JP2007045849A - 裏止め塗膜用組成物およびそれを用いた防食鏡 - Google Patents

裏止め塗膜用組成物およびそれを用いた防食鏡 Download PDF

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【課題】 本発明は、鉛系顔料を用いずに、無鉛顔料のみを用いて裏止め塗膜した際に、銀鏡膜、銅膜等の金属膜を保護し、鏡の腐食および変質を防止する無鉛の裏止め塗膜用組成物を得ることを技術的課題とし、該裏止め塗膜用組成物を用い長期間安定した鏡面品質を維持する防食鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】 ガラス板に金属膜が形成され該金属膜上に無鉛の裏止め塗膜が被覆形成されてなる防食鏡を作製するための無鉛防錆顔料と着色顔料と体質顔料からなる(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーからなる裏止め塗膜用組成物であって、(B)合成樹脂バインダーに、(P)顔料が(P)/(B)=1.2〜4.0の重量比で分散されてなり、無鉛防錆顔料にモリブデン化合物を用いたことを特徴とする裏止め塗膜用組成物およびそれを用いた防食鏡。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス板に金属膜を形成し、該金属膜上に無鉛の裏止め塗膜が形成されてなる鏡を作製するための裏止め塗膜用組成物およびそれを用いた防食鏡に関する。
鏡は、ガラス板の少なくとも片面に金属膜を形成し、該金属膜上に金属膜の防食のための裏止め塗膜を被覆して形成される。
通常、鏡は、ガラス板の上に、銀鏡膜および銀鏡膜保護のための銅膜等の金属膜、これら金属膜の腐食、変質を防止めするための、言い換えれば、防食のための裏止め塗膜が順次、被覆形成されて構成される。
従来、前記裏止め塗膜用組成物には、合成樹脂バインダーに鉛系顔料を分散させたものが用いられ、例えば、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂またはフェノ−ルアルキド樹脂に、例えば、光明丹、鉛シアナミド、塩基性硫酸鉛、塩基性炭酸鉛、鉛酸カルシウム等の鉛系顔料を分散させたものが用いられてきた。
鉛系顔料は、裏止め塗膜に含有させることで、そのカチオン効果、還元効果、中和効果、アニオン効果によって、裏止め塗膜に含有させた際、鏡に縁シケ、中シケが発生することを防止する働きがある。
カチオン効果とは、通常鏡に使われる銀、銅等の金属よりイオン化傾向の大きい鉛金属塩により、銀、銅等のイオン化、変質を抑制する効果である。また、還元効果とは、金属膜との界面を還元雰囲気にすることにより、金属膜の酸化を防止する効果である。また、中和効果とは、鉛系顔料から生じる塩基性物質で腐食部の酸度を中和し、金属膜の酸化を防止する効果である。また、アニオン効果とは鉛系顔料から溶出した陰イオン、例えばシアナミドと、金属膜における金属イオンが反応して不動態被膜を形成し、金属膜の腐食を防止する効果である。
縁シケとは、鏡の縁部に発生する腐食、変質であり、中シケとは、鏡の内部に発生するスポット状の腐食、変質である。
しかしながら、近年、鉛化合物は地球環境問題より6価クロム化合物、カドミニウム化合物、水銀等とともに環境負荷物質として、世界的に削減方向にあり、裏止め塗膜に鉛系顔料を含まない無鉛鏡であって、防食性能に優れた防食鏡のニーズが高まっている。
更に、同様の理由で、銀鏡膜の防食保護のための金属保護膜である銅膜等がない鏡、言い換えれば、ガラス板の少なくとも片面に、銀鏡膜を形成し、直接、銀鏡膜に無鉛の裏止め塗膜を形成してなる無鉛無銅の防食鏡のニーズが高まり、防食性能に優れた裏止め塗膜を与える裏止め塗膜用組成物の開発が待たれている。
例えば、鉛系顔料の含有が殆どなく、実質的に無鉛の裏止め塗膜を用いながら、鏡膜の腐食および変質を防止し長期間を安定した鏡品質を維持する防食鏡が特許文献1にて開示されている。該防食鏡において、裏止め塗膜は、重量百分率で表して、エポキシ樹脂および硬化剤40〜85%、ケトンホルムアルデヒド樹脂およびその誘導体15〜60%よりなるバインダーと、組成中7〜55%の防錆顔料を含む顔料とが、重量比で、顔料/バインダー=1.2〜4.0からなる塗料を塗布硬化したものであり、防錆顔料に無鉛顔料を用いる。
防食鏡は、鉛系顔料を用いた裏止め塗膜が用いられてきた。鉛系顔料は優れた防錆剤である。しかしながら、環境負荷の問題で無鉛顔料のみを用いたとしても、有鉛顔料を用いた場合と同等の防食性能を有する裏止め塗膜用組成物の開発が待たれている。
特開平07−013006号公報
防食鏡の裏止め塗膜用組成物には防錆効果に優れる鉛系顔料が用いられてきたが、鉛は環境負荷物質として使用しない方向に推移している。しかしながら、鉛系顔料は、そのカチオン効果、還元効果、中和効果、アニオン効果によって、裏止め塗膜に含有させた際、鏡に縁シケ、中シケの発生を防止する働きがあり、鉛系顔料を他の防錆顔料、例えばモリブデン化合物に単に換えるだけでは、その効果は得られない。
本発明は、鉛系顔料を用いずに、無鉛顔料のみを用いて裏止め塗膜とした際に、銀鏡膜、銅膜等の金属膜を保護し、鏡の腐食および変質を防止する無鉛の裏止め塗膜用組成物を得ることを技術的課題とし、該裏止め塗膜用組成物を用い長期間安定した鏡面品質を維持する防食鏡を提供することを目的とする。
本発明は、鉛系顔料の替わりに無鉛防錆顔料としてモリブデン化合物を用い、裏止め塗膜にモリブデン化合物を含有させた際、その防錆効果を充分に発揮させることを目的とし、強靭且つ強固な裏止め塗膜をなす合成樹脂バインダーを得るための樹脂の種類および組成、言い換えれば、裏止め塗膜用組成物を提供するものである。
更に、本発明は、前記事項に加え、裏止め塗膜中のモリブデン化合物の含有率を検討し、更にモリブデン化合物とともに用いることで更なる鏡の防食性能を向上させる効果を奏する化合物として水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウムおよびカルシウム交換シリカを無鉛防錆顔料として用い、裏止め塗膜用組成物を最適設計したことで、鉛系顔料を用いた場合と同等の優れた防食鏡を提供するものである。
モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムから選ばれるモリブデン系化合物は、裏止め塗膜用組成物を分散させた裏止め塗膜用塗料中で金属錯体を作り、金属保護膜がない場合は、該錯体が銀鏡膜表面に作用して、金属保護膜がある場合は、例えば金属保護膜としての銅表面に作用して不動態を作ることで優れた防食効果を発生すると考えられる。
更に、モリブデン化合物に加えて、水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウム、カルシウム交換シリカを1種以上含めば防食効果が相乗的に得られ、より優れた防食性能を有する裏止め塗膜が得られる。
本発明において、発明者が鋭意検討した結果、(P)顔料における無鉛防錆顔料として、モリブデン酸カルシウムと水酸化ビスマスをともに用いることで、特に耐食性能に優れた防食鏡を与える裏止め塗膜用組成物が得られた。
即ち、本発明は、ガラス板に金属膜が形成され該金属膜上に無鉛の裏止め塗膜が被覆形成されてなる防食鏡を作製するための無鉛防錆顔料を含む(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーからなる裏止め塗膜用組成物であって、(B)合成樹脂バインダーに、(P)顔料が(P)/(B)=1.2〜4.0の重量比で分散されてなり、無鉛防錆顔料がモリブデン化合物であることを特徴とする裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、モリブデン化合物がモリブデン酸カルシウムおよび/またはリンモリブデン酸アルミニウムであることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、無鉛防錆顔料にモリブデン化合物に加え、水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウムおよび/またはカルシウム交換シリカを用いることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、前記(B)合成樹脂バインダーが、(A)アルキド樹脂と(E)エポキシ樹脂と(M)架橋樹脂とからなり、(A):(E):(M)=60.0〜95.0:1.0〜30.0:1.0〜30.0重量比であることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、前記(M)架橋樹脂が、アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂であることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを合わせた重量に対して、重量百分率で表して、モリブデン化合物が、0.1%以上、6.0%以下に含有されてなることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、モリブデン化合物に加え、水酸化ビスマスが、重量比で表して、水酸化ビスマス/モリブデン化合物=1.0〜8.0で含有されてなることを特徴とする上記の裏止め塗膜用組成物である。
更に、本発明は、上記の裏止め塗膜用組成物を塗布後硬化させた裏止め塗膜が形成されてなる防食鏡である。
更に、本発明は、前記硬化が20℃以上、200℃以下に加熱して行なわれたことを特徴とする上記の防食鏡である
本発明により、裏止め塗膜用組成物中に、環境負荷の懸念のある鉛を用いた鉛系顔料を含有しなかったとしても、無鉛顔料であるモリブデン化合物を使用し、更に、マトリックスとしての合成樹脂バインダーに使用する樹脂の種類および組成比を鋭意検討することで、銀鏡膜、銅膜を保護し、腐食、変質を防止する裏止め塗膜を与える裏止め塗膜用組成物が得られ、長期間安定し優れた鏡面品質を維持できる防食鏡が提供された。
本発明の裏止め塗膜用組成物は、銅膜のみならず、銀鏡膜に直接に塗布被覆したとしても優れた防食効果を鏡に与える。
鏡は、ガラス板Gの少なくとも片面に金属膜が形成されてなる。
図1は、鏡の概略断面図である。図1に示すように、通常、鏡は、ガラス板Gに鏡膜1、銀鏡膜1を保護する銅膜等からなる金属保護膜2、即ち、金属膜としての銀鏡膜1、金属保護膜2、次いで裏止め塗膜3を順次積層形成させてなる。また、前述の金属保護膜2を設けないこともあり銀鏡膜1に直接、無鉛の裏止め塗膜3を被覆すれば、環境に優しい無鉛無銅鏡となる。
通常、鏡の製造において、鏡膜としての銀鏡膜1、銀鏡膜1を保護する金属保護膜2としての銅膜をスプレー等の膜形成手段を用いメッキ法等で順次膜付けした後、裏止め塗膜用塗料を、ローラーコート、フローコート、スプレー等の適宜手段で塗布後、硬化させて金属保護膜に被覆するように塗布して乾燥させ裏止め塗膜3を形成する。
尚、鏡膜は銀が一般的に使用されるが、アルミニウム、チタン等の鏡膜を形成する金属および銀を含むこれら金属を混在させたものも挙げられる。
鏡膜を保護する金属保護膜2は銅が一般的に使用されるが、銅膜を有しない無銅鏡のニーズに対しては、化学的安定性を有し、銀鏡膜1との密着性がよく、銀鏡膜1と同様な被膜形成法、例えば、無電解メッキ法により容易に膜形成し得る金属、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金等の各種金属が金属保護膜2として用いる方法、金属保護膜2そのものを廃し、銀鏡膜1に、直接、裏止め塗膜用塗料を被覆するように塗布して乾燥させ裏止め塗膜3を形成する方法がある。
本発明の裏止め塗膜用組成物は、組成物として(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを有し、(P)顔料として無鉛防錆顔料としてのモリブデン化合物、着色顔料、体質顔料を使用し、(B)バインダーとして合成樹脂バインダーを使用し、(P)顔料を(B)合成樹脂バインダーに重量比、(P)顔料/(B)合成樹脂バインダー=1.2以上、4.0以下、即ち、(P)/(B)=1.2〜4.0で分散してなる。本発明において、(P)顔料とは、無鉛防錆顔料、着色顔料、体質顔料を併せたものであるが、鏡に防錆性能を与える無鉛防錆顔料を必須とし、着色顔料は着色のための、体質顔料は裏止め塗膜の膜厚を厚くするため等の付加的顔料であり必ずしも必須ではなく、無鉛防錆顔料のみの使用もあり得る。
本発明の裏止め塗膜用組成物において、(P)顔料の(B)バインダー樹脂に対する重量比(P)/(B)は、1.2〜4.0の範囲とすることが好ましい。(P)/(B)が1.2未満の裏止め塗膜用組成物を用い裏止め塗膜3を成形した鏡は、耐温水性試験において、温水に長時間浸漬後、鏡膜にブリスターが発生し易い。また、(P)/(B)が4.0を超えた裏止め塗膜用組成物を用いた裏止め用塗膜を成形した鏡は、裏止め塗膜3と金属保護膜2、あるいは裏止め塗膜3と銀鏡膜1との密着性が悪化し、耐薬品性、耐湿性も低下して、縁シケ、中シケが発生し易い。更に、好ましくは、(P)/(B)が1.4〜3.0の範囲である。
本発明の裏止め塗膜用組成物中の(P)顔料における無鉛防錆顔料としては、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムのモリブデン化合物から選ばれる少なくとも1種以上の金属化合物を用いる。尚、本発明の、無鉛防錆顔料は、環境汚染の懸念のあるCr、Pb、Hg、Cdも含まない。
モリブデン化合物は裏止め塗膜用組成物を分散させた裏止め塗膜用塗料中で金属錯体を作り、金属保護膜がない場合は、該錯体が銀鏡膜表面、金属保護膜がある場合は、例えば金属保護膜としての銅表面に作用して不動態を作ることで優れた防食効果を発生すると考えられ、水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウム、カルシウム交換シリカ、水酸化アルミニウムから選ばれる金属化合物を1種以上含めば防食効果が相乗的に得られる。特に、無鉛防錆顔料としてモリブデン酸カルシウムと水酸化ビスマスをともに用いることで、耐食性能に優れた防食鏡を与える裏止め塗膜用組成物が得られた。
銀鏡膜1の着色を防止し、優れた防食性、耐水性および耐薬品性を得た防食鏡のために、本発明の裏止め塗膜用組成物中の(P)顔料において、無鉛防錆顔料に加え、通常は、酸化チタン、弁柄、黄色酸化鉄、鉄黒、カ−ボンブラックおよび/または有機顔料等の着色顔料、タルク、沈降性硫酸バリウム、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、バライト等の体質顔料を加える。
本発明の裏止め塗膜用組成物における(B)合成樹脂バインダーは(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂、(M)架橋樹脂よりなる。
本発明の裏止め塗膜用組成物において、(B)合成樹脂バインダーとして、(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂に、(M)架橋樹脂としてアミノ樹脂、ブロックドイソシアネート樹脂を用い加熱硬化させて、強靭に3次元に架橋されたマトリックスが得られ、銀鏡膜1あるいは金属保護膜2を強く被覆しはがれ難い。
(B)合成樹脂バインダーに(A)アルキド樹脂のみを使用すると、裏止め塗膜とした際に硬度がなく強靭な被覆が得られない。(B)合成樹脂バインダーとして(E)エポキシ樹脂のみを使用すると、硬化のためには2液性となり、2液混合後、経時に伴い硬化するため、裏止め塗料として使用できるライフが短い、また粘性が高いため裏止め塗膜とした際に気泡ができやすい等の欠点が生じる。
一般的に、(A)アルキド樹脂は、原料として脂肪酸、油脂、多塩基酸、多価アルコ−ル等を用い変性させたもので、重量百分率で表して、樹脂分等の不揮発分を40重量%〜80重量%含む粘液状で、特に本発明においては、アルコ−ルと酸とのエステル化によって生成し樹脂状で無水フタル酸等の多塩基酸とグリセリン等の多価アルコ−ルとの結合物を骨格とし油脂で変性した樹脂、更に、ロジン等の天然樹脂、フェノ−ル樹脂等の合成樹脂、エポキシ樹脂およびスチレンモノマーまたはメチルメタアクリレートモノマ−等の重合性モノマーで変性した樹脂が有用であり、一般に市販されているものが1種または2種以上の組合せで使用される。
本発明の裏止め塗膜用組成物に用いる(B)合成樹脂バインダーとしての組成物の一つである(E)エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、好ましくは、数平均分子量300〜4000、エポキシ当量150〜3500の樹脂、更に、好ましくはエポキシ当量180〜3000のビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂が1種または2種以上、組合せて使用される。
本発明の裏止め塗膜用組成物に用いる(B)合成樹脂バインダーの組成物の一つである(M)架橋樹脂には、アミノ樹脂またはブロックイソシアネート樹脂が使用される。
本発明の裏止め塗膜用組成物に用いる合成樹脂バインダーの組成物の一つである(M)架橋樹脂としてのアミノ樹脂には、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、およびシクロヘキシルグアナミン樹脂が挙げられるが、塗膜が硬いこと、耐薬品性に優れることからメラミン樹脂を用いるが好ましい。変性に用いたアルコールの種類によって、メチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、および混合アルキル化メラミン樹脂等に種別されており、1種または2種以上の組合せで使用される。
本発明の裏止め塗膜用組成物に用いる合成樹脂バインダーの組成物の一つである(M)架橋樹脂としてのブロックイソシアネート樹脂は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、具体的にはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、該ポリイソシアネートのビューレットタイプの付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等のポリイソシアネートをフェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε−カプロラクタム類、トリアゾール類、およびピラゾール類等のブロック剤で封鎖したブロックイソシアネート樹脂等が挙げられ、一般に市販されているものの中から1種または2種以上の組合せで使用される。また触媒としてジブチルチンジラウリレート等の有機錫触媒を併用してもよい。
また、本発明の裏止め塗膜用組成物には、(M)架橋樹脂として前記アミノ樹脂とブロックイソシアネート樹脂とが適宜併用される。また、前記アミノ樹脂とブロックイソシアネート樹脂の硬化反応を促進するため、金属錯塩、即ち、ドライヤーを本発明の裏止め塗膜用組成物に添加してもよい。
本発明の裏止め塗膜用組成物における(B)合成樹脂バインダーは、(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂、(M)架橋樹脂からなり、(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂、(M)架橋樹脂の重量比は、(A):(E):(M)=60.0〜95.0:1.0〜30:1.0〜30.0の範囲である。更に、好ましくはA:E:M=65.0〜90.0:5.0〜25.0:2.0〜25.0の範囲である。
(A)アルキド樹脂の重量比が60.0未満の裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡は耐温水性に劣り、温水に長時間浸漬すると裏止め塗膜3中にブリスターが発生し易く、(A)アルキド樹脂の重量比が95.0を超えた裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡においては、鏡の耐薬品性および耐湿性に劣り、鏡膜に縁シケまたは中シケが発生し易い。
(E)エポキシ樹脂の重量比が1.0未満の裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡は、耐薬品性等に劣り、縁シケ、中シケが発生し易く、好ましくは、5.0以上である。(E)エポキシ樹脂の重量比が30.0を超えた裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡においては、裏止め塗膜3と金属保護膜2との密着性に劣り、好ましくは、25.0以下である。
(M)架橋樹脂の重量比が1.0未満の裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡は、耐薬品性等が劣化して縁シケ、中シケが発生し易く、好ましくは、2.0以上である。(M)架橋樹脂の重量比が30.0を超えた裏止め塗膜用組成物により形成した裏止め塗膜3を有する鏡においては、耐温水性に劣り、温水に長時間浸漬すると裏止め塗膜中にブリスターが発生し易く、好ましくは25.0以下である。
本発明の裏止め塗膜用組成物には、裏止め塗膜組成物に一般的に使用される防錆剤、レベリング剤、消泡剤、シランカップリング剤、沈殿防止剤が必要に応じて添加される。
本発明の裏止め塗膜用組成物の製造において、サンドミル、ボールミル、アトライター、ロールミル等に、(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂、(M)架橋樹脂、(P)顔料、添加剤、溶剤等の原料を投入した後に作動させ、細かく分散し、均一混合し、裏止め塗膜用組成物とする。
本発明の裏止め塗膜用組成物において(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを合わせた重量に対して、モリブデン化合物を、重量百分率で表して、0.1%以上、6.0%以下に含有することが好ましい。モリブデン化合物の含有が0.1%未満の鏡では、耐塩水噴霧性試験、キャス試験において鏡、即ち、鏡膜の耐食性能が低下し、6.0%を越えると裏止め塗膜3の耐水性が低下する。更に、好ましくは、(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを合わせた重量に対して、モリブデン化合物の含有が、0.1%以上、5.0%以下の範囲である。更に好ましくは0.1%以上、3.0%以下の範囲である。
尚、無鉛防錆顔料には、モリブデン化合物としてのモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウムに加え、水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウムおよび/またはカルシウム交換シリカを使用すると、更に、耐食性に優れ鏡を与える裏止め塗膜3が得られる。中でも水酸化ビスマスが有効であり、モリブデン酸カルシウムと水酸化ビスマスの組合せが本発明の防食鏡に優れた防食性能を与える。
即ち、水酸化ビスマスをモリブデン化合物に対して、重量比で表して、水酸化ビスマス/モリブデン化合物=1.0〜8.0の範囲に加え裏止め塗膜用組成物とし、有機溶剤等を加え裏止め塗膜用塗布液とした後、銀鏡膜1または金属保護膜2に塗布硬化させて裏止め塗膜3となすと、鏡に一層の耐食性能を与える。好ましくは、水酸化ビスマス/モリブデン化合物=2.0〜6.0の範囲である。具体的には、(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを合わせた重量に対して、水酸化ビスマスの含有は、重量百分率で表して、0.1%以上、48.0%以下であり、更に、好ましくは、0.2%以上、36.0%以下である。
このようにして得られた裏止め塗膜組成物を、ガラス基材G上に鏡膜、金属保護膜2を順次スプレー等の適宜膜形成手段で形成した該金属保護膜2上に、フローコーター、スプレー、ローラー、刷毛塗り等の手段で、乾燥硬化させ、裏止め塗膜3とした際に膜厚が30μm〜80μmになるように塗布する。更に、これを常温乾燥、即ち、20℃以上、200℃以下に加熱して架橋による硬化反応を促進させ裏止め塗膜3を金属保護膜2上に形成し、鏡を完成させる。硬化温度は、好ましくは100℃以上、200℃以下である。
尚、本発明の裏止め塗膜用組成物を塗布後硬化させた裏止め塗膜3が形成されてなる防食鏡において、鏡膜には銀鏡膜1が挙げられる。銀鏡膜1とは、銀のみを使用するだけでなく、銀にクロムまたはチタン等の金属を混在させ耐食性を高めた銀鏡膜1を含む。
尚、本発明の裏止め塗膜用組成物を塗布後硬化させた裏止め塗膜3が形成されてなる防食鏡において、銀鏡膜1を保護する金属保護膜2には、一般的に使用される銅膜が挙げられるが、化学的安定性が高く、銀鏡膜1との密着性がよく、銀鏡膜1と同等な塗膜形成法で形成されるニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金等も、金属保護膜2の材料として挙げられる。
該銅膜(保護金属膜2)上に、フローコーター、スプレー、ローラー、刷毛塗り等の適宜手段で裏止め塗膜用組成物を塗布し、硬化させて裏止め塗膜3として鏡を完成する。
表1に示す実施例1〜11の組成の、本発明の組成範囲に属する各裏止め塗膜用組成物を用意した。次いで、表2に示す比較例1〜7の組成の、本発明の組成範囲に属さない各裏止め塗膜用組成物を用意した。
Figure 2007045849
Figure 2007045849
表1、表2に示すように、(P)顔料における無鉛防錆顔料としてモリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、カルシウム交換シリカ、水酸化ビスマス、着色顔料として酸化鉄、カーボン、体質顔料として炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、タルクを使用した。単位は重量%である。
また、(B)バインダー樹脂組成物として(A)アルキド樹脂、(E)エポキシ樹脂、(M)架橋樹脂を使用した。具体的には(A)アルキド樹脂として、フェノール変性アルキド樹脂液(不揮発分、50重量%)、フェノール変性以外のアルキド樹脂液(不揮発分、50重量%)を使用した。また、(E)エポキシ樹脂として、エポキシ樹脂液(不揮発分、65重量%)を使用した。また、(M)架橋樹脂源として、アミノ樹脂液(不揮発分、60重量%)、ブロックイソシアネート樹脂液(不揮発分、60重量%)を使用した。
これら(P)顔料を(B)バインダー樹脂組成物を溶剤に分散させ、乾燥剤、消泡剤、レベリング剤等を加えて裏止め塗膜用塗料とした。
具体的には、溶剤として、キシレン、N−ブタノール、メトアセ(3−メトキシブチルアセテート)、裏止め塗膜用素生物中の(M)架橋樹脂の硬化反応を促進させるためのドライヤーとしての12重量%のオクチル酸コバルトを、沈殿防止剤としてのベントナイト、消泡剤、レベリング剤を加えた。
尚、表1および表2の下表に、裏止め塗膜3を形成した後の裏止め塗膜3の重量に対する、無鉛防錆顔料の含有率を重量百分率で示した。また、(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーの重量比を示すと共に、不揮発分に換算した後に(A):(E):(M)で表される(A)アルキド樹脂の重量比、エポキシ樹脂の重量比、(M)架橋樹脂の重量比を示した。
各組成物の製造または販売元、商品名について、表3に示した。
Figure 2007045849
ガラス板Gにスプレーを用い、メッキ法により、図1に示すように、銀鏡膜1、金属保護膜2としての銅膜を順次積層形成し、更に、銅膜上に裏止め塗膜用組成物を夫々フローコーターにて硬化時の膜厚が50μmになるように塗布し、電気熱風循環乾燥炉にて8分間、板温150℃で焼付け、言い換えれば、乾燥硬化させて裏止め塗膜3を形成し、20℃で3日間静置後、サイズ、10cm×20cmに裁断し試験片とし、表4に示す各試験を行った。
Figure 2007045849
表4に示す各試験を行った結果を、実施例1〜11については表5に、比較例1〜7については、表6に示す。評価基準をクリヤーしたものを〇、クリヤーしなかったものを×とする
Figure 2007045849
Figure 2007045849
本発明による実施例1〜11の裏止め塗膜用組成物を用いてなる鏡は、表5に示すように、耐酸性試験、耐温水性試験、耐塩水噴霧性試験、キャステストにおいて良好な結果が得られ、防食性に優れる防食鏡であった。それに対して、本発明の裏止め塗膜用組成物の範囲から外れた比較例1〜7の鏡は、表6に示すように、各試験において良好な結果が得られず、防食性に劣り、防食鏡と呼べるものではなかった。
鏡の概略断面図である。
符号の説明
G ガラス板
1 銀鏡膜
2 金属保護膜
3 裏止め塗膜

Claims (9)

  1. ガラス板に金属膜が形成され該金属膜上に無鉛の裏止め塗膜が被覆形成されてなる防食鏡を作製するための無鉛防錆顔料を含む(P)顔料と(B)合成樹脂バインダーからなる裏止め塗膜用組成物であって、(B)合成樹脂バインダーに、(P)顔料が(P)/(B)=1.2〜4.0の重量比で分散されてなり、無鉛防錆顔料がモリブデン化合物であることを特徴とする裏止め塗膜用組成物。
  2. モリブデン化合物がモリブデン酸カルシウムおよび/またはリンモリブデン酸アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の裏止め塗膜用組成物。
  3. 無鉛防錆顔料にモリブデン化合物に加え、水酸化ビスマス、トリポリリン酸アルミニウムおよび/またはカルシウム交換シリカを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の裏止め塗膜用組成物。
  4. 前記(B)合成樹脂バインダーが、(A)アルキド樹脂と(E)エポキシ樹脂と(M)架橋樹脂とからなり、(A):(E):(M)=60.0〜95.0:1.0〜30.0:1.0〜30.0重量比であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の裏止め塗膜用組成物。
  5. 前記(M)架橋樹脂が、アミノ樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の裏止め塗膜用組成物。
  6. (P)顔料と(B)合成樹脂バインダーを合わせた重量に対して、モリブデン化合物が、重量百分率で表して、0.1%以上、6.0%以下に含有されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の裏止め塗膜用組成物。
  7. モリブデン化合物に加え水酸化ビスマスが、重量比で表して、水酸化ビスマス/モリブデン化合物=1.0〜8.0に含有されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の裏止め塗膜用組成物。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の裏止め塗膜用組成物を塗布後硬化させた裏止め塗膜が形成されてなることを特徴とする防食鏡。
  9. 前記硬化が20℃以上、200℃以下に加熱して行なわれたことを特徴とする請求項8に記載の防食鏡。
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