgは固溶硬化による強度向上に寄与する。また、冷間圧延時やベーキング時の強度向上に寄与する析出物の構成元素であるが0.8%未満ではその効果が不十分である。一方、1.2%を超えると圧延時や成形中の加工硬化が大きくなり、成形性が低下する。
Mgは固溶硬化による強度向上に寄与する。また、冷間圧延時やベーキング時の強度向上に寄与する析出物の構成元素であるが0.8%未満ではその効果が不十分である。一方、1.2%を超えると圧延時や成形中の加工硬化が大きくなり、成形性が低下する。
本発明では以上の組成のアルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下となるべく管理される。その理由を次ぎに述べる。
第2相粒子 はマトリックスの母相以外の粒子、代表的には金属間化合物の析出物、晶出物、単体Si等であって、0.1μm以上の第2相粒子の重量比が2.0%を超えるようなアルミニウム合金板では、冷間圧延やしごき、口絞り成形時に第2相粒子の周りに転位が堆積しやすくなり成形性を損ねる。また大きな第2相粒子は、しごき成形や口絞り成形において割れの起点となり得る。
第2相粒子 はマトリックスの母相以外の粒子、代表的には金属間化合物の析出物、晶出物、単体Si等であって、0.1μm以上の第2相粒子の重量比が2.0%を超えるようなアルミニウム合金板では、冷間圧延やしごき、口絞り成形時に第2相粒子の周りに転位が堆積しやすくなり成形性を損ねる。また大きな第2相粒子は、しごき成形や口絞り成形において割れの起点となり得る。
本発明では以上の組成のアルミニウム合金板中のMn固溶量が0.15〜0.25%となるべく管理される。その理由を次ぎに述べる。
Mnを材料中に一定量固溶させることによりベーキングによる材料の回復を抑制させて、缶の開口部の形状変化を小さくさせることを目的とする。Mn固溶量が0.15%未満では、その効果が十分ではなく、Mn固溶量が0.25%を超えると、熱間圧延の中途及び終了時に材料の再結晶と同時に第2相粒子の析出が起こり易くなる。このような状態では再結晶化が遅延され、結晶粒の粗大化を招いてしまうためである。Mn固溶量はMn添加量の他に前述のSi,Fe添加量により制御でき、工程では以下に述べる主に均質化処理条件と熱間圧延での温度履歴により制御が可能である。
Mnを材料中に一定量固溶させることによりベーキングによる材料の回復を抑制させて、缶の開口部の形状変化を小さくさせることを目的とする。Mn固溶量が0.15%未満では、その効果が十分ではなく、Mn固溶量が0.25%を超えると、熱間圧延の中途及び終了時に材料の再結晶と同時に第2相粒子の析出が起こり易くなる。このような状態では再結晶化が遅延され、結晶粒の粗大化を招いてしまうためである。Mn固溶量はMn添加量の他に前述のSi,Fe添加量により制御でき、工程では以下に述べる主に均質化処理条件と熱間圧延での温度履歴により制御が可能である。
本発明では以上の組成のアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35μm以下となるべく管理される。その理由を次ぎに述べる。すなわち缶のDI成形および口絞り成形等の成形性を確保するためには、できるだけ結晶粒径を小さくする必要がある。特に35μmを超えてしまうと、DI成形または口絞り成形時に材料の破断が起こりやすくなる。
本発明のように熱間圧延以降の工程にて、アルミニウム合金板に再結晶化温度以上まで加熱されないような製法の場合、アルミニウム合金板の結晶粒の大きさは、熱間仕上圧延後の材料の再結晶挙動によって左右される。主にその要因は2つに分類できる。まずは、熱間圧延工程付近におけるMn、Fe等の元素の固溶、析出状態である。例えば、それら元素の固溶度が高ければ、熱間圧延中途または熱間圧延後において第2相粒子の析出と再結晶の競合が起こり、再結晶化が遅延され、粗大な結晶粒が発生する。もう一つは、熱間圧延中の導入歪量及び導入歪速度を上げることである。具体的な値に関する規定理由は後述するが、導入歪量及び導入歪速度を上げることにより材料中に再結晶の核となる歪堆積部を多く分散させて、圧延直後の材料自体の温度により再結晶化を促進させる。
本発明のように、DI成形後の熱処理工程における缶真円度の変化を少なくするために、材料の耐熱性を上げることを目的とする場合は、Mn、Fe等の元素の固溶度をできるだけ高める必要があるが、Mn、Fe等の元素の固溶度を高めると、前述のような粗大結晶粒が発生してしまうため、熱間圧延の製造条件を工夫することにより微細化させる方向に補う必要がある。
本発明では上記合金組成をもつアルミニウム鋳塊を以下の工程で製造する。
均質化処理を温度570〜620℃、4〜48時間し、450〜550℃まで炉冷した後、熱間粗圧延における最終前3パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率が1パス当り25〜60%とし、熱間粗圧延の各パスの圧延終了時に10〜50℃/secの冷却速度にて温度400〜470℃まで冷却し、400〜470℃となる熱間粗圧延アルミニウム合金板とし、タンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際に、熱間仕上圧延の総圧下率を88〜93%とし、圧延速度を270m/min以上とし、コイル状に巻き取った後のコイル温度が310〜340℃とする、その後中間熱処理をすることなく圧延率87%以下の冷間圧延を施す。
均質化処理を温度570〜620℃、4〜48時間し、450〜550℃まで炉冷した後、熱間粗圧延における最終前3パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率が1パス当り25〜60%とし、熱間粗圧延の各パスの圧延終了時に10〜50℃/secの冷却速度にて温度400〜470℃まで冷却し、400〜470℃となる熱間粗圧延アルミニウム合金板とし、タンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際に、熱間仕上圧延の総圧下率を88〜93%とし、圧延速度を270m/min以上とし、コイル状に巻き取った後のコイル温度が310〜340℃とする、その後中間熱処理をすることなく圧延率87%以下の冷間圧延を施す。
均質化処理を、570〜620℃以下で4〜48時間行う。前述のようなMn固溶量の制御には、均質化処理温度が重要となる。570℃未満では前述のような固溶量の確保ができない。一方、620℃を超えるとバーニングの可能性があり好ましくない。また保持時間が4時間未満であると、Mn固溶量が十分ではなく、48時間以上に保持したとしてもその効果が飽和するし、工業的に好ましくない。
均質化処理後、450〜550℃まで冷却し熱間粗圧延に供するが、その温度が450℃未満であると、Mnの析出が生じて、所望のMn固溶量が確保できない。550℃を超えると、熱間粗圧延時に、板とロール間で焼付きが生じてしまう。
熱間粗圧延における最終前3パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率が1パス当り25〜60%とする。熱間粗圧延における1パス当りの圧下率が高いほど、材料に付与される加工歪量が大きくなり、熱間圧延終了後において材料の再結晶化が促進され、結晶粒径が小さくなる。圧下率25%未満であれば、その効果が不十分となり、材料の平均結晶粒径が大きくなってしまう。60%を超えると、圧延ロールへの板の噛み込み性が悪くなる。押し込み力を大きくして無理やり圧延しようとしても、板のエッジ部とロールとの接触によりロールに傷をつけてしまい、その傷の板への再転写により表面不良が発生してしまう。
熱間粗圧延の各パスの圧延終了時に10〜50℃/secの冷却速度にて400〜470℃まで冷却する。この規定の目的は、熱間粗圧延終了後に、添加元素の過剰な析出を抑えることである。熱間粗圧延板のように比較的高温な状態を保ったまま放置すると、材料の析出が促進されるため、板を規定範囲まで強制冷却させることにより、析出を抑える。板の冷却方法は、エマルジョン化させた圧延油を噴き付ける等の冷却方法により実施する。その他の方法として、板表面に水や圧縮空気等を噴き付けても良い。冷却速度が10℃/sec未満であれば、析出の促進される温度範囲を避けるまでに時間を要してしまい、50℃/secを超えると冷却後の温度制御が困難となり、過度な冷却または冷却不足等の不具合を生じやすい。また、冷却後の材料温度が470℃を超えると、冷却不足となり過度な析出が生じてしまい、400℃未満であれば、次の圧延パスにて加工発熱により材料温度を上昇させるため、過酷な条件での圧延が強いられるが、そのような条件では表面不良や焼付け等の不具合が生じやすい。
熱間粗圧延アルミニウム合金板の温度を400〜470℃とする。全パス終了後の材料温度が470℃を超えると、冷却不足となり過度な析出が生じてしまう。400℃未満であれば、続く熱間仕上圧延にて製造可能な範囲限界に近い条件で圧延しても、後述する熱間仕上圧延終了後の材料温度が確保できない。
タンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際に、熱間仕上圧延の総圧下率を88〜93%とする。前述のように、強制的に冷却させた熱間粗圧延板は低温になっているため、一定量以上の加工を施して、材料の加工発熱により圧延後の材料温度を再結晶化温度以上に確保しなければならない。熱間仕上圧延の総圧下率が88%未満であれば、加工率が十分でないために、熱間仕上圧延後の材料温度が再結晶温度に到達し得ない。93%を超えるような加工率では、1段当りの加工率が高くなりすぎてしまい、材料表面が不良となる可能性がある。
熱間仕上圧延の圧延速度を270m/min以上とし、コイル状に巻き取った後のコイル温度が310〜340℃とする。圧延速度を高くすることにより、材料の加工発熱効果を上昇させるとともに、歪導入速度を上げることにより、熱間仕上圧延後の材料再結晶時の核サイトを多くさせて、結晶の微細化を図る。圧延速度が270m/min未満であると、その効果が十分ではない。圧延速度の他に、圧延油の温度及び流量を調整することにより、熱間仕上圧延終了時の材料温度を制御する。コイル状に巻き取った後のコイル温度が310℃未満であると、コイル巻き後に材料の再結晶が十分に行なわれず、材料の過剰な高強度化や長手方向の強度ばらつきが生じてしまう。340℃を超えるような材料温度であると、熱間仕上圧延時に温度が高くなりすぎてしまい、ピックアップインクルージョンのような表面不良を生じてしまう。
熱間仕上圧延後は、中間熱処理をすることなく圧延率87%以下の冷間圧延を施す。冷間圧延率が87%を超えると素板強度の過度な超過により、DI成形時に加工性を損ねる。
上記工程により、DI缶の真円度の優れたアルミニウム合金板を製造できる。
上記工程により、DI缶の真円度の優れたアルミニウム合金板を製造できる。
[実施例]
以下に実施例を示す。特性の評価方法は以下の通り実施した。
<評価方法>
・フェノール溶解、ろ過試験
フェノール溶解法は、アルミニウム合金板のマトリックスと金属間化合物の化学的性質差を利用して、マトリックスを優位にフェノール溶液中に溶解させる。そのフェノール溶液をフィルターにてろ過させることにより、マトリックスと金属間化合物の分離が可能となる。同方法の詳細な説明は、参考文献1等に記載されている。
参考文献1:軽金属,Vol47,No1(1997),p15,松尾ら著
以下に実施例を示す。特性の評価方法は以下の通り実施した。
<評価方法>
・フェノール溶解、ろ過試験
フェノール溶解法は、アルミニウム合金板のマトリックスと金属間化合物の化学的性質差を利用して、マトリックスを優位にフェノール溶液中に溶解させる。そのフェノール溶液をフィルターにてろ過させることにより、マトリックスと金属間化合物の分離が可能となる。同方法の詳細な説明は、参考文献1等に記載されている。
参考文献1:軽金属,Vol47,No1(1997),p15,松尾ら著
分離に要するフィルター目のサイズは、0.1μmとする。フィルターの目は細かければ細かいほど望ましいが、0.1μm未満ではろ過に要する時間が膨大になるか、全ての溶解液をろ過する前にフィルターが目詰まりする恐れがある。0.1μmより目の粗いフィルターであれば、本発明に関連する大きさを有する金属間化合物が分離できないためである。
ろ過速度は、500ミリリットル/分以下とする。ろ過速度が重要である理由は、フェノール溶液中に残っている残渣分を意図的にフィルターに目詰まりさせることにより、フィルター目よりも若干細かい大きさの金属間化合物を分離させるためである。ろ過速度の調節は、ろ紙の出側空間を真空状態に保つための吸引機(ポンプ)の出力による。ろ過速度が500ミリリットル/分を超えると、溶液中に浮遊している金属間化合物がフィルターに十分溜まらないため、前述の目詰まり効果が十分ではない。好ましくは、200ミリリットル/分以下が良い。アルミニウム合金板0.5gをフェノール50mlで溶解後、ベンジルアルコールを加え全量250mlに定量し、溶液250ml全てを0.1μmのフィルターにてろ過し、フィルター残渣の重量を測定した。ろ過後のろ液の一部50mlを誘導結合プラズマ発光分光分析装置のプラズマ中に噴霧して固溶Mn量を定量した。
・板断面結晶粒径の測定
最終板の板断面(圧延方向と板厚方向を2辺とする面)を機械/電解研磨し、光学顕微鏡にて結晶粒径を測定した。観察箇所は板断面の中央位置とし、30箇所にて測定した粒径の平均値を求めた。
最終板の板断面(圧延方向と板厚方向を2辺とする面)を機械/電解研磨し、光学顕微鏡にて結晶粒径を測定した。観察箇所は板断面の中央位置とし、30箇所にて測定した粒径の平均値を求めた。
・缶側壁引張り試験
製缶直後の缶の側壁部から圧延方向に作成したJIS13B号引張り試験片を、引張り速度20mm/分で引張り試験を行い、缶側壁強度(BBTS)を求めた。また、200℃×20分間のベーク処理を施した缶についても同様な方法にて測定し、ベーク後缶側壁強度(ABTS)を求めた。
製缶直後の缶の側壁部から圧延方向に作成したJIS13B号引張り試験片を、引張り速度20mm/分で引張り試験を行い、缶側壁強度(BBTS)を求めた。また、200℃×20分間のベーク処理を施した缶についても同様な方法にて測定し、ベーク後缶側壁強度(ABTS)を求めた。
・DI成形性評価
DI缶を1000缶作成し、破胴やゴーリング(キズ)が発生した場合×を、発生が無いものを○とした。
DI缶を1000缶作成し、破胴やゴーリング(キズ)が発生した場合×を、発生が無いものを○とした。
・缶真円度
製缶直後の缶をn=10にて缶底から110mmの位置の形状プロファイルを測定し、同心の2円にて挟んだときの外側円と内側円の半径差を真円度とし、10缶分の平均値を真円度BBとした。また、200℃×20分間のベーク処理を施した缶についても同様な方法にて測定し、ベーク前後の真円度変化の絶対値(10缶分の平均値)を|BB−AB|とした。|BB−AB|の値が、1000μmを超えると、不良と判定する。
製缶直後の缶をn=10にて缶底から110mmの位置の形状プロファイルを測定し、同心の2円にて挟んだときの外側円と内側円の半径差を真円度とし、10缶分の平均値を真円度BBとした。また、200℃×20分間のベーク処理を施した缶についても同様な方法にて測定し、ベーク前後の真円度変化の絶対値(10缶分の平均値)を|BB−AB|とした。|BB−AB|の値が、1000μmを超えると、不良と判定する。
・口絞り成形性評価
ベーク処理を施した缶30ヶに総絞り率45%の口絞り加工を施し、缶開口部の破断、皺や缶胴部の座屈が発生した場合×を、発生が無いものを○とした。
ベーク処理を施した缶30ヶに総絞り率45%の口絞り加工を施し、缶開口部の破断、皺や缶胴部の座屈が発生した場合×を、発生が無いものを○とした。
表1に示す合金組成のAl合金を常法により溶解鋳造し、厚さ500mmの鋳塊を製造した。次いで600℃×9hの均質化処理後、540℃まで空冷し、直ちに熱間粗圧延を開始し、全19パスで、17〜19パス目の圧下率が1パス当り約33%にて板厚26mmまで圧延した。さらに圧延油の噴射により約30℃/secの冷却速度にて熱間粗圧延板を冷却し、放射温度計での測定で430〜470℃であった。
その後、駆動式テーブルにて板を搬送し、熱間粗圧延終了後から300秒後に熱間仕上げ圧延を開始した。熱間仕上げ圧延は、4段タンデム式圧延機にて実施し、総圧下率は90%、板厚2.6mmとし、コイル巻上げ直後の材料温度は310〜340℃であった。最高圧延速度は、360m/minとした。その後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を圧下率85.8%にて0.37mmのアルミニウム板を製造した。
(実施例1の結果)
本発明の組成範囲内にある合金No.1、2、3、4、5、6は、缶の真円度が良好であり、缶の加工性も良好である。
これに対して比較例であるNo.7はSiが多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣り、また口絞り成形性が劣っていた。
本発明の組成範囲内にある合金No.1、2、3、4、5、6は、缶の真円度が良好であり、缶の加工性も良好である。
これに対して比較例であるNo.7はSiが多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣り、また口絞り成形性が劣っていた。
またNo.8はSiが少ないためにDI性に劣り、缶の側壁表面にゴーリングが多分に認められた。
No.9はFeが規定量を超えているため、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、破胴が多発した。また口絞り成形性が劣っていた。
No.10はFeが少ないためにDI性に劣り、缶の側壁表面にゴーリングが多分に認められた。
No.9はFeが規定量を超えているため、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、破胴が多発した。また口絞り成形性が劣っていた。
No.10はFeが少ないためにDI性に劣り、缶の側壁表面にゴーリングが多分に認められた。
No.11はCuが多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣り、また口絞り成形性が劣っていた。
No.12はCuが少ないため、ベーク後の缶真円度が悪化した。ベーク処理により缶開口部が大きく変形し、口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた。
No.13はMnが規定量を超えているため、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、破胴が多発し、口絞り成形性が劣っていた。
No.12はCuが少ないため、ベーク後の缶真円度が悪化した。ベーク処理により缶開口部が大きく変形し、口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた。
No.13はMnが規定量を超えているため、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、破胴が多発し、口絞り成形性が劣っていた。
No.14はMnが少ないためDI性に劣るほかMn固溶量が少なすぎてベーク後の缶真円度が悪化した。すなわちベーク処理により缶開口部が大きく変形し、口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた。
No.15はMgが多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣り、口絞り成形性が劣っていた。
No.16はMgが少ないため、ベーク後の缶真円度が悪化した。ベーク処理により缶開口部が大きく変形し、口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた。
No.15はMgが多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣り、口絞り成形性が劣っていた。
No.16はMgが少ないため、ベーク後の缶真円度が悪化した。ベーク処理により缶開口部が大きく変形し、口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた。
以上の様に、No.7,11,15はそれぞれSi,Cu,Mgが本発明の規定量よりも多いために素板強度が高すぎるので、Mn固溶量が規定内でもDI加工性が劣る。またNo.9,13はFe,Mnが規定量を超えているため、Al−Fe−Mn系の粗大晶出物が増加し、破胴が多発した。さらにNo.7,9,11,13,15はいずれも口絞り成形性が劣っていた。
またNo.8,10はSi、Feが少ないためにDI性に劣り、缶の側壁表面にゴーリングが多分に認められた。さらにNo.14はMnが少ないためDI性に劣るほかMn固溶量が少なすぎてベーク後の缶真円度が悪化した。また、No.12,16はCu,Mgが少ないため、ベーク後の缶真円度が悪化した。ベーク処理により缶開口部が大きく変形したNo.12,14,16は、いずれも口絞り成形時に缶胴部にて座屈するサンプルが数缶認められた
表1に示す合金組成1のAl合金を常法により溶解鋳造し、厚さ500mmの鋳塊を製造した。その後、表2の条件で均質化処理、熱間圧延を実施した。その後、中間焼鈍を行うことなく冷間圧延を圧下率85.8%にて0.37mmのアルミニウム板を製造した。
表3、4に、実施例2の結果を示す。本発明の製造条件に該当する実施例A、B、C、D、E、F、G、Hのアルミニウム板は、0.1μm以上の第2相粒子の量、Mn固溶量、板断面結晶粒径が本発明内にあり、DI成形性、缶真円度は良好な結果が得られている。
これに対して、比較例Iのアルミニウム板は均質化処理温度が550℃であり、均質化処理温度が570〜620℃という本発明の製造条件よりも低く、また0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.08%であって本発明のアルミニウム板の条件である0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であるという条件を充足しない。さらにMn量がアルミニウム合金板の重量比で0.13%であり、本発明のアルミニウム板の条件であるMn量が重量比で0.15〜0.25%であるという条件よりも低くなっていた。その結果、比較例Iのアルミニウム板はDI成形性良好なるも、真円度は|BB−AB|の値が、1000μmを超えて1450μmとなっており、不良であった。
比較例Jのアルミニウム板は均質化処理時間が2時間であり、均質化処理時間が4〜48時間という本発明の製造条件よりも短く、0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.05%であって本発明のアルミニウム板の条件である2.0%よりも多くなっていた。さらにMn量がアルミニウム合金板の重量比で0.14%であり、本発明のアルミニウム板の条件である0.15〜0.25%よりも低くなっていた。またアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が42.5umであり本発明のアルミニウム板の条件である35umよりも過大であり、DI成形性は良好なるも、真円度は|BB−AB|の値が、1000μmを超えて1290μmとなっており、不良であった。
比較例Kのアルミニウム板は熱間圧延入側温度432℃であり、本発明のアルミニウム板の条件である450〜550℃まで炉冷後熱間圧延という条件を充足しない。また熱間圧延出側温度が372℃であり、本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の条件である熱間粗圧延終了後の冷却によって温度400〜470℃とするという条件を充足しない。また、コイル温度302℃であり、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とするという本発明の製造条件を充足しない。その点で係る比較例Kのアルミニウム板は真円度は良好であったがDI成形性は不良であった。
比較例Lのアルミニウム板の製造条件は、最終3パスでの圧下率が1パス当り18%であり、熱間粗圧延における最終前2パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率を1パス当り25〜60%に管理する本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の条件と合致しない。また係る比較例Lのアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径は45.2umであって、本発明で規定する平均結晶粒径が35um以下であるという条件を充足しない。比較例Lのアルミニウム合金板は真円度良好なるもDI成形性は不良であった。
比較例Mのアルミニウム板は熱間圧延出側温度が383℃であり、その点で熱間粗圧延終了後の冷却によって400〜470℃とするという本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の条件に合致しない。また、コイル温度308℃であり、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とするという本発明の製造条件を充足しない。係る比較例Mのアルミニウム板はアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が42.6umであって本発明で規定する平均結晶粒径が35um以下であるという条件を充足せず、その点で真円度は良好であったがDI成形性は不良であった。
比較例Nのアルミニウム板は熱間圧延出側温度が376℃であり、その点で熱間粗圧延終了後の冷却によって400〜470℃とするという本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の条件に合致しない。また、コイル温度307℃であり、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とするという本発明の製造条件を充足しない。係る比較例Nのアルミニウム板は真円度は良好であったがDI成形性は不良であった。
比較例Oのアルミニウム板はタンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際の最高圧延速度255m/minであり、その点で最高圧延速度を270m/min以上とするという本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法の条件に合致しない。また、コイル温度305℃であり、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とするという本発明の製造条件を充足しない。係る比較例Oのアルミニウム板は真円度は良好であったがDI成形性は不良であった。
本発明のアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板は例えば飲み口部が形成されて使用に供される飲料用のアルミニウムボトル缶を成形するためのアルミニウム合金板として用いることができる。
Claims (2)
- 重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であることを特徴とするアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板。
- 重量比でSi:0.1〜0.3%、Mn:0.7〜1.5%、Cu:0.10〜0.25%、Fe:0.1〜0.3%、Mg:0.8〜1.2%を含有し、残部がアルミニウム及び不可避的不純物からなる組成を有するアルミニウム合金鋳塊を、570〜620℃で4〜48時間の均質化処理後、450〜550℃まで炉冷した後、熱間粗圧延における最終前2パスから最終パスまでの全3パスでの圧下率を1パス当り25〜60%として、熱間粗圧延終了時に10〜50℃/secの冷却速度にて冷却して温度400〜470℃の熱間粗圧延アルミニウム合金板とし、タンデム式の熱間仕上圧延機にて圧延を施す際に、最高圧延速度を270m/min以上とし、熱間仕上圧延の総圧下率を88〜93%とすると共に、コイル状に巻き取った後のコイル温度を310〜340℃とし、その後に中間熱処理をすることなく圧延率87%以下の冷間圧延を施して得られ、アルミニウム合金板中に存在する0.1μm以上の第2相粒子が重量比で2.0%以下であり、アルミニウム合金板中に固溶するMn量が重量比で0.15〜0.25%であり、さらにアルミニウム合金板の断面における平均結晶粒径が35um以下であることを特徴とするアルミニウムボトル缶胴用アルミニウム合金板の製造方法。
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-
2005
- 2005-08-15 JP JP2005235223A patent/JP2007051310A/ja active Pending
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