JP2007045756A - 隔膜型水素化触媒を用いた水素化方法、水素化反応装置及び隔膜型水素化触媒 - Google Patents

隔膜型水素化触媒を用いた水素化方法、水素化反応装置及び隔膜型水素化触媒 Download PDF

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Abstract


【課題】隔膜型水素化触媒を使用し、液相原料を用いた水素化反応を効率よく進行させる水素化方法、そのような水素化方法を実施するための装置及び触媒を提供する。
【解決手段】 水素化能力を有する金属を担持させた多孔質体及び該多孔質体の一方の側に形成された水素透過性金属膜を備えた隔膜型触媒の存在下で、水素化すべき原料を液相水素化する。多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量は2重量%以上である。
【選択図】図1

Description

本発明は、隔膜型水素化触媒を用いた液相水素化方法、水素化反応装置及び隔膜型水素化触媒等に関するものである。
従来の接触水素化反応は、連続反応及び回分反応のいずれにおいても、液体または気体である水素化原料、気体水素、固体触媒を同一気密容器に封入し、気液固の三態が混合された状態で行われてきた。
水素化反応においては、水素分子が触媒に到達しなければならないが、三態混合の容器中では水素化原料が触媒表面を覆っているため、水素分子が触媒表面に到達するためには水素分圧を大きくし、水素を大量に供給しなければならないという問題点があった。
一方、水素選択透過性能を有する金属の一つであるパラジウムの薄膜や、これを支持体上に積層した複合膜で、気密容器を2つに仕切り、その一方から気体水素を、他方から水素化原料を供給するような、水素と反応原料とを分離供給するタイプの反応方法が知られている。この方法では、水素が水素化原料と分離した状態で触媒に到達することから、水素分子の触媒への供給効率が上昇し、低圧力下での反応を可能とした経済効果、反応率の向上、反応時間短縮に伴う副反応の低減が期待される。
このような隔膜型触媒を用いた水素化反応は、これまで、一般には、気相反応で行われている。このような気相での水素化方法としては、例えば、シクロペンタジエンの蒸気とアルゴンとの混合物を水素化反応に供してシクロペンテンを合成する方法(特許文献1)、フェノール蒸気と同伴ガスとしてのアルゴンとを部分水素化反応に供してシクロヘキサノンを合成する方法(特許文献2)、ピリジンの気相水素化分解によるペンチルアミンの合成方法(非特許文献1)が知られているが、トルエンのメチルシクロヘキサンへの核水素化は進行しないと報告されている(非特許文献3)。
これに対して、液体原料を使用した例としては、パラジウムとニッケル、又はパラジウムとルテニウムとの合金膜を触媒として用い、プロパギルアルコール又はアリルアルコールを液相で選択水素化する方法(非特許文献2)の例があるのみで、シクロヘキセン等のオレフィン類は、パラジウム−ルテニウム合金被膜を用いた液相反応では、実用的な水素化反応は進行しないと報告されている(非特許文献3)。
このように、液相反応では、限られた原料を用いる水素化方法が知られているだけであって、隔膜型の水素化触媒を用いて広い範囲の基質を液相反応で水素化し得る水素化反応は、知られていない。
特公昭60−2908 特公平7−579 Recent Res. Devel. Chemical Engg., 3(1999)79−86 Kinetika I Kataliz 25(1)(1984)69−73 Studies in Surface and Cat., 75(1993)1363−75
本発明の目的は、隔膜型水素化触媒を使用し、液相原料を用いた水素化反応を効率よく進行させる水素化方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、そのような水素化方法を実施するための装置及び触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、次の知見を得た。
(a)多孔質体と、水素透過性金属膜とからなる複合膜とを有する隔膜型水素化触媒において、多孔質体中の水素透過性金属膜と接する表面およびその近傍に、水素化能力を有する金属を担持させてなる触媒を用いると、液相原料を用いた場合でも高転化率で水素化反応が進行する。
(b)上記液相水素化方法に使用できる水素化原料としては、各種の原料が使用でき、前記非特許文献3で液相反応では水素化が進行しないとされていたシクロヘキセン等のオレフィン類も水素化することができる。
本発明はこれら知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであって、次の液相水素化方法、水素化反応装置及び液相水素化のための触媒等を提供するものである。
[項1] 多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えた隔膜型触媒の存在下で、被水素化物の水素化を行う方法であって、
多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であり、
該隔膜型触媒の水素透過性金属膜側に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を供給して液相水素化する
ことを特徴とする水素化方法。
[項2] 隔膜型触媒が、多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの10%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が3重量%以上である隔膜型触媒である項1に記載の水素化方法。
[項3] 多孔質体の平均細孔径が、0.1〜5μmである項1又は2に記載の隔膜型水素化方法。
[項4] 水素化能力を有する金属が、周期表第8族金属、第9族金属、第10族金属及び第11族金属からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1〜3のいずれかに記載の水素化方法。
[項5] 水素化能力を有する金属が、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種である項4に記載の水素化方法。
[項6] 水素透透過性金属膜が、銀金属膜、パラジウム金属膜、銀−パラジウム合金膜、又は、(a)銀及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と(b)ルテニウム、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種との合金の膜である項1〜5のいずれかに記載の水素化方法。
[項7] 被水素化物が、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、カルボン酸ハライド、シアノ基を有する化合物、又は、ニトロ基を有する化合物である項1に記載の水素化方法。
[項8] 平板状、中空糸状又はチューブ状の多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び、該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えており、
該多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であることを特徴とする隔膜型触媒。
[項9] 多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの10%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が3重量%以上である項8に記載の隔膜型触媒。
[項10] 液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液中の被水素化物を、水素もしくは水素−不活性ガス混合物により、隔膜型触媒を用いて水素化するための水素化反応装置であって、
反応容器と、少なくとも1つの隔膜型触媒を備えており、
該反応容器は、該少なくとも1つの隔膜型触媒により、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される少なくとも1つの隔室と、水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室とに仕切られており、
該少なくとも1つの隔膜型触媒は、多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び、該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えており、該多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であり、
該隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が、該水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室側に向けられており、且つ、該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側の多孔質体表面が、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される隔室側に向けられている
ことを特徴とする水素化反応装置。
[項11] 項10に記載の水素化反応装置を用い、前記隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が向けられている隔室に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、前記隔膜型触媒の水素透過性金属膜が形成されていない多孔質体表面が向けられている隔室に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を液体状態で供給することにより、被水素化物を液相水素化することを特徴とする水素化方法。
[項12] 項8に記載の隔膜型触媒の製造法であって、
(1)多孔質体の表面から内部にわたって、水素化能力を有する金属を担持させる工程、
(2)該金属が担持された多孔質体の一方の表面に、金属又はその合金からなる水素透過性金属膜を形成する工程
を備えていることを特徴とする製造法。
[項13] 工程(1)が、
(a)水素化能力を有する金属の塩及び錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、有機溶媒、水及びこれらの混合物からなる群から選ばれる媒体に溶解又は分散させてなる溶液又は分散液中に、多孔質体を浸漬することにより、該金属化合物を多孔質体に含浸させる工程、
(b)該金属化合物を還元処理する工程、及び
(c)上記工程(a)及び(b)からなる操作を、前記多孔質体の表面から内部にわたって、水素化能力を有する金属が、多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上となるまで繰り返す工程
からなる項12に記載の製造法。
本発明によれば、上記隔膜型触媒を用いて、隔膜型装置により、広範囲な原料を、液相で水素化することができる。
そのため、水素が水素化原料と分離した状態で触媒に到達することから、水素分子の触媒への供給効率が上昇し、低圧力下での反応を可能とした経済効果、反応率の向上、反応時間短縮に伴う副反応の低減が達成される。
更に、液相で水素化を行うので、隔膜型装置により気相で水素化する場合に比し、気化が難しい原料を扱うことが可能となり、原料選択の幅が広がる等の点で有利である。
また、水素化される原料(被水素化物)は、そのまま(ニート)で供給してもよく、また、媒体に溶解して供給してもよいため、被水素化物の濃度を任意に選択することができ、反応効率も向上する。
隔膜型水素化触媒
本発明の隔膜型水素化触媒は、水素化能力を有する金属を担持させた多孔質体と、水素透過性金属膜とからなる複合膜の形態にある。典型的には、本発明の隔膜型水素化触媒は、多孔質体表面に、水素透過性を有する金属又は合金からなる水素透過性金属膜が形成されており、かつ、多孔質体の内部にまで水素化能力を有する金属が担持されている隔膜型触媒である。
<水素透過性金属膜>
水素透過性を有する金属膜としては、各種のものが使用できるが、なかでも、銀金属膜、パラジウム金属膜又はこれらの合金膜が好ましい。
上記合金の例としては、銀−パラジウム合金の他、(a)銀及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属と、(b)ルテニウム、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との合金が例示できる。その典型例として、パラジウム50〜99重量%-銀1〜50重量%の合金、(a)銀及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属50〜99重量%と、(b)ルテニウム、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属1〜50重量%との合金が例示でき、なかでも、パラジウム75重量%-銀25重量%の合金やパラジウム97重量%-ルテニウム3重量%の合金が挙げられる。これら金属又は合金からなる膜は、水素分子を原子状に解離することで金属膜内を透過させる能力(即ち、水素透過性)を有し、得られる原子状水素は、再結合する前に、液相水素化反応に供される。
水素透過性金属膜の厚さは、広い範囲から適宜選択できるが、一般には、0.5μm〜20μm程度である。一般的に膜厚が薄い程水素の透過速度が上昇し水素化反応に有利となるが、0.5μmより薄くなると膜の物理的強度が落ち、容易に膜が破損する傾向を有するようになる。水素透過能を保持しつつ十分な物理的強度を有する観点からは、多孔質体の平均細孔径にもよるが、膜厚が5μm〜10μmであるのが好ましい。これらの厚さは電子顕微鏡像(HITACHIS-800)を用いて測定される。
<多孔質体>
本発明で使用する多孔質体の形状は、平板状、中空糸状またはチューブ状等の各種のものが使用でき、特に限定されない。中でも拡散能力の小さい液相と触媒との接触面を最大とするため中空糸状またはチューブ状が特に適している。チューブ状多孔体又は中空糸状多孔体の断面形状は、円形が好ましいが、これに限らず多角形であってもよい。
本発明で使用する多孔質体の材質は、水素透過性を有する金属を表面に積層でき、水素化能力を有する金属を内部に担持できれば特に限定されず、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、それらの複合物などの無機酸化物、アルミニウム、銀、ニッケル、銅、ステンレス鋼、それらの合金などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミド酸、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド等の有機高分子などが挙げられるが、中でも、安価に入手できるシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、それらの複合物等の無機酸化物が好適である。
多孔質体は、連続気泡であって、その細孔径は、表面に積層される水素透過性金属膜との実用的な密着性を確保しつつ、反応物質およびその溶剤が十分浸透・拡散できる大きさを有している必要があり、具体的には、平均細孔径が0.1μm〜5μm程度であり、好ましくは0.3〜3μm程度、より好ましくは0.5〜2.5μm程度である。本明細書及び特許請求の範囲において、上記平均細孔径は、水銀圧入法(JIS R1655)により測定したものである。
また、多孔質体の比表面積は、水素化能力を有する金属の分散性を向上するため、なるべく大きいことが望まれるが、大きくなり過ぎると平均細孔径が小さくなり、液体原料の拡散が妨げられ反応に不利となることから、0.5〜5,000m/g程度、特に10〜2000m/g程度が望ましい。本明細書及び特許請求の範囲において、上記比表面積は、物理吸着法(BET法)(JIS Z8830)により測定したものである。
また、多孔質体の厚さは、実用的な強度を有している必要があり、部分的に反応が起こりにくくなるのを防ぐため、均一厚みを有しているのが好ましい。また、厚さを増すことにより、液体原料の拡散抵抗も増加し、反応性に悪影響を与えることから、多孔質体の厚さは、0.01mm〜10mm程度、特に0.1〜5mm程度の範囲であることが好ましい。
上記のような多孔質体は、それ自体公知であり、市販品を使用してもよく、或いは公知方法に従って容易に製造することができる。
<水素化能力を有する金属>
多孔質体内部に担持させる水素化能力を有する金属としては、周期表第8族金属、第9族金属、第10族金属及び第11族金属からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属が挙げられ、特に水素化触媒として従来から慣用されている金属が好ましい。なかでも、水素化能力に優れているコバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金などがより好適に用いられる。これら金属は、使用する水素化原料及び目的生成物に応じて適宜選択することができ、これにより、水素化反応の反応率および選択性を向上させることができる。
<多孔質体における水素化能力を有する金属の分布>
上記多孔質体に担持させる上記水素化能力を有する金属は、水素透過性金属膜の近傍に或る値以上の濃度で存在していることが重要であり、液相水素化反応を効率よく進行させるためには、多孔質体の水素透過性金属膜を有している側とは反対側の面に反応液を流通させることが必須である。
本発明では、多孔質体に水素化能力を有する金属を担持することが、液相水素化反応を実施する上で必須となる。特に、多孔質体中の該金属の担持量の分布、特に、担持位置と担持量は、効率よく液相水素化反応を行うために重要な意味を持つ。
本発明に用いる金属を担持させた多孔質体においては、水素透過性金属膜と接している多孔質体表面のみならず、多孔質体の厚さ方向の断面において、水素透過性金属膜と多孔質体との接触面(即ち、水素透過性金属膜と多孔質体との界面)から内部にかけて高濃度で金属が担持されており、この構成を採用していることにより、隔膜型触媒において液相水素化反応が速やかに進行する。
即ち、水素透過性金属膜と多孔質体との接触面ないし界面S1からの厚さ方向の距離D1が、多孔質体の厚さTの0〜15%、特に0〜10%である領域において、水素化能力を有する金属が或る濃度以上に担持されていることが重要である。
本明細書及び特許請求の範囲において、上記「厚さ方向」は、例えば、多孔質体が平板状の場合は、当該表面に対して垂直な方向を指し、多孔質体が断面形状が円形のチューブ状又は中空糸状の場合は、断面の円の接線に対して垂直な方向を指す。また、上記「多孔質体の厚さ」は、多孔質体がチューブ状又は中空糸状の場合は、チューブ状の壁部の厚さを指す。
また、本明細書及び特許請求の範囲において、水素化能力を有する金属の「担持量」は、エックス線蛍光分析により測定した値であり、該エックス線蛍光分析の詳細については、後記実施例の欄で説明する。
上記水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定した担持量は、距離D1が多孔質体の厚さTの0〜15%にわたる領域において2重量%以上であり、距離D1が多孔質体の厚さTの0〜10%にわたる領域において3重量%以上であることが好ましい。更に、接触面ないし界面S1における水素化能力を有する金属の担持量は、8重量%以上であることが好ましく、8〜15重量%が特に好ましい。
分布としては、距離D1の厚さTに対する割合が大きくなる(距離D1が長くなる)につれて、水素化能力を有する金属担持量が漸減している(後述の製造例1〜5及び図2〜5参照)。典型的には、水素化能力を有する金属担持量は、接触面ないし界面S1において8重量%以上、特に8〜15重量%であり、距離D1の厚さTに対する割合が大きくなる(距離D1が長くなる)につれて漸減し、距離D1が多孔質体の厚さTの15%の位置において2重量%以上(好ましくは2〜4重量%程度)であり、好ましくは、距離D1が多孔質体の厚さTの10%の位置において3重量%以上(好ましくは3〜5.5重量%程度)である。
より具体的には、接触面ないし界面S1における水素化能力を有する金属の担持量が、8重量%以上、特に8〜15重量%であり、特に、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定した担持量は、接触面ないし界面S1(即ち、距離D1が多孔質体の厚さTの0%の位置)において、8重量%以上(好ましくは8〜15重量%程度)、距離D1が多孔質体の厚さTの5%の位置において5重量%以上(好ましくは5.5〜8重量%程度)、距離D1が多孔質体の厚さTの10%の位置において3重量%以上(好ましくは3〜5.5重量%程度)、距離D1が多孔質体の厚さTの15%の位置において2重量%以上(好ましくは2〜4重量%程度)である。
なお、距離D1が多孔質体の厚さTの0〜15%である領域のいずれかの位置において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定した担持量が2重量%より少ない場合、気相原料の水素化には十分な効果を示すが、液相原料の水素化反応においては十分な効果が得られない(後記比較例1〜6参照)。
また、後述の「隔膜型水素化触媒の製造方法」の項で記載する含浸法により多孔質体に水素化能力を有する金属を担持させた場合、特に工夫しない限り、平板状、中空糸状またはチューブ状の多孔質体の二つの表面のそれぞれから内部にかけて該金属が担持されるのが一般的であるが、後述するように、多孔質体の二つの表面の一方のみに水素化能力を有する金属を担持させることもできる。
隔膜型水素化触媒の製造方法
上記特定の金属担持量の分布を有する本発明の隔膜型水素化触媒は、種々の方法により製造できるが、典型的には、(1)多孔質体の表面から内部にかけて、水素化能力を有する金属を担持させ、次いで、(2)該金属が担持された多孔質体表面に、水素透過性を有する金属又はその合金からなる水素透過性金属膜を形成することにより製造される。
<(1)水素化能力を有する金属の多孔質体内部への担持工程>
水素化能力を有する金属の多孔質体内部への担持方法としては、一般の担持触媒調製に用いられる沈殿法、混練法、含浸法が用いられ、操作性の良さから特に含浸法が好ましい。
含浸法は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、(a)水素化能力を有する金属の塩、錯体等の金属化合物を、適当な有機溶媒、水及びこれらの混合物からなる群から選ばれる媒体に溶解又は分散させ、得られる溶液又は分散液中に、多孔質体を浸漬することにより、該金属化合物を多孔質体に含浸させる。次いで、(b)該金属化合物を還元して金属単体とする。この工程(a)及び(b)からなる一連の操作を、繰り返すことにより、水素化能力を有する金属が担持された多孔質体を得る。この繰り返し工程は、水素化能力を有する金属の前記特定の担持量分布が達成されるまで行う。
工程(a)に関して、上記金属化合物としては、上記水素化能力を有する金属のハライド、シアネート、ナイトレート、アセテート等を例示でき、更にこれらとアルカリ金属又はアルカリ土類金属との複塩および複核化合物が例示できる。また、水素化能力を有する金属の錯体としては、上記水素化能力を有する金属化合物(ハライド、シアネート、ナイトレート、アセテート等)のアンモニア、アセトニトリル、ピリジン、エチレン、カルボニル、トリフェニルホスフィン、水などとの錯体を例示できる。
例えば、Pd化合物としては、パラジウムアセテート、パラジウムクロリド、パラジウムブロミド、パラジウムシアネート、パラジウムナイトレート、パラジウムアセチルアセトナートおよび、それらとのアルカリ金属またはアルカリ土類塩との複塩および複核化合物、さらに、それらのアンモニア、アセトニトリル、ピリジン、エチレン、カルボニル、トリフェニルホスフィン、水などとの錯体を例示できる。
また、Ru化合物としては、例えば、ルテニウムアセテート、ルテニウムクロリド、ルテニウムブロミド、ルテニウムシアネート、ルテニウムナイトレート、ルテニウムハイドロオキサイドルテニウムハライド、および、それらとのアルカリ金属またはアルカリ土類塩との複塩および複核化合物、さらに、それらのアンモニア、アセトニトリル、ピリジン、エチレン、カルボニル、トリフェニルホスフィン、水などとの錯体を例示できる。
また、Pt化合物としては、例えば、プラチナムアセテート、プラチナムクロリド、プラチナムブロミド、プラチナムシアネート、プラチナムナイトレート、および、それらとのアルカリ金属またはアルカリ土類塩との複塩および複核化合物、さらに、それらのアンモニア、アセトニトリル、ピリジン、エチレン、カルボニル、トリフェニルスフィン、水などとの錯体を例示できる。
これら金属化合物を溶解又は分散させる媒体としては、有機溶媒、水及びこれらの混合物が挙げられる。該有機溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等をはじめとして各種のものが使用できる。
上記金属化合物を上記有機溶媒、水及びこれらの混合物からなる群から選ばれる媒体に溶解又は分散させてなる溶液又は分散液中の金属化合物濃度は、特に限定されず広い範囲から適宜選択できるが、通常は、0.1〜50重量%程度、特に0.5〜20重量%程度の濃度とするのが好ましい。
多孔質体内部への水素化能力を有する金属の担持は、例えば含浸法を用いて担持を行った場合、溶媒の蒸発点となる表面上にのみ触媒が担持される傾向がある。そのような場合には、本発明に好適に用いられるような水素透過性金属膜近傍の支持体内部にまで所定量以上の水素化能力を有する金属を担持させるためには、瞬時に溶剤を留去したり、パラジウムアセテート等の金属化合物を溶解又は分散させる溶媒として、ジエチルエーテル、アセトン等の高揮発性の溶剤を用いたりするのが好ましい。
溶剤を瞬時に留去する方法としては、ファンで風を送りながら100℃以上に加熱したオーブンで乾燥する方法等を例示することができる。
こうして、工程(a)における含浸処理により、金属化合物が多孔質体に沈着される。
また、工程(b)においては、上記工程(a)で金属化合物が沈着した多孔質体を、還元処理する。この還元処理は、典型的には、上記工程(a)で金属化合物が沈着した多孔質体を、還元剤溶液に浸漬して、該金属化合物を金属へと還元させる。使用する還元剤は、水素ガス、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、ヒドラジン、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムなどを例示することができる。水素ガス以外の還元剤は、通常、水溶液の形で使用する。該水溶液における還元剤の濃度は、広い範囲から適宜選択すればよいが、通常は、0.1〜10mol/L程度、特に0.5〜1.5mol/L程度とすればよい。なお、還元剤として、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンを使用する場合は、水酸化ナトリウムなどのアルカリを水溶液中に含有させるのが好ましい。その場合、水酸化ナトリウムなどのアルカリの使用量は、特に限定されないが、一般には、0.01〜0.1mol/L程度、特に0.03〜0.07mol/L程度であるのが好ましい。水素ガスを使用する場合は、上記工程(a)で金属化合物が沈着した多孔質体を水素又は水素−不活性ガス混合気流下におく等の処理をすればよい。
本発明の水素化能力を有する金属の多孔質体内部への担持工程においては、更に、上記の工程(a)及び(b)からなる操作を繰り返す。該操作は、所望の金属担持量の分布を有する多孔質体が得られるまで繰り返せばよいが、一般には、2回以上、特に5〜10回程度の回数繰り返すのが好ましい。
上記含浸法により、多孔質体に水素化能力を有する金属を担持させた場合、前記のように、多孔質体の両面から該金属が担持され、それぞれの表面から内部にかけて該金属が担持される。
しかしながら、多孔質体の二つの面のうち、一方の面のみに水素化能力を有する金属を担持させることも可能である。例えば、前記工程(a)で前記金属化合物の溶液又は分散液を多孔質体の一方の面のみに接触させればよい。このためには、例えば、平板状の多孔質体の他方の面を樹脂フィルムなどで封止する、チューブ状の多孔質体の中空部両端部に栓をするなどの方法が例示できる。
<(2)水素透過性金属膜の形成工程>
水素透過性金属膜を上記水素化能力を有する金属が担持された多孔質体表面へ形成する方法としては、膜と多孔質体との密着性が実用的上問題ないものが得られれば特に限定されず、例えば、電解又は無電解めっき法などのめっき法、CVD法などの化学蒸着、スパッタリングなどの物理蒸着が利用できる。
本発明では、特に、無電解めっき法を採用するのが好ましい。無電解めっき法に使用するめっき液は、公知のものを使用することができ、まためっき条件も公知の条件を採用できる。上記無電解めっき液としては、種々のものが使用できる。
例えば、パラジウムめっき溶液は、通常、パラジウム化合物、キレート剤、安定剤からなる水溶液として与えられる。パラジウム化合物としては、パラジウムクロリド、パラジウムアセテートなどが使用され、そのめっき溶液中の濃度は通常0.005mol/Lから0.1mol/Lである。キレート剤としては、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびそのナトリウム塩、NTA(ニトリロ三酢酸)およびそのナトリウム塩、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)およびそのナトリウム塩、HEDTA(ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸)およびそのナトリウム塩、TTHA(トリエチレンテトラミン六酢酸)およびそのナトリウム塩などが挙げられ、そのめっき溶液中の濃度は通常、0.05〜0.5mol/Lである。安定剤は、パラジウムイオンを安定化させたり、pHを調整したりする目的で用いられ、例えば、アンモニア、塩酸、酢酸などが使用される。その使用量は、アンモニアで5mol/Lから15mol/L、塩酸、酢酸で0.01mol/Lから0.05mol/Lである。
こうして形成される金属薄膜(水素透過性金属膜)の厚さは、前記のように、0.5μm〜20μm程度、好ましくは5μm〜10μm程度である。
上記方法により、特定の金属担持量の分布を有する本発明の隔膜型水素化触媒を得ることができるが、上記方法を適宜変更した方法を用いて製造することも可能である。
水素化方法及び水素化反応装置
本発明の水素化方法は、前記本発明の隔膜型触媒、即ち、多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えた隔膜型触媒の存在下で、被水素化物の液相水素化を行う方法であって、
多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であり、
該隔膜型触媒の水素透過性金属膜側に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を供給して液相水素化する
ことを特徴とする。
また、本発明の水素化反応装置は、本発明の隔膜型触媒を少なくとも一つ使用することによって分離される二以上の隔室を備えた水素化反応装置であって、少なくとも1つの隔室が、本発明の隔膜型触媒の水素透過性金属膜にのみ接しており、残りの隔室が水素化能力を有する金属を担持させた多孔質体の水素透過性金属膜を有しない表面にのみ接している水素化反応装置である。
本発明の隔膜型水素化反応装置は、上記本発明の隔膜型水素化触媒によって少なくとも2区画に区分されている反応器であり、区分されたその一方側に水素、他方に被水素化物(水素化される原料)を供給できるように設計された反応装置である。
好ましい実施形態によれば、本発明の水素化装置は、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液中の被水素化物を、水素もしくは水素−不活性ガス混合物により、隔膜型触媒を用いて水素化するための水素化反応装置であって、
反応容器と、少なくとも1つの隔膜型触媒を備えており、
該反応容器は、該少なくとも1つの隔膜型触媒により、被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される少なくとも1つの隔室と、水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室とに仕切られており(即ち、区画されており)、
該少なくとも1つの隔膜型触媒は、多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び、該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えており、
該隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が、該水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室側に向けられており(即ち、該水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室の内壁の少なくとも一部を構成しており)、
該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側の多孔質体表面が、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される隔室側に向けられている(即ち、該液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される隔室の内壁の少なくとも一部を構成している)
ことを特徴とする水素化反応装置である。
仕切方法(区画方法)は、単純に一つの反応器を平板の隔膜型水素化触媒で二分してもよいし、中空糸状又はチューブ状の隔膜型水素化触媒で2重管状に区分してもよく、その区画形態は特に限定されない。また、中空糸状又はチューブ状の隔膜型水素化触媒を使用する場合は、多数本を使用してマルチチューブタイプの反応器としてもよい。更に、公知の区画方法を採用してもよく、そのような公知の区画方法としては、例えば、特開2002−205968号に記載のものを挙げることができる。
本発明の隔膜型水素化触媒の水素透過性金属膜を、水素ガス又は水素−不活性ガス混合物が供給される隔室側に向け、水素透過性金属膜を有しない側の多孔質体表面を、水素化される原料が供給される隔室側に向けて仕切ることが必要である。水素化反応中、水素化される液体原料は多孔質体内に浸透している。
本発明に係る水素化反応装置の一例を図1に示し、以下、図1を参照しつつ、本発明の水素化方法を説明する。
本発明の水素化方法は、前記本発明の隔膜型触媒(即ち、水素化能力を有する金属を担持させた多孔質体及び該多孔質体の一方の側に形成された水素透過性金属膜を備えた隔膜型触媒)の存在下で、水素化すべき原料を液相水素化することを特徴とする水素化方法である。
典型的には、本発明の水素化方法は、上記本発明の水素化反応装置を用い、前記隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が向けられている隔室に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、前記隔膜型触媒の水素透過性金属膜が形成されていない多孔質体表面が向けられている隔室に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を液体状態で供給することにより、被水素化物を水素化することを特徴とする。
図1に示す本発明の一実施形態に係る水素化反応装置20は、反応容器18が、チューブ状の隔膜型水素化触媒16により、水素ガス流路10と反応液流路7(即ち、チューブ状の隔膜型水素化触媒16のチューブ内空間部)とに仕切られている。チューブ状の隔膜型水素化触媒16は、水素化能力を有する金属を担持したチューブ状の多孔質体9とその外表面の全面に形成された水素透過性金属膜8から構成されている。
まず、液体原料または原料溶液を仕込みポンプ11により反応塔上部から供給する。このとき不活性ガスを不活性ガス導入口1から供給してもよい。反応容器18内において、チューブ状の隔膜型水素化触媒16の多孔質体で形成された反応液流路7を原料が通過するが、その際に、原料は多孔質体9の細孔へ拡散し、多孔質体9に担持された水素化能力を有する金属に達する。一方、水素ガス導入口2aから水素ガス流路10へ連続的に供給された水素ガスは、水素透過性金属膜8により原子状水素に解離され、多孔質体9に担持された水素化能力を有する金属へ到達し、原料の水素化が進行する。生成した水素化反応生成物を含む反応液は、気液分離器6で、生成物とガスに分離される。
水素ガスは、純粋な水素ガスでもよく、また、不活性ガスと水素との任意の比率の混合ガスであってもよい。供給する水素ガスの圧力(混合ガスの場合は水素分圧)は、広い範囲から適宜選択することができるが、通常は、0.1MPa〜1MPa、特に0.15MPa〜0.5MPaの範囲が適当であり、使用する水素透過性金属膜の厚さにもよるが、1MPa以下で十分な水素ガス透過量が得られる。供給ガスは流通系としてもよいし、透過した分のみ連続供給しても水素化反応の効果は変わらない。なお、水素圧力は、例えば、圧力調節弁3を用いて調節することができる。
水素ガスの供給速度は、従来から行われている気相水素化においては、通常、水素透過膜の表面積(cm)あたり0.03〜0.1ml/min・cmである。本発明では、水素ガスの供給速度は、0.01〜100ml/min・cm、好ましくは0.02〜50ml/min・cm、より好ましくは0.03〜3ml/min・cmの範囲である。
水素化原料は、反応液流路7の上部の開口部から供給し、流下させて反応を行ってもよく、また、液体状態の被水素化原料を反応液流路7の下部の開口部から供給し上昇させて反応を行ってもよい。このとき、必要であれば、被水素化原料の分散性を向上するために窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを同伴させてもよい。
被水素化原料は、そのまま(ニートで)供給しても良いが、必要であれば、適当な有機溶媒に溶解した状態で供給しても良い。かかる有機溶媒としては、本発明の水素化反応に不活性な溶媒が使用でき、例えば、γ−ブチロラクトン、デカリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等を例示できる。これら有機溶媒溶液の形態で供給する場合、被水素化原料の濃度は特に限定されないが、一般には0.1〜50重量%程度、特に1〜10重量%程度とするのが好ましい。
被水素化原料としては、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、カルボン酸ハライド、シアノ基を有する化合物、ニトロ基を有する化合物等である。被水素化物は、反応系内で液状である化合物が好ましいが、常温で固体である化合物であっても、前記有機溶媒に溶解する化合物であれば使用できる。典型的には、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、ピネン、リモネン、スチレン、スクワレン、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、桂皮酸、マレイン酸、テトラヒドロベンズアルデヒド等の炭素−炭素不飽和結合(特に炭素−炭素二重結合)を有する化合物(これらは、主として当該炭素−炭素不飽和結合が還元される)、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アニリン、トルイジン、フェニレンジアミン、フェノール、ナフトール、クレゾール、安息香酸、トルイル酸、クミン酸、サリチル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、フタル酸、ハイドロキノン、アントラニル酸、安息香酸メチル、サリチル酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、フタル酸ジメチル、ビスフェノールA等の芳香族化合物(これらは、主として芳香環の不飽和結合が少なくとも一部還元される)、シアノベンゼン、1,3−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する化合物(これらは、主としてシアノ基が還元される)、ニトロベンゼン、2−ニトロトルエン、4−ニトロトルエン等のニトロ基を有する化合物(これらは、主としてニトロ基が還元されてアミノ基になる)、シクロヘキサンカルボニルクロリド、ベンゼンカルボニルクロリド等のカルボン酸ハライド(これらは、還元されて主としてアルデヒドを生成する)等を例示できる。
これら液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液の供給速度は、水素透過膜の単位面積あたり、0.1〜10μl/min・cm、特に0.3〜5μl/min・cmが好ましい。
特に本発明の水素化方法は、液相水素化反応を有利に進行させることができ、例えば、フェノールの水素化において、前記特許文献2(特公平7−579号公報)記載の気相反応では、時間当たりの原料消費量は、0.04mg/minであるが、本発明の液相反応では、これよりも高く、例えば、後述の実施例2では0.24mg/minと6倍強となっている。
反応温度は、水素化原料の種類、多孔質体に担持した金属水素化能力を有する金属の種類によっても変わり得るが、通常は、室温〜200℃程度、特に50〜160℃程度であるのが好ましい。
本発明における隔膜触媒では、多孔質体内部に水素化能力を有する金属を担持させたことにより、水素化反応場が拡張され、効果的に液状原料の水素化反応を実施することができる。
反応率は、隔膜触媒をより長くすること、または、反応液を繰り返し仕込んで反応することによってさらに上昇させることができる。
以下、本発明を更に具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例において得られた隔膜型触媒に関して、水素化能力を有する金属の「担持量」は、以下のような元素分析を行うことにより求めた。隔膜型触媒をその複数の厚さ方向に平行な面で切断したときにできる断面を、当該断面に垂直な方向から電子顕微鏡像(SEM)(HITACHI-S800)で観察しながら、厚さ方向に沿ってエックス線蛍光分析(HORIBAEMAX-7000)のライン分析を行うことで元素分析を実施した。厚さ方向の距離D1に対して、多孔質体を構成する全元素および水素化能力を有する金属元素の重量に比例した強度を表す線図を描く。より具体的には、界面S1の任意の点から厚さ方向に1本のラインを選択して元素分析を行い、厚さ方向の距離D1をX軸に、多孔質体を構成する全元素および水素化能力を有する金属元素の重量に比例するX線強度をY軸に描く。任意に選んだ異なる厚さ方向に対して10箇所同様なライン分析を実施し、厚さ方向の距離D1に対するX線強度をそれらの平均として求める。厚さ方向の距離D1での担持量(重量%)は、次式で表される:
担持量(重量%)=(Ih/Ia)×100
[上記式中、Ihは、水素化能力を有する金属元素のX線強度を示し、Iaは、多孔質体を構成する全元素および水素化能力を有する全金属元素のX線強度を示す。]
製造例1
(1)多孔質体への水素化能力を有する金属の担持方法
(a)ムライト製(Si=15.29重量%、Al=34.33重量%)のチューブ状多孔質体(ニッカトー製、外径6mm、内径3mm、平均細孔径1.9μm、比表面積10m/g、外表面積25.5cm))を、濃度0.013mol/Lのパラジウムジアセテートのジエチルエーテル溶液に10分間浸漬し、チューブ状多孔質体の外表面及び内表面(チューブ内空間部の壁面)に該ジエチルエーテル溶液を接触させた。チューブを取出し110℃のオーブンで水分を完全に蒸発させ、パラジウムソースを多孔質体に沈着させた。
(b)続いて、チューブを、1mol/Lの抱水ヒドラジン水溶液と0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の10:1(体積比)の混合液へ浸漬すると、パラジウムイオンが還元され、窒素ガスの発泡が起こるので、発泡が収まるまで浸漬した。その後、チューブをイオン交換水で十分に洗浄し110℃のオーブンで乾燥させた。
(c)以上の工程(a)及び工程(b)からなる操作を10回繰り返すことによって、多孔質体内部に水素化能力を有するパラジウムを担持した。
(2)水素透過性金属膜の調製方法−無電解めっき法
上述の方法で担持の完了したチューブ状多孔質体の両端に栓をして封鎖し、チューブ内空間部にめっき液が接触しないようにした後、0.02mol/Lパラジウムクロリド、0.2mol/Lエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム塩、10mol/Lアンモニアの組成を有するめっき液に浸漬した。めっきを形成すべき多孔質体外表面の単位表面積(cm)あたり、10mlのめっき液を使用した。即ち、チューブをめっき液255mlへ浸漬し、還元剤として1mol/L抱水ヒドラジン水溶液(2.55ml)を添加し、温度55℃で無電解めっきを実施した。
めっき後、栓を取り外し、チューブをイオン交換水で十分に洗浄、乾燥することにより、多孔質体の外表面全体に厚さ10μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。
得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定し、結果を図2に示す。図2においては、水素透過性金属膜と多孔質体との境界面(界面ないし接触面)からの厚さ方向の距離D1の、多孔質体の厚さTに対する割合(%)を横軸として、エックス線蛍光分析により測定した金属担持量を縦軸としている(図3以下においても同じである)。
製造例2
(1)多孔質体への水素化能力を有する金属の担持方法
(a)ムライト製(Si=15.29重量%、Al=34.33重量%)のチューブ状多孔質体(ニッカトー製、外径6mm、内径3mm、製造例1で使用したものと同一の多孔質体)を1重量%のルテニウムトリクロリドn水和物水溶液に10分間浸漬し、チューブを取出し150℃のオーブンで水分を完全に蒸発させ、ルテニウムソースを多孔質体に沈着させた。
(b)続いて、チューブを、水素化ホウ素ナトリウム1g当たり、1N水酸化ナトリウム水溶液60mlの割合で溶解した溶液へ浸漬することで、ルテニウムイオンを還元した。その後、チューブをイオン交換水で十分に洗浄し110℃のオーブンで乾燥させた。
(c)以上の工程(a)及び(b)からなる操作を5回繰り返すことによって、多孔質体内部に水素化能力を有するルテニウムを担持した。
(2)水素透過性金属膜の調製方法
上述の方法で担持の完了した多孔質体を、製造例1の工程(2)と同様の方法で水素透過性金属膜を調製することにより、多孔質体表面に厚さ10μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図3)。
製造例3
(1)多孔質体への水素化能力を有する金属の担持方法
(a)ムライト製のチューブ状多孔質体(ニッカトー製、外径6mm、内径3mm、製造例1で使用したものと同一の多孔質体)を0.5重量%のプラチナム(II)ポタジウムクロリド水溶液に10分間浸漬し、チューブを取出し150℃のオーブンで水分を完全に蒸発させ、白金ソースを多孔質体に沈着させた。
(b)続いて、チューブを、1Mの抱水ヒドラジン水溶液と0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液の10:1の混合液へ浸漬すると、白金イオンが還元され窒素ガスの発泡が起こるので、発泡が収まるまで浸漬した。その後、チューブをイオン交換水で十分に洗浄し110℃のオーブンで乾燥させた。
(c)以上の工程(a)及び工程(b)からなる操作を10回繰り返すことによって、多孔質体内部に水素化能力を有する白金を担持した。
(2)水素透過性金属膜の調製方法
上述の方法で担持の完了した多孔質体を、製造例1の工程(2)と同様の方法で水素透過性金属膜を調製した結果、多孔質体表面に厚さ10μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図4)。
製造例4
(1)多孔質体への水素化能力を有する金属の担持方法
製造例1の工程(1)と同様にしてパラジウムが担持された多孔質体を得た。
(2)水素透過性金属膜の調製方法−無電解めっき法
上述の方法で担持の完了したチューブ状多孔質体の両端に栓をしてチューブ内空間部にめっき液が接触しないようにした後、0.02mol/Lパラジウムクロリド、0.2mol/Lエチレンジアミンテトラカルボン酸二ナトリウム塩、10mol/Lアンモニアの組成からなるめっき液に浸漬した。めっきを形成する多孔質体外表面の単位表面積(cm)あたり、5mlのめっき液を使用した。チューブをめっき液128mlへ浸漬し、還元剤として1mol/L抱水ヒドラジン水溶液1.28mlを添加し、温度は55℃で無電解めっきを実施した。めっき後、チューブをイオン交換水で十分に洗浄、乾燥することにより、多孔質体表面に厚さ5μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。
得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した。結果は、製造例1における図2に示すものと同様であった。
製造例5
(1)多孔質体への水素化能力を有する金属の担持方法
製造例1の工程(1)に記載の工程(a)及び工程(b)からなる操作の繰り返しを5回行うことによりパラジウムが担持された多孔質体を得た。
(2)水素透過性金属膜の調製方法−無電解めっき法
上述の方法で担持の完了した多孔質体を、製造例4の工程(2)と同様の方法で水素透過性金属膜を調製することにより、多孔質体表面に厚さ5μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。
得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図5)。
製造例6(比較)
(水素透過性金属膜の調製方法)
製造例1で使用したものと同一のチューブ状多孔質体(ニッカトー製)に対して、水素化能力を有する金属の担持処理(製造例1(1)の操作)を行うことなく、製造例1(2)に記載の無電解めっき処理を行い、多孔質体表面に厚さ10μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図6)。
製造例7(比較)
(水素透過性金属膜の調製方法)
製造例4で使用したものと同一のチューブ状多孔質体(ニッカトー製)に対して、水素化能力を有する金属の担持処理(製造例4(1)の操作)を行うことなく、製造例4(2)に記載の無電解めっき処理を行い、多孔質体表面に厚さ5μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図7)。
製造例8(比較)
ムライト製(Si=15.29重量%、Al=34.33重量%)のチューブ状多孔質体(ニッカトー製、外径6mm、内径3mm、平均細孔径1.9μm、外表面積25.5cm、製造例1で使用したものと同一の多孔質体)に、特開平11−300182の実施例に記載のCVD法により、1μmのパラジウム膜を形成したチューブ状の隔膜型水素化触媒を得た。得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した(図8)。
実施例1
製造例1で調製した隔膜型水素化触媒を、図1に示すタイプの隔膜型水素化反応装置に設置し、水素化反応を行った。水素ガスは、圧力調節弁3により水素圧を0.3MPaに調整し、10ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4ml/min・cm)(常温、常圧換算)で水素ガス導入口2aから連続供給した。シクロヘキセンを原料仕込みポンプ11より反応塔7の上部から0.01ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4μl/min・cm)の速度で流下供給し、窒素ガスを1.0ml/minで同伴させ、反応温度を65℃とした。反応原料、生成物、反応率及び選択率を表1に示す。ここでいう反応率とは、シクロヘキセンの全転化率(生成物はシクロヘキサン)である。
実施例2
製造例1で調製した隔膜型水素化触媒を図1に示す隔膜型水素化反応装置に設置し水素化反応を行った。水素ガスは、圧力調節弁3により水素圧を0.1MPaに調整し、10ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4ml/min・cm)(常温、常圧換算)で水素ガス導入口2aから連連続供給した。フェノールの3wt%γ-ブチロラクトン溶液を原料仕込みポンプ11より反応塔7の上部から0.01ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4μl/min・cm)の速度で流下供給し、窒素ガスを4.0ml/minで同伴させ、反応温度を140℃とした。
反応原料、生成物、反応率及び選択率を表1に示す。ここでいう反応率とは、フェノールの全転化率(生成物はシクロヘキサノンとシクロヘキサノール)であり、選択率とは生成物中のシクロヘキサノンとシクロヘキサノールとの割合である。
実施例3
製造例2で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例2と同様に水素化反応を行った。反応原料、生成物、反応率及び選択率を表1に示す。反応率、選択率の定義は実施例2と同様である。
実施例4
製造例3で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例2と同様に水素化反応を行った。反応原料、生成物、反応率及び選択率を表1に示す。反応率、選択率の定義は実施例2と同様である。
実施例5
製造例4で調製した隔膜型水素化触媒を使用し、フェノールの3wt%γ-ブチロラクトン溶液に代えて、シクロヘキサンカルボニルクロライドの10wt%キシレン溶液を用いた以外は実施例2と同様に水素化反応を行った。
反応原料、生成物、反応率及び選択率を表2に示す。ここでいう反応率とは、シクロヘキサンカルボニルクロライドの全転化率(生成物はシクロヘキサンカルボアルデヒドとシクロヘキサンメタノール)であり、選択率とは生成物中のシクロヘキサンカルボアルデヒドとシクロヘキサンメタノールとの割合である。
表2から判るように、本発明の隔膜型水素化触媒を使用することにより、カルボン酸ハライドの還元により、目的とするアルデヒドを選択的に生成し、アルコールの副生を抑制することが可能となった。
ちなみに、従来、カルボン酸ハライドからアルデヒドを生成する方法として、パラジウム触媒と硫酸バリウムの存在下で還元を行うローゼムント還元が知られているが、この方法では添加剤として硫酸バリウムを使用する必要がある。これに対して、本発明の水素化方法によると、そのような添加剤を使用することなく、アルデヒドを選択的に得ることができる。
実施例6
製造例5で調製した隔膜型水素化触媒を、図1に示すタイプの隔膜型水素化反応装置に設置し水素化反応を行った。水素ガスは、圧力調節弁3により水素圧を0.03MPaに調整し、10ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4ml/min・cm)(常温、常圧換算)で水素ガス導入口2aから連続供給した。ハイドロキノンの0.6wt%デカリン:トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)=78:22(重量比)溶液を原料仕込みポンプ11より反応塔7の上部から0.01ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4μl/min・cm)の速度で流下供給し、窒素ガス4.0ml/minで同伴させ、反応温度を160℃とした。
反応率及び選択率を表2に示す。ここでいう反応率とは、ハイドロキノンの全転化率(生成物は1,4−シクロヘキサンジオンと4−ヒドロキシシクロヘキサノン)であり、選択率とは生成物中の1,4−シクロヘキサンジオンと4−ヒドロキシシクロヘキサノンとの割合である。
実施例7
製造例1で調製した隔膜型水素化触媒を図1に示す隔膜型水素化反応装置に設置し水素化反応を行った。水素ガスは、圧力調節弁3により水素圧を0.09MPaに調整し、10ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4ml/min・cm)(常温、常圧換算)で水素ガス導入口2aから連続供給した。ジメチルテレフタル酸の1wt%γ-ブチロラクトン溶液を原料仕込みポンプ11より反応塔7の上部から0.01ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4μl/min・cm)の速度で流下供給し、窒素ガス4.0ml/minで同伴させ、反応温度を140℃とした。
反応率及び選択率を表2に示す。ここでいう反応率とは、ジメチルテレフタル酸の全転化率(生成物はヘキサヒドロジメチルテレフタル酸)である。
実施例8
製造例2で調製した隔膜型水素化触媒を使用し、ジメチルテレフタル酸の1wt%γ-ブチロラクトン溶液の代わりに4−ヒドロキシ安息香酸メチルの4wt%γ-ブチロラクトン溶液を使用する以外は、実施例7と同様に水素化反応を行った。
反応率及び選択率を表3に示す。ここでいう反応率とは、4−ヒドロキシ安息香酸メチルの全転化率(生成物は4−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルと4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸メチル)であり、選択率とは生成物中の4−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルと4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸メチルとの割合である。
実施例9
製造例5で調製した隔膜型水素化触媒を図1に示す隔膜型水素化反応装置に設置し水素化反応を行った。圧力調節弁3により、水素圧を0.6MPaに調整し、10ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4ml/min・cm)(常温、常圧換算)で水素ガス導入口2aから連続供給した。ビスフェノールAの10wt%γ-ブチロラクトン溶液を原料仕込みポンプより反応塔上部から0.01ml/min(水素透過膜の単位面積当たり0.4μl/min・cm)の速度で流下供給し、窒素ガス4.0ml/minで同伴させ、反応温度を180℃とした。
反応率及び選択率を表3に示す。ここでいう反応率とは、ビスフェノールAの全転化率(生成物は2,2-ビス-(4,4’-オキソシクロヘキシル)プロパンと4-〔1-(4‘−オキソシクロヘキシル)-1-メチルエチル〕フェノール)であり、選択率とは生成物中の2,2-ビス-(4,4’-オキソシクロヘキシル)プロパンと4-〔1-(4‘−オキソシクロヘキシル)-1-メチルエチル〕フェノール)との割合である。
比較例1
製造例6で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例1と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表4に示す。反応率、選択率の定義は実施例1と同様である。
比較例2
製造例6で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例2と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表4に示す。反応率、選択率の定義は実施例2と同様である。
比較例3
製造例8で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例2と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表4に示す。反応率、選択率の定義は実施例2と同様である。
比較例4
製造例7で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例5と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表5に示す。反応率、選択率の定義は実施例5と同様である。
製造例7の水素化能力を有する金属の担持を行うことなく無電解めっきを行って製造した触媒では、目的とするアルデヒドの選択率が低く、副生物であるアルコールの選択率が高いことが判る。
比較例5
製造例6で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例7と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表5に示す。反応率、選択率の定義は実施例7と同様である。
比較例6
製造例6で調製した隔膜型水素化触媒を使用する以外は、実施例8と同様に水素化反応を行った。反応率及び選択率を表5に示す。反応率、選択率の定義は実施例8と同様である。
Figure 2007045756
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本発明によれば、上記のように、隔膜型水素化触媒が得られ、この隔膜型水素化触媒を用いて、隔膜型装置により、広範囲な原料を液相水素化することができる。
チューブ状の隔膜型水素化触媒を備えた本発明の水素化装置の一例を模式的に示した縦断面図である。 製造例1で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例2で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例3で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例5で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例6で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例7で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。 製造例8で得られた隔膜型水素化触媒の厚さ方向に沿った断面の金属担持量分布をエックス線蛍光分析により測定した結果を示すグラフである。
符号の説明
1 不活性ガス導入口
2a 水素ガス導入口
2b 水素ガス排出口
3 圧力調節弁
5 不活性ガス排出口
6 気液分離器
7 反応液流路
8 水素透過性金属膜
9 水素化能力を有する金属を担持した多孔質体
10 水素ガス流路
11 原料仕込みポンプ
16 チューブ状隔膜型水素化触媒
18 反応容器
20 水素化反応装置

Claims (13)

  1. 多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えた隔膜型触媒の存在下で、被水素化物の液相水素化を行う方法であって、
    多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であり、
    該隔膜型触媒の水素透過性金属膜側に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を供給して液相水素化する
    ことを特徴とする水素化方法。
  2. 隔膜型触媒が、多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの10%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が3重量%以上である隔膜型触媒である請求項1に記載の水素化方法。
  3. 多孔質体の平均細孔径が、0.1〜5μmである請求項1又は2に記載の隔膜型水素化方法。
  4. 水素化能力を有する金属が、周期表第8族金属、第9族金属、第10族金属及び第11族金属からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の水素化方法。
  5. 水素化能力を有する金属が、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の水素化方法。
  6. 水素透透過性金属膜が、銀金属膜、パラジウム金属膜、銀−パラジウム合金膜、又は、(a)銀及びパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種と(b)ルテニウム、ニッケル及び銅からなる群から選ばれる少なくとも1種との合金の膜である請求項1〜5のいずれかに記載の水素化方法。
  7. 被水素化物が、炭素−炭素不飽和結合を有する化合物、カルボン酸ハライド、シアノ基を有する化合物、又は、ニトロ基を有する化合物である請求項1に記載の水素化方法。
  8. 平板状、中空糸状又はチューブ状の多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び、該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えており、
    該多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であることを特徴とする隔膜型触媒。
  9. 多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの10%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が3重量%以上である請求項8に記載の隔膜型触媒。
  10. 液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液中の被水素化物を、水素もしくは水素−不活性ガス混合物により、隔膜型触媒を用いて水素化するための水素化反応装置であって、
    反応容器と、少なくとも1つの隔膜型触媒を備えており、
    該反応容器は、該少なくとも1つの隔膜型触媒により、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される少なくとも1つの隔室と、水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室とに仕切られており、
    該少なくとも1つの隔膜型触媒は、多孔質体、該多孔質体の表面から内部にわたって担持された水素化能力を有する金属、及び、該多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜を備えており、該多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において、水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上であり、
    該隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が、該水素もしくは水素−不活性ガス混合物が供給される少なくとも1つの隔室側に向けられており、且つ、該隔膜型触媒の水素透過性金属膜を有しない側の多孔質体表面が、液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液が供給される隔室側に向けられている
    ことを特徴とする水素化反応装置。
  11. 請求項10に記載の水素化反応装置を用い、前記隔膜型触媒の多孔質体の一方の表面に形成された水素透過性金属膜が向けられている隔室に水素又は水素−不活性ガス混合物を供給し、前記隔膜型触媒の水素透過性金属膜が形成されていない多孔質体表面が向けられている隔室に液状被水素化物又は被水素化物の有機溶媒溶液を液体状態で供給することにより、被水素化物を液相水素化することを特徴とする水素化方法。
  12. 請求項8に記載の隔膜型触媒の製造法であって、
    (1)多孔質体の表面から内部にわたって、水素化能力を有する金属を担持させる工程、
    (2)該金属が担持された多孔質体の一方の表面に、金属又はその合金からなる水素透過性金属膜を形成する工程
    を備えていることを特徴とする製造法。
  13. 工程(1)が、
    (a)水素化能力を有する金属の塩及び錯体からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を、有機溶媒、水及びこれらの混合物からなる群から選ばれる媒体に溶解又は分散させてなる溶液又は分散液中に、多孔質体を浸漬することにより、該金属化合物を多孔質体に含浸させる工程、
    (b)該金属化合物を還元処理する工程、及び
    (c)上記工程(a)及び(b)からなる操作を、前記多孔質体の表面から内部にわたって、水素化能力を有する金属が、多孔質体と水素透過性金属膜との接触面からの厚さ方向の距離が多孔質体の厚さの15%までの領域において水素化能力を有する金属のエックス線蛍光分析により測定された担持量が2重量%以上となるまで繰り返す工程
    からなる請求項12に記載の製造法。
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